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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022014466
(43)【公開日】2022-01-20
(54)【発明の名称】導体劣化検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/90 20210101AFI20220113BHJP
【FI】
G01N27/90
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020116743
(22)【出願日】2020-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】村田 薫
(72)【発明者】
【氏名】石橋 賢一
(72)【発明者】
【氏名】中野 武
(72)【発明者】
【氏名】田澤 和俊
【テーマコード(参考)】
2G053
【Fターム(参考)】
2G053AA12
2G053AB21
2G053BA03
2G053BA14
2G053BC02
2G053BC14
2G053CA03
2G053DA01
2G053DB14
2G053DB21
2G053DB23
(57)【要約】
【課題】保持機構により保持された電線の外径違いによる幅方向のずれを抑制し、検出精度の低下を抑制することができる導体劣化検出装置を提供する。
【解決手段】導体劣化検出装置1は、被測定物である検査対象電線Wsに対して渦電流を発生させる励磁コイル10と、検査対象電線Wsに発生した渦電流による磁束を検出する検出コイル11と、励磁コイル10及び検出コイル11を収容する筐体4とを備える。筐体4は、検査対象電線Wsに対して、第1接点Gにて接触する検査基台5と、検査基台5との間で検査対象電線Wsを保持する保持機構6とを有する。保持機構6は、検査対象電線Wsに対して、第2接点H及び第3接点Iで接触する第1アーム部30と、保持位置と開放位置との間において、外力により第1アーム部30を回動軸23の回動方向に回動させる第2アーム部31とを有する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物に対して渦電流を発生させる励磁コイルと、
前記被測定物に発生した渦電流による磁束を検出する検出コイルと、
前記励磁コイル及び前記検出コイルを収容する筐体と、を備え、
前記筐体は、
非磁性材料で形成され、外径が異なる複数種類の前記被測定物に対して、第1接点にて接触する接触面を有する検査基台と、
前記被測定物が前記検査基台に接触している接触状態において、前記検査基台との間で前記被測定物を保持する保持機構と、を有し、
前記保持機構は、
回動軸を中心に回動自在に形成され、前記被測定物が前記保持機構により保持された保持状態において、前記被測定物の外周面に対して、第2接点及び第3接点で接触する第1アーム部と、
前記保持状態における保持位置と前記保持状態から前記被測定物を開放する開放位置との間において、外力により前記第1アーム部を前記回動軸の回動方向に回動させる第2アーム部と、を有し、
前記第2接点は、
前記保持状態において、前記回動軸の軸方向から見た場合、前記第1接点と前記被測定物の中心軸とを通る仮想線の回動軸側に配置され、
前記第3接点は、
前記保持状態において、前記回動軸の軸方向から見た場合、前記仮想線を挟んで前記回動軸と反対側に配置される、
ことを特徴とする導体劣化検出装置。
【請求項2】
被測定物に対して渦電流を発生させる励磁コイルと、
前記被測定物に発生した渦電流による磁束を検出する検出コイルと、
前記励磁コイル及び前記検出コイルを収容する筐体と、を備え、
前記筐体は、
非磁性材料で形成され、外径が異なる複数種類の前記被測定物に対して、第1接点にて接触する接触面を有する検査基台と、
前記被測定物が前記検査基台に接触している接触状態において、前記検査基台との間で前記被測定物を保持する保持機構と、を有し、
前記保持機構は、
回動軸を中心に回動自在に形成され、前記被測定物が前記保持機構により保持された保持状態において、前記被測定物の外周面に対して、第2接点及び第3接点で接触する第1アーム部と、
前記保持状態における保持位置と前記保持状態から前記被測定物を開放する開放位置との間において、外力により前記第1アーム部を前記回動軸の回動方向に回動させる第2アーム部と、を有し、
前記第2接点は、
前記保持状態において、前記回動軸の軸方向から見た場合、前記第1接点と前記被測定物の中心軸とを通る仮想線の回動軸側に配置され、
前記第3接点は、
前記保持状態において、前記回動軸の軸方向から見た場合、前記仮想線を挟んで前記回動軸と反対側に配置され、
前記検査基台上の前記接触面と前記回動軸との間の前記軸方向と直交する上下方向における距離は、
前記検査対象電線のうち最も外径が大きい大径電線が前記保持機構により保持された状態において、前記検査基台の前記接触面と前記大径電線の中心軸との間の前記上下方向における距離より短い、
ことを特徴とする導体劣化検出装置。
【請求項3】
前記第1アーム部は、
前記第2接点に対応する接触位置を有する第1保持面と、
