(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022144883
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】血管攣縮抑制剤、血管攣縮予防剤、血管攣縮予防用経口組成物、血管攣縮抑制用経口組成物及び抗酸化剤
(51)【国際特許分類】
A61K 36/8998 20060101AFI20220926BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20220926BHJP
A61P 9/14 20060101ALI20220926BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20220926BHJP
A61K 31/137 20060101ALI20220926BHJP
A61P 17/18 20060101ALI20220926BHJP
A61P 39/06 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
A61K36/8998
A23L33/105
A61P9/14
A61P9/00
A61K31/137
A61P17/18
A61P39/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021046075
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
(71)【出願人】
【識別番号】307045939
【氏名又は名称】竹之内穀類産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168114
【弁理士】
【氏名又は名称】山中 生太
(74)【代理人】
【識別番号】100162259
【弁理士】
【氏名又は名称】末富 孝典
(74)【代理人】
【識別番号】100146916
【弁理士】
【氏名又は名称】廣石 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】加治屋 勝子
(72)【発明者】
【氏名】竹之内 俊夫
【テーマコード(参考)】
4B018
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
4B018MD20
4B018MD49
4B018ME06
4B018ME14
4B018MF01
4C088AB73
4C088AC04
4C088AC06
4C088BA08
4C088CA03
4C088CA06
4C088CA12
4C088CA17
4C088MA52
4C088NA05
4C088NA14
4C088ZA36
4C088ZA44
4C088ZC37
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA11
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZA36
4C206ZA44
4C206ZC37
(57)【要約】
【課題】オオムギに含まれる成分を有効に活用することができる血管攣縮抑制剤、血管攣縮予防剤、血管攣縮予防用経口組成物、血管攣縮抑制用経口組成物及び抗酸化剤を提供する。
【解決手段】血管攣縮抑制剤は、オオムギ抽出物を含有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オオムギ抽出物を含有する、
血管攣縮抑制剤。
【請求項2】
オオムギ抽出物を含有する、
血管攣縮予防剤。
【請求項3】
オオムギ抽出物を含有する、
血管攣縮予防用経口組成物。
【請求項4】
オオムギ抽出物を含有する、
血管攣縮抑制用経口組成物。
【請求項5】
前記オオムギ抽出物は、
オオムギの外皮の抽出物である、
請求項1に記載の血管攣縮抑制剤、請求項2に記載の血管攣縮予防剤、請求項3に記載の血管攣縮予防用経口組成物又は請求項4に記載の血管攣縮抑制用経口組成物。
【請求項6】
前記オオムギ抽出物は、
ホルデニンを含む、
請求項1に記載の血管攣縮抑制剤、請求項2に記載の血管攣縮予防剤、請求項3に記載の血管攣縮予防用経口組成物、請求項4に記載の血管攣縮抑制用経口組成物又は請求項5に記載の血管攣縮抑制剤、血管攣縮予防剤、血管攣縮予防用経口組成物若しくは血管攣縮抑制用経口組成物。
【請求項7】
ホルデニン、その塩又はそれらの溶媒和物を含有する、
血管攣縮抑制剤、血管攣縮予防剤、血管攣縮予防用経口組成物又は血管攣縮抑制用経口組成物。
【請求項8】
ホルデニン、その塩又はそれらの溶媒和物を含有する、
