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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022144833
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】避難用シュート、および滑降シート
(51)【国際特許分類】
   A62B 1/20 20060101AFI20220926BHJP
   B64D 25/14 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
A62B1/20 C
B64D25/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021046014
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】000117135
【氏名又は名称】芦森工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000227168
【氏名又は名称】株式会社ハイビックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】広川 登朗
(72)【発明者】
【氏名】後藤 順一
(72)【発明者】
【氏名】粟井 正寿
【テーマコード(参考)】
2E184
【Fターム(参考)】
2E184AA11
2E184CC32
(57)【要約】
【課題】避難用シュートの滑降部の損傷および摩耗を抑制する。
【解決手段】避難用シュート1は、滑降部11と、滑降シート50と、を備える。滑降部11は、内部にガスが供給されることで膨張した使用状態になり、使用状態のときに水平方向に対して傾斜して配置され、車両Cの内部から車両Cの外部に避難者を滑降させるためのものである。滑降シート50は、滑降部11から独立し、滑降部11の上面(11a)を覆い、シート状である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にガスが供給されることで膨張した使用状態になり、前記使用状態のときに水平方向に対して傾斜して配置され、車両の内部から前記車両の外部に避難者を滑降させるための滑降部と、
前記滑降部から独立し、前記滑降部の上面を覆い、シート状である滑降シートと、
を備える、
避難用シュート。
【請求項2】
請求項1に記載の避難用シュートであって、
前記滑降シートは、シート状の繊維である繊維シート部を備える、
避難用シュート。
【請求項3】
請求項1または2に記載の避難用シュートであって、
前記滑降シートは、樹脂により構成された樹脂部を備える、
避難用シュート。
【請求項4】
請求項1に記載の避難用シュートであって、
前記滑降シートは、
シート状の繊維である繊維シート部と、
前記繊維シート部に接触し、樹脂により構成された樹脂部と、
を備える、
避難用シュート。
【請求項5】
請求項4に記載の避難用シュートであって、
前記滑降シートの上面は、前記樹脂部を備え、
前記滑降シートの下面は、前記繊維シート部を備え、
前記滑降シートの下面の前記繊維シート部の繊維は、前記滑降部に直接的に接触する、
避難用シュート。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の避難用シュートであって、
前記滑降シートは、前記滑降部に着脱可能に取り付けられる、
避難用シュート。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の避難用シュートであって、
前記滑降シートは、
前記滑降部の上面の上側部分に設けられた上部滑降シートと、
前記滑降部の上面のうち前記上部滑降シートが設けられた部分よりも下側部分に設けられ、前記上部滑降シートよりも滑り性の低い下部滑降シートと、
を備える、
避難用シュート。
【請求項8】
避難用シュートの滑降部の上面を覆うことが可能であり、シート状である滑降シートであって、
前記滑降部は、内部にガスが供給されることで膨張した使用状態になり、前記使用状態のときに水平方向に対して傾斜して配置され、車両の内部から前記車両の外部に避難者を滑降させるためのものである、
滑降シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両から避難者を避難させるための避難用シュート、および滑降シートに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1などに、従来の避難用シュートが記載されている。同文献に記載の避難用シュートは、内部にガスが供給され、膨らまされた状態で使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-201423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
同文献に記載の技術では、避難者が滑降するための滑降部が損傷や摩耗するおそれがある。すると、滑降部の内部のガスの圧力を十分に確保できない場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、滑降部の損傷および摩耗を抑制することができる避難用シュート、および滑降シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
