(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022144687
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】ドアウェザストリップ
(51)【国際特許分類】
B60J 10/16 20160101AFI20220926BHJP
B60J 10/86 20160101ALI20220926BHJP
B60J 5/04 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
B60J10/16
B60J10/86
B60J5/04 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021045806
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120765
【弁理士】
【氏名又は名称】小滝 正宏
(74)【代理人】
【識別番号】100097076
【弁理士】
【氏名又は名称】糟谷 敬彦
(72)【発明者】
【氏名】濱田 梓之佑
(72)【発明者】
【氏名】山田 宜伸
(72)【発明者】
【氏名】安達 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】木下 靖之
【テーマコード(参考)】
3D201
【Fターム(参考)】
3D201AA01
3D201CA23
3D201DA05
3D201DA31
3D201EA02D
(57)【要約】
【課題】自動車の高速走行時における車内外の圧力差により、自動車用ドアのドアフレームが車幅方向外側に吸い出されることを抑制する自動車用のドアウェザストリップを提供する。
【課題を解決するための手段】ドアウェザストリップ20は、少なくとも、ドアフレーム20又はドアモール60に取付けられる車外側取付基部21と、車外側取付基部21から、上方、且つ車幅方向外側に突出して延設して形成され、ドア1の閉時に車体開口部周縁6に弾接するシールリップ20を備え、シールリップ20の先端部22aと車外側取付基部21との付根部22bとの間であり、且つ車体開口部周縁6側には、シールリップ22を構成するシールリップ本体部23より硬質の硬質部50が形成されている
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のドアと車体開口部周縁との間をシールし、前記ドアのドアフレームの外周に取付けられるドアウェザストリップであって、
前記ドアウェザストリップは、少なくとも、前記ドアフレーム又はドアモールに取付けられる取付基部と、
前記取付基部から、上方、且つ車幅方向外側に突出して延設して形成され、前記ドアの閉時に前記車体開口部周縁に弾接するシールリップを備え、
前記シールリップの先端部と前記取付基部との付根部との間であり、且つ前記車体開口部周縁側には、前記シールリップを構成するシールリップ本体部より硬質の硬質部が形成されていることを特徴とするドアウェザストリップ。
【請求項2】
前記硬質部は、前記ドア閉時に前記車体開口部周縁に当接しない請求項1に記載のドアウェザストリップ。
【請求項3】
前記シールリップの前記先端部と前記硬質部との間には、前記ドア閉時に前記車体開口部周縁に当接する凸部が形成されている請求項1又は請求項2に記載のドアウェザストリップ。
【請求項4】
前記凸部と前記硬質部との間には、前記シールリップ本体部が存在する請求項3に記載のドアウェザストリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の高速走行時における車内外の圧力差により、自動車のドアのドアフレームが車外側に吸い出されることを抑制する自動車用のドアウェザストリップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、
図7に示すように、ドアウェザストリップ100は、ドアフレーム201とドアモール600に取付けられている。ドアウェザストリップ100が取付けられるドアフレーム201は、所謂ヒドンタイプと呼ばれるものである。このヒドンタイプのドアフレーム201は、車幅方向外側(車外側)の先端の幅が狭く、ドアモール600により覆われて、車外側からは見えないように構成されている。
