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特開2022-144837鉄道車両用トラバーサ及びトングレールユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022144837
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】鉄道車両用トラバーサ及びトングレールユニット
(51)【国際特許分類】
   B61J 1/10 20060101AFI20220926BHJP
   E01B 26/00 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
B61J1/10 B
E01B26/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021046019
(22)【出願日】2021-03-19
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和2年3月23日に大宮総合車両センターへ搬入
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】祖田 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】水落 雅貴
(57)【要約】
【課題】トングレールを備える鉄道車両用トラバーサにおいて、トングレール経由でワークを移動させる場合に、作業場のレール高さが不揃いであっても、トングレールの変形や破損を抑制すること。
【解決手段】床面レール(104)を備える基台部(2)と、基台部(2)に配設されたトングレール(10)と、を備え、複数のレール(R1)の間を移動レール(R2)に沿って移動する鉄道車両用トラバーサ(1)において、トングレール(10)を主トング(11)と、先端トング(12)とに分割し、主トング(11)の後端部(11a)を基台部(2)に取り付ける。先端トング(12)は、後端部(12a)が主トング(11)の先端部(11c)に回動可能に保持されており、レール(R1)の高さに応じて主トング(11)に対して回動し、レール当接面(12u)をレール(R1)に当接させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面レールを備える基台部と、前記基台部に配設されたトングレールと、を備え、複数のレールの間を移動レールに沿って移動する鉄道車両用トラバーサにおいて、
前記トングレールは、主トングと、先端トングとに分割されており、
前記主トングは、後端部が前記基台部に保持され、
前記先端トングは、後端部から先端部に向かうにつれて厚さが薄くなる先細り形状に形成され、後端部が前記主トングの先端部に回動可能に保持されており、前記レールに当接可能なレール当接面を有する、
ことを特徴とする鉄道車両用トラバーサ。
【請求項2】
請求項1に記載する鉄道車両用トラバーサにおいて、
前記先端トングが特定の位置を超えて前記レールの位置する側に回動することを制限する制限機構を有し、
前記制限機構は、前記特定の位置を調整可能である、
ことを特徴とする鉄道車両用トラバーサ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載する鉄道車両用トラバーサにおいて、
前記主トングが前記基台部に回動可能に保持されており、
前記主トングを前記レールと反対側に付勢する付勢機構を有し、
前記トングレールが使用されていない場合、前記主トングの上面が前記床面レールの上面に対して傾斜する第2傾斜角度は、前記先端トングの上面が前記主トングの上面に対して傾斜する第1傾斜角度より小さい、
ことを特徴とする鉄道車両用トラバーサ。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか1つに記載する鉄道車両用トラバーサにおいて、
前記複数のレールは、それぞれ、レール開始点と、前記レール開始点から所定距離離れたレール変曲点との間に勾配が設けられており、
前記先端トングは、前記レールの前記勾配に応じて前記主トングに対して回動し、前記レール当接面を前記レールに当接させる、
ことを特徴とする鉄道車両用トラバーサ。
【請求項5】
複数のレールの間を移動レールに沿って移動する鉄道車両用トラバーサに設けられた床面レールの延長線上に、トングレールを配置した状態で、前記鉄道車両用トラバーサに取り付けられるトングレールユニットにおいて、
前記トングレールは、主トングと、先端トングとに分割されており、
前記主トングは、後端部が前記鉄道車両用トラバーサに保持され、
