(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022144881
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】沈埋トンネルの設置ガイド部材および沈埋トンネルの施工方法
(51)【国際特許分類】
E02D 29/073 20060101AFI20220926BHJP
E02D 23/00 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
E02D29/073
E02D23/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021046073
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】小倉 大季
(72)【発明者】
【氏名】磯田 和彦
(57)【要約】
【課題】簡易な構成により沈埋函を高精度に沈設可能であり、複雑な形状のトンネルにも適用することが可能な沈埋トンネルの設置ガイド部材および沈埋トンネルの施工方法を提供する。
【解決手段】移動可能な吐出部から連続的に柔性な水硬性混合物を吐出する機構を備えた付加製造装置によって水硬性混合物を積層させることにより形成される、設置ガイド部材1を用いた沈埋トンネル4の施工方法であって、付加製造装置を使用して、沈設面13を有する底版11と、一対のガイド壁12,12と、を備えている、設置ガイド部材1を形成し、沈埋トンネル4を構成する複数の沈埋函41を一対のガイド壁12,12に沿って沈降させ、沈埋函41を沈設面13上の所定の沈設位置に順次沈設し、隣接する沈埋函41,41同士を連結・接合した後に、沈埋函41内の水を排水して、沈埋トンネル4を形成する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動可能な吐出部から連続的に柔性な水硬性混合物を吐出する機構を備えた付加製造装置の前記吐出部から吐出された前記水硬性混合物を積層させることにより形成される、沈埋トンネルの設置ガイド部材であって、
前記沈埋トンネルの沈設下面と対向し、前記沈埋トンネルを安定配置する沈設面を有する底版と、
前記底版の前記沈設面に、前記沈埋トンネルの幅長と略一致する間隔で形成された一対のガイド壁と、
を備える、
沈埋トンネルの設置ガイド部材。
【請求項2】
前記一対のガイド壁は、前記ガイド壁の先端から前記底版の前記沈設面と接する基端に向かって互いの面同士が近接する方向に傾斜するテーパー面が形成されている、
請求項1に記載の沈埋トンネルの設置ガイド部材。
【請求項3】
請求項1または2に記載の前記沈埋トンネルの設置ガイド部材を用いた沈埋トンネルの施工方法であって、
前記付加製造装置を使用して、前記沈埋トンネルを施工する所定の水底面に前記設置ガイド部材を形成し、
前記沈埋トンネルを構成する複数の沈埋函を前記一対のガイド壁に沿って沈降させ、前記沈埋函を前記沈設面上の所定の沈設位置に順次沈設し、
隣接する前記沈埋函同士を連結・接合した後に、前記沈埋函内の水を排水して、前記沈埋トンネルを形成する、
沈埋トンネルの施工方法。
【請求項4】
前記設置ガイド部材が設けられる前記所定の水底面は、
水底表面が前記底版を安定配置可能に均されて形成され、前記底版の前記所定の水底面に対向する面よりも大きく形成されている、
請求項3に記載の沈埋トンネルの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、沈埋トンネルの設置ガイド部材および沈埋トンネルの施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水底トンネルは、トンネルセグメントを沈埋させて施工する(以下、このような施工方法で施工されたものを沈埋トンネルという)のが一般的である。沈埋トンネルの具体的な施工方法としては、予め陸上のヤード等で製作された複数のトンネルセグメント(沈埋函)を施工箇所まで曳航し、予め水底部を掘削して設けられたトレンチ(溝)の底部に適宜砂利等を敷いて均した上に順次沈設させる。その後、沈設した各沈埋函を連結・接合してトンネルを形成し、トンネルが設けられたトレンチを埋め戻し、トンネル内の水を抜いて完工とする施工方法が一般的である(例えば、特許文献1参照)。
各沈埋函の沈設においては、連結箇所からトンネル内への浸水等の防止のため、高い沈設精度が要求される。一般的に、各沈埋函の沈設にあたっては、超音波による位置の測定や潜水士が現場へ潜行し直接沈設位置を測定・確認すること、沈埋函に直接沈設位置を制御する機構を設けること等により沈設精度の管理が行われている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-34476号公報
【特許文献2】特許第6342184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
