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特開2022-144834駆動制御装置、駆動制御方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022144834
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】駆動制御装置、駆動制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B60L 15/20 20060101AFI20220926BHJP
   B60L 58/21 20190101ALI20220926BHJP
   B60L 58/12 20190101ALI20220926BHJP
   B60K 1/02 20060101ALI20220926BHJP
   B60K 7/00 20060101ALI20220926BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20220926BHJP
【FI】
B60L15/20 S
B60L58/21
B60L58/12
B60K1/02
B60K7/00
B60K1/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021046016
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】塚本 準
(72)【発明者】
【氏名】金成 昌幸
(72)【発明者】
【氏名】尾形 永
【テーマコード(参考)】
3D235
5H125
【Fターム(参考)】
3D235AA01
3D235BB21
3D235BB32
3D235CC12
3D235CC15
3D235CC42
3D235DD12
3D235DD13
3D235DD25
3D235FF32
3D235FF35
3D235FF43
3D235GA06
3D235GA15
3D235GB02
3D235GB16
3D235GB32
3D235HH02
3D235HH06
3D235HH12
3D235HH32
3D235HH34
3D235HH37
5H125AA01
5H125AB01
5H125AC12
5H125BA07
5H125BC28
5H125CA02
5H125EE27
5H125EE42
(57)【要約】
【課題】車輪をそれぞれ独立したバッテリで駆動する電動車両において、各バッテリの残量のバランスがよくなるように駆動を制御することで、航続距離を延長することができるようにする。
【解決手段】電動車両の複数の駆動輪のそれぞれに対応して設けられ、対応する駆動輪を駆動する電力を供給する複数のバッテリを有する。複数のバッテリそれぞれの残量を検出し、各バッテリの残量と判定条件とに基づいて選ばれた残量の少ないバッテリに対応する駆動輪の駆動力を減少させ、駆動力を減少させた駆動輪と車幅方向において同じ側に設置された駆動輪の駆動力を増加させるよう各駆動輪の駆動力を駆動制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の駆動輪のそれぞれに対応して設けられ、対応する駆動輪を駆動する電力を供給する複数のバッテリを有する電動車両における、前記複数のバッテリそれぞれの残量を検出するバッテリ残量検出部と、
各バッテリの残量と判定条件とに基づいて選ばれた残量の少ないバッテリに対応する駆動輪の駆動力を減少させ、駆動力を減少させた駆動輪と車幅方向において同じ側に設置された駆動輪の駆動力を増加させるよう各駆動輪の駆動力を駆動制御する駆動制御部と、
を有する駆動制御装置。
【請求項2】
前記駆動制御部は、検出した残量の最小値が所定の第1閾値以下であって、検出した残量の最大値と最小値との差が所定の第2閾値以上である場合に、残量の少ないバッテリに対応する駆動輪の駆動力を減少させるよう各駆動輪の駆動力を駆動制御する
請求項1に記載の駆動制御装置。
【請求項3】
前記駆動制御部は、車幅方向において同じ側に配置された駆動輪の駆動力の合計値が略等しくなるよう各駆動輪の駆動力を駆動制御する
請求項2に記載の駆動制御装置。
【請求項4】
前記駆動制御部は、前記駆動輪のうち前記電動車両の前方に配置された前輪に対応するバッテリの残量の平均値と、前記駆動輪のうち前記電動車両の後方に配置された後輪に対応するバッテリの残量の平均値とが所定の第3閾値以上である場合に、残量の少ないバッテリに対応する駆動輪の駆動力を減少させ、駆動力を減少させた当該駆動輪と車幅方向において同じ側に設置された駆動輪の駆動力を増加させる
請求項2又は請求項3に記載の駆動制御装置。
【請求項5】
前記駆動制御部は、一方の対角に配置された駆動輪に対応するバッテリの残量の平均値と、他方の対角に配置された駆動輪に対応するバッテリの残量の平均値とが所定の第4閾値以上である場合に、前記平均値の小さい対角に配置された駆動輪の駆動力を減少させ、他方の対角に配置された駆動輪の駆動力を増加させる
請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の駆動制御装置。
【請求項6】
前記駆動制御部は、前記駆動輪のうち前記電動車両の前方に配置された前輪に対応するバッテリの残量の平均値と、前記駆動輪のうち前記電動車両の後方に配置された後輪に対応するバッテリの残量の平均値とが所定の第3閾値未満であり、一方の対角に配置された駆動輪に対応するバッテリの残量の平均値と、他方の対角に配置された駆動輪に対応するバッテリの残量の平均値とが所定の第4閾値未満である場合には、残量の少ないバッテリに対応する駆動輪の駆動力を減少させ、駆動力を減少させた当該駆動輪と車幅方向において同じ側に設置された駆動輪の駆動力を増加させる
請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の駆動制御装置。
【請求項7】
前記駆動制御部は、前記電動車両が直進している場合にのみ前記駆動制御をする
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の駆動制御装置。
【請求項8】
前記駆動制御部は、前記電動車両におけるアクセルの操作量に基づき、前記駆動輪の駆動力を減少させる減少量及び前記駆動輪の駆動力を増加させる増加量を算出する、
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の駆動制御装置。
【請求項9】
前記駆動制御部は、前記アクセルの操作量の上限値と、前記アクセルの現在の操作量との差分を前記減少量及び前記増加量として算出する、
