(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022144885
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】磁気クランプ装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 3/154 20060101AFI20220926BHJP
【FI】
B23Q3/154 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021046078
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】391003989
【氏名又は名称】株式会社コスメック
(72)【発明者】
【氏名】吉田 正和
【テーマコード(参考)】
3C016
【Fターム(参考)】
3C016GB06
(57)【要約】
【課題】 磁気プレート上における磁束変化した位置を検出できる磁気クランプ装置を提供することにある。
【解決手段】
磁気クランプ装置の磁気プレート(8)に複数の磁気ユニット(11)が設けられる。その磁気ユニット(11)は、アルニコ磁石(14)と、そのアルニコ磁石(14)を通る磁束が変化したときに誘起電圧が発生する探りコイル(20)とを有している。前記磁気プレート(8)が第1エリア(22a)と第2エリア(22b)とに分けられる。前記第1エリア(22a)に配設される前記磁気ユニット(11)の前記探りコイル(20)が直列に接続される。前記第2エリア(22b)に配設される前記磁気ユニット(11)の前記探りコイル(20)が直列に接続される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気吸着対象物(7)を磁気吸着する吸着面(9)を有する磁気プレート(8)と、
前記吸着面(9)に開口される複数の装着孔(10)と、
前記装着孔(10)ごとに設けられる磁気ユニット(11)と、を備え、
前記磁気ユニット(11)は、
磁極反転用コイル(12)と、
前記磁極反転用コイル(12)に一方向に流される電流により磁極が反転されると共に、前記一方向と逆の他方向に流される電流により磁極が反転される前の状態に戻される反転可能磁石(14)と、
前記反転可能磁石(14)を通過する磁束が変化することにより、誘起電圧が発生する探りコイル(20)と、を有しており、
前記磁気プレート(8)が複数のエリア(22)に分けられ、その複数のエリア(22)のうちの1つのエリアである第1エリア(22a)に、複数の前記磁気ユニット(11)が配設され、
前記第1エリア(22a)に配設される複数の前記磁気ユニット(11)の前記探りコイル(20)が直列に接続されて、前記第1エリア(22a)の複数の前記探りコイル(20)によって第1検出用回路(23a)が構成され、
前記第1エリア(22a)とは別のエリアである前記第2エリア(22b)に配設される複数の前記磁気ユニット(11)の前記探りコイル(20)が直列に接続されて、前記第2エリア(22b)の複数の前記探りコイル(20)によって第2検出用回路(23b)が構成される、ことを特徴とする磁気クランプ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の磁気クランプ装置において、
前記第1エリア(22a)に配設される複数の前記磁気ユニット(11)の前記磁極反転用コイル(12)が直列に接続されて、前記第1エリア(22a)の複数の前記磁極反転用コイル(12)によって第1磁極反転用回路(24a)が構成され、
前記第2エリア(22b)に配設される複数の前記磁気ユニット(11)の前記磁極反転用コイル(12)によって第2磁極反転用回路(24b)が構成される、ことを特徴とする磁気クランプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金型、ワーク、ツールを基板に磁気吸着させる磁気クランプ装置に関するものであって、特に、その磁気クランプ装置の探りコイルに発生する誘起電圧を測定して、その誘起電圧から磁束の変化量を算出する磁気クランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の磁気クランプ装置には、従来では、特許文献1(日本国・特開2011-206860号公報)に記載されたものがある。その従来技術は、次のように構成されている。
金型を磁気吸着する吸着面を磁気プレートが有している。その吸着面に複数の装着孔が開口される。その装着孔ごとに磁気ユニットが設けられる。その磁気ユニットは、磁極反転用コイルと、アルニコ磁石と、探りコイルとを有している。そのアルニコ磁石は、磁極反転用コイルに一方向に流される電流により磁極が反転される。また、アルニコ磁石は、一方向と逆の他方向に流される電流により磁極が反転される前の状態に戻される。そのアルニコ磁石の外周壁に探りコイルが巻かれている。アルニコ磁石に通過する磁束が変化するときに、探りコイルに誘起電圧が発生する。その誘起電圧から磁束の変化量が算出される。なお、磁気ユニットにおけるすべての磁極反転用コイルは、直列に接続されている。また、磁気ユニットにおけるすべての探りコイルも直列に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の従来技術は次の問題がある。
上記のすべての探りコイルが直列に接続されるので、その探りコイルでは磁気プレート上のどの位置で磁束が変化しているのかを検出することができなかった。
本発明の目的は、磁気プレート上における磁束変化した位置を検出できる磁気クランプ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明は、例えば、
