IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 理想科学工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-磁性情報印刷システム 図1
  • 特開-磁性情報印刷システム 図2
  • 特開-磁性情報印刷システム 図3
  • 特開-磁性情報印刷システム 図4
  • 特開-磁性情報印刷システム 図5
  • 特開-磁性情報印刷システム 図6
  • 特開-磁性情報印刷システム 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022144680
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】磁性情報印刷システム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20220926BHJP
【FI】
B41J2/01
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021045794
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】海老澤 崇
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA05
2C056EB27
2C056EC07
2C056EC38
2C056EC72
2C056FD09
2C056HA58
(57)【要約】
【課題】磁気インクが滲むことでインク広がりが発生した場合でも、印刷物の磁性情報を適切に読み取ることができる磁性情報印刷システムを提供する。
【解決手段】記録媒体に磁気インクを吐出することにより磁性情報を印刷するインクジェト印刷部5と、インクジェット印刷部5により印刷された記録媒体の磁性情報を読み取るMICRリーダ6とを備えた磁性情報印刷システムであって、MICRリーダ6が、記録媒体に印刷された磁性情報を読み取った場合に、磁気インクが記録媒体の表面を広がる方向の幅に対応する磁気強度信号を取得する取得部11と、取得された磁気強度信号の幅が所定範囲でない場合に、所定範囲となるように、磁気強度信号のうち広がり方向の端部に対応する磁気インクの吐出量を調整する調整部12と、調整部12により調整された吐出量に基づいて、磁気インクを吐出する処理を制御する吐出制御部13とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に磁気インクを吐出することにより磁性情報を印刷する印刷部と、前記印刷部により印刷された記録媒体の磁性情報を読み取る読取部とを備えた磁性情報印刷システムであって、
前記読取部が、記録媒体に印刷された磁性情報を読み取った場合に、磁気インクが記録媒体の表面を広がる方向の幅に対応する磁気強度信号を取得する取得部と、
取得された磁気強度信号の前記幅が所定範囲でない場合に、所定範囲となるように、磁気強度信号のうち前記広がり方向の端部に対応する磁気インクの吐出量を調整する調整部と、
前記調整部により調整された前記吐出量に基づいて、磁気インクを吐出する処理を制御する吐出制御部と
を備えることを特徴とする磁性情報印刷システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性情報印刷システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気専用フォント等を印刷媒体(記録媒体)に印刷し、印刷した磁気専用フォント等を、読取部(例えば、MICRリーダ)で読み取り、磁気信号強度からMICR(Magnetic Ink Character Recognition)文字を認識することが行われている。ここで、読み取った磁気信号強度が所定範囲でない場合、又は読み取った磁気パルス信号の間隔が所定範囲でない場合は、認識エラーとなり、再印刷しなければならないといった課題があった。
【0003】
