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特開2022-144678車間距離判定装置および車間距離判定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022144678
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】車間距離判定装置および車間距離判定方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/16 20200101AFI20220926BHJP
   B60W 50/14 20200101ALI20220926BHJP
   F01P 11/14 20060101ALI20220926BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
B60W30/16
B60W50/14
F01P11/14 B
F01P11/14 C
G08G1/16 E
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021045791
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 亮
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA02
3D241BA41
3D241BA60
3D241BB22
3D241BC01
3D241BC02
3D241CC01
3D241CC08
3D241CC17
3D241DA67Z
3D241DB02Z
3D241DC02Z
3D241DC45Z
5H181AA01
5H181FF27
5H181FF32
5H181LL07
5H181LL08
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】追従走行の際の消費エネルギ量を抑制できる車間距離判定装置および車間距離判定方法を提供すること。
【解決手段】車間距離判定装置は、追従走行用として予め定められた複数の車間距離のそれぞれが取られた場合毎に、設定車速および走行風量に基づいて、車両で消費される消費エネルギ量を算出する算出部と、複数の車間距離のうち、算出された複数の消費エネルギ量の中で最も小さい消費エネルギ量に相当する車間距離を選択する選択部と、選択された車間距離に基づく追従走行が開始された後に車両の負荷の上昇が予測される場合、または、選択された車間距離が複数の車間距離のうちで最も短い場合、送風量を減少させるように冷却ファンを制御し、かつ、冷媒の流量を増加させるように流量調整装置を制御する制御部と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載装置の冷却に用いられる冷媒の流量を調整する流量調整装置と、送風により前記車載装置を冷却する冷却ファンとを備え、設定された車速に基づいて、設定された車間距離を保ちながら先行車両に追従走行する車両に搭載され、
追従走行用として予め定められた複数の車間距離のそれぞれが取られた場合毎に、前記設定された車速および前記車両が受ける走行風量に基づいて、前記車両で消費される消費エネルギ量を算出する算出部と、
前記複数の車間距離のうち、算出された複数の前記消費エネルギ量の中で最も小さい消費エネルギ量に相当する車間距離を、前記設定された車間距離として選択する選択部と、
前記選択された車間距離に基づく追従走行が開始された後に前記車両の負荷の上昇が予測される場合、または、前記選択された車間距離が前記複数の車間距離の中で最も短い場合、送風量を減少させるように前記冷却ファンを制御し、かつ、前記冷媒の流量を増加させるように前記流量調整装置を制御する制御部と、を有する、
車間距離判定装置。
【請求項2】
前記負荷の上昇を予測する予測部をさらに有し、
前記予測部は、
追従走行が行われる予定の道路の勾配に基づいて、登坂が予定されている場合、前記負荷が上昇すると予測する、
請求項1に記載の車間距離判定装置。
【請求項3】
前記算出部で算出される消費エネルギ量は、
前記冷却ファンの消費エネルギ量と、前記冷却ファン以外の装置の消費エネルギ量とを合計した値である、
請求項1または2に記載の車間距離判定装置。
【請求項4】
前記冷却ファンの消費エネルギ量は、
前記冷却ファン以外の装置を冷却するために必要な空気量と、前記車両が受ける走行風量との差である前記冷却ファンの風量に基づいて算出される、
