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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022144774
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】排水処理システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/20 20060101AFI20220926BHJP
   C02F 3/22 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
C02F3/20 Z
C02F3/22 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021045933
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118924
【弁理士】
【氏名又は名称】廣幸 正樹
(72)【発明者】
【氏名】奥田 友章
【テーマコード(参考)】
4D029
【Fターム(参考)】
4D029AA09
4D029AB05
(57)【要約】
【課題】排水処理システムでは、曝気装置の消費する電力がシステム全体の40%に及ぶ場合もあり、省電力運転が可能な排水処理システムが求められている。
【解決手段】処理水が投入される処理槽と、
前記処理槽で処理された処理済液が投入される後処理槽と、
高酸素液が貯留される高酸素液ユニットと、
前記処理槽中の処理液を攪拌する攪拌装置と、
制御装置を備える排水処理システムであって、
前記処理槽には、
DO計が配置され、
前記高酸素液ユニットには、
マイクロバブル発生装置が配置され、
前記制御装置は、
前記DO計の測定値が第1の閾値より低ければ、前記高酸素液を前記処理槽に供給させることを特徴とする排水処理システムは、曝気装置単体で運転するよりも少ない電力で運転することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理水が投入される処理槽と、
前記処理槽で処理された処理済液が投入される後処理槽と、
高酸素液が貯留される高酸素液ユニットと、
前記処理槽中の処理液を攪拌する攪拌装置と、
制御装置を備える排水処理システムであって、
前記処理槽には、
DO計が配置され、
前記高酸素液ユニットには、
マイクロバブル発生装置が配置され、
前記制御装置は、
前記DO計の測定値が第1の閾値より低ければ、前記高酸素液を前記処理槽に供給させることを特徴とする排水処理システム。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記DO計の測定値が第2の閾値より高ければ、前記高酸素液の供給路を閉じさせることを特徴とする請求項1に記載された排水処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好気性微生物を利用して排水を処理するシステムに関するものであり、特に、従来の曝気槽を用いた排水処理システムよりも、ブロアによる曝気の省電力化が可能な排水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の排水処理システムは、排水を曝気槽に誘導し、曝気環境で好気性微生物によって、廃棄物をズーグレアというフロックに凝集させ、沈降若しくは膜によって固液分離をおこなうことで、排水中の不純物を分離していた。
【0003】
このような排水処理システムでの課題の1つに排水システム全体の省電力化が挙げられる。特に曝気のためのブロアの消費電力は全体の約4分の1~2分の1を占め、水処理設備の効率的な運用のためにはブロア運転の省電力化が重要な課題となっている。
【0004】
例えば、特許文献1では、曝気で生じた空気の泡を原動力としたポンプで揚水し、落差水車水力発電で電気を作り、省電力化するものが提案されている。
【0005】
また、特許文献2では、原水貯留槽の汚水が減って、曝気槽への原水供給が停止する際には、メインの曝気装置を停止し、曝気槽中の汚水を攪拌するだけの小型ブロアに切り替えることで、省電力化を図る発明が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-144451号公報