【0003】
ドアウェザストリップ100は、車外側ウェザストリップ200、車内側ウェザストリップ300とウェザストリップ連結部400から構成され、車外側ウェザストリップ200は、車外側取付基部210と車外側シール部220から構成されている。車外側シール部220は、ドア閉時に車体開口部周縁601とドアモール600の先端との間の隙間を塞ぐ。車外側シール部220は、リップ状に形成されているので、撓み易く、ドア閉力を減少させることができる(例えば、特許文献1)。
【0004】
ところで、自動車が高速走行すると、ドアの車外の圧力が車内の圧力より著しく低くなるため、その圧力差によって、ドアフレーム201とドアモール600には、
図7に示す車外側に吸い出される方向の力F1が発生する。その時、車体開口部周縁601と車体開口部周縁601に弾接している車外側シール部220との間には、車内側方向に反力F2が発生する。
【0005】
しかし、車外側シール部220は、リップ状であり、撓み易いので、F1が大きくなると、
図8に示すように、車外側シール部220が大きく撓んで変形し、その結果、ドアフレーム201及びドアモール600は車外側に移動する。このドアフレーム201とドアモール600の車外側への移動現象、すなわち、車外側へ吸い出される現象は、遮音性の低下とドアフレーム201の撓み変形を発生させる。
【0006】
このようなドアフレーム201が吸い出されることへの対策として、例えば、特許文献2には、以下の技術が記載されている。
図9に示すように、ドアウェザストリップ100の車幅方向内側(車内側)には、ドアサッシュ101から車体開口部周縁601側へ向けて突出する頂部510を有する大きな係合ブロック500とブリッジ部410を一体に形成し、一方、車体開口部周縁601には、ボディサイドアウタパネル650がドアサッシュ101側へ突出する膨出部670が形成されている。
【0007】
係合ブロック500は、高速走行時におけるドアサッシュ101が吸い出される方向Fに対して膨出部670と干渉するように設定されているので、高速走行時にドアサッシュ101が車外側に吸い出されて移動した時に、係合ブロック500が膨出部670に当接することにより、ドアサッシュ101がそれ以上車外側に吸い出されることを防止している。一方、係合ブロック500は、頂部510とブリッジ部410との間に傾斜部分を有しているので、ドア開方向Oにおいて、膨出部670と干渉しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010-36602号公報
【特許文献2】特開2011-25855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献2の技術では、ドアウェザストリップ100に関し、大きな係合ブロック500とブリッジ部410を新たに形成するので重くなる問題がある。更に、ボディサイドアウタパネル650に関しても、係合ブロック500と当接可能にするために、ドアサッシュ101側に突出する膨出部670を形成する新たな加工が必要である。したがって、コスト面及び軽量化の観点で課題を有している。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、自動車の高速走行時における車内外の圧力差により、自動車用ドアのドアフレームが車外側に吸い出されることを抑制することができ、低コスト及び軽量化を図ることができる自動車用のドアウェザストリップを提供することを目的とする。
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1の本発明は、自動車のドアと車体開口部周縁との間をシールし、ドアのドアフレームの外周に取付けられるドアウェザストリップであって、ドアウェザストリップは、少なくとも、ドアフレーム又はドアモールに取付けられる取付基部と、取付基部から、上方、且つ車幅方向外側に突出して延設して形成され、ドアの閉時に車体開口部周縁に弾接するシールリップを備え、シールリップの先端部と取付基部との付根部との間であり、且つ車体開口部周縁側には、シールリップを構成するシールリップ本体部より硬質の硬質部が形成されていることを特徴とするドアウェザストリップである。
【0012】
