(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022144652
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】半透膜支持体
(51)【国際特許分類】
B01D 69/10 20060101AFI20220926BHJP
【FI】
B01D69/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021045753
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(72)【発明者】
【氏名】野上 由理
(72)【発明者】
【氏名】下里 瑞菜
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA02
4D006MA03
4D006MA09
4D006MC11
4D006MC12
4D006MC18
4D006MC22
4D006MC27
4D006MC28
4D006MC32
4D006MC39
4D006MC48
4D006MC54
4D006MC62X
4D006MC90
4D006NA05
4D006PA01
4D006PA02
4D006PB03
4D006PB06
4D006PB08
4D006PB09
4D006PC01
4D006PC41
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、半透膜支持体に半透膜を設けた際に、膜密度の高い半透膜を形成し、かつ、半透膜と半透膜支持体との接着強度が高い半透膜支持体を提供することにある。
【解決手段】主体合成繊維とバインダー合成繊維とを含有してなる不織布からなる半透膜支持体において、半透膜支持体がフタル酸エステル系界面活性剤を含有していることを特徴とする半透膜支持体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成繊維を含有してなる不織布からなる半透膜支持体において、半透膜支持体がフタル酸エステル系界面活性剤を含有していることを特徴とする半透膜支持体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半透膜支持体に関する。
【背景技術】
【0002】
海水の淡水化、浄水器、食品の濃縮、廃水処理、血液濾過に代表される医療用、半導体洗浄用の超純水製造等の分野で、半透膜が広く用いられている。半透膜は、セルロース系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル系樹脂等の合成樹脂で構成されている。しかしながら、半透膜単体では機械的強度に劣るため、不織布や織布等の繊維基材からなる半透膜支持体の片面に半透膜が設けられた複合体の形態である分離膜として使用されている。半透膜支持体の半透膜が設けられる片面を「塗布面」と呼び、反対側の面を「非塗布面」と呼ぶ。
【0003】
主に、半透膜支持体としては、合成繊維を含有する不織布が用いられる。半透膜支持体に要求される性能としては、半透膜が均一に形成されること(半透膜均一性)、半透膜溶液(ドープ)が半透膜支持体に浸透し、半透膜形成後に、半透膜と半透膜支持体の剥離が発生しないこと、ドープが非塗布面に裏抜けしないこと等が挙げられる。ドープの裏抜けは、装置を汚すばかりでなく、半透膜の性能低下を引き起こす場合がある。
【0004】
ドープが裏抜けしないように、半透膜支持体の均一性を高めることを目的として、合成繊維を水に分散したスラリーを湿式抄紙して不織布とする工程において、抄紙時における該スラリーの繊維分濃度を0.01~0.1質量%とし、かつ、該スラリーに、高分子粘剤として、分子量500万以上の水溶性高分子を、繊維分質量を基準として3~15質量%含有させて抄紙する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、高分子粘剤が過剰に添加されているため、均一性は高まるが、抄紙ワイヤー上でのスラリー粘度が高まり、抄紙ワイヤーからの脱水性が低下して、生産速度が上げられないという問題が起こる可能性があった。また、抄紙後の半透膜支持体を形成する繊維表面に高分子粘剤が残留するという問題もあった。
【0005】
また、太い繊維を使用した表面粗度の大きな表面層(太い繊維層)と細い繊維を使用した緻密な構造の裏面層(細い繊維層)との二重構造を基本とした多層構造の不織布よりなる半透膜支持体が提案されている(例えば、特許文献2参照)。具体的には、太い繊維層を塗布面とし、細い繊維層を非塗布面とした半透膜支持体、細い繊維層を太い繊維層で挟み込み、塗布面と非塗布面の両方を太い繊維層とした半透膜支持体が記載されている。しかしながら、塗布面において、太い繊維を使用しているため、半透膜と半透膜支持体との接着性は向上するものの、平滑性が低く、半透膜に欠点が生じやすいという問題があった。また、太い繊維を使用しているため、ドープが半透膜支持体の内部にまで入り込んでしまい、半透膜の膜密度が低くなる場合があった。
【0006】
また、ドープが塗布された際に、半透膜支持体が幅方向に湾曲することによって、不均一な半透膜が製造されるという課題を解決するために、抄紙流れ方向と幅方向の引張強度比が2:1~1:1にあり、繊維の配向がばらけた状態である半透膜支持体が提案されている(例えば、特許文献3参照)。さらに、特許文献3では、半透膜と半透膜支持体の接着性を良くすること及び裏抜け防止を目的として、半透膜支持体の通気度やポアサイズを調整する方法が提案されている。しかしながら、このJIS L1096に準拠した通気度は、半透膜支持体の片面から半透膜支持体内部を通過して別の片面へ透過する空気の量を基に算出されており、塗布面の表面に塗布されたドープの非塗布面への裏抜けを正確に反映しているものではない。そのため、特許文献3で示された範囲の通気度を有する半透膜支持体にドープを塗布した場合、ドープが裏抜けしてしまう場合があった。
【0007】
特許文献4では、強度と透水性を両立した複合半透膜を提供するために、半透膜支持体の単位当たりの重さAと前記半透膜支持体に浸透したドープの重さB(浸透量)の和(A+B)が30~100g/m2であり、前記重さAと前記重さBとの比B/Aが0.10~0.60である半透膜と半透膜支持体の複合体(複合半透膜)が提供されている。しかし、半透膜支持体の空隙率が65%以上である半透膜支持体において、ドープの半透膜支持体への浸透が過剰となり、半透膜の膜密度が低くなる場合があった。
【0008】
特許文献5では、ドープ塗布時に半透膜支持体内部へのドープの浸透量が向上し、半透膜と半透膜支持体との接着強度が高い半透膜支持体を提供するという課題を解決するために、ポリオレフィン系繊維を含有する半透膜支持体において、半透膜支持体の塗布面における水の接触角が60~85度であり、非塗布面における水の接触角が65~97度であることを特徴とする半透膜支持体が提供されている。しかしながら、より緻密な膜形成のため、ドープ濃度(合成樹脂含有濃度)を18質量%以上に上げると、ドープ塗布時の半透膜支持体へのドープの浸透量が低下し、半透膜と半透膜支持体との接着強度が不十分となる場合があった。また、半透膜と半透膜支持体との接着強度を上げるためにドープ濃度を下げると、半透膜支持体への浸透が過剰となり、半透膜の膜密度が低くなる場合があった。