【特許文献2】特開昭60-125296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、曝気装置で形成した泡を一度水の位置エネルギーに変えてから電力に変換するので、ロスが多くまた設備も大きくなり、そのため初期投資も大きくなる。また、特許文献2では、メインの曝気装置を間欠的に運転するのであり、曝気装置が停止している間の溶存酸素量は減少するだけとなる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記のような課題に鑑みて想到されたものであり、予め溶存酸素量の高い溶液(高酸素液)を作製しておき、曝気運転の代わりに、高酸素液を処理槽に供給することで、処理槽の中の処理液の溶存酸素量を所定の値に維持し大幅な省電力化を可能とするものである。
【0009】
より具体的に本発明に係る排水処理システムは、
処理水が投入される処理槽と、
前記処理槽で処理された処理済液が投入される後処理槽と、
高酸素液が貯留される高酸素液ユニットと、
前記処理槽中の処理液を攪拌する攪拌装置と、
制御装置を備える排水処理システムであって、
前記処理槽には、
DO計が配置され、
前記高酸素液ユニットには、
マイクロバブル発生装置が配置され、
前記制御装置は、
前記DO計の測定値が第1の閾値より低ければ、前記高酸素液を前記処理槽に供給させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る排水処理システムは、従来曝気装置で行っていた処理槽中の溶存酸素量の調節および処理液の攪拌に代えて、高酸素液ユニット中で生成させた高酸素液を、処理槽に送り、攪拌機で処理液を攪拌しながら処理槽中の溶存酸素量を所定の値に調整するので、曝気装置の消費電力より少ない電力で、処理槽中の溶存酸素量を所定の値に維持することができ、排水処理システムの省電力化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る排水処理システムの構成を示す図であり、攪拌装置だけで運転している場合を示す。
図2】本発明に係る排水処理システムの構成を示す図であり、攪拌装置と高酸素液ユニットで運転している場合を示す。
図3】排水処理システムの動作原理を示す図である。
図4】排水処理システムの制御装置の処理を示すフロー図である。
図5】排水処理システムが運転した場合の処理槽内の溶存酸素量の推移を示す図である。
図6】曝気処理の場合と本発明に係る排水処理システムとの消費電力の差を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明に係る排水処理システムとその運用について図面を用いながら説明を行う。以下の説明は本発明の一実施形態を説明するのであり、本発明は以下の説明に限定されるものではない。つまり、以下の実施形態は、本発明の主旨を逸脱しない限りにおいて、改変することができる。
【0013】
図1に本発明に係る排水処理システムの構成を示す。排水処理システム1は、原水Vが投入される処理槽10を有する。この処理槽10中には、攪拌装置14、DO計16が、設けられている。
【0014】
攪拌装置14は処理槽10中の処理液を攪拌するためのもので、水中ミキサーやモータの先に攪拌羽根のついた攪拌機が好適に利用できる。ここでは、攪拌装置14は水中ミキサー14として説明する。
【0015】
また、排水処理システム1は、高酸素液ユニット18が備えられる。高酸素液ユニット18はマイクロバブル発生装置20が内蔵された貯留槽である。高酸素液ユニット18からはバルブ18aおよびポンプ18bが施された送液管18cが接続される。送液管18cの先端には、噴水ノズル18dが接続されている。したがって、高酸素液ユニット18は少なくとも貯留用タンクとマイクロバブル発生装置20と送液管18cおよびバルブ18aで構成されている。ポンプ18bが高酸素液ユニット18に含まれていてもよい。
【0016】
また、処理槽10は、処理済液Uを排出する排水ポンプ30aを有する排水管30が配置されている。排水管30の先には、後処理槽32が設けられる。後処理槽32は、処理槽10中で形成されたフロックを分離する槽である。後処理槽32は例えば膜分離槽若しくは沈殿槽などが挙げられる。
【0017】
後処理槽32の上澄みは、次の処理に回されるか、そのまま自然界に放流される。また、後処理槽32の上澄みの一部は再利用水Rとして、高酸素液ユニット18に戻される。再利用水Rとして高酸素液ユニット18に戻すために、帰還ポンプ34aが設けられた戻り管34が後処理槽32と高酸素液ユニット18の間に設けられていてもよい。また、後処理槽32と高酸素液ユニット18の間に、図示しないが砂ろ過装置を設けても良い。
【0018】
また、高酸素液ユニット18には、再利用水Rだけではなく、汚染されていない原水Vが供給されてもよい。原水Vは汚染されていない通常程度の水も流れる場合があるからである。このため、原水Vが処理槽10に投入される経路中で原水Vの水質を測定する水質計11と分岐路12が設けられる。また、分岐路12には原水供給バルブ12aが設けられていてもよい。