請求項3に記載の車間距離判定装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記選択された車間距離に基づいて、前記追従走行が実行されるように前記車両の操舵、加減速、制動を制御する機能をさらに有する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の車間距離判定装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記選択された車間距離を示す情報を、前記追従走行が実行されるように前記車両の操舵、加減速、制動を制御する追従走行制御装置へ出力する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の車間距離判定装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記選択された車間距離を示す情報を、前記車両に搭載され、前記車両の乗員に対して前記情報を報知する報知装置へ出力する、
請求項1から6のいずれか1項に記載の車間距離判定装置。
【請求項8】
車載装置の冷却に用いられる冷媒の流量を調整する流量調整装置と、送風により前記車載装置を冷却する冷却ファンとを備え、設定された車速に基づいて、設定された車間距離を保ちながら先行車両に追従走行する車両で行われ、
追従走行用として予め定められた複数の車間距離のそれぞれが取られた場合毎に、前記設定された車速および前記車両が受ける走行風量に基づいて、前記車両で消費される消費エネルギ量を算出するステップと、
前記複数の車間距離のうち、算出された複数の前記消費エネルギ量の中で最も小さい消費エネルギ量に相当する車間距離を、前記設定された車間距離として選択するステップと、
前記選択された車間距離に基づく追従走行が開始された後に前記車両の負荷の上昇が予測される場合、または、前記選択された車間距離が前記複数の車間距離の中で最も短い場合、送風量を減少させるように前記冷却ファンを制御し、かつ、前記冷媒の流量を増加させるように前記流量調整装置を制御するステップと、を有する、
車間距離判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車間距離判定装置および車間距離判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、運転者の手動操作により、または、コンピュータ制御により、自車両を先行車両に追従させる走行(以下、追従走行という)が行われる場合がある。コンピュータ制御によって追従走行を実現する機能は、ACC(Adaptive Cruise Control)として知られている。一般的に、追従走行では、予め定められた車速に基づいて、予め定められた車間距離(自車両の先端と先行車両の後端との間の距離)を保ちながら自車両が先行車両に追従して走行する。
【0003】
なお、特許文献1には、追従走行を行った場合に燃費が悪化するか否かを判定する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-146858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
追従走行が行われる場合、車間距離に応じて、自車両が受ける走行風量(空気抵抗)は変わる。これにより、自車両で消費されるエネルギ量(以下、消費エネルギ量という。例えば、燃費、電費等)も変わる。よって、追従走行が行われる場合、消費エネルギ量を抑制することが望まれる。
【0006】
本開示の一態様の目的は、追従走行が行われる場合において消費エネルギ量を抑制することができる車間距離判定装置および車間距離判定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る車間距離判定装置は、車載装置の冷却に用いられる冷媒の流量を調整する流量調整装置と、送風により前記車載装置を冷却する冷却ファンとを備え、設定された車速に基づいて、設定された車間距離を保ちながら先行車両に追従走行する車両に搭載され、追従走行用として予め定められた複数の車間距離のそれぞれが取られた場合毎に、前記設定された車速および前記車両が受ける走行風量に基づいて、前記車両で消費される消費エネルギ量を算出する算出部と、前記複数の車間距離のうち、算出された複数の前記消費エネルギ量の中で最も小さい消費エネルギ量に相当する車間距離を、前記設定された車間距離として選択する選択部と、前記選択された車間距離に基づく追従走行が開始された後に前記車両の負荷の上昇が予測される場合、または、前記選択された車間距離が前記複数の車間距離の中で最も短い場合、送風量を減少させるように前記冷却ファンを制御し、かつ、前記冷媒の流量を増加させるように前記流量調整装置を制御する制御部と、を有する。
