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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022144816
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】光学ユニットの設計方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/032 20060101AFI20220926BHJP
   G02B 27/28 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
G01R33/032
G02B27/28 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021045989
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】000166948
【氏名又は名称】シチズンファインデバイス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100160716
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 力
(72)【発明者】
【氏名】饗場 哲也
(72)【発明者】
【氏名】須江 聡
(72)【発明者】
【氏名】土屋 智春
(72)【発明者】
【氏名】宮本 光教
(72)【発明者】
【氏名】久保 利哉
【テーマコード(参考)】
2G017
2H199
【Fターム(参考)】
2G017AA01
2G017AD12
2G017AD15
2G017BA05
2G017BA15
2H199AB46
2H199AB47
2H199AB48
(57)【要約】
【課題】干渉型光磁界センサ装置の光学ユニットで発生するノイズのノイズ量を所望の大きさに設定可能な設計方法を提供する。
【解決手段】光学ユニットの設計方法は、干渉型光磁界センサ装置2において、発光部10から出射された光をセンサ素子14へ導き、且つ、当該センサ素子14で反射された光をP偏光成分の光及びS偏光線分の光として出力する光学ユニット11の設計方法であって、干渉型光磁界センサ装置2における所望のノイズ量Dを設定し、予め定められたノイズ量Dと消光比Erとの関係式に基づいて、所望のノイズ量Dに応じた消光比Erを算出し、算出された消光比Erとなるように光学ユニット11の構成を選択する、ステップを含み、消光比Erは、非測定状態において、光学ユニット11に発光部か10ら出射された光が入射され、且つ、センサ素子から反射された場合に光学ユニット11から出力されるP偏光成分の光とS偏光線分の光との比を言う。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
干渉型光磁界センサ装置において、発光部から出射された光をセンサ素子へ導き、且つ、当該センサ素子で反射された光をP偏光成分の光及びS偏光線分の光として出力する光学ユニットの設計方法であって、
前記干渉型光磁界センサ装置における所望のノイズ量を設定し、
予め定められたノイズ量と消光比との関係式に基づいて、前記所望のノイズ量に応じた消光比を算出し、
算出された前記消光比となるように前記光学ユニットの構成を選択する、ステップを含み、
前記消光比は、非測定状態において、前記光学ユニットに前記発光部から出射された光が入射され、且つ、前記センサ素子から反射された場合に前記光学ユニットから出力されるP偏光成分の光とS偏光線分の光との比を言う、
ことを特徴とする設計方法。
【請求項2】
前記関係式は、以下の式(1)であり、
N=K1×Er-K2×(P×S×TIA×1/2)+K3 (1)
ここで、Nは前記所望のノイズ量(mV)、Erは前記消光比(dB)、Pは前記光学ユニットから出力されるP偏光成分の光を電気信号に変換する第1光電変換素子の出力及びS偏光線分の光を電気信号に変換する第2光電変換素子の出力の合計(mW)、Sは前記第1光電変換素子及び前記第2光電変換素子の光電変換係数(A/W)、TIAは前記第1光電変換素子及び前記第2光電変換素子のそれぞれから出力される電気信号を増幅するときの増幅率、及び、K1~K3は定数を表す、
請求項1に記載の設計方法。
【請求項3】
前記定数K1~K3は、周波数帯域に応じて設定される、請求項2に記載の設計方法。
【請求項4】
前記光学ユニットは、前記センサ素子で反射された光をP偏光成分の光及びS偏光線分の光に分離する偏光分離素子を含み、
前記消光比となるように前記光学ユニットの構成を選択するステップでは、算出された前記消光比となるような前記偏光分離素子を選択することを含む、請求項2又は3に記載の設計方法。
【請求項5】
前記光学ユニットは、前記発光部と前記偏光分離素子、及び、前記偏光分離素子と前記センサ素子とを接続する光路を含み、
前記消光比となるように前記光学ユニットの構成を選択するステップでは、算出された前記消光比となるように前記光路の種類を選択することを含む、請求項4に記載の設計方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学ユニットの設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバの先端に配置されたファラデー回転子を透過した光を光電変換してファラデー回転子に印加される磁界に応じた検出信号を生成する干渉型光磁界センサ装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1に記載される干渉型光磁界センサ装置は、S偏光成分及びP偏光成分のそれぞれの強度に比例する電気信号の差動信号を反転増幅して直流成分が除去された検出信号を生成するので、検出される磁界に応じた検出信号のSN比を高くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-126007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載される干渉型光磁界センサ装置では、出力される検出信号は、P偏光成分の光及びS偏光線分の光に分離する偏光分離素子等で発生するノイズを含むため、ファラデー回転子に印加される磁界の検出精度が低下するおそれがある。