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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022144790
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】ガラス板製造方法及びその製造装置
(51)【国際特許分類】
   C03B 33/033 20060101AFI20220926BHJP
   C03B 33/037 20060101ALI20220926BHJP
   B28D 5/00 20060101ALI20220926BHJP
   B26F 3/00 20060101ALI20220926BHJP
   B28D 7/00 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
C03B33/033
C03B33/037
B28D5/00 Z
B26F3/00 A
B28D7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021045955
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168550
【弁理士】
【氏名又は名称】友廣 真一
(72)【発明者】
【氏名】奥 隼人
(72)【発明者】
【氏名】奥本 秀一郎
(72)【発明者】
【氏名】山鹿 祐弥
【テーマコード(参考)】
3C060
3C069
4G015
【Fターム(参考)】
3C060AA08
3C060AB01
3C060CB03
3C060CB14
3C069AA03
3C069BA04
3C069BB03
3C069BC03
3C069CA11
3C069CB01
3C069EA05
4G015FA03
4G015FA04
4G015FB02
4G015FC04
4G015FC10
4G015FC14
(57)【要約】
【課題】成形されつつ下方に連続して移動するガラスリボンに対して第一切断工程の実行に代えて第二切断工程を実行している際に、切断不良や切断不能等が発生しても、これらに適切に対応できるようにして、縦割れの発生等を未然に防止する。
【解決手段】成形ゾーン11で成形されつつ下方に連続して移動するガラスリボンGを幅方向に沿って切断してガラス板を切り出す第一切断工程と、第一切断工程を実行しない時に、該第一切断工程で使用する装置2と構成が異なる装置3を使用してガラスリボンGを切断する第二切断工程とを備え、第二切断工程では、ガラスリボンGの切断状態をセンサ35により検査し、このセンサ35の検査結果に基づいて、ガラスリボンGに切断処理を実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形ゾーンで成形されつつ下方に連続して移動するガラスリボンを幅方向に沿って切断してガラス板を切り出す第一切断工程と、前記第一切断工程を実行しない時に、該第一切断工程で使用する装置と構成が異なる装置を使用して前記ガラスリボンを切断する第二切断工程と、を備えたガラス板製造方法であって、
前記第二切断工程では、前記ガラスリボンの状態をセンサにより検査し、前記センサの検査結果に基づいて、前記ガラスリボンの切断処理を実行することを特徴とするガラス板製造方法。
【請求項2】
前記センサは、前記ガラスリボンに、下方へ突出する突出部が有るか否かを検査する請求項1に記載のガラス板製造方法。
【請求項3】
前記センサは、前記ガラスリボンの幅方向複数箇所に対応して複数個が設置されている請求項1または2に記載のガラス板製造方法。
【請求項4】
前記複数個のセンサの検査結果の相違に応じて、前記切断処理の態様を相違させる請求項3に記載のガラス板製造方法。
【請求項5】
前記複数個のセンサは、前記第二切断工程において切断処理を実行する切断位置から下方に所定長さだけ離れた位置に検査領域を有し、前記ガラスリボンが前記検査領域に達すると予定されるまでの第一の時期に、前記複数個のセンサによる第一の検査結果を取得する請求項3または4に記載のガラス板製造方法。
【請求項6】
前記第一の時期に、前記複数個のセンサの全てが、前記ガラスリボンを検出しない場合には、前記第一の時期の後に続く第二の時期に、前記複数個のセンサによる第二の検査結果を取得し、前記第二の時期に、前記複数個のセンサの全てが、前記ガラスリボンを検出した場合に、前記切断処理として前記ガラスリボンを幅方向全長に亘って切断する請求項5に記載のガラス板製造方法。
【請求項7】
前記第一の時期に、前記複数個のセンサの全てが、前記ガラスリボンを検出した場合には、前記切断処理として前記ガラスリボンを幅方向全長に亘って切断する請求項5に記載のガラス板製造方法。
【請求項8】
前記第一の時期に、前記複数個のセンサのうちの二個以上のセンサが、前記ガラスリボンを検出し、且つ、残り一個以上のセンサが、前記ガラスリボンを検出しない場合には、前記第一の時期の後に続く第二の時期に、前記センサによる第二の検査結果を取得し、前記第二の時期に、前記残り一個以上のセンサが、前記ガラスリボンを検出するまで待ち、前記残り一個以上のセンサが、前記ガラスリボンを検出した場合に、前記切断処理として前記ガラスリボンを幅方向全長に亘って切断する請求項5に記載のガラス板製造方法。
【請求項9】
前記切断処理として前記ガラスリボンを幅方向全長に亘って切断する際には、前記ガラスリボンの切断されるべき領域に曲げ応力を付与する請求項6~8の何れかに記載のガラス板製造方法。
【請求項10】
前記第一の時期に、前記複数個のセンサのうちの一個のセンサが、前記ガラスリボンを検出し、且つ、残り一個以上のセンサが、前記ガラスリボンを検出しない場合には、前記切断処理として前記ガラスリボンの前記一個のセンサに対応する幅方向一箇所のみを切断する請求項5に記載のガラス板製造方法。
【請求項11】
前記ガラスリボンの前記幅方向一箇所は、前記ガラスリボンの幅方向一端部である請求項10に記載のガラス板製造方法。
【請求項12】
前記切断処理として前記ガラスリボンの前記幅方向一箇所のみを切断する際には、前記ガラスリボンの切断されるべき領域に曲げ応力を付与しない請求項10又は11に記載のガラス板製造方法。
【請求項13】
成形ゾーンで成形されつつ下方に連続して移動するガラスリボンを幅方向に沿って切断してガラス板を切り出す第一切断装置と、前記第一切断装置を使用しない時に、前記第一切断装置と異なる構成とされて前記ガラスリボンを切断する第二切断装置と、を備えたガラス板製造装置であって、