請求項8に記載の駆動制御装置。
【請求項10】
複数の駆動輪のそれぞれに対応して設けられ、対応する駆動輪を駆動する電力を供給する複数のバッテリを有する電動車両における、前記複数のバッテリそれぞれの残量を検出する工程と、
各バッテリの残量と判定条件とに基づいて選ばれた残量の少ないバッテリに対応する駆動輪の駆動力を減少させ、駆動力を減少させた駆動輪と車幅方向において同じ側に設置された駆動輪の駆動力を増加させるよう各駆動輪の駆動力を駆動制御する工程と、
を含む駆動制御方法。
【請求項11】
コンピュータに、
複数の駆動輪のそれぞれに対応して設けられ、対応する駆動輪を駆動する電力を供給する複数のバッテリを有する電動車両における、前記複数のバッテリそれぞれの残量を検出するバッテリ残量検出ステップと、
各バッテリの残量と判定条件とに基づいて選ばれた残量の少ないバッテリに対応する駆動輪の駆動力を減少させ、駆動力を減少させた駆動輪と車幅方向において同じ側に設置された駆動輪の駆動力を増加させるよう各駆動輪の駆動力を駆動制御する駆動制御ステップと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動制御装置、駆動制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車の開発や市販化が進んでいるが、バッテリのコスト、サイズ、重量や充電インフラ不足や充電時間が長い等の課題もあり普及には至っていなかった。
開発されている電気自動車の多くは、既存のエンジン車両のエンジンをモータに置き換え、航続距離を延長するため、大容量のバッテリを積載する(例えば、特許文献1参照)。また、駆動時の電流を下げるためにバッテリを高電圧化する手法が用いられている。
バッテリのセルは容量や電圧が決まっているため、セルの並列接続によりバッテリを大容量化し、セルの直列接続によりバッテリを高電圧化する。よってバッテリを大容量化又は高電圧化すると、セル数が多くなり、コスト、サイズ、及び重量が大きくなる。
現在主流のリチウムイオンバッテリは、並列化したセルを均等に充電する必要があるため、多数の並列化が難しい。
特に、軽自動車では、車両サイズに制限があり、バッテリの課題は影響が大きく電気自動車の普及の妨げとなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-266950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した問題に対応するために、車輪ごとにバッテリを設けることが考えられる。しかしながら、バッテリにおける消費電力の量には、運転の仕方や路面状態によって各車輪の駆動力が異なることやバッテリの老朽化等が影響し、バッテリごとに消費電力の量が異なる場合があった。この場合、バッテリごと電力残量に差が生じ、電気自動車の航続距離に影響し得る。例えば、一部のバッテリにてモータの駆動に必要な電力が不足すると、他のバッテリには電力が十分に残っている状態であっても、電気自動車が走行できなくなってしまうという課題があった。
【0005】
上述の課題を鑑み、本発明は、電動車両の各車輪それぞれに設けられたバッテリの残量のバランスがよくなるように駆動を制御することで、航続距離を延長することができる駆動制御装置、駆動制御方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る駆動制御装置は、複数の駆動輪のそれぞれに対応して設けられ、対応する駆動輪を駆動する電力を供給する複数のバッテリを有する電動車両における、前記複数のバッテリそれぞれの残量を検出するバッテリ残量検出部と、各バッテリの残量と判定条件とに基づいて選ばれた残量の少ないバッテリに対応する駆動輪の駆動力を減少させ、駆動力を減少させた駆動輪と車幅方向において同じ側に設置された駆動輪の駆動力を増加させるよう各駆動輪の駆動力を駆動制御する駆動制御部と、を有する。
【0007】
本発明の一態様に係る駆動制御方法は、複数の駆動輪のそれぞれに対応して設けられ、対応する駆動輪を駆動する電力を供給する複数のバッテリを有する電動車両における、前記複数のバッテリそれぞれの残量を検出する工程と、各バッテリの残量と判定条件とに基づいて選ばれた残量の少ないバッテリに対応する駆動輪の駆動力を減少させ、駆動力を減少させた駆動輪と車幅方向において同じ側に設置された駆動輪の駆動力を増加させるよう各駆動輪の駆動力を駆動制御する工程と、を含む。
【0008】
本発明の一態様に係るプログラムは、コンピュータに、複数の駆動輪のそれぞれに対応して設けられ、対応する駆動輪を駆動する電力を供給する複数のバッテリを有する電動車両における、前記複数のバッテリそれぞれの残量を検出するバッテリ残量検出ステップと、各バッテリの残量と判定条件とに基づいて選ばれた残量の少ないバッテリに対応する駆動輪の駆動力を減少させ、駆動力を減少させた駆動輪と車幅方向において同じ側に設置された駆動輪の駆動力を増加させるよう各駆動輪の駆動力を駆動制御する駆動制御ステップと、を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、車輪をそれぞれ独立したバッテリで駆動する電動車両において、各バッテリの残量のバランスがよくなるように駆動を制御することで、航続距離を延長することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施形態に係る電動車両の模式図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る電動車両における駆動制御装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る駆動制御装置が実行する駆動制御処理の流れを示すフローチャートである。
図4】本発明の第1の実施形態に係る電動車両が備える各バッテリのバッテリ残量の一例を示す図である。
図5】本発明の第1の実施形態に係る駆動指令値の算出方法の説明図である。
図6】本発明の第1の実施形態に係る駆動制御後の駆動指令値の一例を示す図である。
図7】本発明の第1の実施形態に係る駆動制御によって想定されるバッテリ残量の一例を示す図である。
図8】本発明の第1の実施形態に係る電動車両が備える各バッテリのバッテリ残量の他の例を示す図である。
図9】本発明の第1の実施形態に係る駆動指令値の算出方法の説明図である。
図10】本発明の第1の実施形態に係る駆動制御後の駆動指令値の一例を示す図である。
図11】本発明の第1の実施形態に係る駆動制御によって想定されるバッテリ残量の一例を示す図である。