前記先端トングは、先細り形状に形成され、後端部が前記主トングの先端部に回動可能に保持されており、前記複数のレールに当接可能なレール当接面を有する、
ことを特徴とするトングレールユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術分野は、ワークを搬送する鉄道車両用トラバーサ及びトングレールユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、鉄道車両の分解検査、修繕等を行うためには、鉄道車両の車体と台車とを分離する必要があり、鉄道車両の入場時に、本線レール上を走行する車両台車から、施設内に敷設したレール上を走行するための仮台車に交換する作業が行われる。そして、車体と台車はそれぞれ分解検査および必要なメンテナンスを施された後に鉄道車両に履かせた仮台車を車両台車に交換する作業が行われる。この際、検査、修繕時の鉄道車両の移動や、交換を終えて、不要となった仮台車を返送ラインへ移送、または必要となった仮台車を移送する手段として、鉄道車両用トラバーサを使用する。
【0003】
例えば図11に示すように、鉄道車両用トラバーサ100を、鉄道車両の分解検査、修繕等を行う作業場に向けて移動レールR2上を移動させ、該当するレールR1上に待機する鉄道車両101と対面する位置で停止させる。それから、鉄道車両用トラバーサ100の側端部に装着したトングレール110の先端部をレールR1の上面に当接させる。これにより、当該レールR1上に待機する鉄道車両101の仮台車102b、103bが、トングレール110を経由して鉄道車両用トラバーサ100の床面レール104上へ移動可能な状態になる。トングレール110は、一般的に、先端部が先細り形状に形成されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-185905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば図11に示すように、鉄道車両の分解検査、修繕等を行う作業場には、移動レールR2に対して複数(例えば50本)の番線が設けられることがある。従来、各番線のレールR1の高さが一定であると想定し、トングレール110を鉄道車両用トラバーサ100に設けていた。しかし、実際には、敷地の状態や使用状況などにより、各レールR1の高さにばらつきがあった。この場合、レールR1の高さによっては、先細り形状に形成されたトングレール110の先端部が、レールR1に適切に当接できず、ワーク移動時に塑性変形したり、破損したりすることがあった。
【0006】
本発明は、トングレールを備える鉄道車両用トラバーサにおいて、トングレール経由でワークを移動させる場合に、作業場のレール高さが不揃いであっても、トングレールの変形や破損を抑制できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、(1)床面レールを備える基台部と、前記基台部に配設されたトングレールと、を備え、複数のレールの間を移動レールに沿って移動する鉄道車両用トラバーサにおいて、前記トングレールは、主トングと、先端トングとに分割されており、前記主トングは、後端部が前記基台部に保持され、前記先端トングは、後端部から先端部に向かうにつれて厚さが薄くなる先細り形状に形成され、後端部が前記主トングの先端部に回動可能に保持されており、前記レールに当接可能なレール当接面を有する、ことを特徴とする。
【0008】
上記構成の鉄道車両用トラバーサは、複数のレールの高さが異なる場合でも、レールの高さに応じて先端トングが主トングに対して回動することで、レール当接面を各レールに当接させることができる。これにより、トングレール経由でワークを移動させる場合に、先細り形状のトングレールが変形したり、破損したりしにくくなる。
【0009】
(2)(1)に記載する鉄道車両用トラバーサにおいて、前記先端トングが特定の位置を超えて前記レールの位置する側に回動することを制限する制限機構を有し、前記制限機構は、前記特定の位置を調整可能である、ことが好ましい。
【0010】
上記構成の鉄道車両用トラバーサは、先端トングが特定の位置を超えてレールの位置する側に回動することを制限する制限機構が、その特定の位置を調整可能なので、例えば、複数のレールの中で最も高さの高いレールに合わせて特定の位置を調整すれば、先端トングが地面に擦れることがない。
【0011】
(3)(1)または(2)に記載する鉄道車両用トラバーサにおいて、前記主トングが前記基台部に回動可能に保持されており、前記主トングを前記レールと反対側に付勢する付勢機構を有し、前記トングレールが使用されていない場合、前記主トングの上面が前記床面レールの上面に対して傾斜する第2傾斜角度が、前記先端トングの上面が前記主トングの上面に対して傾斜する第1傾斜角度より小さい、ことが好ましい。