干渉型光磁界センサ装置の光学ユニットでは、光学ユニットで発生するノイズのノイズ量を所望の大きさに設定可能な光学ユニットの設計方法が望まれている。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するものであり、干渉型光磁界センサ装置の光学ユニットで発生するノイズのノイズ量を所望の大きさに設定可能な光学ユニットの設計方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る光学ユニットの設計方法は、干渉型光磁界センサ装置において、発光部から出射された光をセンサ素子へ導き、且つ、当該センサ素子で反射された光をP偏光成分の光及びS偏光線分の光として出力する光学ユニットの設計方法であって、干渉型光磁界センサ装置における所望のノイズ量を設定し、予め定められたノイズ量と消光比との関係式に基づいて、所望のノイズ量に応じた消光比を算出し、算出された消光比となるように光学ユニットの構成を選択する、ステップを含み、消光比は、非測定状態において、光学ユニットに発光部から出射された光が入射され、且つ、センサ素子から反射された場合に光学ユニットから出力されるP偏光成分の光とS偏光線分の光との比を言う。
【0007】
さらに、本発明に係る光学ユニットの設計方法では、関係式は、以下の式(1)であり、
N=K1×Er-K2×(P×S×TIA×1/2)+K3 (1)
ここで、Nは所望のノイズ量(mV)、Erは消光比(dB)、Pは光学ユニットから出力されるP偏光成分の光を電気信号に変換する第1光電変換素子の出力及びS偏光線分の光を電気信号に変換する第2光電変換素子の出力の合計(mW)、Sは第1光電変換素子及び第2光電変換素子の光電変換係数(A/W)、TIAは第1光電変換素子及び第2光電変換素子のそれぞれから出力される電気信号を増幅するときの増幅率、及び、K1~K3は定数を表すことが好ましい。
【0008】
さらに、本発明に係る光学ユニットの設計方法では、定数K1~K3は、周波数帯域に応じて設定されることが好ましい。
【0009】
さらに、本発明に係る光学ユニットの設計方法では、光学ユニットは、センサ素子で反射された光をP偏光成分の光及びS偏光線分の光に分離する偏光分離素子を含み、消光比となるように光学ユニットの構成を選択するステップでは、算出された消光比となるような偏光分離素子を選択することを含むことが好ましい。
【0010】
さらに、本発明に係る光学ユニットの設計方法では、光学ユニットは、発光部と偏光分離素子、及び、偏光分離素子とセンサ素子とを接続する光路を含み、消光比となるように光学ユニットの構成を選択するステップでは、算出された消光比となるように光路の種類を選択することを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る光学ユニットの設計方法を使用することで、光学ユニットで発生するノイズのノイズ量を所望の大きさに設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】施形態に係る光学ユニットの設計方法を実行する設計システムのブロック図である。
図2図1に示す干渉型光磁界センサ装置のブロック図である。
図3図2に示す光学ユニットのブロック図である。
図4図2に示す第1受光素子、第2受光素子及び信号処理回路の間の電気的な接続関係を示す回路ブロック図である。
図5図1に示す設計装置のブロック図である。
図6図5に示す定数テーブルを示す図である。
図7】(a)は消光比と、ノイズ量を第1電気信号及び第2電気信号の振幅の平均値によって除した傾きとの関係を示す図であり、(b)は周波数帯域とノイズ量との関係を示す図(その1)であり、(c)は周波数帯域とノイズ量との関係を示す図(その2)である。
図8図1に示す設計装置により実行される光学ユニットの設計方法のフローチャートである。
図9】実施形態に係る光学ユニットの設計方法によって最適化された干渉型光磁界センサ装置の出力強度とノイズ量との関係を示す図である。
図10図9に示す波形W4に対応する干渉型光磁界センサ装置が有する光学ユニットの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る光学ユニットの設計方法について図を参照しつつ説明する。但し、本開示の技術的範囲はそれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0014】
(実施形態に係る光学ユニットの設計方法の概要)
本願発明の発明者等は、特許文献1に記載される干渉型光磁界センサ装置のSN比を向上させるために種々の検討を行った。本願発明の発明者等は、検討の結果、所定のノイズ量と消光比との関係式に基づいて、所望のノイズ量に応じた消光比を算出し、算出された消光比となるように光学ユニットの構成を選択することで、光学ユニットのSN比を向上させることを見出した。ここで、消光比は、非測定状態において、光学ユニットに発光部から出射された光が入射され、且つ、センサ素子から反射した場合に光学ユニットから出力されるP偏光成分の光とS偏光線分の光との比を言う。
【0015】
具体的には、本願発明の発明者等は、発光部から出射された光をセンサ素子へ導き、且つ、センサ素子で反射された光をP及びS偏光線分の光として出力する光学ユニットにおいて、以下の式(1)によりノイズ量に応じた消光比を算出することを見出した。
N=K1×Er-K2×(P×S×TIA×1/2)+K3 (1)
【0016】
ここで、Nは所望のノイズ量(mV)であり、Erは消光比(dB)であり、Pは光学ユニットから出力されるP偏光成分の光を電気信号に変換する第1光電変換素子の出力及びS偏光線分の光を電気信号に変換する第2光電変換素子の出力の合計(mW)である。また、Sは第1光電変換素子及び第2光電変換素子の光電変換係数(A/W)であり、TIAは第1光電変換素子及び第2光電変換素子のそれぞれから出力される電気信号を増幅するときの増幅率であり、第1定数K1、第2定数K2及び第3定数K3は定数を表す。