そのため、記録媒体にMICR文字を、MICRトナーで印刷した後に読み取り、読み取った磁気信号強度が認識エラーとなる規格基準値Aの範囲内であっても、認識エラーを引き起こす前の状態である内部基準値Bの範囲を越えている場合は、磁気信号強度が内部基準値Bの範囲内に収まるようにMICR文字の印刷濃度を制御する技術が開示されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-260817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された技術は、MICRトナープリンタに適用されるものである。トナーは非浸透系のため、記録媒体にトナーが浸透することはない。その結果、記録媒体の種類によって、上記の磁気信号強度及び磁気パルス信号が変化することがない。
【0006】
一方、記録媒体に磁気インクを吐出することにより磁性情報を印刷する印刷装置においては、記録媒体の和紙目(縦目、横目)によって磁気インクが滲むため、磁気信号強度及び磁気パルス信号が適切に読み取れないという課題がある。
【0007】
本発明は上記に鑑みてなされたもので、磁気インクが広がることでインク広がりが発生した場合でも、印刷物の磁性情報を適切に読み取ることができる磁性情報印刷システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る磁性情報印刷システムは、記録媒体に磁気インクを吐出することにより磁性情報を印刷する印刷部と、前記印刷部により印刷された記録媒体の磁性情報を読み取る読取部とを備えた磁性情報印刷システムであって、前記読取部が、記録媒体に印刷された磁性情報を読み取った場合に、前記磁気インクが記録媒体に浸透した該記録媒体の表面の浸透幅に対応する磁気強度信号を取得する取得部と、取得された磁気強度信号の前記浸透幅の広がる方向の幅が所定範囲でない場合に、所定範囲となるように、磁気強度信号のうち前記広がり方向の端部に対応する磁気インクの吐出量を調整する調整部と、前記調整部により調整された前記吐出量に基づいて、磁気インクを吐出する処理を制御する吐出制御部とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、磁気インクが滲むことでインク広がりが発生した場合でも、印刷物の磁性情報を適切に読み取ることができる磁性情報印刷システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態に係る磁性情報印刷システムの機能構成例を示すブロック図である。
図2】MICRフォント及び文字の一例を示す図である。
図3図1に示すMICRリーダで読み取れる磁気信号波形を模式的に示す図である。
図4図1に示す制御部が行うインクの滲みを縮小させる縮退制御を説明するための図である。
図5】記録媒体の搬送方向と直交する(横方向、記録媒体の和紙目が搬送方向と直交)方向の縮退制御を説明するための図である。
図6】記録媒体の搬送方向と平行な方向(縦方向、記録媒体の和紙目が搬送方向と平行)の縮退制御を説明するための図である。
図7図1に示す磁性情報印刷システムが実行する磁性情報印刷方法の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
【0012】
以下に示す実施の形態は、この発明の技術思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0013】
図1は、本発明の実施の形態に係る磁性情報印刷システムの機能構成例を示すブロック図である。図1に示す磁性情報印刷システム10は、制御部1、表示部2、入力部3、記憶部4、インクジェット印刷部5、及びMICRリーダ6を備える。
【0014】
制御部1は、磁性情報印刷システム10の各部の動作を制御する。制御部1は、例えばCPU、RAM、ROM、及びハードディスク等からなるコンピュータで実現することができる。その場合、その処理内容はプログラムによって記述される。
【0015】
制御部1は、取得部11、調整部12、及び吐出制御部13を含む。これらの機能構成部の説明は後述する。
【0016】
表示部2は、利用者に、磁性情報印刷システム10の動作状態を表示し、又は利用者が設定する例えば印刷部数等の表示を行う。表示部2は、例えば液晶パネルで構成される。