前記回動軸の軸方向から見た場合、前記第1保持面より前記回動軸から遠くに設けられ、前記第3接点に対応する位置を有する第2保持面と、を有し、
前記第1保持面は、
前記回動軸の軸方向から見た断面形状が直線状であり、
前記第2保持面は、
前記回動軸の軸方向から見た断面形状が、前記保持状態で前記被測定物側と反対側に凹むように形成された湾曲状である、
請求項1または2に記載の導体劣化検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導体劣化検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電柱上に布設される絶縁被覆付き電線(以下、単に「電線」と呼ぶ。)は、外部からの水の浸入により内部の銅導体が腐食し、送電能力に影響することがある。電線の保守管理を行うためには、送電能力に影響する前に銅導体の腐食有無、または、腐食の程度を把握する必要がある。一方、非破壊で銅導体の腐食を検出する装置として、渦電流探傷法を用いた導体劣化検出装置が知られている(例えば特許文献1参照)。導体劣化検出装置は、励磁コイルと検出コイルとを有し、励磁コイルに交流電圧を印加して磁束を発生させることで銅導体に渦電流を発生させ、渦電流の磁束に基づく検出コイルの検出値により、電線の探傷を検出するものである。
【0003】
導体劣化検出装置により電柱上に布設された電線を検査する場合、作業者が高所に登り当該装置を電線に取り付けて電線の延在方向に移動させる作業を行うリスクを低減するため、例えばクランプ部と検出部とが一体化された検出装置が用いられる(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-132469号公報
【特許文献2】特開2015-186430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述の導体劣化検出装置では、例えば、検出コイルの中心軸の位置に対応する検出位置に対して、クランプ部で保持された電線が当該電線の幅方向にずれると検出コイルの出力値が低下し、検出精度に影響することがある。特に、外径が異なる複数種類の電線を検査対象とする場合、クランプ部で保持された電線の中心軸が、当該電線の外径の違いにより幅方向にずれるおそれがあることから、改善の余地がある。
【0006】
本発明は、保持機構により保持された電線の外径違いによる幅方向のずれを抑制し、検出精度の低下を抑制することができる導体劣化検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る導体劣化検出装置は、被測定物に対して渦電流を発生させる励磁コイルと、前記被測定物に発生した渦電流による磁束を検出する検出コイルと、前記励磁コイル及び前記検出コイルを収容する筐体と、を備え、前記筐体は、非磁性材料で形成され、外径が異なる複数種類の前記被測定物に対して、第1接点にて接触する接触面を有する検査基台と、前記被測定物が前記検査基台に接触している接触状態において、前記検査基台との間で前記被測定物を保持する保持機構と、を有し、前記保持機構は、回動軸を中心に回動自在に形成され、前記被測定物が前記保持機構により保持された保持状態において、前記被測定物の外周面に対して、第2接点及び第3接点で接触する第1アーム部と、前記保持状態における保持位置と前記保持状態から前記被測定物を開放する開放位置との間において、外力により前記第1アーム部を前記回動軸の回動方向に回動させる第2アーム部と、を有し、前記第2接点は、前記保持状態において、前記回動軸の軸方向から見た場合、前記第1接点と前記被測定物の中心軸とを通る仮想線の回動軸側に配置され、前記第3接点は、前記保持状態において、前記回動軸の軸方向から見た場合、前記仮想線を挟んで前記回動軸と反対側に配置される、ことを特徴とする。
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る導体劣化検出装置は、被測定物に対して渦電流を発生させる励磁コイルと、前記被測定物に発生した渦電流による磁束を検出する検出コイルと、前記励磁コイル及び前記検出コイルを収容する筐体と、を備え、前記筐体は、非磁性材料で形成され、外径が異なる複数種類の前記被測定物に対して、第1接点にて接触する接触面を有する検査基台と、前記被測定物が前記検査基台に接触している接触状態において、前記検査基台との間で前記被測定物を保持する保持機構と、を有し、前記保持機構は、回動軸を中心に回動自在に形成され、前記被測定物が前記保持機構により保持された保持状態において、前記被測定物の外周面に対して、第2接点及び第3接点で接触する第1アーム部と、前記保持状態における保持位置と前記保持状態から前記被測定物を開放する開放位置との間において、外力により前記第1アーム部を前記回動軸の回動方向に回動させる第2アーム部と、を有し、前記第2接点は、前記保持状態において、前記回動軸の軸方向から見た場合、前記第1接点と前記被測定物の中心軸とを通る仮想線の回動軸側に配置され、前記第3接点は、前記保持状態において、前記回動軸の軸方向から見た場合、前記仮想線を挟んで前記回動軸と反対側に配置され、前記検査基台上の前記接触面と前記回動軸との間の前記軸方向と直交する上下方向における距離は、前記検査対象電線のうち最も外径が大きい大径電線が前記保持機構により保持された状態において、前記検査基台の前記接触面と前記大径電線の中心軸との間の前記上下方向における距離より短い、ことを特徴とする。