【0017】
本発明に係る光学ユニットの設計方法は、所望のノイズ量に応じて算出された消光比となるように光学ユニットの構成を選択することで、所望のノイズ量に応じた光学ユニットの構成を容易に実現できる。
【0018】
(実施形態に係る光学ユニットの設計方法を実行する設計システムの構成及び機能)
図1は、実施形態に係る光学ユニットの設計方法を実行する設計システムのブロック図である。
【0019】
設計システム1は、干渉型光磁界センサ装置2と、オシロスコープ3と、設計装置4とを有し、設計装置4によって干渉型光磁界センサ装置2のノイズ量から干渉型光磁界センサ装置2の消光比が算出される。また、設計システム1では、干渉型光磁界センサ装置2は、光学素子等が交換されることによって、発生するノイズノイズ量を所望のノイズ量とすることができる。
【0020】
図2は、干渉型光磁界センサ装置2のブロック図である。
【0021】
干渉型光磁界センサ装置2は、発光部10と、光学ユニット11と、1/4波長板12と、平凸レンズ13と、磁界センサ素子14と、検出信号発生部15とを有し、磁界センサ素子14に印加される磁界に応じた検出信号を出力する。
【0022】
発光部10は、発光素子101と、アイソレータ102と、偏光子103とを有する。発光素子101は、例えば半導体レーザ又は発光ダイオードである。具体的には、発光素子101として、ファブリペローレーザー、スーパールミネッセンスダイオード等を好ましく用いることができる。
【0023】
アイソレータ102は、発光素子101から入射された光を光学ユニット11側に透過すると共に、光学ユニット11から入射された光を発光素子101側に透過しないことで、発光素子101を保護する。アイソレータ102は、例えば偏光依存型光アイソレータであり、偏光無依存型光アイソレータであってもよい。
【0024】
偏光子103は、発光素子101が発した光を直線偏波光B1にするための光学素子であり、その種類は特に限定されない。偏光子103で得られる第1直線偏波光B1は、光学ユニット11に入射される。
【0025】
光学ユニット11は、筐体20と、第1ポート21と、第2ポート22と、第3ポート23と、第4ポート24とを有し、出射する第5直線偏光B2P1と第6直線偏光B2P2の位相差が90度になるように入射される光の位相を調整する。筐体20は、アルミニウム等の熱伝導率が高い部材で形成された収容部であり、光学ユニット11が有する種々の光学素子を所定の位置に配置する。
【0026】
第1ポート21は、第1直線偏波光B1を入射する入力ポートであり、筐体20の長手方向の一方の端面の一端に配置され、第1直線偏波光B1が入射される。第2ポート22は、磁界センサ素子14に入射される入射光BIを出射すると共に、磁界センサ素子14からの戻り光BRが入射される入出力ポートであり、筐体20の長手方向の他方の端面の中央部に配置される。
【0027】
第3ポート23は、第5直線偏光B2P1を出射する出力ポートであり、筐体20の長手方向の一方の端面の中央部に配置される。第4ポート24は、第6直線偏光B2P2を出射する出力ポートであり、筐体20の長手方向の一方の端面の他端に配置される。
【0028】
1/4波長板12は、水晶等の複屈折材料で形成され、第1直線偏波光B1の偏光面の向きに対して光軸が45度傾斜して配置される。1/4波長板12は、第2ポート22から出射される入射光BIの直線偏光成分である第1入射偏光BIP1及び第2入射偏光BIP2を、磁界センサ素子14に入射される円偏光に変換して、平凸レンズ13に出射する。また、1/4波長板12は、磁界センサ素子14から円偏光として入射される戻り光BRを直線偏光成分である戻り光BRP1及び戻り光BRP2に変換する。
【0029】
平凸レンズ13は、1/4波長板12から出射された入射光BIを磁界センサ素子14に集光すると共に、磁界センサ素子14から出射された戻り光BRを磁界センサ素子14に集光する。
【0030】
磁界センサ素子14は、ファラデー回転子141と、ミラー素子142とを有し、少なくともその一部が所定の磁界内に配置可能な素子である。磁界センサ素子14は、平凸レンズ13から入射光BIが入射されると共に、入射された入射光BIに応じた戻り光BRを平凸レンズ13に出射する。
【0031】
ファラデー回転子141は、誘電体と、誘電体から安定的に相分離した状態で誘電体中に分散しているナノオーダの磁性体粒子とを有するグラニュラー膜であり、平凸レンズ13から平凸レンズ13の焦点距離だけ離隔して配置される。磁性体粒子は、例えば最表層等のごく一部では酸化物が形成されていてもよいが、ファラデー回転子141の全体では、磁性体粒子が、バインダとなる誘電体と化合物を作らずに、単独で薄膜中に分散している。ファラデー回転子141内における磁性体粒子の分布は、完全に一様でなくてもよく、多少偏っていてもよい。誘電体として透明性が高いものを用いれば、誘電体中に磁性体粒子が光の波長よりも小さいサイズで存在することにより、ファラデー回転子141は光透過性を有する。
【0032】
ファラデー回転子141は、単層のものに限らず、グラニュラー膜と誘電体膜とが交互に積層した多層膜であってもよい。グラニュラー膜を多層膜することでファラデー回転子141を形成することで、グラニュラー膜内での多重反射によって、より大きなファラデー回転角が得られる。
【0033】
誘電体は、フッ化マグネシウム(MgF2)、フッ化アルミニウム(AlF3)、フッ化イットリウム(YF3)等のフッ化物(金属フッ化物)が好ましい。また、誘電体は、酸化タンタル(Ta25)、二酸化ケイ素(SiO2)、二酸化チタン(TiO2)、五酸化二ニオビウム(Nb25)、二酸化ジルコニウム(ZrO2)、二酸化ハフニウム(HfO2)、及び三酸化二アルミニウム(Al23)等の酸化物であってもよい。誘電体と磁性体粒子との良好な相分離のためには、酸化物よりもフッ化物の方が好ましく、透過率が高いフッ化マグネシウムが特に好ましい。
【0034】
磁性体粒子の材質は、ファラデー効果を生じるものであればよく、特に限定されないが、磁性体粒子の材質としては、強磁性金属である鉄(Fe)、コバルト(Co)及びニッケル(Ni)並びにこれらの合金が挙げられる。Fe、Co及びNiの合金としては、例えば、FeNi合金、FeCo合金、FeNiCo合金、NiCo合金が挙げられる。Fe、Co及びNiの単位長さ当たりのファラデー回転角は、従来のファラデー回転子に適用されている磁性ガーネットに比べて2~3桁近く大きい。