【0012】
上記構成の鉄道車両用トラバーサは、複数のレールの高さが異なる場合に、レールの高さに応じて先端トングと主トングが個々に回動し、先端トング当接面を各レールに確実に当接させることができる。このとき、第1傾斜角度と第2傾斜角度が相対的に変化し、主トングの傾斜が大きくなる。しかし、トングレール未使用時において第2傾斜角度が第1傾斜角度より小さくされているので、ワーク移動時における主トングの傾斜を抑え、トングレールを経由してワークを移動する際の作業負荷を抑制できる。
【0013】
(4)(1)から(3)の何れか1つに記載する鉄道車両用トラバーサにおいて、前記複数のレールは、それぞれ、レール開始点と、前記レール開始点から所定距離離れたレール変曲点との間に勾配が設けられており、前記先端トングは、前記レールの前記勾配に応じて前記主トングに対して回動し、前記レール当接面を前記レールに当接させる、ことが好ましい。
【0014】
上記構成の鉄道車両用トラバーサは、レールの勾配に応じて先端トングが主トングに対して回動し、レール当接面をレールに当接させやすい。
【0015】
(5)複数のレールの間を移動レールに沿って移動する鉄道車両用トラバーサに設けられた床面レールの延長線上に、トングレールを配置した状態で、前記鉄道車両用トラバーサに取り付けられるトングレールユニットにおいて、前記トングレールは、主トングと、先端トングとに分割されており、前記主トングは、後端部が前記鉄道車両用トラバーサに保持され、前記先端トングは、先細り形状に形成され、後端部が前記主トングの先端部に回動可能に保持されており、前記複数のレールに当接可能なレール当接面を有する、ことを特徴とする。
【0016】
上記構成のトングレールは、複数のレールの高さが異なる場合でも、ワークが待機しているレールの高さに応じて先端トングが主トングに対して回動することで、レール当接面を各レールに当接させることができる。これにより、トングレール経由でワークを移動させる場合に、先細り形状のトングレールが変形したり、破損したりしにくくなる。
【発明の効果】
【0017】
従って、本発明によれば、トングレールを備える鉄道車両用トラバーサにおいて、トングレール経由でワークを移動させる場合に、作業場のレール高さが不揃いであっても、トングレールの変形や破損を抑制できる技術を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一態様に係る鉄道用トラバーサの正面図である。
図2図1に示す鉄道用トラバーサの平面図である。
図3】トングレールユニットの外観斜視図である。
図4】トングレールユニットの平面図である。
図5】トングレールユニットの正面図である。
図6図4のA部拡大図である。
図7図4のB部拡大図である。
図8図5のC部拡大図である。
図9】トングレールとレールとの位置関係の一例を示す図である。
図10】トングレールとレールとの位置関係の別例を示す図である。
図11】鉄道車両用トラバーサと周辺のレールの平面図である。
図12】従来のトングレールとレールとの位置関係の一例を示す図である。
図13】従来のトングレールとレールとの位置関係の別例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の鉄道車両用トラバーサおよびトングレールユニットの一実施形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本明細書は、トングレールユニットが取り付けられた鉄道車両用トラバーサを開示する。
【0020】
<鉄道車両用トラバーサの概略構成>
まず、鉄道車両用トラバーサの概略構成を説明する。図1は、本発明の一態様に係る鉄道用トラバーサ1(以下「トラバーサ1」とする)の正面図である。図2は、図1に示すトラバーサ1の平面図である。なお、従来技術と同じ構成には、図11と同じ符号を使用する。トラバーサ1は、基台部2、側壁部3、及び屋根部4よりなり、基台部2の端部側に設けられた端部開口5からワークWを搬入できる。ワークWは、例えば、鉄道車両、車両台車、仮台車である。
【0021】
図1に示すように、基台部2の下部には、横行用車輪6が複数備えられている。横行用車輪6は、鉄道車両の分解検査、修繕等の作業場の敷地内に敷設された移動レールR2の上を走行するために設けられ、図示しないモータが接続されることでトラバーサ1を自走させることができる。トラバーサ1は、端部開口5に対応する側端部に、トングレールユニット7が装着されている。
【0022】
