(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022144717
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】プリンタ及びプリンタの制御方法
(51)【国際特許分類】
B41J 29/38 20060101AFI20220926BHJP
B41J 3/36 20060101ALI20220926BHJP
B41J 11/42 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
B41J29/38 104
B41J3/36 Z
B41J11/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021045854
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】000130581
【氏名又は名称】サトーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】グローバル・アイピー東京特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】平川 朔弥
【テーマコード(参考)】
2C055
2C058
2C061
【Fターム(参考)】
2C055CC00
2C055CC01
2C055GG05
2C058AB07
2C058AC06
2C058AD06
2C058AE04
2C058AF51
2C058GA00
2C058GB14
2C058GB15
2C058GB31
2C058GB32
2C058GB48
2C058GB53
2C058GE03
2C058GE08
2C058GE13
2C058GH06
2C061AP10
2C061AQ04
2C061AS08
2C061HH11
2C061HJ02
2C061HK19
2C061HT13
(57)【要約】
【課題】プラテンローラを回転駆動させるための消費電力を低減させることを可能にしたプリンタを提供する。
【解決手段】印字ヘッドと、プラテンローラと、最大電流値で制限された駆動電流によりプラテンローラを回転駆動するモータと、印字ヘッドとプラテンローラにより圧接挟持される連続紙の搬送方向の区間に応じて、最大電流値を制御する第1の制御を行う制御部と、を備え、制御部は、連続紙のうち搬送方向において台紙にラベルが貼付されていない区間である第1区間、及び、台紙にラベルが貼付されている区間の一部であって第1区間に隣接する第2区間においては、最大電流値として第1の電流値を設定し、台紙にラベルが貼付されている区間において第2区間を除いた第3区間においては、最大電流値として第1の電流値よりも小さな第2の電流値を設定する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
台紙及び前記台紙に所定間隔で貼付されている複数のラベルを含む連続紙の各ラベルに対して印字をする印字ヘッドと、
前記連続紙を前記印字ヘッドと共に圧接挟持しつつ搬送するプラテンローラと、
最大電流値により制限された駆動電流により前記プラテンローラを回転駆動するモータと、
前記印字ヘッドと前記プラテンローラにより圧接挟持される前記連続紙の搬送方向の区間に応じて、前記最大電流値を制御する第1の制御を行う制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記第1の制御では、
前記連続紙のうち前記搬送方向において前記台紙に前記ラベルが貼付されていない区間である第1区間、及び、前記台紙に前記ラベルが貼付されている区間の一部であって前記第1区間に隣接する第2区間においては、前記最大電流値として第1の電流値を設定し、
前記台紙に前記ラベルが貼付されている区間において前記第2区間を除いた第3区間においては、前記最大電流値として前記第1の電流値よりも小さな第2の電流値を設定する、
プリンタ。
【請求項2】
前記制御部は、
ラベル貼付周期が所定長さ以上である場合には、前記第3区間において前記最大電流値として前記第2の電流値を設定し、
ラベル貼付周期が前記所定長さ未満である場合には、前記第3区間において前記最大電流値として前記第1の電流値を設定する、
請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
各ラベルの前記第3区間と搬送方向後方側の前記第2区間の境界に対応する位置に前記連続紙が搬送された時に初期化されるカウンタを備え、
前記制御部は、前記カウンタが初期化されてから停止するまでの期間において、前記最大電流値として前記第1電流値を設定し、
前記カウンタが停止してから再度初期化されるまでの期間において、前記最大電流値として前記第2電流値を設定し、
ラベル貼付周期が前記所定長さ以上である場合には、前記カウンタが初期化されてから停止するまでの期間が前記第1区間及びこれを挟む2つの前記第2区間に対応し、前記カウンタが停止してから再度初期化されるまでの期間が前記第3区間に対応する、
請求項2に記載のプリンタ。
【請求項4】
ラベル貼付周期が前記所定長さ未満である場合には、前記カウンタが初期化されてから再度初期化されるまでの期間が前記第1区間、これを挟む2つの前記第2区間及び前記第3区間に対応する、
請求項3に記載のプリンタ。
【請求項5】
前記制御部は、前記最大電流値を制御する第2の制御を行い、
前記第2の制御では、前記最大電流値として第3の電流値が必要である他の処理が生じている時には、前記第1の制御により前記最大電流値として設定された前記第1の電流値及び前記第2の電流値の何れか一方を、前記第1の電流値及び前記第2の電流値の何れか一方と前記第3の電流値のうちの大きい方の電流値に置き換える、
請求項1から4の何れか1項に記載のプリンタ。
【請求項6】
前記他の処理は、印字加速処理及び印字減速処理の少なくとも一方を含む、
請求項5に記載のプリンタ。
【請求項7】
プリンタの制御方法であって、
前記プリンタは、
台紙及び前記台紙に所定間隔で貼付されている複数のラベルを含む連続紙の各ラベルに対して印字をする印字ヘッドと、