【0017】
入力部3は、上記の印刷部数等を入力するスイッチである。スイッチは、磁性情報印刷システム10を収容する筐体に設けられる。スイッチは、表示部2と兼用するタッチパネル等の操作パネルで構成してもよい。
【0018】
記憶部4は、上記のRAM、ROM、及びハードディスク等であり、処理に必要な各種の情報を記憶する。
【0019】
インクジェット印刷部5は、記録媒体の搬送方向に直交する向きに複数の印刷ヘッド(図示せず)を備え、各印刷ヘッドから、例えば、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)のフルカラーのインクを吐出した後に、磁気インクを吐出して印刷する。なお、フルカラーのインクに、顔料インクを用い、何れかの色の顔料粒子を磁性体にするようにしてもよい。以降の説明は、フルカラーの印刷をした後に磁気インクを吐出する例で説明する。
【0020】
磁気インクは、例えば、手形、小切手、金融機関の支点番号、及び口座番号等の印刷に用いられる。磁気インクで印刷された文字は、MICRリーダ6で読み取られる。
【0021】
図2は、磁気インクで印刷したMICRフォント及び文字の一例を示す図である。MICR文字は、例えば小切手等の一番下に印刷される。
【0022】
MICRリーダ6は、印刷済みの例えば小切手からMICR文字の印刷部分を走査してその印刷イメージを読み取る。MICRリーダ6は、印刷イメージを二次元で読み取り磁気パルス信号を生成する。
【0023】
本実施の形態に係る磁性情報印刷システム10は、印刷物の磁性情報の読み取りを確実なものにする目的で、磁性情報の磁気信号強度を適切に設定する磁気信号強度設定工程と磁性情報の端部の滲みを適切に調整する縮退制御工程の2つの工程を備える。それぞれの工程について詳しく説明する。
【0024】
(磁気信号強度設定工程)
図3は、MICRリーダ6で読み取れる磁気信号波形を模式的に示す図である。図3(a)は、印刷ヘッドを駆動するヘッド駆動電圧(図示せず)が所定電圧である場合、図3(b)は、図3(a)よりもヘッド駆動電圧を高めた場合を示す。図3の横方向は、記録媒体の搬送方向の記録媒体上の位置である。
【0025】
図3は、記録媒体の搬送方向に例えば5画素を、磁気インクで印刷した場合であり、記録媒体の表面から見た場合は、例えばハイフン(-)に見える画像が形成される。図3の上段の図は、磁気インクが記録媒体の搬送方向(左右)に広がる様子を半球で表す。また、半球の大きさは磁気インクの量を表す。なお、斜線は磁気インクの量の違いを明確にするための表記である。
【0026】
作図の都合により図3では表現していないが、磁気インクは、記録媒体の搬送方向と直交する方向にも広がる。よって、MICRリーダ6は、図3において奥行方向と手前方向の磁気信号波形も出力する。つまり、この場合はハイフン(-)の高さに対応する磁気信号波形(図示せず)も出力する。
【0027】
記録媒体に吐出された磁気インクは、記録媒体の和紙目に沿って縦方向と横方向に広がり拡大する。この現象はドットゲインと称してもよい。以降、記録媒体の表面上の広がりを「滲み」、記録媒体の厚さ方向の広がりを「浸透」と称する。磁気インクの印刷においては、特に「滲み」を所定範囲内に収めることが重要である。
【0028】
図3(a)に示すように、ヘッド駆動電圧(図示せず)が所定電圧である場合は、印刷された磁性情報を読み取った磁気信号波形は適正である。磁気信号波形の振幅は磁気信号強度を表し、その幅を表す磁気パルス信号は磁性情報が存在する範囲を表す。なお、磁気信号波形は、磁気強度信号と称してもよい。
【0029】
図3(b)に示すように、ヘッド駆動電圧を高めると、磁気インクの吐出量が増え、磁気信号波形の振幅が高くなり、磁気パルス信号のパルス幅が広くなる(破線)。このように、ヘッド駆動電圧を変えることで、磁気インクの吐出量を調整し、磁気信号強度と磁性情報の範囲の大きさの両方を制御することができる。
【0030】
ヘッド駆動電圧は、その大きさを調整する電圧強度パラメータで設定できる。したがって、MICRリーダ6で磁気信号波形を読み取ることで、ヘッド駆動電圧が適正か否かを判定することができ、その判定結果から電圧強度パラメータを適切な値に設定することができる。適切な電圧強度パラメータは、印刷ヘッドから吐出される磁気インクを適切な量(少な過ぎず、多過ぎない)に設定する。
