(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022144679
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】ブリケット原料粉体の混合方法およびブリケットの製造方法
(51)【国際特許分類】
C10L 5/14 20060101AFI20220926BHJP
B01F 23/60 20220101ALI20220926BHJP
B01F 35/90 20220101ALI20220926BHJP
【FI】
C10L5/14
B01F3/18
B01F15/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021045793
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105968
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】本多 光太郎
(72)【発明者】
【氏名】川畑 聡志
(72)【発明者】
【氏名】今西 大輔
【テーマコード(参考)】
4G035
4G037
4H015
【Fターム(参考)】
4G035AB48
4G035AE15
4G037CA01
4G037EA02
4H015AA10
4H015AA19
4H015AB01
4H015AB03
4H015BA01
4H015BA13
4H015BB03
4H015BB05
4H015BB09
4H015CA03
4H015CB01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ブリケット原料粉体とバインダーであるデンプンとを効率的に混合して成型し、ブリケット化することで、製鉄プロセスに適した強度が高くて粉化し難いブリケットが得られる、ブリケット原料粉体の混合方法およびブリケットの製造方法を提供する。
【解決手段】ブリケットの原料である粉体に、バインダーを、回転刃を有する混合機1を用いて混合する方法であって、混合された前記粉体とバインダーの混合体に蒸気を吹き込み、混合攪拌することを特徴とするブリケット原料粉体の混合方法である。さらに、蒸気の吹き込みは、混合機の上方から混合体中へ挿入した蒸気配管5先端の吐出口6から行い、吐出口の挿入深さは、混合機内に装入された当初の装入粉体上面Fと回転刃の最上回転面2’との間の中間点から回転刃の最上回転面間に在ることが好ましい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブリケットの原料である粉体にバインダーを、回転刃を有する混合機を用いて混合する方法であって、混合された前記粉体と前記バインダーの混合体に、蒸気を吹き込み混合攪拌することを特徴とするブリケット原料粉体の混合方法。
【請求項2】
前記蒸気の吹き込みは、前記混合機の上方から前記混合体中へ挿入した蒸気配管先端の吐出口から行い、前記吐出口の挿入深さ位置は、前記粉体と前記バインダーが前記混合機内に装入された当初の粉体上面と前記回転刃の最上回転面との間の中間点から前記回転刃の最上回転面間に在ることを特徴とする請求項1に記載のブリケット原料粉体の混合方法。
【請求項3】
前記蒸気配管先端の吐出口から前記蒸気を吹き込む際に、前記吐出口の蒸気吹き出し方向が、前記回転刃の回転方向に向いて配置され、かつ上下方向に45°以内のいずれかの角度を有することを特徴とする請求項1または2に記載のブリケット原料粉体の混合方法。
【請求項4】
前記原料である粉体が、石炭粉であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のブリケット原料粉体の混合方法。
【請求項5】
前記バインダーが、デンプンであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のブリケット原料粉体の混合方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載のブリケット原料粉体の混合方法により得られた混合物を、加圧成型することを特徴とするブリケットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製鉄プロセスで用いられるブリケットの原料粉体とバインダーの混合方法および得られた混合物を加圧成型するブリケットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄プロセスにおいては、様々な粉体原料をブリケット化し使用している。例えば、安価な低品位の鉄鉱石を破砕、選別して不純物を除去した後にブリケット化することで高品位原料としたり、粉状の石炭をブリケット化して成型炭とする、あるいは粉状の石炭と粉状の鉄鉱石をブリケット化してフェロコークスとするといったことも行われている。