図12】本発明の第1の実施形態に係る電動車両の適用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る電動車両1の模式図である。なお、以下の説明では、電動車両1の進行方向に対して前方、後方を単に前方、後方と称する。進行方向に直交する電動車両1の車幅方向を単に車幅方向と称する。また、電動車両1が路面上を走行可能な状態に配置された状態での上下方向を単に上下方向と称する。また、車幅方向において電動車両1を上方から視認した際の左方、右方を単に左方、右方と称する。
【0012】
図1に示すように、電動車両1は、車体2と、4つの車輪3-1~3-4と、各車輪3-1~3-4に個別に設けられた4つの駆動ユニット4-1~4-4と、各駆動ユニット4-1~4-4の駆動制御を行うモータ制御部5-1~5-4(MC:Motor Controller)と、各駆動ユニット4-1~4-4に電力を供給するバッテリ6-1~6-4(LB:Li-ion Battery)と、電動車両1を統括して制御する車両コントローラである駆動制御装置15(VC:Vehicle Controller)と、を備えている。
【0013】
各車輪3-1~3-4は、ホイールにタイヤ(いずれも図示しない)が装着される。各車輪3-1~3-4の車軸11-1~11-4には、駆動ユニット4-1~4-4が連結されている。車輪3-1~3-4のうち、車輪3-1及び3-2は、車体2の前方で、かつ車幅方向両側に配置された1組の前輪である。また、前輪となる車輪3-1及び3-2のホイールには、ステアリング10が連結されている。車輪3-3及び3-4は、車体2の後方で、かつ車幅方向両側に配置された1組の後輪である。本実施形態における4つの車輪3-1~3-4は全て駆動輪である。
【0014】
駆動ユニット4-1~4-4は、電動モータ8-1~8-4(M:Motor)と、電動モータ8-1~8-4による回転力を車軸11-1~11-4に伝達する伝達ギア9-1~9-4(G:Gear)と、を備えている。
【0015】
電動モータ8-1~8-4は、いわゆるSRモータ(スイッチトリラクタンスモータ)である。SRモータは、ロータとステータとの両方に突極を設けたモータである。SRモータは、ステータに設けられている複数のステータ突極にそれぞれ巻線が巻回されており、この巻線に電流を供給することによりステータ突極を励磁する。そして、ステータ突極に生じた磁気的吸引力によって、ロータに設けられている複数のロータ突極を吸引して回転力を発生させる。
【0016】
伝達ギア9-1~9-4は、電動モータ8-1~8-4の回転を減速させて車軸11-1~11-4に伝達する。
【0017】
モータ制御部5-1~5-4は、三相ブリッジ回路を含んで構成されており、電動モータ8-1~8-4のうち自身が接続された電動モータに対して駆動電流を印加することで、電動モータ8-1~8-4を回転駆動する。三相ブリッジ回路は、直列に接続された2つの図示しないスイッチング素子からなる回路を高電位側と接地電位との間に並列に複数組(U相、V相、W相の3組)接続された回路である。各スイッチング素子は、例えばFET(Field Effect Transistor:電界効果トランジスタ)、又はIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)が用いられる。
【0018】
モータ制御部5-1~5-4には、それぞれ対応するバッテリ6-1~6-4が接続されている。
バッテリ6-1~6-4は、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池、鉛電池等のうちいずれかの二次電池を用いることができる。また、二次電池の代わりに、電気二重層キャパシタを用いることもできる。バッテリ6-1~6-4は、例えば、電圧が60V(ボルト)未満の交換可能な(交換式)低電圧バッテリである。以下の説明において、バッテリ6-1~6-4を特に区別しない場合には、バッテリ6と記す。
【0019】
このように、第1の実施形態に係る電動車両1は、前後、左右の4つの車輪3-1~3-4に対して、それぞれ、モータ制御部5-1~5-4を含む駆動ユニット4-1~4-4が個別に設けられている。また、モータ制御部5-1~5-4にはそれぞれ個別にバッテリ6-1~6-4が接続されている。すなわち、前後、左右の4つの車輪3-1~3-4それぞれに対し、駆動するための電力を供給するバッテリ6-1~6-4が個別に設けられている。これにより、バッテリ電圧や容量のためにセルの直列化又は並列化をしてセルバランスを考慮する必要がない。また、既存の高電圧の電動車両からのリサイクルバッテリを利用しやすい。すなわち、電動車両1を駆動するためのバッテリの取り扱い及びメンテナンスが容易になる。
【0020】
また、各バッテリ6-1~6-4には、それぞれ対応するBMS(Battery Management System:バッテリマネージメントシステム)16-1~16-4が設けられている。各BMS16-1~16-4は、駆動制御装置15に接続している。BMS16-1~16-4は、それぞれ対応する各バッテリ6-1~6-4の残容量(以下、「バッテリ残量」とする。)を検出し、駆動制御装置15に出力する。
【0021】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る電動車両1における駆動制御装置15の概略構成の一例を示すブロック図である。駆動制御装置15は、バッテリ残量検出部151と、操舵角検出部152と、駆動制御部153と、を備えている。
【0022】
バッテリ残量検出部151は、電動車両1の複数の駆動輪のそれぞれに対応して設けられ、対応する駆動輪を駆動する電力を供給する複数のバッテリ6-1~6-4それぞれのバッテリ残量を検出する。具体的には、バッテリ残量検出部151は、各BMS16-1~16-4から各バッテリ6-1~6-4それぞれのバッテリ残量を取得する。操舵角検出部152は、ステアリング10の操舵角(切れ角)を検出する。
【0023】
駆動制御部153は、各モータ制御部5-1~5-4に駆動指令値や回生指令値を出力することにより、各車輪3-1~3-4を駆動制御する。駆動指令値は、車輪3-1~3-4の駆動力を示す値である。回生指令値は、回生ブレーキ力を示す値である。
【0024】
例えば、駆動制御部153は、各バッテリ6-1~6-4のバッテリ残量に応じて、各駆動輪の駆動力を駆動制御する。例えば、駆動制御部153は、各バッテリの残量と判定条件とに基づいて選ばれた残量の少ないバッテリに対応する駆動輪の駆動力を減少させ、駆動力を減少させた駆動輪と車幅方向において同じ側に設置された駆動輪の駆動力を増加させるよう各駆動輪の駆動力を駆動制御する。