請求項1の本発明では、ドアウェザストリップは、少なくとも、ドアフレーム又はドアモールに取付けられる取付基部と、取付基部から、上方、且つ車幅方向外側に突出して延設して形成され、ドアの閉時に車体開口部周縁に弾接するシールリップを備え、シールリップの先端部と取付基部との付根部との間であり、且つ車体開口部周縁側には、シールリップを構成するシールリップ本体部より硬質の硬質部が形成されているので、自動車の高速走行時における車内外の圧力差によってドアフレームに車幅方向外側(車外側)方向の力が発生した時に、硬質部によってシールリップ自体の撓みが抑制され、又、車体開口部周縁に弾接している先端部には、車幅方向内側(車内側)に縮む方向の力(X)が発生すると同時に、硬質部の先端部側には、上記力(X)を押し返す力(Y)が発生する。
【0013】
又、シールリップは撓んで車体開口部周縁に弾接しているので、弾接部分には車体開口部周縁を垂直方向上方に押す力(Z)が元々発生しており、撓みが抑制されたシールリップの車体開口部周縁との当接部分には、車幅方向内側(車内側)への力(X)、押し返す力(Y)と車体開口部周縁を上方に押す力(Z)により、シールリップの先端部分を車体開口部周縁側へ押し付ける力が増大するので、車外側に吸い出される方向の力に対する踏ん張り荷重、すなわち、反力を増大させることができる。その結果、自動車の高速走行時にドアフレームが車外側に吸い出されることを抑制することができ、従来に比較して、高速走行時の遮音性を向上させることができる。又、ドアフレームの撓み変形を抑えることができる。
【0014】
請求項2の本発明は、請求項1の発明において、硬質部は、ドア閉時に車体開口部周縁に当接しないドアウェザストリップである。
【0015】
請求項2の本発明では、硬質部は、ドア閉時に車体開口部周縁に当接しないので、ドア閉時に、シールリップの先端部の車体開口部周縁への弾接に影響を与えず、ドアと車体開口部周縁との間のシール性能を従来と同様に確保することができる。
【0016】
請求項3の本発明は、請求項1又は請求項2の発明において、シールリップの先端部と硬質部との間には、ドア閉時に車体開口部周縁に当接する凸部が形成されているドアウェザストリップである。
【0017】
請求項3の本発明では、シールリップの先端部と硬質部との間には、ドア閉時に車体開口部周縁に弾接する凸部が形成されているので、自動車の高速走行時における車内外の圧力差によってドアフレームに車幅方向外側(車外側)への力が発生した時に、凸部には、車幅方向内側(車内側)方向の力が発生し、その力は凸部をシールリップの付根部側に回転させるように変形させる。
【0018】
その結果、シールリップにおける車体開口部周縁との当接部分が凸部から先端部に至る領域に拡大するので、当接面積が増大し、踏ん張り荷重、すなわち、反力を増大させることができる。したがって、自動車の高速走行時にドアフレームが車外側に吸い出されることをより抑制することができ、従来に比較して、高速走行時の遮音性をより向上させることができる。又、ドアフレームの撓み変形を抑えることができる。
【0019】
請求項4の本発明は、請求項3の発明において、凸部と硬質部との間には、シールリップ本体部が存在するドアウェザストリップである。
【0020】
請求項4の本発明では、凸部と硬質部との間には、シールリップ本体部が存在するので、凸部に車幅方向内側(車内側)方向の力が発生した時に、存在するシールリップ本体部には、先端部側方向に押し返す力が発生する。その結果、車体開口部周縁へシールリップを押し付ける力が増大し、車外側に吸い出される力に対する踏ん張り荷重、すなわち、反力をさらに増大させることができるので、ドアフレームが車外側に吸い出されることをより抑制することができ、高速走行時の遮音性をより向上させることができる。又、ドアフレームの撓み変形を抑えることができる。
【発明の効果】
【0021】
ドアウェザストリップは、少なくとも、ドアフレーム又はドアモールに取付けられる取付基部と、取付基部から、上方、且つ車幅方向外側に突出して延設して形成され、ドアの閉時に車体開口部周縁に弾接するシールリップを備え、シールリップの先端部と取付基部との付根部との間であり、且つ車体開口部周縁側には、シールリップを構成するシールリップ本体部より硬質の硬質部が形成されているので、自動車の高速走行時における車内外の圧力差によってドアフレームに車幅方向外側(車外側)方向の力が発生した時に、硬質部によってシールリップ自体の撓みが抑制され、又、車体開口部周縁に弾接している先端部には、車幅方向内側(車内側)に縮む方向の力(X)が発生すると同時に、硬質部の先端部側には、上記力(X)を押し返す力(Y)が発生する。