その一方で、上記の沈埋トンネルの施工法においては、複雑な形状のトンネル、例えば、曲線や多段配置等の形状のトンネルの施工には適さないという課題がある。
また、沈埋トンネルの沈設精度の管理の際に、水中にある現場へ潜行し精度管理にあたる潜水士が必要となる場合があるが、潜水士の労働単価は高価であり、かつ、潜水士の数が減少傾向にあることから、潜水士の人員確保が今後難化するという課題もある。また、水中という特殊な施工現場に直接人を投入するという点において、施工現場の諸所の条件(水中の透明度、流速、水温等)によって工期、コスト、安全面での効率低下を受け、工費が高額になるという課題もある。
また、上記以外にも沈設精度の管理方法において、専門的な技能、技術が必要となる場合があり、かつ、技術者の数が不足している情勢にあることから、人員の確保が今後難化するという課題もある。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、簡易な構成により沈埋函を高精度に沈設可能であり、曲線や多段配置等の複雑な形状のトンネルにも適用することが可能な沈埋トンネルの設置ガイド部材および沈埋トンネルの施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る沈埋トンネルの設置ガイド部材は、移動可能な吐出部から連続的に柔性な水硬性混合物を吐出する機構を備えた付加製造装置の前記吐出部から吐出された前記水硬性混合物を積層させることにより形成される、沈埋トンネルの設置ガイド部材であって、前記沈埋トンネルの沈設下面と対向し、前記沈埋トンネルを安定配置する沈設面を有する底版と、前記底版の前記沈設面に、前記沈埋トンネルの幅長と略一致する間隔で形成された一対のガイド壁と、を備えている。
【0007】
上記の構成とすることで、潜水士を投入しなくても、現地において所望の形状の設置ガイド部材を付加製造装置で形成することが可能となる。
【0008】
また、本発明に係る設置ガイド部材において、前記一対のガイド壁は、前記ガイド壁の先端から前記底版の前記沈設面と接する基端に向かって互いの面同士が近接する方向に傾斜するテーパー面が形成されてもよい。
【0009】
上記の構成を有することで、設置ガイド部材が底版とテーパー面が形成された一対のガイド壁とを有することにより、沈埋トンネルを構成する沈埋函を所定の沈設位置に容易に案内することが可能となる。
【0010】
また、上記目的を達成するため、本発明に係る沈埋トンネルの施工方法は、前記付加製造装置を使用して、前記沈埋トンネルを施工する所定の水底面に前記設置ガイド部材を形成し、前記沈埋トンネルを構成する複数の沈埋函を前記一対のガイド壁に沿って沈降させ、前記沈埋函を前記沈設面上の所定の沈設位置に順次沈設し、隣接する前記沈埋函同士を連結・接合した後に、前記沈埋函内の水を排水して、前記沈埋トンネルを形成する。
【0011】
上記の構成とすることで、設置ガイド部材に設けられた一対のガイド壁のテーパー面に沿って各沈埋函を沈設面上に沈設させることができ、各沈埋函は所望の位置に高精度に沈設される。
また、上記の構成によれば沈埋函を高精度に沈設できるため、潜水士による設置精度の管理等を要することなく沈埋函を沈設することが可能となる。そのため、沈埋トンネルの施工費用の削減および工期の短縮が可能となる。
【0012】
また、本発明に係る沈埋トンネルの施工方法において、前記設置ガイド部材が設けられる前記所定の水底面は、水底表面が前記底版を安定配置可能に均されて形成され、前記底版の前記所定の水底面に対向する面よりも大きく形成されていてもよい。
【0013】
上記の構成を有することで、付加製造装置を用いて設置ガイド部材を形成する際に、沈埋トンネルの施工位置の水底面の傾斜や水底表面の凹凸等の現場条件による水硬性混合物の吐出量の調整等の形成作業における負担を軽減または解消することが可能となる。そのため、設置ガイド部材をより正確な寸法で形成することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、簡易な構成により沈埋函を高精度に沈設可能であり、曲線や多段配置等の複雑な形状のトンネルにも適用することが可能な沈埋トンネルの設置ガイド部材および沈埋トンネルの施工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態による沈埋トンネルの施工方法の一例における設置ガイド部材の施工状況を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態による設置ガイド部材の一例を示す
図1のA‐A′線に沿う断面図である。
【
図3】本発明の実施形態による設置ガイド部材の一例を示す
図1のB方向から見た矢視図である。
【
図4】本発明の実施形態による設置ガイド部材の変形例を示す
図1のA‐A′線に沿う断面図である。
【
図5】本発明の実施形態による沈埋トンネルの施工方法の一例における沈埋函の沈設状況を示す斜視図である。