【0031】
つまり、磁気信号波形を読み取ることで、印刷物の磁性情報を適切に読み取れるヘッド駆動電圧に設定する電圧強度パラメータを決定することが可能である。この電圧強度パラメータを設定(決定)する工程を磁気信号強度設定工程と称する。
【0032】
本実施の形態に係る磁性情報印刷システム10は、磁気信号強度設定工程を、通常の印刷を行う印刷工程の前に実施する。磁性情報印刷システムが行う磁性情報印刷方法の処理手順については後述する。
【0033】
磁性情報印刷においては、MICR文字の端部の「滲み」により、磁気パルス信号の幅が広がり、認識エラーとなる場合がある。よって、磁気信号強度設定工程において、磁性情報が読み出し可能な適切な電圧強度パラメータに設定されたとしても、磁気インクの「滲み」を適切に調整する必要がある。
【0034】
磁気インクの「滲み」が大きい場合は、ヘッド駆動電圧を下げて「滲み」を縮退させる縮退制御が必要である。次に、縮退制御工程について説明する。
【0035】
(縮退制御工程)
図4は、本発明の実施の形態に係る縮退制御工程を説明するための図である。図4において上下方向は記録媒体の搬送方向(縦方向)である。左右方向は搬送方向に直交する方向(横方向)である。
【0036】
図4に示す〇は磁気インクの1ドットを示す。図4の各図の上段は、9個のドットの集合が1ドット空けて2つ印刷された印刷範囲を示す。各図の下段は、横方向をMICRリーダ6で読み取った磁気信号波形を示す。
【0037】
図4(a)は「滲み」が適正な場合を示す。図4(b)は「滲み」が大きい場合を示す。図4(c)は、図4(b)の滲みを縮退制御により適正に制御した場合を示す。
【0038】
図4(a)に示すように、「滲み」が適正な場合は、印刷領域の間隔も適正である。よって、磁気信号波形は、適正な幅の磁気パルス信号となって検出される。
【0039】
一方、図4(b)に示すように横方向の「滲み」が大きい場合、ドットゲインにより印刷領域が左右方向に広がり(ドットが丸から楕円に変化)、磁気パルス信号の間隔も狭くなる。
【0040】
そこで、記録媒体に吐出された磁気インクが記録媒体の表面を広がる方向の端部に対する吐出量を調整することで、「滲み」が適切な範囲になるように制御する。
【0041】
図4(c)に示すように、磁気インクが広がる方向の端部に対応する吐出量を減少(両端の楕円が小さい)させることで、図4(a)と同じ適正な磁気パルス信号が得られている。
【0042】
このように、磁気パルス信号のうち広がる方向の端部に対応する磁気インクの吐出量を調整することで、磁気パルス信号の間隔を適正な幅に制御することができる。
【0043】
なお、磁気パルス信号の間隔を評価する例で説明したが、一つの磁気パルス信号の幅に基づいて縮退制御を行ってもよい。要するに、磁気パルス信号のパルス幅が広がることで、それらの間隔が狭くなる。よって、一つの磁気パルス信号の幅を評価することで縮退制御を行うことも可能である。以降、磁気パルス信号の幅を評価する方法で横方向と縦方向の縮退制御の動作を説明する。
【0044】
(横方向の縮退制御)
図5は、横方向の縮退制御を説明するための図である。横方向は、記録媒体の搬送方向と直交する向きである。
【0045】
図5(a)に大、中、小の円で示す電圧強度パラメータは、ヘッド駆動電圧を調整する電圧強度パラメータの大きさを模式的に表す。図5(a)に示す大の円は、上記の磁気信号強度設定工程で設定した電圧強度パラメータの大きさを表す。
【0046】
図5(b)は、印刷領域を3×3の画素の範囲とした場合の横方向の縮退制御の様子を表す模式図である。図5(b)の上から「縮退制御なし」、「縮退制御の強度中」、「縮退制御の強度大」、と縮退制御の強度を変えた例を示す。
【0047】
「縮退制御なし」は、磁気信号強度設定工程で設定した電圧強度パラメータの大きさを変えない場合である。「縮退制御の強度中」は、磁気信号強度設定工程で設定した電圧強度パラメータの大きさを、例えば「大」→「中」に変更する場合である。「縮退制御の強度大」は、同電圧強度パラメータの大きさを、例えば「大」→「小」に変更する場合である。