前記連続紙を前記印字ヘッドと共に圧接挟持しつつ搬送するプラテンローラと、
最大電流値により制限された駆動電流により前記プラテンローラを回転駆動するモータと、
を備え、
前記制御方法は、前記印字ヘッドと前記プラテンローラにより圧接挟持される前記連続紙の搬送方向の区間に応じて、前記最大電流値を制御する方法であって、
前記連続紙のうち前記搬送方向において前記台紙に前記ラベルが貼付されていない区間である第1区間、及び、前記台紙に前記ラベルが貼付されている区間の一部であって前記第1区間に隣接する第2区間においては、前記最大電流値として第1の電流値を設定するステップと、
前記台紙に前記ラベルが貼付されている区間において前記第2区間を除いた第3区間においては、前記最大電流値として前記第1の電流値よりも小さな第2の電流値を設定するステップと、
を有する、プリンタの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印字媒体に情報を印字するプリンタ及びプリンタの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印字媒体をサーマルヘッド及びプラテンローラで圧接挟持し、サーマルヘッド上の発熱素子を選択的に発熱させて、印字媒体に熱転写により印字を施すサーマル式プリンタ(以下、単に「プリンタ」という。)が知られている。
【0003】
印字媒体としては、台紙及びこの台紙に対して所定間隔で貼付されている複数のラベルを含む連続紙が用いられることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなプリンタは、設置場所に常設されて使用することも多いが、この他に、例えば、プリンタの底面に設けられたベルトフックを利用者のベルトに引っかけたり、ショルダーベルトを装着して利用者の肩に掛けたりすることにより使用することも可能である。
【0006】
従って、プリンタは、バッテリ駆動により動作することも多いため、消費電力が少ないことが求められる。
【0007】
ここで、プラテンローラを回転駆動させるためのモータに関連した消費電力は、プリンタ全体の消費電力のうちのかなりの部分を占めるため、このような消費電力を低減することが求められている。
【0008】
プラテンローラを回転駆動させるためのモータに関連した消費電力を下げる方法としては、例えば、モータに流すことができる最大電流を下げることが考えられる。しかし、モータに流すことができる最大電流を下げると、必要時にモータが高いトルクを発生することができなくなってしまう。
【0009】
ここで、サーマルヘッドとプラテンローラによる圧接挟持部をラベルの前方エッジ又は後方エッジが通過するときに搬送負荷が生じるため、モータに対して通常時よりも高いトルクが必要とされる。
【0010】
従って、無暗にモータに供給することができる最大電流を低くすると、モータは必要なトルクを発生させることができず、モータの脱調などが生じてしまう可能性がある。
【0011】
そこで、本発明は、プラテンローラを回転駆動させるための消費電力を低減させることを可能にしたプリンタ及び最大電流値設定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のある態様によれば、
台紙及び前記台紙に所定間隔で貼付されている複数のラベルを含む連続紙の各ラベルに対して印字をする印字ヘッドと、
前記連続紙を前記印字ヘッドと共に圧接挟持しつつ搬送するプラテンローラと、
最大電流値により制限された駆動電流により前記プラテンローラを回転駆動するモータと、
前記印字ヘッドと前記プラテンローラにより圧接挟持される前記連続紙の搬送方向の区間に応じて、前記最大電流値を制御する第1の制御を行う制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記第1の制御では、
前記連続紙のうち搬送方向において前記台紙に前記ラベルが貼付されていない区間である第1区間、及び、前記台紙に前記ラベルが貼付されている区間の一部であって前記第1区間に隣接する第2区間においては、前記最大電流値として第1の電流値を設定し、
前記台紙に前記ラベルが貼付されている区間において前記第2区間を除いた第3区間においては、前記最大電流値として前記第1の電流値よりも小さな第2の電流値を設定する、
プリンタが提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明のある態様によれば、プラテンローラを回転駆動させるための消費電力を低減させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1Aは、本発明の実施の形態によるプリンタのカバーが閉じたときの前方面、左側面及び上方面を示す斜視図であり、
図1Bは、本発明の実施の形態によるプリンタのカバーが開いたときの前方面、左側面及び上方面を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態によるプリンタのカバーが開いたときの後方面、左側面及び上方面を示す斜視図である。
【
図3】本発明の実施の形態によるプリンタの印字対象となる連続紙に対して設定される各区間を示す概念図である。
【
図4】本発明の実施の形態によるプリンタ内で搬送される連続紙の搬送量に対して、モータの最大電流値を設定するために設けられる時刻及び期間を示す概念図である。
【
図5】本発明の実施の形態によるプリンタが扱う通常のラベル貼付周期の連続紙に対して与えられる電流上昇区間及び電流低減区間を示す概念図である。
【
図6】本発明の実施の形態によるプリンタが扱う短いラベル貼付周期の連続紙に対して与えられる合一電流上昇区間を示す概念図である。
【
図7】本発明の実施の形態によるプリンタのオンライン印字処理を実行する際の全体の流れを示すフローチャートである。
【
図8】本発明の実施の形態によるプリンタにおいて、印字定速処理と、必要とされる最大電流値が小さな他処理が重複した場合の設定最大電流値の時間的な変化を示すグラフである。
【