【0022】
又、シールリップは撓んで車体開口部周縁に弾接しているので、弾接部分には車体開口部周縁を垂直方向上方に押す力(Z)が元々発生しており、撓みが抑制されたシールリップの車体開口部周縁との当接部分には、車幅方向内側(車内側)への力(X)、押し返す力(Y)と車体開口部周縁を上方に押す力(Z)により、シールリップの先端部分を車体開口部周縁側へ押し付ける力が増大するので、車外側に吸い出される方向の力に対する踏ん張り荷重、すなわち、反力を増大させることができる。その結果、自動車の高速走行時にドアフレームが車外側に吸い出されることを抑制することができ、従来に比較して、高速走行時の遮音性を向上させることができる。又、ドアフレームの撓み変形を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態に用いる自動車のドアの側面図である。
【
図2】本発明の実施形態に用いるドアウェザストリップの全体の平面図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に用いるドアウェザストリップの
図1におけるA-A線に沿った断面図である。
【
図4】(a)は、
図3の枠内の拡大断面図であり、(b)は(a)における高速走行時に吸い出し方向の力が働いた時の挙動を説明する拡大断面図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態に用いるドアウェザストリップの
図1におけるA-A線に沿った断面図である。
【
図6】(a)は、
図5の枠内の拡大断面図であり、(b)は(a)における高速走行時に吸い出し方向の力が働いた時の挙動を説明する拡大断面図である。
【
図7】従来のドアウェザストリップの
図1におけるA-A線に沿った断面図である(特許文献1)。
【
図8】
図7のドアウェザストリップに関し、高速走行時におけるドアフレームの車幅方向外側(車外側)への吸い出しとドアウェザストリップの変化を説明する
図1におけるA-A線に沿った断面図である。
【
図9】従来の対策を説明する断面図である(特許文献2)。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の第1の実施形態について、
図1から
図4に基づいて説明する。
図1は自動車の側面図である。
図1に示すように、フロント側及びリヤ側のいずれも自動車のドア1の上部の外周部にはドアフレーム2が設けられ、ドアフレーム2の外周部にはドアウェザストリップ10が取付けられ、ドア1と車体開口部周縁6(
図3)の間をシールしている。
【0025】
ドアウェザストリップ10において、
図2に示すように、ドアフレーム2の上辺及び縦辺に対応する上辺部11と縦辺部13は、押出成形により長尺に成形され、ドアフレーム2のコーナー部に対応するコーナー部12の部分は、上辺部11と縦辺部13を接続し、型成形により形成されている。なお、本発明は、ドアウェザストリップ10の上辺部11に関するものである。又、本第1の実施形態は、左側のフロントドアについて説明するものであるが、右側のフロントドアと両側のリヤドアにも適用可能である。
【0026】
ドアウェザストリップ10が取付けられるドアフレーム2は、本発明においては、所謂ヒドンタイプのものである。
図3に示すように、このヒドンタイプのドアフレーム2は、車外側の先端の幅が狭く、ドアフレーム2の外周に取付けられたドアモール60により覆われて、車外側からは見えないように構成されている。
【0027】
本第1の実施形態では、ドアモール60は、モール部61とリテーナ部62とから連続的に形成されている。なお、モール部61とリテーナ部62は、それぞれ別体で形成してもよい。ドアモール60は、リテーナ部62がリベット、クリップやネジ等でドアフレーム2に固定されている。
【0028】
モール部61は、ドアフレーム2の先端を覆うように所定の幅を有し、下端は、ヘヤピン状に折れ曲がっている。このヘヤピン状に折れ曲がった部分とドアフレーム2の内面とで図示しないガラスランを挟持して保持する。一方、上端も同様にヘヤピン状に折れ曲がってリテーナ部62に連続している。モール部61とリテーナ部62は、1枚のステンレススチール等の板金を折り曲げることにより形成されている。