【0003】
ブリケットは、破砕し粉末状にした原料粉体と、粉体同士を結合させる材料であるバインダーとを混合した後、成型機で加圧成型することにより製造される。製鉄プロセスで使用される石炭や鉄鉱石のブリケットでは、タールやピッチといったバインダーが使用されることが多いが、デンプンを利用する例もある。
【0004】
このようなブリケットは、搬送中の粉化を抑止するために一定以上の強度が必要とされる。ブリケットの強度を高めるためには、バインダーを増加することが効果的であるが、上記したバインダーは、一般的に高価であり、いたずらにバインダーの量を増やすことは処理費の高騰に繋がるため好ましくない。一方、比較的安価なバインダーであるβデンプンを使用する場合は、βデンプンが非水溶性であるため粘結力が弱くブリケットの強度が非常に弱いという問題があった。そこで、βデンプンをバインダーとして使用した場合のブリケットの強度を向上させるために様々な方法が提案されている。
【0005】
従来、βデンプンをバインダーとして用いたブリケットの強度を向上させる方法としては、非特許文献1に、βデンプンに苛性ソーダを混ぜてβデンプンを糊化し粘結力を向上させブリケット強度を向上させるという方法が提案されている。しかし、苛性ソーダは、人体に有害であり取扱いには作業衛生上のリスクがある。また、触媒作用を持つナトリウムがブリケット内に混合するので、例えば成型炭の製造に使用した場合、ブリケットから製造したコークスの反応性が過剰に上昇するという問題もある。
【0006】
また、粉状の炭を成型する方法として、特許文献1には、粉炭とデンプン粉を混合し加熱した後にシート状に成型した炭シートが開示されている。しかし、本願の対象とする粉状の石炭は、粒径が10mm以下程度の粒度を有するため、この方法では、混練が不十分となり易く、石炭をブリケットとしたときに、その場合強度が不十分でかつバラつきが非常に大きくなるという問題がある。さらに混合に際し、水を使うことで混合物の含有水分が上昇するため、その後、混合物を乾留するプロセスには適さない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】高橋礼治、山本正樹、"苛性ソーダ中におけるデンプンの挙動"、澱粉工業学会誌、第17巻、第3号、pp.289-293、1969
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上のように、製鉄プロセスにおいて、バインダーとしてデンプンを使用してブリケットを製造する従来の方法では、十分な強度を有するブリケットを得ることが困難であるという問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、ブリケット原料粉体とバインダーであるデンプンとを、効率的に混合して、成型しブリケット化することで、製鉄プロセスに適した、強度が高くて粉化し難いブリケットが得られるブリケット原料粉体の混合方法およびブリケットの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討し、その結果、最初に未加熱状態でデンプンと原料粉体を混合し、次に蒸気により加熱状態でデンプンと原料粉体を混合する工程を有する方法が有効であることを見出した。さらに、蒸気を送り込む配管(蒸気配管)の吐出口(吹き出し口)の原料粉体中への挿入深さと吐出口の蒸気吹き出し方向を最適化した蒸気吹き込み方法を見出した。この蒸気吹き込み方法は、蒸気配管の吐出口を粉体混合機の回転する回転刃(攪拌羽根)に極力隣接させることにより、粉体混合物と蒸気の接触機会を最大限設け、バインダーであるデンプンの糊化温度到達までの時間を短縮することができ、さらに、前記吐出口の吹き出し方向を前記回転刃の回転方向に向いて配置し、かつ上下方向に45°以内の角度を有することで、より効率的に蒸気接触が起こることを知見した。
【0012】
本発明は、以上の知見に基づきなされたもので、その要旨は以下の通りである。
〔1〕ブリケットの原料である粉体にバインダーを、回転刃を有する混合機を用いて混合する方法であって、混合された前記粉体と前記バインダーの混合体に、蒸気を吹き込み混合攪拌することを特徴とするブリケット原料粉体の混合方法。