図9】本発明の実施の形態によるプリンタにおいて、印字定速処理と、必要とされる最大電流値が大きな他処理が重複した場合の設定最大電流値の時間的な変化を示すグラフである。
【
図10】本発明の実施の形態によるプリンタにおいて、印字定速処理と、必要とされる最大電流値が中程度の他処理が重複した場合の設定最大電流値の時間的な変化を示すグラフである。
【
図11】本発明の実施の形態による最大電流値の設定方法における初期化処理を示すフローチャートである。
【
図12】本発明の実施の形態による最大電流値の設定方法における印字定速処理を示すフローチャートである。
【
図13】
図12に示す最大電流値設定の詳細を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細な説明をする。
【0016】
[1.プリンタ1の概略構成]
本発明の一実施形態に係るプリンタ1は、連続印字モードと剥離手動貼モードを切り替え可能に構成されたラベルプリンタである。以下、プリンタ1について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
なお、各図では、例えば
図1A及び
図1Bの斜視図に示すように、上(UP)、下(DN)、左(LH)、右(RH)、前(FR)、後(RR)の方向を定義している。しかし、この方向の定義は、専ら図面の説明の便宜のためであり、本発明のプリンタの使用時の姿勢を限定する意図はない。
【0018】
この方向の定義では、「プリンタ前後方向」とは、プリンタ1の前後の方向を意味する。「プリンタ幅方向」とは、プリンタ1の左右の方向、あるいは横方向を意味する。
【0019】
図1A、
図1B及び
図2は、それぞれ実施形態のプリンタ1の斜視図である。
図1Aは、プリンタカバー3が閉鎖状態の場合を示し、
図1B及び
図2は、プリンタカバー3が開放状態の場合を示している。
図1Bは、ロール紙Rがセットされた状態を示し、
図2は、ロール紙R、及び、ロール紙Rがセットされる前のプリンタ1の状態を示している。
【0020】
図1Aに示すように、プリンタ1は、本体ケース2とプリンタカバー3によって内部の機能部品が保護されている。プリンタ1の上面には、ラベルを排出する排出部20が設けられている。
【0021】
なお、プリンタ1は、排出部20側を上に向けた状態(横置き)で使用することも可能である。他方で、プリンタ1の底面に設けられたベルトフック(図示せず)を利用者のベルトに引っかけたり、ショルダーベルト(図示せず)を装着して利用者の肩に掛けたりすることにより排出部20側を横に向けた状態(縦保持)で使用することも可能である。
【0022】
本体ケース2において排出部20よりも前方には、表示パネル15が設けられている。表示パネル15は、利用者による操作入力を受け付けるタッチパネル入力機構を備えてもよい。表示パネル15は、プリンタ1の内部の回路基板に接続されており、回路基板から供給される表示信号に基づいて、例えばプリンタ1の動作状態やプリンタ1の操作に関するユーザインタフェースを示す画像を出力する。
【0023】
図示しないが、本体ケース2とプリンタカバー3によって包囲されているプリンタ1の内部には、様々な機能部品を支持又は保持するための内部フレームが配置されている。この内部フレームと、本体ケース2及びプリンタカバー3とは、プリンタ本体に相当する。
【0024】
プリンタカバー3は、プリンタ1の内部を開放する開放位置と、プリンタ1の内部を閉鎖する閉鎖位置と、の間で揺動可能に構成される。
【0025】
本体ケース2に設けられたカバー開放用ボタン51bを操作すると、
図1Bに示すように、プリンタカバー3が開放する。プリンタカバー3を開放することで、ロール紙収容室9が露出する。ロール紙収容室9は、ロール紙Rを収容する空間である。
【0026】
図2に示すように、ロール紙Rは、帯状の連続紙Pがロール状に巻回されたものである。連続紙Pは、帯状の台紙PMと、台紙PM上に予め決められた間隔毎に仮着された複数枚のラベルPLとを有している。台紙PMのラベル貼付面には、ラベルPLを容易に剥離することが可能なようにシリコーン等のような剥離剤が被覆されている。また、台紙PMのラベル貼付面の裏面には、予め決められた間隔毎にラベルPLの基準位置を示す位置検出マークMが形成されている。
【0027】
ラベルPLの表側は情報が印字される印字面であり、予め決められた温度領域に達すると特定の色に発色する感熱発色層が形成されている。印字面の裏側は粘着剤によって被覆された粘着面であり、当該粘着面が台紙PMのラベル貼付面に貼り付けられることでラベルPLが台紙PMに仮着されている。
【0028】
ロール紙収容室9には、一対のロール紙ガイド6aが設置されている。一対のロール紙ガイド6aは、ロール紙Rの両側面に接触した状態でロール紙Rを回転自在の状態で支持してロール紙Rから引き出される連続紙の搬送をガイドする部材である。また、一対のロール紙ガイド6aは、ロール紙Rの幅に応じて位置を変えられるようにロール紙Rの幅方向に沿って移動可能であることが好ましい。
【0029】
図2に示すように、プリンタカバー3が開放位置と閉鎖位置の間で本体ケース2に対して揺動可能となるように、プリンタカバー3が本体ケース2に対してヒンジ8で軸支されている。ヒンジ8はヒンジ軸81を有し、ヒンジ軸81には、プリンタカバー3を閉鎖位置から開放位置に向けて付勢する捩りばね(図示せず)が設けられている。
【0030】
図2に示すように、プリンタカバー3の先端には、プラテンローラ10が正逆方向に回動自在の状態で軸支されている。プラテンローラ10は、ロール紙Rから引き出される連続紙Pを搬送する搬送手段であり、連続紙Pの幅方向に沿って延在した状態で形成されている。このプラテンローラ10のプラテン軸10aの一端には、ギア10bが連結されている。このギア10bは、プリンタカバー3が閉鎖位置のときに本体ケース2内に配置されるギア22bと係合し、ギア22bを介してローラ駆動用のステッピングモータ(図示せず)等に機械的に接続されるようになっている。
【0031】
