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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022144657
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】シールデッドインダクタ
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/04 20060101AFI20220926BHJP
   H01F 27/24 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
H01F17/04 F
H01F27/24 J
H01F17/04 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021045760
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】000134257
【氏名又は名称】株式会社トーキン
(74)【代理人】
【識別番号】100117341
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 拓哉
(74)【代理人】
【識別番号】100148840
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 健志
(74)【代理人】
【識別番号】100191673
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 久典
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 嘉宏
(72)【発明者】
【氏名】古内 貴大
(72)【発明者】
【氏名】小野 裕司
【テーマコード(参考)】
5E070
【Fターム(参考)】
5E070AB08
5E070BB03
5E070DA05
(57)【要約】
【課題】改良されたシールデッドインダクタを提供する。
【解決手段】シールデッドインダクタ100は、コイル220及び磁気コア250を有するインダクタ200と、金属シールド300と、金属シールド300とインダクタ200との間に介在して金属シールド300のインダクタ200に対する悪影響を抑制する緩衝部材400とを備えている。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル及び磁気コアを有するインダクタと、
金属シールドと、
前記金属シールドと前記インダクタとの間に介在して前記金属シールドの前記インダクタに対する悪影響を抑制する緩衝部材と
を備えるシールデッドインダクタ。
【請求項2】
請求項1記載のシールデッドインダクタであって、
前記緩衝部材は、前記インダクタ上に設けられたスペーサと、前記スペーサ上に設けられた複合磁性部とを備えており、
前記スペーサは、非磁性且つ絶縁性の材料からなるものであり、
前記複合磁性部は、バインダと、前記バインダ内に分散配置された軟磁性粉末とを備えている
シールデッドインダクタ。
【請求項3】
請求項2記載のシールデッドインダクタであって、
前記スペーサの厚さtは、前記緩衝部材の厚さ方向における前記インダクタのサイズをSとすると、t≧S/50を満たしている。
シールデッドインダクタ。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれかに記載のシールデッドインダクタであって、
前記緩衝部材は、誘電部を有している
シールデッドインダクタ。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれかに記載のシールデッドインダクタであって、
前記磁気コアは、磁性粉末と、前記磁性粉末を結合する有機バインダとを有しており、
前記コイルは、前記磁気コア内に少なくとも部分的に埋設されている
シールデッドインダクタ。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれかに記載のシールデッドインダクタであって、
前記金属シールドはグランドされている
シールデッドインダクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールデッドインダクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、インダクタと、インダクタに取り付けられた金属シールドとを備えるシールデッドインダクタを開示している。特許文献1のシールデッドインダクタにおいて、金属シールドは、銅製であり、インダクタから発生した電磁界ノイズが他の電子部品へ影響を与えることを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6771585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、改良されたシールデッドインダクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の発明者らは、金属シールドをインダクタに取り付けると、電磁ノイズの高い抑制効果が得られることを確認した一方で、Q特性が悪化したり、共振周波数が意図せずシフトしてしまうといった問題が生じることに気づいた。更に、金属シールドとインダクタの間に複合磁性部や誘電部のような緩衝部材を介在させると、金属シールドの電磁界ノイズ抑制機能を発揮しつつ、金属シールドがインダクタに及ぼす影響を抑制することができることを見出した。本発明は、かかる知見に基づきなされたものであり、課題を解決するための手段として、具体的には以下に掲げるシールデッドインダクタを提供する。
