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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022144772
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】電磁継電器
(51)【国際特許分類】
   H01H 50/54 20060101AFI20220926BHJP
【FI】
H01H50/54 B
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021045931
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】390001812
【氏名又は名称】株式会社デンソーエレクトロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 翔真
(72)【発明者】
【氏名】田中 智明
(57)【要約】
【課題】絶縁物の介在による可動接点と固定接点の導通不良を抑制することが可能な電磁継電器を提供する。
【解決手段】第1可動接点28、第1固定接点26、第2可動接点29および第2固定接点27それぞれの表面が可動子20の可動方向に垂直な一面となる可動垂直面に対して傾斜した状態となるようにする。このような構成では、可動子20が励磁コイル12側に付勢されると、第1可動接点28は第1固定接点26の表面の傾斜に沿って摺動し、第2可動接点29は第2固定接点27の表面の傾斜に沿って摺動するという接点ズレ動作が行われる。これにより、これらの接触箇所に絶縁物が介在していたとしても、その絶縁物が破壊されること、もしくは接触箇所がずれて絶縁物が無い場所が接触箇所に変わることにより、接点導通を確保することが可能になる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電時に磁界を形成する励磁コイル(12)と、
前記励磁コイルにより駆動される可動コア(15)と、
第1可動接点(28)および第2可動接点(29)を有するとともに、一方向を可動方向として前記可動コアに追従作動する可動子(20)と、
前記励磁コイルへの通電時に前記可動子が移動させられると、前記第1可動接点が当接する第1固定接点(26)を有する第1固定端子(24)、および、前記第2可動接点が当接する第2固定接点(27)を有する第2固定端子(25)と、を備え、
前記可動方向を法線方向とする一面を可動垂直面として、
前記第1可動接点および前記第1固定接点は、互いに当接する表面が前記可動垂直面に対して同方向に傾斜しており、
前記第2可動接点および前記第2固定接点は、互いに当接する表面が前記可動垂直面に対して同方向に傾斜している、電磁継電器。
【請求項2】
前記第1可動接点と前記第2可動接点は、互いの近い側の端が前記励磁コイルから離れる側、遠い側の端が前記励磁コイルに近づく側に位置するように、互いの前記表面が前記可動垂直面に対して傾斜しており、
前記第1固定接点と前記第2固定接点は、互いの近い側の端が前記励磁コイルから離れる側、遠い側の端が前記励磁コイルに近づく側に位置するように、互いの前記表面が前記可動垂直面に対して傾斜している、請求項1に記載の電磁継電器。
【請求項3】
前記第1可動接点と前記第2可動接点は、互いの近い側の端が前記励磁コイルに近づく側、遠い側の端が前記励磁コイルから離れる側に位置するように、互いの前記表面が前記可動垂直面に対して傾斜しており、
前記第1固定接点と前記第2固定接点は、互いの近い側の端が前記励磁コイルに近づく側、遠い側の端が前記励磁コイルから離れる側に位置するように、互いの前記表面が前記可動垂直面に対して傾斜している、請求項1に記載の電磁継電器。
【請求項4】
前記第1可動接点および前記第1固定接点の互いに当接する前記表面が前記可動垂直面に対して傾斜している方向と、前記第2可動接点および前記第2固定接点の互いに当接する表面が前記可動垂直面に対して傾斜している方向が同方向である、請求項1に記載の電磁継電器。
【請求項5】
前記可動子は、一端(201)および他端(202)を有する棒状部分を有し、前記一端における前記第1固定接点側の第1先端面(201a)に前記第1可動接点が配置されていると共に、前記他端における前記第2固定接点側の第2先端面(202a)に前記第2可動接点が配置されており、
前記第1固定端子の第3先端面(241)に前記第1固定接点が配置されていると共に、前記第2固定端子の第4先端面(251)に前記第2固定接点が配置されており、
前記第1先端面と前記第3先端面とが前記可動垂直面に対して同方向に傾斜しており、前記第2先端面と前記第4先端面とが前記可動垂直面に対して同方向に傾斜していることにより、前記第1固定接点、第2固定接点、前記第1可動接点および前記第2可動接点それぞれの前記表面が前記可動垂直面に対して傾斜している、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の電磁継電器。
【請求項6】
前記可動子は、一端(201)から他端(202)に至る迄棒状の平板部材で構成されており、前記一端における前記第1固定接点側の第1先端面(201a)に前記第1可動接点が配置されていると共に、前記他端における前記第2固定接点側の第2先端面(202a)に前記第2可動接点が配置されており、
前記第1固定端子の第3先端面(241)に前記第1固定接点が配置されていると共に、前記第2固定端子の第4先端面(251)に前記第2固定接点が配置されており、
前記第1固定接点、第2固定接点、前記第1可動接点および前記第2可動接点の形状に基づき、前記第1固定接点、第2固定接点、前記第1可動接点および前記第2可動接点それぞれの前記表面が前記可動垂直面に対して傾斜している、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の電磁継電器。
【請求項7】
前記可動子は、一端(201)から他端(202)に至る迄棒状の平板部材で構成されており、前記一端における前記第1固定接点側の第1先端面(201a)に前記第1可動接点が配置されていると共に、前記他端における前記第2固定接点側の第2先端面(202a)に前記第2可動接点が配置されており、
前記第1固定端子の第3先端面(241)に前記第1固定接点が配置されていると共に、前記第2固定端子の第4先端面(251)に前記第2固定接点が配置されており、
前記可動子の全体が前記可動垂直面に対して傾斜させられることで前記第1先端面および前記第2先端面が前記可動垂直面に対して傾斜させられており、
前記第1先端面と前記第3先端面とが前記可動垂直面に対して同方向に傾斜しており、
前記第2先端面と前記第4先端面とが前記可動垂直面に対して同方向に傾斜している、請求項4に記載の電磁継電器。
【請求項8】