図2に示すように、プリンタカバー3には、プラテンローラ10の近傍において剥離バー12がプラテンローラ10に沿って設置されている。この剥離バー12は、台紙PMからラベルPLを剥離する剥離部材であり、その両端はプリンタカバー3の両側壁に固定されている。なお、剥離バー12は、プラテン軸10aの両端に固定してもよい。
本体ケース2内には、プリンタカバー3を閉鎖したときにプラテンローラ10のプラテン軸10aを保持するプラテン保持ブラケット27が設けられる。プラテン保持ブラケット27の前方には、サーマルヘッド28が配置される。
【0032】
サーマルヘッド28(印字ヘッドの一例)は、例えば、文字、記号、図形又はバーコード等の情報を、ロール紙Rから搬送される台紙PMに仮着されているラベルPLに印字する印字手段である。サーマルヘッド28は、プリンタカバー3が閉鎖状態のときにプラテンローラ10に対向するように設けられている。
【0033】
サーマルヘッド28には、回路基板(図示せず)に接続するフレキシブルケーブルが着脱可能に取り付けられている。サーマルヘッド28は、連続紙Pの幅方向に沿って配列される複数の発熱素子(発熱抵抗体)を備え、回路基板から送信される信号に基づいて複数の発熱素子を選択的に通電することで印字を行う。
【0034】
図2に示すように、サーマルヘッド28の前方には、コイルばね55が配置される。コイルばね55の後方の一端はサーマルヘッド28に当接し、コイルばね55の前方の他端は内部フレームに当接している。コイルばね55は、印字時にサーマルヘッド28をプラテンローラ10に向けて付勢し、それによってサーマルヘッド28が印字に最適な圧力でプラテンローラ10に押圧される。以下の説明では、プラテンローラ10及びサーマルヘッド28により連続紙Pを圧接挟持する部分のことを単に「圧接挟持部」という。
【0035】
プリンタ1は、剥離ユニット4を有し、剥離ユニット4を連続印字モードに対応した連続発行位置と剥離手動貼モードに対応した剥離発行位置の間で移動させることによって、連続発行及び剥離発行を行う。
図1Bに示すように、プリンタカバー3が開放位置にあるときには剥離ユニット開放用ボタン52bが露出する。剥離ユニット開放用ボタン52bを操作することで、剥離ユニット4を動作させることができる。
図2は、剥離ユニット開放用ボタン52bを操作したときの剥離ユニット4の状態を示している。
【0036】
剥離ユニット開放用ボタン52bは、連続発行から剥離発行に切り替えるときに利用者によって操作される。
【0037】
図2に示すように、剥離ユニット4は、剥離ローラカバー41と、剥離ローラ45を保持する剥離ローラ保持部42と、を有する。剥離ローラカバー41は、連続発行時に剥離ローラ保持部42を覆うように構成されている。剥離ローラカバー41は、本体ケース2内の内部フレームに軸支されており、剥離ユニット開放用ボタン52bの操作に応じて閉鎖位置から開放位置(
図2に示す状態)まで揺動する。
【0038】
剥離ローラ保持部42は、剥離ローラカバー41に軸支されている。連続発行時には、剥離ローラ保持部42は、剥離ローラカバー41の裏面の下に折り畳まれるようにして収容される。
【0039】
プリンタカバー3には、ラベル位置検出センサ35が設けられている。ラベル位置検出センサ35は、プリンタカバー3の閉鎖時において、ロール紙Rから引き出された連続紙Pがプラテンローラ10に達するまでの間の通紙ルートに配置され、ラベルPLの位置を検出する。特に、ラベル位置検出センサ35からの信号によりラベルPLの前方エッジ及び後方エッジを検出することができる。ラベル位置検出センサ35の検出結果に基づいて、連続紙Pの搬送量を制御することが好ましい。
【0040】
図示しないが、連続発行後の連続紙Pの台紙PMを切断するカッタを設けるとよい。カッタを設ける場合、カッタは、排出部20において連続紙Pの幅方向に沿って延在した状態で設置される。また、剥離バー12をカッタとして機能させてもよい。
【0041】
[2.最大電流値設定方法]
[2.1 原理]
プラテンローラ10を駆動するためにステッピングモータが用いられている。ステッピングモータを駆動するために必要な電流はモータの制御部(図示せず)により決められる。そして、必要な電流は、モータ駆動用の駆動回路(図示せず)から供給される。ここで、駆動回路に対しては、駆動回路がモータに供給することができる最大電流値を設定することができる。
【0042】
従って、駆動回路がステッピングモータに供給することができる最大電流値を高くすれば、ラベルPLの前方エッジ713(
図3参照)又は後方エッジ715(
図3参照)が圧接挟持部を通過するときに必要となる電流をステッピングモータに供給することができる。よって、ステッピングモータの脱調や印字ずれが生じてしまうことを避けることができる。
【0043】
そこで、駆動回路がステッピングモータに供給することができる最大電流値を常に高く設定しておくことが考えられる。
【0044】
しかし、実際にステッピングモータに流す電流が同一であっても、ステッピングモータに供給することができる最大電流値を大きく設定すると、その最大電流値を小さく設定した場合と比較して、消費電力が大きくなってしまう。特に、実際にステッピングモータに流すことが必要な電流が少ないのにステッピングモータに供給することができる最大電流値を大きく設定すると無駄な電力を消費してしまうことになる。
【0045】
そこで、ステッピングモータが必要とする電流値が小さい期間においては、駆動回路がステッピングモータに供給することが可能な最大電流値を小さくし、逆に、ステッピングモータが必要とする電流値が大きい期間においては、最大電流値を大きくする。
【0046】
これにより、プラテンローラ10を回転駆動させるための平均消費電力を低減させながらも印字ずれを生じさせないことが可能になる。
【0047】
[2.2 搬送紙における各種区間]
図3を参照すると、サーマルヘッド28は、台紙PMにラベルPLが仮着されているラベル区間703では、ラベルPLの表面に接触し、台紙PMにラベルPLが仮着されていないギャップ区間701では、台紙PMの表面に接触する。なお、既に説明したように、コイルばね55が印字時にサーマルヘッド28をプラテンローラ10に向けて付勢し、それによってサーマルヘッド28が印字に最適な圧力でプラテンローラ10に押圧される。従って、プラテンローラ10は、常に、台紙PMの裏面に接触している。