【0009】
また、上記導体劣化検出装置において、前記第1アーム部は、前記第2接点を有する第1保持面と、前記回動軸の軸方向から見た場合、前記第1保持面より前記回動軸から遠くに設けられ、前記第3接点を有する第2保持面と、を有し、前記第1保持面は、前記回動軸の軸方向から見た断面形状が直線状であり、前記第2保持面は、前記回動軸の軸方向から見た断面形状が、前記保持状態で前記被測定物側と反対側に凹むように形成された湾曲状である、ものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る導体劣化検出装置によれば、保持機構により保持された電線の外径違いによる幅方向のずれを抑制し、検出精度の低下を抑制することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態に係る導体劣化検出装置の電線取付状態を示す斜視図である。
図2図2は、実施形態に係る導体劣化検出装置の機能的構成を示すブロック図である。
図3図3は、実施形態に係る導体劣化検出装置の概略構成を示す斜視図である。
図4図4は、実施形態に係る導体劣化検出装置の主要部の部分断面図である。
図5図5は、実施形態に係る導体劣化検出装置の大径電線取付状態を示す部分断面図である。
図6図6は、実施形態に係る導体劣化検出装置の中径電線取付状態を示す部分断面図である。
図7図7は、実施形態に係る導体劣化検出装置の小径電線取付状態を示す部分断面図である。
図8図8は、導体劣化検出装置における第1アーム部の回動軸と外径が異なる電線の各中心軸との位置関係を回動軸の軸方向から見た模式図である。
図9図9は、導体劣化検出装置における第2保持面の湾曲形状を説明するための模式図である。
図10図10(A)は、電線の幅方向のずれと導体劣化検出装置の出力値とのの関係を表に表した図、図10(B)は、電線の幅方向のずれと導体劣化検出装置の出力値の減衰率との関係をグラフに表した図である。
図11図11(A)及び図11(B)は、実施形態の変形例に係る導体劣化検出装置の概略構成を示す模式図である。
図12図12(A)及び図12(B)は、実施形態の変形例に係る導体劣化検出装置の概略構成を示す模式図である。
図13図13(A)及び図13(B)は、実施形態の変形例に係る導体劣化検出装置の概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る導体劣化検出装置の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、本実施形態により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。また、下記実施形態における構成要素は、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【0013】
[実施形態]
図1は、本実施形態に係る導体劣化検出装置の電線取付状態を示す斜視図である。図2は、導体劣化検出装置の機能的構成を示すブロック図である。図3は、導体劣化検出装置の概略構成を示す斜視図である。図4は、導体劣化検出装置の主要部の部分断面図である。図5は、導体劣化検出装置の大径電線取付状態を示す部分断面図である。図6は、導体劣化検出装置の中径電線取付状態を示す部分断面図である。図7は、導体劣化検出装置の小径電線取付状態を示す部分断面図である。図8は、導体劣化検出装置における第1アーム部の回動軸と外径が異なる電線の各中心軸との位置関係を回動軸の軸方向から見た模式図である。図9は、導体劣化検出装置における第2保持面の湾曲形状を説明するための模式図である。図10(A)は、電線の幅方向のずれと導体劣化検出装置の出力値とのの関係を表に表した図、図10(B)は、電線の幅方向のずれと導体劣化検出装置の出力値の減衰率との関係をグラフに表した図である。なお、図5図9図11(A)~図13(B)では、筐体4に収容される検出コイル11については省略されている。
【0014】
ここで、図1図9図11(A)~図13(B)を含む)のX方向は、本実施形態における導体劣化検出装置の幅方向である。Y方向は、本実施形態における導体劣化検出装置の奥行き方向であり、幅方向と直交する方向である。Z方向は、本実施形態における導体劣化検出装置の上下方向であり、幅方向及び奥行き方向と直交する方向である。なお、Z方向は、例えば、本実施形態における導体劣化検出装置の鉛直方向として説明し、Z方向のうちZ1方向を鉛直方向上側とし、Z2方向を鉛直方向下側とする。
【0015】