【
図6】本発明の実施形態による沈埋トンネルの施工方法の一例により施工された沈埋トンネルを示す
図5のC‐C′線に沿う断面図である。
【
図7】本発明の実施形態による沈埋トンネルの施工方法の一例により施工された沈埋トンネルを示す
図5のD方向から見た矢視図である。
【
図8】本発明の実施形態による沈埋トンネルの施工方法の変形例の一つにより施工された沈埋トンネルを示す部分斜視図である。
【
図9】本発明の実施形態による設置ガイド部材の変形例の一例と沈埋函の変形例の一例を示す斜視図である。なお、(a)は設置ガイド部材の変形例の一例を示す斜視図である。(b)は沈埋函の変形例の一例を示す斜視図である。
【
図10】上記の設置ガイド部材および沈埋函の変形例の一例を用いて施工された沈埋トンネルを示す部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態による沈埋トンネルの設置ガイド部材および沈埋トンネルの施工方法について、
図1乃至
図10に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態における設置ガイド部材1および沈埋トンネル4(
図5参照)は、陸地L1,L2の陸地盤L.G.内にそれぞれ設けられた陸地トンネルT1,T2の間にある海W中に施工する。設置ガイド部材1は後述する付加製造装置2によって施工位置に直接形成され、沈埋トンネル4は設置ガイド部材1上に沈設施工される。沈設施工された沈埋トンネル4は、陸地トンネルT1,T2と海Wとの境界部E1,E2(以下、境界部E1,E2)と接続して陸地トンネルT1,T2と一体化され、水底トンネルとして供用される。なお、境界部E1,E2は、陸地トンネルT1,T2内に海水が浸入しないよう海Wから遮断されている。また、境界部E1,E2は、陸地盤L.G.内に設けられている。
なお、以下の説明において施工する沈埋トンネル4の幅方向をX方向、施工する沈埋トンネル4の進行方向をY方向、海Wの深さ方向をZ方向とおく。
【0017】
先ず、本実施形態における設置ガイド部材1を施工するにあたって、設置ガイド部材1の施工位置の海底地盤U.W.G.を、バケットを設けた水上を移動可能な浚渫船等により浚渫する。なお、本実施形態におけるX方向およびY方向の浚渫長とZ方向の浚渫深さは、施工する沈埋トンネル4が境界部E1,E2と接続可能であり、施工する沈埋トンネル4を安定配置可能である浚渫長および浚渫深さとなる。
図1に示すように、浚渫した海底地盤面B.W.上にトレミー管を設けた水上を移動可能な船舶等により砕石等の敷均し材料を敷設してトレンチ3を形成する。また、トレンチ3は、表面が平坦に均されたトレンチ底面31を有する。なお、トレンチ底面31の表面は、トレンチ3内に沈埋トンネル4を安定配置可能かつ施工後に安全に供用可能であれば、海底地盤U.W.G.を構成する地盤面としてもよい。
【0018】
また、トレンチ3は、Y方向に底部側が短辺となる逆台形の断面を有する溝状形状を形成している。なお、トレンチ3は、トレンチ3内に施工する沈埋トンネル4が施工可能かつ施工後は安全に供用可能であれば、本実施形態の構成に限らない。例えば、トレンチ3がY方向に長方形の断面を有する溝状形状を形成していてもよい。
また、トレンチ3のX方向に面する面の表面は、海底地盤U.W.G.を構成する地盤面となっている。なお、トレンチ3のX方向に面する面の表面は、トレンチ3内に沈埋トンネル4を安定配置可能かつ施工後に安全に供用可能であれば、本実施形態の限りでない。例えば、トレンチ3のX方向に面する面の表面に砕石等の敷均し材料を敷設して側面を形成してもよい。
【0019】
本実施形態における設置ガイド部材1を形成する付加製造装置2の構成について、
図1に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態における付加製造装置2は、水上を移動可能な積載船舶28に設けられ、水硬性混合物21を移動可能かつ連続的に吐出する機構を備える。付加製造装置2は、吐出された水硬性混合物21を海W中の所望の位置に積層させることにより、水中で構造物を形成する。
また、付加製造装置2は、水硬性混合物21を移動可能かつ連続的に吐出する機構として、ホッパー22と、ポンプ23と、コントローラ24と、ホース25と、ノズル26(吐出部)と、電磁弁27と、を有する。
【0020】
ホッパー22は、積載船舶28に設けられ、多量の水硬性混合物21を所定の品質が保持される時間内で一時的に貯留することが可能である。ホッパー22の外形形状は、水硬性混合物21を投入する側の口が広い漏斗形状となっている。なお、ホッパー22の外形形状は、水硬性混合物21を一時的に貯留でき、ホース25に供給できるのであれば、本実施形態の外形形状に限らない。例えば、上面が空いた矩形筒形状としてもよい。
【0021】