【0048】
ラベル区間703とギャップ区間701の境界付近(前方エッジ713付近及び後方エッジ715付近)においては、搬送の負荷が特にかかるためステッピングモータが必要とする電流値が高くなる。
【0049】
そこで、各ラベルPLに対して前方エッジ713付近の前方マージン区間705と後方エッジ715付近の後方マージン区間707を設ける。そして、各ギャップ区間701に対して、そのギャップ区間701に先行する後方マージン区間707及びそのギャップ区間701に後続する前方マージン区間705を合わせることにより構成される電流上昇区間709を設ける。
【0050】
そして、相互に隣接する電流上昇区間709に挟まれる区間を電流低減区間711として設ける。
【0051】
各ラベルについてみると、電流低減区間711は、ラベル区間から前方マージン区間と後方マージン区間を除いた区間である。
【0052】
図3に示すように、ラベル貼付周期をLp、ギャップ区間701の長さをギャップ長Lg、ラベル区間703の長さをラベルピッチLf、電流上昇区間709の長さを上昇区間長L1、電流低減区間711の長さをL2、前方マージン区間705の長さを前方マージン長Ls、後方マージン区間707の長さを後方マージン長Leとしたとき、
Lp=Lf+Lg
L1=Lg+Ls+Le
L2=Lf-(Ls+Le)
である。
【0053】
ここで、前方マージン長Lsと後方マージン長Leは同一にしてもよいが、この限りではない。
【0054】
詳細は後述するが、モータに流すことができる最大電流値として、電流上昇区間709においては第1最大電流値(「第1の電流値」の一例)I1を設定し、電流低減区間711においては第2最大電流値(「第2の電流値」の一例)I2を設定する。
【0055】
ラベルPLの中央部付近は平坦であるので、ラベルPLが圧接挟持部を通過するときには特にステッピングモータの脱調や印字ずれを避けるためにモータに流す電流を増やす必要がない。従って、ラベルPLの前方エッジ713及び後方エッジ715付近が圧接挟持部を通過するときにステッピングモータが必要とする最大電流に対して、ラベルPLの中央部付近が圧接挟持部を通過するときにステッピングモータが必要とする最大電流値は比較的少ない。これにより、無駄な電力を消費してしまうことを未然に防止することができる。
【0056】
[2.3 印字定速処理におけるタイミング制御]
図4Aから
図4Eは、これらの図で見て左方向から右方向に搬送される連続紙Pがラベル位置検出センサ35及び圧接挟持部をこの順に通過していく様子を示している。
【0057】
図4Aは、後方エッジ検出時刻t1において、第n番目のラベルPL(「#n」で示す。)の後方エッジ715の位置がラベル位置検出センサ35の位置x1と一致していることを示している。
【0058】
図4Bは、電流上昇期間開始時刻t2において、第n番目のラベルPLの後方エッジ715から後方マージン長だけ前方にある電流上昇区間開始位置が圧接挟持部の位置x3と一致していることを示している。
【0059】
図4Cは、後方エッジ通過時刻t3において、第n番目のラベルPLの後方エッジ715の位置が圧接挟持部の位置x3に一致していることを示している。
【0060】
図4Dは、前方エッジ通過時刻t4において、第(n+1)番目のラベルPL(「#n+1」で示す。)の前方エッジ713の位置が圧接挟持部の位置と一致していることを示している。
【0061】
図4Eは、電流上昇期間終了時刻t5において、第(n+1)番目のラベルPLの前方エッジ713から前方マージン長だけ後方にある電流上昇区間終了位置が圧接挟持部の位置と一致していることを示している。
待機期間Taは、後方エッジ検出時刻t1から電流上昇期間開始時刻t2までの期間である。
【0062】
電流上昇期間T1は、電流上昇期間開始時刻t2から電流上昇期間終了時刻t5までの期間である。
【0063】
センサ・圧接挟持部間移動所要時間Tdは、後方エッジ検出時刻t1から後方エッジ通過時刻t3までの期間である。
【0064】
後方マージン期間Teは、電流上昇期間開始時刻t2から後方エッジ通過時刻t3までの期間である。
【0065】
ギャップ期間Tgは、後方エッジ通過時刻t3から前方エッジ通過時刻t4までの期間である。
【0066】
前方マージン期間Tsは、前方エッジ通過時刻t4から電流上昇期間終了時刻t5までの期間である。
【0067】
第n番目のラベルPLの後方エッジがラベル位置検出センサ35により検出された時刻t1から、待機期間Taが経過した電流上昇期間開始時刻t2において電流上昇期間T1が開始する。そして、それから電流上昇期間T1の時間だけ経過した電流上昇期間終了時刻t5において電流上昇期間T1が終了する。電流上昇期間T1は、電流上昇区間709(
図3参照)に対応する。ここでの電流上昇期間T1は、第n番目のラベルPLと第(n+1)番目のラベルPLとの間のギャップ区間701(
図3参照)並びにその前後にある前方マージン区間705及び後方マージン区間707を含む電流上昇区間709に対応したものである。
【0068】
なお、第n番目のラベルPLの後方エッジ715がラベル位置検出センサ35により検出されてから第n番目のラベルPLと第(n+1)番目のラベルPLとの間のギャップ区間701並びにその前後にある前方マージン区間705及び後方マージン区間707を含む電流上昇区間709に対応した電流上昇期間T1が始まるまでの期間が待機期間Taとして設定されている。しかし、詳細な説明を省略するが、待機期間Taが開始するタイミングはこれには限られない。
【0069】
電流上昇期間T1は、
図4に示すように、ギャップ区間701(
図3参照)、そのギャップ区間701を前後から挟んでいる前方マージン区間705及び後方マージン区間707を合わせた区間に対応する期間である。これは、ギャップ期間Tg、そのギャップ期間Tgを前後から挟んでいる後方マージン期間Te及び前方マージン期間Tsを合わせた期間である。
【0070】
[2.4 ラベル貼付周期が上昇区間長以上である連続紙に対応した動作]