【0008】
本開示の一態様に係る車間距離判定方法は、車載装置の冷却に用いられる冷媒の流量を調整する流量調整装置と、送風により前記車載装置を冷却する冷却ファンとを備え、設定された車速に基づいて、設定された車間距離を保ちながら先行車両に追従走行する車両で行われ、追従走行用として予め定められた複数の車間距離のそれぞれが取られた場合毎に、前記設定された車速および前記車両が受ける走行風量に基づいて、前記車両で消費される消費エネルギ量を算出するステップと、前記複数の車間距離のうち、算出された複数の前記消費エネルギ量の中で最も小さい消費エネルギ量に相当する車間距離を、前記設定された車間距離として選択するステップと、前記選択された車間距離に基づく追従走行が開始された後に前記車両の負荷の上昇が予測される場合、または、前記選択された車間距離が前記複数の車間距離の中で最も短い場合、送風量を減少させるように前記冷却ファンを制御し、かつ、前記冷媒の流量を増加させるように前記流量調整装置を制御するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、追従走行が行われる場合において消費エネルギ量を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の実施の形態に係る車間距離判定装置の構成例を示すブロック図
図2】本開示の実施の形態に係る車間距離判定装置の動作例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず、本開示に至った知見について説明する。
【0012】
上述したとおり、追従走行が行われる場合では、車間距離(具体的には、自車両の先端と先行車両の後端との間の距離)に応じて、自車両が受ける走行風量(以下、単に走行風量ともいう)は変わるため、自車両における消費エネルギ量も変わる。
【0013】
具体的には、車間距離が短い場合では、走行風量が減少するため、冷却ファン以外の装置(例えば、駆動源)の消費エネルギ量が減少するが、冷却ファンの消費エネルギ量が増加する。その一方、車間距離が長い場合では、走行風量が増加するため、冷却ファンの消費エネルギ量が減少するが、冷却ファン以外の装置の消費エネルギ量が増加する。
【0014】
本開示では、追従走行が行われる場合において、消費エネルギ量の抑制を実現することを目的とする。
【0015】
次に、図1を用いて、本実施の形態の車間距離判定装置100の構成について説明する。図1は、車間距離判定装置100の構成例を示すブロック図である。
【0016】
図1に示す車間距離判定装置100は、例えば、自動車(乗用車でもよいし、商用車でもよい)に搭載される。本実施の形態では、車間距離判定装置100を搭載する自動車が、電動モータのみを駆動源とし、消費エネルギが電力のみである電気自動車である場合を例に挙げて説明する。また、以下の説明では、車間距離判定装置100を搭載する車両を「自車両」ともいう。
【0017】
また、自車両は、電動モータのほかに、冷却ファンおよびポンプを有する。冷却ファンおよびポンプは、電動である。電動モータは、冷却ファンの動作によって発生する送風、および、ポンプの動作によって自車両内に設けられた配管を循環する冷媒(例えば、冷却液)によって冷却される。
【0018】
以下では、電動モータの駆動のために消費される電力量を「電動モータ消費電力量」という。また、冷却ファンの駆動のために消費される電力量を「冷却ファン消費電力量」という。また、ポンプの駆動のために消費される電力量を「ポンプファン消費電力量」という。
【0019】
なお、電動モータは、「車載装置」の一例であり、「冷却ファン以外の装置」の一例である。また、ポンプは、冷媒の流量を調整する「流量調整装置」の一例である。なお、流量調整装置は、ポンプだけで実現される以外に、他の装置(例えば、電動式のバルブ)のみで実現されてもよいし、他の装置とポンプとの組み合わせで実現されてもよい。
【0020】
本実施の形態では、追従走行とは、自車両と先行車両との間に他の車両が走行してない状態で、自車両が先行車両に追従して走行することとする。また、本実施の形態では、自車両は、追従対象の先行車両と同じ車種(同じサイズ、同じ形状)であるとする。自車両と先行車両とが同じ車種であるという条件は、後述する第1設定データおよび第2設定データにおいて考慮されているとする。
【0021】
本実施の形態では、追従走行の開始前または実行中に、例えばユーザの操作により、車速が設定(指定または決定と言ってもよい)されるとする。設定された車速を以下「設定車速」という。設定車速は、車間距離判定装置100に通知される。