【0006】
本発明は、第1のシールデッドインダクタとして、
コイル及び磁気コアを有するインダクタと、
金属シールドと、
前記金属シールドと前記インダクタとの間に介在して前記金属シールドの前記インダクタに対する悪影響を抑制する緩衝部材と
を備える
シールデッドインダクタを提供する。
【0007】
本発明は、第2のシールデッドインダクタとして、第1のシールデッドインダクタであって、
前記緩衝部材は、前記インダクタ上に設けられたスペーサと、前記スペーサ上に設けられた複合磁性部とを備えており、
前記スペーサは、非磁性且つ絶縁性の材料からなるものであり、
前記複合磁性部は、バインダと、前記バインダ内に分散配置された軟磁性粉末とを備えている
シールデッドインダクタを提供する。
【0008】
本発明は、第3のシールデッドインダクタとして、第2のシールデッドインダクタであって、
前記スペーサの厚さtは、前記緩衝部材の厚さ方向における前記インダクタのサイズをSとすると、t≧S/50を満たしている
シールデッドインダクタを提供する。
【0009】
本発明は、第4のシールデッドインダクタとして、第1から第3までのいずれかのシールデッドインダクタであって、
前記緩衝部材は、誘電部を有している
シールデッドインダクタを提供する。
【0010】
本発明は、第5のシールデッドインダクタとして、第1から第4までのいずれかのシールデッドインダクタであって、
前記磁気コアは、磁性粉末と、前記磁性粉末を結合する有機バインダとを有しており、
前記コイルは、前記磁気コア内に少なくとも部分的に埋設されている
シールデッドインダクタを提供する。
【0011】
本発明は、第6のシールデッドインダクタとして、第1から第5までのいずれかのシールデッドインダクタであって、
前記金属シールドはグランドされている
シールデッドインダクタを提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のシールデッドインダクタは、金属シールドを備えていることから高い電磁界ノイズの抑制機能を発揮できると共に、金属シールドとインダクタとの間に介在する緩衝部材を備えているため金属シールドからインダクタへの悪影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施の第1の形態によるシールデッドインダクタを示す断面図である。
図2】本実施の第2の形態によるシールデッドインダクタを示す断面図である。
図3】比較例1のインダクタを示す断面図である。
図4】比較例2のシールデッドインダクタを示す断面図である。
図5】比較例3のシールデッドインダクタを示す断面図である。
図6】比較例4のシールデッドインダクタを示す断面図である。
図7】比較例5のシールデッドインダクタを示す断面図である。
図8】比較例1のインダクタ及び比較例2,3のシールデッドインダクタにおけるノイズ減衰効果の周波数特性を示すグラフである。
図9】比較例1のインダクタ及び比較例2,3のシールデッドインダクタにおけるインピーダンスの周波数特性を示すグラフである。
図10】比較例1のインダクタ及び比較例2,3のシールデッドインダクタにおけるQ値の周波数特性を示すグラフである。
図11】実施例1のシールデッドインダクタ、比較例1のインダクタ及び比較例3,4のシールデッドインダクタにおけるノイズ減衰効果の周波数特性を示すグラフである。
図12】実施例1のシールデッドインダクタ、比較例1のインダクタ及び比較例3,4のシールデッドインダクタにおけるインピーダンスの周波数特性を示すグラフである。
図13】実施例1のシールデッドインダクタ、比較例1のインダクタ及び比較例3,4のシールデッドインダクタにおけるQ値の周波数特性を示すグラフである。
図14】インダクタンス変化割合Rと、緩衝部材の厚さ方向におけるインダクタのサイズSに対するスペーサの厚さtの割合との相関を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施の形態)
図1に示されるように、本発明の第1の形態によるシールデッドインダクタ100は、インダクタ200と、金属シールド300と、緩衝部材400とを備えている。
【0015】
(インダクタ)
図1に示されるように、本実施の形態のインダクタ200は、コイル220と、磁気コア250とを有している。
【0016】
(コイル)
図1に示されるように、本実施の形態のコイル220は、磁気コア250内に完全に埋設されている。なお、本発明はこれに限定されず、コイル220は、磁気コア250内に少なくとも部分的に埋設されていればよい。
【0017】
(磁気コア)
図1に示されるように、本実施の形態の磁気コア250は、分散ギャップを有するメタルコンポジットコアである。磁気コア250は、磁性粉末252と、磁性粉末252を結合する有機バインダ254とを有している。