本実施形態に係る導体劣化検出装置1は、いわゆる渦電流探傷法(ECT:EddyCurrent Testing)を用いて、被測定物となる電線Wの導体W1の劣化を検出する検査装置である。電線Wは、導体W1と、導体W1を覆う絶縁被覆W2とを含んで構成される。導体W1は、導電性を有する複数の金属素線を束ねたり撚り合わせたりして構成される芯線である。絶縁被覆W2は、絶縁性を有する樹脂材料からなり、導体W1の外周面(外面)を覆い絶縁するものである。電線Wは、当該電線Wの延在方向と直交する方向の断面形状が略円形状に形成され、導体W1、絶縁被覆W2が電線Wの延在方向に沿ってほぼ同じ径で線状に延びるように形成される。導体劣化検出装置1は、励磁コイル10が発生させる磁界(磁束)によって当該電線Wの導体W1に渦電流を発生させ、検出コイル11が導体W1に発生する当該渦電流に応じた磁界(磁束)を検出することで、導体W1の劣化を検出する。
【0016】
導体劣化検出装置1によって検査する導体W1の劣化とは、導体W1の腐食であり、例えば、経年変化等によって発生する。以下の説明では、導体劣化検出装置1によって検査する電線Wは、例えば、電柱等を介して空中に架けられた架空配電線であるものとして説明するが、これに限らない。また、導体劣化検出装置1によって検査する電線Wは、外径が異なる複数種類の電線Wのうち検査対象となる検査対象電線Wsである。本実施形態では、例えば、検査対象電線Wsのうち最も外径が大きい大径電線Ws1の外径φD1をφ21とし、最も外径が小さい小径電線Ws3の外径φD3をφ9とし、大径電線Ws1と小径電線Ws3との間の中径電線Ws2の外径φD2をφ15として説明するが、これらに限らない。導体劣化検出装置1は、図2に示すように、検出部2と、電源部3とを備える。
【0017】
検出部2は、検査対象電線Wsにおける導体W1の劣化を検出する部分である。検出部2は、電源部3と電気的に接続され、電源部3から受電して駆動する。検出部2は、筐体4と、励磁コイル10と、検出コイル11とを備える。
【0018】
筐体4は、励磁コイル10及び検出コイル11が設けられる箱状の部材である。筐体4は、絶縁性を有する非磁性材料によって構成される。筐体4は、検査対象電線Wsの延在方向が長辺方向となる略直方体箱状に形成される。筐体4は、検査基台5と、保持機構6と、筐体本体7とを有する。筐体本体7は、内部が中空状に形成され、当該内部に励磁コイル10及び検出コイル11が収容される。筐体4は、検査対象電線Wsが空中にある場合、図1に示すように、検査対象電線Wsが保持機構6に保持された保持状態において、検査基台5に対して鉛直方向上側に配置される。
【0019】
励磁コイル10及び検出コイル11は、導電性を有する金属線(例えば銅線)を複数回、同心円状に巻いたものであり、リング状に形成される。励磁コイル10及び検出コイル11は、同一形状を有する。励磁コイル10及び検出コイル11は、図2に示すように、励磁コイル10の中心軸10aまたは検出コイル11の中心軸11aの軸方向から見た場合、一部が重なり合うように配置され、かつ延在方向に並べて保持される。励磁コイル10及び検出コイル11は、電源部3と電気的に接続される。励磁コイル10は、電源部3から交流電流が印加されることによって磁界(磁束)を発生させ、発生させた磁界によって導体W1に渦電流に応じた磁界の磁束変化により誘導電流が流れる。検出コイル11は、導体W1で発生した渦電流に応じた磁界の磁束変化により誘導電流が流れる。検出コイル11に生じた誘導電流は、電源部3に向けて流れる。
【0020】
電源部3は、励磁コイル10に対して交流電流を印加し、検出コイル11を流れる誘導電流に基づいて検出信号を出力する部分である。電源部3は、電源回路12と、発振回路13と、増幅回路14と、ノイズフィルタ15とを有する。電源部3は、信号分析装置16に電気的に接続される。
【0021】
電源回路12は、外部の交流電源(不図示)及び発振回路13に電気的に接続されており、例えば、発振回路13に給電を行う。発振回路13は、増幅回路14に電気的に接続されており、例えば、電源回路12からの給電に応じて、増幅回路14を介して励磁コイル10に交流電流を出力して励磁させ、磁界を発生させる。増幅回路14は、励磁コイル10と電気的に接続されており、例えば、発振回路13から出力される交流電流を増幅する。ノイズフィルタ15は、検出コイル11に電気的に接続され、検出コイル11で発生した誘導電流に基づく検出信号からノイズ成分を除去する。信号分析装置16は、例えば、スペクトルアナライザ、オシロスコープ等であり、検出コイル11からノイズフィルタ15を介して出力された検出信号の波形を表示する。作業者は、信号分析装置16に表示または出力される信号波形に基づいて検査対象電線Wsにおける導体W1の劣化有無を判定することができる。
【0022】
検査基台5は、筐体4の一部であって、検査対象電線Wsと接触する部分である。検査基台5は、筐体4の鉛直方向下側に設けられている。検査基台5は、接触面21と、案内部22と、回動軸23と、把持部24とを有する。
【0023】
接触面21は、鉛直方向下側に向けて形成され、検査対象電線Wsが保持機構6に保持された保持状態において、検査対象電線Wsと第1接点Gにて接触する部分である。第1接点Gは、検査対象電線Wsが保持機構6に保持された保持状態において、検査対象電線Wsの外周面と接触面21とが接触する接触点である。第1接点Gは、図4に示すように、検査対象電線Wsが保持機構6に保持された保持状態において、検出コイル11の中心軸11aと、検査対象電線Wsの中心軸Osとが直交するように配置されたときの仮想線P上に位置することが好ましい。