【0029】
リテーナ部62は、その断面形状が底部の広がった幅広のコ字状に形成される。リテーナ部62の車内側の先端部分はヘヤピン状に屈曲して形成され、リテーナ部62の車外側側端部分には、凹部63が形成されている。この凹部63に後述するドアウェザストリップ10の車外側ウェザストリップ20の車外側取付基部21を取付け、保持させることができる。
【0030】
ドアフレーム2の車内側外周は、リテーナ部62が取付けられる車外側よりも車内側が階段状に低い位置に形成され、後述するドアウェザストリップ10の車内側ウェザストリップ30の車内側取付基部31が取り付け可能に、溝状のドアフレームリテーナ部2cが形成されている。ドアフレームリテーナ部2cは、ドアフレーム2のインナパネル2bを屈曲させて形成する。このため、ドアウェザストリップ10の車内側ウェザストリップ30は、車外側ウェザストリップ20に比べて低い位置に取付けられる。
【0031】
ドアウェザストリップ10は、
図3に示すように、車外側ウェザストリップ20と、車内側ウェザストリップ30と、車外側ウェザストリップ20と車内側ウェザストリップ30を連結する連結部40とを備える。車外側ウェザストリップ20は、ドアフレーム2の車外側、すなわち、上記したリテーナ部62に取付けられ、車体開口部周縁6とドアフレーム2との間において、車外側の先端部分をシールする。
【0032】
ドアウェザストリップ10の車外側ウェザストリップ20は、
図3と
図4(a)に示すように、車外側取付基部21、シールリップ22と硬質部50から構成される。又、車外側取付基部21の基盤部分には、芯部25が形成されている。車外側取付基部21は、車内側と車外側の側端の底面がドアモール60のリテーナ部62に当接し、車外側の側端は、ドアモール60のリテーナ部62の凹部63に嵌挿される。硬質部50については、後に詳述する。なお、
図3と
図4(a)において、シールリップ22において、硬質部50を除く部分をシールリップ本体部23と称する。
【0033】
本発明の特許請求の範囲との関係において、特許請求の範囲における請求項1の「・・・、前記ドアウェザストリップは、少なくとも、前記ドアフレーム又はドアモールに取付けられる取付基部と、・・・。」の「取付基部」は、この車外側取付基部21を示すものである。
【0034】
シールリップ22は、リップ状形成され、車外側ウェザストリップ20の車外側取付基部21から上方、且つ車外側に突出して延設される。ドア1が閉じられると、シールリップ22は撓み、先端部22aの車体開口部周縁6側が車体開口部周縁6に弾接し、車体開口部周縁6とドアモール60の先端との間の隙間を塞ぐことができる。又、シールリップ22は、リップ状であり、シールリップ本体部23は、撓みやすいので、ドア閉力を減少させることができる。
【0035】
硬質部50は、
図3と
図4(a)に示すように、シールリップ22の先端部22aと車外側取付基部21との付根部22bとの間であり、且つ車体開口部周縁6側に形成される。
図4(a)に示すように、硬質部50は、シールリップ22の車体開口部周縁6側の先端部22aと付根部22bの中央部より若干付根部22b側に形成されており、硬質部50の長さbは、先端部22aから付根部22bの長さaに対して約5分の1、硬質部50の深さdは、硬質部50形成部のシールリップ22の厚みcの約2分の1であり、断面形状は略四角形に形成されている。又、
図4(a)から明らかなように、ドア1の閉時に硬質部50は車体開口部周縁6に当接していない。
【0036】
図4(b)は、
図4(a)において、自動車の高速走行時に吸い出しの力F1が働いた時の挙動を説明する
図3の枠内の拡大断面図である。ここで、点線は
図4(a)の位置を示している。
【0037】
自動車の高速走行時における車内外の圧力差によってドアフレーム2に車幅方向外側(車外側)への力F1が発生した時、シールリップ22のシールリップ本体部23と車体開口部周縁6との当接部分には車幅方向内側(車内側)方向への反力が働くが、硬質部50によってシールリップ本体部23の撓みが抑制され、先端部22aには、車幅方向内側(車内側)への力Xが発生し、硬質部50より先端部22a側は、車幅方向内側(車内側)に変形する。同時に、硬質部50より先端部22a側のシールリップ本体部23には、力Xを押し返す力Yが発生する。力Yは、上記の変形に伴い、車体開口部周縁6側に矢印のように傾くように作用する。