前記第二切断装置は、前記ガラスリボンの状態をセンサにより検査し、前記センサの検査結果に基づいて、前記ガラスリボンの切断処理を実行するように構成されることを特徴とするガラス板製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板の製造技術に係り、詳しくは、成形されつつ下方に連続して移動するガラスリボンを切断してガラス板を切り出す第一切断と、第一切断を行わない時にそのガラスリボンを切断する第二切断とを実行する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス板製造の分野では、成形ゾーンで成形されつつ下方に連続して移動するガラスリボンを所定長さ毎に幅方向に切断することでガラス板を順々に切り出す第一切断工程を実行することが公知となっている。この場合、ガラス板製造設備の溶融炉等は連続稼働されるのが通例であるため、第一切断工程を実行するための装置がメンテナンス時などで使用できなくても、ガラスリボンは成形され続けることが一般的である、そのため、第一切断工程が実行されない場合でも、成形され続けるガラスリボンを切断して回収する必要がある。
【0003】
このような要請に応じるため、例えば特許文献1には、第一切断工程が実行されない場合に、当該工程での装置とは構成が異なる装置を使用してガラスリボンを切断する第二切断工程を実行することが開示されている。この第二切断工程で使用される装置は、ガラスリボンを保持する保持部材と、ガラスリボンを保持部材により保持した状態で該ガラスリボンに応力を付与する押圧部材と、ガラスリボンの応力の付与部にけがき線を刻設するけがき部材と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】中国実用新案公告第205493369号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1における第二切断工程で使用される装置は、第一切断工程で使用される装置に比して構成が簡易である(同文献の段落[0005]等参照)。しかしながら、この装置を使用した場合には、切断不良や切断不能等が発生し易くなる。
【0006】
例えば、ガラスリボンが下方に連続して移動していく過程で、ガラスリボンの下端部が、上述の装置の構成要素(例えば押圧部材)に引っ掛かったり、或いはガラスリボンの移動経路の行き止まり部に衝突したりする。その結果、ガラスリボンの上下方向に沿ってクラックが進展して縦割れが発生する等の不具合を招く。
【0007】
以上の観点から、本発明は、成形されつつ下方に連続して移動するガラスリボンに対して第一切断工程の実行に代えて第二切断工程を実行している際に、切断不良や切断不能等が発生しても、これらに適切に対応できるようにして、縦割れの発生等を未然に防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために創案された本発明の第一の側面は、成形ゾーンで成形されつつ下方に連続して移動するガラスリボンを幅方向に沿って切断してガラス板を切り出す第一切断工程と、前記第一切断工程を実行しない時に、該第一切断工程で使用する装置と構成が異なる装置を使用して前記ガラスリボンを切断する第二切断工程と、を備えたガラス板製造方法であって、前記第二切断工程では、前記ガラスリボンの状態をセンサにより検査し、前記センサの検査結果に基づいて、前記ガラスリボンの切断処理を実行することに特徴づけられる。
【0009】
このような構成によれば、第一切断工程の実行に代えて第二切断工程を実行している際に、ガラスリボンの状態がセンサにより検査されるため、切断不良や切断不能等の発生に対して適切な対応が可能となる。詳述すると、例えば、先行する切断処理時に切断不良や切断不能等が発生した場合、その事をセンサが迅速且つ正確に検出し、その検出結果が切断処理に反映される。そのため、切断処理では、ガラスリボンの下端部が邪魔にならないように適正な切断を行うことができる。その結果、ガラスリボンの縦割れの発生等を未然に防止することが可能となる。
【0010】
この構成において、前記センサは、前記ガラスリボンに、下方へ突出する突出部が有るか否かを検査するものであってもよい。
【0011】
このようにすれば、例えば、切断不良や切断不能等が発生した場合に形成される、ガラスリボンの下方に突出する突出部が有っても、その突出部がセンサにより検出され、その検出結果が切断処理に反映されるため、突出部の存在に起因するガラスリボンの縦割れの発生等を有効に防止できる。
【0012】
以上の構成において、前記センサは、前記ガラスリボンの幅方向複数箇所に対応して複数個が設置されていてもよい。
【0013】
このようにすれば、複数個のセンサによって、ガラスリボンの幅方向複数箇所のそれぞれについて切断状態が検査されるため、センサによる検査が緻密で高精度なものとなる。
【0014】
この構成において、前記複数個のセンサの検査結果の相違に応じて、前記切断処理の態様を相違させてもよい。
【0015】
このようにすれば、複数個のセンサがそれぞれ検査する切断状態の相違に応じて、切断処理の態様が相違するため、切断処理が、複数箇所それぞれの状態を考慮に入れて適正に行われ得る。
【0016】
前述の構成において、前記複数個のセンサは、前記第二切断工程において切断処理を実行する切断位置から下方に所定長さだけ離れた位置に検査領域を有し、前記ガラスリボンが前記検査領域に達すると予定されるまでの第一の時期に、前記複数個のセンサによる第一の検査結果を取得するようにしてもよい。
【0017】
このようにすれば、ガラスリボンが切断位置で正常な切断処理を経た場合との対比において、複数個のセンサがガラスリボンの複数箇所それぞれの状態を検査した結果を取得できる。詳述すると、第一の時期に第一の検出結果を取得することで、ガラスリボンの下端部の情報を取得できる。
【0018】
この構成において、前記第一の時期に、前記複数個のセンサの全てが、前記ガラスリボンを検出しない場合には、前記第一の時期の後に続く第二の時期に、前記複数個のセンサによる第二の検査結果を取得し、前記第二の時期に、前記複数個のセンサの全てが、前記ガラスリボンを検出した場合に、前記切断処理として前記ガラスリボンを幅方向全長に亘って切断してもよい。
【0019】