【0048】
縮退制御工程は、上記の磁気信号強度設定工程の後に行われる。
【0049】
縮退制御工程は、先ず、上記の磁気信号強度設定工程で設定した電圧強度パラメータで記録媒体に吐出された磁気インクから磁性情報を読み取ることで開始する。磁性情報はMICRリーダ6で読み取る。
【0050】
次に、取得部11は、MICRリーダ6で読み取った磁性情報から磁気インクが記録媒体の表面を広がる方向の幅に対応する磁気パルス信号を取得する。
【0051】
次に、調整部12は、磁気パルス信号の幅を評価し、磁気インクが広がる方向の磁気パルス信号の幅が所定範囲でない場合に、所定範囲となるようにヘッド駆動電圧の大きさを調整する電圧強度パラメータを生成する。
【0052】
次に、吐出制御部13は、電圧強度パラメータに基づいて、インクジェット印刷部5(印刷ヘッド)が磁気インクを吐出する動作を制御する。
【0053】
調整部12において、磁気パルス信号の幅が適正であると判定された場合は、磁気信号強度設定工程で決定した電圧強度パラメータは変更されない。図5(b)の「縮退制御なし」の3×3の円で示すように、電圧強度パラメータの大きさを表す円は、図5(a)に示す大の円と同じ大きさである。
【0054】
調整部12において、磁気パルス信号の幅が少し大きいと判定された場合は、記録媒体の搬送方向と直交する向きの印刷領域の端部の画素を印刷する印刷ヘッドの電圧強度パラメータを、「大」→「中」に変更する。図5(b)の「縮退制御の強度中」の3×3の円で示すように、印刷領域の横方向の端部の画素に対応する印刷ヘッドの電圧強度パラメータが「大」→「中」に変更されている。
【0055】
調整部12において、磁気パルス信号の幅がかなり大きいと判定された場合は、記録媒体の搬送方向と直交する向きの印刷領域の端部の画素を印刷する印刷ヘッドの電圧強度パラメータを、「大」→「小」に変更する。図5(b)の「縮退制御の強度大」の3×3の円で示すように、印刷領域の横方向の端部の画素に対応する印刷ヘッドの電圧強度パラメータが「大」→「小」に変更されている。
【0056】
このように縮退制御を行うことで、磁気インクの横方向の「滲み」を所定範囲内に収めることができる。
【0057】
なお、磁気パルス信号の幅を、適正、少し大きい、かなり大きい、の3段階で評価する例を説明したが、その幅を判定する閾値を増やして電圧強度パラメータを更に細かく調整するようにしてもよい。
【0058】
つまり、調整部12は、磁気パルス信号の幅が所定範囲であるか否かを判定するのに複数の閾値を備える。これにより、磁気インクの「滲み」を細かく制御することができる。
【0059】
また、取得部11は、記録媒体の種類に対応させて磁気パルス信号を取得し、調整部12は、閾値を記録媒体の種類に対応させて備えてもよい。これにより、記録媒体の種類に対応させた制御が可能になる。
【0060】
(縦方向の縮退制御)
図6は、縦方向の縮退制御を説明するための図である。縦方向は、記録媒体の搬送方向と平行する向きである。
【0061】
図6は、磁気インクが「滲む」方向が縦方向である点でのみ異なるので簡単に説明する。図6は、記録媒体の和紙目がその搬送方向と平行である場合である。
【0062】
図6(a)は、図5(a)と同じである。
【0063】
図6(b)は、縮退制御によって変更される電圧強度パラメータの位置が90度時計方向に回転している点で図5(b)と異なる。例えば、3×3の画素を印刷範囲とした場合に、記録媒体の搬送方向と同じ向きの印刷範囲の端部の上下3つの画素に対応する電圧強度パラメータが、「大」、「中」、「小」に変更されている。このように縦方向の縮退制御が行われる。
【0064】
この縦方向の縮退制御は、MICRリーダ6で読み取った磁性情報が二次元情報であるので、上記の横方向の磁気パルス信号と直交する向きの磁気パルス信号の幅を評価することで、横方向の縮退制御と同様に行える。
【0065】
(磁性情報印刷方法)
図7は、磁性情報印刷システム10が実行する磁性情報印刷方法の処理手順を示すフローチャートである。図7を参照して本実施の形態に係る磁性情報印刷方法について説明する。
【0066】