前記可動子は、一端(201)から他端(202)に至る迄棒状の平板部材で構成されており、前記一端における前記第1固定接点側の第1先端面(201a)に前記第1可動接点が配置されていると共に、前記他端における前記第2固定接点側の第2先端面(202a)に前記第2可動接点が配置されており、
前記第1固定端子の第3先端面(241)に前記第1固定接点が配置されていると共に、前記第2固定端子の第4先端面(251)に前記第2固定接点が配置されており、
前記第1可動接点と前記第1固定接点は、一方が断面三角形状に突き出ていて、他方が一方と対応する断面三角形状の凹みが形成された凹形状とされており、
前記第2可動接点と前記第2固定接点は、一方が断面三角形状に突き出ていて、他方が一方と対応する断面三角形状の凹みが形成された凹形状とされている、請求項1に記載の電磁継電器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動接点と固定接点とを接離させて電気回路を開閉する電磁継電器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電磁継電器は、2つの固定接点を有する固定端子と、2つの固定接点に対応する2つの可動接点を有する可動子を備えた構造とされ、一方向を可動方向として可動子を可動させて可動接点と固定接点とを接離させることにより、電気回路を開閉する。例えば、特許文献1では、可動子の可動方向を法線方向とする一面に対して平行な平板状で可動子を構成し、可動接点および固定接点をその一面に沿うように配置して、可動接点と固定接点とがその一面に水平に当接するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-101574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記構造の電磁継電器では、何らかの原因で可動接点もしくは固定接点上に絶縁物の異物が付着、堆積した場合に、接点導通不良を起こすという課題がある。例えば、電磁継電器が開放型リレーである場合、シロキサン環境下で使用するとリレー内部にシロキサン蒸気が侵入し、接点上にシロキサン由来の絶縁物であるSiOが生成することで接点導通不良を起こす。
【0005】
本発明は上記点に鑑みて、絶縁物の介在による可動接点と固定接点の導通不良を抑制することが可能な電磁継電器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の電磁継電器は、通電時に磁界を形成する励磁コイル(12)と、励磁コイルにより駆動される可動コア(15)と、第1可動接点(28)および第2可動接点(29)を有するとともに、一方向を可動方向として可動コアに追従作動する可動子(20)と、励磁コイルへの通電時に可動子が移動させられると、第1可動接点が当接する第1固定接点(26)を有する第1固定端子(24)、および、第2可動接点が当接する第2固定接点(27)を有する第2固定端子(25)と、を備えている。そして、可動方向を法線方向とする一面を可動垂直面として、第1可動接点および第1固定接点は、互いに当接する表面が可動垂直面に対して同方向に傾斜しており、第2可動接点および第2固定接点は、互いに当接する表面が可動垂直面に対して同方向に傾斜している。
【0007】
このような構成とすれば、可動子が励磁コイル側に付勢されると、第1可動接点は第1固定接点の表面の傾斜に沿って摺動し、第2可動接点は第2固定接点の表面の傾斜に沿って摺動するという接点ズレ動作が行われる。これにより、これらの接触箇所に絶縁物が介在していたとしても、その絶縁物が破壊されること、もしくは接触箇所がずれて絶縁物が無い場所が接触箇所に変わることにより、接点導通を確保することが可能になる。
【0008】
例えば、請求項2に記載したように、第1可動接点と第2可動接点については、互いの近い側の端が励磁コイルから離れる側、遠い側の端が励磁コイルに近づく側に位置するように、互いの表面を可動垂直面に対して傾斜させ、第1固定接点と第2固定接点については、互いの近い側の端が励磁コイルから離れる側、遠い側の端が励磁コイルに近づく側に位置するように、互いの表面を可動垂直面に対して傾斜させる構成とすることができる。
【0009】
また、請求項3に記載したように、第1可動接点と第2可動接点については、互いの近い側の端が励磁コイルに近づく側、遠い側の端が励磁コイルから離れる側に位置するように、互いの表面を可動垂直面に対して傾斜させ、第1固定接点と第2固定接点については、互いの近い側の端が励磁コイルに近づく側、遠い側の端が励磁コイルから離れる側に位置するように、互いの表面を可動垂直面に対して傾斜させる構成とすることもできる。
【0010】
さらに、請求項4に記載したように、第1可動接点および第1固定接点の互いに当接する表面が可動垂直面に対して傾斜している方向と、第2可動接点および第2固定接点の互いに当接する表面が可動垂直面に対して傾斜している方向を同方向としても良い。
【0011】
請求項5に記載の電磁継電器では、可動子は、一端(201)および他端(202)を有する棒状部分を有し、一端における第1固定接点側の第1先端面(201a)に第1可動接点が配置されていると共に、他端における第2固定接点側の第2先端面(202a)に第2可動接点が配置されており、第1固定端子の第3先端面(241)に第1固定接点が配置されていると共に、第2固定端子の第4先端面(251)に第2固定接点が配置されている。このような構成においては、第1先端面と第3先端面とを可動垂直面に対して同方向に傾斜させ、第2先端面と第4先端面とを可動垂直面に対して同方向に傾斜させることにより、第1固定接点、第2固定接点、第1可動接点および第2可動接点それぞれの表面を可動垂直面に対して傾斜させることができる。
【0012】
請求項6に記載の電磁継電器では、可動子は、一端(201)から他端(202)に至る迄棒状の平板部材で構成されており、一端における第1固定接点側の第1先端面(201a)に第1可動接点が配置されていると共に、他端における第2固定接点側の第2先端面(202a)に第2可動接点が配置されており、第1固定端子の第3先端面(241)に第1固定接点が配置されていると共に、第2固定端子の第4先端面(251)に第2固定接点が配置されている。このような構成においては、第1固定接点、第2固定接点、第1可動接点および第2可動接点の形状に基づき、第1固定接点、第2固定接点、第1可動接点および第2可動接点それぞれの表面を可動垂直面に対して傾斜させることができる。
【0013】
請求項7に記載の電磁継電器では、可動子は、一端(201)から他端(202)に至る迄棒状の平板部材で構成されており、一端における第1固定接点側の第1先端面(201a)に第1可動接点が配置されていると共に、他端における第2固定接点側の第2先端面(202a)に第2可動接点が配置されており、第1固定端子の第3先端面(241)に第1固定接点が配置されていると共に、第2固定端子の第4先端面(251)に第2固定接点が配置されている。このような構成においては、可動子の全体が可動垂直面に対して傾斜させられることで第1先端面および第2先端面を可動垂直面に対して傾斜させられ、さらに、第1先端面と第3先端面とが可動垂直面に対して同方向に傾斜させられることで、第2先端面と第4先端面とを可動垂直面に対して同方向に傾斜させることができる。