【0019】
なお、水質計11は溶存酸素計(DO計16)または/及びSS計などの水質を計る測定器を用いる。ここでは、水質計11をDO計16とした場合の説明をする。
【0020】
また、排水処理システム1は、制御装置22を有する。制御装置22は、少なくとも、マイクロバブル発生装置20、バルブ12a、バルブ18a、ポンプ18b、水質計11,DO計16および水中ミキサー14と電気的に接続されている。そして制御装置22は、マイクロバブル発生装置20、ポンプ18bおよび水中ミキサー14には、始動、停止を制御する信号を送る。
【0021】
また制御装置22は、バルブ12aおよびバルブ18aには、開閉を制御する信号を送信することができる。また、制御装置22は、DO計16からの信号は現在の処理槽10内のDO値として受信することができ、水質計11からの信号は、現在処理槽10に投入される原水VのDO値として受信することがきる。
【0022】
図2を参照して、制御装置22が、バルブ18aを開き、ポンプ18bを稼働させるようにバルブ18aおよびポンプ18bを制御することで、高酸素液ユニット18中の高酸素液が処理槽10中に送液される。ここで、高酸素液とは、高酸素液ユニット18中に貯留された水(再利用水R、もしくは原水V及び再利用水Rと原水Vの混合水であってもよい。)にマイクロバブル発生装置20で発生させたマイクロバブルを含有させた液である。
【0023】
このマイクロバブルを発生させた水は通常の水に溶解可能とされる溶存酸素量の最大値(約10mg/L)近くまで溶存酸素量(DO量)を向上させることができる。また、溶存酸素量の最大値近くまで酸素を溶解させた水にマイクロバブルを含ませることで、単位体積当たりの酸素保持量は、水の溶存酸素量以上にすることができる。なお、高酸素液ユニット18は、溶存酸素量を高めるために、生成されたマイクロバブルを圧壊させるための、加圧解放装置やラインミキサといった装置を含んでいてもよい。
【0024】
高酸素液ユニット18から処理槽10に向かう送液管18cの先端には、噴水ノズル18dが備えられている。噴水ノズル18dは、処理槽10中の原水V中に配置されている。したがって、噴水ノズル18dは、ポンプ18bの送圧を受け、高酸素液を、処理槽10の原水V中で放出する。
【0025】
また、制御装置22は、水中ミキサー14の稼働も制御する。すなわち、水中ミキサー14を稼働させたり、停止させることができる。水中ミキサー14は、処理槽10中の原水Vを攪拌する。高酸素液を処理槽10中の噴水ノズル18dから放出させながら、水中ミキサー14を運転すると、高酸素液を処理槽10中に充満させることができる。水中ミキサー14は常時稼働させておいてもよい。
【0026】
次に、図3を参照して、排水処理システム1の動作原理を説明する。縦軸はDO計16で計測した処理槽10内のDO値(mg/L)を示す。排水処理システム1は、処理槽10中のDO値が第1閾値より低くなると高酸素液の供給を開始する。高酸素液ONの状態である。具体的には、バルブ18aを開き、ポンプ18bを稼働させる。したがって、高酸素液は、処理槽10内に放出される。すなわち、高酸素液の供給によって、処理槽10中の溶存酸素量(DO値)を上昇させる。
【0027】
なお、以下「高酸素液の使用」、「高酸素液ON」若しくは「高酸素液の供給」とは、バルブ18aを開き、マイクロバブル発生装置20、ポンプ18bおよび水中ミキサー14は稼働させ、処理槽10内に高酸素液を充満させることを言う。
【0028】
一方、処理槽10中のDO値が第2の閾値より高くなると、高酸素液の供給を停止する。具体的には、バルブ18aを閉じ、ポンプ18bを停止させる。なお、水中ミキサー14は、常に稼働させる。好気性微生物と被処理物との接触の機会を高めるためである。ここで明らかなように、第2閾値は第1閾値より大きな値(高いDO値)である。
【0029】
以上の構成を有する排水処理システム1の動作を説明する。図4に制御装置22の処理フローを示す。また、図5に処理槽10中のDO値(溶存酸素量)の推移を示す。図5は横軸が時刻であり、左縦軸は処理槽10中のDO値(mg/L)であり、右縦軸は消費電力(W)である。
【0030】
図4および図5を参照する。処理フローが開始されると(ステップS100)、終了が判断される(ステップS102)。終了の契機は、特に限定されない。使用者による強制的な終了操作であってもよいし、予めセットされた時刻を認識して停止するとしてもよい。終了する場合(ステップS102のY分岐)は、排水処理システム1を停止させる(ステップS104)。継続する場合(ステップS102のN分岐)は、処理を次に移す。