【0018】
(磁性粉末)
図1を参照して、本実施の形態の磁性粉末252としては、軟磁性粉末が使用でき、特に、Fe粉末、Fe-Si合金粉末、Fe-Al合金粉末、Fe-Si-Al合金粉末(センダスト(登録商標))、非晶質合金粉末、ナノクリスタル、又はこれら2種以上の粉末の混合粉などが使用できる。Fe-Si合金粉末としては、例えば、Fe-6.5%Si合金粉末、Fe-3.5%Si合金粉末を使用できる。なお、本発明はこれに限定されず、磁性粉末252は、軟磁性粉末に限定されない。
【0019】
(有機バインダ)
図1を参照して、本実施の形態の有機バインダ254としては、熱硬化性樹脂、紫外線硬化樹脂、又は熱可塑性樹脂を使用することができる。熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂などが使用できる。紫外線硬化性樹脂としては、ウレタンアクリレート系、エポキシアクリレート系、アクリレート系、エポキシ系の樹脂を使用できる。
【0020】
(金属シールド)
図1を参照して、本実施の形態の金属シールド300の材質は、CuまたはAlである。なお、本発明はこれに限定されず、金属シールド300の材質は、Cu,Al以外の金属であってもよい。本実施の形態の金属シールド300は、グランドされていない。なお、本発明はこれに限定されず、金属シールド300は、グランドされていてもよい。金属シールド300は、上下方向において緩衝部材400の上方に位置している。
【0021】
(緩衝部材)
図1を参照して、本実施の形態の緩衝部材400は、金属シールド300とインダクタ200との間に介在して金属シールド300のインダクタ200に対する悪影響を抑制するものである。緩衝部材400は、インダクタ200上に設けられたスペーサ420と、スペーサ420上に設けられた複合磁性部450とを備えている。
【0022】
(スペーサ)
図1を参照して、本実施の形態のスペーサ420は、非磁性且つ絶縁性の材料からなるものである。具体的には、スペーサ420の材料としては、セラミック等、エポキシ、アクリル、ポリイミド等のプラスチック材料が挙げられる。より具体的には、スペーサ420の材料は、ポリエーテルイミドである。スペーサ420の厚さtは、緩衝部材400の厚さ方向におけるインダクタ200のサイズをSとすると、t≧S/50を満たしている。具体的には、スペーサ420の厚さtは、200μm以上である。なお、緩衝部材400の厚さ方向と、スペーサ420の厚さ方向とは、一致している。スペーサ420は、上下方向においてインダクタ200の上方に位置している。本実施の形態において、上下方向はZ方向である。また、上方は+Z方向であり、下方は-Z方向である。
【0023】
なお、本実施の形態のシールデッドインダクタ100と異なり、磁気コア250と複合磁性部450との間にスペーサ420が設けられていない場合、即ち、スペーサ420を設けずにインダクタ200の磁気コア250に、直接、複合磁性部450を貼りつけた場合、直流重畳特性が悪化する可能性がある。しかしながら、本実施の形態においては、磁気コア250と複合磁性部450との間にはスペーサ420が設けられているため、直流重畳特性の悪化が避けられている。
【0024】
(複合磁性部)
図1を参照して、本実施の形態の複合磁性部450は、複合磁性シートである。なお、本発明はこれに限定されず、複合磁性部450は、スペーサ420の上面に層状に形成されていてもよい。複合磁性部450は、上下方向においてスペーサ420の上方に位置している。金属シールド300は、上下方向において複合磁性部450の上方に位置している。複合磁性部450は、バインダ452とバインダ452内に分散配置された軟磁性粉末454とを備えている。
【0025】
(バインダ)
図1を参照して、本実施の形態のバインダ452は、特に限定されず、種々の結合剤を用いることができる。バインダ452として、例えば、アクリルゴム、アクリル酸アルキル共重合体等の(メタ)アクリル系ポリマー、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、シリコーンゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、エチレン・プロピレンゴム(EPM)、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、BTレジン、ポリアミドイミド、あるいはポリイミド等を利用することができる。バインダ452は、軟磁性粉末454を結合している。
【0026】
(軟磁性粉末)
図1に示されるように、本実施の形態の軟磁性粉末454は、扁平形状を有している。なお、軟磁性粉末454の形状は特に限定されないが、扁平形状であることが好ましく、複合磁性部450において、扁平形状の軟磁性粉末454の大半が、複合磁性部450の主面と概ね平行になるように向きを揃えて配列していることが望ましい。
【0027】