ここで、第一の時期に複数個のセンサの全てがガラスリボンを検出しない場合とは、ガラスリボンが切断位置で正常な切断処理を経た場合、或いは切断処理を経た時のガラスリボンの切断端部が切断位置よりも上方に位置していた場合である。この情報を取得した場合には、第二の時期に複数個のセンサの全てがガラスリボンの存在を検出するまで待ち、複数個のセンサの全てがそのことを検出した場合に、ガラスリボンに後続の切断処理が実行される。ここで、複数個のセンサの全てがガラスリボンを検出するまで待つのは、後続の切断処理でガラスリボンを幅方向全長に亘って適正に切断するためである。ここでの構成によれば、ガラスリボンを適正な長さ(例えば予め設定されている長さ)に切断することができる。
【0020】
前述の構成において、前記第一の時期に、前記複数個のセンサの全てが、前記ガラスリボンを検出した場合には、前記切断処理として前記ガラスリボンを幅方向全長に亘って切断してもよい。
【0021】
ここで、第一の時期に複数個のセンサの全てがガラスリボンを検出した場合とは、先行する切断処理を実行した際に切断不能が発生した場合である。この情報を取得した場合には、センサによる検出後に即座に切断処理を実行することが好ましい。このようにすれば、ガラスリボンの下端部が全体に亘って下方に不当に長くなることを阻止できる。
【0022】
前述の構成において、前記第一の時期に、前記複数個のセンサのうちの二個以上のセンサが、前記ガラスリボンを検出し、且つ、残り一個以上のセンサが、前記ガラスリボンを検出しない場合には、前記第一の時期の後に続く第二の時期に、前記複数個のセンサによる第二の検査結果を取得し、前記第二の時期に、前記残り一個以上のセンサが、前記ガラスリボンを検出するまで待ち、前記残り一個以上のセンサが、前記ガラスリボンを検出した場合に、前記切断処理として前記ガラスリボンを幅方向全長に亘って切断してもよい。
【0023】
このように第一の時期に幅方向の二箇所以上にガラスリボンが有ることが検出された場合に、すぐに切断するようにしないのは、幅方向全長に亘って切断する方が、切断動作の容易性や確実性を確保できるからである。この場合、第二の時期に残り一個以上のセンサがガラスリボンを検出するまで待つのは、切断処理でガラスリボンを幅方向全長に亘って適正に切断できる状態になるまで待つためである。
【0024】
前述の構成において、前記切断処理として前記ガラスリボンを幅方向全長に亘って切断する際には、前記ガラスリボンの切断されるべき領域に曲げ応力を付与してもよい。
【0025】
このようにすれば、曲げ応力を有効利用してガラスリボンを幅方向全長に亘って切断することができ、切断処理を円滑且つ確実に実行することが可能となる。
【0026】
前述の構成において、前記第一の時期に、前記複数個のセンサのうちの一個のセンサが、前記ガラスリボンを検出し、且つ、残り一個以上のセンサが、前記ガラスリボンを検出しない場合には、前記切断処理として前記ガラスリボンの前記一個のセンサに対応する幅方向一箇所のみを切断してもよい。
【0027】
このようにすれば、第一の時期に幅方向複数箇所のうちの一箇所のみにガラスリボンがあることが検出された場合には、一箇所のみのガラスリボンが切断される。したがって、ガラスリボンを幅方向全長に亘って切断する場合に比して、容易に且つ迅速に切断できる。
【0028】
この構成において、前記ガラスリボンの前記幅方向一箇所は、前記ガラスリボンの幅方向一端部であってもよい。
【0029】
ここで、ガラスリボンの幅方向両端部は耳部を有し、耳部はその中央側領域よりも厚みが大きいため、下方に向かって長尺な幅狭の突出部が発生し易い。このような突出部が幅方向一端部に発生した場合には、早期のうちに切断処理でその突出部を切断することができる。これにより、特に邪魔になる突出部が効率良く切断され得る。
【0030】
これらの構成において、前記切断処理として前記ガラスリボンの前記幅方向一箇所のみを切断する際には、前記ガラスリボンの切断されるべき領域に曲げ応力を付与しなくてもよい。
【0031】
このようにすれば、曲げ応力を付与する手間が省かれるため、切断処理をさらに早期に且つ簡素に行うことができる。
【0032】
上記課題を解決するために創案された本発明の第二の側面は、成形ゾーンで成形されつつ下方に連続して移動するガラスリボンを幅方向に沿って切断してガラス板を切り出す第一切断装置と、前記第一切断装置を使用しない時に、前記第一切断装置と異なる構成とされて前記ガラスリボンを切断する第二切断装置と、を備えたガラス板製造装置であって、前記第二切断装置は、前記ガラスリボンの状態をセンサにより検査し、前記センサの検査結果に基づいて、前記ガラスリボンの切断処理を実行するように構成されることに特徴づけられる。
【0033】
これによれば、この製造装置と実質的に構成が同一である既述の製造方法と同一の作用効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、成形されつつ下方に連続して移動するガラスリボンに対して第一切断工程の実行に代えて第二切断工程を実行している際に、切断不良や切断不能等が発生しても、これらに適切に対応することが可能となり、縦割れの発生等が未然に防止される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の実施形態に係るガラス板製造装置の全体構成を示す側面図である。
図2】本発明の実施形態に係るガラス板製造装置の要部を示す概略正面図である。
図3】本発明の実施形態に係るガラス板製造装置における第二切断装置を示す拡大概略平面図である。
図4】本発明の実施形態に係るガラス板製造装置における第二切断装置を示す拡大概略平面図である。
図5】本発明の実施形態に係るガラス板製造装置における第二切断装置を示す拡大側面図である。
図6】本発明の実施形態に係るガラス板製造装置における第二切断装置を使用してガラスリボンを切断する際の基本構成を示す概略正面図である。
図7図7(a)、(b)はそれぞれ、本発明の実施形態に係るガラス板製造装置における第二切断装置を使用してガラスリボンを切断する際の具体的態様の第一例を示す概略正面図である。
図8図8(a)、(b)はそれぞれ、本発明の実施形態に係るガラス板製造装置における第二切断装置を使用してガラスリボンを切断する際の具体的態様の第二例を示す概略正面図である。
図9図9(a)、(b)はそれぞれ、本発明の実施形態に係るガラス板製造装置における第二切断装置を使用してガラスリボンを切断する際の具体的態様の第三例を示す概略正面図である。
図10図10(a)、(b)はそれぞれ、本発明の実施形態に係るガラス板製造装置における第二切断装置を使用してガラスリボンを切断する際の具体的態様の第四例を示す概略正面図である。