【0025】
具体的には、判定条件は、例えば、検出したバッテリ残量の最小値が所定の第1閾値以下であって、検出したバッテリ残量の最大値と最小値との差が所定の第2閾値以上である。当該判定条件を満たす場合に、駆動制御部153は、残量の少ないバッテリ6-1~6-4に対応する駆動輪の駆動力を減少させるよう各駆動輪の駆動力を駆動制御する。このとき、駆動制御部153は、車幅方向において同じ側に配置された駆動輪の駆動力の合計値が略等しくなるよう各駆動輪の駆動力を駆動制御する。
【0026】
例えば、駆動制御部153は、駆動輪のうち電動車両1の前方に配置された前輪に対応するバッテリ残量の平均値(以下、「前輪のバッテリ残量の平均値」とする。)と、駆動輪のうち電動車両1の後方に配置された後輪に対応するバッテリ残量の平均値(以下、「後輪のバッテリ残量の平均値」とする。)とが所定の第3閾値以上である場合に、残量の少ないバッテリ6-1~6-4に対応する駆動輪の駆動力を減少させ、駆動力を減少させた当該駆動輪と車幅方向において同じ側に設置された駆動輪の駆動力を増加させる。
【0027】
また、判定条件は、例えば、一方の対角に配置された駆動輪に対応するバッテリ残量の平均値(以下、「対角輪のバッテリ残量の平均値」とする。)と、他方の対角に配置された駆動輪に対応するバッテリ残量の平均値とが所定の第4閾値以上である。当該判定条件を満たす場合に、駆動制御部153は、平均値の小さい対角に配置された駆動輪の駆動力を減少させ、他方の対角に配置された駆動輪の駆動力を増加させる。
【0028】
また、判定条件は、例えば、前輪に対応するバッテリ残量の平均値と、後輪に対応するバッテリ残量の平均値とが所定の第3閾値未満であり、一方の対角に設けられた駆動輪に対応するバッテリ残量の平均値と、他方の対角に設けられた駆動輪に対応するバッテリ残量の平均値とが所定の第4閾値未満である。当該判定条件を満たす場合に、駆動制御部153は、残量の少ないバッテリ6-1~6-4に対応する駆動輪の駆動力を減少させ、駆動力を減少させた当該駆動輪と車幅方向において同じ側に設置された駆動輪の駆動力を増加させる。なお、駆動制御部153は、電動車両1が直進している場合にのみ、バッテリ残量に応じた駆動制御をする。すなわち、駆動制御部153は、電動車両1が旋回中のときは、バッテリ残量に応じた駆動制御をしない。
【0029】
なお、判定条件は、閾値を用いて判定する場合の他に、複数の駆動輪それぞれに対応するバッテリ同士において残量を相対的に判定する場合であってもよい。
【0030】
ここで、駆動制御部153は、各モータ制御部5-1~5-4に出力する駆動指令値を増加させることにより車輪3-1~3-4の駆動力を増加させ、駆動指令値を減少させることにより車輪3-1~3-4の駆動力を減少させる。すなわち、駆動制御部153は、各車輪3-1~3-4のバッテリ残量に応じた駆動制御をする際、回生指令値は変えない。
【0031】
駆動制御部153は、使用者が電動車両1を運転している際にアクセルを操作した操作量(以下、「アクセル操作量」とも称される)に基づき、駆動輪の駆動力を減少させる減少量及び駆動輪の駆動力を増加させる増加量を算出する。アクセル操作量は、電動車両1の使用者がアクセルペダル(不図示)を踏み込んだ量である。アクセル操作量には、使用者がアクセルペダルを踏み込むことが可能な量の上限を示す上限値がある。例えば、上限値100%に対して、使用者がアクセルペダルを100%踏み込んだ際のアクセル操作量は、100%である。また、上限値100%に対して、使用者がアクセルペダルを80%踏み込んだ際のアクセル操作量は80%である。
駆動制御部153は、アクセル操作量の上限値と現在のアクセル操作量との差分を、駆動輪の駆動力の減少量及び増加量として算出する。アクセル操作量の上限値と現在のアクセル操作量との差分は、使用者がアクセルペダルをさらに踏み込むことが可能な量を示している。即ち、当該差分は、アクセル操作量にどれだけ余裕があるかを示している。以下、当該差分は、アクセル操作量の「余裕度」とも称される。
一例として、アクセル操作量の上限値が100%であり、現在のアクセル操作量が80%であったとする。この場合、駆動制御部153は、余裕度を20%と算出する。当該余裕度20%が、駆動輪の駆動力(即ち駆動指令値)の減少量及び増加量となる。例えば、駆動輪の駆動力を減少させる場合、駆動制御部153は、当該駆動輪に対する駆動指令値を20%減少させる。一方、駆動輪の駆動力を増加させる場合、駆動制御部153は、当該駆動輪に対する駆動指令値を20%増加させる。以下、駆動指令値の増加量及び減少量は、「調整値」とも称される。
アクセル操作量は、電動車両1のアクセルペダルによって指示される駆動力の大きさを示す値でもあり、以下、「アクセル指令値」とも称される。
なお、駆動指令値は、アクセル指令値によって決まる値である。例えば、駆動指令値は、アクセル指令値と同一の値である。また、アクセル操作量の上限値は、アクセル指令値と駆動指令値の上限値でもある。
【0032】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る駆動制御装置15が実行する駆動制御処理の流れを示すフローチャートである。駆動制御装置15は、図3に示す駆動制御処理を所定時間毎に実行する。
【0033】
(ステップS100)駆動制御部153は、現在のアクセル操作量に基づき、駆動輪の駆動力の減少量及び増加量を算出する。
【0034】
(ステップS101)バッテリ残量検出部151は、各BMS16-1~16-4から各バッテリ6-1~6-4それぞれのバッテリ残量を取得する。駆動制御部153は、取得したバッテリ残量の最小値が第1閾値(例えば、50%)以下であるか否かを判定する。バッテリ残量の最小値が第1閾値より大きい場合(ステップS101:No)、処理を終了する。一方、バッテリ残量の最小値が第1閾値以下である場合(ステップS101:Yes)、処理をステップS102に進める。
【0035】
(ステップS102)駆動制御部153は、取得したバッテリ残量の最大値と最小値とを比較し、その差分が第2閾値(例えば、5%)以上であり、かつ、前輪のバッテリ残量の平均値と後輪のバッテリ残量の平均値とを比較し、その差分が第3閾値(例えば、5%)以上であるか否かを判定する。駆動制御部153は、取得したバッテリ残量の最大値と最小値との差分が第2閾値以上であり、かつ、前輪のバッテリ残量の平均値と後輪のバッテリ残量の平均値との差分が第3閾値以上である場合(ステップS102:Yes)、処理をステップS103に進める。一方、駆動制御部153は、取得したバッテリ残量の最大値と最小値との差分が第2閾値未満である、又は、前輪のバッテリ残量の平均値と後輪のバッテリ残量の平均値との差分が第3閾値未満である場合(ステップS102:No)、処理をステップS105に進める。