ポンプ23は、ホッパー22の下流側に接続されている。また、ポンプ23は、ポンプ23に設けられたコントローラ24によってポンプ23の駆動を制御することで、ホッパー22から供給される水硬性混合物21の供給量を調整可能である。
【0022】
ホース25は、ポンプ23に一方の端部が接続され、ポンプ23から供給された水硬性混合物21を配送可能に配されている。また、ホース25は、内部が空洞な筒形状を有し、設置ガイド部材1を施工するトレンチ底面31に到達する十分な長さを有する。ホース25は弾性材料で形成されている。材質は、例えばゴム材が用いられる。上記の構成により、ホース25は、ホース25の長さが許容する範囲で移動可能であり、ホース25の弾性を考慮した範囲で変形可能である。
【0023】
ノズル26は、水硬性混合物21の吐出部としてホース25の他方の端部に接続されている。ノズル26は、ホース25を介して配送された水硬性混合物21を連続的に吐出し、水硬性混合物21の吐出量は電磁弁27により制御される。また、ノズル26は、接続されているホース25の長さを考慮した範囲で移動可能であり、接続されているホース25の弾性を考慮した範囲で吐出方向自在である。
【0024】
なお、付加製造装置2は、付加製造装置2により水中に施工する設置ガイド部材1を施工するトレンチ底面31に水硬性混合物21を連続して吐出可能であれば、本実施形態の設置構成に限らない。例えば、台船等の他の浮体構造物に設けられてもよいし、施工現場が陸地から近く、ホース25が陸地から設置ガイド部材1を施工するトレンチ底面31に到達可能である場合は、陸上の沿岸部に設けられてもよい。
【0025】
また、付加製造装置2は、ホース25への水硬性混合物21の供給量を調整する機構が設けられていれば、本実施形態の限りではない。例えば、ホッパー22とホース25とが接続され、水硬性混合物21を配送可能な緩やかな傾斜を設けた配送路を設け、ポンプ23およびコントローラ24を代替する機構として配送路とホース25の接続部に手動または自動で開閉可能な弁を設ける等、その他の機構により、ホース25への水硬性混合物21の供給量を調整してもよい。
【0026】
また、付加製造装置2は、施工対象の構造物の特性を考慮した陸上で遠隔操作可能な加工機構を設けてもよい。例えば、形成された構造物の表面を均すこてや形成された構造物の表面に新たに傾斜等の加工面を形成する機構が挙げられる。
【0027】
なお、水硬性混合物21は、吐出時に水中で成型し易い柔らかさを有するとともに、水中で拡散し難い特性を有する。例えば水中不分離性コンクリートや水中で供用可能な種々のセメント系材料(例えば、セメントペースト、モルタル)が用いられる。
また、水硬性混合物21は、積層時に所望の品質が確保されているのであれば、製造方法は限定されない。例えば、予め陸上で製造されたものを別の船舶で運搬して積載船舶28の近傍に停泊させ、ホッパー22に移送してもよいし、積載船舶28に水硬性混合物21を製造する機構を設け、積載船舶28上で水硬性混合物21を製造してホッパー22に投入してもよい。
また、所望の設置ガイド部材1が施工可能であれば、水硬性混合物21の積層方法は問わない。例えば、水硬性混合物21をノズル26から押し出してトレンチ底面31の所定の施工位置に積層してもよいし、水硬性混合物21をトレンチ底面31の所定の施工位置に吹き付けて積層してもよい。
【0028】
また、ホース25は、ホース25が設置ガイド部材1を施工するトレンチ底面31の所定の施工位置に到達する十分な長さを有し、水硬性混合物21が配送途中でホース25から漏出せずに配送可能であれば、ホース25の長さを調整する機構を設けてもよい。例えば、ホース25が複数のセグメントを隙間なく繋ぎ合わせることにより構成され、繋ぎ合わせるセグメントの数によりホース25の長さを調整し、水硬性混合物21の吐出場所の水深によってホース25の長さを調整可能な機構を設けてもよい。
【0029】
また、ホース25は、ホース25やノズル26、積載船舶28が海水の潮流や波浪によって遊動することにより、ノズル26の吐出位置が定まりにくければ、ホース25の位置を制御する機構を設けてもよい。例えば、ホース25に潮流や波浪によって遊動せず、海上風によっても遊動しない等の揺れに対して所定の作業性を有する陸上で遠隔操作可能なロボットアームを設けてもよいし、積載船舶28に門型フレームを設け、水硬性混合物21を吐出する位置へホース25を下ろしてもよい。
【0030】
また、ホース25やノズル26、積載船舶28が潮流や波浪によって遊動することにより、ノズル26の吐出位置が定まりにくければ、ホース25およびノズル26の少なくともいずれか一方に移動を制御する機構を設けてもよい。例えば、陸上で遠隔操作が可能な水中ドローンや水中カメラを設けて水硬性混合物21を吐出する位置を制御してもよい。
【0031】
付加製造装置2を用いた設置ガイド部材1の施工方法について
図1乃至
図3に基づいて説明する。
設置ガイド部材1は、海底地盤U.W.G.を浚渫して形成されたトレンチ3の底部に形成されたトレンチ底面31上に設けられる。また、設置ガイド部材1は、境界部E1,E2の間に設けられる。