抗酸化剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管攣縮抑制剤、血管攣縮予防剤、血管攣縮予防用経口組成物、血管攣縮抑制用経口組成物及び抗酸化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
古くから栽培されてきた穀物であるイネ科のオオムギ(Hordeum vulgare)は、βグルカン等の水溶性食物繊維を多く含む。オオムギの摂取による様々な生体調節機能が知られている。例えば、特許文献1にはオオムギの糠からの抽出物がリノール酸の酸化を抑制するため、抗酸化剤として有用であることが開示されている。特許文献2には、オオムギ抽出物を含む混合物によって、ヒトの皮膚のハリが改善され、皺の発現が抑制されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-140153号公報
【特許文献2】特表2019-510062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
オオムギの搗精によって得られる外皮及び糠は、畜産動物の飼料等に利用され、食用としてはほとんど活用されていない。オオムギに含まれる成分について、生体機能調節に有用な活性を見出すことができれば、オオムギを有効活用することができる。
【0005】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、オオムギに含まれる成分を有効に活用することができる血管攣縮抑制剤、血管攣縮予防剤、血管攣縮予防用経口組成物、血管攣縮抑制用経口組成物及び抗酸化剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、オオムギのさらなる活用を目指して、オオムギ抽出物の活性について鋭意研究し、新たな活性を見出し、本発明を完成させた。
【0007】
本発明の第1の観点に係る血管攣縮抑制剤は、
オオムギ抽出物を含有する。
【0008】
本発明の第2の観点に係る血管攣縮予防剤は、
オオムギ抽出物を含有する。
【0009】
本発明の第3の観点に係る血管攣縮予防用経口組成物は、
オオムギ抽出物を含有する。
【0010】
本発明の第4の観点に係る血管攣縮抑制用経口組成物は、
オオムギ抽出物を含有する。
【0011】
前記オオムギ抽出物は、
オオムギの外皮の抽出物である、
こととしてもよい。
【0012】
前記オオムギ抽出物は、
ホルデニンを含む、
こととしてもよい。
【0013】
本発明の第5の観点に係る血管攣縮抑制剤、血管攣縮予防剤、血管攣縮予防用経口組成物又は血管攣縮抑制用経口組成物は、
ホルデニン、その塩又はそれらの溶媒和物を含有する。
【0014】
本発明の第6の観点に係る抗酸化剤は、
ホルデニン、その塩又はそれらの溶媒和物を含有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、オオムギに含まれる成分を有効に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】試験例1に係るオオムギ抽出物の抗酸化活性を示す図である。
【
図2】試験例2に係るオオムギ抽出物に含まれるゲル濾過クロマトグラフィーで分離された高分子画分及び低分子画分の抗酸化活性率を示す図である。
【
図3】試験例3に係るホルデニン含量に対する抗酸化活性率を示す図である。
【
図4】試験例4に係る細胞表面積の相対値の経時変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本発明は下記の実施の形態及び図面によって限定されるものではない。なお、下記の実施の形態において、“有する”、“含む”又は“含有する”といった表現は、“からなる”又は“から構成される”という意味も包含する。
【0018】
(実施の形態1)
本実施の形態に係る血管攣縮抑制剤は、オオムギ抽出物を有効成分として含有する。オオムギは、特に限定されず、二条オオムギ(二条大麦(Hordeum vulgare f.distichon)、四条オオムギ(Hordeum vulgare subsp.vulgare)、六条オオムギ(Hordeum vulgare f.hexastichon)及びハダカムギ(Hordeum vulgare var.nudum Hook.f.)等である。なお、本実施の形態に係るオオムギは、ライ麦及びハトムギも包含する。オオムギの品種は、ラトローブ、コンパス、サチホゴールデン、はるか二条、マンネンボシ、サルート及びコープランド等であってもよい。好ましくは、オオムギは、ラトローブ、コンパス、サチホゴールデン又ははるか二条であって、より好ましくは、サチホゴールデン又ははるか二条である。
【0019】
オオムギ抽出物とはオオムギの穀粒の抽出物である。好ましくは、オオムギ抽出物はホルデニン(4-[2-(Dimethylamino)ethyl]phenol)を含む。ホルデニンは、サボテン、きび及びソルガム等にも含まれる。ホルデニンは、合成することも可能で、フェネチルアルコール又は4-(2-ヒドロキシエチル)アニソールから公知の方法で合成されてもよい。