避難用シュートは、滑降部と、滑降シートと、を備える。前記滑降部は、内部にガスが供給されることで膨張した使用状態になり、前記使用状態のときに水平方向に対して傾斜して配置され、車両の内部から前記車両の外部に避難者を滑降させるためのものである。前記滑降シートは、前記滑降部から独立し、前記滑降部の上面を覆い、シート状である。
【0007】
滑降シートは、避難用シュートの滑降部の上面を覆うことが可能であり、シート状である。前記滑降部は、内部にガスが供給されることで膨張した使用状態になり、前記使用状態のときに水平方向に対して傾斜して配置され、車両の内部から前記車両の外部に避難者を滑降させるためのものである。
【発明の効果】
【0008】
上記の避難用シュートにより、滑降部の損傷および摩耗を抑制することができる。上記の滑降シートにより、滑降部の損傷および摩耗を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態の避難用シュート1を示す斜視図である。
図2図1に示す避難用シュート1を横方向Yから見た図である。
図3図1に示す避難用シュート1を前側X1から見た図である。
図4図1に示す避難用シュート1を上側Z1から見た図である。
図5図1に示す滑降シート50が平面状に延ばされた状態を示す図であって、滑降シート上面50aの正面から見た図である。
図6図5に示す滑降シート50を、滑降シート下面50bの正面から見た図である。
図7】第2実施形態の避難用シュート201を示す斜視図である。
図8図7に示す避難用シュート201を横方向Yから見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
図1図6を参照して、第1実施形態の避難用シュート1について説明する。
【0011】
避難用シュート1(脱出シュート、シュータ)は、図2に示すように、車両Cの内部から車両Cの外部に避難者を滑降させるためのものである。避難用シュート1は、非常時(緊急時)に避難者が車両Cから避難(脱出)する際に用いられる。避難用シュート1が用いられる車両Cは、例えば鉄道車両である。車両Cが鉄道車両の場合、避難用シュート1は、車両Cの側面の扉(例えば乗降扉)に設けられてもよく、車両Cの前後端の扉(例えば貫通扉、例えば運転室の扉など)に設けられてもよい。避難用シュート1は、シュート本体10と、シート着脱部30と、滑降シート50と、ラベル60(図5参照)と、を備える。避難用シュート1は、第2シート着脱部32を備えてもよい。
【0012】
シュート本体10は、避難用シュート1の本体部分である。シュート本体10は、シュート本体10の内部にガス(例えば空気)が供給(充填、加圧)可能に構成される。具体的には、シュート本体10は、袋状である。シュート本体10は、図示しない格納状態と、図1に示す使用状態と、になることが可能である。格納状態のシュート本体10は、しぼんだ状態であり、例えば畳まれた状態などである。シュート本体10は、シュート本体10の内部にガスが供給されることで、格納状態から膨張した使用状態になる。使用状態のシュート本体10は、膨らんだ状態であり、滑り台のような形状である。以下では、シュート本体10が使用状態である場合について説明する。シュート本体10は、避難者が避難用シュート1を用いて避難できるような大きさの剛性を有する。具体的には、シュート本体10は、避難用シュート1に避難者が乗ったときに、シュート本体10が折れ曲がらないように適切な大きさの剛性を有する。
【0013】
このシュート本体10は、シュート本体10の内部からガスが漏れることを抑制できるような材料により構成される。具体的には、シュート本体10の材料は、ゴムを含んでもよく、樹脂を含んでもよい。シュート本体10が樹脂を含む場合、この樹脂は、例えば塩化ビニル系樹脂(ポリ塩化ビニルなど)でもよく、オレフィン系樹脂でもよく、ウレタン系樹脂でもよい。シュート本体10の材料は、繊維(布、基布)を含んでもよい。この場合、シュート本体10が繊維を含まない場合に比べ、シュート本体10の強度を高めることができる。シュート本体10が繊維および樹脂を含む場合、繊維と樹脂とが一体的に設けられてもよく、例えば繊維に樹脂が含浸されてもよい。シュート本体10が繊維および樹脂を含む場合、繊維と樹脂とが別体でもよく、例えば繊維と樹脂とが積層されてもよい。シュート本体10の材料は、例えばターポリンでもよい。図2に示すように、シュート本体10は、滑降部11と、脚部13と、上屈曲部15と、側壁部17(図1参照)と、を備える。なお、図2では、側壁部17を想像線(二点鎖線)で示した。
【0014】
滑降部11は、車両Cの内部から車両Cの外部(前側X1)に避難者を滑降させるための部分である。滑降部11は、避難者を下側Z2から支持しながら、滑降部11の上を避難者が滑り降りることが可能となるように構成される。滑降部11は、水平方向に対して傾斜して配置される。滑降部11は、略板状である(図1に示す脚部本体部13a、脚部支持部13b、上屈曲部15、滑降側壁部17a、および上側壁部17bも同様)。図2に示すように、滑降部11は、車両Cの外部に配置される(脚部13、および滑降側壁部17aも同様)。滑降部11は、滑降部上面11aを備える。滑降部上面11aは、滑降部11の上側Z1の面である。
【0015】
(方向の定義)
滑降部上面11aに沿う方向を滑降方向Sとする。鉛直方向を上下方向Z(上側Z1、下側Z2)とする。図4に示すように、上下方向Zに直交する方向であって、上下方向Zから見た滑降方向S(滑降方向Sを水平面に投影した方向)を、前後方向Xとする。図2に示すように、前後方向Xにおいて、滑降部11の上側Z1部分から下側Z2部分に向かう側を前側X1とし、前側X1とは逆側を後側X2とする。上下方向Zおよび前後方向Xのそれぞれに直交する方向を横方向Yとする。