〔2〕〔1〕において、前記蒸気の吹き込みは、前記混合機の上方から前記混合体中へ挿入した蒸気配管先端の吐出口から行い、前記吐出口の挿入深さ位置は、前記粉体と前記バインダーが前記混合機内に装入された当初の粉体上面と前記回転刃の最上回転面との間の中間点から前記回転刃の最上回転面間に在ることを特徴とするブリケット原料粉体の混合方法。
〔3〕〔1〕または〔2〕において、前記蒸気配管先端の吐出口から前記蒸気を吹き込む際に、前記吐出口の蒸気吹き出し方向が、前記回転刃の回転方向に向いて配置され、かつ上下方向に45°以内のいずれかの角度を有することを特徴とするブリケット原料粉体の混合方法。
〔4〕〔1〕ないし〔3〕のいずれか一つにおいて、前記原料である粉体が、石炭粉であることを特徴とするブリケット原料粉体の混合方法。
〔5〕〔1〕ないし〔4〕のいずれか一つにおいて、前記バインダーが、デンプンであることを特徴とするブリケット原料粉体の混合方法。
〔6〕〔1〕ないし〔5〕のいずれか一つに記載のブリケット原料粉体の混合方法により得られた混合物を、加圧成型することを特徴とするブリケットの製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、十分な強度を有するブリケットを得ることができ、さらに、蒸気配管吐出口の挿入深さと蒸気の吹き出し方向を最適化することで、加熱混合時間を最短とし、蒸気使用量も最小にすることができ、ブリケットの製造における設備コストや運転費を抑止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】ヘンシェル型混合機と蒸気配管の配置の一例を示す概略断面図である。
【
図2】原料粉体の混合状態と蒸気配管の配置位置の一例を示す概略断面図である。
【
図3】ヘンシェル型混合機の内部構造を示す斜視図である。
【
図4】蒸気配管吐出口と回転刃との位置関係を示す3方向からの概略断面図である。
【
図5】蒸気配管吐出口の上下方向の向きを示す概略断面図である。
【
図6】糊化温度到達までに要した蒸気流量原単位と挿入深さの関係を示す相関図である。
【
図7】蒸気配管吐出口の吹き出し方向の向きと蒸気流量との関係を示す推移図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、バインダーとしてデンプンを使用した製鉄プロセスで用いられる成型炭ブリケットの製造方法を例に説明するが、本発明は、成型炭ブリケットのみならず、鉱石粉ブリケット、鉱石粉と石炭粉の混合ブリケット、あるいは転炉投入ダストブリケットなどの製造方法にも適用することができる。
【0016】
[粉体の混合方法および混合機]
本発明の原料粉体の混合方法を、
図1に示すような回転刃2を有するヘンシェル型と呼ばれる混合機1を使用した場合について説明する。ただし、本発明の実施に際しては、ヘンシェル型混合機ではなくとも、竪型パドル式などの粉体を回転させて混合するものであって、回転軸が縦軸(鉛直方向)で、蒸気による加熱をすることができればどのような混合機を用いても良い。
【0017】
図1では回転刃2を上下方向に2段有する形態を示しているが、1段あるいは3段以上有する形態であってもよい。この回転刃2は、混合攪拌するための羽根(「攪拌羽根」ともいう。)であって、2枚の羽根が回転軸3に対して相対する位置に取り付けられているが、羽根の枚数は、特に制限はなく1枚あるいは3枚以上であっても良い。また、2枚刃の強度を保つために、2枚の羽根の途中を円形状につないだ補助部材を取り付けても良い。回転刃の回転速度が小さすぎると装入粉体全体を混合することができない。また回転速度が大きすぎると、装入粉体が粉体混合機から飛び出してしまうこともある。攪拌羽根の先端部の周速が5~40m/s程度で混合攪拌することが好ましい。
【0018】
混合機1の内容積は、特に限定されるものではなく、75L程度の小型のものから4000L以上の大型のものなどと適宜使用することができる。
【0019】
[粉体]
原料となる粉体としては、石炭粉、鉱石粉、その他転炉投入ダストなどの粉体が挙げられるが、製鉄プロセスの成型炭ブリケットの製造においては、石炭粉を用いるのが好ましい。石炭粉の粒径は、特に限定されないが、細かいものほどブリケットの強度が向上するので好ましく、10mm未満が90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましい。なお、粒径が10mm未満が90質量%未満の石炭粉を用いる場合には、粉砕するか、又は別の細かい粒度の石炭粉と混合して上記粒径範囲となるように調整してもよい。
