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  • 特開-抵抗溶接方法および抵抗溶接装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022144742
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】抵抗溶接方法および抵抗溶接装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 11/16 20060101AFI20220926BHJP
   B23K 11/11 20060101ALI20220926BHJP
   H01R 43/02 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
B23K11/16 101
B23K11/11 540
H01R43/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021045890
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】596008817
【氏名又は名称】ナグシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100167977
【弁理士】
【氏名又は名称】大友 昭男
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【弁理士】
【氏名又は名称】笹沼 崇
(72)【発明者】
【氏名】浅田 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】和田 圭司
【テーマコード(参考)】
4E165
5E051
【Fターム(参考)】
4E165AA03
4E165AA04
4E165AA05
4E165AA12
4E165AA13
4E165AB02
4E165AB04
4E165AB12
4E165AB21
4E165AC06
4E165BA05
4E165BA08
4E165BA11
4E165BB02
4E165BB12
4E165EA14
5E051LA02
5E051LB04
5E051LB05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】金属体に絶縁体が介在しても、絶縁体の絶縁破壊による金属体への影響を可及的に小さくして、金属体を抵抗溶接できる抵抗溶接方法および抵抗溶接装置を提供する。
【解決手段】金属体7とこれを絶縁する絶縁体8とを有する被溶接物を上下電極棒で挟んで抵抗溶接するものであって、金属体7と絶縁体8とが接して重なる箇所で、当該絶縁体8の狭小点P1のみを絶縁破壊して、当該金属体7の狭小点P1に至る電流経路とすることと、金属体7に、前記電流経路が確保された状態で、加圧しながら溶接電流を流し、溶融接合することと、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属体とこれを絶縁する絶縁体とを有する被溶接物を上下電極棒で挟んで抵抗溶接する方法であって、
前記金属体と前記絶縁体とが接して重なる箇所で、当該絶縁体の狭小点のみを絶縁破壊して、当該金属体の狭小点に至る電流経路とすることと、
前記金属体に、前記電流経路が確保された状態で、加圧しながら溶接電流を流し、溶融接合することと、
を含む抵抗溶接方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記絶縁体の狭小点を、前記上下電極棒間で加熱により溶融して絶縁破壊する抵抗溶接方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記被溶接物が複数の金属体と絶縁体を積層させた積層体であって、前記積層体の上下側に溶け込み用部材を設けて、これを前記上下電極棒間で挟んで抵抗溶接する、抵抗溶接方法。
【請求項4】
請求項1または2において、