【0038】
ところで、シールリップ22(シールリップ本体部23)は撓んで車体開口部周縁6に弾接するので、弾接部分には車体開口部周縁6を垂直方向上方に押す力Zが元々発生している。そして、車幅方向内側(車内側)への力X、力Xを押し返す力Yと車体開口部周縁6を上方に押す力Zにより、シールリップ本体部23の先端部22aを車体開口部周縁6側へ押し付ける力が増大するので、車外側に吸い出される方向の力に対する踏ん張り荷重、すなわち、反力F2を増大させることができる。
【0039】
その結果、吸い出す力F1が大きくなった場合にも、反力F2をF1と同等、又は、F1に近づけることができるので、自動車の高速走行時にドアフレーム2が車外側に吸い出されることを抑制することができ、従来に比較して、高速走行時の遮音性を向上させることができる。又、ドアフレーム2やドアモール60の撓みを抑えることができる。
【0040】
又、特許文献2のような大きな係合ブロック500を新たに形成する必要がなく、更に、車体開口部周縁6に関しても膨出部670を形成するなど、新たな加工が不要となるので、コスト面及び軽量化の観点の課題も解決することができる。
【0041】
ここで、硬質部50の長さbは、先端部22aから付根部22bの長さaに対し、5分の1に限定されないが、長さaの10分の1から4分の1の長さに形成されることが望ましい。
【0042】
硬質部50の長さbが、10分の1より短い場合は、自動車の高速走行時における車内外の圧力差によってドアフレーム2に車幅方向外側(車外側)への力が発生した時に、シールリップ本体部23自体が撓んでしまい、現象としては、従来、すなわち
図8と同様になり、本発明の効果が小さい。
【0043】
一方、長さbが4分の1を越えると、シールリップ本体部23が撓み難くなるので、ドア1閉時に、閉力が増大し、ドア1が閉め難くなる。
【0044】
又、硬質部50の深さdは、硬質部50形成部のシールリップ22の厚みcの4分の1から2分の1の深さに形成することが望ましい。硬質部50の深さdが厚みcの4分の1より薄い場合は、自動車の高速走行時における車内外の圧力差によってドアフレーム2に車幅方向外側(車外側)への力が発生した時に、シールリップ本体部23自体が撓んでしまい、本発明の効果が小さい。
【0045】
一方、硬質部50の深さdが厚みcの2分の1より厚い場合は、シールリップ本体部23が撓み難くなるので、ドア1閉時に、閉力が増大し、ドア1が閉め難くなる。
【0046】
又、硬質部50の断面は、略四角形でなく、半円形状や三角形等であってもよく、つまり、押出成形が可能な形状であればよい。
【0047】
又、硬質部50は、シールリップ22の車体開口部周縁6側の先端部22aと付根部22bの中央部近傍(中央部の先端部22a側、付根部22b側を含む)であり、ドア1閉時に硬質部50が車体開口部周縁6に当接しない位置に形成されることが望ましい。
【0048】
硬質部50がシールリップ22の先端部22a側に形成され、ドア1閉時に車体開口部周縁6に当接すると、ドア1閉時に、先端部22aの車体開口部周縁6との弾接に影響を与え、ドア1と車体開口部周縁6との間のシール性能を従来と同様に確保することができない可能性があるので好ましくない。
【0049】
硬質部50は、硬質のEPDMのソリッド材を使用し、その硬度は、国際ゴム硬度(IRHD)60以上である。硬質部50の硬度が国際ゴム硬度(IRHD)60未満の場合は、自動車の高速走行時における車内外の圧力差によってドアフレーム2に車幅方向外側の力が発生した時、硬質部50もシールリップ本体部23と共に撓んでしまうので、本発明の効果が小さくなる。
【0050】
ドアウェザストリップ10において、車外側取付基部21及び車内側取付基部31の両芯部25、35は、硬質のEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)のソリッド材を使用した。ソリッド材の硬度は、国際ゴム硬度(IRHD)60以上である。
【0051】
なお、硬質部50の硬度の適切な範囲は、車外側取付基部21の芯部25の硬度の適切な範囲と同じであるが、硬質部50の硬度は、車外側取付基部21の芯部25の硬度と同じであってもよく、又、異なっていてもよい。