【0014】
請求項8に記載の電磁継電器では、可動子は、一端(201)から他端(202)に至る迄棒状の平板部材で構成されており、一端における第1固定接点側の第1先端面(201a)に第1可動接点が配置されていると共に、他端における第2固定接点側の第2先端面(202a)に第2可動接点が配置されており、第1固定端子の第3先端面(241)に第1固定接点が配置されていると共に、第2固定端子の第4先端面(251)に第2固定接点が配置されている。このような構成において、第1可動接点と第1固定接点の一方を断面三角形状に突き出した形状、他方を一方と対応する断面三角形状の凹みが形成された凹形状とし、第2可動接点と第2固定接点の一方を断面三角形状に突き出した形状、他方を一方と対応する断面三角形状の凹みが形成された凹形状としても良い。
【0015】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態に係る電磁継電器の構成を示す正面断面図である。
図2】従来構造の電磁継電器の接点部の動作を示した図である。
図3図1に示す構造の電磁継電器の接点部の動作を示した図である。
図4】第1実施形態の変形例で説明する電磁継電器の接点部の模式図である。
図5】第1実施形態の変形例で説明する電磁継電器の接点部の模式図である。
図6】第1実施形態の変形例で説明する電磁継電器の接点部の模式図である。
図7】第1実施形態の変形例で説明する電磁継電器の接点部の模式図である。
図8】第1実施形態の変形例で説明する電磁継電器の接点部の模式図である。
図9A】第1実施形態の変形例で説明する電磁継電器の接点部の正面模式図である。
図9B】第1実施形態の変形例で説明する電磁継電器の接点部の側面模式図である。
図10】第2実施形態に係る電磁継電器の接点部の模式図である。
図11】第3実施形態に係る電磁継電器の接点部の模式図である。
図12A】第3実施形態の変形例で説明する電磁継電器の接点部の模式図である。
図12B】第3実施形態の変形例で説明する電磁継電器の接点部の模式図である。
図12C】第3実施形態の変形例で説明する電磁継電器の接点部の模式図である。
図13A】第3実施形態の変形例で説明する電磁継電器の接点部の模式図である。
図13B】第3実施形態の変形例で説明する電磁継電器の接点部の模式図である。
図14】第4実施形態に係る電磁継電器の接点部の模式図である。
図15】第4実施形態の変形例で説明する電磁継電器の接点部の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0018】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態にかかる電磁継電器について、図1を参照して説明する。図1に示すように、電磁継電器は、ケース11、励磁コイル12、固定コア13、ヨーク14、可動コア15、復帰バネ16、シャフト17、ベース18、絶縁碍子19、可動子20、支持枠21および接圧バネ22が備えられた構成とされている。
【0019】
ケース11は、例えば樹脂等の非磁性かつ非導電性の材料で構成されている。ケース11内に構成される空間内に、電磁継電器を構成する各部品が収容されている。
【0020】
励磁コイル12は、通電時に磁界を形成するもので、略円筒状とされ、中空状の円筒部を有するボビン12aに巻回されている。この励磁コイル12への通電は図示しない外部接続端子を通じて行われるようになっている。励磁コイル12の内径部に形成された中心孔に、固定コア13等が配置されている。
【0021】
固定コア13は、磁性体よりなり、励磁コイル12の中心孔と対応する大きさの略円柱状部材で構成されており、磁気回路の一部を構成する。固定コア13は、中心軸に沿って貫通孔13aが形成された構造とされており、この貫通孔13a内にシャフト17の一端が位置している。
【0022】
ヨーク14は、励磁コイル12を囲む磁性体部材である。ヨーク14は、励磁コイル12の外周側および軸方向端部の一方を覆うように配置され、磁気回路の一部を構成すると共に、軸方向の一方側で固定コア13の位置に対応する開口部となるヨーク孔142aが形成されたものとして構成される。
【0023】
本実施形態の場合、ヨーク14は、第1部材141と第2部材142とを有した構成とされている。第1部材141は、ステーショナリと呼ばれる部材であり、磁性体よりなる板材を略U字状に折り曲げた構造とされている。この第1部材141によって励磁コイル12の外周側および励磁コイル12の軸方向一端側が覆われている。また、第2部材142は、トッププレートと呼ばれる部材であり、磁性体よりなり、例えば円形平板もしくは矩形平板状で構成され、励磁コイル12の軸方向他端側を覆っている。また、第2部材142は、後述する可動コア15に対向して配置されており、第1部材141と接合されている。
【0024】
第1部材141には、固定コア13と対応する位置に開口部141aが形成されており、この開口部141a内に固定コア13の一部が嵌め込まれることで固定コア13と第1部材141とが接合されている。第2部材142には、中心部に上記したヨーク孔142aが第2部材142を貫通するように形成されている。ヨーク孔142aの形状、つまり第2部材142の内周形状は、可動コア15と対応する形状とされている。
【0025】
可動コア15は、第2部材142におけるヨーク孔142aと対応する位置に配置された磁性体よりなる円盤状部材である。可動コア15の中心軸線上において後述するシャフト17が挿入される貫通孔15aが形成されている。可動コア15は、励磁コイル12への通電が行われていない非通電時には、ヨーク14から離れた休止位置に位置しており、励磁コイル12への通電を行う通電時には、ヨーク14側に磁気吸引されて、ヨーク14の第2部材142に当接させられる。可動コア15の外周形状は、ヨーク孔142aの内周形状と対応した形状となっており、固定コア13と反対側が固定コア13側よりも径が拡大されたフランジ状とされ、そのフランジ状部分がヨーク孔142aの内壁面に当接させられるようになっている。
【0026】
また、本実施形態では、可動コア15のうちの復帰バネ16側の一面に、復帰バネ16が嵌め込まれるストッパ部15bが備えられている。ストッパ部15bは、可動コア15のうち復帰バネ16側の一面から円環状に突き出した突起部によって構成され、その外周面に復帰バネ16が嵌め込まれている。
【0027】
復帰バネ16は、固定コア13と励磁コイル12の内壁面の段差部との間に配置され、可動コア15を固定コア13と反対側に付勢する。励磁コイル12への通電を行う通電時には、電磁吸引力により可動コア15は復帰バネ16に抗して固定コア13側に吸引されるようになっている。
【0028】
このように、固定コア13、ヨーク14、可動コア15および復帰バネ16が磁性体によって構成されており、励磁コイル12へ通電を行う通電時には、これらによって励磁コイル12により誘起された磁束の磁気回路が構成される。