前記被溶接物が複数の金属体と絶縁体を積層させた積層体であって、針状プレスで当該複数の絶縁体および金属体の狭小点で積層方向に孔明けして、当該孔を複数の金属体の電流経路とする抵抗溶接方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の抵抗溶接方法で、前記被溶接物を抵抗溶接する抵抗溶接装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属体とこれを絶縁する絶縁体とを有する被溶接物を抵抗溶接する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、金属線の端子接続として、金属線と端子台とを上下電極で挟んで加圧しながら短時間で大電流の溶接電流を流して接続する抵抗溶接が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-100019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、金属線(金属体)に樹脂(絶縁体)で被膜コーティングされている場合には、金属線に絶縁体を含むので、そのままで金属線を接合するのは困難である。この場合、ヒータなどで加熱し樹脂を溶融して除くことも考えられるが、アルミニウム線や微細線などの金属線の場合、加熱により金属線が切断されやすい問題がある。
【0005】
また、薄い金属箔(金属体)と樹脂(絶縁体)が複数積層した積層体の溶接では、絶縁体が介在するので、溶接電流の導通確保が困難である。さらに溶接電流の導通を確保できても、薄い金属箔同士の接合だけでは溶接による強度が低くなる。一方、導通させるように溶接電圧を高くすると金属箔が破れること(爆火)もあり得る。
【0006】
本発明は、上記課題を解決して、金属体に絶縁体が介在しても、絶縁体の絶縁破壊による金属体への影響を可及的に小さくして、金属体を抵抗溶接できる抵抗溶接方法および抵抗溶接装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る抵抗溶接方法および抵抗溶接装置は、金属体とこれを絶縁する絶縁体とを有する被溶接物を上下電極棒で挟んで抵抗溶接するものであって、
前記金属体と前記絶縁体とが接して重なる箇所で、当該絶縁体の狭小点のみを絶縁破壊して、当該金属体の狭小点に至る電流経路とすることと、
前記金属体に、前記電流経路が確保された状態で、加圧しながら溶接電流を流し、溶融接合することと、を含む。
【0008】
この構成によれば、金属体と絶縁体とが接して重なる箇所で、絶縁体の狭小点のみを絶縁破壊して金属体の狭小点に至る電流経路とし、金属体に電流経路が確保された状態で加圧しながら溶融接合するので、金属体に絶縁体が介在しても、絶縁体の絶縁破壊による金属体への影響を可及的に小さくして、金属体を抵抗溶接することができる。
【0009】
本発明では、前記絶縁体の狭小点を、前記上下電極棒間で加熱により溶融して絶縁破壊してもよい。この場合、上下電極棒間の加熱の調整により絶縁体の狭小点のみを溶融して狭小点位置から絶縁体を除くようにして、金属体への影響を可及的に小さくできる。
【0010】
また、前記被溶接物が複数の金属体と絶縁体を積層させた積層体であって、前記積層体の上下側に溶け込み用部材を設けて、前記上下電極棒間で挟んで抵抗溶接するようにしてもよい。この場合、電流経路を拡大させて金属体に溶け込み用部材が溶け込み、その分溶接による強度低下を抑制するとともに、金属体の飛散を防止して電極棒の寿命を延ばすことができる。
【0011】
さらに、前記被溶接物が複数の金属体と絶縁体を積層させた積層体であって、針状プレスで当該複数の絶縁体および金属体の狭小点を積層方向に孔明けして、当該孔を複数の金属体の電流経路とするようにしてもよい。この場合、積層体の積層枚数が多くなると溶接電流における電流経路の抵抗が高くなるので、当該孔によって抵抗を小さくして電流経路をより容易に確保することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、金属体とこれを絶縁する絶縁体とを有する被溶接物について、金属体に絶縁体が介在しても、絶縁体の絶縁破壊による金属体への影響を可及的に小さくして、金属体を抵抗溶接することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る抵抗溶接装置を示す概略構成図である。
図2】(A)、(B)は抵抗溶接の動作例を示す図である。
図3】被溶接物の一例を示す図である。
図4】(A)~(C)は抵抗溶接の動作例を示す図である。
図5】被溶接物の他例を示す図である。
図6】(A)、(B)は抵抗溶接の動作例を示す図である。