【0052】
一方、車外側取付基部21及び車内側取付基部31の両芯部25、35と硬質部50以外の部分、すなわち、芯部25以外の車外側取付基部21、シールリップ本体部23、連結部40、芯部35以外の車内側取付基部31と中空シール部32は、軟質のEPDMのスポンジ材を使用した。スポンジ材の比重は、0.4以上1.0以下である。
【0053】
次に、本発明の第2の実施形態について、
図5、
図6に基づいて説明する。本第2の実施形態において、上記の第1の実施形態との相違点は、本第2の実施形態では、シールリップ22のシールリップ本体部23の先端部22aと硬質部50との間には、ドア1閉時に車体開口部周縁6に弾接する凸部24が形成されている。又、凸部24と硬質部50との間には、シールリップ本体部23が存在している点にある。凸部24は、シールリップ本体部23と同じ軟質のEPDMのスポンジ材を使用した。
【0054】
図6(b)に示すように、自動車の高速走行時における車内外の圧力差によってドアフレーム2に車幅方向外側(車外側)への力F1が発生した時に、シールリップ22のシールリップ本体部23と車体開口部周縁6との当接部分には車幅方向内側(車内側)方向への反力が働くが、硬質部50によってシールリップ本体部23自体の撓みが抑制され、硬質部50より先端部22a側には、車幅方向内側(車内側)方向の力Xが発生し、その力は凸部24をシールリップ本体部23の付根部22b側に回転させるように変形させる。
【0055】
又、凸部24と硬質部50との間には、シールリップ本体部23が存在するので、存在するシールリップ本体部23において、先端部22a側方向に押し返す力Yが発生する。力yは、上記の変形に伴い、車体開口部周縁6側に矢印のように傾いて作用する。
【0056】
その結果、ドア1閉時には、凸部24によって車体開口部周縁6と当接していた部分が、力Xに基づく凸部24の変形により、凸部24から先端部22aに至る領域に拡大して車体開口部周縁6との当接面積が増大すると共に先端部22a側方向に押し返す力Yが加わるので、車体開口部周縁6へシールリップ22を押し付ける力が増大し、車外側に吸い出される方向の力F1に対する踏ん張り荷重、すなわち、反力F2をより増大させることができる。
【0057】
したがって、上記実施形態1に比較して、吸い出す力F1がさらに大きくなった場合にも、反力F2をF1と同等、又は、F1に近づけることができるので、自動車の高速走行時にドアフレーム2が車外側に吸い出されることをより抑制することができ、高速走行時の遮音性を向上させることができる。又、ドアフレーム2やドアモール60の撓みを抑えることができる。
【0058】
本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0059】
例えば、上記の第2の実施形態では、凸部24と硬質部50との間には、シールリップ本体部23が存在したが、硬質部50は凸部24と連続して形成してもよい。
【0060】
例えば、上記の第1から第3の実施形態では、ドアウェザストリップ10をEPDMによって形成したが、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)や動的架橋型熱可塑性エラストマー(TPV)によって形成してもよい。
【0061】
例えば、上記の第1と第2の実施形態では、ドアウェザストリップ10は、車外側ウェザストリップ20と、車内側ウェザストリップ30と、車外側ウェザストリップ20と車内側ウェザストリップ30を連結する連結部40とを一体として形成したが、連結部40を形成せずに、車外側ウェザストリップ20、車内側ウェザストリップ30を別体として形成し、別々に取付ける形態や、車内側ウェザストリップ30も形成せず、車外側ウェザストリップ20のみを形成して取付ける形態であってもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 ドア
2 ドアフレーム
6 車体開口部周縁
10 ドアウェザストリップ
11 上辺部
20 車外側ウェザストリップ
21 取付基部
22 シールリップ
22a 先端部
22b 付根部
23 凸部
24 シールリップ本体部
30 車内側ウェザストリップ
40 連結部
50 硬質部
60 ドアモール