【0016】
脚部13は、避難用シュート1から避難者を容易に降ろすための部分である。脚部13は、滑降部11の下側Z2部分に座っている避難者を、容易に立ち上がらせるための部分である。脚部13は、滑降部11の下側Z2部分(前側X1部分)から下側Z2に延びるように設けられる。脚部13の上下方向Zの寸法は、滑降部11の下側Z2部分に座った避難者が、滑降部11から降りやすくなるような寸法に設定される。図1に示すように、脚部13は、脚部本体部13aと、脚部支持部13bと、を備える。
【0017】
脚部本体部13aは、滑降部11の下側Z2部分から下側Z2に延びるように設けられる。脚部本体部13aは、横方向Yおよび上下方向Zのそれぞれに延びるように配置される。
【0018】
脚部支持部13bは、地面G(図2参照)に対する脚部13の安定性を向上させるための部分である。脚部支持部13bは、滑降部11から受ける力であって、脚部13を後側X2に倒そうとする向きの力に対抗する部分である。脚部支持部13bは、脚部本体部13aから後側X2(裏側)に突出する。例えば、脚部支持部13bは、脚部本体部13aの横方向Y外側部分(例えば横方向Y外側の端部)から後側X2に延びるように設けられる。上記「端部」は、端および端の周辺部を意味する(以下同様)。脚部支持部13bは、脚部本体部13aの横方向Y外側の両側(左右)部分に設けられる。左右の脚部支持部13b・13bのそれぞれは、前後方向Xおよび上下方向Zのそれぞれに延びるように配置される。
【0019】
上屈曲部15(踊り場)は、滑降部11の上側Z1部分から後側X2に延びるように設けられる。図2に示すように、上屈曲部15は、滑降部11の上側Z1部分から車両Cの内部に向かって延びるように設けられる。上屈曲部15は、滑降部11に対して屈曲する。上屈曲部15は、車両Cの内部に配置され、車両Cに置かれ、例えば車両Cの床に置かれる。上屈曲部15は、前後方向Xおよび横方向Yに延びるように配置される。上屈曲部15と滑降部11とは、連続して設けられる。上屈曲部15と滑降部11とが連続して設けられることにより、避難者が、上屈曲部15から滑降部11に容易に移動することができる。その結果、避難者が、車両Cの内部から外部にスムーズに避難することができる。上屈曲部15は、上屈曲部上面15aと、上屈曲部下面15bと、を備える。上屈曲部上面15aは、上屈曲部15の上面(上側Z1の面)である。上屈曲部下面15bは、上屈曲部15の下面(下側Z2の面)である。
【0020】
側壁部17は、図1に示すように、滑降部11および上屈曲部15から、横方向Y外側への避難者の移動を制限する。側壁部17は、避難者が手を置くことが可能な手摺の機能を有してもよい。側壁部17は、滑降側壁部17aと、上側壁部17bと、を備える。
【0021】
滑降側壁部17aは、滑降部11の横方向Y外側部分(例えば横方向Y外側の端部)から上側Z1に延びるように設けられる。滑降側壁部17aは、滑降部11から、上下方向Zに対して傾斜する方向に延びるように設けられてもよい(上屈曲部15に対して上側壁部17bが延びる方向についても同様)。滑降側壁部17aは、滑降部11の横方向Y外側の両側(左右)部分に設けられる。図2に示すように、滑降側壁部17aは、車両Cの外部に配置される。
【0022】
上側壁部17bは、上屈曲部15の横方向Y外側部分(例えば横方向Y外側の端部)から上側Z1に延びるように設けられる。上側壁部17bは、上屈曲部15の横方向Y外側の両側(左右)部分に設けられる。上屈曲部15からの上側壁部17bの上側Z1への突出量(上側壁部17bの突出高さ)は、滑降部11からの滑降側壁部17aの上側Z1への突出量に対して、大きくてもよく、小さくてもよく、同じまたは略同じでもよい。上側壁部17bは、車両Cの内部に配置される。
【0023】
シート着脱部30は、滑降シート50を滑降部11に(シュート本体10に)着脱可能に取り付けるための部分である。シート着脱部30は、例えばファスナであり、面ファスナでもよく、線ファスナでもよく、スナップファスナ(スナップボタン)でもよい。シート着脱部30は、1か所にのみ設けられてもよく、複数か所に設けられてもよい。例えば、シート着脱部30は、第1シート着脱部31を備え、第2シート着脱部32を備えてもよい。
【0024】
第1シート着脱部31は、第1シュート側着脱部31aと、第1滑降シート側着脱部31b(図6参照)と、を備える。第1シュート側着脱部31aは、シュート本体10に設けられる(後述する第2シュート側着脱部32aも同様)。第1シュート側着脱部31aは、シュート本体10に縫い付けられてもよく、接着されてもよい(第2シュート側着脱部32aも同様)。第1シュート側着脱部31aは、例えば滑降部上面11aに設けられてもよく、滑降部上面11aの上側Z1部分(例えば上側Z1端部など)に設けられてもよい。第1シュート側着脱部31aは、上屈曲部15(例えば上屈曲部上面15a、例えば上屈曲部下面15b)に設けられてもよい。図6に示すように、第1滑降シート側着脱部31bは、滑降シート50に設けられ、さらに詳しくは滑降シート下面50bに設けられる(後述する第2滑降シート側着脱部32bも同様)。第1滑降シート側着脱部31bは、滑降シート50に縫い付けられてもよく、接着されてもよい(第2滑降シート側着脱部32bも同様)。第1滑降シート側着脱部31bは、例えば後述する滑降シート基端部50sに設けられる。図2に示す第1シュート側着脱部31aと第1滑降シート側着脱部31bとは、互いに着脱可能である。
【0025】