【0035】
ミラー素子142は、ファラデー回転子141上に形成されており、ファラデー回転子141を透過した光をファラデー回転子141に向けて反射する。ミラー素子142としては、例えば、銀(Ag)膜、金(Au)膜、アルミニウム(Al)膜又は誘電体多層膜ミラー等を用いることができる。特に、反射率の高いAg膜及び耐食性が高いAu膜が成膜上簡便で好ましい。ミラー素子142の厚さは、98%以上の十分な反射率を確保できる大きさであればよく、例えばAg膜の場合には、50nm以上かつ200nm以下であることが好ましい。ミラー素子142を用いてファラデー回転子141内で光を往復させることにより、ファラデー回転角を大きくすることができる。
【0036】
磁界センサ素子14では、入射光BIがミラー素子142に向かってファラデー回転子141の内部を伝搬するときに、ファラデー回転子141に印加される磁界に応じて位相をθF変化させる。また、ミラー素子142から反射した戻り光BRがファラデー回転子141の内部を伝搬するときに、ファラデー回転子141に印加される磁界に応じて位相をθF変化させる。入射光BIと戻り光BRとの位相差は2θFである。
【0037】
検出信号発生部15は、第1受光素子151と、第2受光素子152と、信号処理回路153とを有し、光学ユニット11において第5直線偏光B2P1及び第6直線偏光B2P2に分波された戻り光BRを受光する。
【0038】
第1受光素子151及び第2受光素子152のそれぞれは、例えばPINフォトダイオードである。第1受光素子151は光学ユニット11から出力されるP偏光成分の光を電気信号に変換する第1光電変換素子であり、第2受光素子152は光学ユニット11から出力されるS偏光成分の光を電気信号に変換する第2光電変換素子である。
【0039】
第1受光素子151は第5直線偏光B2P1を受光し、第2受光素子152は第6直線偏光B2P2を受光する。第1受光素子151及び第2受光素子152のそれぞれは、受光した光を光電変換して、受光した光の光量の応じた電気信号を出力する。信号処理回路153は、第5直線偏光B2P1を示す電気信号及び第6直線偏光B2P2を示す電気信号を差動増幅することで、磁界センサ素子に印加される磁界に応じた検出信号Edを、オシロスコープ3に出力する。
【0040】
図3は、光学ユニット11のブロック図である。
【0041】
光学ユニット11は、サーキュレータ25と、第1光学素子26と、第1ビームスプリッタ27と、第2ビームスプリッタ28と、第1光路29と、第2光路30と、第2光学素子31と、第3ビームスプリッタ32とを更に有する。
【0042】
第1ポート21は、第1直線偏波光B1が発光部10から入射され、入射された第1直線偏波光B1をサーキュレータ25に出射する。
【0043】
第2ポート22は、入射光BIが第2ビームスプリッタ28から入射され、入射された入射光BIを1/4波長板12に出射する。また、第2ポート22は、戻り光BRが1/4波長板12から入射され、入射された戻り光BRを第2ビームスプリッタ28に出射する。
【0044】
第3ポート23は、第5直線偏光B2P1が第3ビームスプリッタ32から入射され、入射された第5直線偏光B2P1を第1受光素子151に出射する。第4ポート24は、第6直線偏光B2P2が第3ビームスプリッタ32から入射され、入射された第6直線偏光B2P2を第2受光素子152に出射する。
【0045】
サーキュレータ25は、発光部10から出射された第1直線偏波光B1を第1光学素子26に透過すると共に、第1光学素子26から出射された第2直線偏波光B2を第3ビームスプリッタ32に分岐する光分岐部である。サーキュレータ25は、例えばファラデー回転子、1/2波長板、偏光ビームスプリッタ、及び反射ミラーによって形成される。
【0046】
第1光学素子26は、例えばサーキュレータ25から入射される第1直線偏波光B1の偏光面に対して方位角が22.5度になるように配置された1/2波長板である。第1光学素子26は、サーキュレータ25から入射される第1直線偏波光B11の偏光面を45度回転し、第1ビームスプリッタ27に出射する。第1光学素子26で偏光面が45度回転した第1直線偏波光は、P偏光である第1直線偏光CW1と、第1直線偏光CW1に直交するS偏光である第2直線偏光CCW1とを有する。
【0047】
また、第1光学素子26は、第1ビームスプリッタ27から入射される直線偏波光である第2直線偏波光B2の偏光面を45度回転し、サーキュレータ25に出射する。
【0048】
第1ビームスプリッタ27は、第1直線偏光CW1を第1光路29に出射すると共に、第2直線偏光CCW1を第2光路30に出射する。また、第1ビームスプリッタ27は、第3直線偏光CW2が第2光路30から入射されると共に、第4直線偏光CCW2が第1光路29から入射される。第3直線偏光CW2及び第4直線偏光CW2は、第1光学素子26に出射される第2直線偏波光B2の互いに直交する偏光成分である。
【0049】
第2ビームスプリッタ28は、第1直線偏光CW1が第1光路29から入射されると共に、第2直線偏光CCW1が第2光路30から入射される。また、第2ビームスプリッタ28は、第3直線偏光CW2を第2光路30に出射すると共に、第4直線偏光CCW2を第1光路29に出射する。
【0050】
第1ビームスプリッタ27及び第2ビームスプリッタ28は、入射光をP偏光成分とS偏光成分とに分離し、且つ、P偏光成分とS偏光成分とを合成し出射する。第1ビームスプリッタ27及び第2ビームスプリッタ28は、例えばプリズム型ビームスプリッタであるが、平面型ビームスプリッタ又はウェッジ型ビームスプリッタであってもよい。
【0051】
第1光路29は、第1ビームスプリッタ27から導入された第1直線偏光CW1を第2ビームスプリッタ28に導出すると共に、第2ビームスプリッタ28から導入された第4直線偏光CCW2を第1ビームスプリッタ27に導出する。第2光路30は、第1ビームスプリッタ27から導入された第2直線偏光CCW1を第2ビームスプリッタ28に導出すると共に、第2ビームスプリッタ28から導入された第3直線偏光CW2を第1ビームスプリッタ27に導出する。