磁性情報印刷システム10は、通常の印刷を行う印刷工程の他に、上記の磁気信号強度設定工程と縮退制御工程の2つの工程を行う。磁気信号強度設定工程と縮退制御工程は、インク吐出量調整モードが選択された場合に実行される。
【0067】
利用者がインク吐出量調整モードを選択すると、インクジェット印刷部5が記録媒体に磁気インクを吐出して磁性情報を印刷する。この場合、印刷ヘッドの駆動電圧は標準電圧に設定される(ステップS1)。標準電圧は、例えば図5等に示した電圧強度パラメータの「大」に対応する駆動電圧である。
【0068】
インクジェット印刷部5は、使用する記録媒体(用紙)に磁気インクのテストパターンを印字する(ステップS2)。専用のテストパターンを印刷し、印刷されたテストパターンの画像を評価することで、磁気信号強度設定工程と縮退制御工程の処理の精度を向上させることができる。
【0069】
次に、MICRリーダ6は、印刷領域の磁性情報(磁気信号)を読み込む(ステップS3)。
【0070】
次に、調整部12は、印刷したテストパターンの磁性情報を読み取り、磁気信号強度が足りているか否かを判定する(ステップS4)。
【0071】
磁気信号強度が不足している場合(ステップS4のNO)は、印刷ヘッドの駆動電圧を上げる。ここでは、図5等に示した「縮退制御なし」の「大」の円の大きさを大きくする処理を行う。
【0072】
磁気信号強度が足りている場合(ステップS4のYES)は、「縮退制御なし」の「大」の円に対応する電圧強度パラメータは適切である。つまり、縮退制御なし」の「大」の電圧強度パラメータに対応して印刷ヘッドから吐出される磁気インクの量は適当であると判定される。
【0073】
磁気インクから読み取れる磁気信号強度が適当であると判定されるまで、ステップS1~S5の処理は繰り返される。このステップS1~S5の処理が磁気信号強度設定工程を構成する。
【0074】
なお、作図の都合により印刷ヘッドの駆動電圧を上げる方向のフローしか示していないが、磁気信号強度が大き過ぎる場合は、印刷ヘッドの駆動電圧を下げる処理(図5では省略)を行う。磁気インクの量は、印刷ヘッドの駆動電圧を上下させて磁性情報が読み取れる適切な量に設定される。
【0075】
制御部1は、磁気インクから読み取れる磁気信号強度が適当であると判定すると、次に縮退制御工程を実行する。
【0076】
縮退制御工程が開始されると、取得部11は、MICRリーダ6で読み取ったテストパターンの磁性情報から磁気インクが記録媒体の表面を広がる方向の幅に対応する磁気パルス信号を読み取る(ステップS6)。
【0077】
次に、調整部12は、磁気パルス信号の幅を評価(測定)する(ステップS7)。そして、磁気インクの横方向と縦方向の広がり(滲み)が所定以内であるか否かを判定する(ステップS8)。
【0078】
磁気インクの横方向と縦方向の広がり(滲み)が所定以内である場合は、上記の磁気信号強度設定工程で設定された「縮退制御なし」の「大」の円に対応する電圧強度パラメータは、そのまま維持され縮退制御工程を終了する。
【0079】
磁気インクの横方向と縦方向の広がり(滲み)が所定以内でない場合は、図5図6を用いて説明した横方向と縦方向の縮退制御を行う(ステップS9)。
【0080】
縮退制御で変更された電圧強度パラメータを用いて、記録媒体にテストパターンを印刷する(ステップS10)。そして、ステップS6~S8の処理を繰り返すことで、横方向と縦方向の磁気インクの「滲み」が適切な範囲に調整される。その結果、印刷物の磁性情報を適切に読み取ることができる。
【0081】
以上説明したように、磁気信号強度設定工程と縮退制御工程を実行することで、印刷物の磁性情報を適切に読み取れる磁性情報印刷システムを提供することができる。
【0082】
なお、説明を分かり易くする目的で、「縮退制御なし」の場合の電圧強度パラメータを設定する磁気信号強度設定工程と、横方向と縦方向の縮退量を調整する縮退制御工程とを分けて実行する例を説明したが、その2つの工程は通常の印刷工程に含めても構わない。
【0083】
通常の印刷工程にその2つを含めた場合、テストパターンは不要である。通常印刷する印刷範囲の端部からの「滲み」の大きさ、又は「滲み」を含む印刷範囲同士の間隔を評価して電圧強度パラメータを設定するようにしてもよい。