第2シート着脱部32は、図4に示すように、第1シート着脱部31よりも前側X1(下側Z2)に配置される。図3に示すように、第2シート着脱部32は、第2シュート側着脱部32aと、第2滑降シート側着脱部32b(図6参照)と、を備える。第2シュート側着脱部32aは、シュート本体10に設けられる。第2シュート側着脱部32aは、例えば滑降部上面11aに設けられてもよく、滑降部上面11aの下側Z2部分(例えば下側Z2端部など)に設けられてもよい。第2シュート側着脱部32aは、脚部13に設けられてもよい。図6に示すように、第2滑降シート側着脱部32bは、例えば後述する滑降シート先端部50tに設けられる。図3に示す第2シュート側着脱部32aと第2滑降シート側着脱部32bとは、互いに着脱可能である。
【0026】
滑降シート50は、シュート本体10に設けられる(敷かれる、取り付けられる)。滑降シート50は、シュート本体10の保護や耐久性向上のために設けられる保護用シートでもよい。滑降シート50は、避難者と避難用シュート1との摩擦力を調整(制御)し、避難者が滑降する際の抵抗の大きさ(滑降抵抗性能)を調整(制御)するためのものでもよい。滑降シート50は、シュート本体10から(滑降部11から)独立して設けられる。すなわち、滑降シート50は、シュート本体10と一体ではなく、シュート本体10とは別の部材として設けられる。
【0027】
この滑降シート50は、シュート本体10に着脱可能に取り付けられる。この場合、滑降シート50は、容易に交換可能となる。さらに具体的には、滑降シート50は、第1シート着脱部31を介して、シュート本体10に着脱可能に取り付けられる。変形例として、滑降シート50の一部が、シュート本体10に着脱不可能に固定されてもよい。例えば、滑降シート50の端部(例えば後述する滑降シート基端部50s、滑降シート先端部50t、角の部分など)は、シュート本体10に着脱不可能に固定されてもよい。
【0028】
この滑降シート50は、シート状(薄板状)である。図5に示すように、滑降シート50は、滑降シート50の厚さ方向から見たとき、長方形状でもよく、略長方形状でもよい。
【0029】
この滑降シート50の伸び率は、シュート本体10の滑降部11の伸び率よりも小さいことが好ましい。この理由は次の通りである。滑降シート50と避難者との間に摩擦力が発生し、この摩擦力により滑降シート50が下側Z2に引っ張られ、滑降シート50に伸びが発生する場合がある。この場合でも、滑降シート50の伸び率は、シュート本体10の滑降部11の伸び率よりも小さいので、滑降シート50が伸びにくい。よって、滑降シート50の伸びによってシュート本体10の滑降部11が大きく下側Z2に引っ張られることが抑制される。よって、シュート本体10が損傷しにくい。
【0030】
この滑降シート50は、図2に示すように、滑降シート上面50aと、滑降シート下面50bと、滑降シート基端部50sと、滑降シート先端部50tと、折り返し部50w(図6参照)と、を備える。
【0031】
滑降シート上面50aは、滑降シート50の上側Z1の面である。滑降シート下面50bは、滑降シート50の下側Z2の面である。
【0032】
滑降シート基端部50sは、滑降シート50の長手方向の両端部のうち、上側Z1に配置される側の端部である。滑降シート先端部50tは、滑降シート50の長手方向の両端部のうち、下側Z2に配置される側の端部である。
【0033】
折り返し部50wは、図6に示すように、滑降シート50の外周部を補強するための部分である。折り返し部50wは、滑降シート50の外周部に設けられる。折り返し部50wは、折り返し部50wが形成される前の滑降シート50の外周部が、滑降シート50の内側に向かって折り返された部分である。折り返し部50wの面積は、滑降シート下面50bの面積に比べて微小である。折り返し部50wは、滑降シート下面50bには含まれない。例えば、滑降シート下面50bが「樹脂部53を備えない」場合に、折り返し部50wは樹脂部53を備えてもよい。
【0034】
(滑降シート50の配置)
この滑降シート50は、図2に示すように、滑降部上面11aに配置され、滑降部上面11aの少なくとも一部を覆う。滑降シート50は、滑降部上面11aの全体を覆ってもよく、滑降部上面11aの略全体を覆ってもよく、滑降部上面11aの半分以上の部分を覆ってもよく、滑降部上面11aの半分未満の部分を覆ってもよい。滑降シート50は、上屈曲部上面15aに配置されてもよい。滑降シート50は、上屈曲部上面15aの少なくとも一部を覆ってもよい。滑降シート50は、上屈曲部上面15aの全体を覆ってもよく、上屈曲部上面15aの略全体を覆ってもよく、上屈曲部上面15aの半分以上の部分を覆ってもよく、上屈曲部上面15aの半分未満の部分を覆ってもよい。
【0035】
この滑降シート50の横方向Y外側の端部の位置は、図1に示す滑降部11の横方向Y外側の端部の位置に対して、横方向Y内側でもよく、横方向Y外側でもよく、滑降部11の横方向Y外側の端部と同じ位置または略同じ位置でもよい。滑降シート50の横方向Y外側の端部の位置は、上屈曲部15の横方向Y外側の端部の位置に対して、横方向Y内側でもよく、横方向Y外側でもよく、上屈曲部15の横方向Y外側の端部と同じ位置または略同じ位置でもよい。滑降シート50の横方向Y外側の端部は、側壁部17と横方向Yに重なってもよい。
【0036】