【0052】
第1光路29は、一端が第1ビームスプリッタ27に光学的に接続され且つ他端が第2ビームスプリッタ28に光学的に接続されたPANDAファイバである。第2光路30は、一端が第1ビームスプリッタ27に光学的に接続され且つ他端が第2ビームスプリッタ28に光学的に接続されたPANDAファイバである。なお、第1光路29及び第2光路30は、ボウタイファイバ及び楕円ジャケットファイバ等の偏波保持ファイバであってもよい。第2光路30には、第2光学素子31が配置される。
【0053】
第2光学素子31は、第1(1/4)波長板33と、第2(1/4)波長板34と、45度ファラデー回転子35とを有する。
【0054】
第1(1/4)波長板33は、第2光路30を形成するPANDAファイバの遅相軸及び進相軸に対して光学軸が45度傾斜して配置される1/4波長板である。第1(1/4)波長板33は、直線偏光を円偏光に変換すると共に、円偏光を直線偏光に変換する。
【0055】
第2(1/4)波長板34は、第2光路30を形成するPANDAファイバの遅相軸及び進相軸に対して光学軸が-45度傾斜して配置される1/4波長板である。第2(1/4)波長板34は、45度ファラデー回転子35から円偏光を直線偏光に変換すると共に、直線偏光を円偏光に変換する。
【0056】
45度ファラデー回転子35は、第1(1/4)波長板33及び第2(1/4)波長板34のそれぞれから入射される円偏光の位相を変化させるファラデー回転子である。
【0057】
45度ファラデー回転子35は、第2(1/4)波長板34から出射される第2直線偏光CCW1の位相が第1(1/4)波長板33に入射される直線偏光である第2直線偏光CCW1の位相から45シフトするように、円偏光の位相を変化させる。また、45度ファラデー回転子35は、第1(1/4)波長板33から出射される第3直線偏光CW2の位相が第2(1/4)波長板34に入射される第3直線偏光CW2の位相から-45シフトするように、円偏光の位相を変化させる。
【0058】
第3ビームスプリッタ32は、プリズム型、平面型、ウェッジ基板型及び光導波路型等の偏光ビームスプリッタ(PBS)である。サーキュレータ25で分岐された第2直線偏波光B2をS偏光成分である第5直線偏光B2P1とP偏光成分である第6直線偏光B2P2とに分離する。
【0059】
図4は、第1受光素子151、第2受光素子152、及び信号処理回路153の間の電気的な接続関係を示す回路ブロック図である。
【0060】
信号処理回路153は、例えばオペアンプである増幅素子154と、抵抗素子155とを有する。第1受光素子151のアノード及び第2受光素子152のカソードは、増幅素子154のマイナス入力端子に接続され、第1受光素子151のカソードは正電源+Vに接続され、第2受光素子152のアノードは負電源-Vに接続される。
【0061】
第1受光素子151は、第5直線偏光B2P1の強度に比例する電流である第1電気信号E1を出力する。第2受光素子152は、第6直線偏光B2P2のP偏光成分の強度に比例する電流である第2電気信号E2を出力する。増幅素子154のマイナス入力端子には、S偏光成分の強度に比例する第1電気信号とP偏光成分の強度に比例する第2電気信号との差動信号(E1-E2)が入力される。
【0062】
増幅素子154のマイナス入力端子に入力される差動信号(E1-E2)は、第5直線偏光B2P1及び第6直線偏光B2P2の差分に比例するものであり、ファラデー回転角θFに応じた電気信号である。
【0063】
信号処理回路153は、反転増幅回路であり、増幅素子154のマイナス入力端子に入力される差動信号(E1-E2)を増幅率TIAにより反転増幅して、検出信号Edを出力する。検出信号Edは、基準光強度に相当する直流成分が除去された電気信号であり、オシロスコープ3に出力される。
【0064】
オシロスコープ3は、干渉型光磁界センサ装置2から入力される検出信号Edを示す画像を表示する表示部3aを有する。オシロスコープ3は、100kHz、1MHz、10MHz、50MHz及び100MHz等の複数の周波数帯域fを選択可能である。
【0065】
オシロスコープ3は、検出信号Edの最大変化量ΔEdを検出し、検出した最大変化量ΔEdを示す変化量信号を設計装置4に出力する。また、オシロスコープ3は、選択された周波数帯域fを示す周波数帯域信号を設計装置4に出力する。
【0066】
最大変化量ΔEdは、干渉型光磁界センサ装置2において、第1受光素子151及び第2受光素子152のそれぞれが受光する第5直線偏光B2P1及び第6直線偏光B2P2の光強度の最大変化量ΔP(mW)との間で以下の式(2)の関係を示す。例えば、ΔP(mW)は、第5直線偏光B2P1の光強度の最大変化量と第6直線偏光B2P2の光強度の最大変化量との平均値である。
ΔEd=ΔP×S×TIA (2)
式(2)において、S(A/W)は第1受光素子151及び第2受光素子152のそれぞれにおける光電変換係数であり、TIAは信号処理回路153において増幅素子154が差動信号(E1-E2)を増幅して検出信号Edが生成されるときの増幅率である。
【0067】
図5は、設計装置4のブロック図である。
【0068】
設計装置4は、通信部40と、記憶部41と、入力部42と、出力部43と、処理部50とを有する。設計装置4は、パーソナルコンピュータ等の電子計算機であり、実施形態に係る設計方法を実行する。
【0069】
通信部40は、オシロスコープ3と設計装置4との間を接続するためのイーサネット(登録商標)等の通信インターフェース回路を備え、通信部40は、オシロスコープ3から変化量信号及び周波数帯域信号が入力される。通信部40に入力された変化量信号に対応する最大変化量ΔEd及び周波数帯域信号に対応する周波数帯域fは、記憶部41に記憶される。
【0070】