【0009】
特許文献6では、従来に比べて大幅に高い耐久性を有する複合半透膜を提供するという課題を解決するために、重量平均分子量(Mw)が14万以下の熱可塑性樹脂から成る半透膜と半透膜支持体の複合体(複合半透膜)が提供されている。しかしながら、該熱可塑性樹脂は粘度が低いため、ドープが半透膜支持体の非塗布面にまで浸透して裏抜けが発生する場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008-238147号公報
【特許文献2】特公平4-21526号公報
【特許文献3】特開2002-95937号公報
【特許文献4】国際公開第2014/192883号パンフレット
【特許文献5】特開2019-171296号公報
【特許文献6】特開2020-121263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、半透膜支持体に半透膜を設けた際に、膜密度の高い半透膜を形成し、かつ、半透膜と半透膜支持体との接着強度が高い半透膜支持体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題は、下記手段によって解決された。
【0013】
(1)合成繊維を含有してなる不織布からなる半透膜支持体において、半透膜支持体がフタル酸エステル系界面活性剤を含有していることを特徴とする半透膜支持体。
【発明の効果】
【0014】
本発明において、合成繊維を含有してなる半透膜支持体がフタル酸エステル系界面活性剤を含有していることによって、半透膜支持体に半透膜を設けた際に、半透膜の膜密度が高く、かつ、半透膜と半透膜支持体との接着強度が高いという効果を達成できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の半透膜支持体は、海水の淡水化、浄水器、食品の濃縮、廃水処理、血液濾過に代表される医療用、半導体洗浄用の超純水製造等の分野で使用することができる。半透膜としては、ポリアミド系樹脂、セルロース系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等の合成樹脂で構成された半透膜が挙げられる。半透膜支持体の片面(塗布面)に、半透膜の原料となる合成樹脂を溶かしたドープが塗布され、凝固浴中でゲル化された後に水洗されて、微多孔膜が形成され、半透膜支持体の塗布面に半透膜が設けられた複合体の形態(分離膜)となる。
【0016】
本発明の半透膜支持体は、フタル酸エステル系界面活性剤を含有していることを特徴とする。本発明における「フタル酸エステル系界面活性剤を含有している」とは、200mm×210mmサイズの半透膜支持体に、100mLのメタノールを加え、超音波浴装置中で超音波分散しながら、常温で1時間溶出し、濾過した溶出液をエバポレーターと真空ポンプで乾燥し、メタノール2mLにて再溶解させて得られた液(3μL)を、Liquid Chromatography-Mass Spectrometry(アジレント社製、Accurate Mass Q-TOF LC/MS 6520)で定性分析し、フタル酸エステル系界面活性剤が検出されることを言う。
【0017】
半透膜支持体がフタル酸エステル系界面活性剤を含有していると、半透膜支持体に半透膜を設けた際の、半透膜と半透膜支持体との接着強度が高くなる。本明細書では、「半透膜と半透膜支持体との接着強度」を「膜接着強度」と略記する場合がある。一般的にドープの半透膜支持体への浸透率が高いと、膜接着強度は高くなるが、フタル酸エステル系界面活性剤を含有していると、ドープの浸透率が低い場合であっても、接着強度を高くできることが分かった。ドープの浸透率を抑えることで、膜密度の高い半透膜を形成できる。水処理膜として高い膜性能を達成する上で、膜密度が高く、緻密な膜構造をした半透膜の形成は不可欠な因子である。フタル酸エステル系界面活性剤を含有していると、接着強度が高くなる理由は、フタル酸エステル系界面活性剤が塗布面表面の繊維に付着していることにより、ドープの繊維へのレベリング性が向上し、半透膜が繊維表面を覆うように繊維に結着し、半透膜と繊維の結着面積が増えることで、膜接着強度が高くなると推察される。フタル酸エステル系界面活性剤は、1種だけを使用しても良いし、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0018】
本発明において、フタル酸エステル系界面活性剤は、一般式(1)で表されるポリエチレンテレフタレートイソフタレート共重合体を含有する界面活性剤であることが好ましい。
【0019】
【0020】
一般式(1)において、l、nは0から200の整数であり、l又はnの少なくとも一方は1以上の整数である。mは、1から50の整数である。R1、R4は、水素、炭化水素基、アルキルカルボニル基又はアルケニルカルボニル基を表す。R2、R3は、エチレン基、プロピレン基又はブチレン基を表す。合成繊維との親和性が良くなることから、炭化水素基、アルキルカルボニル基又はアルケニルカルボニル基の炭素数は、11~20であることが好ましく、12~18であることがより好ましい。炭化水素基としては、フェニル基、アルキル基、アルキルフェニル基、アルケニル基、アルケニルフェニル基などが挙げられる。合成繊維と親和性が良くなることから、分子量は3,000~8,000が好ましい。
【0021】
以下に、一般式(1)で表される界面活性剤の具体的な例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0022】
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリエチレングリコールモノフェニルエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリエチレングリコールモノウンデシルエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリエチレングリコールモノドデシルエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリエチレングリコールモノトリデシルエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリエチレングリコールモノテトラデシルエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリエチレングリコールモノペンタデシルエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリエチレングリコールモノヘキサデシルエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリエチレングリコールモノヘプタデシルエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリエチレングリコールモノオクタデシルエーテル重縮合体。