【0084】
また、上記のインク吐出量調整モードも不要である。通常の印刷工程において、電圧強度パラメータを決定する処理と縮退量を調整する処理を印刷する度に行わせるようにしてもよい。
【0085】
要するに本実施の形態に係る磁性情報印刷システム10は、記録媒体に磁気インクを吐出することにより磁性情報を印刷する印刷部(インクジェット印刷部5)と、印刷部により印刷された記録媒体の磁性情報を読み取る読取部(MICRリーダ6)とを備えた磁性情報印刷システムであって、
読取部が、記録媒体に印刷された磁性情報を読み取った場合に、磁気インクが記録媒体の表面を広がる方向の幅に対応する磁気強度信号を取得する取得部11と、取得された磁気強度信号の幅が所定範囲でない場合に、所定範囲となるように、磁気強度信号のうち広がり方向の端部に対応する磁気インクの吐出量を調整する調整部12と、調整部12により調整された吐出量に基づいて、磁気インクを吐出する処理を制御する吐出制御部13とを備える。これにより、MICR文字の認識エラーを低減させることができる。
【0086】
その結果、MICR文字の認識エラーに起因する再印刷作業を抑制することができ、再印刷による生産性の低下や、高価なMICR専用紙及び磁気インクの無駄を省くことができる。
【0087】
なお、磁気信号強度と「滲み」の関係を予め実験等によって把握しておけば、磁気信号波形の振幅(図3、磁気信号強度)の大きさに基づいて縮退制御を行うことも可能である。
【0088】
また、上記の実施例では、印刷ヘッドを駆動するヘッド駆動電圧の大きさを制御する電圧強度パラメータを大、中、小の3種類の例で説明したが、本発明はこの例に限定されない。電圧強度パラメータの種類はもっと多くても構わない。
【0089】
また、上記のインクジェット印刷部5は、フルカラーの印刷を行った後に磁気インクの印刷を行う例で説明したが、本発明はこの例に限定されない。フルカラーのインクを顔料インクとし、顔料粒子を磁性体にして磁性情報を印刷するようにしてもよい。
【0090】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【0091】
[付記]
本出願は、以下の発明を開示する。
【0092】
(付記1)
記録媒体に磁気インクを吐出することにより磁性情報を印刷する印刷部と、前記印刷部により印刷された記録媒体の磁性情報を読み取る読取部とを備えた磁性情報印刷システムであって、
前記読取部が、記録媒体に印刷された磁性情報を読み取った場合に、前記磁気インクが記録媒体の表面を広がる方向の幅に対応する磁気強度信号を取得する取得部と、
取得された磁気強度信号の前記幅が所定範囲でない場合に、所定範囲となるように、磁気強度信号のうち前記広がり方向の端部に対応する磁気インクの吐出量を調整する調整部と、
前記調整部により調整された前記吐出量に基づいて、磁気インクを吐出する処理を制御する吐出制御部と
を備えることを特徴とする磁性情報印刷システム。
【0093】
(付記2)
前記取得部は、
前記記録媒体の縦方向と横方向の2つの前記磁気強度信号を取得し、
前記調整部は、
前記2つの前記磁気強度信号にそれぞれ対応させて、前記広がり方向と反対の縮退する方向に前記吐出量を調整する
ことを特徴とする付記1に記載の磁性情報印刷システム。
【0094】
(付記3)
前記調整部は、
前記所定範囲であるか否かを判定するのに複数の閾値を備える
ことを特徴とする付記1又は2に記載の磁性情報印刷システム。
【0095】
(付記4)
前記取得部は、
前記記録媒体の種類に対応させて前記磁気強度信号を取得し、
前記調整部は、
前記閾値を前記種類に対応させて備える
ことを特徴とする付記3に記載の磁性情報印刷システム。
【0096】
(付記5)
前記印刷部は、
前記磁性情報をテストパターンで印刷する
ことを特徴とする付記1乃至4の何れかに記載の磁性情報印刷システム。
【符号の説明】
【0097】
1 制御部
2 表示部
3 入力部
4 記憶部
5 インクジェット印刷部
6 MICRリーダ
10 磁性情報印刷システム
11 取得部
12 調整部
13 吐出制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7