【0036】
(ステップS103)操舵角検出部152が、ステアリング10の切れ角(操舵角)を検出する。駆動制御部153は、検出した切れ角が第5閾値(例えば、±5度)以内であるか否かに基づき、電動車両1が直進中であるか旋回中であるかを判定する。駆動制御部153は、ステアリング10の切れ角が第5閾値以内であれば直進中であると判定し、ステアリング10の切れ角が第5閾値以内でないときは旋回中であると判定する。駆動制御部153は、直進中であると判定した場合(ステップS103:Yes)、処理をステップS104に進める。一方、駆動制御部153は、旋回中であると判定した場合(ステップS103:No)、処理を終了する。
【0037】
(ステップS104)駆動制御部153は、バッテリ残量の少ないバッテリ6-1~6-4に対応する車輪3-1~3-4の駆動指令値を、ステップS101で算出した減少量で減少させることで駆動力を減少させる。また、駆動制御部153は、当該車輪3-1~3-4と車幅方向において同じ側にある車輪3-1~3-4の駆動指令値を、ステップS101で算出した増加量で増加させることで駆動力を増加させる。このとき、駆動制御部153は、車幅方向において左右の合計駆動力が略同じになるよう駆動制御する。その後、処理を終了する。
【0038】
(ステップS105)駆動制御部153は、取得したバッテリ残量の最大値と最小値とを比較し、その差分が第2閾値以上であり、かつ、一方の対角輪のバッテリ残量の平均値と他方の対角輪のバッテリ残量の平均値とを比較し、その差分が第4閾値(例えば、5%)以上であるか否かを判定する。駆動制御部153は、取得したバッテリ残量の最大値と最小値との差分が第2閾値以上であり、かつ、一方の対角輪のバッテリ残量の平均値と他方の対角輪のバッテリ残量の平均値との差分が第4閾値以上である場合(ステップS105:Yes)、処理をステップS106に進める。一方、駆動制御部153は、取得したバッテリ残量の最大値と最小値との差分が第2閾値未満である、又は、一方の対角輪のバッテリ残量の平均値と他方の対角輪のバッテリ残量の平均値との差分が第4閾値未満である場合(ステップS105:No)、処理をステップS108に進める。
【0039】
(ステップS106)操舵角検出部152が、ステアリング10の切れ角(操舵角)を検出する。駆動制御部153は、検出した切れ角が第5閾値以内であるか否かに基づき、電動車両1が直進中であるか旋回中であるかを判定する。駆動制御部153は、直進中であると判定した場合(ステップS106:Yes)、処理をステップS107に進める。一方、駆動制御部153は、旋回中であると判定した場合(ステップS106:No)、処理を終了する。
【0040】
(ステップS107)駆動制御部153は、バッテリ残量の少ないバッテリに対応する対角輪の駆動指令値を、ステップS101で算出した減少量で減少させることで駆動力を減少させる。また、駆動制御部153は、他方の対角輪の駆動指令値を、ステップS101で算出した増加量で増加させることで駆動力を増加させる。このとき、駆動制御部153は、車幅方向において左右の合計駆動力が略同じになるよう駆動制御する。その後、処理を終了する。
【0041】
(ステップS108)駆動制御部153は、取得したバッテリ残量の最大値と最小値とを比較し、その差分が第2閾値以上であるか否かを判定する。駆動制御部153は、取得したバッテリ残量の最大値と最小値との差分が第2閾値以上である場合(ステップS108:Yes)、処理をステップS109に進める。一方、駆動制御部153は、取得したバッテリ残量の最大値と最小値との差分が第2閾値未満である場合(ステップS108:No)、処理を終了する。
【0042】
(ステップS109)操舵角検出部152が、ステアリング10の切れ角(操舵角)を検出する。駆動制御部153は、検出した切れ角が第5閾値以内であるか否かに基づき、電動車両1が直進中であるか旋回中であるかを判定する。駆動制御部153は、直進中であると判定した場合(ステップS109:Yes)、処理をステップS110に進める。一方、駆動制御部153は、旋回中であると判定した場合(ステップS109:No)、処理を終了する。
【0043】
(ステップS110)駆動制御部153は、バッテリ残量の少ないバッテリ6-1~6-4に対応する車輪3-1~3-4の駆動指令値を、ステップS101で算出した減少量で減少させることで駆動力を減少させる。また、駆動制御部153は、当該車輪3-1~3-4と車幅方向において同じ側にある車輪3-1~3-4の駆動指令値を、ステップS101で算出した増加量で増加させることで駆動力を増加させる。このとき、駆動制御部153は、車幅方向において左右の合計駆動力が略同じになるよう駆動制御する。その後、処理を終了する。
【0044】
以下、具体例を用いて、駆動制御装置15における駆動制御処理を詳細に説明する。
まず、各バッテリ6-1~6-4のバッテリ残量が図4に示す状態である場合を例に説明する。図4は、本発明の第1の実施形態に係る電動車両1が備える各バッテリ6-1~6-4のバッテリ残量の一例を示す図である。以下の説明において、左方に配置された車輪3-1及び3-3を左輪と称し、右方に配置された車輪3-2及び3-4を右輪と称する。また、左前方に設置された車輪3-1を左前輪3-1と称し、右前方に設置された車輪3-2を右前輪3-2と称し、左後方に設置された車輪3-3を左後輪3-3と称し、右後方に設置された車輪3-4を右後輪3-4と称する。また、各車輪3-1~3-4を駆動するための電力を供給するバッテリ6-1~6-4のバッテリ残量を、車輪3-1~3-4のバッテリ残量と称する。また、バッテリ残量を、%を単位とするバッテリ容量に対する割合で示す。
【0045】
また、以下の図において、「FR」は前輪を示し、「RR」は後輪を示し、「L」は左輪を示し、「R」は右輪を示し、「AVE.」は平均値を示し、「差」は差分を示している。また、「最大-最小」はバッテリ残量の最大値と最小値との差分を示し、「前輪-後輪」は前輪のバッテリ残量の平均値と後輪のバッテリ残量の平均値との差分を示し、「左輪-右輪」は左輪のバッテリ残量の平均値と右輪のバッテリ残量の平均値との差分を示す。また、「対角1-対角2」は、一方の対角線上に設置された右前輪3-2及び左後輪3-3(以下、「第1対角輪」とする。)のバッテリ残量の平均値と他方の対角線上に設置された左前輪3-1及び右後輪3-4(以下、「第2対角輪」とする。)のバッテリ残量の平均値との差分を示す。
【0046】