【0020】
オオムギ抽出物は、外皮、糠及び胚乳を含むオオムギの穀粒全体から抽出されてもよいが、好ましくは外皮及び糠から抽出され、より好ましくは外皮から抽出される。なお、ここでの糠は、外皮と、オオムギの実(丸麦)の外皮と胚乳とを除く部分である。例えば、外皮、糠及び実は、回転する砥石で収穫したオオムギの外皮及び糠を削り取る搗精で得ることができる。
【0021】
抽出物は、例えば、オオムギの穀粒、外皮、糠又は実をそのまま、あるいはこれらの加工物を溶媒で抽出して得られる抽出物、その希釈液及び濃縮液、並びにそれらの乾燥物及び粉末が挙げられる。好適には、抽出物は、ホルデニンが含有されるように抽出される。
【0022】
抽出溶媒は、特に限定されないが、例えば、水、エタノール、イソプロピルアルコール、1,3-ブチレングリコール、アセトン、ブタノール及び酢酸等である。抽出溶媒は混合溶媒であってもよい。抽出溶媒は、好ましくはエタノールである。抽出時間は、抽出溶媒の種類及びオオムギと抽出溶媒との割合を考慮し適宜選択される。また、得られた抽出物はそのまま利用してもよいが、常法に従って希釈、濃縮、乾燥及び精製等の処理を施してもよい。また、必要に応じてホルデニンの割合を高めるため、減圧濃縮や凍結乾燥により溶媒を除去してもよい。例えば、オオムギを溶媒に浸漬し、一定時間経過後、溶媒を濃縮乾固した乾固物を抽出物としてもよい。
【0023】
血管攣縮抑制剤は、単離及び精製されたホルデニンを含有してもよい。ホルデニンは、例えば、オオムギ抽出物から液体クロマトグラフィー、好ましくは高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で単離及び精製できる。
【0024】
本実施の形態に係る血管攣縮抑制剤は、既知の方法で製造され、有効成分として0.000001~99.9重量%、0.00001~99.8重量%、0.0001~99.7重量%、0.001~99.6重量%、0.01~99.5重量%、0.1~99重量%、0.5~60重量%、1~50重量%又は1~20重量%のオオムギ抽出物又はホルデニンを含む。血管攣縮抑制剤は、固形製剤であっても、液状製剤であってもよい。
【0025】
血管攣縮抑制剤はオオムギ抽出物又はホルデニンに加え、薬理学上許容される任意の成分を含んでもよい。任意の成分は、例えば、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤及び無痛化剤等である。また、必要に応じて、防腐剤、抗酸化剤、着色剤及び甘味剤等の添加物が血管攣縮抑制剤に配合されてもよい。
【0026】
賦形剤としては、乳糖、白糖、D-マンニトール、D-ソルビトール、デンプン、α化デンプン、デキストリン、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アラビアゴム、プルラン、軟質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、キシリトール、ソルビトール及びエリスリトール等が挙げられる。
【0027】
滑沢剤は、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、コロイドシリカ及びポリエチレングリコール等である。
【0028】
結合剤としては、α化デンプン、ショ糖、ゼラチン、アラビアゴム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース、白糖、D-マンニトール、トレハロース、デキストリン、プルラン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びポリビニルピロリドン等が例示される。
【0029】
崩壊剤は、例えば、乳糖、白糖、デンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、軟質無水ケイ酸及び炭酸カルシウム等である。
【0030】
溶剤としては、注射用水、生理食塩水、リンゲル液、アルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ゴマ油、トウモロコシ油、オリーブ油及び綿実油等が挙げられる。溶解補助剤は、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D-マンニトール、トレハロース、安息香酸ベンジル、エタノール、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム及び酢酸ナトリウム等である。
【0031】