【0023】
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリエチレングリコールモノウンデシルフェニルエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリエチレングリコールモノドデシルフェニルエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリエチレングリコールモノトリデシルフェニルエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリエチレングリコールモノテトラデシルフェニルエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリエチレングリコールモノペンタデシルフェニルエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリエチレングリコールモノヘキサデシルフェニルエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリエチレングリコールモノヘプタデシルフェニルエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリエチレングリコールモノオクタデシルフェニルエーテル重縮合体。
【0024】
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリエチレングリコールモノウンデセニルフェニルエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリエチレングリコールモノドデセニルフェニルエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリエチレングリコールモノトリデセニルフェニルエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリエチレングリコールモノテトラデセニルフェニルエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリエチレングリコールモノペンタデセニルフェニルエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリエチレングリコールモノヘキサデセニルフェニルエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリエチレングリコールモノヘプタデセニルフェニルエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリエチレングリコールモノオクタデセニルフェニルエーテル重縮合体。
【0025】
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリエチレングリコールモノラウレートエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリエチレングリコールモノミリステートエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリエチレングリコールモノパルミテートエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリエチレングリコールモノステアレートエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリエチレングリコールモノベヘネートエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリエチレングリコールモノオレアートエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリエチレングリコールモノリノラートエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリエチレングリコールモノアラキダートエーテル重縮合体。
【0026】
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリプロピレングリコールモノフェニルエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリプロピレングリコールモノウンデシルエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリプロピレングリコールモノドデシルエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリプロピレングリコールモノトリデシルエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリプロピレングリコールモノテトラデシルエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリプロピレングリコールモノペンタデシルエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリプロピレングリコールモノヘキサデシルエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリプロピレングリコールモノヘプタデシルエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリプロピレングリコールモノオクタデシルエーテル重縮合体。
【0027】
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリプロピレングリコールモノウンデシルフェニルエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリプロピレングリコールモノドデシルフェニルエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリプロピレングリコールモノトリデシルフェニルエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリプロピレングリコールモノテトラデシルフェニルエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリプロピレングリコールモノペンタデシルフェニルエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリプロピレングリコールモノヘキサデシルフェニルエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリプロピレングリコールモノヘプタデシルフェニルエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリプロピレングリコールモノオクタデシルフェニルエーテル重縮合体。