図5は、通常のラベル貼付周期Lpの連続紙に対応した動作を説明するものであり、各ラベルPLの後方エッジ715より後方マージン長Leだけ搬送方向において先行する位置717から電流上昇区間709が開始する。
【0071】
そして、電流上昇区間709はそれが開始したラベルPLに後続するラベルPLの前方エッジ713より前方マージン長Lsだけ搬送方向において後続する位置719で終了する。
【0072】
図5に示す例においては、相互に隣接する電流上昇区間709(例えば、電流上昇区間#n及び電流上昇区間#(n+1))の間には、電流低減区間711(例えば、電流低減区間#n)が設けられている。
【0073】
基準となる連続紙PにおけるラベルピッチLfとギャップ長Lgに合わせて、電流上昇区間709の長さである上昇区間長L1が調整される。上昇区間長L1は、基準となる連続紙のギャップ長Lgに前方マージン長Ls及び後方マージン長Leを加算することにより得られる長さである。通常は、電流低減区間711も存在するように、上昇区間長L1が調整される。つまり、前方マージン長Lsと後方マージン長Leを合わせた長さがラベルピッチLfよりも短くなるように前方マージン長Lsと後方マージン長Leが調整される。調整は、工場出荷時にされてもよいし、利用者による操作によりされてもよい。
【0074】
[2.5 ラベル貼付周期が上昇区間長よりも短い連続紙に対応した動作]
基準となる連続紙Pに対応するように調整された種々のパラメータはプリンタ1の記憶部(図示せず)に記憶される。そして、これらの種々のパラメータは、基準となる連続紙Pに対する印字のときの他に、他の寸法を有する連続紙に対する印字のときにも利用されるように運用してもよい。
特に、
図6に示すように、ラベル貼付周期Lp’の長さが基準となる連続紙のラベル貼付周期Lpとは異なる連続紙に対して印字をするときにも、基準となる連続紙Pに対応するように調整された上昇区間長L1及びこれに対応する電流上昇期間T1を用いるように運用してもよい。
既に説明したように、
図5は、ラベル貼付周期Lpが上昇区間長L1よりも長い例を示している。
これに対して、
図6は、ラベル貼付周期Lp’が電流上昇区間L1よりも短い例を示している。
図6に示している上昇区間長L1は、
図6に示す連続紙に対応するようにして決められたものではなく、
図5に示す連続紙に対応するようにして決められたものである。
ラベル貼付周期Lp’が上昇区間長L1よりも短いので、相互に隣接する電流上昇区間709は重複し、合一電流上昇区間709Cを構成する。従って、電流低減区間711はない。
従って、最大電流としては、定常的に電流上昇区間709に対して設定された第1最大電流値I1が設定される。
この場合、各ラベルの前方エッジ713及び後方エッジ715が圧接挟持部を通過するときには、最大電流値が第1最大電流値I1であるので、これらの部分でモータが必要とする電流値はモータに供給されることになる。
【0075】
[2.6 印字の開始から終了までの全体の処理]
図7に示すように、オンライン印字処理Qは、副処理として印字加速処理Q1、印字定速処理Q2及び印字減速処理Q3を含み、これらがこの順に実行される。上述したような電流上昇区間709と電流低減区間711を交互に繰り返す処理は、印字定速処理Q2におけるものである。
【0076】
[2.7 他処理が重複した場合]
次に、モータ駆動を伴う他処理が時間的に重複した場合の動作の説明をする。
【0077】
ここで、他処理として、例えば、印字の緊急停止のための処理、ペーパエンド検出によるエラー処理、連続モードにおける印字終了位置付近における印字減速処理などがある。
【0078】
図8から
図10は、電流上昇期間と電流低減期間が交互に繰り返される印字定速処理Q2の期間において他処理が重複しているときの状況を示している。なお、電流上昇期間とは、電流上昇区間709が圧接挟持部を通過する期間であり、電流低減期間とは、電流低減区間711が圧接挟持部を通過する期間である。
【0079】
時刻t60から時刻t66までの間は、電流低減期間及び電流上昇期間が交互に繰り返されている。時刻t62から時刻t64までに他処理期間が発生している。
【0080】
図8から
図10では、電流上昇期間に対応した最大電流値を、第1最大電流値I1として表している。また、電流低減期間に対応した最大電流値を、第2最大電流値I2として表している。更に、他処理期間に対応した最大電流値を、第3最大電流値(「第3の電流値」の一例)I3として表している。
【0081】
また、
図8から
図10では、第1最大電流値I1、第2最大電流値I2及び第3最大電流値I3のそれぞれが必要になる期間と必要にならない期間を「必要」、「不要」により表している。
【0082】
各時刻に対して必要になる最大電流値は1つ又は複数である。そして、各時刻において必要になる1つ又は複数の最大電流値のうち最大のものを最大電流値として設定をする。こうすることにより何れの処理に対しても実際に必要になる電流をモータに供給することが可能になる。
【0083】
図8から
図10において、時刻t60から時刻61までの期間は、電流低減期間のみの期間である。従って、最大電流値Imaxとして第2最大電流値I2を設定する(Imax=I2)。
【0084】
また、時刻t61から時刻t62までの期間は電流上昇期間のみの期間であるので、必要になる最大電流値は第1最大電流値I1だけである。従って、最大電流値Imaxとして第1最大電流値I1を設定する(Imax=I1)。
【0085】
更に、時刻t62から時刻t63までの期間は電流上昇期間に他処理期間が重なる期間であるので、必要になる最大電流値は第1最大電流値I1及び第3最大電流値I3である。従って、この期間に対しては、第1最大電流値I1及び第3最大電流値I3のうち最大のものを最大電流値Imaxとして設定する(Imax=max(I1,I3))。
【0086】
更に、時刻t63から時刻t64までの期間は電流低減期間に他処理期間が重なる期間であるので、必要になる最大電流値は第2最大電流値I2及び第3最大電流値I3である。従って、この期間に対しては、第2最大電流値I2及び第3最大電流値I3のうち最大のものを最大電流値Imaxとして設定する(Imax=max(I2,I3))。