【0032】
図1乃至
図3に示すように、設置ガイド部材1の施工場所を浚渫して形成したトレンチ3にノズル26から連続的に吐出された水硬性混合物21を、トレンチ底面31の所定の位置から所望の高さまで積層し、底版11を形成する。また、同様に底版11の上面にX方向に沈埋トンネル4のX方向の幅長と略一致する間隔で水硬性混合物21を積層させ、Y方向に一対のガイド壁12,12を形成する。一対のガイド壁12,12により挟まれた底版11の上面は、沈埋函を沈設する沈設面13として形成される。
なお、トレンチ底面31は、底版11のトレンチ底面31との接地面よりも大きく形成されている。
【0033】
なお、底版11のY方向に面する両端部の2面と境界部E1,E2とはそれぞれ接着されている。また、底版11は、沈埋トンネル4を沈設した際に沈埋トンネル4の支承として機能するための十分な厚みを有している。
底版11の外形形状は、Y方向に偏長な平板形状を形成している。なお、本実施形態における底版11の外形形状は、施工する沈埋トンネルを安定配置可能であれば、本実施形態の構成に限らない。例えば、トレンチ底面31と底版11のトレンチ底面31との接地面とが略一致していてもよい。
【0034】
一対のガイド壁12,12のX方向の間隔と沈設面13のX方向の幅長とは、施工する沈埋トンネル4のX方向の幅長に略一致する。
一対のガイド壁12,12のY方向に面する両端部の2面は、底版11の該面と同様に、境界部E1,E2にそれぞれ接着されている。また、沈設面13のY方向の両端部についても同様に、境界部E1,E2まで延伸されている。
また、ガイド壁12は、対向するガイド壁12を向く対向面14が沈設面側先端15から底版11の沈設面13と接する沈設面側基端16に向かって対向するガイド壁12に近接する方向に傾斜するテーパー面17が形成されている。ガイド壁12のY方向に面する面の断面形状は、底版11の上面と接する辺が長辺となる台形の断面形状を有する。
上記の工程によって、トレンチ底面31に
図2および
図3に示すような所望の設置ガイド部材1が形成される。
【0035】
本実施形態において一対のガイド壁12,12は、底版11に対して底版11のX方向の両端部に余裕代となる余裕代上面18,18を有して設けられる。なお、一対のガイド壁12,12は沈設面13上に施工する沈埋トンネル4を安定配置できれば、形成される位置は本実施形態の構成に限らない。例えば、一対のガイド壁12,12の余裕代側側面19,19と底版11のX方向に面する両端部の2面とがそれぞれ面一に形成されていてもよい(余裕代上面18,18が形成されなくてもよい)。
【0036】
また、一対のガイド壁12,12は、施工する沈埋トンネル4を安定配置することが可能であれば、本実施形態の外形形状に限らない。例えば、ガイド壁12の先端が丸みを帯びて形成されてもよいし、
図4に示すように、一対のガイド壁12,12の余裕代側側面19,19が底版11のZ方向に面する面に対して垂直に形成されていてもよい。
【0037】
また、ガイド壁12および沈設面13は、施工する沈埋トンネル4を安定配置することが可能で、施工後も安全に供用可能に形成されていれば、本実施形態の構成に限らない。例えば、施工する沈埋トンネル4の進行方向長以上のY方向の長さを備えていてもよいし、沈設する各沈埋函41のY方向の端部において多少短く形成されてもよい。また、沈設面13のY方向に一部の形成を省略してもよいし、底版11およびガイド壁12が、Y方向に所定の間隔を空けて形成されてもよい。
【0038】
本実施形態において、底版11を形成した後に一対のガイド壁12,12を形成しているが、所望の設置ガイド部材1を形成することができれば、底版11と一対のガイド壁12,12とを形成する順序は本実施形態に限らない。例えば、ノズル26をX方向またはY方向に往復させて底版11と一対のガイド壁12,12とを順次形成することで、底版11と一対のガイド壁12,12とを同時に形成してもよい。
【0039】
設置ガイド部材1を用いた沈埋トンネル4の施工方法について
図5乃至
図7に基づいて説明する。
図5乃至
図7に示すように、設置ガイド部材1の施工が完了した後、沈埋函沈設機構5を用いて沈埋トンネル4を構成する沈埋函41を順次沈設する。その後、Y方向に隣接する沈埋函41,41同士を連結・接合した後に、沈埋函41内の水を排水して、沈埋トンネル4を形成する。なお、沈設面13上のY方向の両端部においては、沈埋函41の一種である端部沈埋函42,42と境界部E1,E2とを連結・接合する。
【0040】
沈埋函沈設機構5の構成について説明する。
図5に示すように、本実施形態では、沈埋函沈設機構5について、従来用いられているタワーポンツーン方式による機構を用いた場合を説明する。なお、沈埋函41を沈設面13上に安定配置できれば、本実施形態の方式・機構に限らない。例えば、プレーシングバージ方式やフローティングクレーン方式等の他の周知の沈埋函沈設方法を用いてもよい。
