(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022144701
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
B60K 6/36 20071001AFI20220926BHJP
B60K 6/40 20071001ALI20220926BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20220926BHJP
H02K 9/19 20060101ALI20220926BHJP
F16H 55/18 20060101ALN20220926BHJP
【FI】
B60K6/36 ZHV
B60K6/40
H02K7/116
H02K9/19 B
F16H55/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021045828
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100207181
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 朋
(72)【発明者】
【氏名】西本 泰樹
(72)【発明者】
【氏名】宮原 渉
【テーマコード(参考)】
3D202
3J030
5H607
5H609
【Fターム(参考)】
3D202EE02
3D202EE13
3D202EE23
3J030AA02
3J030AB04
3J030AB08
3J030BA10
3J030BB03
3J030CA10
5H607AA04
5H607BB01
5H607BB05
5H607BB14
5H607CC03
5H607CC09
5H607DD04
5H607EE31
5H609BB01
5H609PP10
5H609QQ05
5H609QQ11
5H609RR37
(57)【要約】
【課題】本発明では、簡易な構成によりバックラッシュを取り除くことのできるモータを提供することを課題とする。
【解決手段】自身の内側に軸方向に延在する孔部11aを有するモータ軸11と、モータ軸11の外周面に一体形成され、モータ軸11と一体的に回転するメインギア11bと、モータ軸11に対して相対回転可能に嵌合されたサブギア12と、モータ軸11の孔部11aに設けられ、その一端側がモータ軸11に固定され、他端側がサブギア12に固定されたトーションバー13と、を備えたことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自身の内側に軸方向に延在する孔部を有し、回転可能なモータ軸と、
前記モータ軸の外周面に一体形成され、前記モータ軸と一体的に回転するメインギアと、
前記モータ軸に対して相対回転可能に設けられたサブギアと、
前記モータ軸の前記孔部に設けられ、その一端側が前記モータ軸に固定され、他端側が前記サブギアに固定されたトーションバーと、を備えたことを特徴とするモータ。
【請求項2】
前記孔部は冷却用の流体通路である請求項1記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンとモータとを駆動源として備えた、いわゆるハイブリッド車両が従来から知られている。そして、このようなハイブリット車両には、エンジンの出力をモータへ伝達する伝達機構が設けられる。
【0003】
例えば特許文献1の動力伝達装置では、エンジンの出力軸が、フライホイールやダンパ、クラッチを介してモータジェネレータのロータに接続されている。このフライホイールやダンパにより、エンジンの間欠的な燃焼によるトルク変動を吸収することで、駆動時の振動や異音を低減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車両のコスト低減や小型化のために、フライホイールやダンパを廃止することが考えられる。しかしこの場合、エンジンのトルク変動がエンジン側とモータ側とのスプライン嵌合部に伝達されることになる。そして、スプライン嵌合部に通常の駆動方向と逆方向のトルク負荷がかかると、スプライン嵌合部に存在するバックラッシュにより振動や異音が発生するという問題があった。
【0006】
従って本発明では、簡易な構成によりバックラッシュを取り除くことのできるモータを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明は、自身の内側に軸方向に延在する孔部を有し、回転可能なモータ軸と、前記モータ軸の外周面に一体形成され、前記モータ軸と一体的に回転するメインギアと、前記モータ軸に対して相対回転可能に設けられたサブギアと、前記モータ軸の前記孔部に設けられ、その一端側が前記モータ軸に固定され、他端側が前記サブギアに固定されたトーションバーと、を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明のモータによれば、メインギア、サブギア、そしてトーションバーによるシザーズギア機構により、モータ軸のメインギアと相手部材との噛み合い部分におけるバックラッシュを取り除くことができる。従って、フライホイールやダンパを設けることなくバックラッシュによる振動や異音の発生を防止でき、モータの低コスト化および小型化を実現できる。また、モータ軸に上記のシザーズギア機構を設けることで、モータと相手部材との連結構造を簡素化できる。
【0009】
上記モータでは、前記孔部が冷却用の流体通路であってもよい。これにより、モータ軸に元々設けられた流体通路にトーションバーを配置できる。従って、モータ軸の小型化および加工コストの削減を実現できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のモータは、バックラッシュを取り除き、バックラッシュによる振動や異音の発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係るモータを示す断面図である。
【
図2】モータのメイン歯部およびサブ歯部と、入力軸の内歯との噛み合いを示す概略図である。
【
図3】モータの異なる実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態のモータ1は、相手部材であるエンジンと連結され、エンジンの駆動力を伝達されて発電するモータである。
【0013】
図1に示すように、モータ1は、モータ軸11と、サブギア12と、トーションバー13と、ロータ14と、ステータ15と、を備える。