図11図11(a)、(b)はそれぞれ、本発明の実施形態に係るガラス板製造装置における第二切断装置を使用してガラスリボンを切断する際の具体的態様の第五例を示す概略正面図である。
図12図12(a)、(b)はそれぞれ、本発明の実施形態に係るガラス板製造装置における第二切断装置を使用してガラスリボンを切断する際の具体的態様の第六例を示す概略正面図である。
図13図13(a)、(b)はそれぞれ、本発明の実施形態に係るガラス板製造装置における第二切断装置を使用してガラスリボンを切断する際の具体的態様の第一の変形例を示す概略正面図である。
図14図14(a)、(b)はそれぞれ、本発明の実施形態に係るガラス板製造装置における第二切断装置を使用してガラスリボンを切断する際の具体的態様の第二の変形例を示す概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明に係る一実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0037】
図1は、本実施形態に係るガラス板製造装置の全体構成を示す側面図である。同図に示すように、ガラス板製造装置は、主たる構成要素として、ガラスリボンGの処理装置1と、第一切断装置2と、第二切断装置3と、を備えている。
【0038】
処理装置1は、ガラスリボンGを連続成形する成形ゾーン11と、ガラスリボンGを熱処理(徐冷)する熱処理ゾーン12と、ガラスリボンGを室温付近まで冷却する冷却ゾーン13と、成形ゾーン11、熱処理ゾーン12及び冷却ゾーン13のそれぞれに上下複数段に設けられたローラ対Rからなる搬送装置14と、を備えている。
【0039】
成形ゾーン11及び熱処理ゾーン12は、ガラスリボンGの搬送経路の周囲が壁部で囲まれた炉により構成されており、ガラスリボンGの温度を調整するヒータ等の加熱装置が炉内の適所に配置されている。一方、冷却ゾーン13は、ガラスリボンGの搬送経路の周囲が壁部に囲まれることなく常温の外部雰囲気に開放されており、ヒータ等の加熱装置は配置されていない。
【0040】
成形ゾーン11の内部空間には、オーバーフローダウンドロー法により溶融ガラスGmからガラスリボンGを成形する成形体15が配置されている。成形体15に供給された溶融ガラスGmは、成形体15の頂部15aに形成された溝部(図示略)から溢れ出る。この溢れ出た溶融ガラスGmは、成形体15の断面楔状を呈する両側面15bを伝って下端で合流する。これにより、板状のガラスリボンGが連続成形される。この連続成形されるガラスリボンGは、縦姿勢(好ましくは鉛直姿勢)で下方に送られる。
【0041】
熱処理ゾーン12の内部空間は、下方に向かって所定の温度勾配を有している。縦姿勢のガラスリボンGは、熱処理ゾーン12の内部空間を下方に向かって移動するに連れて、温度が低くなるように熱処理(徐冷)される。この熱処理により、ガラスリボンGの内部歪が低減される。熱処理ゾーン12の内部空間の温度勾配は、例えば熱処理ゾーン12の壁部内面に設けた加熱装置により調整される。
【0042】
搬送装置14を構成する複数のローラ対Rは、縦姿勢のガラスリボンGの幅方向両端部を表裏両側から挟持する。成形ゾーン11に配置された最上部のローラ対Rは、冷却ローラである。なお、熱処理ゾーン12の内部空間などでは、複数のローラ対Rの中に、ガラスリボンGの側端部を挟持しないものが含まれていてもよい。つまり、ローラ対Rの対向間隔をガラスリボンGの幅方向両端部の厚みよりも大きくし、ローラ対Rの間をガラスリボンGが通過するようにしてもよい。
【0043】
本実施形態では、処理装置1によって製造されたガラスリボンGの幅方向両端部は、成形過程の収縮等の影響により、幅方向中央部に比べて厚みが大きい部分(以下、「耳部」ともいう)を有する。
【0044】
第一切断装置2は、処理装置1の下方で縦姿勢のガラスリボンGを所定の長さ毎に幅方向に切断することにより、ガラスリボンGからガラス板を順々に切り出すように構成されている。ガラス板は、後の工程で耳部が除去されて1枚又は複数枚の製品ガラス板が採取されるガラス原板(マザーガラス板)となる。ここで、幅方向は、ガラスリボンGの長手方向(搬送方向)と直交する方向であり、本実施形態では実質的に水平方向と一致する。
【0045】
図1及び図2に示すように、第一切断装置2は、スクライブ線形成装置21と、折割装置22とを備えている。
【0046】
スクライブ線形成装置21は、スクライブ線形成位置P1で、処理装置1から降下してきた縦姿勢のガラスリボンGの第一主面Gaにスクライブ線Sを形成する装置である。本実施形態では、スクライブ線形成装置21は、ガラスリボンGの第一主面Gaにその幅方向に沿ってスクライブ線Sを形成するホイールカッター23と、ホイールカッター23に対応する位置でガラスリボンGの第二主面(第一主面Gaの反対側の面)Gbを支持する支持部材24(例えば支持バーや支持ローラ)と、を備えている。なお、スクライブ線Sはレーザーの照射等によって形成してもよい。
【0047】
折割装置22は、スクライブ線形成位置P1の下方に設けられた折割位置P2で、スクライブ線Sに沿ってガラスリボンGを折り割ってガラス板を切り出す装置である。本実施形態では、折割装置22は、スクライブ線Sが形成された領域に第二主面Gb側から当接する折割部材25と、折割位置P2よりも下方でガラスリボンGの下部領域を把持する把持機構26と、を備えている。
【0048】
折割部材25は、ガラスリボンGの幅方向の全域又は一部と接触する平面を有する板状体(定盤)から構成されている。折割部材25の接触面は、幅方向に湾曲した曲面であってもよい。
【0049】
把持機構26は、ガラスリボンGの幅方向両端部における上下方向の複数箇所に配設されたチャック27と、それら複数のチャック27を幅方向両端部でそれぞれ保持するアーム28(図2参照)とを備えている。なお、チャック27は、ガラスリボンGを負圧吸着によって保持するなどの他の保持形態に変更してもよい。
【0050】
第二切断装置3は、図1及び図2に示すように、第一切断装置2の下方に配置され、第一切断装置2がメンテナンス時などで使用されない時に、成形ゾーン11で成形されつつ下方に連続して移動するガラスリボンGを切断するものである。なお、以下の説明では、ガラスリボンGの第二主面Gb側(図1の矢印X側)を前側とし、第一主面Ga側(図1の矢印Y側)を後側とする。
【0051】