【0029】
シャフト17は、例えば非磁性材料で構成されており、可動コア15に結合されることで可動コア15と一体的に移動可能とされている。より詳細には、シャフト17は、可動コア15に形成された貫通孔15aに挿入された状態で可動コア15に結合されている。そして、シャフト17のうちの一端が固定コア13側に突き出し、固定コア13に形成された貫通孔13a内に入り込んだ状態となっている。
【0030】
また、シャフト17のうち可動コア15における固定コア13側の一面と対応する位置に、シャフト17の一部の外径を拡大したフランジ部17aが形成されている。励磁コイル12への通電時に、可動コア15がフランジ部17aを押すことで、シャフト17が固定コア13側に移動させられるようになっている。
【0031】
さらに、シャフト17のうち固定コア13と反対側の一端には、絶縁碍子19が装着されている。そして、絶縁碍子19が可動子20に当接させられており、シャフト17の軸方向における可動子20の位置決めが行われる。
【0032】
なお、本実施形態の場合、励磁コイル12への通電、非通電によって、可動コア15、シャフト17、絶縁碍子19、可動子20等が進退させられる可動部分となる。
【0033】
ベース18は、非磁性体の絶縁性材料、例えば樹脂によって構成されており、ケース11に固定されている。ベース18は、中央部に開口部18aが形成されており、この開口部18a内にシャフト17や絶縁碍子19が挿通されている。ベース18は、ヨーク14に接した状態でケース11に固定されている。そして、ベース18には、導電金属製の板状の第1固定端子24および第2固定端子25が備えられている。これら第1固定端子24および第2固定端子25が、電磁継電器によってオンオフ制御を行う対象となる電気回路の配線の一部を構成するものである。さらに、ベース18には、第1固定端子24に接続されるように第1固定接点26が取り付けられ、第2固定端子25に接続されるように第2固定接点27が取り付けられている。
【0034】
なお、図示していないが、第1固定端子24および第2固定端子25は、図1の紙面向こう側に伸びる形状とされており、図1の紙面向こう側において、ケース11よりも外側まで引き出された状態となっている。この部分を通じて、第1固定端子24および第2固定端子25が外部配線などに接続されるようになっている。また、ベース18のうち可動コア15と対向する一面は、ストッパ18bとなっており、可動コア15の固定コア13と反対側への移動が規制されるようになっている。
【0035】
可動子20は、可動コア15に追従作動させられるものであり、導電金属製の板状部材で構成され、例えばシャフト17を中心とした対称位置に、導電金属製の2つの可動接点として第1可動接点28および第2可動接点29が固定されている。
【0036】
なお、ここでは、可動子20、第1可動接点28、第2可動接点29、第1固定端子24、第2固定端子25、第1固定接点26および第2固定接点27の構造に基づいて、絶縁物の介在による導通不良を抑制できるようにしている。これらの詳細構造については後述する。
【0037】
また、可動子20は、シャフト17のうち固定コア13に挿入された端部と反対となる他端側に配置されている。可動子20のうち固定コア13側の一面は絶縁碍子19に接しており、絶縁碍子19の位置に可動子20が位置決め配置されている。
【0038】
支持枠21は、ケース11に固定され、ベース18に当接させられている。支持枠21の中央位置には、環状溝21aが形成されており、接圧バネ22の一端側が嵌め込まれることで、接圧バネ22が支持されている。
【0039】
接圧バネ22は、可動子20と支持枠21との間に配置されており、可動子20をシャフト17側、すなわち第1固定接点26および第2固定接点27側に付勢している。このため、可動コア15の移動に伴ってシャフト17および絶縁碍子19が移動させられると、接圧バネ22の弾性力に基づいて可動子20も追従させられるようになっている。また、第1可動接点28および第2可動接点29が第1固定接点26および第2固定接点27と当接させられているときに振動等が生じても、第1可動接点28と第1固定接点26および第2可動接点29と第2固定接点27との接続が維持される。
【0040】
このような構成において、絶縁物の介在による導通不良を抑制すべく、可動子20、第1可動接点28、第2可動接点29、第1固定端子24、第2固定端子25、第1固定接点26および第2固定接点27を以下のような構造としている。
【0041】
まず、第1固定端子24および第2固定端子25を例えば板状部材で構成し、それぞれの一端側に第1固定接点26および第2固定接点27を配置している。また、第1固定端子24のうち少なくとも第1固定接点26が設けられた第3先端面に相当する先端面241および第2固定端子25のうち第2固定接点27が設けられた第4先端面に相当する先端面251を共に平面としている。そして、可動子20の可動方向が法線方向となる平面(以下、可動垂直面という)に対して先端面241および先端面251を傾斜させている。
【0042】
また、各先端面241、251から突き出すようにして、第1固定接点26や第2固定接点27を第1固定端子24や第2固定端子25に配置している。先端面241や先端面251が可動垂直面に対して傾斜させられていることから、第1固定接点26や第2固定接点27もそれぞれの中心軸線が可動垂直面の法線に対して傾斜した状態になっている。より詳しくは、本実施形態の場合、先端面241と先端面251の互いの近い側の端が励磁コイル12から離れる側、互いの遠い側の端が励磁コイル12に近づく側に位置するように、先端面241と先端面251が可動垂直面に対して逆方向に傾斜されている。このため、先端面241と先端面251が山状に配置されている。先端面241や先端面251の可動垂直面に対する傾斜角度については任意であり、異なる傾斜角度とされていても良いが、ここでは同じ傾斜角度としている。
【0043】
本実施形態の場合、第1固定接点26は、第1固定端子24と別体のもので構成され、接点部261と軸部262とを有した構成とされている。同様に、第2固定接点27は、第2固定端子25と別体のもので構成され、接点部271と軸部272とを有した構成とされている。図1では確認できないが、接点部261、271は、先端面241や先端面251の法線方向から見た形状が丸形とされており、軸部262、272よりも大径とされた鍔状で構成され、励磁コイル12と反対側が丸みを帯びて突き出した形状となっている。そして、これら各接点部261、271が先端面241、251から突き出して配置されている。例えば、接点部261、271は、図1の断面形状が、接点部261、271の中心を頂部とする曲面状や、半楕円形、半長円形、もしくは長方形などで構成されている。一方、軸部262、272は、接点部261、271の一面側に配置され、第1固定端子24および第2固定端子25に形成された開口部にかしめられる。これにより、第1固定接点26や第2固定接点27が第1固定端子24や第2固定端子25に固定されている。そして、第1固定接点26の表面、つまり接点部261の表面が先端面241と同方向に傾斜し、第2固定接点27の表面、つまり接点部271の表面が先端面251と同方向に傾斜している。