本実施形態における沈埋函沈設機構5は、水上を移動可能な一対のウィンチ付き台船(沈設ポンツーン)51,51と沈埋函41のZ方向に面する2面のうちの上面(以下、沈設上面)に設けられたウィンチ制御塔(ウィンチタワー)52により構成される。ウィンチ付き台船51は、一対のウィンチ53,53を有する。一対のウィンチ53,53は、沈埋函41を水中で吊持可能な強度を有する吊持機構54を有し、吊持機構54を構成するワイヤー55の長さを調整することで(Z方向下向きに徐々に伸ばすことで)、沈埋函41を沈設面13上の所望の位置に沈設する。また、ウィンチ制御塔52によって、吊持されている沈埋函41が常に安定して沈降し、所望の位置に沈設されるよう管理されている。
なお、沈埋函41はウィンチ53の吊持機構54を掛外可能な掛外機構43を、沈埋函41を沈降可能な設置数で、沈埋函41の沈設上面の周縁部の所定の位置に有する。
吊持機構54は、例えば巻取り機器等により長さの調整が可能なワイヤー55の先端に掛外可能なフックが設けられた機構が挙げられる。
また、掛外機構43は、例えば沈埋函41の沈設上面の所定の位置に固定されて設けられた、上記吊持機構54を構成するフック等を掛外可能な円環形状の吊持基部等が挙げられる。
【0041】
一対のウィンチ付き台船51,51は、沈埋函41を沈設面13上に安定配置できれば、本実施形態の構成に限らない。例えば、1隻のウィンチ付き台船51によって沈埋函41を水中で吊持して曳航してもよいし、沈設してもよい。
【0042】
ウィンチ制御塔52は、一対のウィンチ付き台船51,51によって安定して沈降され、所望の位置に沈設可能であれば、本実施形態の構成に限らない。例えば、ウィンチ制御塔52が各ウィンチ付き台船51,51にそれぞれ設けられてもよい。
【0043】
図5に示すように、沈埋函41は、沈設した時のY方向に道路等の内部構造物を施工可能な内部空間が設けられた箱型形状により形成されている。また、沈埋函41は、沈埋函41を沈設した時のY方向に面する両端部の2面に沈埋函41の内部を海水から遮断するバルクヘッド44,44を設けることで、沈埋函41を浮上させた状態で曳航可能にする。沈埋函41は、施工条件が考慮された材料により形成される。例えば、水中で供用可能であり、耐塩性を有する水中コンクリート等が挙げられる。また、沈埋函41は、バラストタンクを設けることで、所定の位置に沈設する際にバラストタンクに海水等の重しになるものを流入させて沈埋函41を沈降させる。
また、沈設されたY方向に隣接する沈埋函41,41同士は、内部の海水を排水し、海水の水圧により接合される。沈設された端部沈埋函42,42と境界部E1,E2との間においても、内部の海水を排水し、海水の水圧により接合される。なお、接合部は沈埋函41の内部または陸地トンネルT1,T2から補強してもよい。また、沈埋函41の接合される面にゴムガスケット等の緩衝および接合時の間隙充填に供する部材を設ける等、接合面の保護や浸水対策を講じてもよい。また、接合部の間隙を充填するために、付加製造装置2やロボットを使用して水硬性混合物21を充填してもよい。
【0044】
設置ガイド部材1を用いた沈埋トンネル4の施工方法について説明する。
先ず、
図5に示すように、一対のウィンチ付き台船51,51それぞれに設けられた一対のウィンチ53,53を沈埋函41の掛外機構43に接続して沈埋函41を吊持し、沈埋函41を所望の沈設位置上まで曳航する。沈設位置上に到着した後、ウィンチ53を操作して沈埋函41を吊持するワイヤー55をZ方向下向きに徐々に伸ばすことにより、沈埋函41を沈降させ、沈設面13上の所望の沈設位置に各沈埋函41をY方向に順次沈設させる。沈埋函41を沈降させる際は、沈埋函41のX方向に面する両端部の2面をそれぞれに対向する一対のガイド壁12,12のテーパー面17,17に沿って沈降させる。沈埋函41を所望の沈設面13上に沈設させた後、沈埋函41を吊持する吊持機構54を沈埋函41の掛外機構43から取り外し、沈埋函41の沈設工程を完了とする。
【0045】
Y方向に隣接する沈埋函41,41を沈設面13上の所望の位置に沈設した後、内部の海水を排水し、海水の水圧によって接合する。Y方向に隣接する沈埋函41,41は、接合された後、近接対向するそれぞれのバルクヘッド44,44を除去し、通貫・連結される。また、端部沈埋函42,42と境界部E1,E2とは、近接対向する端部沈埋函42,42のバルクヘッド44,44と境界部E1,E2とを除去し、陸地トンネルT1、T2と通貫・連結される。
【0046】
上記の工程を、沈埋トンネル4を構成する全ての沈埋函41において実施することで、
図6および
図7に示すような沈埋トンネル4が形成される。