図4に示す例では、左前輪3-1のバッテリ残量は48%であり、右前輪3-2のバッテリ残量は50%であり、左後輪3-3のバッテリ残量は43%であり、右後輪3-4のバッテリ残量は45%である。
【0047】
駆動制御部153は、各車輪3-1~3-4のバッテリ残量を用いて、各平均値を算出する。例えば、前輪のバッテリ残量の平均値は49%であり、後輪のバッテリ残量の平均値は44%である。また、左輪のバッテリ残量の平均値は45.5%であり、右輪のバッテリ残量の平均値は47.5%である。また、第1対角輪のバッテリ残量の平均値は46.5%であり、第2対角輪のバッテリ残量の平均値は46.5%である。
【0048】
そして、駆動制御部153は、上述した駆動制御処理において閾値と比較する差分値を算出する。例えば、バッテリ残量の最大値50%と最小値43%との差分は7%である。また、前輪のバッテリ残量の平均値49%と後輪のバッテリ残量の平均値44%との差分は5%である。また、第1対角輪のバッテリ残量の平均値46.5%と第2対角輪のバッテリ残量の平均値46.5%との差分は0%である。また、左輪のバッテリ残量の平均値45.5%と右輪のバッテリ残量の平均値47.5%との差分は-2%である。
【0049】
本例では、バッテリ残量の最小値43%が第1閾値50%以下であるため、駆動制御部153は、上述したステップS101においてYesと判定し、処理をステップS102に進める。そして、バッテリ残量の最大値50%と最小値43%との差分7%が第2閾値5%以上であって、前輪のバッテリ残量の平均値49%と後輪のバッテリ残量の平均値44%との差分5%が第3閾値5%以上であるため、駆動制御部153は、上述したステップS102においてYesと判定し、ステップS104の駆動制御においてバッテリ残量の少ない後輪の駆動指令値を減少させ、前輪の駆動指令値を増加させる。
【0050】
図5は、本発明の第1の実施形態に係る駆動指令値の算出方法の説明図である。テーブルT51は、アクセル指令値が80%であるときに各車輪3-1~3-4の駆動力を均等にした場合における各車輪3-1~3-4に対する駆動指令値80%を示す。すなわち、各車輪3-1~3-4の駆動力を均等にした場合には、各車輪3-1~3-4に対する駆動指令値はアクセル指令値と等しい。アクセル指令値は、電動車両1のアクセルペダル(不図示)によって指示される駆動力の大きさを示す値である。テーブルT52は、各車輪3-1~3-4の駆動指令値の取り得る最大値100%(上限値)を示す。テーブルT53は、各車輪3-1~3-4の駆動指令値を増減させる調整値を示す。図示するように、駆動制御部153は、アクセル指令値80%と駆動指令値の最大値100%との差分20%(余裕度)を用いて各車輪3-1~3-4の駆動指令値を増減させる。具体的には、前輪の調整値は+20%(増加量)であり、後輪の調整値は-20%(減少量)である。
【0051】
図6は、本発明の第1の実施形態に係る駆動制御後の駆動指令値の一例を示す図である。図示するように、駆動制御部153は、バッテリ残量の多い前輪のバッテリ消費が多くなるように、アクセル指令値80%に調整値20%を加算して前輪の駆動指令値を100%に増加させる。また、駆動制御部153は、バッテリ残量の少ない後輪のバッテリ消費が少なくなるように、アクセル指令値80%から調整値20%を減算して後輪の駆動指令値を60%に減少させる。このとき、左輪の駆動指令値の平均値と右輪の駆動指令値の平均値とはともに80%であり等しい。なお、前輪の駆動指令値の平均値は100%であり、後輪の駆動指令値の平均値は60%であり、第1対角輪の駆動指令値の平均値は80%であり、第2対角輪の駆動指令値の平均値は80%である。
【0052】
なお、本例では、上述したステップS102においてYesとなりステップS104において駆動制御する場合について説明したが、前輪のバッテリ残量の平均値と後輪のバッテリ残量の平均値との差分が第3閾値未満であり、第1対角輪のバッテリ残量の平均値と第2対角輪のバッテリ残量の平均値との差分が第4閾値未満であり、バッテリ残量の最大値と最小値との差分が第2閾値以上であるときに、ステップS108においてYesとなりステップS110において駆動制御する場合にも、同様の処理となる。
【0053】
図7は、本発明の第1の実施形態に係る駆動制御によって想定されるバッテリ残量の一例を示す図である。上述した駆動制御を十分に長い時間行うことにより、各バッテリ6-1~6-4のバッテリ残量が図7に示す状態になることが想定される。図7に示す例では、左前輪3-1のバッテリ残量は38%であり、右前輪3-2のバッテリ残量は40%であり、左後輪3-3のバッテリ残量は37%であり、右後輪3-4のバッテリ残量は39%である。このとき、前輪のバッテリ残量の平均値は39%であり、後輪のバッテリ残量の平均値は38%である。また、左輪のバッテリ残量の平均値は37.5%であり、右輪のバッテリ残量の平均値は39.5%である。また、第1対角輪のバッテリ残量の平均値は38.5%であり、第2対角輪のバッテリ残量の平均値は38.5%である。また、バッテリ残量の最大値40%と最小値37%との差分は3%である。また、前輪のバッテリ残量の平均値39%と後輪のバッテリ残量の平均値38%との差分は1%である。また、第1対角輪のバッテリ残量の平均値38.5%と第2対角輪のバッテリ残量の平均値38.5%との差分は0%である。また、左輪のバッテリ残量の平均値37.5%と右輪のバッテリ残量の平均値39.5%との差分は-2%である。このように、図7に示す状態では、図4に示す状態に比べて、各差分が小さくなっている。よって、駆動制御装置15は、十分に長い時間駆動制御を行うことによって、各車輪3-1~3-4のバッテリ残量のバラツキを低減させ、電動車両1の航続距離を延長することができる。
【0054】
続いて、各バッテリ6-1~6-4のバッテリ残量が図8に示す状態である場合を例に説明する。図8は、本発明の第1の実施形態に係る電動車両1が備える各バッテリ6-1~6-4のバッテリ残量の他の例を示す図である。図8に示す例では、左前輪3-1のバッテリ残量は43%であり、右前輪3-2のバッテリ残量は50%であり、左後輪3-3のバッテリ残量は48%であり、右後輪3-4のバッテリ残量は45%である。このとき、前輪のバッテリ残量の平均値は46.5%であり、後輪のバッテリ残量の平均値は46.5%である。また、左輪のバッテリ残量の平均値は45.5%であり、右輪のバッテリ残量の平均値は47.5%である。また、第1対角輪のバッテリ残量の平均値は49%であり、第2対角輪のバッテリ残量の平均値は44%である。また、バッテリ残量の最大値50%と最小値43%との差分は7%である。また、前輪のバッテリ残量の平均値46.5%と後輪のバッテリ残量の平均値46.5%との差分は0%である。また、第1対角輪のバッテリ残量の平均値49%と第2対角輪のバッテリ残量の平均値44%との差分は5%である。また、左輪のバッテリ残量の平均値45.5%と右輪のバッテリ残量の平均値47.5%との差分は-2%である。