懸濁化剤としては、例えば、ステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム及びモノステアリン酸グリセリン等の界面活性剤;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロース等の親水性高分子;ポリソルベート類、並びにポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0032】
等張化剤は、例えば、塩化ナトリウム、グリセリン、D-マンニトール、D-ソルビトール、ブドウ糖、キシリトール及び果糖等が挙げられる。緩衝剤は、例えば、リン酸塩、酢酸塩、炭酸塩及びクエン酸塩等の緩衝液等である。無痛化剤は、例えば、プロピレングリコール、塩酸リドカイン及びベンジルアルコール等である。
【0033】
防腐剤としては、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸及びソルビン酸等が挙げられる。抗酸化剤としては、亜硫酸塩及びアスコルビン酸塩等が例示される。着色剤としては、水溶性着色タール色素、レーキ色素及び天然色素等が挙げられる。甘味剤は、例えば、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、アスパルテーム及びステビア等である。
【0034】
血管攣縮抑制剤の投与量は、投与対象の性別、年齢、体重及び症状等によって適宜決定される。血管攣縮抑制剤は、オオムギ抽出物又はホルデニンが有効量となるように投与される。有効量とは、所望の結果を得るために必要なオオムギ抽出物又はホルデニンの量であり、治療又は処置する疾患に係る状態の進行の遅延、阻害、予防、逆転又は治癒をもたらすのに必要な量である。血管攣縮抑制剤の投与量は、特には、血管の異常収縮、血管攣縮又は血管痙攣を予防、抑制又は停止するために必要な量である。
【0035】
血管攣縮抑制剤の投与量は、例えば、0.01mg/kg~1000mg/kg、好ましくは0.1mg/kg~200mg/kg、より好ましくは0.2mg/kg~20mg/kgであり、1日に1回、又はそれ以上に分割して投与することができる。血管攣縮抑制剤を分割して投与する場合、血管攣縮抑制剤は、1日に1~4回投与される。また、血管攣縮抑制剤は、毎日、隔日、1週間に1回、隔週及び1ヶ月に1回等の様々な投与頻度で投与してもよい。なお、必要に応じて、上記の範囲外の量を用いることもできる。
【0036】
血管攣縮抑制剤の投与経路は特に限定されない。血管攣縮抑制剤は、例えば非経口又は経口で投与される。非経口投与の場合、静脈注射、皮下注射、腹腔内注射、筋肉内注射、経皮投与、経鼻投与、経肺投与、経腸投与、口腔内投与及び経粘膜投与等であってもよい。血管攣縮抑制剤は、点滴を介して投与されてもよい。
【0037】
血管攣縮抑制剤は、任意の形態の製剤とすることができる。血管攣縮抑制剤は、経口投与の場合、糖衣錠、バッカル錠、コーティング錠及びチュアブル錠等の錠剤、トローチ剤、丸剤、散剤及びソフトカプセル等のカプセル剤、顆粒剤、懸濁剤、乳剤及びドライシロップ等のシロップ剤、並びにエリキシル剤等の液剤であってもよい。非経口投与の場合、血管攣縮抑制剤は、注射剤、経皮吸収テープ、エアゾール剤及び坐剤等であってもよい。
【0038】
血管攣縮抑制剤の投与対象は、脊椎動物が好ましく、哺乳類動物がより好ましい。哺乳類動物としては、例えば、ヒト、チンパンジー及びその他の霊長類、イヌ、ネコ、ウサギ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ブタ、ラット、マウス及びモルモット等の家畜動物、愛玩動物及び実験用動物等が挙げられる。特に好ましくは、哺乳類動物はヒトである。
【0039】
本実施の形態に係る血管攣縮抑制剤は、下記実施例において、血管を形成する平滑筋細胞の異常収縮を抑制するオオムギ抽出物又はホルデニンを有効成分として含有する。このため、血管攣縮抑制剤は、血管攣縮を抑制することができる。
【0040】
オオムギ抽出物又はホルデニンは、下記実施例に示すように、平滑筋細胞の異常収縮を予防する。このため、上述の血管攣縮抑制剤は、血管攣縮予防剤として使用されてもよい。好ましくは、血管攣縮予防剤は、血管の異常収縮、血管攣縮又は血管痙攣が生じる前に投与される。
【0041】
別の実施の形態では、オオムギ抽出物又はホルデニンを有効成分として含む血管攣縮予防用経口組成物又は血管攣縮抑制用経口組成物が提供される。経口組成物としては、具体的には、サプリメント、食品組成物、飲食品、機能性食品及び食品添加剤が挙げられる。
【0042】