軟磁性粉末454の材質としては、磁性ステンレス(Fe-Cr-Al-Si系合金)、センダスト(登録商標)等のFe-Si-Al系合金、パーマロイ(Fe-Ni系合金)、ケイ素銅(Fe-Cu-Si系合金)、Fe-Si系合金、Fe-Si-B(-Cu-Nb)系合金、Fe-Ni-Cr-Si系合金、Fe-Si-Cr系合金、Fe-Si-Al-Ni-Cr系合金、Mo-Ni-Feやアモルファス合金等などが好ましい。特に、軟磁性粉末454の材質は、センダストがより好ましい。このような軟磁性粉末454は一種単独で用いても、または複数種組み合わせて用いても良い。特に、透磁率特性の向上においては、軟磁性粉末454は、磁化が大きい金属合金が望ましい。
【0028】
(第2の実施の形態)
図2に示されるように、本発明の第2の形態によるシールデッドインダクタ100Aは、インダクタ200と、金属シールド300Aと、緩衝部材400Aとを備えている。本実施の形態のシールデッドインダクタ100Aにおいては、上述した第1の実施の形態のシールデッドインダクタ100と実質的に同じ部位には同じ符号を付与し、詳細な説明を省略する。
【0029】
図2に示されるように、本実施の形態の緩衝部材400Aは、スペーサ420と、誘電部470とを有している。なお、本発明はこれに限定されず、緩衝部材400Aは、スペーサ420を有さなくてもよい。即ち、緩衝部材400Aは、誘電部470のみで構成されていてもよい。
【0030】
図2を参照して、本実施の形態の誘電部470の材質としては、セラミック等、エポキシ、アクリル、ポリイミド等のプラスチック材料等が挙げられる。また、誘電部470は、エアギャップであってもよく、非磁性の絶縁体であればよい。誘電部470は、上下方向においてインダクタ200の上方に位置している。
【0031】
図2を参照して、本実施の形態の金属シールド300Aの材質は、CuまたはAlである。なお、本発明はこれに限定されず、金属シールド300Aの材質は、Cu,Al以外の金属であってもよい。金属シールド300Aはグランドされている。なお、本発明はこれに限定されず、金属シールド300Aは、グランドされていなくてもよい。
【0032】
本発明によるシールデッドインダクタ100,100Aの構造は、以上に説明した実施の形態や変形例に限定されない。例えば、以上に説明した実施の形態や変形例は、様々に組み合わせることができる。
【0033】
以下、本発明について、実施例及び比較例を参照しつつ、更に詳しく説明する。
【0034】
本発明の実施例1~4のシールデッドインダクタ100、比較例1のインダクタ901及び比較例2~5のシールデッドインダクタ902,903,904,905を以下のように作製した。
【0035】
初めに、シールデッドインダクタ100の材料となる、インダクタ200と、金属シールド300と、緩衝部材400とを準備した。まず、磁性粉末252としてのFeSiCr合金軟磁性粉末と、有機バインダ254としてのフェノール系樹脂とを混合し、この混合物中に銅製のコイル220を埋没させたうえで、有機バインダ254を固化し、インダクタ200を作製した。作製されたインダクタ200は、所謂メタルコンポジットコアであり、緩衝部材400の厚さ方向におけるサイズSは、4mmであった。また、銅板から所定の形状を打ち抜いて、金属シールド300とした。更に、軟磁性粉末454としての扁平形状のセンダスト(登録商標)粉末と、バインダ452としてのアクリルゴムとを混合して粘性のあるスラリーを作製し、キャリアフィルム上に上記スラリーをドクターブレード法で塗布して乾燥し、乾燥後の塗膜をキャリアフィルムから剥離して、複合磁性部450を作製した。得られた複合磁性部450と、別途準備した、厚さ600μmのポリエーテルイミド製のスペーサ420とを接着して、緩衝部材400を作製した。最後に、金属シールド300、緩衝部材400及びインダクタ200が、この順で上から積層されるように互いに接着して、実施例1のシールデッドインダクタ100を作製した。
【0036】
また、厚さ200μmのポリエーテルイミド製のスペーサ420を用いる以外は上記と同様の方法により、実施例2のシールデッドインダクタ100を作製した。更に、厚さ400μmのポリエーテルイミド製のスペーサ420を用いる以外は上記と同様の方法により、実施例3のシールデッドインダクタ100を作製した。更に加えて、厚さ800μmのポリエーテルイミド製のスペーサ420を用いる以外は上記と同様の方法により、実施例4のシールデッドインダクタ100を作製した。
【0037】
図3を参照して、上述のインダクタ200のみで構成されたものを、比較例1のインダクタ901とした。また、図4を参照して、上述のインダクタ200及び金属シールド300のみを備えたシールデッドインダクタを、比較例2のシールデッドインダクタ902とした。更に、図5を参照して、上述のインダクタ200、金属シールド300及びスペーサ420のみを備えたシールデッドインダクタを、比較例3のシールデッドインダクタ903とした。加えて、図6を参照して、上述のインダクタ200、スペーサ420及び複合磁性部450のみを備えたシールデッドインダクタを、比較例4のシールデッドインダクタ904とした。更に加えて、図7を参照して、上述のインダクタ200、金属シールド300及び複合磁性部450のみを備えたシールデッドインダクタを、比較例5のシールデッドインダクタ905とした。
【0038】