滑降シート基端部50sの位置は、少なくとも滑降部11の下側Z2の端部よりも上側Z1である。滑降シート基端部50sの位置は、滑降部11の上側Z1の端部よりも下側Z2でもよく、滑降部11の上側Z1の端部と同じまたは略同じ位置でもよい。滑降シート基端部50sの位置は、上屈曲部上面15aの位置と略同じ位置でもよい。滑降シート基端部50sの位置は、上屈曲部15の前側X1端部と同じまたは略同じ位置でもよく、上屈曲部15の前側X1端部と後側X2端部との間の位置でもよく、上屈曲部15の後側X2端部と同じまたは略同じ位置でもよい。滑降シート基端部50sの位置は、上屈曲部下面15bの位置と略同じ位置でもよく、例えば上屈曲部下面15bと車両C(例えば床面)とに挟まれる位置でもよい(図8参照)。滑降シート50の少なくとも一部が、上屈曲部下面15bと車両C(例えば床面)とに挟まれる場合は、滑降シート50がシュート本体10から誤って外れることが抑制される。
【0037】
滑降シート先端部50tの位置は、少なくとも滑降部11の上側Z1の端部よりも下側Z2である。滑降シート先端部50tの位置は、滑降部11の下側Z2の端部よりも上側Z1でもよく、滑降部11の下側Z2の端部と同じまたは略同じ位置でもよく、滑降部11の下側Z2の端部よりも下側Z2でもよい。滑降シート先端部50tの位置は、脚部13の前側X1面と略同じ位置でもよい。滑降シート先端部50tの位置は、脚部13の下側Z2の端部よりも上側Z1でもよい。
【0038】
この滑降シート50の材料は、例えば繊維および樹脂の少なくともいずれかを含んでもよい。具体的には例えば、図2に示すように、滑降シート50は、繊維シート部51と、樹脂部53と、を備える。
【0039】
繊維シート部51は、図6に示すように、滑降シート50のうち、シート状の繊維の部分である。繊維シート部51は、滑降シート50の変形(伸び)を抑制する。繊維シート部51は、繊維が織られたもの(織布)でもよく、繊維が編まれたものでもよい。繊維シート部51が織布である場合、繊維シート部51は、平織(例えばオックス組織など)の織布でもよく、平織以外の織布(綾織、繻子織など)でもよい。繊維シート部51を構成する繊維は、天然繊維でも化学繊維でもよい。繊維シート部51を構成する繊維が化学繊維の場合、この繊維は、合成繊維(例えばポリエステル、ナイロンなど)でもよく、合成繊維以外の繊維でもよい。
【0040】
樹脂部53は、図5に示す滑降シート50のうち、樹脂の部分である。樹脂部53は、滑降シート50を補強する。樹脂部53は、滑降シート50に防水性を付与する。樹脂部53は、滑降部11(図1参照)での避難者の滑降の速度が大きくなりすぎることを抑制してもよい。図2に示す滑降シート50が繊維シート部51を備える場合、樹脂部53は、繊維シート部51に接触する。これにより、樹脂部53は、繊維シート部51の繊維(糸)がほつれることや切れることを抑制する。樹脂部53は、繊維シート部51にコーティング加工されたものでもよく、繊維シート部51に貼り付けられたシートでもよい。樹脂部53を構成する樹脂は、例えば、強度、加水分解のしにくさ(ベタツキの少なさ)、耐光性などの観点から適切に選択される。樹脂部53を構成する樹脂は、例えば、ポリ塩化ビニルでもよく、アクリルでもよく、クロロプレンでもよく、クロロスルフォン化ポリエチレンでもよい。
【0041】
この樹脂部53は、滑降シート上面50aおよび滑降シート下面50bの両面に設けられてもよく、片面に設けられてもよい。樹脂部53は、滑降シート上面50aに設けられ、滑降シート下面50bに設けられないことが好ましい。この場合、シュート本体10と滑降シート下面50bとの摩擦力を低減することができる(詳細は後述)。
【0042】
(滑降シート上面50aの摩擦力)
滑降シート上面50aと避難者との摩擦力が調整されることで、避難者の滑降抵抗性能が調整されてもよい。例えば、水平方向に対する滑降方向Sの傾斜角度(滑降部11の設置角度)に応じて、滑降シート上面50aと避難者との摩擦力が調整されてもよい。さらに詳しくは、滑降部11の上側Z1部分から、避難用シュート1の下側Z2端部までの高さ(例えば車両Cの床面部分から地面Gまでの高さ)は、避難用シュート1が用いられる現場によって、様々な高さになりうる。そのため、水平面に対する滑降方向Sの傾斜角度が様々な値となりうる。そこで、滑降シート上面50aと避難者との摩擦力が調整されることで、滑降部11での(滑降シート50での)滑降抵抗性能が調整されてもよい。滑降シート上面50aと避難者との摩擦力の調整は、例えば複数種類の滑降シート50から適切な種類の滑降シート50が選択されることによって行われてもよく、滑降シート50が滑降部11を覆う量が調整されることによって行われてもよい。
【0043】
例えば、滑降シート上面50aと避難者との摩擦係数は、シュート本体10と避難者との摩擦係数に比べ、小さくなるように設定されてもよい。この場合、滑降部11に滑降シート50が設けられない場合に比べ、避難者をスムーズに滑降させることができる。例えば、滑降シート上面50aと避難者との摩擦係数は、シュート本体10と避難者との摩擦係数に比べ、大きくなるように設定されてもよい。この場合、滑降部11に滑降シート50が設けられない場合に比べ、避難者の滑降の速度が大きくなりすぎることが抑制される。例えば、滑降シート上面50aが樹脂部53を備える場合の、滑降シート上面50aと避難者との摩擦係数は、滑降シート上面50aが樹脂部53を備えない場合(例えば繊維シート部51のみである場合)に比べ、大きく設定されてもよい。この場合、避難者の滑降の速度が大きくなりすぎることが抑制される。
【0044】
具体的には例えば、滑降シート上面50aと、滑降シート上面50aと同一の素材と、を互いに滑らせたときの滑降シート上面50aの動摩擦係数は、0.05以上、0.50以下が好ましい。この滑降シート上面50aの動摩擦係数が0.05未満の場合、避難者の滑降の速度が大きくなりすぎる場合がある。この滑降シート上面50aの動摩擦係数が0.50を超える場合、滑降シート上面50aの滑り性が悪く、避難者の滑降に時間がかかる場合がある。