第二切断装置3は、ガラスリボンGの後方に配備された枠組体からなる本体フレーム31を備えている。本体フレーム31の前端部には、上方から順に、一対の保持装置32と、一対の切り込み装置33と、応力付与装置34とが取り付けられている。さらに、この第二切断装置3は、ガラスリボンGの後方に設置されたセンサ35を備えている。
【0052】
一対の保持装置32は、ガラスリボンGの幅方向両端部にそれぞれ対応して配置された保持部材36を備え、これらの保持部材36はそれぞれ、回転軸37(図3及び図4参照)の廻りに回動可能とされている。さらに、これらの保持部材36はそれぞれ、図3に示すようにガラスリボンGから幅方向外側に退避した状態(図5に実線で示す状態)と、図4に示すようにガラスリボンGの第二主面Gbを支持する状態(図5に一点鎖線で示す状態)とに変化可能である。
【0053】
一対の切り込み装置33は、ガラスリボンGの幅方向両端部にそれぞれ対応して配置された回転刃38を備え、これらの回転刃38はそれぞれ、前後方向(前方に向かって上方に傾斜する方向)に移動可能とされている(図2及び図5参照)。さらに、これらの回転刃38はそれぞれ、図3に示すようにガラスリボンGから後方に退避した状態(図5に実線で示す状態)と、図4に示すようにガラスリボンGの幅方向両端部に接触する状態(図5に一点鎖線で示す状態)とに変化可能である。また、これらの回転刃38は、同一高さ位置に保持され、各々が独立して移動及び動作することが可能である。回転刃38がガラスリボンGに接触している時には、ガラスリボンGの幅方向端部にけがき線を刻設する処理と、ガラスリボンGの幅方向端部を切断する処理とを行うことが可能である。
【0054】
応力付与装置34は、支持軸39の廻りに揺動可能な一対の揺動アーム40の先端に装着された押圧部材41を有する(図1及び図2参照)。押圧部材41は、幅方向に延びるローラ状の部材であり、ガラスリボンGの幅方向長さよりも長尺である。さらに、押圧部材41は、図3に示すようにガラスリボンGから後方に退避した状態(図5に実線で示す状態)と、図4に示すようにガラスリボンGを押す状態(図5に一点鎖線で示す状態)とに変化可能である。
【0055】
センサ35は、ガラスリボンGの幅方向複数箇所に対応して複数個が設置されている。本実施形態では、ガラスリボンGの幅方向両端部に対応する箇所と幅方向中央部に対応する箇所とに計三個のセンサ35を有する(図2参照)。これらのセンサ35は、幅方向に一直線に沿うように本体フレーム31の前端部に固定され、一定位置に保持されている。センサ35としては、レーザーセンサ、超音波センサや、サーモセンサなどが使用される。
【0056】
この第二切断装置3による基本的な切断処理は、次のようにして行われる。先ず、図5に実線で示すように、ガラスリボンGが成形されつつ下方に連続して移動している途中で、保持部材36が回転する。これにより、保持部材36は、同図に一点鎖線で示すようにガラスリボンGの第二主面Gbを保持することが可能な状態になる。この状態の下で、押圧部材41が前方に向かって揺動する。これにより、押圧部材41は、同図に一点鎖線で示すようにガラスリボンGを押し、ガラスリボンGの切断されるべき領域Gx、すなわち回転刃38により切断を行う切断位置P3の周辺領域Gxに曲げ応力を付与する。このとき、保持部材36は、切断位置P3の上方でガラスリボンGの第二主面Gbを保持し、ガラスリボンGの前方への変位を阻止している。この状態にある時に、回転刃38が前方に移動する。これにより、回転刃38は、同図に一点鎖線で示すように切断位置P3でガラスリボンGの第一主面Gaに接触し、ガラスリボンGにけがき線(初期クラック)を刻設する。初期クラックは、一対の回転刃38によってガラスリボンGの幅方向両端部にそれぞれ同時に刻設される。初期クラックの刻設位置は、ガラスリボンGの耳部を含む位置であってもよく、耳部を含まない位置であってもよい。そして、これら初期クラックがガラスリボンGの幅方向に沿って進展することで、ガラスリボンGが切断される。切断後のガラスは、不要ガラスGyとなって下方に落下し、回収エリア42で回収される。この後は、同様にしてガラスリボンGに後続の切断処理が実行される。三個のセンサ35は、ガラスリボンGに後続の切断処理が実行されるまでの所定期間に、先行する切断処理を経たガラスリボンGの切断状態を検査する。
【0057】
次に、以上のような構成を備えたガラス板製造装置を用いたガラス板製造方法について説明する。
【0058】
本実施形態に係るガラス板製造方法は、成形工程と、搬送工程と、第一切断工程と、第二切断工程と、を備えている。
【0059】
成形工程は、成形ゾーン11でガラスリボンGを成形する工程である。
【0060】
搬送工程は、成形されたガラスリボンGを搬送装置14のローラ対Rで搬送する工程である。なお、搬送工程は、熱処理工程と、冷却工程と、を含んでいる。
【0061】
熱処理工程は、熱処理ゾーン12で成形工程を経たガラスリボンGを搬送しながら、ガラスリボンGに対して熱処理を行う工程である。
【0062】
冷却工程は、冷却ゾーン13で熱処理工程を経たガラスリボンGを搬送しながら冷却する工程である。
【0063】
第一切断工程は、冷却工程を経たガラスリボンGを搬送しながら、第一切断装置2によりガラスリボンGを幅方向に切断してガラス板を得る工程である。
【0064】
詳述すると、図1及び図2に示すように、第一切断工程では、先ず、ホイールカッター23及び支持部材24が、下方に連続して移動するガラスリボンGに追従して移動しつつ、ガラスリボンGの幅方向の全域又は一部にスクライブ線Sを形成する。本実施形態では、相対的に厚みが大きい耳部にもスクライブ線Sが形成される。次いで、複数のチャック27がガラスリボンGを把持した後、アーム28が、複数のチャック27をガラスリボンGに追従して移動させる。この時、折割部材25も、ガラスリボンGに追従して移動する。これらの移動が行われている間に、アーム28が、折割部材25を支点としてガラスリボンGを湾曲させるための動作(図1に示すB方向の動作)を行う。これにより、スクライブ線S及びその近傍に曲げ応力を付与し、ガラスリボンGをスクライブ線Sに沿って幅方向に折り割る。この折り割りによる切断の結果、ガラスリボンGからガラス板が切り出される。
【0065】
第二切断工程は、第一切断装置2を使用しない時に、第二切断装置3を使用してガラスリボンGを切断する工程である。
【0066】
例えば、第二切断工程では、ガラスリボンGが先行する切断処理を経た後に、そのガラスリボンGの切断状態をセンサ35により検査し、センサ35の検査結果に基づいて、そのガラスリボンGに後続の切断処理を実行する。
【0067】