【0028】
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリプロピレングリコールモノウンデセニルフェニルエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリプロピレングリコールモノドデセニルフェニルエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリプロピレングリコールモノトリデセニルフェニルエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリプロピレングリコールモノテトラデセニルフェニルエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリプロピレングリコールモノペンタデセニルフェニルエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリプロピレングリコールモノヘキサデセニルフェニルエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリプロピレングリコールモノヘプタデセニルフェニルエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリプロピレングリコールモノオクタデセニルフェニルエーテル重縮合体。
【0029】
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリプロピレングリコールモノラウレートエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリプロピレングリコールモノミリステートエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリプロピレングリコールモノパルミテートエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリプロピレングリコールモノステアレートエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリプロピレングリコールモノベヘネートエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリプロピレングリコールモノオレアートエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリプロピレングリコールモノリノラートエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリプロピレングリコールモノアラキダートエーテル重縮合体。
【0030】
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリブチレングリコールモノフェニルエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリブチレングリコールモノウンデシルエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリブチレングリコールモノドデシルエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリブチレングリコールモノトリデシルエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリブチレングリコールモノテトラデシルエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリブチレングリコールモノペンタデシルエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリブチレングリコールモノヘキサデシルエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリブチレングリコールモノヘプタデシルエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリブチレングリコールモノオクタデシルエーテル重縮合体。
【0031】
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリブチレングリコールモノウンデシルフェニルエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリブチレングリコールモノドデシルフェニルエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリブチレングリコールモノトリデシルフェニルエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリブチレングリコールモノテトラデシルフェニルエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリブチレングリコールモノペンタデシルフェニルエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリブチレングリコールモノヘキサデシルフェニルエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリブチレングリコールモノヘプタデシルフェニルエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリブチレングリコールモノオクタデシルフェニルエーテル重縮合体。
【0032】
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリブチレングリコールモノウンデセニルフェニルエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリブチレングリコールモノドデセニルフェニルエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリブチレングリコールモノトリデセニルフェニルエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリブチレングリコールモノテトラデセニルフェニルエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリブチレングリコールモノペンタデセニルフェニルエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリブチレングリコールモノヘキサデセニルフェニルエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリブチレングリコールモノヘプタデセニルフェニルエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリブチレングリコールモノオクタデセニルフェニルエーテル重縮合体。