サプリメントの形態は、特に制限されず、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、糖衣錠、フイルム剤、トローチ剤、チュアブル剤、溶液、乳濁液、懸濁液等の任意の形態でよい。サプリメントは、オオムギ抽出物又はホルデニン以外に、サプリメントとして通常使用される任意の成分を含んでもよい。当該成分としては、例えば、アミノ酸、ペプチド;ビタミンE、ビタミンC、ビタミンA、ビタミンB及び葉酸等のビタミン類;ミネラル類;糖類;無機塩類;クエン酸又はその塩;茶エキス;油脂;プロポリス、ローヤルゼリー及びタウリン等の滋養強壮成分;ショウガエキス及び高麗人参エキス等の生薬エキス;ハーブ類;並びにコラーゲン等が挙げられる。
【0043】
オオムギ抽出物又はホルデニンを日常的に経口摂取しやすいように各種の食品又は飲料にオオムギ抽出物又はホルデニンを混合して機能性食品とすることで、オオムギ抽出物又はホルデニンを長期的に摂取することができる。“機能性食品”とは、健康の維持の目的で摂取する食品又は飲料を意味し、保健機能食品である特定保健用食品、栄養機能食品、健康食品及び栄養補助食品等を含む。この中でも保健機能食品である特定保健用食品又は栄養機能食品が好ましい。なお、機能性食品として製品化する場合には、食品に用いられる様々な添加剤、具体的には、着色料、保存料、増粘安定剤、酸化防止剤、漂白剤、防菌防黴剤、酸味料、調味料、乳化剤、強化剤、製造用剤及び香料等を添加してもよい。
【0044】
機能性食品の対象となる、食品及び飲料は特に限定されるものではない。機能性食品の形態は、例えば、栄養ドリンク、清涼飲料水、紅茶及び緑茶等の飲料;キャンデー、クッキー、錠菓、チューインガム及びゼリー等の菓子;麺、パン、米飯及びビスケット等の穀類加工品;ソーセージ、ハム及びかまぼこ等の練り製品;バター及びヨーグルト等の乳製品;ふりかけ;並びに調味料等である。なお、機能性食品には、甘味料、香料及び着色料等の添加物が含まれてもよい。
【0045】
経口組成物は、オオムギ抽出物又はホルデニンを植物の抽出物として含有してもよい。オオムギ抽出物又はホルデニンを機能性食品に配合する割合は任意であるが、血管の異常収縮、血管攣縮及び血管痙攣の抑制及び予防の少なくともいずれかに寄与する範囲で割合が選択される。オオムギ抽出物又はホルデニンは、食品添加剤として使用することも可能である。
【0046】
なお、他の実施の形態では、オオムギ抽出物又はホルデニンを患者に投与することにより血管攣縮を治療する方法が提供される。また、別の実施の形態は、血管攣縮を治療するためのオオムギ抽出物又はホルデニンの使用である。他の実施の形態では、血管攣縮抑制剤としての使用のためのオオムギ抽出物又はホルデニンが提供される。また、別の実施の形態は、血管攣縮を抑制するための医薬の製造のためのオオムギ抽出物又はホルデニンの使用である。
【0047】
好ましい他の実施の形態に係る血管攣縮抑制剤、血管攣縮予防剤、血管攣縮予防用経口組成物又は血管攣縮抑制用経口組成物は、ホルデニン、その塩又はそれらの溶媒和物を含有する。
【0048】
ホルデニンの塩は、薬理学上許容され、かつ抗酸化活性を示す塩であれば特に限定されない。塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩及びカリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩及びカルシウム塩等のアルカリ土類金属塩等、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩及びリン酸塩等の無機酸塩、並びに酢酸塩、プロピオン酸塩、ヘキサン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、グリコール酸塩、ピルビン酸塩、乳酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、リンゴ酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、o-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸塩、桂皮酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、1,2-エタンジスルホン酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-クロロベンゼンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩、4-メチルビシクロ[2.2.2]オクト-2-エン-1-カルボン酸塩、グルコヘプタン酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、トリメチル酢酸塩、第三級ブチル酢酸塩、ラウリル硫酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、及びムコン酸塩等の有機酸塩が挙げられる。