【0045】
(滑降シート下面50bの摩擦力など)
滑降シート下面50bと滑降部上面11aとの摩擦力(以下「滑降シート下面50bでの摩擦力」ともいう)をできるだけ小さくすることが好ましい。この場合、滑降部上面11aに対して滑降シート50が、横方向Yおよび滑降方向Sに移動しやすくなる。すると、シュート本体10の摩耗および損傷を抑制することができる。また、シュート本体10に滑降シート50が設置される際に、滑降シート50の皺を容易に取り除くことができる。[例A1]具体的には例えば、滑降シート下面50bに樹脂部53が設けられる場合に、樹脂部53の材料として、加水分解しにくいものが選択されてもよい。この場合、滑降シート下面50bでの加水分解によるべとつきを抑制することができ、滑降シート下面50bと滑降部上面11aとの摩擦力を小さくすることができる。[例A2]例えば、滑降シート下面50bに繊維シート部51が設けられ、滑降シート下面50bの繊維シート部51の繊維が、滑降部11に直接的に接触してもよい。この場合、滑降シート下面50bに樹脂部53が設けられない、または、ほとんど設けられないことが好ましい。この場合、樹脂部53が滑降シート下面50bに広い範囲で設けられる場合に比べ、樹脂部53の加水分解によるべとつきが滑降シート下面50bで生じることを抑制することができる。また、この場合、滑降シート下面50bの繊維シート部51とシュート本体10との間にわずかな隙間ができるので、滑降シート下面50bでの摩擦力を小さくすることができる。また、滑降シート下面50bとシュート本体10との間が、水(例えば雨水)で濡れた場合でも、滑降シート下面50bの繊維シート部51とシュート本体10との間にわずかな隙間ができる(滑降シート下面50bと滑降部11とが一体化しない)。よって、滑降シート下面50bでの摩擦力を小さくすることができる。
【0046】
なお、滑降シート50の構成は様々に変更可能である。例えば、滑降シート50は、繊維シート部51を備えなくてもよく、樹脂部53を備えなくてもよく、樹脂部53とは異なる防水加工や撥水加工が施されたものでもよい。
【0047】
ラベル60(図5参照)は、図4に示すシュート本体10への滑降シート50の取り付け作業を行う作業者に、滑降シート50の取り付けの向きを容易に認識させるためのものである。さらに詳しくは、例えば、図2に示すように、滑降シート基端部50sに第1滑降シート側着脱部31bが設けられ、滑降シート先端部50tには第1滑降シート側着脱部31bが設けられない場合がある。この場合、滑降シート50の長手方向両端部のうち第1滑降シート側着脱部31bが取り付けられている側を、車両C側とする必要がある。この例のように、シュート本体10への滑降シート50の取り付けの向き(前後方向Xの向き)が限定される場合に、図4に示すラベル60が設けられることが好ましい。ラベル60は、シュート本体10への滑降シート50の取り付けの向きを示す記載(文字、図形、記号など)を有する。ラベル60は、滑降シート50に取り付けられる。例えば、ラベル60は、滑降シート基端部50sに取り付けられる。図5に示す例では、ラベル60は、車両C側の部分であることを表す「車両側」の文字を有する。ラベル60は、繊維(例えばポリエステル繊維など)により構成されてもよく、樹脂により構成されてもよい。
【0048】
このラベル60は、滑降シート先端部50tに取り付けられてもよい(図5に示すラベル160を参照)。この場合、ラベル160は、車両Cとは反対側であることを示す記載を有してもよい。なお、滑降シート50の取り付けの向きが限定されない場合などには、ラベル60やラベル160は設けられる必要はない。例えば、図6に示すように、滑降シート基端部50sに第1滑降シート側着脱部31bが設けられ、滑降シート先端部50tに第2滑降シート側着脱部32bが設けられる場合は、ラベル60およびラベル160は不要である。また、滑降シート50の表裏(滑降シート上面50aと滑降シート下面50bと)を作業者に容易に区別させるためのラベル60が設けられてもよい。また、滑降シート50の取り付けの向きや表裏を示す記載が、滑降シート50(例えば滑降シート上面50aおよび滑降シート下面50bの少なくともいずれか)に設けられてもよい。
【0049】
(第1の発明の効果)
図2に示す避難用シュート1による効果は、次の通りである。避難用シュート1は、滑降部11と、滑降シート50と、を備える。滑降部11は、内部にガスが供給されることで膨張した使用状態になり、使用状態のときに水平方向に対して傾斜して配置され、車両Cの内部から車両Cの外部に避難者を滑降させるためのものである。
【0050】
[構成1]滑降シート50は、滑降部11から独立し、滑降部11の上面(滑降部上面11a)を覆い、シート状である。
【0051】
上記[構成1]により、次の効果が得られる。滑降部11は、使用状態のとき、ガスが供給されることで膨張(伸長)した状態であり、張力が掛かった状態である。そのため、避難者の衣類や手荷物などに含まれる硬い物(例えば鋭利な物、金属類など)が滑降部11に接触することなどにより、滑降部11が損傷し(例えば裂け)、滑降部11からガスが抜ける場合がある。また、避難者が、滑降部11に接触しながら滑降すると、滑降部11が摩耗(劣化)し、滑降部11のガスバリア性が低下し、滑降部11の内部のガスの圧力を十分に確保できない場合がある。そこで、避難用シュート1は、上記[構成1]の滑降シート50を備える。この滑降シート50は、滑降部11の上面を覆う。避難者を滑降シート50に接触させることができるので、避難者が滑降部11に接触することが抑制される。よって、滑降シート50が、滑降部11を保護することができる。よって、避難者と滑降部11との接触による滑降部11の損傷および摩耗を抑制することができる。また、上記[構成1]の滑降シート50は、滑降部11から独立しているので、ガスによる張力が掛からない。よって、例えば硬い物などが滑降部11に接触することによる滑降部11の損傷および摩耗に比べ、硬い物などが滑降シート50に接触することによる滑降シート50の損傷および摩耗を抑制することができる。その結果、滑降部11の損傷および摩耗を抑制することができる。