【0022】
本実施の形態では、追従走行時に用いられる車間距離として、互いに異なる2つの値を例に挙げて説明する。1つは「短車間距離」といい、もう1つは「長車間距離」という。長車間距離は、短車間距離より長い。よって、長車間距離が取られた場合では、短車間距離が取られた場合に比べて、自車両が受ける走行風量が大きくなる。なお、短車間距離および長車間距離はいずれも、安全要件(例えば、法規やガイドライン等に含まれる要件)を満たすものとする。
【0023】
なお、本実施の形態において、追従走行は、自車両の運転者の手動操作により行われてもよいし、自車両に搭載されるコンピュータ(追従走行が実行されるように自車両の操舵、加減速、制動等を制御する装置。以下、追従走行制御装置という)の制御により行われてもよい。なお、追従走行制御装置は、自車両の外部に設置されてもよい。
【0024】
車間距離判定装置100は、自車両が追従走行を行う場合において、消費電力量(消費エネルギ量の一例)を抑制可能な車間距離を判定(選択と言ってもよい)する装置である。
【0025】
図示は省略するが、車間距離判定装置100は、ハードウェアとして、例えば、CPU(Central Processing Unit)、コンピュータプログラムを格納したROM(Read Only Memory)、作業用メモリであるRAM(Random Access Memory)等を有する。以下に説明する車間距離判定装置100の各機能は、CPUがROMから読み出したコンピュータプログラムをRAMにて実行することにより実現される。車間距離判定装置100は、例えば、ECU(Electronic Control Unit)によって実現されてもよい。
【0026】
図1に示すように、車間距離判定装置100は、記憶部110、算出部120、選択部130、予測部140、および制御部150を有する。
【0027】
記憶部110は、例えば、第1設定データ、第2設定データ、第3設定データ、および第4設定データを記憶する。詳細は後述するが、第1~第3設定データは、算出部120によって用いられ、第4設定データは、制御部150によって用いられる。
【0028】
第1設定データは、短車間距離の場合と長車間距離の場合のそれぞれにおいて、車速毎に、空気抵抗(走行風量)を考慮して算出された電動モータ消費電力量が定められたデータである。
【0029】
具体的には、第1設定データでは、短車間距離の場合と長車間距離の場合のいずれにおいても、車速が大きくなるほど、電動モータ消費電力量が増加するように定められている。ただし、同じ車速であっても、長車間距離の場合の電動モータ消費電力量の方が、短車間距離の場合の電動モータ消費電力量よりも大きくなるように定められている。
【0030】
第2設定データは、短車間距離の場合と長車間距離の場合のそれぞれにおいて、車速毎に、走行風量が定められたデータである。
【0031】
具体的には、第2設定データでは、短車間距離の場合と長車間距離の場合のいずれにおいても、車速が大きくなるほど、走行風量が増加するように定められている。ただし、同じ車速であっても、長車間距離の場合の走行風量の方が、短車間距離の場合の走行風量よりも大きくなるように定められている。また、例えば短車間距離が自車両が走行風量をほぼ受けない距離である場合には、短車間距離の場合の走行風量は、どの車速であってもほぼゼロに定められている。
【0032】
第3設定データは、冷却ファンの風量(送風量と言ってもよい。以下、ファン風量という)毎に、冷却ファン消費電力量が定められたデータである。
【0033】
具体的には、第3設定データでは、ファン風量が大きくなるほど、冷却ファン消費電力量が大きくなるように定められている。
【0034】
第4設定データは、循環する冷媒の流量(以下、冷媒流量という)毎に、ポンプ消費電力量が定められたデータである。
【0035】
具体的には、第4設定データでは、冷媒流量が大きくなるほど、ポンプ消費電力量が大きくなるように定められている。
【0036】
第1~第4設定データは、例えば、予め実施されたシミュレーションまたは実験等に基づいて作成され、記憶部110に格納される。
【0037】
なお、第1~第4設定データの形式は、例えば、テーブルでもよいし、マップでもよいし、それら以外の形式でもよい。
【0038】
算出部120は、設定車速および第1設定データに基づいて、短車間距離が取られた場合における電動モータ消費電力量(以下、第1消費電力量という)と、長車間距離が取られた場合における電動モータ消費電力量(以下、第2消費電力量という)とを算出する。
【0039】