【0087】
更に、時刻t64から時刻t65までの期間は電流低減期間のみの期間である。従って、最大電流値Imaxとして第2最大電流値I2を設定する(Imax=I2)。
【0088】
更に、時刻t65から時刻t66までの期間は電流上昇期間のみの期間であるので、必要になる最大電流値は第1最大電流値I1だけである。従って、最大電流値Imaxとして第1最大電流値I1を設定する(Imax=I1)。
【0089】
図8は、他処理期間に対応する第3最大電流値I3が電流低減期間に対応する第2最大電流値I2よりも小さい場合(I1>I2>I3の場合)に実際に設定される最大電流値909及びモータを流れる電流911を示している。この場合、他処理期間が重なっても電流上昇期間及び電流低減期間に対して設定される最大電流値I1、I2は影響を受けない。
【0090】
図9は、第3最大電流値I3が第1最大電流値I1よりも大きい場合(I3>I1>I2の場合)に実際に設定される最大電流値913及びモータを流れる電流915を示している。この場合、他処理期間が重なると電流上昇期間及び電流低減期間に対して設定される最大電流値I1、I2はそれぞれ影響を受け、第3最大電流値I3に変化する。
【0091】
図10は、第3最大電流値I3が第1最大電流値I1と第2最大電流値I2の間にある場合(I1>I3>I2の場合)に実際に設定される最大電流値917及びモータを流れる電流919を示している。この場合、他処理期間が重なっても電流上昇期間に対して設定される最大電流値I1は影響を受けない。他方で、他処理期間が重なると電流低減期間に対して設定される最大電流値I2は影響を受け、第3最大電流値I3に変化する。
【0092】
[2.8 他処理としての印字加速処理、印字減速処理]
なお、
図7を参照して、オンライン印字処理Qでは、印字加速処理Q1、印字定速処理Q2及び印字減速処理Q3がこの順に実行されるという説明を既にした。
【0093】
ここで、印字加速処理Q1、印字減速処理Q3を他処理として扱うこともできる。この場合、印字加速処理Q1で必要な最大電流値を第3最大電流値として扱う。また、印字減速処理Q3で必要な最大電流値を第3電流値として扱う。
【0094】
印字加速処理Q1を他処理として扱い、印字加速処理Q1に必要な最大電流値を第3最大電流値I3として設定したとき、第1最大電流値I1、第2最大電流値I2及び第3最大電流値I3の間には、次の3通りの大小関係がありえる。
(C1)I3>I1>I2
(C2)I1>I3>I2
(C3)I1>I2>I3
(C1)の場合には、電流上昇期間においては最大電流値として印字加速処理Q1に必要な最大電流値が設定される。また、電流低減期間においても最大電流値として印字加速処理Q1に必要な最大電流値が設定される。従って、印字加速処理Q1を支障なく実行することができる。
(C2)の場合には、電流上昇期間においては最大電流値として印字加速処理Q1に必要な最大電流値よりも大きな第1電流値が設定される。また、電流低減期間においても最大電流値として印字加速処理Q1に必要な最大電流値が設定される。従って、印字加速処理Q1を支障なく実行することができる。
(C3)の場合には、電流上昇期間においては最大電流値として印字加速処理Q1に必要な最大電流値よりも大きな第1電流値が設定される。また、電流低減期間においても最大電流値として印字加速処理Q1に必要な最大電流値よりも大きな第2電流値が設定される。従って、印字加速処理Q1を支障なく実行することができる。
【0095】
印字減速処理Q3を他処理として扱い、印字減速処理Q3に必要な最大電流値を第3最大電流値I3として設定したときも同様である。
【0096】
[2.9 モータの最大電流値の設定方法]
[2.9.1 基本]
次に、モータの最大電流値の設定方法について説明する。
【0097】
まず、
図11に示す初期化処理INITが実行されてから、
図7に示すオンライン印字処理Qが実行される。
【0098】
図11を参照すると、初期化処理INITにおいては、まず、待機期間計測タイマの長さTaを設定する(ステップS601)。
待機期間設定タイマの長さTaは、
図4に示す待機期間Taに対応するものである。
【0099】
次に、電流上昇期間計測タイマの長さT1を設定する(ステップS603)。電流上昇期間計測タイマの長さT1は、
図4に示す電流上昇期間T1に対応するものである。
【0100】
図7を参照すると、既に説明したように、オンライン印字処理Qでは、印字加速処理Q1,印字定速処理Q2及び印字減速処理Q3がこの順に実行される。
【0101】
印字定速処理Q2の詳細は
図12に示すとおりである。
【0102】
図12を参照すると、印字定速処理Q2においては、ステップS613SからステップS613Eまでの間にある処理が繰り返される。
【0103】
各繰り返しにおいては、次のことが行われる。
ラベル位置検出センサ35が印字直前のラベルPLの後方エッジ715を検出したならば(ステップS615でYES)、待機期間計測タイマを長さTaから起動する(ステップS617)。これは、第n番目のラベルPLが
図4Aに示す位置にあるような後方エッジ検出時刻t1において待機期間計測タイマを起動することに対応する。
【0104】
次に、待機期間計測タイマがタイムアウトしたならば(ステップS619でYES)、電流低減期間を終了し、且つ、電流上昇期間を開始し(ステップS621)、更に、電流上昇期間計測タイマを長さT1から起動する(ステップS623)。これは第n番目のラベルPLが
図4Bに示す位置にあるような電流上昇期間開始時刻t2において電流低減期間が終了して電流上昇期間が開始することに対応する。
【0105】
次に、電流上昇期間計測タイマがタイムアウトしたならば(ステップS625でYES)、電流上昇期間を終了し、且つ、電流低減期間を開始する(ステップS627)。これは第n番目のラベルPL及び第(n+1)番目のラベルPLが
図4Eに示す位置にあるような電流上昇期間終了時刻t5において電流上昇期間が終了して電流低減期間が開始することに対応する。
【0106】