【0049】
溶媒和物は、薬理学上許容され、かつ抗酸化活性を示す溶媒和物であれば特に限定されない。溶媒和物は、ホルデニン又はその塩が溶媒と、共有結合、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス力、錯体及びインクルーション等を形成して安定化したものである。溶媒は、限定されず、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、アセトン、アセトニトリル、エチルエーテル及びメチルtert-ブチルエーテル等が挙げられる。溶媒和物は、好ましくは水和物であって、例えば、硫酸ホルデニン二水和物が挙げられる。
【0050】
ホルデニンは、下記実施例に示すように、抗酸化活性を有する。このため、上述のホルデニン、その塩又はそれらの水和物を含有する血管攣縮抑制剤は、抗酸化剤として使用されてもよい。本実施の形態に係る抗酸化剤は、種々の疾患を引き起こす過剰な活性酸素による酸化的ストレスを抑制する。
【0051】
過剰な活性酸素によって引き起こされる疾患としては、例えば、成人性呼吸窮迫症候群、動脈硬化、高血圧症及び血栓症等の循環器疾患、腎炎及び腎不全等の腎疾患、アルコール性肝炎及び肝硬変等の肝疾患、白内障及び抹消神経障害等の糖尿病合併症、胃潰瘍及び十二指腸潰瘍等の消化管疾患、慢性関節リウマチ、癌、老化促進並びに紫外線障害等が挙げられる。上記抗酸化剤は、これらの疾患の予防、抑制及び治療等に有用である。
【0052】
以下の実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【実施例0053】
[試験例1:抗酸化活性]
オオムギが有する抗酸化能を測定するために1,1-diphenyl-2-picrylhydrazyl(DPPH)を用いたラジカル消去能による抗酸化活性評価試験を実施した。DPPHは不対電子を有する安定した人工的フリーラジカルでそれ自身が紫色を呈している。抗酸化物質により、DPPHの窒素のラジカルに水素原子がつくことで、ラジカルが消去される。ラジカルが消去されると紫色が退色するため、吸光度が減少する。よって、吸光度を測定することで抗酸化能を調べることができる。本試験ではTrolox(3,4-ジヒドロ-6-ヒドロキシ-2,5,7,8-テトラメチル-2H-1-ベンゾピラン-2-カルボン酸)当量で抗酸化活性を評価した。
【0054】
(測定試料の調製)
オオムギ各品種(ラトローブ、コンパス、サチホゴールデン、はるか二条、マンネンボシ、サルート、コープランド、ライ麦及びハトムギ)を搗精し、外皮、仕上糠及び丸麦を試料として取得した。なお、マンネンボシの外皮は仕上糠と合わせて同じ試料とした。コープランドの試料は胚芽のみで、ライ麦とハトムギは実を搗精せずに試料とした。比較例として、とうもろこし、小麦、タイ米、国産米及び米ぬかを用いた。仕上糠以外の試料についてはミルで粉砕し粉末状にした。
【0055】
試料1gに50%エタノール10mLを添加し、1000rpmで10分間、撹拌した。4℃で15分間、超音波処理を行い、室温にて15分静置させた。上澄みをマイクロチューブに回収し、遠心分離(4℃、15分、8000×g)により、上澄みと沈殿物に分け、上澄みを回収した。濃縮遠心機を用いて回収した上澄みを濃縮乾固させた。濃縮乾固物に50%エタノールを添加し、2~64倍まで段階希釈を行い、試料溶液を得た。
【0056】
2.5mgのTroloxに50%エタノール1mLを添加後、ボルテックスミキサーで溶解し、10mM Trolox溶液とした。Trolox溶液を50%エタノール溶液で段階希釈したものをTrolox標準溶液とした。暗室で0.62gのDPPHにエタノール2mLを添加後、ボルテックスミキサーで撹拌し、800μM DPPH溶液を得た。
【0057】
次のように、Trolox標準溶液による検量線を取得した。Trolox標準溶液を96穴マイクロプレートの各ウェルに50μL添加した。ブランクにはTrolox標準溶液の代わりに50%エタノールを50μL添加した。各ウェルに50%エタノール溶液を100μL添加し、ピペッティングにより撹拌した。DPPH溶液を暗室で各ウェルに50μL添加し、ピペッティングにより撹拌した。コントロールにはDPPH溶液の代わりにエタノールを50μL添加した。遮光して室温にて20分間静置後、マイクロプレートリーダーで540nmの吸光度を測定した。
【0058】
Trolox標準溶液を添加したときの吸光度をTroloxとし、以下の式からTrolox標準溶液の抗酸化活性率を求めた。
抗酸化活性率(%)={(ブランク-コントロール)-(Trolox-コントロール)}/(ブランク-コントロール)×100
【0059】
抗酸化活性率(%)を縦軸、Trolox濃度(mM)を横軸にプロットし、Trolox標準溶液による検量線を得た。この検量線からサンプル1gあたりのTrolox当量を算出した。