算出部120は、設定車速および第2設定データに基づいて、短車間距離が取られた場合における走行風量(以下、第1走行風量という)と、長車間距離が取られた場合における走行風量(以下、第2走行風量という)とを算出する。
【0040】
算出部120は、必要空気量を算出する。必要空気量とは、例えば、電動モータを冷却するために必要な空気量であり、走行風量とファン風量との合計値である。
【0041】
必要空気量の算出には、公知の方法を用いることができる。例えば、「SANYO DENKI Technical Report No.40 Nov. 2015」における「ファンの基礎と選定(使い方)」に開示された算出式を用いてもよいし、これ以外の算出方法を用いてもよい。
【0042】
算出部120は、必要空気量および第1走行風量に基づいて、短車間距離が取られた場合におけるファン風量(以下、第1ファン風量という)を算出する。また、算出部120は、必要空気量および第2走行風量に基づいて、長車間距離が取られた場合におけるファン風量(以下、第2ファン風量という)を算出する。
【0043】
具体的には、算出部120は、必要空気量から第1走行風量を差し引くことにより、第1ファン風量を算出する。また、算出部120は、必要空気量から第2走行風量を差し引くことにより、第2ファン風量を算出する。
【0044】
算出部120は、第1ファン風量、第2ファン風量、および第3設定データに基づいて、短車間距離が取られた場合における冷却ファン消費電力量(以下、第3消費電力量という)と、長車間距離が取られた場合における冷却ファン消費電力量(以下、第4消費電力量という)とを算出する。
【0045】
算出部120は、第1消費電力量および第3消費電力量に基づいて、短車間距離が取られた場合における合計消費電力量(以下、第1合計消費電力量という)を算出する。また、算出部120は、第2消費電力量および第4消費電力量に基づいて、長車間距離が取られた場合における合計消費電力量(以下、第2合計消費電力量という)を算出する。
【0046】
具体的には、算出部120は、第1消費電力量に第3消費電力量を加えることにより、第1合計消費電力量を算出する。また、算出部120は、第2消費電力量に第4消費電力量を加えることにより、第2合計消費電力量を算出する。
【0047】
なお、本実施の形態では、算出部120が第1~第3設定データを用いる場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、算出部120は、第1~第3設定データの代わりに、別のデータまたは公知の算出式を用いて、上記各種算出を行ってもよい。
【0048】
選択部130は、第1合計消費電力量と第2合計消費電力量とを比較し、値が小さい方に相当する車間距離を、追従走行に用いるための車間距離として選択する。すなわち、ここで選択された車間距離は、追従走行中(特に、勾配のない平坦な道路を追従走行する場合)において消費電力量を抑制できる最適な車間距離である。
【0049】
具体的には、選択部130は、第1合計消費電力量が第2合計消費電力量よりも小さい場合、第1合計消費電力量に相当する短車間距離を選択する。または、選択部130は、第2合計消費電力量が第1合計消費電力量よりも小さい場合、第2合計消費電力量に相当する長車間距離を選択する。
【0050】
以下の説明では、選択部130により選択された車間距離を「選択車間距離」ともいう。
【0051】
予測部140は、選択車間距離に基づく追従走行の開始後における自車両の負荷(以下、単に自車両の負荷という)を予測する。具体的には、予測部140は、選択車間距離に基づく追従走行が所定時間実行された後における自車両の負荷が、上昇するか、低下するか、または、変化無しかを予測する。
【0052】
例えば、予測部140は、追従走行が行われる予定の道路の勾配(以下、単に勾配ともいう)に基づいて、登坂が予定されている場合には、自車両の負荷が上昇すると予測し、降坂が予定されている場合には、自車両の負荷が低下すると予測し、登坂および降坂のいずれも予定されていない場合には、自車両の負荷は変化しない(変化無し)と予測する。
【0053】
なお、勾配は、例えば、地図情報(例えば、記憶部110に記憶されている)に定められた値でもよいし、または、予測部140(算出部120でもよい)により、現在位置の標高と、前方位置(現在位置から予め規定された距離離れた位置)の標高との比較に基づいて算出されてもよい。ここでいう標高は、例えば、地図情報に定められた値でもよい。
【0054】
なお、ここでは例として、自車両の負荷の予測が、走行予定の道路の勾配に基づいて行われる場合としたが、これに限定されず、他のパラメータ(例えば、走行予定の道路の混雑状況等)に基づいて行われてもよい。