【0033】
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリブチレングリコールモノラウレートエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリブチレングリコールモノミリステートエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリブチレングリコールモノパルミテートエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリブチレングリコールモノステアレートエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリブチレングリコールモノベヘネートエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリブチレングリコールモノオレアートエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリブチレングリコールモノリノラートエーテル重縮合体、
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリブチレングリコールモノアラキダートエーテル重縮合体。
【0034】
半透膜支持体にフタル酸エステル系界面活性剤を含有させる方法として、以下が挙げられる。
(1)フタル酸エステル系界面活性剤を含有する合成繊維の使用。
(2)抄紙工程中でのフタル酸エステル系界面活性剤の添加。
(3)抄紙工程後の不織布への塗工、含浸、スプレー方式等によるフタル酸エステル系界面活性剤の付与。
【0035】
本発明において、合成繊維としては、主体合成繊維とバインダー合成繊維が挙げられる。主体合成繊維は、半透膜支持体の骨格を形成する繊維である。主体合成繊維としては、例えば、ポリオレフィン系、ポリアミド系、ポリアクリル系、ビニロン系、ビニリデン系、ポリ塩化ビニル系、ポリエステル系、ベンゾエート系、ポリクラール系、フェノール系等の繊維が挙げられるが、耐熱性の高いポリエステル系の繊維がより好ましい。また、半合成繊維のアセテート、トリアセテート、プロミックスや、再生繊維のレーヨン、キュプラ、リヨセル繊維等は性能を阻害しない範囲で含有しても良い。
【0036】
主体合成繊維の直径は、特に限定しないが、30μm以下であることが好ましい。主体合成繊維の直径が30μmを超えると、所望の半透膜の厚みを得るためには、大量のドープが必要となる場合や、ドープの裏抜けが発生する場合がある。また、不織布の表面で主体合成繊維が立ちやすくなり、半透膜を貫通して半透膜の性能が低下する場合がある。より好ましくは2~20μmであり、さらに好ましくは4~20μm、特に好ましくは6~20μmである。2μm未満の場合、ドープが半透膜支持体に浸透し難くなり、半透膜と半透膜支持体との接着強度が低くなる場合がある。
【0037】
主体合成繊維の繊維長は、特に限定しないが、好ましくは1~12mmであり、より好ましくは3~10mmであり、さらに好ましくは4~6mmである。主体合成繊維の断面形状は円形が好ましく、抄紙工程における水への分散前の繊維における断面アスペクト比(繊維断面長径/繊維断面短径)は、1.0~1.2未満であることが好ましい。繊維断面アスペクト比が1.2以上になると、繊維分散性が低下する場合や、繊維の絡まりやもつれの発生によって、半透膜支持体の均一性や塗布面の平滑性に悪影響を及ぼす場合がある。ただし、T型、Y型、三角等の異形断面を有する繊維も、裏抜け防止、表面平滑性のために、繊維分散性等の他の特性を阻害しない範囲内で含有できる。
【0038】
主体合成繊維のアスペクト比(繊維長/直径)は、200~1000であることが好ましく、より好ましくは220~900であり、さらに好ましくは280~800である。アスペクト比が200未満の場合は、繊維の分散性は良好となるが、抄紙の際に繊維が抄紙ワイヤーから脱落する場合や、抄紙ワイヤーに繊維が刺さって、抄紙ワイヤーからの剥離性が悪化する場合がある。一方、1000を超えた場合、繊維の三次元ネットワーク形成に寄与はするものの、繊維の絡まりやもつれの発生によって、半透膜支持体の均一性や塗布面の平滑性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0039】
本発明の半透膜支持体に係わる不織布に対して、主体合成繊維の含有量は、40~90質量%が好ましく、50~80質量%がより好ましく、60~75質量%がさらに好ましい。主体合成繊維の含有量が40質量%未満の場合、通液性が低下する恐れがある。また、90質量%を超えた場合、強度不足によって破れる恐れがある。
【0040】
本発明において、バインダー合成繊維の軟化点又は溶融温度(融点)以上まで温度を上げる工程を半透膜支持体の製造工程に組み入れることで、バインダー合成繊維が半透膜支持体の機械的強度を向上させる。例えば、半透膜支持体を湿式抄紙法で製造し、その後の乾燥工程でバインダー合成繊維を軟化又は溶融させることができる。
【0041】
バインダー合成繊維としては、芯鞘繊維(コアシェルタイプ)、並列繊維(サイドバイサイドタイプ)、放射状分割繊維等の複合繊維、未延伸繊維等が挙げられる。複合繊維は、皮膜を形成し難いので、半透膜支持体の空間を保持したまま、機械的強度を向上させることができる。より具体的には、ポリプロピレン(芯)とポリエチレン(鞘)の組み合わせ、ポリプロピレン(芯)とエチレンビニルアルコール(鞘)の組み合わせ、高融点ポリエステル(芯)と低融点ポリエステル(鞘)の組み合わせ、ポリエステル等の未延伸繊維が挙げられる。また、ポリエチレンやポリプロピレン等の低融点樹脂のみで構成される単繊維(全融タイプ)や、ポリビニルアルコール系のような熱水可溶性バインダーは、半透膜支持体の乾燥工程で皮膜を形成しやすいが、特性を阻害しない範囲で使用することができる。本発明においては、ポリエステルの未延伸繊維を好ましく用いることができる。
【0042】
バインダー合成繊維の直径は特に限定されないが、好ましくは2~20μmであり、より好ましくは5~15μmであり、さらに好ましくは7~12μmである。また、主体合成繊維と異なる直径であることが好ましい。主体合成繊維と直径が異なることで、主体合成繊維と共に均一な三次元ネットワークを形成する役割も果たす。
【0043】
バインダー合成繊維の繊維長は、特に限定しないが、好ましくは1~12mmであり、より好ましくは3~10mmであり、さらに好ましくは4~6mmである。バインダー合成繊維の断面形状は円形が好ましいが、T型、Y型、三角等の異形断面を有する繊維も、裏抜け防止、塗布面の平滑性、非塗布面同士の接着性のために、他の特性を阻害しない範囲内で含有できる。
【0044】