【0044】
一方、可動子20は棒状の平板状部材で構成され、その両端に第1可動接点28や第2可動接点29がそれぞれ配置されている。可動子20のうち第1可動接点28が配置される一端201における第1先端面に相当する先端面201aと、第2可動接点29が配置される他端202における第2先端面に相当する先端面202aも共に平面とされている。そして、これら先端面201aや先端面202aがそれぞれ先端面241や先端面251と同様に傾斜させられている。すなわち、先端面201aと先端面202aの互いの近い側の端が励磁コイル12から離れる側、互いの遠い側の端が励磁コイル12に近づく側に位置するように、先端面201aと先端面202aが可動垂直面に対して逆方向に傾斜されている。このため、先端面201aと先端面202aが山状に配置されている。先端面201aや先端面202aの可動垂直面に対する傾斜角度については任意であり、異なる傾斜角度とされていても良いが、ここでは同じ傾斜角度としている。
【0045】
第1可動接点28および第2可動接点29は、共に、可動子20と別体のもので構成され、接点部281、291と軸部282、292とを有した構成とされている。接点部281、291は、先端面201aや先端面202aの法線方向から見た形状が丸形とされており、軸部282、292よりも大径とされた鍔状で構成され、励磁コイル12側が丸みを帯びて突き出した形状となっている。例えば、接点部281、291は、図1の断面形状が、接点部281、291の中心を頂部とする曲面状や、半楕円形、半長円形、もしくは長方形などで構成されている。軸部282、292は、接点部281、291の一面側に配置され、可動子20に形成された開口部にかしめられる。これにより、第1可動接点28および第2可動接点29が可動子20に固定されている。そして、第1可動接点28の表面、つまり接点部281の表面が先端面201aと同方向に傾斜し、第2可動接点29の表面、つまり接点部291の表面が先端面202aと同方向に傾斜している。
【0046】
このような構成とされているため、先端面201aおよび第1可動接点28の表面と先端面241および第1固定接点26の表面とは同方向に傾斜している。また、先端面202aおよび第2可動接点29の表面と先端面251および第2固定接点27の表面とは同方向に傾斜している。そして、第1可動接点28と第1固定接点26が当接していない状態においては、これらが可動方向において距離を空けて配置されている。同様に、第2可動接点29と第2固定接点27が当接していない状態においては、これらが可動方向において距離を空けて配置されている。
【0047】
以上のような構造により、本実施形態にかかる電磁継電器が構成されている。続いて、このように構成された電磁継電器の作動について説明する。
【0048】
まず、励磁コイル12への通電が行われていない際には、励磁コイル12への通電に基づく磁気回路が形成されず、可動コア15が固定コア13側に磁気吸引されない。このため、可動コア15や可動子20などの可動部分は図1に示す位置に配置された状態となり、第1可動接点28や第2可動接点29が第1固定接点26や第2固定接点27から離れた状態となる。したがって、第1固定端子24と第2固定端子25との間が電気的に分離された状態となり、電磁継電器がオフ状態となる。
【0049】
続いて、電磁継電器をオンさせる際には励磁コイル12への通電が行われる。このため、励磁コイル12への通電に基づいて誘起された磁束の磁気回路が形成され、可動コア15が固定コア13側に磁気吸引される。そして、可動コア15が固定コア13側に磁気吸引されると、可動子20が当接している絶縁碍子19も固定コア13側に移動させられる。このことから、可動子20や第1可動接点28および第2可動接点29も接圧バネ22の弾性力に基づき、可動コア15に追従して移動する。
【0050】
したがって、第1可動接点28および第2可動接点29が第1固定接点26および第2固定接点27と当接して、第1固定接点26と第2固定接点27との間が電気的に導通させられ、第1固定端子24と第2固定端子25との間が導通させられる。そして、電磁継電器がオン状態となる。これにより、第1固定端子24や第2固定端子25それぞれに接続された外部配線などが導通させられる。
【0051】
また、電磁継電器をオン状態からオフ状態に切り替える際には、励磁コイル12への通電が遮断される。これにより、励磁コイル12の通電に基づいて発生させられていた磁気吸引力が解除される。このため、復帰バネ16の弾性力に基づいて可動コア15が固定コア13と反対側に移動させられる。したがって、第1可動接点28および第2可動接点29が第1固定接点26および第2固定接点27から離れ、第1固定接点26と第2固定接点27との間の電気的接続が遮断され、電磁継電器がオフ状態となる。
【0052】
このような動作を行うに際し、上記したように、先端面201aおよび第1可動接点28の表面と先端面241および第1固定接点26の表面とが同方向に傾斜している。また、先端面202aおよび第2可動接点29の表面と先端面251および第2固定接点27の表面とが同方向に傾斜している。このため、第1可動接点28と第1固定接点26とが当接し、第2可動接点29と第2固定接点27とが当接したときに、各接触点がずれる接点ズレ動作が行われる。
【0053】
仮に、接点周辺が従来の電磁継電器のような構造であった場合、図2の状態(a)に示すように、可動子20が先端面201aから先端面202aに至るまで直線状となる。そして、第1可動接点28、第1固定接点26、第2可動接点29および第2固定接点27それぞれの表面が可動方向に対して垂直になる。このため、図2の状態(b)のように第1可動接点28と第1固定接点26とが当接し、第2可動接点29と第2固定接点27とが当接したときに、可動子20が励磁コイル12側に付勢されても、図2の状態(c)のように接点箇所の位置は変化しない。したがって、これらの接触箇所に絶縁物が介在していると、接点導通を確保することができなくなる可能性がある。
【0054】
これに対して、本実施形態の電磁継電器では、図3の状態(a)、(b)に示すように、第1可動接点28、第1固定接点26、第2可動接点29および第2固定接点27それぞれの表面が可動方向に対して垂直ではなく傾斜した状態になる。このため、可動子20が励磁コイル12側に付勢されると、第1可動接点28は第1固定接点26の表面の傾斜に沿って、第2可動接点29は第2固定接点27の表面の傾斜に沿って、摺動させられる。これにより、第1可動接点28と第1固定接点26との接点の接点ズレ動作や、第2可動接点29と第2固定接点27との接点の接点ズレ動作が行われる。特に、図3の状態(c)に示すように可動子20が撓むようにすれば、第1可動接点28および第2可動接点29が互いに遠ざかる側により多く移動させられることになり、より大きく接点ズレ動作が行われるようにできる。