【0020】
[バインダー]
粉体に混合するバインダーとしては、種々の材料を用いることができるが、本実施態様の成型炭ブリケットの製造方法に使用するバインダーとしては、デンプンを用いることが好ましい。
【0021】
デンプンの種類は、特に限定されず、タピオカ、じゃがいも、さつまいも、とうもろこし、米、小麦などの原料植物から製造されたデンプンが適宜使用でき、また、植物由来のデンプンを加工したデンプン誘導体や化学合成したデンプンなども使用することができる。これらのデンプンの中では、糊化温度が比較的高いタピオカ由来のデンプンを用いるのが好ましい。
【0022】
なお、デンプンには、糊化(α化)した糊状のαデンプンとα化前のβデンプンとがあるが、前述したように、本発明においては、安価なβデンプンを用いるのが好ましい。
【0023】
[混合割合]
バインダーであるデンプンを石炭粉へ混合する割合は、石炭粉とデンプンとの合計に対して質量比率で、0.1~3.0%となるように添加するのが好ましい。デンプンの量が質量比率で0.1%未満では、混合物をブリケットとした時に十分な強度を発現することが難しく、3.0%を超えて添加しても、ブリケットの強度の上昇する程度は鈍り、大きな変化はないからである。また、0.5~1.5%がより好ましい。
【0024】
[蒸気吹き込み方法]
混合機1には、その上方から挿入される蒸気配管5が設けられ、蒸気配管5の先端の吐出口6から蒸気Sを吹き込むことができる。
【0025】
混合機1内へブリケットの原料である粉体とバインダーを装入して回転刃2を回転させることで装入された原料粉体(以下、「装入粉体」ともいう。)Pを流動させて混合することができる。このとき、
図2に示すように装入粉体Pは、回転刃2の回転により遠心力が生じ、混合機1の内壁側へ押し出される力が働くため、装入粉体Pの上面Fがすり鉢状になり内壁にすり上がり盛り上がって流動する。したがって、蒸気Sを吹き込む蒸気配管5の吐出口6は、装入粉体Pの流動する上面Fよりも下方の流動している混合粉体内の領域に位置させることが重要であり、その領域に吐出口6があれば、装入粉体Pと蒸気Sの接触を良好にすることができる。
【0026】
ここで、蒸気Sを送り出す蒸気配管5の吐出口6の挿入深さ位置は、粉体とバインダーが混合機内に装入された当初の粉体上面と回転刃の最上回転面との間の中間点から回転刃の最上回転面間に在ることが好ましい。
【0027】
具体的に説明すれば、最上段の回転刃2’の最上回転面の深さ位置のレベルを1とし、装入粉体Pを混合機1内へ装入した当初の装入粉体Pの最上面の深さ位置のレベルを0としたときに、深さ位置のレベルが0.5~1.0の範囲内とするのが好ましい。すなわち、装入当初の原料粉体の最上面の深さ位置(レベル0)と回転刃の回転面の最上面の深さ位置(レベル1)との間の中間点(レベル0.5)から、回転面の最上面の深さ位置(レベル1)までに蒸気配管5の吐出口6を間在させることにより、蒸気Sが装入粉体Pと効率良く接触することができる。挿入深さ位置が、前述の中間点(レベル0.5)から装入粉体上面の位置(レベル0)に近い側の位置、すなわち、深さ位置のレベルが0~0.5未満では、装入粉体Pが回転して粉体上面がすり鉢状になったときに、吐出口6が粉体上面から離れてしまい、装入粉体P中に蒸気Sを吹き込むことが出来なくなる場合があり、混合攪拌が進まず、好ましくない。より好ましくは、深さ位置のレベルが、0.7~1.0の範囲である。なお、最上段の回転刃とは、回転刃が1段の場合はその回転刃を意味する。
【0028】
また、蒸気配管5の先端の吐出口6は、配管そのものの端部であってもよく、先端用の部品であるノズルを取り付けても良い。ノズルであれば、蒸気の吹き出し方向の角度を変化させた形状のものを用意して取り換えることもできる。
【0029】
さらに、蒸気配管5を挿入する挿入口7の位置は、前述のように、装入粉体Pが回転しながら混合されるとその粉体は、すり鉢状になるために、出来るだけ混合機1の内壁側に近い位置に設けることが好ましい。内壁側から離れて中央(中心部)になればなるほど、すり鉢状になったときに、蒸気配管5の吐出口6が装入粉体P上面から離れてしまい、粉体内に蒸気を吹き込むことが困難となるからである。挿入口7の具体的な位置は、混合機1の装置規模や装入する原料粉体の量にもよるが、混合機1の内壁側から中心部に向かって100mm以内の位置に設けることが好ましい。
【0030】
[吐出口の挿入深さと蒸気流量との関係]