バインダー合成繊維のアスペクト比(繊維長/直径)は、200~1000であることが好ましく、より好ましくは300~800であり、さらに好ましくは400~700である。アスペクト比が200未満の場合は、繊維の分散性は良好となるが、抄紙の際に繊維が抄紙ワイヤーから脱落する恐れや、抄紙ワイヤーに繊維が刺さって、抄紙ワイヤーからの剥離性が悪化する恐れがある。一方、1000を超えた場合、バインダー合成繊維は三次元ネットワーク形成に寄与はするものの、繊維が絡まる恐れや、もつれの発生によって、不織布の均一性や塗布面の平滑性に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0045】
本発明の半透膜支持体に係わる不織布に対して、バインダー合成繊維の含有量は、10~60質量%が好ましく、20~50質量%がより好ましく、25~40質量%がさらに好ましい。上記範囲において、バインダー合成繊維の含有量を高めることによって、主体合成繊維の脱落や毛羽立ちを抑制することができる。バインダー合成繊維の含有量が10質量%未満の場合、強度不足により破れる恐れがあり、主体合成繊維を覆うための本数が不足し、繊維脱落が発生する場合がある。また、60質量%を超えた場合、通液性が低下する恐れがある。
【0046】
本発明の半透膜支持体の製造方法について説明する。本発明の半透膜支持体は、湿式抄紙法によってシートが作製された後に、このシートが熱ロールによって熱圧加工される。
【0047】
湿式抄紙法では、まず、合成繊維をパルパー等の分散装置で均一に水中に分散させる。その後、スクリーン(異物、塊等除去)等の工程を経て、白水(希釈水)で希釈し最終の繊維濃度を0.01~0.5質量%に調整されたスラリーが抄紙機で抄き上げられ、湿紙が得られる。希釈したスラリーを攪拌機にて攪拌することは、繊維束の単繊維化が促進し好ましい。繊維の分散性を均一にするために、工程中で、分散剤、消泡剤、親水剤、帯電防止剤、高分子粘剤、離型剤、抗菌剤、殺菌剤等の薬品を添加する場合もある。
【0048】
抄紙工程でフタル酸エステル系界面活性剤をスラリー中に添加してもよい。添加するタイミングは、抄紙機で抄き上げられる前であれば問わないが、合成繊維への付着が均一となることから、合成繊維を分散装置に投入する前が好ましい。フタル酸エステル系界面活性剤の含有量は、特に限定しないが、合成繊維の投入量に対して、0.1~5質量%が好ましく、より好ましくは0.3~3質量%である。
【0049】
抄紙方式としては、例えば、長網、円網、傾斜ワイヤー式等の抄紙方式を用いることができる。これらの抄紙方式の群から選ばれる一機の抄紙方式を有する抄紙機、これらの抄紙方式の群から選ばれる同種又は異種の2機以上の抄紙方式がオンラインで設置されているコンビネーション抄紙機を使用することができる。また、2層以上の多層構造の不織布を製造する場合には、各々の抄紙機で抄き上げた湿紙を積層する「抄き合わせ法」や、一方のシートを形成した後に、該シートの上に繊維を分散したスラリーを流延する「流延法」等を用いることができる。
【0050】
抄紙機で製造された湿紙を、ヤンキードライヤー、エアードライヤー、シリンダードライヤー、サクションドラム式ドライヤー、赤外方式ドライヤー等で乾燥することによって、原紙(シート)を得る。湿紙の乾燥の際に、ヤンキードライヤー等の熱ロールに密着させて熱圧乾燥させることによって、密着させた面の平滑性が向上する。熱圧乾燥とは、タッチロール等で熱ロールに湿紙を押し付けて乾燥させることを言う。熱ロールの表面温度は、100~180℃が好ましく、100~160℃がより好ましく、110~160℃がさらに好ましい。湿紙の熱ロールへの押し付け圧力は、好ましくは50~1000N/cm、より好ましくは100~800N/cmである。
【0051】
次に、熱ロールによる熱圧加工について説明するが、本発明は下記説明に限定されない。熱圧加工装置(カレンダー装置)において、ニップされているロール間にシートが通されることによって、シートが熱圧加工される。ロールの組み合わせとしては、2本の金属ロール、金属ロールと樹脂ロール、金属ロールとコットンロール等が挙げられる。2本のロールのうち、少なくとも一方のロールが加熱されて、熱ロールとして使用される。主に、金属ロールが熱ロールとして使用される。熱ロールによる熱圧加工は2回以上行うことも可能であり、その場合、直列に配置された2組以上の上記のロール組み合わせを使用しても良いし、1組のロール組み合わせを用いて、2回加工しても良い。必要に応じて、シートの表裏を逆にしても良い。熱ロールの表面温度、ロール間のニップ圧力、シートの加工速度を制御することによって、所望の半透膜支持体が得られる。
【0052】
熱圧加工における熱ロールの温度はバインダー合成繊維の融点に対して-50℃~-10℃の範囲内であることが好ましい。より好ましくは、-40℃~-15℃の範囲内であり、さらに好ましくは、-30℃~-15℃の範囲である。熱圧加工における熱ロールの温度がバインダー合成繊維の融点に対して-50℃を下回る場合、不織布の表面に、主体合成繊維が立ちやすくなり、半透膜を貫通して半透膜の性能が低下する場合や、非塗布面に裏抜けしたドープの量が多くなり、膜性能が低下する場合がある。一方、-10℃を超えた場合、熱ロールへの貼りつきが起きやすくなり、繊維が熱ロールに取られる場合や熱ロールに接した面の平滑性が低下する場合がある。
【0053】
熱圧加工におけるロールのニップ圧力は、好ましくは250~1700N/cmであり、より好ましくは450~1400N/cmである。ニップ圧力が250N/cm未満の場合、熱ロールとシートの密着が低くなり繊維の毛羽立ちが起こる場合がある。一方、1700N/cmを超えた場合、シートの密度が高まり通気性が低下し、ドープが浸透し難くなり、半透膜と半透膜支持体の接着性が低下する場合や、ロールへの過剰な負荷が増すことによって、1700N/cm以下の場合と比較して、ロール寿命を短くする場合がある。
【0054】
熱圧加工における加工速度は、好ましくは4~100m/minであり、より好ましくは10~80m/minである。速度が4m/min未満の場合、生産性が劣ると共にシートの密度が高まり通気性が低下し、ドープが浸透し難くなり半透膜と半透膜支持体の接着性が低下する場合がある。一方、100m/minを超えた場合、シートへの熱の伝達が不十分となり、繊維の毛羽立ちが発生する場合がある。
【0055】
熱圧加工の前後に、塗工、含浸又はスプレーによるフタル酸エステル系界面活性剤の半透膜支持体への付与を行ってもよい。半透膜支持体の表面平滑性が得られることから、塗工は熱圧加工前に行うのが好ましい。塗工方式は、エアーナイフコーター、ブレードコーター、グラビアコーター、バーコーター、カーテンコーター等の塗抹装置を用いることができる。スプレー方式は、エアスプレー方式、超音波スプレー方式、エレクトロスプレー方式等のスプレーコーターを用いることができる。フタル酸エステル系界面活性剤の固形分塗工量は、特に限定しないが、0.01~0.1g/m2が好ましく、より好ましくは0.02~0.05g/m2である。
【0056】
半透膜支持体の坪量は、特に限定しないが、20~150g/m2が好ましく、より好ましくは50~100g/m2である。20g/m2未満の場合は、十分な引張強度が得られない場合がある。また、150g/m2を超えた場合、通液抵抗が高くなる場合や厚みが増してユニットやモジュール内に規定量の半透膜を収納できない場合がある。