【0060】
試料溶液を96穴マイクロプレートリーダーの各ウェルに50μL添加した。ブランクにはサンプル溶液の代わりに50%エタノール溶液を50μL添加した。各ウェルに50%エタノール溶液を100μL添加し、ピペッティングにより撹拌した。DPPH溶液を暗室で各ウェルに50μLずつ添加し、ピペッティングにより撹拌した。コントロールにはDPPH溶液の代わりにエタノールを50μL添加し、ピペッティングにより撹拌した。遮光して室温にて20分間静置後、マイクロプレートリーダーで540nmの吸光度を測定した。
【0061】
(結果)
図1に試料の抗酸化活性を示す。主に外皮の高い抗酸化活性が認められた。
【0062】
[試験例2:抗酸化活性成分の同定]
オオムギの抗酸化活性成分を同定するため、ゲル濾過クロマトグラフィーによる分画を行った。カラムとしてPD MidiTrap G-10カラムを使用し、分子量700を超える物質と分子量700以下の物質とを分離した。
【0063】
最も抗酸化活性が高かったサチホゴールデンの外皮の濃縮乾固物にエタノールを添加し、ボルテックスミキサーで溶解した。超純水を適量添加し、超音波処理によりさらに乾固物を溶解させた。マイクロチューブに溶液を移し、遠心分離機で夾雑物を沈殿させた。上澄みを回収し、試料溶液とした。
【0064】
カラムを振ってレジンを懸濁した。レジンが自然沈殿してから、上部と下部のキャップを取り外し、カラム保存液を流出させた。カラムに16mLの50mM炭酸水素アンモニウム溶液を添加し平衡化した。この際に出てきた溶液は破棄した。最大1.0mLの試料溶液をカラムに添加し、試料溶液がレジンに入ってから、添加した試料溶液との合計が1.7mLになるように50mM炭酸水素アンモニウム溶液をカラムに添加した。炭酸水素アンモニウム溶液がレジンに入ることを確認した。なお、この際のフロースルーは破棄した。
【0065】
50mM炭酸水素アンモニウム溶液を1.2mL添加し、溶出させたものを高分子画分として回収した。50mM炭酸水素アンモニウム溶液を適量添加し、溶出させたものを低分子画分として回収した。凍結乾燥機により各画分を凍結乾燥させた。凍結乾燥物に50%エタノールを添加し、各画分の濃度を20mg/mLに調製した後、試験例1と同様に抗酸化活性を測定した。
【0066】
(結果)
図2は、分画前の試料の抗酸化活性に対する各画分の抗酸化活性の割合である抗酸化活性率を示す。どちらの画分にも抗酸化活性が残存していた。分子量が大きい物質は、特に経口投与では体内に吸収されないため、低分子画分における活性成分を以下で同定した。
【0067】
(HPLCによる分画及び分取)
HPLCでの分取には、LC-2000(日本分光社製)を用い、分離カラムとして、TSKgel ODS-100Z 5μm(4.6mmI.D.×15.0cm、東ソー社製)を用いた。低分子画分を濃縮乾固物し、0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)溶液/アセトニトリル等量混合溶液を添加し、超音波処理した。溶液を0.45μmフィルターに通して濾過し、測定試料とした。HPLCに測定試料を流し、検出されたピークを分取した。分析条件を表1に示す。
【0068】
【0069】
(質量分析計付きHPLC(LC/MS)による分子量決定)
活性成分の同定には、HPLC Shimadzu system LC20(島津製作所製)を装備したQTRAP LC-MS/MS 3200システム(エービー・サイエックス社製)を用いた。LC/MSの条件を表2に示す。
【0070】
【0071】
分離カラムは、TSKgel ODS-100Z 5μm(4.6mmI.D.×15.0cm、東ソー社製)を用い、カラムオーブン温度は室温とし、流速は0.4mL/分でサンプルは10μL注入した。分離は、蒸留水(11307-79、関東化学社製)、アセトニトリル(純度99.9%、01033-79、関東化学社製)で、1:1のイソクラティックで行った。データの収集には、Analyst(登録商標) software(version1.5.1)を使用した。データ解析には、MassBank及びMETLINを用いた。
【0072】
データベースを照会した結果、活性成分としてホルデニンが同定された。ホルデニンが実際に大麦試料に含まれているか、また、検出される多数のピークのうち、どれがホルデニンのリテンションタイムなのかを確認するため、HPLCによる分画及び分取と同条件でリテンションタイムを確認した。
【0073】
[試験例3:ホルデニンの定量及びホルデニンと抗酸化活性との相関]
(ホルデニンの定量)