【0024】
案内部22は、上下方向のうち下方向に向けて凹状に形成され、回動軸23の軸方向から見た場合、保持機構6により保持される検査対象電線Wsを目標接触位置に向けて案内する部分である。ここで目標接触位置は、上記保持状態において、検査対象電線Wsの中心軸Osと励磁コイル10の中心軸10a及び検出コイル11の中心軸11aとが直交するように配置された検査対象電線Wsの外周面が接触する接触面21の第1接点Gに対応する接触位置である。案内部22は、具体的には、回動軸23の軸方向から見た断面形状がU字状であり、斜め下方向に向けて開口する。案内部22は、接触面21と平行に形成され、奥行き方向に向けて貫通する軸受用貫通孔22aを有する。
【0025】
回動軸23は、検査基台5から鉛直方向下側に突出して形成された案内部22の軸受用貫通孔22a(図4)に嵌入して、保持機構6を回動自在に軸支する。回動軸23の軸線方向は、導体劣化検出装置1の奥行き方向と平行である。
【0026】
把持部24は、案内部22の鉛直方向下側端部に連結され、鉛直方向下側に向けて延在して形成された部分である。把持部24は、作業者が導体劣化検出装置1を架空配電線に取り付ける際に、当該作業者が手指で一時的に把持する部分である。把持部24は、図1及び図3に示すように、ゴム製のロープ50が挿通する貫通孔24aを有する。ロープ50は、一方の端部が保持機構6の第2アーム部31に取り付けられている。ロープ50の他方の端部を作業者が把持して鉛直方向下側に向けて引くことで第2アーム部31が回動軸23を中心に開放位置から保持位置に回動する。保持位置は、検査対象電線Wsが保持機構6により保持された保持状態における第2アーム部31の位置である。開放位置は、当該保持状態から検査対象電線Wsが開放される第2アーム部31の位置である。ロープ50は、把持部24及び貫通孔24aと接触する範囲において、保護部材51により覆われている。
【0027】
保持機構6は、図5図7に示すように、検査基台5側に設けられており、検査対象電線Wsが検査基台5に接触している接触状態において、検査基台5との間で検査対象電線Wsを保持するものである。保持機構6は、第1アーム部30と、第2アーム部31とを有する。
【0028】
第1アーム部30は、回動軸23を中心に回動自在に形成され、検査対象電線Wsが保持機構6により保持された保持状態において、検査対象電線Wsの外周面に対して、第2接点H及び第3接点Iで接触する部分である。回動軸23は、例えば、絶縁性を有する樹脂材料からなり、細長い棒状部材であるヒンジピンにより構成される。すなわち、保持機構6は、ヒンジピンにより第1アーム部30を回動自在に支持する部分を含む。第1アーム部30は、回動軸23の軸方向(Y方向)から見た場合、L字状またはV字状に形成されており、一方の端部が第2アーム部31に連結されている。第1アーム部30及び第2アーム部31は、回動軸23の軸方向から見た場合、略S字状に形成される。
【0029】
第1アーム部30は、第1保持面32と、回動軸23の軸方向から見た場合、第1保持面32より回動軸23から遠くに設けられた第2保持面33とを有する。第1アーム部30は、検査対象電線Wsが保持機構6に保持された保持状態において、検査対象電線Wsの外周面と第1保持面32とが接触し、かつ当該外周面と第2保持面33とが接触する。したがって、検査対象電線Wsが保持機構6に保持された保持状態において、検査対象電線Wsの外周面と第1保持面32とが接触する接触点が第2接点Hである。一方、検査対象電線Wsが保持機構6に保持された保持状態において、検査対象電線Wsの外周面と第2保持面33とが接触する接触点が第3接点Iである。
【0030】
第1保持面32は、回動軸23の軸方向から見た断面形状が直線状である。一方、第2保持面33は、回動軸23の軸方向から見た断面形状が、検査対象電線Wsが保持機構6に保持された保持状態で検査対象電線Ws側と反対側に凹むように形成された湾曲状である。
【0031】
第2保持面33は、図9に示すように、回動軸23の軸方向から見た場合、例えばφ45.07の仮想円Vと外接するように形成される。外径が異なる検査対象電線Wsを、接触面21における目標接触位置で接触するように、形状が固定された第1アーム部30で保持するには、例えば、幾何学上、可動側の一辺または二辺の形状を円弧状にする必要がある。
【0032】
本実施形態では、一方を平面とし、他方を曲面とすることで、仮想線Pから検査対象電線Wsの中心軸Osがずれないように、検査対象電線Wsが保持機構6に保持された保持状態で検査対象電線Wsが検査基台5の接触面21における目標接触位置で接するようにしている。仮想円Uの大きさは、検査対象電線の外径、回動軸23の位置、第1保持面32または第2保持面33の角度、形状等により異なるが、外径φ21,φ15,φ9の各検査対象電線Wsと外接する円がφ45.07の仮想円Vとなる(図9)。第2接点Hは、対応する接触位置が、検査対象電線Wsが保持機構6に保持された保持状態において、回動軸23の軸方向から見た場合、第1接点Gと検査対象電線Wsの中心軸Osとを通る仮想線Pの回動軸23側に配置される。第3接点Iは、対応する接触位置が、検査対象電線Wsが保持機構6に保持された保持状態において、回動軸23の軸方向から見た場合、仮想線Pを挟んで回動軸23と反対側に配置される。検査対象電線Wsは、図5図7に示すように、外径の違いに関わらず、検査対象電線Wsが保持機構6に保持された保持状態において、検査基台5及び保持機構6により、第1接点G、第2接点H、及び第3接点Iの3点で3方向から保持される。