【0055】
制御部150は、例えば予測部140により自車両の負荷の上昇が予測される場合、ファン風量を減少させるように冷却ファンを制御し、かつ、冷媒流量を増加させるようにポンプを制御する。この制御は、以下「冷却手段制御」ともいう。
【0056】
上述したとおり、選択車間距離が取られた場合のファン風量は決められている(例えば、上述した第1ファン風量または第2ファン風量)。冷却手段制御が実行された場合のファン風量(以下、制御後ファン風量という)は、選択車間距離が取られた場合のファン風量(例えば、第1ファン風量または第2ファン風量)よりも少ない値である。
【0057】
また、冷却手段制御が開始される際には、通常循環制御(例えば、電動モータを目標温度にするために必要な流量の冷媒を循環させる制御)は既に行われているとする。また、冷却手段制御は、その通常循環制御に加えて行われるとする。よって、冷却手段制御が実行された場合の冷媒流量(以下、制御後冷媒流量という)は、通常循環制御のみが実行された場合の冷媒流量(以下、通常冷媒流量という)よりも多い値である。
【0058】
冷却手段制御では、制御部150は、第3設定データおよび第4設定データに基づいて、制御後ファン風量が実現される冷却ファン消費電力量と、制御後冷媒流量が実現されるポンプ消費電力量との合計が、選択車間距離(例えば、短車間距離または長車間距離)が取られた場合の冷却ファン消費電力量(例えば、第3消費電力量または第4消費電力量)以下となるように、冷却ファンおよびポンプを制御する。
【0059】
ここで、選択車間距離が長車間距離である場合を例に挙げて説明する。また、第2ファン風量(上述したとおり、長車間距離が取られた場合のファン風量)よりも少ないファン風量を「ファン風量a」(制御後ファン風量の一例)といい、そのファン風量aが実現されるファン消費電力量を「消費電力量A」というとする。また、通常冷媒流量よりも多い冷媒流量を「冷媒流量b」(制御後冷媒流量の一例)といい、その冷媒流量bが実現されるポンプ消費電力量を「消費電力量B」というとする。また、所定の設定車速で長車間距離が取られた場合における自車両の走行風量を「走行風量x」という。
【0060】
この場合、制御部150は、消費電力量Aと消費電力量Bとの合計が第4消費電力量以下の範囲においてなるべく小さい値となるように、冷却ファンおよびポンプを制御する。さらに、制御部150は、必要空気量(ファン風量a+走行風量x)と冷媒流量bとにより低下させることができる温度が、必要空気量(第2ファン風量+走行風量x)により低下させることができる温度になるべく近い値となるように、冷却ファンおよびポンプを制御する。
【0061】
換言すれば、冷却手段制御とは、減少させた分のファン風量で実現される放熱を、冷媒を増加させることで補い、その際の冷却ファン消費電力量とポンプ消費電力量との合計が想定値(選択車間距離が取られ、かつ、冷媒流量を増加させなかった場合における冷却ファン消費電力量)以下の範囲においてなるべく小さくなるようにする制御である、と言える。
【0062】
なお、冷却手段制御は、現在の車間距離から選択車間距離に変更される前に開始されてもよいし、または、現在の車間距離から選択車間距離に変更された時点で開始されてもよい。
【0063】
また、制御部150は、選択部130により選択された車間距離、すなわち選択車間距離を示す情報(以下、車間距離情報という)を所定の装置へ出力してもよい。
【0064】
車間距離情報の出力先としては、例えば、上記追従走行制御装置、自車両に搭載された報知装置(例えば、車室内に設けられたディスプレイ、スピーカ等)、自車両の外部に設置された装置(例えば、自車両の管理センターで使用されるコンピュータ等)が挙げられる。
【0065】
例えば、車間距離情報が追従走行制御装置に出力された場合、追従走行制御装置は、その車間距離情報に示される車間距離が維持されるように、自車両の追従走行を制御する。これにより、消費電力量を抑制させた追従走行が実現される。
【0066】
また、例えば、車間距離情報が報知装置(例えば、ディスプレイ、スピーカ等)である場合、報知装置は、車間距離情報に示される車間距離の報知を行う。よって、自車両の乗員(例えば、運転者)は、選択された車間距離を把握することができる。よって、例えば、運転者の手動操作により追従走行が行われる場合には、運転者は、報知された車間距離を取るように、加減速操作を行うことができる。これにより、消費電力量を抑制させた追従走行が実現される。また、例えば、手動操作によらず、追従走行制御装置により追従走行が行われている場合、乗員は、追従走行に用いられる選択車間距離を事前に(現在の車間距離が変更される前に)知ることができる。