記憶部41は、例えば、半導体装置、磁気テープ装置、磁気ディスク装置、又は光ディスク装置のうちの少なくとも一つを備える。記憶部41は、処理部50での処理に用いられるオペレーティングシステムプログラム、ドライバプログラム、アプリケーションプログラム、データ等を記憶する。例えば、記憶部41は、アプリケーションプログラムとして、所望のノイズ量に応じて算出された消光比となるように光学ユニットの構成を選択する設計方法を、処理部50に実行させるための設計プログラム等を記憶する。設計プログラムは、例えばCD-ROM、DVD-ROM等のコンピュータ読み取り可能な可搬型記録媒体から、公知のセットアッププログラム等を用いて記憶部41にインストールされてもよい。
【0071】
また、記憶部41は、データとして、入力処理で使用するデータ等を記憶する。さらに、記憶部41は、入力処理等の処理で一時的に使用されるデータを一時的に記憶してもよい。例えば、記憶部41は、式(1)に示す第1定数K1、第2定数K2及び第3定数K3と、オシロスコープ3において選択された周波数帯域fとの間の関係を示す定数テーブル410を記憶する。
【0072】
図6は、定数テーブル410を示す図である。
【0073】
定数テーブル410は、周波数帯域fが100kHz、1MHz、10MHz、50MHz及び100MHzのそれぞれである場合の第1定数K1~第3定数K3を規定する。周波数帯域fが100kHzであるとき、第1定数K1~第3定数K3は、K11、K21及びK31であり、周波数帯域fが1MHzであるとき、第1定数K1~第3定数K3は、K12、K22及びK32である。周波数帯域fが10MHzであるとき、第1定数K1~第3定数K3は、K13、K23及びK33であり、周波数帯域fが50MHzであるとき、第1定数K1~第3定数K3は、K14、K24及びK34である。周波数帯域fが100MHzであるとき、第1定数K1~第3定数K3は、K15、K25及びK35である。
【0074】
第1定数K1~第3定数K3は、周波数帯域fが100kHz、1MHz、10MHz、50MHz及び100MHzのそれぞれである場合において、実測された複数の光学ユニットの第1及び第2電気信号E1及びE2並びにノイズ量Dから算出される。
【0075】
図7(a)は消光比Erと、ノイズ量Dを第1電気信号E1及び第2電気信号E2の振幅の平均値Eaによって除した傾き(D/Ea)との関係を示す図である。図7(b)は周波数帯域fとノイズ量Dとの関係を示す図(その1)であり、図7(c)は周波数帯域とノイズ量との関係を示す図(その2)である。図7(a)において、横軸は消光比Erを示し、縦軸は傾き(D/Ea)を示す。図7(b)及び7(c)において、横軸は周波数帯域fを示し、縦軸はノイズ量Dを示す。
【0076】
図7(a)は、周波数帯域fが100kHz、1MHz、10MHz、50MHz及び100MHzであるときのノイズ量を、Er1、Er2、Er3及びEr4の4つの消光比を有する光学ユニットにおいて実測した実測値から抽出される。Er1、Er2、Er3及びEr4の4つの消光比を有する光学ユニットのそれぞれにおいて、第1電気信号E1及び第2電気信号E2の振幅の平均値Eaを増加させながらノイズ量Dが実測される。実測された第1電気信号E1及び第2電気信号E2の振幅の平均値Eaとノイズ量Dとにより、傾き(D/Ea)が算出される。傾き(D/Ea)は、Er1、Er2、Er3及びEr4の4つの消光比を有する光学ユニットのそれぞれについて、周波数帯域fを100kHz、1MHz、10MHz、50MHz及び100MHzと変化させながら算出される。
【0077】
図7(a)において、曲線L11は周波数帯域fが100kHzであるときの近似曲線であり、曲線L12は周波数帯域fが1MHzであるときの近似曲線である。また、曲線L13は周波数帯域fが10MHzであるときの近似曲線であり、曲線L14は周波数帯域fが50MHzであるときの近似曲線であり、曲線L15は周波数帯域fが100MHzであるときの近似曲線である。
【0078】
第2定数K21~K25のそれぞれは、曲線L11~L15の変化の割合から算出される。第2定数K21は曲線L11の変化の割合から算出され、第2定数K22は曲線L12の変化の割合から算出され、第2定数K23は曲線L13の変化の割合から算出され、第2定数K24は曲線L14の変化の割合から算出され、第2定数K25は曲線L15の変化の割合から算出される。
【0079】
図7(b)は、図7(a)が作成されるときに実測されたノイズ量Dと、ノイズ量Dのそれぞれが実測されたときの周波数帯域fの関係を、横軸を周波数帯域fとし、縦軸をノイズ量Dとして示す。図7(b)において、曲線L21は消光比がEr1であるときの近似直線であり、曲線L22は消光比がEr2であるときの近似直線である。また、曲線L23は消光比がEr3であるときの近似直線であり、曲線L24は消光比がEr4であるときの近似直線である。
【0080】
第3定数K31~K35のそれぞれは、直線L21~L24の周波数帯域fが100kHz、1MHz、10MHz、50MHz及び100MHzであるときのノイズ量の平均値から算出される。具体的には、図7(c)に示すように、100kHz、1MHz、10MHz、50MHz及び100MHzであるときのノイズ量の平均値P31、P32、P33、P34及びP34が算出される。次いで、100kHz、1MHz、10MHz、50MHz及び100MHzであるときのノイズ量の平均値P31、P32、P33、P34及びP34の近似直線である直線L3が算出される。
【0081】
第3定数K31は直線L4の周波数帯域fが100kHzであるときのノイズ量であり、第3定数K32は直線L4の周波数帯域fが1MHzであるときのノイズ量であり、第3定数K33は直線L4の周波数帯域fが10MHzであるときのノイズ量である。第3定数K34は直線L4の周波数帯域fが50MHzであるときのノイズ量であり、第3定数K35は直線4の周波数帯域fが100MHzであるときのノイズ量である。
【0082】
第1定数K11~K15のそれぞれは、曲線L11~L15の変化の割合から算出された第2定数K21~K25と、直線L31~L34から算出された第3定数K31~K35とを式(1)に採用したときに、式(1)が図7(a)の抽出に使用された実測値に一致するように決定される。
【0083】