【0055】
そして、このような接点ズレ動作が行われると、第1可動接点28と第1固定接点26との間や第2可動接点29と第2固定接点27との間がこすれ合わせて接触させられる。このため、これらの接触箇所に絶縁物が介在していたとしても、その絶縁物が破壊されること、もしくは接触箇所がずれて絶縁物が無い場所が接触箇所に変わることにより、接点導通を確保することが可能になる。
【0056】
以上説明したように、本実施形態の電磁継電器では、先端面201a、先端面202a、先端面241および先端面251を可動垂直面に対して傾斜させている。そして、第1可動接点28、第1固定接点26、第2可動接点29および第2固定接点27それぞれの表面が可動垂直面に対して傾斜した状態となるようにしている。このため、可動子20が励磁コイル12側に付勢されると、第1可動接点28は第1固定接点26の表面の傾斜に沿って摺動し、第2可動接点29は第2固定接点27の表面の傾斜に沿って摺動するという接点ズレ動作が行われる。これにより、これらの接触箇所に絶縁物が介在していたとしても、その絶縁物が破壊されること、もしくは接触箇所がずれて絶縁物が無い場所が接触箇所に変わることにより、接点導通を確保することが可能になる。
【0057】
(第1実施形態の変形例)
上記第1実施形態では、可動子20を平板状部材で構成しつつ、一端201および他端202において先端面201aと先端面202aを平面としつつ、可動垂直面に対して傾斜するようにした。また、第1固定端子24の先端面241や第2固定端子25の先端面251も平面としつつ、可動垂直面に対して傾斜するようにした。これは、第1可動接点28の表面と第1固定接点26の表面や第2可動接点29の表面と第2固定接点27の表面が可動垂直面に対して傾斜した状態となる構成の一例を挙げたのであり、他の形状であっても良い。
【0058】
例えば、図4に示すように、可動子20や第1固定端子24および第2固定端子25を円弧状の曲面で構成し、これらのうちシャフト17の中心軸側の部分が励磁コイル12から離れる側、中心軸から離れる側の部分が励磁コイル12に近づく側となるようにする。このような構成としても、第1可動接点28や第1固定接点26の配置される場所、および、第2可動接点29や第2固定接点27の配置される場所を、可動垂直面に対して傾斜させることができる。このため、第1実施形態と同様に接点ズレ動作が行われるようにでき、接点導通を確保することが可能となる。
【0059】
また、図5に示すように、先端面201aおよび先端面202aの傾斜方向、さらには先端面241および先端面251の傾斜方向を第1実施形態と逆方向としてもよい。すなわち、先端面241と先端面251の互いの近い側の端が励磁コイル12に近づく側、互いの遠い側の端が励磁コイル12から離れる側に位置するように、先端面241と先端面251が可動垂直面に対して逆方向に傾斜されるようにする。同様に、先端面201aと先端面202aの互いの近い側の端が励磁コイル12に近づく側、互いの遠い側の端が励磁コイル12から離れる側に位置するように、先端面201aと先端面202aが可動垂直面に対して逆方向に傾斜されるようにする。このようにしても、第1実施形態と同様に接点ズレ動作が行われるようにでき、接点導通を確保することが可能となる。
【0060】
また、図6に示すように、可動子20や第1固定端子24および第2固定端子25を円弧状の曲面で構成しつつ、これらが図4と逆方向に反る配置とする。すなわち、可動子20や第1固定端子24および第2固定端子25のうちシャフト17の中心軸側の部分が励磁コイル12に近づく側、中心軸から離れる側の部分が励磁コイル12から離れる側となるようにする。このようにしても、第1実施形態と同様に接点ズレ動作が行われるようにでき、接点導通を確保することが可能となる。
【0061】
また、図7に示すように、先端面201aおよび先端面202aの傾斜方向、さらには先端面241および先端面251の傾斜方向を同方向としてもよい。すなわち、先端面241については先端面251に近い側の端が励磁コイル12に近づく側、遠い側の端が励磁コイル12から離れる側に位置するように、可動垂直面に対して傾斜させる。先端面251については先端面241に近い側の端が励磁コイル12から離れる側、遠い側の端が励磁コイル12に近づく側に位置するように、可動垂直面に対して傾斜させる。同様に、先端面201aについては先端面202aに近い側の端が励磁コイル12に近づく側、遠い側の端が励磁コイル12から離れる側に位置するように、可動垂直面に対して傾斜させる。先端面202aについては先端面201aに近い側の端が励磁コイル12から離れる側、遠い側の端が励磁コイル12に近づく側に位置するように、可動垂直面に対して傾斜させる。このようにしても、第1実施形態と同様に接点ズレ動作が行われるようにでき、接点導通を確保することが可能となる。
【0062】
さらに、図8に示すように、先端面201aおよび先端面202aの傾斜方向、さらには先端面241および先端面251の傾斜方向を同方向としつつ、各傾斜方向が図7と逆方向となるようにしても同様のことが言える。
【0063】
また、図9Aおよび図9Bに示すように、可動子20を外縁部に対して中央が突き出た凹面形状で構成し、先端面241および先端面251を可動子20に沿う凹面の半分ずつを構成する半凹面形状で構成する。このように、可動子20を平板状ではなく凹面形状によって構成しても、第1実施形態と同様に接点ズレ動作が行われるようにでき、接点導通を確保することが可能となる。さらに、ここでは、図9Bに示すように、第1固定接点26および第1可動接点28と第2固定接点27および第2可動接点29の形成位置を、図9Aの紙面法線方向、換言すれば第1固定端子24や第2固定端子25の延設方向においてずらしている。このように、各接点の位置が必ずしも第1固定端子24や第2固定端子25の延設方向において合わせていなくても良い。
【0064】
なお、各接点の位置が第1固定端子24や第2固定端子25の延設方向においてずれている場合の一例として、図9Aおよび図9Bに示す構造を挙げたが、第1実施形態や図4図8に示す構造についても適用できる。
【0065】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して接点形状の変更等を行うものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0066】
図10に示すように、本実施形態では、第1可動接点28および第2可動接点29の表面を先端が尖った鋸歯状の断面形状としている。このように、第1可動接点28および第2可動接点29の表面を先端が尖った形状となるようにすると、第1固定接点26および第2固定接点27との接点数を増やすことが可能となり、絶縁物が介在しない場所に接点を設けやすくなる。また、第1可動接点28および第2可動接点29が第1固定接点26および第2固定接点27に突き刺さったり、突き刺さりつつ摺動させられるようにできる。これにより、絶縁物が介在していたとしても、その絶縁物が破壊されること、もしくは接触箇所がずれて絶縁物が無い場所が接触箇所に変わるようにでき、接点導通を確保することが可能になる。