【0067】
なお、車間距離情報は、上述した複数の出力先に出力されてもよい。
【0068】
以上、車間距離判定装置100の構成について説明した。
【0069】
次に、図2を用いて、車間距離判定装置100の動作について説明する。図2は、車間距離判定装置100の動作例を示すフローチャートである。
【0070】
図2に示すフローチャートは、例えば、車間距離判定装置100が車間距離判定指示を受け付けたときに開始される。車間距離判定指示は、車間距離の判定を行う旨の指示であり、例えば、ユーザ(例えば、自車両の乗員)の操作によって行われてもよいし、追従走行制御装置によって行われてもよい。
【0071】
まず、算出部120は、設定車速および第1設定データに基づいて、第1消費電力量および第2消費電力量を算出する(ステップS1)。
【0072】
次に、算出部120は、設定車速および第2設定データに基づいて、第1走行風量および第2走行風量を算出する(ステップS2)。
【0073】
次に、算出部120は、必要空気量を算出する(ステップS3)。
【0074】
次に、算出部120は、必要空気量および第1走行風量に基づいて、第1ファン風量を算出し、必要空気量および第2走行風量に基づいて、第2ファン風量を算出する(ステップS4)。
【0075】
次に、算出部120は、第1ファン風量、第2ファン風量、および第3設定データに基づいて、第3消費電力量および第4消費電力量を算出する(ステップS5)。
【0076】
次に、算出部120は、第1消費電力量および第3消費電力量に基づいて、第1合計消費電力量を算出し、2消費電力量および第4消費電力量に基づいて、第2合計消費電力量を算出する(ステップS6)。
【0077】
次に、選択部130は、第1合計消費電力量と第2合計消費電力量を比較し、値が小さい方に相当する車間距離を選択する(ステップS7)。
【0078】
次に、予測部140は、自車両の負荷を予測する(ステップS8)。
【0079】
予測部140により自車両の負荷が上昇すると予測された場合(ステップS8:YES)、制御部150は、ファン風量を減少させるように冷却ファンを制御し、かつ、冷媒流量を増加させるようにポンプを制御する(ステップS9)。これにより、冷却ファンの動作により発生するファン風量は減少する一方で、ポンプの動作により循環する冷媒流量は増加する。
【0080】
予測部140により自車両の負荷が上昇しないと予測された場合(ステップS8:NO)、フローは終了する。
【0081】
なお、上述したフローの後、制御部150は、ステップS7で選択された車間距離を示す車間距離情報を所定の装置へ出力してもよい。
【0082】
また、上述したステップS1~S5の順序は、一例であり、図2の図示に限定されない。例えば、ステップS2とステップS3の順序は、逆であってもよい。また、例えば、ステップS2~S5の後で、ステップS1が行われてもよい。
【0083】
以上、車間距離判定装置100の動作について説明した。
【0084】
以上説明したように、本実施の形態の車間距離判定装置100は、設定車速で追従走行を行う場合において、短車間距離が取られた場合の合計消費電力量(冷却ファンの消費電力量+冷却ファン以外の装置(例えば、電動モータ)の消費電力量)と、長車間距離が取られた場合の合計消費電力量(冷却ファンの消費電力量+冷却ファン以外の装置(例えば、電動モータ)の消費電力量)とを算出し、それらを比較し、小さい方の合計消費電力量に相当する車間距離を選択することを特徴とする。さらに、車間距離判定装置100は、選択された車間距離に基づく追従走行が開始された後に自車両の負荷の上昇が予測される場合、送風量を減少させるように冷却ファンを制御し、かつ、冷媒の流量を増加させるようにポンプを制御することを特徴とする。これにより、追従走行が行われる場合において消費エネルギ量を精度良く抑制することができる。
【0085】
なお、本開示は、上記実施の形態の説明に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。以下、変形例について説明する。
【0086】
[変形例1]
実施の形態では、車間距離判定装置100を搭載する自動車(すなわち、自車両)が、電力のみを用いて走行する電気自動車であり、消費エネルギが電力のみである場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。
【0087】
例えば、自車両は、燃料(例えば、ガソリンまたは軽油等)を燃焼させる内燃機関のみを駆動源とする自動車であってもよいし、内燃機関と電動モータの両方を駆動源とする自動車であってもよい。
【0088】