入力部42は、データの入力が可能であればどのようなデバイスでもよく、例えば、タッチパネル、キーボタン等である。操作者は、入力部42を用いて、文字、数字、記号等を入力することができる。入力部42は、操作者により操作されると、その操作に対応する信号を生成する。そして、生成された信号は、操作者の指示として、処理部50に供給される。
【0084】
出力部43は、映像やフレーム等の表示が可能であればどのようなデバイスでもよく、例えば、液晶ディスプレイ又は有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等である。出力部43は、処理部50から供給された映像データに応じた映像や、動画データに応じたフレーム等を表示する。また、出力部43は、紙などの表示媒体に、映像、フレーム又は文字等を印刷する出力装置であってもよい。
【0085】
処理部50は、一又は複数個のプロセッサ及びその周辺回路を有する。処理部50は、設計装置4の全体的な動作を統括的に制御するものであり、例えば、CPUである。処理部50は、記憶部41に記憶されているプログラム(ドライバプログラム、オペレーティングシステムプログラム、アプリケーションプログラム等)に基づいて処理を実行する。また、処理部50は、複数のプログラム(アプリケーションプログラム等)を並列に実行できる。
【0086】
処理部50は、ダイナミックレンジ取得部51と、ノイズ量算出部52と、消光比算出部53と、構成選択部54とを有する。これらの各部は、処理部50が備えるプロセッサで実行されるプログラムにより実現される機能モジュールである。あるいは、これらの各部は、ファームウェアとして設計装置4に実装されてもよい。
【0087】
(実施形態に係る光学ユニットの設計方法)
図8は、設計装置4により実行される光学ユニットの設計方法のフローチャートである。図8に示す設計方法は、予め記憶部41に記憶されているプログラムに基づいて、主に処理部50により、設計装置4の各要素と協働して実行される。
【0088】
まず、ダイナミックレンジ取得部51は、干渉型光磁界センサ装置2の所望のダイナミックレンジDを取得する(S101)。ダイナミックレンジDは、干渉型光磁界センサ装置2の性能指標の一例である。ダイナミックレンジ取得部51は、例えばダイナミックレンジDを入力することを示すグラフィックユーザインタフェースを出力部43に表示し、操作者によって入力部42を介して入力されるダイナミックレンジDを取得する。ダイナミックレンジ取得部51は、取得したダイナミックレンジDを示すダイナミックレンジ情報を記憶部41に記憶する。
【0089】
次いで、ノイズ量算出部52は、S101に示す処理で取得されたダイナミックレンジD(dB)及びオシロスコープ3から入力された最大変化量ΔEdに基づいて、所望のノイズ量を設定する(S102)。ノイズ量算出部52は、以下の式(3)を使用してノイズ量を算出し、算出したノイズ量を所望のノイズ量として設定する。
D(db)=20×log(ΔEd(mV)/N(mV)) (3)
【0090】
次いで、消光比算出部53は、予め定められたノイズ量と消光比との関係式である式(1)に基づいて、S102の処理で設定された所望のノイズ量に応じた消光比を算出する(S103)。消光比算出部53は、記憶部41に記憶される周波数帯域f及び定数テーブル410に基づいて、式(1)において使用される第1定数K1~第3定数K3を決定する。例えば、記憶部41に記憶される周波数帯域fが100kHzであるとき、消光比算出部53は、定数テーブル410に記憶される第1定数K11~第3定数K31を第1定数K1~第3定数K3に決定する。消光比算出部53は、決定された第1定数K1~第3定数K3が代入された式(1)を使用して、S102の処理で設定された所望のノイズ量を算出する。
【0091】
そして、構成選択部54は、S103に示す処理で算出された消光比となるように光学ユニットの構成を選択する(S104)。構成選択部54は、選択可能な光学ユニットの構成を示すグラフィックユーザインタフェースを出力部43に表示し、操作者によって入力部42を介して入力される光学ユニットの構成を取得する。ダイナミックレンジ取得部51は、取得した光学ユニットの構成を示す構成選択情報を記憶部41に記憶する。
【0092】
(実施形態に係る光学ユニットの設計方法の作用効果)
実施形態に係る光学ユニットの設計方法は、所望のノイズ量に応じて算出された消光比となるように光学ユニットの構成を選択することで、所望のノイズ量に応じた光学ユニットの構成を容易に実現できる。
【0093】
図9は、実施形態に係る光学ユニットの設計方法によって最適化された干渉型光磁界センサ装置の出力強度とノイズ量との関係を示す図である。図9において、横軸は第1受光素子151及び第2受光素子152の出力電圧を示し、縦軸は検出信号のノイズ量を示す。
【0094】
図9において、波形W1は、干渉型光磁界センサ装置2のノイズ特性の実測値を示す。また、波形W2は、光学素子の間を光ファイバを介さず空間結合し、且つ、ビームスプリッタを偏光分離素子として使用した干渉型光磁界センサ装置のノイズ特性の実測値を示す。また、波形W3は、光学素子の配置を波形W2に対応する干渉型光磁界センサ装置よりも最適化した干渉型光磁界センサ装置のノイズ特性の実測値を示す。波形W4は、光学素子の間を空間結合し、且つ、方解石を偏光分離素子として使用した干渉型光磁界センサ装置のノイズ特性の実測値を示す。
【0095】
干渉型光磁界センサ装置2は、光学ユニット11に配置される光学素子の間は、光ファイバによって光学的に接続されるため、図9において波形W1で示されるように、検出信号Erのノイズ量Dは、非常に大きくなる。図9において波形W2で示されるように、光学ユニット11に配置される光学素子の間を、光ファイバよりも消光比が小さい空間結合に変更することで検出信号Erのノイズ量は低減される。
【0096】
光ファイバにより形成される光路よりも消光比が小さい空間結合により形成される光路を選択することで、波形W2に対応する干渉型光磁界センサ装置の消光比は、干渉型光磁界センサ装置2の消光比よりも小さい所望の消光比となる。消光比が小さく光路の種類を選択することで、波形W2に対応する干渉型光磁界センサ装置のノイズ量は、干渉型光磁界センサ装置2のノイズ量よりも小さくなる。
【0097】