【0033】
第2アーム部31は、外力により第1アーム部30を回動軸23の回動方向に回動させる部分である。第2アーム部31は、第1アーム部30と同様に、回動軸23を中心に回動自在に形成されており、上述した保持位置と開放位置との間で回動する。第2アーム部31は、図1及び図3に示すように、回動軸23から離間する離間方向に沿って延在して形成されており、離間方向の端部を作業者が把持して当該第2アーム部31を回動させることができる。保持機構6は、第1アーム部30及び第2アーム部31を開放位置から保持位置に向かう回動軸回りに回動するように付勢するコイルばね35を有する。コイルばね35は、金属製のねじりコイルばねであり、内側にヒンジピンが配置される。コイルばね35は、一端が検査基台5側に係止され、他端が第2アーム部31側に係止される。
【0034】
本実施形態における導体劣化検出装置1では、図5に示すように、検査基台5上の接触面21と回動軸23との間の軸方向と直交する上下方向における距離T1は、大径電線Ws1が保持機構6により保持された状態において、検査基台5の接触面21と大径電線Ws1の中心軸Os1との間の上下方向における距離T2より短い。距離T1を距離T2より短く(T1<T2)設定した場合、図8に示すように、回動軸23と大径電線Ws1の中心軸Os1とを結ぶ線を半径とする仮想円Uに対して仮想線Pが略接し、かつ中心軸Os1,Os2,Os3が仮想円Uと略重なることから、回動軸23の軸方向から見た各検査対象電線Wsの保持位置の幅方向のズレを最小にすることが可能となる。例えば、大径電線Ws1が保持された保持状態において、回動軸23を通って接触面21に直交する仮想線Qと仮想線Pとの間の距離をL1とする(図5)。中径電線Ws2が保持された保持状態において、仮想線Qと仮想線Pとの間の距離をL2とする(図6)。小径電線Ws3が保持された保持状態において、仮想線Qと仮想線Pとの間の距離をL3とする(図7)。距離L1を基準とすると、上記構成において、T1<T2では、L2≒L1、L3≒L1となる。
【0035】
次に、導体劣化検出装置1による検査方法の一例について説明する。なお、導体劣化検出装置1は、上述したように、コイルばね35が保持機構6を開ける方向、すなわち回動軸23を中心として保持位置から開放位置に向かう方向に付勢するものとする。
【0036】
まず、作業者は、保持機構6が開いた状態で、導体劣化検出装置1における検出部2を検査対象電線Wsに引っ掛ける。検出部2を検査対象電線Wsに引っ掛ける場合、作業者は、例えば、電柱に登って把持部24を把持しながら、検査対象電線Wsを案内部22の開口を介して検査基台5に向けて挿入する。また、作業者が電柱に登ることなく地上で作業をする場合、例えば、一端が把持部24に連結された棒状部材を把持しながら、検査対象電線Wsを案内部22の開口を介して検査基台5に向けて挿入する。
【0037】
次に、作業者は、ロープ50を鉛直方向下側に向けて引くことで当該ロープ50の一端に接続された第2アーム部31を動かして保持機構6を閉じる。これにより、保持機構6は、回動軸23を中心として開放位置から保持位置に回動する。このとき、作業者は、ロープ50を手指によりたぐって直接引いてもよいが、ロープ50の他端に重りを接続することで当該重りによる鉛直方向下側への荷重を利用してロープ50を引いてもよい。
【0038】
次に、作業者は、所定の操作を行って電源部3により検出部2への通電を開始し、検査対象電線Wsに対する導体劣化検出を行う。このとき、作業者は、保持機構6を保持位置にて維持するようにロープ50を鉛直方向下側に向けて継続して引く。そして、作業者は、信号分析装置16に表示された信号波形等を見ながら、検査対象電線Wsの導体劣化有無を測定する。
【0039】
次に、作業者は、測定が終了したのち、鉛直方向下側に引っ張っていたロープ50を開放して保持機構6を開いた状態にする。これにより、保持機構6は、回動軸23を中心に保持位置から開放位置に回動して開放状態となる。つづいて、作業者は、検出部2が検査対象電線Wsに引っかかった状態で、かつ保持機構6が開いた状態を維持しながら、ロープ50を検査対象電線Wsの延在方向のいずれか一方に向けて引くことで導体劣化検出装置1を移動する。作業者は、導体劣化検出装置1を移動させた後に、上記作業により測定を行う。
【0040】
作業者は、測定を終了する場合、保持機構6が開いた状態で、検出部2を検査対象電線Wsから外す。検出部2を検査対象電線Wsから外す場合、作業者は、例えば、電柱に登って把持部24を把持しながら、検査対象電線Wsを検査基台5側から案内部22の開口を介して外部に出す。また、作業者が電柱に登ることなく地上で作業をする場合、例えば、一端が把持部24に連結された棒状部材を把持しながら、検査対象電線Wsを案内部22の開口を介して外部に出す。