図2に示すように、基台部2の側端部には、取付部2aが水平方向に延設されている。基台部2の上部には、2本の床面レール104が配設されている。床面レール104は、取付部2aの端まで配置されている。トングレールユニット7は、2本のトングレール10を備え、それらが床面レール104の延長線上に配置されるように、取付部2aに装着されている。
【0023】
図1に示すように、地上には、移動レールR2と直交するようにレールR1が敷設されている。レールR1は、床面レール104より低い位置に配置されている。トラバーサ1は、床面レール104とレールR1との高低差に対して傾斜するようにトングレール10が配設されている。ワークWは、トングレール10を経由してトラバーサ1とレールR1との間で移動される。
【0024】
<トングレールユニットの構成>
続いて、トングレールユニット7の構成を説明する。図3は、トングレールユニット7の外観斜視図である。トングレールユニット7は、2本のトングレール10の外側に、付勢機構30がそれぞれ配設されている。トングレール10は、主トング11と先端トング12とに分割されている。先端トング12は、後端部から先端部に向かうにつれて厚さが薄くなる先細り形状に形成され、主トング11に回動可能に保持されている。2本のトングレール10は、連結バー21を介して主トング11同士が結合され、連結バー22を介して先端トング12同士が結合されることで、一体化されている。主トング11と先端トング12との連結構造、及び、付勢機構30については後述する。
【0025】
図4は、トングレールユニット7の平面図である。図5は、トングレールユニット7の正面図である。図4及び図5に示すように、トングレール10は、主トング11の後端部11aにボス部材18(図7図8参照)を介してトングレール取付ピン17が配設され、そのトングレール取付ピン17を介して基台部2の取付部2aに回動可能に取り付けられる。付勢機構30は、取付部2aにボルト39を用いて固定される。付勢機構30は、可動ブラケット42を介してトングレール10を支えている。
【0026】
<主トング11と先端トング12との連結構造について>
図6は、図4のA部拡大図である。主トング11の先端部11cには、係合溝11dが形成されている。係合溝11dは、主トング11の先端面から、主トング11の全長方向に沿って形成されており、主トング11の上面(以下「主トング上面」とする)11s(図5参照)と下面(以下「主トング下面」とする)11u(図5参照)とに開口している。先端トング12の後端部12aには、係合溝11dに挿入される係合凸部12bが設けられている。ヒンジピン13が主トング11の先端部11cと係合凸部12bに貫き通した状態で配置されることで、先端トング12は、ヒンジピン13を中心に回動できるように主トング11に保持される。
【0027】
図5に示すように、先端トング12は、自重により、主トング11に対してヒンジピン13を中心に正方向(図中反時計回り)K1に回転するモーメントを発生するが、先端トング12の正方向K1への回動はストップピン14と調整ねじ15により制限される。ストップピン14と調整ねじ15は「制限機構」の一例である。正方向K1は「レールの位置する側」の一例である。
【0028】
すなわち、図6に示すように、ストップピン14は、先端トング12の外側側面に配設されている。調整ねじ15は、ストップピン14と対応する位置にて、主トング11の外側側面に配設されている。図5に示すように、先端トング12は、ストップピン14が調整ねじ15に当接される位置まで、自重で正方向K1に回転できる。ストップピン14と調整ねじ15が当接することで正方向K1への回動を制限されているときの先端トング12の位置を、「先端トング初期位置」とする。先端トング初期位置は「特定の位置」の一例である。
【0029】
先端トング初期位置は、調整ねじ15のナット15aの締め込み量を調整することで、調整される。先端トング初期位置を調整することで、先端トング12の上面(以下「先端トング上面」とする)12sが主トング上面11sに対して傾斜する第1傾斜角度θ1も調整される。第1傾斜角度θ1は、手押しでワークWを移動するのに容易な角度であることが望ましく、例えば6°以上8°以下の範囲内で設定することが好ましい。なお、先端トング12は、ヒンジピン13を中心に先端トング初期位置から逆方向(図中時計回り)K2へ回動できる。逆方向K2は「レールと反対側」の一例である。
【0030】
<付勢機構30の構成について>
図3図5に示すように、付勢機構30は、固定ブラケット31と、複数のばね組立41と、可動ブラケット42と、ばね力調整ねじ43と、を備える。
【0031】
図7は、図4のB部拡大図である。図8は、図5のC部拡大図である。固定ブラケット31は、上プレート32と下プレート33とが補強プレート34,35,36および固定プレート37を介して連結され、下プレート33にばね組立41が固定されている。固定ブラケット31は、図4に示すように、トングレール10に固定されず、基台部2の取付部2aにボルト39を用いて固定される。