【0055】
本例では、バッテリ残量の最小値43%が第1閾値50%以下であるため、駆動制御部153は、上述したステップS101においてYesと判定し、処理をステップS102に進める。そして、前輪のバッテリ残量の平均値46.5%と後輪のバッテリ残量の平均値46.5%との差分は0%であるため、駆動制御部153は、上述したステップS102においてNoと判定し、処理をステップS105に進める。そして、第1対角輪のバッテリ残量の平均値49%と第2対角輪のバッテリ残量の平均値44%との差分5%が第4閾値5%以上であるため、駆動制御部153は、上述したステップS105においてYesと判定し、ステップS107においてバッテリ残量の少ない第2対角輪の駆動指令値を減少させ、第1対角輪の駆動指令値を増加させる。
【0056】
図9は、本発明の第1の実施形態に係る駆動指令値の算出方法の説明図である。本例においてもアクセル指令値は80%であり、駆動指令値の最大値は100%(上限値)である。テーブルT93は、各車輪3-1~3-4の駆動指令値を増減させる調整値を示す。図示するように、駆動制御部153は、アクセル指令値80%と駆動指令値の最大値100%との差分20%(余裕度)を用いて各車輪3-1~3-4の駆動指令値を増減させる。具体的には、第1対角輪の調整値は+20%(増加量)であり、第2対角輪の調整値は-20%(減少量)である。
【0057】
図10は、本発明の第1の実施形態に係る駆動制御後の駆動指令値の一例を示す図である。図示するように、駆動制御部153は、バッテリ残量の多い第1対角輪のバッテリ消費が多くなるように、アクセル指令値80%に調整値20%を加算して第1対角輪の駆動指令値を100%に増加させる。また、駆動制御部153は、バッテリ残量の少ない第2対角輪のバッテリ消費が少なくなるように、アクセル指令値80%から調整値20%を減算して第2対角輪の駆動指令値を60%に減少させる。このとき、左輪の駆動指令値の平均値と右輪の駆動指令値の平均値とはともに80%であり等しい。なお、前輪の駆動指令値の平均値は80%であり、後輪の駆動指令値の平均値は80%であり、第1対角輪の駆動指令値の平均値は100%であり、第2対角輪の駆動指令値の平均値は60%である。
【0058】
図11は、本発明の第1の実施形態に係る駆動制御によって想定されるバッテリ残量の一例を示す図である。上述した駆動制御を十分に長い時間行うことにより、各バッテリ6-1~6-4のバッテリ残量が図11に示す状態になることが想定される。図11に示す例では、左前輪3-1のバッテリ残量は37%であり、右前輪3-2のバッテリ残量は40%であり、左後輪3-3のバッテリ残量は38%であり、右後輪3-4のバッテリ残量は39%である。このとき、前輪のバッテリ残量の平均値は38.5%であり、後輪のバッテリ残量の平均値は38.5%である。また、左輪のバッテリ残量の平均値は37.5%であり、右輪のバッテリ残量の平均値は39.5%である。また、第1対角輪のバッテリ残量の平均値は39%であり、第2対角輪のバッテリ残量の平均値は38%である。また、バッテリ残量の最大値40%と最小値37%との差分は3%である。また、前輪のバッテリ残量の平均値38.5%と後輪のバッテリ残量の平均値38.5%との差分は0%である。また、第1対角輪のバッテリ残量の平均値39%と第2対角輪のバッテリ残量の平均値38%との差分は1%である。また、左輪のバッテリ残量の平均値37.5%と右輪のバッテリ残量の平均値39.5%との差分は-2%である。このように、図11に示す状態では、図8に示す状態に比べて、各差分が小さくなっている。よって、駆動制御装置15は、十分に長い時間駆動制御を行うことによって、各車輪3-1~3-4のバッテリ残量のバラツキを低減させ、電動車両1の航続距離を延長することができる。
【0059】
このように、本実施形態における電動車両1では、前後、左右の4つの車輪3-1~3-4それぞれに対し、駆動するための電力を供給するバッテリ6-1~6-4が個別に設けられている。これにより、バッテリ電圧や容量のためにセルの直列化又は並列化をしてセルバランスを考慮する必要がない。また、バッテリ6-1~6-4は60V未満の低電圧バッテリであるため、既存の高電圧の電動車両からのリサイクルバッテリを利用しやすい。すなわち、電動車両1を駆動するためのバッテリの取り扱い及びメンテナンスが容易になる。
また、これにより、電動車両における廃棄物の発生抑制に寄与することができるので、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標11「包摂的で安全かつ強靭(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を再現する」及び目標12「持続可能な生産消費形態を確保する」に貢献することが可能となる。
【0060】
また、本実施形態における電動車両1では、前後、左右の4つの車輪3-1~3-4が、それぞれバッテリ6-1~6-4まで完全に独立した4系統で制御されるため、トルクベクタリングによる小回り性を向上することができる。また、完全4系統であるため、冗長機能に優れる。また、重量配分を均等にすることができる。すなわち、電動車両1は、4輪の駆動力や制動力を制御し、効率的で最適な走行を実現できる。
【0061】
また、本実施形態における電動車両1では、電動モータ8-1~8-4がマグネットを使用しないSRモータであるため、マグネットによる逆起電力が発生しない。よって、電動車両1では、引き釣りトルクもなく、力行/回生/フリーラン等の切換え制御が容易である。また、着磁機の大電力抑制によりCO2(二酸化炭素)削減効果がある。また、電動モータ8-1~8-4の分解、リサイクルが容易である。また、熱減磁による性能劣化やマグネット供給リスクなく信頼性が高い。
また、これにより、電動車両における温室効果ガスの排出量の削減及び電動車両における廃棄物の発生抑制に寄与することができるので、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標7「全ての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」、目標11「包摂的で安全かつ強靭(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を再現する」、目標12「持続可能な生産消費形態を確保する」、及び目標13「気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる」に貢献することが可能となる。