【0057】
また、半透膜支持体の密度は、0.5~1.0g/cm3であることが好ましく、より好ましくは0.6~0.9g/cm3である。半透膜支持体の密度が0.5g/cm3未満の場合は、厚みが厚くなるため、ユニットに組み込める半透膜の面積が小さくなってしまい、結果として、十分な通液性が得られなくなってしまうことがある。また、非塗布面に裏抜けしたドープの量が多くなり、膜性能が低下する場合がある。一方、1.0g/cm3を超える場合は、ドープが浸透し難くなり半透膜と半透膜支持体の接着性が低下する場合がある。
【0058】
半透膜支持体の厚みは、50~150μmであることが好ましく、60~130μmであることがより好ましく、70~120μmであることがさらに好ましい。半透膜支持体の厚みが150μmを超えると、ユニットに組み込める半透膜の面積が小さくなってしまい、結果として、十分な通液性が得られなくなってしまうことがある。一方、50μm未満の場合、十分な引張強度が得られない場合や通液性が低くなって、半透膜の寿命が短くなる場合がある。
【実施例0059】
本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。以下、特に断りの無い限り、実施例に記載される部及び比率は質量を基準とする。
【0060】
≪主体合成繊維≫
<延伸PET繊維1>
ポリエチレンテレフタレートからなる、直径7μm、繊維長5mmの、ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリエチレングリコールモノフェニルエーテル重縮合体が付着している延伸ポリエステル繊維を延伸PET繊維1とした。
【0061】
<延伸PET繊維2>
ポリエチレンテレフタレートからなる、直径8μm、繊維長5mmの、フタル酸エステル系界面活性剤が付着していない延伸ポリエステル繊維を延伸PET繊維2とした。
【0062】
≪バインダー合成繊維≫
<未延伸PET繊維1>
ポリエチレンテレフタレートからなる、直径12μm、繊維長5mmの、ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリエチレングリコールモノフェニルエーテル重縮合体が付着している未延伸ポリエステル繊維(融点:260℃)を未延伸PET繊維1とした。
【0063】
<未延伸PET繊維2>
ポリエチレンテレフタレートからなる、直径11μm、繊維長5mmの、フタル酸エステル系界面活性剤が付着していない未延伸ポリエステル繊維(融点:260℃)を未延伸PET繊維2とした。
【0064】
(原紙の製造1)
表1に示す原料配合比率[%]で繊維固形分5kgを1m3の水と共にパルパー(繊維分散タンク)に投入し、10分間混合分散し、希釈槽で白水(希釈水)を加えて0.1%に希釈してスラリーを調成し、傾斜/円網複合式抄紙機を用い、傾斜ワイヤー上で第二表面層の湿紙を形成し、円網上で第一表面層の湿紙を形成して、両湿紙を乾燥させる前に積層させた後に、表面温度130℃のヤンキードライヤーにて第二表面層が熱ロールに密着するように熱圧乾燥し、表1に示す坪量を目標にして、幅1000mmの実施例1~3、比較例1~2の湿式不織布(原紙)を得た。密着させた面の平滑性が向上したことから、第二表面層側の面を平滑面とし、第一表面層側の面を粗面とした。
【0065】
(原紙の製造2)
湿式抄紙用分散タンクのパルパーに1m3の水とポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリエチレングリコールモノフェニルエーテル重縮合体(分子量3,000~4,000)を25g(対繊維0.5%)入れて10秒間分散した。表1に示す原料配合比率で繊維固形分5kgを1m3の水と共にパルパー(繊維分散タンク)に投入し、10分間混合分散し、消泡剤を添加した後に、希釈槽で白水(希釈水)を加えて0.1%に希釈してスラリーを調成し、傾斜/円網複合式抄紙機を用い、傾斜ワイヤー上で第二表面層の湿紙を形成し、円網上で第一表面層の湿紙を形成して、両湿紙を乾燥させる前に積層させた後に、表面温度130℃のヤンキードライヤーにて第二表面層が熱ロールに密着するように熱圧乾燥し、表1に示す坪量を目標にして、幅1000mmの実施例4の湿式不織布(原紙)を得た。密着させた面の平滑性が向上したことから、第二表面層側の面を平滑面とし、第一表面層側の面を粗面とした。
【0066】
(原紙の製造3)
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリエチレングリコールモノフェニルエーテル重縮合体(分子量3,000~4,000)をポリエチレングリコールモノステアレートに変更した以外は実施例4の湿式不織布(原紙)と同じ方法で比較例3の湿式不織布(原紙)を得た。
【0067】
(原紙の製造4)
表1に示す原料配合比率で繊維固形分5kgを1m3の水と共にパルパー(繊維分散タンク)に投入し、10分間混合分散し、希釈槽で白水(希釈水)を加えて0.1%に希釈してスラリーを調成し、傾斜/円網複合式抄紙機を用い、傾斜ワイヤー上で第二表面層の湿紙を形成し、円網上で第一表面層の湿紙を形成して、両湿紙を乾燥させる前に積層させた後に、表面温度130℃のヤンキードライヤーにて第二表面層が熱ロールに密着するように熱圧乾燥し、表1に示す坪量を目標にして、幅1000mmの実施例5の湿式不織布(原紙)を得た。密着させた面の平滑性が向上したことから、第二表面層側の面を平滑面とし、第一表面層側の面を粗面とした。得られた原紙の平滑面に、ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリエチレングリコールモノフェニルエーテル重縮合体(分子量3,000~4,000)の1%水溶液を固形分塗工量0.02g/m2となるように塗工し、120℃で乾燥した。
【0068】
(原紙の製造5)
ポリエチレンテレフタレートイソフタレート・ポリエチレングリコールモノフェニルエーテル重縮合体(分子量3,000~4,000)をポリエチレングリコールモノステアレートに変更した以外は実施例4の湿式不織布(原紙)と同じ方法で比較例4の湿式不織布(原紙)を得た。
【0069】
【0070】
(熱カレンダー処理1)
第1ステージの熱ロール(金属ロール)と樹脂ロールの組み合わせのカレンダー装置を用いて、得られた実施例1、実施例3~5、比較例1、比較例3~4の原紙の粗面が熱ロールに接するように、熱ロールの表面温度235℃、ニップ圧力850N/cm、加工速度35m/minの条件で熱圧加工し、連続して、第1ステージでシートの熱ロールに接した面が、樹脂ロールに接するように第2ステージの樹脂ロールと熱ロール(金属ロール)の組み合わせのカレンダー装置を用いて、熱ロールの表面温度240℃、ニップ圧力850N/cm、加工速度35m/minの条件で熱圧加工を行い、実施例1、実施例3~5、比較例1、比較例3~4の半透膜支持体を得た。なお、最初に熱ロールに接した面を塗布面とした。
【0071】
(熱カレンダー処理2)