次に、最大電流値を設定し(ステップS637)、各繰り返しにおける動作を終了する。ステップS637の詳細については後述する。
【0107】
なお、
図12には示していないが、待機期間計測タイマは、起動されたならば、自走式でタイムアウトするまでカウントダウンし、その後再起動されるまで休止する。
同様に、
図12には示していないが、電流上昇期間計測タイマは、起動されたならば、自走式でタイムアウトするまでカウントダウンし、その後再起動されるまで休止する。
【0108】
[2.9.2 ラベル貼付周期が通常である連続紙に対応した動作]
ところで、電流低減区間711を設けられるような或る程度長いラベル貼付周期を持つ連続紙Pを用いた場合には、或る繰り返しにおいて、電流上昇期間計測タイマがタイムアウトして(S625でYES)、電流上昇期間が終了する(ステップS627)。そして、それから電流低減期間が経過した時刻における繰り返しにおいて、待機期間タイマがタイムアウトして(ステップS619でYES)、電流上昇期間が開始し(ステップS621)、電流上昇期間計測タイマが長さT1から起動される(ステップS623)。従って、電流上昇期間計測タイマがタイムアウトしたままである期間が存在する。電流上昇期間計測タイマがタイムアウトしたままである期間は電流低減区間711に対応した電流低減期間である。これは、電流低減区間と電流上昇区間が交互に繰り返される
図5に示す例に対応している。
【0109】
[2.9.3 ラベル貼付周期が短い連続紙に対応した動作]
これに対して、電流低減区間711を設けられないほど短いラベル貼付周期を持つ連続紙P’を用いた場合には、初回動作時には待機期間計測タイマがタイムアウトして(ステップS619でYES)、電流上昇期間が開始する(ステップS621)。そして、電流上昇期間計測タイマが長さT1から起動される(ステップS623)。それから、電流上昇期間計測タイマがタイムアウトせずに(ステップS625でNO)、電流上昇期間を終了させるステップS627を実行しないでいるうちに、次のラベルPLに対応した待機期間タイマがタイムアウトする(ステップS619でYES)。このとき、電流上昇期間が再度最初から開始し(ステップS621)、電流上昇期間計測タイマが長さT1から起動される(ステップS623)。ここで、或る電流上昇期間が終了する前にその次の電流上昇期間が開始することになる。これが繰り返されると実質的には電流上昇期間が継続的に延長することになる。また、電流上昇期間計測タイマがタイムアウトする前に長さT1から再起動されるので、電流上昇期間計測タイマは、計測状態を維持することになる。これは、合一電流上昇区間709Cが形成される
図6に対応している。
【0110】
次に
図12に示す最大電流値を設定するステップS637の詳細について
図13を参照して説明する。
【0111】
図13を参照すると、まず、現在が電流上昇期間に属しているのであれば(ステップS641でYES)、最大電流値Imaxとして第1最大電流値I1を設定する(ステップS643)。
【0112】
他方で、現在が電流低減期間に属しているのであれば(ステップS641でNO)、最大電流値Imaxとして第2最大電流値I2を設定する(ステップS645)。
【0113】
次に、他処理が実行中であれば(ステップS647でYES)、最大電流値ImaxとしてステップS649に入った時点での最大電流値Imaxと他処理に対応する第3最大電流値I3のうち大きな値を持つ電流値が設定される(ステップS649)。
【0114】
従って、最大電流値Imaxを設定するステップS637の全体で見ると、他処理が実行されていないのであれば、電流上昇期間では、第1最大電流値I1が最大電流値Imaxとして設定される。また、他処理が実行されていないのであれば、電流低減期間では、第2最大電流値I2が最大電流値Imaxとして設定される。
【0115】
他方で、他処理が実行されているのであれば、電流上昇期間では、第1最大電流値I1及び他処理で必要な第3最大電流値I3のうち大きな値を持つ電流値が最大電流値Imaxとして設定される。また、他処理が実行されているのであれば、電流低減期間では、第2最大電流値I2及び他処理で必要な第3最大電流値I3のうち大きな値を持つ電流値が最大電流値Imaxとして設定される。
【0116】
この内容は、
図9から
図9を参照して説明した内容に対応する。
【0117】
なお、上記のプリンタにより行なわれる最大電流値設定方法は、ハードウェア、ソフトウェア又はこれらに組み合わせにより実現することができる。ここで、ソフトウェアによって実現されるとは、コンピュータがプログラムを読み込んで実行することにより実現されることを意味する。
【0118】
プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体を含む。
【0119】
本発明はその精神又は主要な特徴から逸脱することなく、他の種々の形で実施することができる。そのため、前述した各実施形態は単なる例示にすぎず、限定的に解釈されるべきではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文にはなんら拘束されない。更に、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更はすべて本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0120】
1 プリンタ
2 本体ケース
3 プリンタカバー
4 剥離ユニット
6a ロール紙ガイド
8 ヒンジ
9 ロール紙収容室
10 プラテンローラ
10a プラテン軸
10b ギア
12 剥離バー
15 表示パネル
20 排出部
22b ギア
27 プラテン保持ブラケット
28 サーマルヘッド
35 ラベル位置検出センサ
41 剥離ローラカバー
42 剥離ローラ保持部
45 剥離ローラ
51b カバー開放用ボタン
52b 剥離ユニット開放用ボタン
55 コイルばね
81 ヒンジ軸
901 最大電流値
903 駆動電流
Imax 最大電流値
M 位置検出マーク
P、P’ 連続紙
PL ラベル
PM 台紙
R ロール紙