【0032】
図7および図8に示すように、ばね組立41は、ばねケース412にばね411が収容されている。ばね411の上方には、ばね押さえ413がばね411の圧縮方向あるいは伸張方向に沿って移動可能に配設されている。
【0033】
図3および図4に示すように、可動ブラケット42は、ばね組立41を上方から覆うように配設されている。可動ブラケット42は、基台部2の取付部2aに固定されず、主トング11に固定ボルト49を用いて固定される。図7および図8に示すように、ばね力調整ねじ43は、ばね組立41に対応する位置にて可動ブラケット42に固定されている。ばね力調整ねじ43は、先端部がばね押さえ413に常時突き当てられている。
【0034】
付勢機構30は、ばね411のばね力を、ばね押さえ413とばね力調整ねじ43と可動ブラケット42とを介してトングレール10に伝達し、トングレール10の主トング11を逆方向K2に付勢する。すなわち、付勢機構30は、トングレール10の主トング11をレールR1と反対側に付勢している。主トング11は、トングレール10に正方向K1(レールR1の位置する側)への荷重が作用していない場合、付勢機構30の付勢力とトングレール10の自重とがバランスする位置で、トングレール取付ピン17を中心に正方向K1へ回動する動作を制限される。なお、このときの主トング11の位置を「主トング初期位置」とする。
【0035】
図5に示すように、トングレール10は、付勢機構30のばね411を圧縮させながら正方向K1に回転することで、主トング上面11sが床面レール104の上面104sに対して傾斜する第2傾斜角度θ2を変位させる。主トング11と先端トング12がそれぞれ主トング初期位置と先端トング初期位置にあるとき、第2傾斜角度θ2は、第1傾斜角度θ1より小さく設定されている。
【0036】
<先端トング初期位置の調整について>
例えば、上述した図11に示すように、移動レールR2に対して複数の番線が設けられている場合、敷地の状態や使用状況などにより、番線を構成するレールR1(R1a,R1b,R1c)の高さがばらつくことがある。
【0037】
具体的に説明すると、例えば図9及び図10に示すように、レールR1は、トラバーサ1の移動時にトングレール10との干渉を防ぐため、レール開始点P1と、レール開始点P1から所定距離離れ、略水平に敷設されたレールR1がレール開始点P1に向けて傾斜し始めるレール変曲点P2と、の間に勾配が設けられ、上面Sが移動レールR2の上面に対して傾斜している。本形態では、図9に示すレールR1aは、複数のレールR1の中で、レール開始点P1aとレール変曲点P2aとの間で上面Saが移動レールR2の上面に対して傾斜する勾配θ101aが、最も小さいものとする。また例えば図10に示すレールR1bは、複数のレールR1の中で、レール開始点P1bとレール変曲点P2bとの間で上面Sbが移動レールR2の上面に対して傾斜する勾配θ101bが、最も大きいものとする。この場合、レールR1a,R1bでは、移動レールR2に対する上面Sa,Sbの位置に、高低差が生じる。
【0038】
トングレール10は、複数のレールR1の中で高さが高いレールR1aに対して、先端トング12の下面(以下「先端トング下面」とする)12uがトラバーサの移動による振動でも接触しない程度の僅かな隙間を持つように、先端トング初期位置が調整ねじ15によって調整されている。先端トング下面12uは「レール当接面」の一例である。
【0039】
<トラバーサの動作説明>
続いて、トラバーサ1の動作を説明する。トラバーサ1は、従来の鉄道車両用トラバーサ100と同様、図11に示す移動レールR2に沿って移動する。このとき、トングレール10は、主トング11と先端トング12をそれぞれ主トング初期位置と先端トング初期位置に配置しており、各レールR1に干渉せずに移動する。トラバーサ1は、例えば、ワークWが待機するレールR1aで停止し、トングレール10を経由してワークWがレールR1aから床面レール104に移動される。
【0040】
従来のトングレール110は、1部品で構成され、複数のレールR1について上面Sの高さが一定、あるいは、勾配θ101が一定と想定し、鉄道車両用トラバーサ100に取り付けられていた。そのため、図12に示すように、従来のトングレール110は、複数のレールR1の中で高さが高い、あるいは、勾配θ101aが最も小さいレールR1aに対して、上下方向の厚みが最も薄い先端部分111aを上面Saから浮き上らせた状態で、先端部111の下面111uを上面Saに当接させることがあった。この状態のトングレール110を経由してワークWをレールR1aから鉄道車両用トラバーサ100に移動させようとすると、ワークWが先端部111に引っ掛かって、トングレール110に載らない虞があった。また、先端部111がワークWの重みで塑性変形したり、破損したりする虞があった。