【0041】
図10(A)は、検査対象電線Wsの幅方向のずれ[mm]に対する導体劣化検出装置の出力値(検出値)[mV]及び減衰率[%]の変化の一例を表に表した図である。図10(B)は、検査対象電線Wsの幅方向のずれと減衰率との関係の一例をグラフに表した図である。図10(A)において、検査対象電線Wsの幅方向のずれが0[mm]のときを基準位置、そのときの出力値12.6[mV]を基準値とし、2.5[mm]のときの出力値が10.5[mV]のとき、減衰率は、(12.6-10.5)/12.6≒0.16(16.7[%])となる。減衰率は、図10(B)に示すように、検査対象電線Wsが基準位置から幅方向にずれると一定の割合で上昇するが、ずれ量が5[mm]を越えると上昇する割合が低下する。このように、検査対象電線Wsが導体劣化検出装置1に保持された際の幅方向の位置ずれを抑制することで、検出値の低下を防止して導体劣化検出装置1の検出精度の低下を抑制することが可能となる。
【0042】
本実施形態における導体劣化検出装置1は、例えば、保持機構6により完全に保持された大径電線Ws1の位置から幅方向のずれを0[mm]とした場合、中径電線Ws2を保持したときの幅方向のずれは0.19[mm]となり、小径電線Ws3を保持したときの幅方向のずれは0.03[mm]となる。この結果、中径電線Ws2及び小径電線Ws3は、いずれも減衰率が1.3%以下となる。これにより、導体劣化検出装置1は、外径が異なる電線Wを検査対象とした場合に、保持機構6により保持された電線Wの幅方向のずれを抑制し検出値の低下を少なくすることで、導体W1の劣化有無の検出精度の低下を抑制することができる。
【0043】
以上説明したように、本実施形態における導体劣化検出装置1は、保持機構6が、検査対象電線Wsが検査基台5に接触し、かつ第1アーム部30が、保持状態にある検査対象電線Wsの外周面に対して、第2接点H及び第3接点Iで接触する。これにより、保持機構6により検査対象電線Wsを3点で保持することが可能となり、検査対象電線Wsを安定して保持することができる。
【0044】
第1アーム部30は、第2接点Hに対応する接触位置が、回動軸23の軸方向から見た場合、仮想線Pの回動軸23側に配置され、第3接点Iに対応する接触位置が、仮想線Pを挟んで回動軸23と反対側に配置される。これにより、第1接点Gに対して、第2接点H及び第3接点Iが偏った位置にならず、検査対象電線Wsを互いに異なる3方向から支持することが可能となり、検査対象電線Wsを安定して保持することができる。
【0045】
検査基台5上の接触面21と回動軸23との間の軸方向と直交する上下方向における距離T1は、大径電線Ws1が保持機構6により保持された状態において、検査基台5の接触面21と大径電線Ws1の中心軸Os1との間の上下方向における距離T2より短い。上記構成において、例えば、距離T1Aが距離T2より長く設定された場合、図8に示すように、仮想回動軸23Aと大径電線Ws1の中心軸Os1とを結ぶ線を半径とする仮想円UAに対して仮想線Pが接することなく交差し、かつ中心軸Os2,Os3が仮想円UAと重なる位置にないことから、回動軸23の軸方向から見た大径電線Ws1の保持位置と、中径電線Ws2及び小径電線Ws3の保持位置とは幅方向においてずれが生じる。例えば、保持機構6により完全に保持された大径電線Ws1の位置から幅方向のずれを0[mm]とした場合、中径電線Ws2を保持したときの幅方向のずれは2.53[mm]となり、小径電線Ws3を保持したときの幅方向のずれは4.76[mm]となる。
【0046】
一方、距離T1を距離T2より短く設定した場合、回動軸23と大径電線Ws1の中心軸Os1とを結ぶ線を半径とする仮想円Uに対して仮想線Pが略接し、かつ中心軸Os1,Os2,Os3が仮想円Uと略重なることから、回動軸23の軸方向から見た各検査対象電線Wsの保持位置の幅方向のズレを最小にすることが可能となる。このように、上記構成により、保持機構6により保持された検査対象電線Wsの外径違いによる幅方向のずれを抑制し、検出精度の低下を抑制することができる。
【0047】
また、本実施形態における導体劣化検出装置1は、第1アーム部30が、第2接点Hを有する第1保持面32の回動軸方向から見た断面形状が直線状であり、第3接点Iを有する第2保持面33の回動軸方向から見た断面形状が、湾曲状である。第1及び第2保持面32,33の回動軸方向から見た断面形状がいずれも直線状である場合、幾何学上、形状が固定された第1アーム部30により保持された検査対象電線Wsの外径の違いにより検査対象電線Wsが幅方向においてずれが生じる。一方、第2保持面33の回動方向から見た断面形状を湾曲状にすることで、外径が異なる検査対象電線Wsを保持する際に、基準位置に対する検査対象電線Wsの幅方向のずれを吸収することができる。第1保持面32と第2保持面33との間で形成される角度は、第2保持面33を平面とした場合、90°となることが好ましい。
【0048】