作製された実施例1のシールデッドインダクタ100、比較例1のインダクタ901及び比較例2,3,4のシールデッドインダクタ902,903,904における、ノイズ減衰効果の周波数特性及びインダクタンスの周波数特性の測定を、定法に従って実施した。また、作製された実施例1のシールデッドインダクタ100、比較例1のインダクタ901及び比較例2,3,4のシールデッドインダクタ902,903,904におけるQ値の周波数特性を、JISで規格化されている並列共振法で測定した。更に、実施例1~4及び比較例5の100kHzにおけるインダクタンス測定値Lsと、比較例1の100kHzにおけるインダクタンス測定値L1から、インダクタンス変化割合R(%)を次式により算出した。
R(%)=(Ls-L1)/Ls*100 ・・・式
測定結果を図8図14に示す。
【0039】
図8は、金属シールド300を有さない比較例1のインダクタ200と、金属シールド300を有する比較例2,3のシールデッドインダクタ902,903における、ノイズ減衰効果の周波数特性を示している。この測定結果から、比較例2,3のノイズレベルは、比較例1のノイズレベルよりも全体的に低くなっていることが分かる。これにより、インダクタ200に金属シールド300を設けると、高い電磁ノイズ抑制効果が得られることが理解される。
【0040】
一方、図9は、金属シールド300を有さない比較例1のインダクタ200と、金属シールド300を有する比較例2,3のシールデッドインダクタ902,903における、インピーダンスの周波数特性を示している。この測定結果から、比較例2の共振周波数が、比較例1の共振周波数と比較して低周波数側にシフトしていることが分かる。即ち、インダクタ200にスペーサ420を介さずに金属シールド300を設けると、共振周波数がシフトしてしまう可能性があることが理解される。
【0041】
また、図10は、金属シールド300を有さない比較例1のインダクタ200と、金属シールド300を有する比較例2,3のシールデッドインダクタ902,903における、Q値の周波数特性を示している。この測定結果から、特に0.01~0.1MHzの周波数帯において、比較例2,3のQ値が比較例1のQ値よりも低くなっていることが分かる。即ち、インダクタ200に金属シールド300を設けると、Q特性が劣化してしまうことが理解される。
【0042】
図11は、実施例1のシールデッドインダクタ100、比較例1のインダクタ901及び比較例3,4のシールデッドインダクタ903,904における、ノイズ減衰効果の周波数特性を示している。この測定結果から、実施例1のノイズレベルは、比較例1,3,4のノイズレベルよりも全体的に低くなっていることが分かる。
【0043】
図12は、実施例1のシールデッドインダクタ100、比較例1のインダクタ901及び比較例3,4のシールデッドインダクタ903,904における、インピーダンスの周波数特性を示している。この測定結果から、実施例1及び比較例3,4の共振周波数は、比較例1の共振周波数と、ほぼ同じであることが分かる。
【0044】
図13は、実施例1のシールデッドインダクタ100、比較例1のインダクタ901及び比較例3,4のシールデッドインダクタ903,904における、Q値の周波数特性を示している。この測定結果から、特に0.01~0.1MHzの周波数帯において、実施例1のQ値は、比較例1のQ値とほぼ同じ値であり、比較例3,4のQ値は、比較例1のQ値と比較して大きく低下していることが分かる。
【0045】
即ち、図11図13に示される測定結果から、緩衝部材400としてスペーサ420と複合磁性部450とを備えた実施例1は、比較例3,4と比較して、高い電磁ノイズ抑制効果を有しつつ、共振周波数のシフトが抑制されており、且つ、Q特性の劣化も抑制されていることが理解される。
【0046】
図14は、実施例1~4及び比較例5における、インダクタンス変化割合R(%)を夫々プロットしたグラフである。ここで、t/S=15%は実施例1に対応し、t/S=5%は実施例2に対応し、t/S=10%は実施例3に対応し、t/S=20%は実施例4に対応し、t/S=0%は比較例5に対応している。これにより、スペーサ420の厚さtの増大に伴い、インダクタンス変化割合Rも小さくなっていく傾向が見られた。また、t/S=0%におけるインダクタンス変化割合Rが13%であるのに対し、t/S=5%におけるインダクタンス変化割合Rは6%となっており、t/S=5%におけるインダクタンス変化割合Rは、t/S=0%におけるインダクタンス変化割合Rの半分未満となっていることが分かった。これにより、t/Sが5%以上の場合、緩衝部材400のインダクタ200への貼り付けによるインダクタ200のインダクタンス変化を、t/S=0%、即ち、複合磁性部450が磁気コア250にスペーサ420を介さずに直接貼り付けられている場合と比較して、半分未満に抑制できることが分かった。
【符号の説明】
【0047】
100,100A シールデッドインダクタ
200 インダクタ
220 コイル
250 磁気コア
252 磁性粉末
254 有機バインダ
300,300A 金属シールド
400,400A 緩衝部材
420 スペーサ
450 複合磁性部
452 バインダ
454 軟磁性粉末
470 誘電部
901 インダクタ
902 シールデッドインダクタ
903 シールデッドインダクタ
904 シールデッドインダクタ
905 シールデッドインダクタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14