本実施形態では、既述のように三個のセンサ35が一定位置に保持されている。そのため、図6に示すように、三個のセンサ35による検査領域Eは、回転刃38によりガラスリボンGの切断を行う切断位置P3から下方に所定長さL1だけ離れている。したがって、本実施形態に係る三個のセンサ35は、切断位置P3で切断されたガラスリボンGが、検査領域Eに接近し且つそれを通過していく過程で、ガラスリボンGの切断状態を検査する。
【0068】
具体的に、三個のセンサ35は、ガラスリボンGが先行する切断処理を経た後に、そのガラスリボンGに切り残し部(詳細は後述する)が有るか否かを検査する。この切り残し部は、ガラスリボンGが先行する切断処理を経た時に、切断位置P3から下方に突出していたガラスリボンGの突出部である。
【0069】
本実施形態では、先行する切断処理を経た時からのガラスリボンGの移動長さが所定長さL1に達すると予定される第一の時期に、三個のセンサ35による第一の検査結果を取得し、必要に応じて、第一の時期の後に続く第二の時期に、三個のセンサ35による第二の検査結果を取得する。また、第一の検査結果及び第二の検査結果は、先行する切断処理を経た時から連続的に取得してもよいし、所定時間間隔をおいて取得してもよい。ここで、三個のセンサ35による第一及び第二の検査結果を取得するのは、作業者等であってもよく、或いはパーソナルコンピュータ等の自動制御手段であってもよい。このような動作を行う際の具体的態様の例を以下に示す。
【0070】
図7(a)、(b)は、上記具体的態様の第一例を示している。この第一例では、同図(a)に示すように、ガラスリボンGが先行する切断処理を経た際に、ガラスリボンGは切断位置P3で幅方向に一直線に沿うように切断されている。これは、ガラスリボンGが正常に切断されたことを意味している。このガラスリボンGが下方に移動した場合、第一の時期では、同図(b)に実線で示すように、三個のセンサ35の全てが、ガラスリボンGを検出していない。この情報を取得した場合には、第二の時期で、三個のセンサ35の全てが、ガラスリボンGを検出するまで待つ。そして、第二の時期で、三個のセンサ35の全てが、ガラスリボンGを検出した場合には、例えば、同図(b)に一点鎖線で示すように、例えばガラスリボンGが予め設定された設定位置P4に達した時点で、後続の切断処理としてガラスリボンGを切断位置P3で幅方向全長に亘って切断する。この設定位置P4は、切断位置P3から下方にL1よりも長い所定長さL2だけ離れた位置とされている。これにより、ガラスリボンGは予め設定された所定長さL2に切断される。この後続の切断処理は、保持部材36と押圧部材41とによりガラスリボンGの切断されるべき領域Gxに曲げ応力を付与した状態で一対の回転刃38により初期クラックを形成して行う。なお、ガラスリボンGが正常に切断されている場合、第一の時期から第二の時期に変わったタイミングで、三個のセンサ35の全てが、ガラスリボンGを検出する。
【0071】
図8は、上記具体的態様の第二例を示している。この第二例では、ガラスリボンGが先行する切断処理を経た際に、ガラスリボンGは切断位置P3で切断されていない。したがって、このガラスリボンGが下方に移動した場合、第一の時期では、同図に実線で示すように、三個のセンサ35の全てが、ガラスリボンGを検出している。この情報を取得した場合には、即座に後続の切断処理としてガラスリボンGを幅方向全長に亘って切断する。なお、この情報を取得した時点で、ガラスリボンGが設定位置P4に達していない場合には、同図に一点鎖線で示すように設定位置P4に達した時点で、ガラスリボンGに後続の切断処理を実行してもよい。この第二例での後続の切断処理も、既述の第一例と同様に、保持部材36、押圧部材41及び一対の回転刃38を用いて行う。
【0072】
図9(a)、(b)は、上記具体的態様の第三例を示している。この第三例では、同図(a)に示すように、ガラスリボンGが先行する切断処理を経た際に、ガラスリボンGの幅方向の半分以上(左側の半分以上)に、切断位置P3から下方に突出する切り残し部Gcが残存している。このガラスリボンGが下方に移動した場合、第一の時期では、同図(b)に実線で示すように、幅方向左端部と中央部との計二個のセンサ35がガラスリボンGを検出している。この情報を取得した場合には、第二の時期で、幅方向右端部のセンサ35がガラスリボンGを検出するまで待つ。そして、第二の時期で、同図(b)に一点鎖線で示すように、幅方向右端部のセンサ35がガラスリボンGを検出した場合、この情報を取得して、後続の切断処理としてガラスリボンGを切断位置P3で幅方向全長に亘って切断する。この場合、幅方向右端部のセンサ35がガラスリボンGを検出した時点で、即座にガラスリボンGに後続の切断処理を実行してもよい。このようにするためには、三個のセンサ35の検査領域Eよりも上方の位置で、押圧部材41がガラスリボンGを押す構成にする必要がある。また、後続の切断処理を実行することが可能となった時に、仮に図示のように、ガラスリボンGの切り残し部Gcの最下端部Gcxが設定位置P4に達していない場合には、設定位置P4に達した時点で、ガラスリボンGに後続の切断処理を実行してもよい。この第三例での後続の切断処理も、既述の第一例と同様に、保持部材36、押圧部材41及び一対の回転刃38を用いて行う。
【0073】
図10(a)、(b)は、上記具体的態様の第四例を示している。この第四例が、上記の第三例と相違している点は、同図(a)に示すように、ガラスリボンGが先行する切断処理を経た際に、ガラスリボンGの幅方向両端部にそれぞれ、切断位置P3から下方に突出する切り残し部Gcが残存しているところである。したがって、このガラスリボンGが下方に移動した場合、第一の時期では、同図(b)に実線で示すように、幅方向両端部の計二個のセンサ35がガラスリボンGを検出している。この情報を取得した後、第二の時期で、幅方向中央部のセンサ35がガラスリボンGを検出するまで待ってから、ガラスリボンGに後続の切断処理を実行する際の動作は、既述の第三例と同様の要領で行われる。
【0074】