図7】(A)、(B)は抵抗溶接の動作例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る抵抗溶接装置1を示す概略構成図である。本溶接装置1は、上下移動自在に設けられた上下一対の電極棒5、6と、上下電極棒5、6に溶接電流を流す電源部2と、上下電極棒5、6を加熱するヒータ3と、この上下電極棒5、6間に挟んだ被溶接物Wを上下方向に加圧する図示しない加圧アクチュエータとを備えている。
【0015】
図2は被溶接物W1を抵抗溶接する第1実施例を示す。図2(A)のように、被溶接物W1は例えば樹脂(絶縁体)8の両面に金属体7、7が形成されたシートである。金属体7と絶縁体8とが接して重なる箇所の狭小点(ピンポイント)P1、P1で金属体7、7同士を接合する。
【0016】
図2(B)に示すように、例えば図1の上下電極棒5、6間でヒータ3による加熱によって絶縁体8の狭小点P1、P1のみを溶融してこの部分の絶縁体8を除いて絶縁破壊する。その場合、上下電極棒5、6で加圧してこの部分の絶縁体8を周囲に退かすこともできる。
【0017】
これにより、上下電極棒5、6間の加熱および/または加圧の調整により絶縁体8の狭小点P1、P1のみを溶融して狭小点位置から絶縁体8を除くようにして、金属体7への影響を可及的に小さくできる。
【0018】
そして、金属体7、7同士を直接接触させて、両狭小点P1、P1に至る溶接電流の電流経路とする。
【0019】
この電流経路が確保された状態で、金属体7、7に加圧しながら短時間で大電流の溶接電流を流し(図1)、金属体7、7内部にナゲットNをつくり溶融接合する。
【0020】
図3は、被溶接物W2を抵抗溶接する第2実施例を示す。被溶接物W2は、例えば二次電池内部の極板に使用される。この被溶接物W2は、樹脂(絶縁体)12の両面に銅箔のような薄い金属箔(金属体)11が形成され、さらにこの銅箔に銅メッキされているシート14が複数積層した積層体10である。極板に使用される金属箔には、上記銅箔のほかに、アルミニウム箔、ステンレス箔および鉄箔などが使用される。
【0021】
積層体10の上下に溶け込み用部材15を設けられている。この溶け込み用部材15は銅メッキと同系の部材からなる。この被溶接物W2を図1の上下電極棒5、6間に挟んで抵抗溶接する。
【0022】
積層体10の上下側に溶け込み用部材15を設けることによって、電流経路を拡大させて金属体11に溶け込み用部材15が溶け込み、その分溶接による強度低下を抑制するとともに、溶接の際に金属体11が飛散するのを抑制して電極棒5、6への付着量を減少させ、電極棒5、6の寿命を延ばすことができる。
【0023】
図4(A)~(C)は、第2実施例の抵抗溶接の動作を示す図である。図4(A)のように、金属体11と絶縁体12とが接して重なる箇所の狭小点P2、P2で金属体11、11同士を接合する。
【0024】
図4(B)のように、針状プレスPで複数の絶縁体12および金属体11の上下の狭小点P2、P2のみを積層方向に孔明けして絶縁破壊する。この孔の切り口で複数の金属体11同士が積層方向に密着するので、この孔の切り口を伝って両狭小点P2、P2に至る電流経路が確保される。
【0025】
被溶接物W2の積層体10の積層枚数が多くなると、溶接電流における電流経路の抵抗が高くなるので、当該針状プレスPによる孔によって抵抗を小さくして電流経路をより容易に確保することができる。
【0026】
さらに、図1の上下電極棒5、6間でヒータ3による加熱によって絶縁体12を溶融し孔の切り口に残る絶縁体12を除く。その場合、同様に上下電極棒5、6で加圧してもよく、上下電極棒5、6間の加熱および/または加圧の調整により金属体7への影響を可及的に小さくできる。これによって、より確実に両狭小点P2、P2に至る電流経路を確保できる。
【0027】
図4(C)のように、前記電流経路が確保された状態で、加圧しながら電源2から短時間で大電流を流し、積層された金属体11内部にナゲットNをつくり溶融接合する。
【0028】
なお、積層体10の材料の種類、積層枚数によっては図4(B)の針状プレスPによる孔明けを省略するようにしてもよい。
【0029】
図5は被溶接物W3を抵抗溶接する第3実施例を示す。被溶接物W3は、例えば、モータ巻線の端末処理に使用される、金属線(金属体)21に樹脂(絶縁体)22で被膜コーティングされた電線20である。モータ巻線に使用される銅線やアルミニウム線などの金属線には、耐圧や耐熱のために被膜コーティングされる場合が多い。