続いて、蒸気吹き込みの吐出口の挿入深さと蒸気流量との関係を調べた試験Aを行ったので、以下に説明する。
【0031】
本試験Aでは、コークス原料用ブリケットを製造するための原料粉体として配合炭(石炭粉)を利用し、バインダーとしてβデンプンを混合攪拌する際の蒸気流量を測定した。配合炭としては、その粒径で10mm未満の大きさが95質量%である粉炭を使用した。バインダーとしては、タピオカ由来のβデンプンを合計1質量%使用した。
【0032】
上記の原料粉体を
図1に示すヘンシェル型混合機1で蒸気を吹き込みながらβデンプンが糊化する75℃まで加熱した。その際、蒸気配管の挿入深さと蒸気流量を変更して試験を行った。その試験条件は、以下の通りとした。
【0033】
(イ)挿入深さ
原料粉体を装入した当初の粉体上面から回転刃の最上回転面までの深さが200mmとなるように原料粉体を装入した。そして、原料粉体を装入した当初の粉体上面の深さ位置(深さ0mm)のレベルを0とし、回転刃の最上回転面の深さ位置(深さ200mm)のレベルを1とした時に、深さ位置のレベルを次の4条件として試験を行った。
(a)レベル0(=深さ0mm、粉体面)、(b)レベル0.50(=深さ100mm)、
(c)レベル0.75(=深さ150mm)、(d)レベル0.98(=深さ196mm)。
【0034】
(ロ)蒸気流量
混合物(配合炭とβデンプンの合計)1kgあたりの蒸気流量(kg/hr)を、次の(a)、(b)、(c)の3条件とした。
(a)100kg/hr、(b)200kg/hr、(c)300kg/hr。
【0035】
(ハ)それぞれの組み合わせ(イのa~dとロのa~c)で合計12条件で混合試験を実施し、糊化温度(75℃)までに要する蒸気流量と時間を実測し、蒸気流量原単位(配合炭1tに対する蒸気量kgであり、kg/t-clと表記する。)を求めた。
【0036】
図6にその結果を示した。いずれの蒸気流量(上記ロの3条件)においても挿入深さを大きくすることにより、蒸気流量原単位を低減することができた。特に、挿入深さレベルを0.50以上に深くすることにより、蒸気流量を小さくしても糊化温度までの蒸気流量原単位を低くすることができ、効率的に加熱することができた。
【0037】
以上の試験から、蒸気原単位の目標を70kg/t-cl以下にするには、挿入深さを0.5~1.0にすることが有効であることが分かった。
【0038】
[蒸気吹き出し方向と蒸気流量との関係]
次に、蒸気吹き出し方向と蒸気流量との関係を調べた試験Bを行ったので、以下に説明する。
【0039】
本試験Bでは、前述した蒸気流量の試験Aに用いた原料と同じものを、同じヘンシェル型混合機を用いて、蒸気流量を50kg/hrとし、蒸気配管の吐出口の挿入深さ位置のレベルを0.98の条件で混合し、糊化温度(75℃)まで蒸気を吹き込んだ。この時に、吐出口の蒸気吹き出し方向を、鉛直下向き方向と回転刃の回転方向に向いて配置して行った。その結果を
図7に示す。
【0040】
吐出口の向きが下向きの場合は、蒸気の吹き込みを開始して30秒で蒸気流量が0となり、その後、蒸気吹き込みができなかった。実験終了後に蒸気配管の吐出口を観察したところ、吐出口内に原料粉体が詰まっており、このために蒸気の吹き込みができなかったことが判った。
【0041】
一方、吐出口の向きが回転方向に向いている場合には、糊化温度に達するまで問題なく蒸気吹き込みが可能であった。
【0042】
以上の試験から、蒸気の吹き出し方向は、単に蒸気配管の鉛直方向下向きではなく、回転刃の回転方向に向いていることが好ましいことが分かった。また、回転刃の回転方向と逆の向き、すなわち、装入粉体が回転とともに吐出口内に逆流してくる方向ではなく、回転方向に沿った向きで蒸気を吹き出すことが望ましい。
【0043】
さらに、蒸気を吹き込む際の吐出口6の蒸気吹き出し方向は、回転刃の回転方向に向いて配置され、かつ上下方向に45°以内のいずれかの角度(θ)を有することが好ましい。つまり、吹き出し方向の上下方向については、上向き、下向きとも水平面から45°以内の角度であることが好ましい。上下方向45°を超える方向に蒸気を吹き出しても蒸気による混合効果、加熱効果が乏しいからである。
【0044】
ここで、蒸気吹き出し方向について、図を用いて説明する。
図3、
図4および
図5に、吐出口の蒸気吹き出し方向と回転刃との位置関係の概略図を示す。
図3は、ヘンシェル型混合機の内部構造を示す斜視図であり、
図4(a)は、
図3の正面A方向から見た混合機の正面断面図であり、
図4(b)は、
図3の側面B方向から見た混合機の側面断面図であり、