ホルデニンをHPLCによって定量した。LC-2000(ポンプ:PU-2080、検出器:UV-2070、オートサンプラー:AS-4050、カラムオーブン:CO-4060、日本分光社製)を用い、320nmの吸収スペクトルを検出した。分離カラムは、TSKgel ODS-100Z 5μm(4.6mmI.D.×15.0cm、東ソー社製)を用いた。カラムオーブン温度は40℃とし、流速は1mL/分で、サンプルは10μL注入した。分離は、0.1vol%TFA溶液及びメタノールで、1:1のイソクラティックで行った。
【0074】
ホルデニン(東京化成工業社製)をメタノール:0.1vol%TFA混合溶液に溶解し、100、50、25、12.5、6.25μMとなるように希釈し測定することで検量線を作成した。試験例1と同じ試料を50%エタノールにより抽出し濃縮乾固した乾固物をメタノール:0.1vol%TFA混合溶液に溶解し、乾固物重量が10mg/mLになるように調製し、0.45μmフィルターでろ過することで測定試料を得た。定量は絶対検量線法にて行った。
【0075】
(結果)
表3は、ホルデニンを検出できた試料と、試料の抗酸化活性に対する分取した画分の抗酸化活性の割合である抗酸化活性率とを示す。
図3は、ホルデニン含量に対する抗酸化活性率を示す。ホルデニン含量と抗酸化活性率との間には強い正の相関があった。
【0076】
【0077】
[試験例4:ホルデニンによる異常収縮予防効果の評価)
1.0×105細胞/ウェルの正常ヒト冠状動脈平滑筋細胞の細胞懸濁液100μLと増殖培地(正常ヒト平滑筋細胞用増殖培地KS-2170S、倉敷紡績社製)200μLとを24ウェルプレートの各ウェルに播種し、37℃、CO2濃度5%に設定したCO2インキュベーターで培養した。なお、以下での細胞の培養は37℃、CO2濃度5%に設定したCO2インキュベーターで培養した。
【0078】
細胞の培養開始から約24時間後に上清を100μL/ウェル除去し、最終濃度が100μg/mLとなるようホルデニンを200μL/ウェル添加後、80~90%コンフルエントになるまで約48時間培養した。培養後、上清を全て除去し、基礎培地(正常ヒト平滑筋細胞用基礎培地KS-2370S、倉敷紡績社製)300μL/ウェルとホルデニン100μL/ウェル(最終濃度:100μg/mL)とを添加し、12時間以上培養した。
【0079】
プレートをインキュベーターから取り出し、上清を200μL/ウェルずつ除去した後、6μM Fluo3-AMを200μL/ウェル添加(最終濃度:3μM/ウェル)し、1時間培養した。さらに、上清を200μL/ウェル除去し、2mM CaCl2を200μL/ウェル添加後、細胞の培養と同じ条件下で30分間反応させた。培養後、上清を全て除去し、基礎培地100μL/ウェルとホルデニン100μL/ウェル(スフィンゴシルホスホリルコリン(SPC) 200μL/ウェル添加後の最終濃度が100μg/mL)とを添加し異常収縮の形態観察を行った。
【0080】
異常収縮の形態観察では、1ウェルずつ蛍光顕微鏡(CKX53、オリンパス社製)にて定点観察し、異常収縮誘発前の画像を取得後、60μM SPCを200μL/ウェル(最終濃度:30μM/ウェル)添加し、1、3、5及び10分後の画像を取得した。細胞は異常収縮すると、縮んでウェルの底から剥がれる。異常収縮誘発前及び誘発後のウェルの底に付着している細胞の表面積を比較することで、異常収縮を評価した。詳細には、得られた画像について、ImageJ(アメリカ国立衛生研究所製)あるいはBZシリーズ解析アプリケーション(キーエンス社製)にて細胞の表面積を算出し、異常収縮誘発前の細胞の表面積を100とした相対値にて異常収縮予防効果を評価した。
【0081】
(結果)
図4は、細胞表面積の相対値の経時変化を示す。ホルデニンに暴露しなかった細胞は、異常収縮により細胞表面積が低下した。一方、ホルデニンに暴露した細胞では、細胞表面積がほとんど低下しなかった。
【0082】
[試験例5:オオムギ抽出物による異常収縮予防効果の評価]
試験例1の各試料30mgを70%エタノールにより抽出し、濃縮乾固した乾固物をHEPES緩衝液(HK-3320、倉敷紡績社製)で溶解し4mg/mL抽出液とした。
【0083】
試験例4と同様に、抽出液について異常収縮予防効果を評価した。抽出液の添加では、各ウェルにおける抽出液の最終濃度が2mg/mLとなるようにした。
【0084】
(結果)
表4に各試料における細胞表面積の相対値を示す。なお、表4における相対値は平均値±標準偏差で示されている(n=4)。ラトローブ、コンパス、サチホゴールデン及びはるか二条の外皮、並びにサチホゴールデン、はるか二条及びマンネンボシの仕上糠の抽出物が特に強い異常収縮予防効果を有していた。
【0085】
【0086】
本実施例により、オオムギ抽出物及びホルデニンが抗酸化活性及びSPCによる動脈平滑筋細胞の異常収縮を抑制することが示された。
【0087】
上述した実施の形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。