図11(a)、(b)は、上記具体的態様の第五例を示している。この第五例では、同図(a)に示すように、ガラスリボンGが先行する切断処理を経た際に、ガラスリボンGの幅方向一端部(左端部)のみに、切断位置P3から下方に突出する切り残し部Gcが残存している。このガラスリボンGが下方に移動した場合、第一の時期では、同図(b)に実線で示すように、幅方向左端部のセンサ35のみがガラスリボンGを検出している。この情報を取得した場合には、第二の時期で、幅方向中央部及び右端部の計二個のセンサ35がガラスリボンGを検出するまで待つか或いは待たずに、後続の切断処理として回転刃38により切り残し部Gcのみを幅方向に沿って切断する。このように切り残し部Gcのみを切断する場合には、回転刃38を上下方向に移動可能としておき、切り残し部Gcのみを切断できる位置まで回転刃38を移動させておく必要がある。したがって、この場合には、保持部材36及び押圧部材41を動作させなくてもよい。また、この場合にも、後続の切断処理を実行することが可能となった時に、仮に同図(b)に一点鎖線で示すように、ガラスリボンGの切り残し部Gcの最下端部Gcxが設定位置P4に達していない場合には、設定位置P4に達した時点で、切り残し部Gcのみを切断してもよい。さらに、第二の時期で所定期間、幅方向中央部及び右端部の計二個のセンサ35がガラスリボンGを検出しない場合は、ガラスリボンGに後続の切断処理を実行してもよい。
【0075】
図12(a)、(b)は、上記具体的態様の第六例を示している。この第六例では、同図(a)に示すように、ガラスリボンGが先行する切断処理を経た際に、ガラスリボンGに、切断位置P3から下方に突出する切り残し部Gcが残存し且つ切断位置P3から上方に窪む欠けGdが発生している。このガラスリボンGが下方に移動した場合、第一の時期では、同図(b)に実線で示すように、計二個のセンサ35がガラスリボンGを検出している。この情報を取得した場合には、第二の時期に、残り一個のセンサ35がガラスリボンGを検出するまで待ってから、既述の第三例と同様の要領でガラスリボンGに後続の切断処理を実行してもよいが、次のように対応してもよい。すなわち、第二の時期で、予め設定された所定時間内に残り一個のセンサ35がガラスリボンGを検出しない場合には、所定時間の経過後に、ガラスリボンGに既述の第三例と同様の要領で後続の切断処理を実行する。ここでの所定時間は、例えばガラスリボンGが先行する切断処理を経た時を基準として設定される。また、この場合にも、ガラスリボンGの切り残し部Gcの最下端部Gcxが設定位置P4に達した時点で、ガラスリボンGに既述の第三例と同様の要領で後続の切断処理を実行してもよい。
【0076】
以上の具体的態様は、三個のセンサ35を使用してガラスリボンGを切断する場合を例に挙げたが、二個のセンサ35を使用してガラスリボンGを切断することもできる。この場合、ガラスリボンGの幅方向両端部における耳部は、その中央部よりも厚みが大きいため、耳部の周辺に特に下方に長尺な幅狭の切り残し部が残存し易い。そのため、既述の三個のセンサ35のうち、幅方向中央部のセンサ35をなくして、幅方向両端部の計二個のセンサ35を使用するようにしてもよい。この場合の具体的態様の例(下記では変形例という)を以下に示す。
【0077】
図13(a)、(b)は、第一の変形例を示している。この第一の変形例では、同図(a)に示すように、ガラスリボンGが先行する切断処理を経た際に、ガラスリボンGの幅方向一端部(左端部)に、切断位置P3から下方に突出する幅狭の切り残し部Gcが残存している。このガラスリボンGが下方に移動した場合、第一の時期では、同図(b)に実線で示すように、幅方向左端部のセンサ35がガラスリボンGを検出している。この情報を取得した場合には、幅方向右端部のセンサ35がガラスリボンGを検出するまで待つか或いは待たずに、図11(a)、(b)に示す既述の第五例と同様の要領で、後続の切断処理として回転刃38により切り残し部Gcのみを幅方向に沿って切断する。また、この場合にも、後続の切断処理を実行することが可能となった時に、仮に同図(b)に一点鎖線で示すように、ガラスリボンGの切り残し部Gcの最下端部Gcxが設定位置P4に達していない場合には、設定位置P4に達した時点で、切り残し部Gcのみを切断してもよい。
【0078】
図14(a)、(b)は、第二の変形例を示している。この第二の変形例では、同図(a)に示すように、ガラスリボンGが先行する切断処理を経た際に、ガラスリボンGの幅方向両端部に、切断位置P3から下方に突出する幅狭の切り残し部Gcが残存している。このガラスリボンGが下方に移動した場合、第一の時期では、同図(b)に実線で示すように、幅方向両端部のセンサ35がガラスリボンGを検出している。この情報を取得した場合には、所定時間の経過後に、図9(a)、(b)に示す既述の第三例と同様の要領で、ガラスリボンGに後続の切断処理を実行する。ここでの所定時間は、例えばガラスリボンGが先行する切断処理を経た時を基準として設定される。また、この場合にも、後続の切断処理を実行することが可能となった時に、仮に同図(b)に一点鎖線で示すように、ガラスリボンGの切り残し部Gcの最下端部Gcxが設定位置P4に達していない場合には、設定位置P4に達した時点で、切り残し部Gcのみを切断してもよい。
【0079】
以上の構成を備えた本発明の実施形態に係るガラス板製造装置及びその製造方法によれば、以下に示すような効果が得られる。
【0080】
上記実施形態では、第一切断工程を実行している時は、ホイールカッター23、支持部材24、アーム28、複数のチャック27、及び折割部材25は、ガラスリボンGに追従して移動するため、第一切断装置2の構成は複雑であるが、ガラスリボンGを品質良く且つ正確に切断できる。これに対して、第二切断工程を実行している時は、第二切断装置3の各構成要素がガラスリボンGに追従して移動するものではない。したがって、第二切断装置3は、第一切断装置2よりも構成が極めて簡易であるため、第二切断工程では、切断不良や切断不能等が発生し易い。そこで、第二切断工程では、既に述べたような種々の対策を講じてこのような不具合を回避している。その結果、第一切断工程と第二切断工程との両工程で、適正な切断動作を行うことが可能となる。
【0081】
上記実施形態では、第一切断工程の実行に代えて第二切断工程を実行している際に、先行する切断処理を受けた後のガラスリボンGの下端の状態がセンサ35により検査されるため、切断不良や切断不能等の発生に対して適切な対応が可能となる。詳述すると、先行する切断処理時に発生する切断不良や切断不能等に起因して、ガラスリボンGの下端部が下方に不当に長くなった場合には、その事をセンサ35が迅速且つ正確に検出し、その検出結果が後続の切断処理に反映される。そのため、後続の切断処理では、ガラスリボンGの下端部が邪魔にならないように適正な切断を行うことができる。これにより、ガラスリボンGが下方に連続して移動する過程で、ガラスリボンGの下端部が、第二切断装置3の構成要素に引っ掛かったり、或いはガラスリボンGの移動経路の行き止まり部に衝突したりする等の不具合を回避できる。すなわち、ガラスリボンGの下端部が下方に不当に長い場合には、第二切断装置3の押圧部材41が退避位置に戻っていない時に、ガラスリボンGの下端部が、押圧部材41を支持する揺動アーム40に引っ掛かる等の事態が生じ得る。また、同様にガラスリボンGの下端部が下方に不当に長い場合には、ガラスリボンGの下端部が、不要ガラスGyを回収する回収エリア42に衝突する等の事態も生じ得る。上記実施形態では、これらの事態が生じることを阻止できる。その結果、ガラスリボンGの縦割れの発生等を未然に防止することが可能となる。