図4(c)は、
図3の上方C方向から見た混合機の平面断面図である。また、
図5(a)は、吐出口が上向きの概略断面図であり、上向きの角度θ≦45°が好ましい。
図5(b)は、吐出口が下向きの概略断面図であり、下向きの角度θ≦45°が好ましい。
【0045】
加えて、
図4(c)に示すように、吐出口が回転刃の回転方向の接線方向に対して水平方向に45°以内の角度(ψ)で回転の内側(中心側、
図4(c)のψ≦45°)または回転の外側(円周側、
図4(c)のψ≦45°)に向いていても良い。
【0046】
[蒸気吹き込みによる混合物の温度]
混合攪拌時の蒸気吹き込み後の混合物の温度は、バインダーとして用いるデンプンの糊化温度以上となるまで蒸気吹き込みを継続する。この糊化温度は、デンプンの種類によって異なっているので、使用するデンプンに応じて蒸気吹き込み後の混合物の温度を調整すればよい。例えば、タピオカ由来のデンプンを用いる場合には、その糊化温度は、58.5~70.0℃であるので、蒸気吹き込み後の混合物の温度は、70.0~95.0℃とするのが好ましい。より好ましくは、70.0~80.0℃である。同様に、じゃがいも由来のデンプンを用いた場合には、その糊化温度が56.0~66.0℃であるので、蒸気吹き込み後の混合物の温度は、66.0~95.0℃とするのが好ましい。より好ましくは、66.0~80.0℃である。
【0047】
蒸気は、ノズルから大気中へ吹き出したときに100℃であるので、混合物の温度を制御するのは、蒸気吹き込みの流量と吹き込み時間の長さで調節することができる。また、混合物の温度は、撹拌機内の混合物内へ温度計を挿入しておくことで計測することができる。
【0048】
[蒸気吹き込み時間(混合時間)]
蒸気吹き込みを行う混合攪拌時間は、粉体やバインダーの種類により適宜調整すればよいが、デンプンを用いた場合には、糊化して粉体と均一に混合した状態となるための時間が必要であり、例えば、前述の成型炭ブリケットの製造プロセスの場合の加熱時間は、60秒以上が好ましく、120秒以上がより好ましい。
【0049】
さらに、蒸気吹き込み混合を行う前の未加熱状態での混合時間は、同様に、粉体やバインダーの種類により適宜調整すれば良いが、例えば、前述の成型炭ブリケットの製造プロセスで用いる場合の未加熱状態での混合を行う時間は、15秒以上程度でよい。
【0050】
[成型方法」
前述の混合方法によって得られた混合物を、加圧成型することにより、成型炭のブリケットが得られる。この成型方法は、特に限定されず、また、ブリケット成型装置としては、ロール圧縮、転動および押出方式のいずれの成型機を用いてもよい。特に、ブリケット内部まで均一に加圧できるロール表面に凹部を設けたダブルロール成型機を用いるのが好ましい。なお、本実施態様においては、成型炭ブリケットを例に説明したが、製鉄プロセスにおけるその他のブリケット(鉱石粉ブリケットや転炉投入ダストブリケットなど)にも適用することができる。
【実施例0051】
以下、実施例を挙げて本発明の実施形態をさらに詳しく説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0052】
本実施例では、前述した蒸気流量の試験Aに用いた原料と同じものを、同じヘンシェル型混合機を用いて、蒸気流量を100kg/hrとし、蒸気配管の吐出口の挿入深さ位置のレベルを0.98(発明例1)、0.75(発明例2)、0.50(発明例3)、0.25(比較例1)の4条件で混合し、混合物の温度がデンプンの糊化温度(75℃)になるまで蒸気を吹き込んだ。
【0053】
これらの4条件による混合物の品質を確認するために、蒸気吹き込み終了後に得られた混合物を成型しブリケットを製造して、そのブリケット強度を測定した。
【0054】
なお、混合物の温度は、混合機内に設置した熱電対により測定した。また、ブリケット強度は、得られた加熱混合物に加圧ロール式成型機で圧縮力を作用させて、46mm×46mm×38mmのマセックタイプの成型炭ブリケットに成形し、上記成型炭ブリケットを2時間自然養生した後のブリケット10個を、2mの高さから3回落下させ、落下させたブリケットの質量に対する15mm以上の塊の質量の割合を落下強度(%)として測定した。
【0055】
この結果を、表1に示す。
【0056】
【0057】
発明例1から発明例3までのブリケット強度は、高い強度を示したが、比較例1のブリケットでは、強度も低く粉化しやすいものとなった。以上のことから、吐出口の挿入深さ位置のレベルは、0.5以上が好ましいことが分かった。