【0067】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して接点形状の変更等を行うものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0068】
図11に示すように、本実施形態では、可動子20を一端201から他端202に至るまで棒状の平板状部材としている。つまり、先端面201aおよび先端面202aが可動方向に対して垂直となるようにしている。同様に、第1固定端子24の先端面241および第2固定端子25の先端面251についても、可動方向に対して垂直となるようにしている。
【0069】
そして、第1可動接点28の接点部281および第2可動接点29の接点部291が断面三角形状となる形状、例えば三角柱形状もしくは厚みが変化する扁平円形などで構成され、その表面が可動垂直面に対して傾斜させられている。具体的には、接点部281については、接点部291に近い側の端が励磁コイル12から離れる側、遠い側の端が励磁コイル12に近づく側に位置するように、接点部281の表面が可動垂直面に対して傾斜されている。接点部291についても、接点部281に近い側の端が励磁コイル12から離れる側、遠い側の端が励磁コイル12に近づく側に位置するように、接点部291の表面が可動垂直面に対して傾斜されている。
【0070】
また、第1固定接点26の接点部261および第2固定接点27の接点部271についても、断面三角形状となる形状、例えば三角柱形状もしくは厚みが変化する扁平円形状などで構成され、その表面が可動垂直面に対して傾斜させられている。具体的には、接点部261については、接点部271に近い側の端が励磁コイル12から離れる側、遠い側の端が励磁コイル12に近づく側に位置するように、接点部261の表面が可動垂直面に対して傾斜されている。接点部271についても、接点部261に近い側の端が励磁コイル12から離れる側、遠い側の端が励磁コイル12に近づく側に位置するように、接点部271の表面が可動垂直面に対して傾斜されている。
【0071】
このため、第1可動接点28の接点部281および第2可動接点29の接点部291の全体で凹形状が構成され、第1固定接点26の接点部261および第2固定接点27の接点部271の全体で凸形状が構成されている。そして、凸形状とされた接点部261および接点部271が凹形状とされた接点部281および接点部291に入り込む構造とされている。
【0072】
なお、接点部281の表面と接点部261の表面とは対向するように配置され、可動垂直面に対する傾斜角度も等しくされているが、完全に一致していなくても構わない。また、接点部291の表面と接点部271の表面とは対向するように配置され、可動垂直面に対する傾斜角度も等しくされているが、完全に一致していなくても構わない。
【0073】
また、接点部261と接点部281とが当接し、接点部271と接点部291とが当接する際に、接点部261と先端面201aとの間、接点部281と先端面241との間、接点部271と先端面202aとの間、接点部291と先端面251との間が離れるようにしている。例えば、図11の紙面左右方向において、接点部261と接点部281の中心位置がずれ、接点部271と接点部291の中心位置がずれるようにしている。
【0074】
このような構造では、固定側の接点部261、271および可動側の接点部281、291のそれぞれの表面が可動垂直面に対して傾斜させられているため、これらが当接してからも、これらを押しつける方向に付勢されると、傾斜に基づいて接点ズレ動作が行われる。これにより、これらの接触箇所に絶縁物が介在していたとしても、その絶縁物が破壊されること、もしくは接触箇所がずれて絶縁物が無い場所が接触箇所に変わることにより、接点導通を確保することが可能になる。
【0075】
なお、可動子20が撓むようにすれば、より接点ズレ動作が行われやすくなって好ましいが、ほとんど撓まない剛体で構成されていたとしても、接点ズレ動作が行われるため、上記効果が得られる。
【0076】
(第3実施形態の変形例)
上記第3実施形態に対して、各接点部261、271、281、291の傾斜方向を様々に異ならせることもできる。
【0077】
例えば、図12Aに示すように、接点部281については、接点部291に近い側の端が励磁コイル12に近づく側、遠い側の端が励磁コイル12から離れる側に位置するように、接点部281の表面を可動垂直面に対して傾斜させる。接点部291についても、接点部281に近い側の端が励磁コイル12に近づく側、遠い側の端が励磁コイル12から離れる側に位置するように、接点部291の表面を可動垂直面に対して傾斜させる。また、接点部261については、接点部271に近い側の端が励磁コイル12に近づく側、遠い側の端が励磁コイル12から離れる側に位置するように、接点部261の表面を可動垂直面に対して傾斜させる。接点部271についても、接点部261に近い側の端が励磁コイル12に近づく側、遠い側の端が励磁コイル12から離れる側に位置するように、接点部271の表面を可動垂直面に対して傾斜させる。これにより、接点部261および接点部271の全体で凹形状が構成され、接点部281および接点部291の全体で凸形状が構成されて、第3実施形態と凹凸が逆の関係が構成される。このような構造としても、接点ズレ動作が行われるため、第3実施形態と同様の効果が得られる。
【0078】
また、図12Bに示すように、接点部281については、接点部291に近い側の端が励磁コイル12から離れる側、遠い側の端が励磁コイル12に近づく側に位置するように、接点部281の表面を可動垂直面に対して傾斜させる。接点部291についても、接点部281に近い側の端が励磁コイル12に近づく側、遠い側の端が励磁コイル12から離れる側に位置するように、接点部291の表面を可動垂直面に対して傾斜させる。つまり、接点部281の表面と接点部291の表面を可動垂直面に対して同方向に傾斜させている。また、接点部261については、接点部271に近い側の端が励磁コイル12から離れる側、遠い側の端が励磁コイル12に近づく側に位置するように、接点部261の表面を可動垂直面に対して傾斜させる。接点部271についても、接点部261に近い側の端が励磁コイル12に近づく側、遠い側の端が励磁コイル12から離れる側に位置するように、接点部271の表面を可動垂直面に対して傾斜させる。つまり、接点部261の表面と接点部271の表面を可動垂直面に対して同方向に傾斜させている。このような構造としても、接点ズレ動作が行われるため、第3実施形態と同様の効果が得られる。
【0079】
さらに、図12Cに示すように、接点部281の表面および接点部291の表面の傾斜方向や、接点部261の表面および接点部271の表面の傾斜方向を同方向としつつ、図12Bと逆方向にしても良い。その場合にも、第3実施形態と同様の効果が得られる。