【0082】
上記実施形態の第二切断工程は、ガラスリボンGが先行する切断処理を経た後に、ガラスリボンGに切り残し部Gcが有るか否かを検査するものである。したがって、ガラスリボンGに切り残し部Gcが有っても、その切り残し部Gcがセンサ35により検出され、その検出結果が後続の切断処理に反映されるため、切り残し部Gcの存在に起因するガラスリボンGの縦割れの発生等を有効に防止できる。
【0083】
この場合、上述の切り残し部は、ガラスリボンが先行する切断処理を経た時に、切断位置P3から下方に突出していたガラスリボンGの突出部である。これによれば、ガラスリボンGが切断位置P3で正常な切断処理を経た場合には、ガラスリボンGに、切断位置P3から下方に突出する突出部が形成されない。これに対して、切断不良や切断不能等が発生した場合には、ガラスリボンGに、切断位置P3から下方に突出する突出部、つまり切り残し部Gcが残存する。したがって、切り残し部Gcの有無をセンサ35が検査することで、正常な切断処理を経たか否かを正確に知得でき、これに伴って第二切断装置3の部品交換等の要否も正確に判断できる。
【0084】
上記実施形態の第二切断工程では、ガラスリボンGの幅方向複数箇所に対応して、複数個(三個または二個)のセンサ35が設置されている。したがって、複数個のセンサ35によって、ガラスリボンGの幅方向複数箇所のそれぞれについて切断状態を検査できるため、センサ35による検査が緻密で高精度なものとなる。
【0085】
上記実施形態の第二切断工程では、複数個のセンサ35の検査結果の相違に応じて、後続の切断処理の態様を相違させている。したがって、複数個のセンサ35がそれぞれ検査する切断状態の相違に応じて、後続の切断処理の態様を相違させることができ、後続の切断処理が、複数箇所それぞれの切断状態を考慮に入れて適正に行われ得る。
【0086】
上記実施形態の第二切断工程では、複数個のセンサ35が、切断位置P3から下方に所定長さL1だけ離れた位置に検査領域を有する。そして、先行する切断処理を経た時からのガラスリボンGの移動長さが前記所定長さL1に達すると予定される第一の時期に、複数個のセンサ35による第一の検査結果を取得する。また、必要に応じて、第一の時期の後に続く第二の時期に、複数個のセンサ35による第二の検査結果を取得する。このようにすれば、ガラスリボンGが切断位置P3で正常な切断処理を経た場合との対比において、複数個のセンサ35がガラスリボンGの複数箇所それぞれの切断状態を検査した結果を取得できる。詳述すると、第一の時期に第一の検出結果を取得することで、ガラスリボンGの下端部が下方に不当に長いか否かを知得できる。また、第二の時期に第二の検出結果を取得することで、そのガラスリボンGに後続の切断処理を実行するための適正な時期を知得できる。これにより、複数個のセンサ35による検査をより一層緻密に行うことができ且つそれらの検査結果が有効活用される。
【0087】
上記実施形態の第二切断工程では、後続の切断処理としてガラスリボンGを幅方向全長に亘って切断する際には、ガラスリボンGの切断されるべき領域Gxに曲げ応力が付与される。したがって、曲げ応力を有効利用してガラスリボンGを幅方向全長に亘って切断することができ、後続の切断処理を円滑且つ確実に実行することが可能となる。
【0088】
上記実施形態の第二切断工程では、後続の切断処理としてガラスリボンGの幅方向一箇所のみを切断する際には、ガラスリボンGの切断されるべき領域Gxに曲げ応力を付与しない。したがって、曲げ応力を付与する手間が省かれ、後続の切断処理を早期に且つ簡素に行うことができる。
【0089】
以上、本発明の実施形態に係るガラス板製造装置及びその製造方法について説明したが、本発明の実施の形態はこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更することが可能である。
【0090】
上記実施形態では、ガラスリボンGをオーバーフローダウンドロー法により成形したが、スロットダウンドロー法やリドロー法などの他のダウンドロー法などにより成形してもよい。
【0091】
上記実施形態では、第一切断工程で、ガラスリボンGをスクライブ線Sに沿う折り割りで切断するようにしたが、レーザー割断やレーザー溶断などの他の方法により切断してもよい。
【0092】
上記実施形態では、第一切断装置2の下方に第二切断装置3を配置したが、この両装置2、3が上下方向で重複する位置になるように並列に配置してもよい。このようにする場合には、第二切断装置3の本体フレーム31を一定位置に保持しておき、第一切断装置2の使用時に、保持部材36、回転刃38及び押圧部材41を、第一切断装置2の動作を妨げない位置まで退避させておけばよい。
【0093】
上記実施形態では、ガラスリボンGの切断を行うために回転刃38を使用したが、切れ刃を有するものであれば、これに限定されない。
【0094】
上記実施形態では、幅方向に二個または三個のセンサ35を配列させたが、幅方向に四個以上のセンサ35を配列させてもよい。
【0095】
上記実施形態では、先行する切断処理が存在したが、例えばガラスリボンGの成形の初期段階であって、未だにガラスリボンGを切断していない場合であってもよい。その場合、第一時期の起点を、例えば、ガラスリボンGの先端が第二切断装置3の保持部材36の高さ方向において一致する位置に到達した時点としてもよい。
【符号の説明】
【0096】
1 ガラスリボンの処理装置
2 第一切断装置
3 第二切断装置
11 成形ゾーン
31 本体フレーム
32 保持装置
34 応力付与装置
35 センサ
36 保持部材
38 回転刃
40 揺動アーム
41 押圧部材
E センサの検査領域
G ガラスリボン
Gc 切り残し部
Gm 溶融ガラス
Gx ガラスリボンの切断されるべき領域
P3 切断位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14