それらの自動車では、内燃機関の駆動には燃料(消費エネルギの一例)が消費され、冷却ファンの駆動には電力(消費エネルギの一例)が消費される。よって、実施の形態で説明した最終的な比較に用いられる合計消費エネルギ量(実施の形態では、第1合計消費電力量、第2合計消費電力量)は、消費燃料量または消費電力量のいずれかに統一されることが好ましい。
【0089】
例えば、自車両が内燃機関のみを駆動源とする場合を例に挙げて説明する。その場合、実施の形態で説明した第1消費電力量、第2消費電力量に代えて、第1消費燃料量、第2消費燃料量を算出する。また、実施の形態で説明した第3消費電力量、第4消費電力量(ともに、冷却ファンの消費電力量)は、予め定められた換算比率に基づいて、第3消費燃料量、第4消費燃料量に換算する。そして、第1消費燃料量に第3消費燃料量を加えて第1合計消費燃料量を算出し、第2消費燃料量に第4消費燃料量を加えて第2合計消費燃料量を算出する。そして、第1合計消費燃料量と第2合計消費燃料量とを比較し、値が小さい方に相当する車間距離を選択する。
【0090】
よって、燃料および電力の両方を消費する自動車であっても、消費エネルギ量(消費燃料量+消費電力量)を抑制できる車間距離を選択することができる。
【0091】
[変形例2]
実施の形態では、選択対象となる車間距離が短車間距離と長車間距離の2つである場合を例に挙げて説明したが、3つ以上であってもよい。
【0092】
選択対象として追従走行用の車間距離が3つ以上定められている場合、車間距離判定装置100は、それぞれの車間距離が取られた場合に対応する合計消費エネルギ量を算出する。これにより、3つ以上の合計消費エネルギ量が算出される。そして、車間距離判定装置100は、3つ以上の車間距離のうち、3つ以上の合計消費エネルギ量の中で最も値が小さい合計消費エネルギ量に相当する車間距離を、追従走行に用いられる車間距離として選択する。
【0093】
[変形例3]
実施の形態では、合計消費電力量が、電動モータ消費電力量と冷却ファン消費電力量とに基づいて算出される場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。換言すれば、冷却ファン消費電力量以外に合計消費電力量に用いられる消費電力量は、電動モータのみの消費電力量に限定されない。
【0094】
例えば、電動モータ消費電力量の代わりに、冷却ファン以外の複数の装置の消費電力量を用いてもよい。複数の装置としては、上記電動モータ以外に、例えば、エアコンコンデンサ、電気回路、バッテリ、架装(例えば、冷凍機等)が挙げられるが、これらに限定されず、電力を消費する装置であればよい。
【0095】
[変形例4]
実施の形態では、車間距離判定装置100は、追従走行制御装置とは別体である場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。
【0096】
例えば、制御部150は、上述した冷却手段制御を実行する機能のほかに、上述した追従走行制御装置と同じ機能を有してもよい。すなわち、制御部150は、追従走行が実行されるように自車両の操舵、加減速、制動を制御する機能を有してもよい。
【0097】
[変形例5]
実施の形態では、冷却手段制御は、自車両の負荷の上昇が予測されることを条件として行われる場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、冷却手段制御は、車間距離が短縮される場合に行われてもよい。
【0098】
例えば、上記実施の形態において、選択部130により短車間距離が選択された場合、制御部150は、冷却手段制御を行ってもよい。
【0099】
また、例えば、選択対象として追従走行用の車間距離が3つ以上定められている場合(変形例2参照)では、制御部150は、選択部130により最も短い車間距離が選択された場合に、冷却手段制御を行ってもよい。
【0100】
また、例えば、選択部130により選択された車間距離が取られたときに、走行風量が予め定められた風量以下(例えば、ゼロに近い値等)となる場合に、制御部150は、冷却手段制御を行ってもよい。
【0101】
なお、本変形例では、自車両の負荷を予測する必要はないため、図1に示す構成要素から予測部140を省いてもよい。
【0102】
上述した変形例は、適宜組み合わせて実施されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本開示の車間距離判定装置および車間距離判定方法は、追従走行する場合に有用である。
【符号の説明】
【0104】
100 車間距離判定装置
110 記憶部
120 算出部
130 選択部
140 予測部
150 制御部
図1
図2