【0014】
モータ軸11は、その内側に軸方向(
図1の左右方向)に延在する孔部11aを有する。モータ軸11は、その他端側(
図1の右側)の外周面に、メインギア11bが一体形成されたスプライン軸である。
【0015】
メインギア11bは、後述するシザーズギア機構において、相手側の歯と嵌合してその駆動力を主に伝達されるメイン歯部である。ただし、メインギアをモータ軸と別部材として構成し、ボルトなどによってモータ軸に固定して一体的に設けることで、メインギアがモータ軸と一体回転する構成としてもよい。
【0016】
ロータ14はモータ軸11と一体的に設けられ、モータ軸11と一体的に回転する。
【0017】
モータ軸11の孔部11aにトーションバー13が設けられる。トーションバー13の一端側は、モータ軸11の一端側に固定された六角ナット16に締結される。これにより、トーションバー13の一端側がモータ軸11に固定される。
【0018】
サブギア12は、内側に軸方向に貫通する貫通孔12aと、外周面側にサブ歯部12bとを有する。サブギア12はモータ軸11の軸方向他端側に隣接して設けられる。つまり、メインギア11bとサブ歯部12bは軸方向に隣接して設けられる。このメインギア11bとサブ歯部12bとが、シザーズギア機構のギアアセンブリを構成している。
【0019】
メインギア11bとサブ歯部12bは同一のモジュール、歯数および歯形を有する。
【0020】
トーションバー13の他端側はサブギア12の貫通孔12aに挿入され、サブギア12の貫通孔12aに設けられた六角ナット17に締結される。これにより、トーションバー13の他端側がサブギア12の内周面側に固定される。
【0021】
モータ軸11とサブギア12は同軸上に設けられ、軸線Xを中心に回転可能に設けられる。またサブギア12は、モータ軸11に対して相対回転可能に設けられており、後述するトーションバー13のねじり力により、モータ軸11に対して相対回転する。
【0022】
メインギア11bおよびサブ歯部12bは、クランクシャフト50のスプライン穴50aに嵌合し、クランクシャフト50とスプライン結合する。クランクシャフト50は、エンジン側に設けられ、エンジンの駆動力をモータ1に入力するための入力軸である。クランクシャフト50が回転すると、モータ1はスプライン結合部によりその駆動力がモータ軸11に伝達される。
【0023】
なお、モータ軸11に対するサブギア12の組み立て時には、サブギア12をトーションバー13の付勢力に抗して回転させ、メインギア11bとサブ歯部12bとの歯面の位相を合わせた状態で、適宜の固定部材により固定されて組み付けが行われる。
【0024】
そして、モータ軸11をクランクシャフト50とスプライン結合させ、サブギア12を上記位相に固定している固定部材を取り除く。これにより、サブギア12は、トーションバー13の復元力(ねじり力)によって付勢され、モータ軸11に対して相対回転する。つまり、トーションバー13はその一端側がモータ軸11に固定され、他端側がサブギア12に固定される構成により、サブギア12を、モータ軸11に対して相対回転する方向へ付勢する。この付勢力により、
図2に示すように、サブ歯部12bが矢印A方向へ付勢され、クランクシャフト50の内歯50bに当接する(
図2の点線部参照)。これにより、内歯50bがメインギア11b(メイン歯部11b)とサブ歯部12bとによって挟み込まれ、エンジン側とモータ側とのスプライン結合部におけるバックラッシュが取り除かれる。このように、サブ歯部12bは、メインギア11bと反対側から内歯50bに当接し、主にバックラッシュを取り除く役割をする歯部である。なお、矢印A方向は内歯50bのメインギア11bに対する当接方向と同じ方向である。
【0025】
以上のように、本実施形態のモータによれば、メインギア11b、サブギア12、そしてトーションバー13などによるシザーズギア機構により、エンジン側とモータ側とのスプライン結合部のバックラッシュを取り除くことができる。これにより、エンジンのトルク変動が生じた場合の、バックラッシュによる振動や異音の発生を防止できる。つまり、エンジンのようなトルク変動の大きい駆動側と接続されるモータであっても、フライホイールやダンパを設けることなく上記効果を得ることができ、モータの低コスト化、そして小型化および低重量化を実現できる。
【0026】
特に本実施形態では、モータ1のロータ14を回転させるためのモータ軸11にシザーズギア機構を設けることで、モータとエンジンとの連結構造を簡素化できる。従って、車両の小型化および低コスト化を実現できる。
【0027】
また、サブギアをメインギアに対する相対回転方向へ付勢する付勢部材としてトーションバーを用いることで、モータ軸の軸線方向に沿ってその内側に付勢部材を配置できる。従って、モータの構造を小型化できると共に、高トルクに耐えるモータ軸の構造を実現できる。
【0028】
また、
図1に示すように、モータ軸11に設けられる孔部11aは、モータ1を冷却するための油(冷却用の流体)を通過させる流体通路である。このように、元からモータ軸11に設けられた孔部11aをトーションバー13の配置に利用することで、モータ軸11に特別な加工を施すことなくトーションバー13を配置できる。従って、モータ軸11の加工コストを削減できると共にモータ軸11を小型化できる。
【0029】
また、孔部11aにトーションバー13を配置した場合でも、孔部11aの残りのスペースに油を通し、流体通路として利用することができる。この際、孔部11aに油を流すための流入路および流出路を設ける必要がある。本実施形態では一例として、六角ナット16に、図示しない貫通孔を複数設けることで、流入路および流出路としている。ただし、油の流入路および流出路は例えばモータ軸11に貫通孔を設けるなど、適宜の位置で設けることができる。
【0030】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0031】
以上の実施形態では、トーションバーをモータ軸に固定するために六角ナットを設けたが、本発明はこれに限らない。例えば、
図3に示すように、トーションバー13をその径方向に貫通してモータ軸11に挿入される固定ピン18を設け、トーションバー13をモータ軸11に固定してもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 モータ
11 モータ軸
11a 孔部(流体通路)
11b メインギア
12 サブギア
12b サブ歯部
13 トーションバー
14 ロータ
15 ステータ
50 クランクシャフト