さらに、光学ユニット11に配置される光学素子の配置を消光比が小さくなるように変更することで、図9において波形W3で示されるように、検出信号Erのノイズ量は、更に低減される。光学ユニット11に配置される光学素子の配置を適切に選択することで、波形W3に対応する干渉型光磁界センサ装置の消光比は、干渉型光磁界センサ装置2の消光比よりも小さい所望の消光比となる。波形W3に対応する干渉型光磁界センサ装置のノイズ量は、波形W2に対応する干渉型光磁界センサ装置よりも消光比が小さくなることで、波形W2に対応する干渉型光磁界センサ装置のノイズ量よりも小さくなる。
【0098】
図10は、波形W4に対応する干渉型光磁界センサ装置が有する光学ユニットの平面図である。光学ユニット6では、光学ユニット1と同様に、第1ポート21は入射光BIが入射し、第2ポート22は入射光BIを出射し且つ戻り光BRが入射される。また、第3ポート23は第5直線偏光B2P1を出射し、第4ポート24は第6直線偏光B2P2を出射する。光学ユニット6では、光学素子のそれぞれは、光ファイバを介することなく空間結合により光学的に接続される。
【0099】
光学ユニット6は、筐体60を筐体20の代わりに有することが光学ユニット11と相違する。また、光学ユニット6は、第1複屈折素子61、第2複屈折素子62及び第3複屈折素子63を第1ビームスプリッタ27、第2ビームスプリッタ28及び第3ビームスプリッタ32の代わりに有することが光学ユニット11と相違する。また、光学ユニット6は、第4複屈折素子64、ファラデー回転子65、(1/2)波長板66、第1プリズム素子67、第2プリズム素子68、第1基台71、第2基台72及び第3基台73を有することが光学ユニット11と相違する。また、光学ユニット6は、サーキュレータ25を有さないことが光学ユニット11と相違する。筐体60~第2プリズム素子68及び第1基台71~第3基台73以外の光学ユニット6の構成要素の構成及び機能は、同一符号が付された光学ユニット11の構成要素の構成及び機能と同一なので、ここでは、詳細な説明は省略する。
【0100】
第1複屈折素子61~第4複屈折素子64は、方解石(CaCO3)により形成される複屈折素子であり、第1ビームスプリッタ27、第2ビームスプリッタ28及び第3ビームスプリッタ32と同様に直線偏波光をS偏光及びP偏光に分離する。
【0101】
ファラデー回転子65は、ビスマス鉄ガーネット等の強磁性体材料で形成され、入射する直線偏光及び円偏光の位相を45度シフトさせる。ファラデー回転子65は、第4複屈折素子64と(1/2)波長板66との間に配置される。
【0102】
(1/2)波長板66は、水晶等の複屈折材料で形成され、発光部10から入射される第1直線偏波光B1の偏光面の向きに対して光軸が22.5度傾斜して配置され、入射する直線偏光の位相を45度シフトさせる。(1/2)波長板66は、ファラデー回転子65と第3複屈折素子63との間に配置される。
【0103】
第1プリズム素子67及び第2プリズム素子68は、ロンボイドプリズムである。第1プリズム素子67は、第3ポート23と第4複屈折素子64との間に配置され、第4複屈折素子64から出射された第5直線偏光B2P1を第3ポート23に出射する。第2プリズム素子68は、第4ポート24と第4複屈折素子64との間に配置され、第4複屈折素子64から出射された第6直線偏光B2P2を第4ポート24に出射する。
【0104】
第1基台71、第2基台72及び第3基台73のそれぞれは、筐体60に固定される。第1基台71は、ファラデー回転子65及び(1/2)波長板66を、第3複屈折素子63と第4複屈折素子64との間に保持する。第2基台72は、第1光学素子26を、第3複屈折素子63と第1複屈折素子61との間に保持する。第3基台73は、第2光学素子31を、第1複屈折素子61と第2複屈折素子62との間に保持する。
【0105】
光学ユニット6では、光学素子のそれぞれは、光ファイバを介することなく空間結合により光学的に接続されるので、光学ユニット6のノイズ量は、光学ユニット11のノイズ量よりも小さくなる。
【0106】
また、光学ユニット6では、光学ユニット11に配置されるビームスプリッタを、ビームスプリッタよりも消光比が小さい方解石に置き換えることで、検出信号Erのノイズ量は、更に低減される。
【0107】
(実施形態に係る光学ユニットの設計方法の変形例)
説明された光学ユニットの設計方法は、設計装置4によって実行されるが、実施形態に係る光学ユニットの設計方法の少なくとも一部は、光学ユニットを設計する設計者によって実行されてもよい。例えば、S104で示される選択処理は、設計者によって実行されてもよい。
【0108】
また、説明された光学ユニットの設計方法では、干渉型光磁界センサ装置の性能指標として、式(3)に示すダイナミックレンジDが使用されるが、実施形態に係る光学ユニットの設計方法では、ダイナミックレンジD以外の性能指標が使用されてもよい。例えば、実施形態に係る光学ユニットの設計方法では、以下の式(4)で示される感度Sが性能指標として使用されてもよい。
S(db/Oe)=20×log(ΔEd(mV)/N(mV))/100(Oe)
(4)
ここで、log(ΔEd(mV)/N(mV))は、線形性が高い低磁場領域である100(Oe)の磁界が磁界センサ素子14に印加されたときのダイナミックレンジDである。なお、磁界センサ素子14に印加される磁界は、ヘルムホルツコイルによって発生される。
【0109】
また、説明された光学ユニットの設計方法では、定数K1~K3は、周波数帯域に応じて設定されるが、実施形態に係る光学ユニットの設計方法では、定数K1~K3は、周波数帯域にかかわらず単一の定数として規定されてもよい。
【0110】
また、説明された光学ユニットの設計方法では、光路及び偏光分離素子が、選択される構成として例示されるが、実施形態に係る光学ユニットの設計方法では、偏光素子等の他の光学素子が、変更される構成として選択されてもよい。
【符号の説明】
【0111】
1 設計システム
2 干渉型光磁界センサ装置
3 オシロスコープ
4 設計装置
51 ダイナミックレンジ取得部
52 ノイズ量算出部
53 消光比算出部
54 構成選択部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10