【0041】
しかし、本形態のトングレール10は、図9に示すように、複数のレールR1の中で高さが高いレールR1aに対応して、先端トング12の先端トング初期位置が調整されている。そのため、トングレール10を経由してワークWをレールR1aから床面レール104へ移動させる場合、トングレール10の先端部がレールR1aから浮き上がることなく、先端トング下面12u全体がレールR1aの上面Saに当接する。よって、ワーク移動時に、ワークWがレールR1aから先端トング12へスムーズに移動できる。また、トングレール10は、ワークWの荷重を先端トング下面12u全体で受けるので、先端トング12が塑性変形したり、破損したりしない。
【0042】
ここで、先端トング12は、係合凸部12bを主トング11の係合溝11dに係合させた状態でヒンジピン13を介して主トング11に係合されている。そのため、先端トング下面12uがレールR1aに当接する場合、主トング11の先端部11cもレールR1aの上面Saに当接する。ワーク移動時、先端トング12と主トング11は、先端トング初期位置と主トング初期位置をそれぞれ維持しており、第1傾斜角度θ1は、第2傾斜角度θ2より大きい。つまり、先端トング12が主トング11より傾斜が大きい。しかし、ワークWは、仮台車の動力または外部装置による引き込み(車両台車)により、主トング11まで移動できる。そして、主トング11では、傾斜が緩やかなので、従来のトングレール110のように一定の角度で傾斜する場合より小さい力で、ワークWを床面レール104まで移動させることができる。よって、トングレール10は、従来のトングレール110と比べ、ワークWをトラバーサ1に載せる際の作業負担を軽減できる。
【0043】
またトラバーサ1は、ワークWがレールR1bにて待機している場合、レールR1bまで移動する。この場合も、ワークWは、トングレール10を経由してレールR1bから床面レール104へ移動される。
【0044】
図13に示すように、従来のトングレール110は、複数のレールR1の中で高さが低い、あるいは、勾配θ101bが最も大きいレールR1bに対して、先端部分111aのみを上面Sbに当接させ、先端部分111aより後方の下面111uを上面Sbに当接させないことがあった。この場合、従来のトングレール110は、ワーク移動時に、先端部111が塑性変形したり、破損したりする虞があった。
【0045】
しかし、本形態のトングレール10は、レールR1bの上面Sbに対応して先端トング12が主トング11に対して逆方向K2(図5参照)に回動し、先端トング下面12uを上面Sbに当接させることができるので、ワーク移動時に塑性変形したり、破損したりしにくい。
【0046】
すなわち、例えば図10の二点鎖線に示すように、トングレール10は、複数のレールR1の中で高さが高いレールR1aに対応して初期位置を設定されているので、ワークWを移動させる前、レールR1bの上面Sbから離間することがある。トングレール10は、ワークWの移動によりワークの荷重がヒンジピン13側に作用し、先端トング12の最先端部のみをレールR1bの上面Sbに当接させると、最先端部にレールR1bの反力が逆方向K2に作用する。これにより、先端トング12は、ヒンジピン13を中心として先端トング初期位置から逆方向K2に回動する。このとき、先端トング12の後端部12aは、ヒンジピン13を介して主トング11の先端部11cを正方向K1に押圧する。そのため、主トング11は、付勢機構30のばね411を圧縮しながら、トングレール取付ピン17を中心に正方向K1に回動する。先端トング下面12uがレールR1bの上面Sbに当接すると、先端トング12がそれ以上逆方向K2に回動しなくなり、主トング11も、正方向K1に回動しなくなる。この状態で、ワークWがレールR1bから床面レール104に移動される。トングレール10は、ワーク移動時、先端トング下面12uでワークWの荷重を受けるので、塑性変形したり、破損したりしにくい。
【0047】
ここで、先端トング12が逆方向K2に回動したことで、第1傾斜角度θ1が小さくなる一方、主トング11が正方向K1に回動したことで、第2傾斜角度θ2が大きくなる。つまり、先端トング12と主トング11の回動に対応して第1傾斜角度θ1と第2傾斜角度θ2が相対的に変化する。第1傾斜角度θ1が小さくなることで、先端トング上面12sがレールR1bの上面Sbに対して緩やかに接続し、ワークWをレールR1bから先端トング12へ載せやすい。また、トングレール未使用時において第2傾斜角度θ2が第1傾斜角度θ1より小さくされているので、ワーク移動時に第1傾斜角度θ1と第2傾斜角度θ2が相対的に変化し、主トング11の傾斜が大きくなっても、その傾斜は、従来のトングレール110がレールR1bと床面レール104との高低差に対して傾斜する勾配と同程度に抑えることができる。しかも、主トング11が従来のトングレール110より短いので、当該傾斜におけるワークの移動距離が短くて済む。よって、トングレール10は、従来のトングレール110と比べ、ワークWをトラバーサ1に載せる際の作業負担を抑制できる。