なお、沈埋函41を沈設する順序は、施工計画、現場の施工条件による制約等によって決められるが、上記が定められておらず、所定の工期に所望の沈埋トンネル4を施工可能であれば限定されない。例えば、境界部E1,E2の一方と対向する一方の端部沈埋函42から順次沈設し、接合および通貫・連結してもよいし、他方の端部沈埋函42から順次沈設してもよい。また、端部沈埋函42以外の沈埋函41の沈設から開始してもよい。また、沈埋函41の沈設、接合および通貫・連結工程は、各々の工程を全ての沈埋函41において完了してから次の工程を実施してもよいし、Y方向に隣接する沈埋函41,41同士毎に各工程を完了してから施工方向に隣接する沈埋函41の沈設を実施してもよい。
【0047】
沈埋トンネル4を形成した後、水上を移動可能な船舶に積載したトレミー管を用いる等の方法により、沈埋トンネル4上とトレンチ3の余白に砕石等の敷均し材料を敷設して、沈埋トンネル4およびトレンチ3を埋め戻す。なお、
図6に示すように、沈埋トンネル4の高さがトレンチ3の深さよりも大きい場合は、トレンチ3の周縁の海底地盤面B.W.にも材料を敷設してマウンド形状の埋戻し面6を形成して埋め戻す。
上記の工程によって、沈埋トンネル4の施工が完了される。沈埋トンネル4は、Y方向の両端部にある端部沈埋函42,42と境界部E1,E2とが通貫・連結された構成を介して、陸地トンネルT1,T2と一体化された水底トンネルとして供用される。
【0048】
本実施形態において、沈埋函41のX方向の断面形状は、X方向に偏長な中空の長方形形状を有している。なお、沈埋函41を沈設面13上の所望の位置に沈設可能であれば、本実施形態の構成に限らない。
例えば、
図8に示すように、沈埋函41のX方向に面する両端部の2面において、沈埋函41を沈設した時に沈設面側基端16,16に対向する各面の端部から、テーパー面17,17の形状と略一致し、テーパー面17,17に近接対向する沈埋函テーパー面45,45が形成されてもよい。なお、
図8に示すように、テーパー面17,17と沈埋函テーパー面45,45とが、形状が略一致する曲面で形成されると、一対のガイド壁12,12と沈埋函41とは、曲面部で接触するため、沈埋函41を沈設面13上に沈設した際に沈埋函41から設置ガイド部材1に作用する隅角部の応力が緩和される。そのため、沈埋函41を沈設時に設置ガイド部材1と沈埋函41の隅部とが欠け難くなり、施工時の欠損等を防ぐことが可能となる。
【0049】
また、沈埋函41を沈設するときに設置ガイド部材1と沈埋函41とを嵌合させ、所定の位置に高精度に沈設する構成を設けてもよい。
例えば、
図9(a)に示すように、一対のガイド壁12,12は、Y方向中間部にテーパー面17,17側からテーパー面側凹部121,121がそれぞれ形成されているとする。なお、テーパー面側凹部121,121は、Y方向の設置位置が略一致し、X方向に逆台形の断面形状を有して形成されているとする。また、
図9(b)に示すように、沈埋函41は、X方向に面する両端部下部において、沈埋函テーパー面45,45が形成されているとする。沈埋函41は、設置ガイド部材1の所定の位置に沈設したときにテーパー面側凹部121,121に嵌合可能に形成された突出部46,46がX方向両端部のY方向中間部に形成されるとする。なお、沈埋函テーパー面45,45は、沈埋函41の下端部の強度維持のためにそれぞれX方向に延びる下延設部47,47から形成されてもよい。
【0050】
上記の構成により、
図10に示すように、沈埋函41を沈設した際に設置ガイド部材1と沈埋函41とを嵌合させ、突合部7,7を形成することで、沈埋函41を所定の位置に確実に沈設することが可能となる。なお、設置ガイド部材1と沈埋函41とを嵌合することで、沈埋函41を所定の位置に沈設可能であれば、嵌合箇所は上記例の構成に限らない。例えば、突合部7,7がY方向において対角となる位置に設けてもよいし、1箇所の突合部7によって設置ガイド部材1と沈埋函41とを嵌合させてもよい。
【0051】
また、沈埋函41は、所望の品質が確保されていれば、ドック等の陸上施設で予め製作されたものを施工現場まで曳航して沈設してもよいし、浚渫船や積載船舶28に沈埋函41を製造する機構を設け、施工現場で直接製作して沈設してもよい。
【0052】
本実施形態における沈埋函41は、一対のウィンチ付き台船51,51によって安全に曳航および沈設可能な大きさ、重量等を考慮して製作される。また、本実施形態における沈埋トンネル4のように単純な形状であれば、沈埋トンネル4を構成する沈埋函41が等分割され、製作されることにより施工性が向上する。また、沈埋函41は、施工する沈埋トンネル4の変曲点等の形状が変わる境界を目安として分割製作する等、製作効率等の諸条件を考慮して製作されてもよい。
【0053】
また、施工する沈埋トンネル4の形状が曲線や多段配置等の複雑な形状である場合、設置ガイド部材1を構成する底版11と一対のガイド壁12,12とは、施工する沈埋トンネル4の形状等の諸条件に応じて形成される。例えば、施工する沈埋トンネル4が途中でカーブする形状や2基の沈埋トンネル4,4が水中で立体交差する形状等が挙げられる。また、一対のガイド壁12,12は、沈埋函41を安定配置可能であり、隣接する沈埋函41,41を接合可能であれば、Y方向に対向するテーパー面17,17を形成してX方向にも設け、沈埋函41の沈設を沈設面13の四方から補助してもよい。