第1ステージの熱ロール(金属ロール)と樹脂ロールの組み合わせのカレンダー装置を用いて、得られた実施例2、比較例2の原紙の粗面が熱ロールに接するように、熱ロールの表面温度235℃、ニップ圧力800N/cm、加工速度35m/minの条件で熱圧加工し、連続して、第1ステージでシートの熱ロールに接した面が、樹脂ロールに接するように第2ステージの樹脂ロールと熱ロール(金属ロール)の組み合わせのカレンダー装置を用いて、熱ロールの表面温度240℃、ニップ圧力800N/cm、加工速度35m/minの条件で熱圧加工を行い、実施例2、比較例2の半透膜支持体を得た。なお、最初に熱ロールに接した面を塗布面とした。
【0072】
なお、本発明において、融点は、PERKIN ELMER社製示差走査熱分析装置DSC7を用いて、25~300℃まで、毎分10℃の昇温条件で測定した時の最大点の温度である。
【0073】
実施例及び比較例で得られた半透膜支持体に対して、以下の分析、測定及び評価を行い、結果を表2に示した。
【0074】
[分析:フタル酸エステル系界面活性剤]
上述した測定方法によって、各半透膜支持体がフタル酸エステル系界面活性剤を含有するか(含有)否か(非含有)を分析した。
【0075】
[測定:坪量]
JIS P8124:2011に準拠して、坪量を測定した。
【0076】
[測定:半透膜支持体の厚さ]
半透膜支持体の厚さは、JIS P8118:2014に準拠して測定した。
【0077】
[測定:半透膜支持体の密度]
密度は、下記式のとおり、坪量を厚さで除して算出した。
密度(g/cm3)=坪量(g/m2)/厚さ(μm)
【0078】
[評価:ドープ浸透率]
半透膜支持体内部へのドープ浸透率の評価に用いる半透膜の原料は、ポリスルホン系樹脂、ポリアミド系樹脂、フッ素系樹脂、セルロース系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂などの半透膜を形成する樹脂であればいずれでも良い。本発明では、ポリスルホン(商品名:P-3500LCD MB-7、ソルベイ社製)19質量部を、溶媒としてN,N-Dimethylformamide(DMF)(試薬特級、純正化学社製)81質量部に常温溶解したドープを調製し、一定のクリアランスを有する定速塗工装置(商品名:TQC全自動フィルムアプリケーター、コーテック社)を用いて、温度25℃、湿度50%RHの環境下で、ギャップを5milに調整したアプリケーター(No.510、ベーカー式アプリケーター、安田精機社製)にて、半透膜用半透膜支持体の塗布面に25℃のドープを塗工速度250mm/secで塗布し、20℃の導電率1μS/cm以下のイオン交換水で24時間水洗し、次に24時間の風乾を行い、半透膜支持体の塗布面上に半透膜を形成させ、濾過膜を作製した。
【0079】
乾燥した幅100mm×長さ100mmに断裁した濾過膜の質量A(g)を測定した後、濾過膜から半透膜の多孔質層(半透膜支持体への非浸透部)をテープ(ニトムズ社製、商品名:透明梱包用テープNo.3303 品番:J6030)で剥ぎ取り、半透膜支持体の質量B(g)を測定した。次に、半透膜支持体をDMFに浸漬し、半透膜支持体の内部に浸透している半透膜を溶解させた。その後、半透膜支持体をDMFから取り出し、乾燥させ、半透膜支持体の質量C(g)を測定した。
【0080】
半透膜の多孔質層(半透膜支持体への非浸透部)の質量D(g)は下記式より算出した。
質量D=質量A-質量B
【0081】
半透膜支持体内部へ浸透した半透膜の質量E(g)は下記式より算出した。
質量E=質量B-質量C
【0082】
ドープ浸透率(%)は下記式より算出した。
ドープ浸透率=[質量E/(質量D+質量E)]×100
【0083】
[評価:膜密度]
半透膜支持体の厚さX(μm)及び濾過膜(半透膜支持体を含めた半透膜)の全厚さY(μm)は、JIS P8118:2014に準拠して測定した。
【0084】
半透膜は、半透膜支持体に含浸した含浸層と、半透膜支持体の上に形成された半透膜層で構成される。半透膜支持体の上に形成された半透膜層の厚さZ(μm)は下記式より算出した。
半透膜層の厚さZ=濾過膜の全厚さY-半透膜支持体の厚さX
【0085】
半透膜の塗工量F(g/m2)は下記式より算出した。
塗工量F=(質量A-質量C)×100
【0086】
半透膜の膜密度は下記式より算出した。
膜密度(g/cm3)=塗工量F(g/m2)/半透膜層の厚さZ(μm)
【0087】
[評価:ドープ裏抜け]
ポリスルホン(商品名:P-3500LCD MB-7、ソルベイ社製)19質量部を溶媒としてDMF(試薬特級、純正化学社製)81質量部に常温溶解したドープを調製し、ドープに黒色の油性インキを混合した後、一定のクリアランスを有する定速塗工装置(商品名:TQC全自動フィルムアプリケーター、コーテック社)を用いて、半透膜用半透膜支持体の塗布面にドープを塗布する際に、半透膜支持体の下に台紙を敷いてドープを塗布し、半透膜支持体を貫通して台紙に浸み込んだドープの状態を観察し、ドープ裏抜け評価を行った。
【0088】
1:全く裏抜けしていない。非常に良好なレベル。
2:小さな点状で、ごくわずかに裏抜けしている。良好なレベル。
3:小さな点状で、裏抜けしている。使用上、問題無いレベル。
4:大きな点状で、多く裏抜けしている。
【0089】
[評価:膜接着強度]
一定のクリアランスを有する定速塗工装置(商品名:TQC全自動フィルムアプリケーター、コーテック社製)を用いて、半透膜支持体の塗布面にポリスルホン樹脂のDMF溶液(濃度:19%)を塗工し、水洗、乾燥を行い、半透膜支持体の塗布面にポリスルホン樹脂からなる半透膜を形成させ、濾過膜を作製した。作製した濾過膜を、濾過膜作製1日後、幅25mm(塗布方向に対してクロス方向)×長さ100mm(塗布方向)に断裁して試料とする。断裁した濾過膜の半透膜面全面に幅25mm、長さ100mmに切った両面テープ(ニチバン社製、商品名:ナイスタック(登録商標)NW-25)を貼り付け、半透膜支持体と両面テープが貼られた半透膜の界面で長さ30mmのみを剥離して残りの長さ70mmは剥がさずに残して試料とする(この時に両面テープの剥離紙は剥がさずに残しておく)。
【0090】
卓上型材料試験機(商品名:STA-1150、エー・アンド・デイ社製)を用いて、試料の剥離した部分の半透膜支持体と半透膜が貼り付いている両面テープ(剥離紙含む)をそれぞれチャックに固定して、つかみ長さ各25mm、引張速度100mm/分の条件で、未だ剥がしていない部分が剥離する時の荷重を60mm移動する間を連続で測定し、その間の平均荷重の2回平均値[N/25mm]を半透膜支持体と半透膜の接着強度とした。
【0091】
【0092】
実施例1~5の半透膜支持体は、半透膜支持体がフタル酸エステル系界面活性剤を含有しており、半透膜支持体内部へのドープの浸透が抑えられ、膜密度が高く、膜接着強度が高い半透膜を形成できた。比較例1~4の半透膜支持体は、半透膜支持体がフタル酸エステル系界面活性剤を含有しておらず、実施例1~5に対して、膜密度が低く、膜接着強度が低い半透膜が形成された。比較例2の半透膜支持体は、ドープ浸透率が高いため、膜接着強度は高まったが、ドープ裏抜けが多く膜密度が低かった。