【0048】
ワークWが床面レール104へ移動した後、トラバーサ1は、次のレールR1へ移動する。この場合、主トング11は付勢機構30に付勢されて主トング初期位置に戻り、主トング11の動きにより持ち上げられた先端トング12は自重で先端トング初期位置に戻っているので、トラバーサ1は、トングレール10をレールR1に干渉させずに移動レールR2に沿って移動できる。
【0049】
なお、レールR1cの高さが、レールR1aとレールR1bとの間である場合、あるいは、レールR1c勾配θ101がレールR1aの勾配θ101aより大きく、レールR1bの勾配θ101bより小さい場合、トングレール10は、レールR1cに対しては、先端トング12がレールR1cの反力などに応じてヒンジピン13を中心に逆方向K2へ回動し、先端トング下面12uをレールR1cに当接させる。このとき、主トング11が必要に応じて回動する。よって、トングレール10は、高さの異なるレールR1に対し、先端トング12をレールR1と反対側へ回動させ、先端トング下面12uを各レールR1に確実に当接させやすい。
【0050】
トングレール10を経由してワークWを床面レール104からレールR1aあるいはレールR1bに下ろす場合には、上記と逆手順で行えば良い。
【0051】
以上説明したように、本形態のトラバーサ1は、複数のレールR1の高さが異なる場合でも、レールR1の高さに応じて先端トング12が主トング11に対して回動することで、先端トング下面12uを各レールR1に当接させることができる。これにより、トングレール10経由でワークWを移動させる場合に、先細り形状のトングレール10が変形したり、破損したりしにくくなる。よって、本形態のトラバーサ1によれば、トングレール10経由でワークWを移動させる場合に、作業場のレール高さが不揃いであっても、トングレール10の変形や破損を抑制できる。
【0052】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるわけではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、トングレールユニット7は、必要に応じて、跳ね上げ状態として収納ができる構成にしたり、分解・組み立て可能な構成としたりして、トラバーサ1の移動をスムーズに行える構成にすることを妨げない。
【0053】
複数のレールR1に勾配θ101を設けなくてもよい。この場合も、複数のレールR1のうち、上面Sが最も高い位置にあるレールR1に対応して先端トング初期位置を調整してよい。但し、上記形態のように、レールR1に勾配θ101を設け、先端トング12がその勾配θ101に対応して主トング11に対して回動するようにすれば、高さが異なるレールR1の上面Sに先端トング下面12uを当接させやすくなる。
【0054】
調整ねじ15を通常のねじとし、先端トング12が先端トング初期位置を超えて正方向へ回転することを制限できても、先端トング初期位置を調整できないようにしてもよい。ただし、上記形態のように調整ねじ15を使用し、先端トング初期位置を調整できるようにすることで、高さが異なるレールに対して先端トング下面12uを当接させやすくなる。
【0055】
上記実施形態では、ストップピン14と調整ねじ15を制限機構の一例としたが、制限機構の構成は、これと異ってもよい。また、ストップピン14を主トング11に設け、調整ねじ15を先端トング12に設けるなど、ストップピン14と調整ねじ15は別の位置に設けてもよい。
【0056】
上記形態では、ばね411のばね力によってトングレール10をレールR1と反対側に付勢したが、エアシリンダや油圧シリンダによってトングレール10を付勢してもよい。付勢機構30は、ばね組立41の数や固定ブラケット31の構造などが上記実施形態と異なってもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 鉄道車両用トラバーサ
2 基台部
10 トングレール
11 主トング
12 先端トング
12u 先端トング下面
104 床面レール
R1、R1a、R1b レール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13