【0062】
また、本実施形態における電動車両1では、バッテリ6-1~6-4が交換式のバッテリであるため、自宅や配送センタ等で交換を行うことにより、充電時間のロスを低減することができる。
また、これにより、電動車両における効率的運用に寄与することができるので、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標7「全ての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」に貢献することが可能となる。
【0063】
図12は、本発明の第1の実施形態に係る電動車両1の適用例を示す図である。本例では、荷物を配送する配送車両に電動車両1を適用する場合について説明する。配送車両は、例えば、軽貨物車両である。電動車両1には、4つの車輪3-1~3-4それぞれに対応する4つのバッテリ6-1~6-4が搭載されている。本例では、各バッテリ6-1~6-4は電圧45Vの交換式の低電圧バッテリである。よって、電動車両1全体のシステム電圧は45V×4である。また、バッテリ6-1~6-4の容量は、1配送40km(キロメートル)~50km走行できる容量である。以下、4つのバッテリ6-1~6-4を1組のバッテリと称する。なお、電動車両1に1又は複数のバッテリ6を非常用電源EPとして積み込み、持ち運んで利用することも可能である。
【0064】
バッテリ6-1~6-4は、自宅H0や配送センタPCで充電可能である。例えば、電動車両1の使用者は、配送センタPCで荷物を集荷する際に、使用済の1組のバッテリUBを充電済の1組のバッテリCBと交換する。配送センタPCには、使用済の1組のバッテリUBを充電器BCの方向A1に向かって流すラインL1と、充電済の1組のバッテリCBが充電器BCの方から電動車両1の方向A2に向かって流れるラインL2と、配送する荷物が電動車両1の方向A3に向かって流れるラインL3とがある。ラインL2には、充電器BCで既に充電された充電済のバッテリCBが1又は複数置いてある。例えば、使用者は、使用済の1組のバッテリUBをラインL1に積み下ろす。使用済の1組のバッテリUBは、ラインL1上を流れ、充電器BC内に格納されると充電される。続いて、使用者は、充電済の1組のバッテリCBをラインL2から積み上げ、電動車両1に搭載する。その後、使用者は、配送する荷物をラインL3から電動車両1に積み込む。配送センタPCを出た電動車両1は、配送先H1~H5へ荷物を配送する。
【0065】
このように、配送センタPCにおいて、使用済の1組のバッテリUBを、既に充電されている充電済の1組のバッテリCBと交換することができるため、充電のために電動車両1を使用することができない時間を削減することができる。また、自宅H0や配送センタPCでバッテリ6-1~6-4を充電することができるため、既存インフラを利用することができる。
また、これにより、電動車両における効率的運用に寄与することができるので、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標7「全ての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」に貢献することが可能となる。
また、電動車両1では、必要な容量のバッテリ6-1~6-4を搭載することにより、バッテリサイズ、重量、及びコストを低減することができる。
また、これにより、電動車両における資源使用量のミニマム化に寄与することができるので、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「強靭(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの促進を図る」に貢献することが可能となる。
【0066】
また、本実施形態における電動車両1は、複数の車輪3-1~3-4のそれぞれに対応して設けられ、対応する車輪3-1~3-4を駆動する電力を供給する複数のバッテリ6-1~6-4と、各バッテリ6-1~6-4それぞれの残量を検出するバッテリ残量検出部151と、各バッテリの残量と判定条件とに基づいて選ばれた残量の少ないバッテリに対応する駆動輪の駆動力を減少させ、駆動力を減少させた駆動輪と車幅方向において同じ側に設置された駆動輪の駆動力を増加させるよう各車輪3-1~3-4の駆動力を駆動制御する駆動制御部153とを備える。
これにより、車輪3-1~3-4をそれぞれ独立したバッテリ6-1~6-4で駆動する電動車両1において、各バッテリ6-1~6-4の残量のバランスがよくなるように駆動を制御することで、各バッテリ6-1~6-4の残量の差を低減し、航続距離を延長することができる。
また、これにより、電動車両における省エネルギー化及びバッテリの長寿命化に寄与することができるので、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標7「全ての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」、及び目標9「強靭(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの促進を図る」に貢献することが可能となる。
【0067】
なお、本実施形態では、4つの車輪をそれぞれ独立したバッテリで駆動する場合について説明したが、2つのモータで前輪もしくは後輪を駆動する車両や、2つのバッテリで前輪もしくは後輪を駆動する車両の場合にも適用できる。
【0068】
上述した実施形態におけるバッテリ残量検出部、操舵角検出部、駆動制御部をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0069】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0070】
1…電動車両、3,3-1~3-4…車輪、4,4-1~4-4…駆動ユニット、5,5-1~5-4…モータ制御部、6,6-1~6-4…バッテリ、8,8-1~8-4…電動モータ、9,9-1~9-4…伝達ギア、11,11-1~11-4…車軸、15…駆動制御装置、151…バッテリ残量検出部、152…操舵角検出部、153…駆動制御部、16,16-1~16-4…BMS
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