【0054】
また、沈埋トンネル4およびトレンチ3の埋戻しについては、沈埋トンネル4が所望の機能を確保できれば、本実施形態に限らない。例えば、沈埋トンネル4のZ方向の上面等の一部が露出した状態で沈埋トンネル4が供用されていてもよい。
【0055】
また、沈埋トンネル4の施工位置の水中環境について、潮流や波浪等の外力が著しく小さく、これらによる沈埋トンネル4への影響がなければ、本実施形態における施工方法に限らない。例えば、海底地盤面B.W.を平坦に均した上に沈埋トンネル4を施工し、沈埋トンネル4の周縁に材料を敷設してマウンド形状の埋戻し面6を形成し、沈埋トンネル4を被覆してもよい。
【0056】
次に、上述した本実施形態による沈埋トンネル4の設置ガイド部材1および沈埋トンネル4の施工方法の作用・効果について説明する。
【0057】
本実施形態では、付加製造装置2に設けられたノズル26から水硬性混合物21をトレンチ底面31の所定の位置に吐出して、ノズル26を適宜移動させながら積層させる工程により、付加製造装置2を用いることによって潜水士を投入せず、現地において所望の形状の設置ガイド部材1を形成することが可能となる。また、海洋において、海上が強風で荒れていても海底は穏やかな場合が多いため、設置ガイド部材1の形成工事は工程通りに進めることができる。また、沈埋トンネル4の形状が分岐や高さが変化する等の複雑な場合においても、設置ガイド部材1を高精度に施工することが可能となる。
また、設置ガイド部材1が、底版11と、対向するガイド壁12に近接する方向に傾斜するテーパー面17,17が形成された一対のガイド壁12,12と、一対のガイド壁12,12に挟まれた沈設面13が設けられた構成を有することによって、沈埋トンネル4を構成する複数の沈埋函41を所定の沈設位置に容易に案内することが可能となる。
【0058】
また、本実施形態では、沈埋函41を一対のガイド壁12,12に形成されたテーパー面17,17に沿って沈降させる工程によって、各沈埋函41を沈設面13上の所定の位置に高精度に沈設することが可能となる。
また、上記の工程により沈埋函41を沈設面13上の所定の位置に高精度に沈設することで、潜水士による設置精度の管理等を要することなく沈埋函41を沈設することが可能となる。そのため、沈埋トンネル4の施工費用の削減および工期の短縮が可能となる。
【0059】
また、本実施形態では、トレンチ3の底部に、表面が平坦に均されたトレンチ底面31を有する構成によって、付加製造装置2を用いて設置ガイド部材1を形成する際にトレンチ底面31の傾斜や表面の凹凸等の現場条件による水硬性混合物21の吐出量の調整等の形成作業における負担を軽減または解消することが可能となる。そのため、設置ガイド部材1をより正確な寸法で 形成することが可能となる。
【0060】
以上、本実施形態による沈埋トンネルの設置ガイド部材および沈埋トンネルの施工方法について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨が逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0061】
例えば、水中において所望の施工条件および供用条件を達成できれば、付加製造装置を用いて水硬性混合物を所定の位置に吐出して積層させることにより、本実施形態の設置ガイド部材の上部に屋根形状を形成して沈設構造物を被覆する構成としてもよい。例えば、海底ケーブルの敷設を補助するとともにケーブルの表面を保護する設置ガイド部材として適用する事例が挙げられる。また、陸上と海上構造物(例えば、着床式洋上風力発電施設)とを接続し、送電線や信号ケーブルを収納する沈埋トンネルに適用してもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 設置ガイド部材
11 底版
12 ガイド壁
13 沈設面
14 対向面
15 沈設面側先端
16 沈設面側基端
17 テーパー面
18 余裕代上面
19 余裕代側側面
121 テーパー面側凹部
2 付加製造装置
21 水硬性混合物
22 ホッパー
23 ポンプ
24 コントローラ
25 ホース
26 ノズル(吐出部)
27 電磁弁
28 積載船舶
3 トレンチ
31 トレンチ底面
4 沈埋トンネル
41 沈埋函
42 端部沈埋函
43 掛外機構
44 バルクヘッド
45 沈埋函テーパー面
46 突出部
47 下延設部
5 沈埋函沈設機構
51 ウィンチ付き台船(沈設ポンツーン)
52 ウィンチ制御塔(ウィンチタワー)
53 ウィンチ
54 吊持機構
55 ワイヤー
6 埋戻し面
7 突合部
W 海
W.L. 海表面
B.W. 海底地盤面
U.W.G. 海底地盤
L1,L2 陸地
L.G. 陸地盤
T1,T2 陸地トンネル
E1,E2 陸地トンネルT1,T2と海Wとの境界部