【0030】
図6(A)のように、電線20は端子台23に抵抗溶接されるもので、例えば図1の上下電極棒5、6間でヒータ3による加熱によって電線20の絶縁体22の狭小点P3、P3のみを溶融してこの部分の絶縁体22を除いて絶縁破壊する。その場合、上下電極棒5、6で加圧してこの部分の絶縁体22を周囲に退かすこともできる。
【0031】
そして、金属体21を端子台23に直接接触させて、両狭小点P3、P3に至る電流経路とする。
【0032】
図6(B)のように、この電流経路が確保された状態で、金属体21、21に加圧しながら短時間で大電流の溶接電流を流し(図1)、金属体21と端子台23の内部にナゲットNをつくり溶融接合する。
【0033】
このように、アルミニウム線や微細線の場合には、加熱で切断されやすいが、上下電極棒5、6間の加熱および/または加圧の調整により絶縁体22の狭小点P3、P3のみを溶融して狭小点位置から絶縁体22を除くように絶縁破壊するので、金属体21への影響を可及的に小さくできる。
【0034】
図7は、図6の変形例で、電線20はフック型の端子台24に抵抗溶接される。上記と同様に、上下電極棒5、6間の加熱および/または加圧の調整により、図7(A)の電線20の絶縁体22の狭小点P4、P4のみを溶融して狭小点位置から絶縁体22を除くようにして絶縁破壊し、金属体21を端子台24に直接接触させて、両狭小点P4、P4に至る電流経路とする。
【0035】
図7(B)のように、この電流経路が確保された状態で、金属体21、21に加圧しながら短時間で大電流の溶接電流を流し(図1)、金属体21と端子台24の内部にナゲットNをつくり溶融接合する。同様に、絶縁被覆の狭小点P4、P4のみを加熱および/または加圧の調整により溶融して絶縁破壊するので、金属体21への影響を可及的に小さくできる。
【0036】
モータ巻線としては、その他に、電線の端部を端子台に巻き付けて抵抗溶接する巻き付け型、電線を巻回したドラムコアの鍔部の内面に形成されたスリットに収納された端部を抵抗溶接するスリット型など、が例示されるが、同様に、絶縁被覆の狭小点のみを加熱で溶融して絶縁破壊するので、金属体への影響を可及的に小さくできる。
【0037】
一般的な被覆線としては、銅系、アルミニウム系、ニッケル系およびステンレス系の芯線に被覆コーティングされたものがあるが、上記と同様に抵抗溶接される。
【0038】
このように、本発明では、金属体と絶縁体とが接して重なる箇所で、絶縁体の狭小点のみを絶縁破壊して金属体の狭小点に至る電流経路とし、金属体に電流経路が確保された状態で加圧しながら溶融接合するので、金属体に絶縁体が介在しても、絶縁体の絶縁破壊による金属体への影響を可及的に小さくして、金属体を抵抗溶接することができる。
【0039】
本発明では、上下電極棒間の加熱および/または加圧の調整により絶縁体の狭小点のみを溶融して狭小点位置から絶縁体を除くようにして、金属体への影響を可及的に小さくできる。また、被溶接物が複数の金属体と絶縁体を積層させた積層体の場合、積層体の上下側に溶け込み用部材を設けて、上下電極棒間で挟んで抵抗溶接することにより、電流経路を拡大させて金属体に溶け込み用部材が溶け込み、その分溶接による強度低下を抑制するとともに、金属体の飛散を防止して電極棒の寿命を延ばすことができる。
【0040】
本発明では、被溶接物が複数の金属体と絶縁体を積層させた積層体の場合、針状プレスで複数の絶縁体および金属体の狭小点を積層方向に孔明けして、積層体の積層枚数が多くなると溶接電流における電流経路の抵抗が高くなるので、当該孔によって抵抗を小さくして電流経路をより容易に確保することができる。
【0041】
なお、この実施形態では、上下電極棒をヒータで加熱しているが、何らこれに限定されず、例えば、別の交流電源を設けて上下電極棒を加熱するようにしてもよい。
【0042】
本発明は、以上の実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0043】
1:抵抗溶接装置
2:電源部
3:ヒータ
5:上電極棒
6:下電極棒
7、11、21:金属体
8、12、22:絶縁体
10:積層体
13:メッキ
15:溶け込み用部材
P:針状プレス
P1~P4:狭小点
W1~W3:被溶接物

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7