【0052】
(第2の発明の効果)
[構成2]滑降シート50は、シート状の繊維である繊維シート部51を備える。
【0053】
上記[構成2]により、滑降シート50が繊維シート部51を備えない場合(例えば滑降シート50が樹脂部53のみを備える場合など)に比べ、滑降シート50の強度を向上させることができる。よって、滑降シート50が、滑降部11をより確実に保護することができる。よって、滑降部11の損傷および摩耗をより抑制することができる。
【0054】
(第3の発明の効果)
[構成3]滑降シート50は、樹脂により構成された樹脂部53を備える。
【0055】
上記[構成3]により、滑降シート50が樹脂部53を備えない場合(例えば滑降シート50が繊維シート部51のみを備える場合など)に比べ、滑降シート50の強度を向上させることができる。よって、滑降シート50が、滑降部11をより確実に保護することができる。よって、滑降部11の損傷および摩耗をより抑制することができる。
【0056】
また、上記[構成3]により、滑降シート50が樹脂部53を備えない場合に比べ、滑降シート50と避難者との摩擦力を増加させやすい。よって、避難者の滑降の速度が大きくなりすぎることを抑制することができる。
【0057】
(第4の発明の効果)
[構成4]滑降シート50は、繊維シート部51と、樹脂部53と、を備える。繊維シート部51は、シート状の繊維である。樹脂部53は、繊維シート部51に接触し、樹脂により構成される。
【0058】
上記[構成4]により、上記[構成2]および上記[構成3]による効果と同様の効果が得られる。さらに、樹脂部53が繊維シート部51に接触することにより、繊維シート部51の繊維(糸)がほつれることや切れることを抑制することができる。よって、滑降シート50の強度低下を抑制することができる。よって、滑降シート50が滑降部11をより確実に保護することができる。よって、滑降部11の損傷および摩耗をより抑制することができる。
【0059】
(第5の発明の効果)
[構成5-1]滑降シート上面50a(滑降シート50の上面)は、樹脂部53を備える。
【0060】
[構成5-2]滑降シート下面50b(滑降シート50の下面)は、繊維シート部51を備える。滑降シート下面50bの繊維シート部51の繊維は、滑降部11に直接的に接触する。
【0061】
上記[構成5-1]により、滑降シート上面50aでは、樹脂部53により、繊維シート部51の繊維(糸)がほつれることや切れることを抑制することができる。よって、滑降シート50の強度低下を抑制することができる。よって、滑降シート50が滑降部11をより確実に保護することができる。よって、滑降部11の損傷および摩耗をより抑制することができる。
【0062】
上記[構成5-2]により、滑降シート下面50bの繊維シート部51の繊維が滑降部11に直接的に接触しない場合(例えば樹脂部53を介して滑降部11に接触する場合など)に比べ、滑降シート下面50bと滑降部11との摩擦を抑制することができる。さらに詳しくは、滑降シート下面50bでは、樹脂部53の加水分解によるべとつきを抑制することができる。また、滑降シート下面50bでは、繊維シート部51と滑降部11との間にわずかな隙間が確保される。例えば滑降シート下面50bと滑降部11との間が水(例えば雨水)で濡れた場合でも、滑降シート下面50bと滑降部11との間にわずかな隙間が確保される。よって、滑降シート下面50bと滑降部11との摩擦を抑制することができる。その結果、滑降部11に対して滑降シート下面50bが移動したとき(ずれたとき)に、滑降シート下面50bが滑降部11を損傷および摩耗させることを抑制することができる。よって、滑降部11の損傷および摩耗をより抑制することができる。
【0063】
滑降シート下面50b(繊維シート部51)と滑降部11との摩擦を抑制することができるので、滑降シート50を滑降部11に設置する作業が行われる際に、滑降シート50の皴を容易に延ばすことができる。よって、滑降シート50の皺を、容易になくすまたは減らすことができる。よって、滑降シート50に凹凸ができることが抑制される。よって、滑降シート50での避難者の滑降性能を安定させることができる。
【0064】
滑降シート下面50b(繊維シート部51)と滑降部11との間に隙間が確保されるので、滑降シート下面50bと滑降部11との間の空気が、滑降シート50の外に排出されやすい。よって、滑降シート下面50bと滑降部11との間にエア溜まりができることが抑制される。よって、滑降シート50に凹凸ができることが抑制される。よって、滑降シート50での避難者の滑降性能を安定させることができる。
【0065】
(第6の発明の効果)
[構成6]滑降シート50は、滑降部11に着脱可能に取り付けられる。
【0066】
上記[構成6]により、滑降シート50が汚れた場合や損傷した場合などに、滑降シート50を容易に取り換えることができる。損傷した滑降シート50が、損傷していない滑降シート50に取り換えられた場合は、取り換えた後の滑降シート50が滑降部11をより確実に保護することができる。よって、滑降部11の損傷および摩耗をより抑制することができる。