【0031】
次に処理槽10中のDO値が第1閾値(図4では、「Th1」と記した。)より低いか否かを判断する(ステップS106)。処理槽10中のDO値が第1閾値より低い場合(ステップS106のY分岐)は、高酸素液を処理槽10に供給する(ONにする)。つまり、バルブ18aを開き、ポンプ18bを稼働させる(ステップS108)。
【0032】
図5では、時刻t1で処理槽10中のDO値が第1閾値より低くなり、高酸素液の供給が開始される。高酸素液を供給するには、マイクロバブル発生装置20およびポンプ18bを稼働するための電力W1が消費される。なお、水中ミキサー14(攪拌装置14)は、常に連続運転されるので、排水処理システム1は、常に一定の電力W2を消費する。
【0033】
制御装置22は、処理槽10中のDO値が第2閾値(図4では「Th2」と記した。)より高くなったか否かを判断する(ステップS110)。処理槽10中のDO値が第2閾値より高くない間は(ステップS110のN分岐)、処理はステップS108に戻り、高酸素液の供給が継続される。図5では、時刻t1から時刻t2までの間である。
【0034】
高酸素液の供給によって処理槽10内のDO値は上昇する。そして、処理槽10内のDO値が第2閾値を超えると(ステップS110のY分岐)、高酸素液の供給を停止する。具体的には、バルブ18aを閉じ、マイクロバブル発生装置20、およびポンプ18bを停止させる(ステップS112)。図5では時刻t2の時点である。
【0035】
処理フローは、終了処理(ステップS102)に戻り、さらにステップS106を繰り返す。時刻t2以降は、しばらく処理槽10中のDO値は、第1閾値より高い。したがって、ステップ106では、N分岐が選択され、処理S112に移り、高酸素液の供給は停止された状態が継続する。
【0036】
好気性微生物が被処理物を分解し酸素を使用すると、処理槽10中の処理液のDO値は徐々に低下する。時刻t3の時に、処理水のDO値が第1閾値を下回ると、ステップS106は再びY分岐が選択され、高酸素液の供給が開始される。この高酸素液の供給は、処理槽10中のDO値が第2閾値より高くなる時刻t4まで続く。
【0037】
このような排液処理での平均消費電力量Qwは、時刻t1から時刻t2までの消費電力量W1T1と、時刻t2から時刻t3までの消費電力量W2T2の総和を時間平均したものである。あらわに書くと(1)式のように表される。
【0038】
【数1】
【0039】
図6には、本発明の排水処理システム1と、従来の曝気装置をつかった場合の単位溶存酸素供給に必要な電力量の関係を示す。単位溶存酸素供給に必要な電力量とは、単位溶存酸素を供給するのに、必要な電力量である。縦軸は電力量(Wh)を示し、横軸は方式の違いである。曝気装置は、単位溶存酸素を供給するために、多くの電力量Gar1が必要である。電力量Gar1をW10(Wh)とする。
【0040】
一方、本発明に係る排水処理システム1は、高酸素液を作製するためにさほど大きな電力を必要としない。したがって、マイクロバブル発生装置20の消費電力量をGar2と水中ミキサー14の消費電力量Gh0を加えたW11(Wh)は、曝気装置だけの場合W10(Wh)よりも小さい。したがって、本発明の構成での排水処理システム1での消費電力は従来の排水処理システムよりも低電力で運転できる。
【0041】
なお、制御装置22は、上記の処理フローとは別に、原水V中のDOが一定値以上または/及びSSが一定値以下であれば、高酸素液ユニット18に供給する処理を行ってもよい。原水Vには、汚染水でない通常の水が流れる場合もあり、有効活用するためである。原水V中の溶存酸素濃度は水質計11で計測する。したがって、高酸素液ユニット18中に供給される水は、再利用水R、原水Vおよび原水V+再利用水Rの場合がある。
【0042】
以上のように、マイクロバブル発生装置20による高酸素液を用いることで、曝気装置の消費電力を削減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は省電力運転が可能な排水処理システムとして利用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 排水処理システム
10 処理槽
11 水質計
12 分岐路
14 水中ミキサー(攪拌装置)
16 DO計
18 高酸素液ユニット
12a、18a バルブ
18b ポンプ
18c 送液管
18d 噴水ノズル
20 マイクロバブル発生装置
22 制御装置
30 排水管
30a 排水ポンプ
32 後処理槽
34 戻り管
34a 帰還ポンプ
V 原水
U 処理済液
R 再利用水
図1
図2
図3
図4
図5
図6