また、本実施形態における導体劣化検出装置1は、検査基台5における案内部22が、凹状に形成された部分の内側に挿入される検査対象電線Wsを接触面21に向けて案内するので、検査対象電線Wsと検査基台5との間の接触をスムーズに行うことが可能となる。
【0049】
また、本実施形態における導体劣化検出装置1は、空中にある検査対象電線Wsに対して検査を行う場合、筐体4が検査基台5に対して鉛直方向上側に配置される。これにより、第2アーム部31が下側を向くことから、鉛直方向下側から作業を行う作業者が当該第2アーム部31を直接的または間接的に容易に操作することが可能となる。
【0050】
上記実施形態では、ロープ50を単に把持部24の貫通孔24aに挿通させたものについて説明したが、これに限定されるものではない。図11(A)、図11(B)、図12(A)、図12(B)、図13(A)、及び図13(B)は、実施形態の変形例に係る導体劣化検出装置の概略構成を示す模式図である。なお、図12(A)及び図12(B)では、コイルばね35が省略されている。また、図11(A)~図12(B)に示すコイルばね35は、保持機構6を開ける方向、すなわち回動軸23を中心として保持位置から開放位置に向かう方向に付勢するものとする。図13(A)、図13(B)に示すコイルばね35は、保持機構6を閉じる方向、すなわち回動軸23を中心として開放位置から保持位置に向かう方向に付勢するものとする。
【0051】
実施形態の変形例に係る導体劣化検出装置1Aは、図11(A)~図12(B)に示すように、把持部24に対して、回動軸52aを中心に回動するロックカム52が設けられている。回動軸52aは、軸方向が回動軸23の軸方向と平行に配置される。ロックカム52は、保持機構6がコイルばね35の付勢力により回動軸23を中心に反時計回りに回動することから、ロープ50が鉛直方向上側に引っ張られ、当該ロックカム52とロープ50との接触面の摩擦力で回動軸52aを中心に時計回りに回動する(図11(A))。この結果、ロックカム52は、ロープ50を貫通孔24aの内周壁との間で挟んで、当該ロープ50を把持部24にロックする。
【0052】
検査対象電線Wsが保持機構6により保持された保持状態において、ロープ50が鉛直方向下側に引かれた場合(図11(B)の矢印方向)、保持機構6が回動せず、弾性体であるロープ50が鉛直方向下側に伸びるが弾性により鉛直方向上側に向けて反発する。これにより、ロックカム52は、ロープ50を貫通孔24aの内周壁との間で挟んでロープ50を把持部24に固定する(図12(A))。これにより、測定時に作業者がロープを常に鉛直方向下側に引っ張る必要がなくなり、作業負荷を軽減することができる。
【0053】
検査対象電線Wsを保持機構6から開放する場合、作業者は、ロープ50の引く必要がある。そこで、作業者は、ロープ50を鉛直方向下側に引きながら、引く方向を第2アーム部31の延在方向と略直交する方向に変えることで、ロックカム52のロックが外れて、ロープ50がフリーとなり、検査対象電線Wsが保持機構6から開放される(図12(B))。
【0054】
実施形態の変形例に係る導体劣化検出装置1Bは、図13(A)、図13(B)に示すように、把持部24に対して、回動軸53aを中心に回動するローラ53が設けられている。回動軸53aは、その軸方向が回動軸23の軸方向と平行に配置される。ローラ53は、貫通孔24aの内周壁における鉛直方向下側に配置され、ロープ50と貫通孔24aの内周壁との摺動を軽減するものである。ローラ53は、ロープ50の延在方向の移動に応じて回動する。
【0055】
作業者は、第2アーム部31を鉛直方向上側に押し上げることで保持機構6を開いた状態にして、検査対象電線Wsを案内部22の開口を介して検査基台5に向けて挿入する。このとき、ロープ50は、ローラ53により貫通孔24aの内周壁と摺動することなくスムーズに移動する。次に、作業者は、第2アーム部31を手離すとコイルばね35の付勢力により保持機構6が閉じる。そして、作業者は、ロープ50を鉛直方向下側に引くことで保持機構6を完全に閉じる。このとき、上述したように、ロープ50の他端に重りを接続すると、作業者がロープ50を常に引く必要がなく、作業負荷を軽減することができる。
【0056】
作業者は、測定が終了したのち、鉛直方向下側に引っ張っていたロープ50を開放し、第2アーム部31を第2アーム部31を鉛直方向上側に押し上げることで保持機構6を開いた状態にする。このように、ローラ53が回動することで、ロープ50を貫通孔24aの内周壁と摺動させることなくスムーズに移動させることができる。
【0057】
なお、上記実施形態では、筐体4は、検出部2として励磁コイル10及び検出コイル11を収容しているが、これに限定されるものではない。例えば、筐体4は、検出部2に加えて、電源部3を収容してもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 導体劣化検出装置
4 筐体
5 検査基台
6 保持機構
10 励磁コイル
11 検出コイル
21 接触面
22 案内部
23 回動軸
30 第1アーム部
31 第2アーム部
32 第1保持面
33 第2保持面
G 第1接点
H 第2接点
I 第3接点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13