【0067】
(第8の発明の効果)
滑降シート50による効果は次の通りである。
【0068】
[構成8]滑降シート50は、避難用シュート1の滑降部11の上面(滑降部上面11a)を覆うことが可能であり、シート状である。滑降部11は、内部にガスが供給されることで膨張した使用状態になり、使用状態のときに水平方向に対して傾斜して配置され、車両Cの内部から車両Cの外部に避難者を滑降させるためのものである。
【0069】
上記[構成8]により、上記[構成1]による効果を得るための滑降シート50を提供することができる。
【0070】
(第2実施形態)
図7図8を参照して、第2実施形態の避難用シュート201について、第1実施形態との相違点を説明する。なお、第2実施形態の避難用シュート201のうち、第1実施形態との共通点については、説明を省略する。図1に示す例では、滑降シート50は、1枚のみ設けられた。一方、図7に示すように、滑降シート50は、複数枚設けられてもよく、図7に示す例では2枚設けられる。具体的には、滑降シート50は、上部滑降シート253と、下部滑降シート255と、を備える。
【0071】
上部滑降シート253は、滑降部上面11aの上側Z1部分に設けられる。上部滑降シート253は、避難者が滑降部11を適切に滑降できるような滑り性を有する(いわば滑りやすいシートである)。例えば、上部滑降シート253は、滑降部上面11aの、少なくとも上側Z1端部に設けられてもよい。例えば、上部滑降シート253の下側Z2端部(上部滑降シート先端部253t)の位置は、滑降部上面11aの滑降方向Sにおける中央部または略中央部でもよく、中央部よりも上側Z1でもよく、中央部よりも下側Z2でもよい。
【0072】
下部滑降シート255は、滑降部上面11aのうち上部滑降シート253が設けられた部分よりも下側Z2部分に設けられる。下部滑降シート255は、滑降している避難者が減速できるような滑り性を有する(いわば滑りにくいシートである)。下部滑降シート255の滑り性は、上部滑降シート253の滑り性よりも低い。さらに詳しくは、ある滑降者と下部滑降シート255との摩擦係数は、この滑降者と上部滑降シート253との摩擦係数よりも大きい。下部滑降シート255の材料は、上部滑降シート253よりも滑り性が低い材料である。下部滑降シート255と上部滑降シート253とは、別体でも、一体(連続する1枚のシート)でもよい。上部滑降シート253が下部滑降シート255を覆うように、下部滑降シート255と上部滑降シート253とが重ねられてもよい。上部滑降シート253と下部滑降シート255とが滑降方向Sに並ぶように(連続するように)、上部滑降シート253と下部滑降シート255とが一体的に設けられてもよい。下部滑降シート255の下部滑降シート先端部255tは、上部滑降シート253の上部滑降シート先端部253tよりも下側Z2に配置される。下部滑降シート255の下部滑降シート基端部255sは、上部滑降シート253の上部滑降シート先端部253tに対して、同じ位置または上側Z1に配置される。下部滑降シート基端部255sは、上部滑降シート基端部253sとは異なる位置(ずれた位置)に配置されてもよく、上部滑降シート基端部253sと重なる位置(滑降シート50の厚さ方向に重なる位置)に配置されてもよい。なお、図8では、図2に示すシート着脱部30を省略した。
【0073】
(第7の発明の効果)
[構成7]図7に示すように、滑降シート50は、上部滑降シート253と、下部滑降シート255と、を備える。上部滑降シート253は、滑降部11の滑降部上面11aの上側Z1部分に設けられる。下部滑降シート255は、滑降部上面11aのうち上部滑降シート253が設けられた部分よりも下側Z2部分に設けられる。下部滑降シート255の滑り性は、上部滑降シート253の滑り性よりも低い。
【0074】
上記[構成7]により、次の効果が得られる。避難者は、上部滑降シート253を滑降した後、下部滑降シート255を滑降する。このとき、下部滑降シート255は、避難者を減速させることができる。よって、下部滑降シート255が避難者を減速させた状態で、滑降部11の下側Z2部分に避難者を到達させることができる。よって、避難者が滑降部11から容易に降りることができる。
【0075】
(変形例)
上記実施形態は様々に変形されてもよい。例えば、上記実施形態の各構成要素の配置や形状が変更されてもよい。例えば、構成要素の数が変更されてもよく、構成要素の一部が設けられなくてもよい。具体的には例えば、図1に示す脚部13、上屈曲部15、および側壁部17の少なくともいずれかは、設けられなくてもよい。例えば、構成要素どうしの固定や連結などは、直接的でも間接的でもよい。例えば、互いに異なる複数の部材や部分として説明したものが、一つの部材や部分とされてもよい。例えば、一つの部材や部分として説明したものが、互いに異なる複数の部材や部分に分けて設けられてもよい。例えば、滑降部11、脚部13、上屈曲部15、および側壁部17は、互いに一体でもよく、別体でもよい。これらは、内部で連通していてもよく、連通していなくてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1、201 避難用シュート
11 滑降部
50 滑降シート
50a 滑降シート上面(滑降シートの上面)
50b 滑降シート下面(滑降シートの下面)
51 繊維シート部
53 樹脂部
253 上部滑降シート
255 下部滑降シート
C 車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8