【0080】
また、図13Aに示すように、接点部281および接点部291を三角柱状、接点部261および接点部271を接点部281や接点部291に対応する断面三角形状の凹みが形成された凹形状としても良い。この場合、三角柱状で構成された接点部281および接点部291の先端と、凹形状で構成された接点部261および接点部271の凹みの最も深い位置とが可動方向に平行な同じ線上に位置せずにずれるようにする。このようにしても、接点部281の表面および接点部291の表面が可動方向に傾斜した状態となり、接点部261および接点部271の凹み表面も可動方向に傾斜した状態となり、各接点部同士が当接してから接点ズレ動作が行われるようにできる。このため、第3実施形態と同様の効果が得られる。
【0081】
さらに、図13Bに示すように、接点部261および接点部271を三角柱状、接点部281および接点部291を接点部261や接点部271に対応する断面三角形状の凹みが形成された凹形状として、図13Aと形状の関係を逆にしても良い。このようにしても、第3実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0082】
なお、ここでは接点部261および接点部271を同じ形状とし、接点部281と接点部291を同じ形状としたが、接点部261と接点部291を同じ形状とし、接点部271と接点部281を同じ形状としても良い。
【0083】
また、ここでは各接点の形状として、断面三角形状に突き出た形状として三角柱状を挙げると共に、それに対応する断面三角形状の凹みが形成された凹形状をあげて一例を示したが、三角錐状とそれに対応する凹みが形成された凹形状としても良い。その場合、接点部261と接点部281のいずれを三角錐状とし、いずれを凹形状としても良いし、接点部271と接点部291のいずれを三角錐状とし、いずれを凹形状としても良い。
【0084】
(第4実施形態)
第4実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して可動子20や第1固定端子24および第2固定端子25の形状の変更等を行うものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0085】
図14に示すように、本実施形態では、可動子20を一端201から他端202に至るまで棒状の平板状部材としている。また、先端面201aおよび先端面202aを含め、可動子20の全体が可動垂直面に対して傾斜するようにしている。このため、先端面201aや先端面202aに配置された接点部281の表面および接点部291の表面も可動垂直面に対して傾斜した状態となっている。そして、接点部281が接点部291よりも励磁コイル12から遠くに位置するようにしている。
【0086】
同様に、第1固定端子24の先端面241および第2固定端子25の先端面251についても、可動垂直面に対して可動子20と同方向に傾斜させるようにしている。このため、先端面241や先端面251に配置された接点部261の表面および接点部271の表面も可動垂直面に対して傾斜した状態となっている。そして、接点部261が接点部271よりも励磁コイル12から遠くに位置するようにしている。
【0087】
このような構成としても、固定側の接点部261、271および可動側の接点部281、291のそれぞれの表面が可動垂直面に対して傾斜させられているため、これらが当接してからも、これらを押しつける方向に付勢されると、傾斜に基づいて接点ズレ動作が行われる。これにより、これらの接触箇所に絶縁物が介在していたとしても、その絶縁物が破壊されること、もしくは接触箇所がずれて絶縁物が無い場所が接触箇所に変わることにより、接点導通を確保することが可能になる。
【0088】
また、本実施形態の構造とする場合、例えば可動子20については、従来構造のものをそのまま用いつつ、組付け方を調整して、可動垂直面に対して傾斜するようにするだけで良い。このため、汎用性の高い電磁継電器とすることができる。
【0089】
(第4実施形態の変形例)
上記第4実施形態に対して、可動子20や第1固定端子24の先端面241および第2固定端子25の先端面251の傾斜の方向を逆にしても良い。すなわち、図15に示すように、接点部281が接点部291よりも励磁コイル12から近くに位置するようにする。また、接点部261が接点部271よりも励磁コイル12から近くに位置するようにする。このようにしても、第4実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0090】
(他の実施形態)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。
【0091】
(1)例えば、上記実施形態では、接点部281の表面や接点部261の表面が可動垂直面に対してなす傾斜角度と、接点部291の表面や接点部271の表面が可動垂直面に対してなす傾斜角度を等しくしているが、これらが異なる傾斜角度とされていても良い。
【0092】
なお、上記各実施形態では、各接点部の表面が可動垂直面に対して傾斜していることについて説明したが、各接点部の表面が平面ではなく、曲面状、半楕円形、半長円形等である場合もある。その場合、各接点部の表面が可動垂直面に対して傾斜しているとは、各接点部のうちの接触箇所となる一面もしくは点の接線が可動垂直面に対して傾斜していることを意味する。
【0093】
(2)また、上記実施形態では、第1固定端子24に別部材の第1固定接点26をかしめ固定し、第2固定端子25に別部材の第2固定接点27をかしめ固定した。しかしながら、第1固定端子24および第2固定端子25に、可動子20側に向かって突出する突起部を例えばプレス加工にて形成し、その突起部を固定接点としてもよい。
【0094】
(3)同様に、上記実施形態では、可動子20に別部材の第1可動接点28や第2可動接点29をかしめ固定した。しかしながら、可動子20に、第1固定端子24および第2固定端子25側に向かって突出する突起部を例えばプレス加工にて形成し、その突起部を可動接点としてもよい。
【0095】
(4)また、可動子20や第1固定端子24および第2固定端子25の形状についても一例を挙げたに過ぎない。例えば、可動子20については、棒状部分を有していて先端面201aや先端面202aの形状、もしくは接点部281や接点部291の形状に基づいて、上記各実施形態に示した構造を実現できれば良い。また、各接点部の数についても、それぞれ1つずつとしたが、複数個とされていても良い。
【符号の説明】
【0096】
12…励磁コイル、13…固定コア、15…可動コア、20…可動子、24、25…第1、第2固定端子、26、27…第1、第2固定接点、28、29…第1、第2可動接点、201a、202a、241、251…先端面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図14
図15