図1から
図4に示すように、磁気クランプ装置を次のように構成した。
磁気吸着対象物7を磁気吸着する吸着面9を磁気プレート8が有する。前記吸着面9に複数の装着孔10が開口される。前記装着孔10ごとに磁気ユニット11が設けられる。前記磁気ユニット11は、磁極反転用コイル12と、反転可能磁石14と、探りコイル20とを有している。反転可能磁石14は、前記磁極反転用コイル12に一方向に流される電流により磁極が反転されると共に、前記一方向と逆の他方向に流される電流により磁極が反転される前の状態に戻される。前記反転可能磁石14を通過する磁束が変化することにより、探りコイル20に誘起電圧が発生する。前記磁気プレート8が複数のエリアに分けられ、その複数のエリアのうちの1つのエリアとしての第1エリア22aに、複数の磁気ユニット11が配設される。前記第1エリア22aに配設される複数の前記磁気ユニット11の前記探りコイル20が直列に接続されて、前記第1エリア22aの複数の前記探りコイル20によって第1検出用回路23aが構成される。前記第1エリア22aとは別のエリアとしての前記第2エリア22bに配設される複数の前記磁気ユニット11の前記探りコイル20が直列に接続されて、前記第2エリア22bの複数の前記探りコイル20によって第2検出用回路23bが構成される。
【0006】
本発明は、次のように作用効果を奏する。
前記磁気プレートが複数のエリアに分けられ、そのエリアごとに探りコイルが直列に接続されるので、探りコイルに発生する誘起電圧をエリアごとに検出できる。これにより、金型の状態、例えば、金型の有無や、磁気吸着された金型に外力が作用された時の剥がれや磁気吸着位置のずれをエリアごとに検出することができる。
【0007】
前記第1エリア22aに配設される複数の前記磁気ユニット11の前記磁極反転用コイル12が直列に接続されて、前記第1エリア22aの複数の前記磁極反転用コイル12によって第1磁極反転用回路24aが構成される。前記第2エリア22bに配設される複数の前記磁気ユニット11の前記磁極反転用コイル12によって第2磁極反転用回路24bが構成される。
この場合、上記探りコイルに発生するエリアごとの誘起電圧に応じて、第1エリアの磁極反転用コイルと第2エリアの磁極反転用コイルとを別々にまたは同時に操作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態を示し、成型機を示す模式図である。
【
図2】
図2は、上記成型機に装着された磁気クランプ装置を示す正面図である。
【
図3】
図3は、
図2中のA-A線の矢視図であり、磁気クランプ装置の磁化解除状態を示す図である。
【
図4】
図4は、上記磁気クランプ装置の磁化状態を示す断面図であり、
図3に類似する図である。
【
図5】
図5は、本発明の第2実施形態を示し、
図2に類似する正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1実施形態を
図1から
図4によって説明する。
図1に示す成形機1は、固定盤2と支持壁3とを備える。その固定盤2と支持壁3とに跨って4本のガイドロッド4が平行に設けられ、そのガイドロッド4に可動盤5が当該ガイドロッド4に沿って移動可能に設けられる。その固定盤2の側壁と可動盤5の側壁とに磁気クランプ装置6が、それぞれ、装着される。その磁気クランプ装置6の磁力によって金型(磁気吸着対象物)7が磁気吸着される。その磁気クランプ装置6は、
図1から
図4に示すように、次のように構成される。
【0010】
上記磁気クランプ装置6は、磁気プレート8を備え、その磁気プレート8が強磁性の部材、例えば、鉄製の部材によって構成されている。その磁気プレート8に吸着面9が設けられ、その吸着面9に金型7が磁気吸着される。その磁気プレート8の吸着面9に複数の装着孔10が円形に開口される。その1つの装着孔10内に1つの磁気ユニット11が設けられる。その磁気ユニット11は、
図3および
図4に示すように次のように構成される。
【0011】
上記の装着孔10に、磁極反転用のコイル12が複数回巻かれたリング状のボビン13が挿入される。そのボビン13の内周孔に反転可能磁石14が挿入されて、反転可能磁石14が装着孔10の底壁10aに当接されている。その反転可能磁石14は、例えば、アルニコ磁石によって構成される。その反転可能磁石14の右(吸着面9)側に、磁気プレート8と同様の強磁性の部材によって構成される磁極部材15が、当該反転可能磁石14に当接するように挿入される。その磁極部材15の外周壁の吸着面側端部に、リング状の非磁性部材16が装着される。その非磁性部材16は、例えば、真鍮やステンレスの部材によって構成されている。その非磁性部材16の外周壁に周方向に形成される収容溝に、封止部材としてのOリング17が装着される。その非磁性部材16、磁極部材15の外周壁、ボビン13、装着孔10の内周壁等によって区画形成される環状空間18に、永久磁石19、例えば、ネオジム磁石が装着される。
【0012】
上記本実施形態では、
図3および
図4に示すように、複数の磁気ユニット11のうちの1つの磁気ユニット(以下、第1磁気ユニット11aと呼ぶ)において、反転可能磁石(以下、第1アルニコ磁石14aと呼ぶ)の右側(吸着面9に近い側)の一端部が、S極となるように当該着磁されている。また、その一端部とは反対側の端部である他端部が、N極となるように着磁されている。
【0013】
上記の第1磁気ユニット11aに隣接する別の磁気ユニット(以下、第2磁気ユニット11bと呼ぶ)は、第1磁気ユニット11aと同じように構成されているが、反転可能磁石(以下、第2アルニコ磁石14bと呼ぶ)の右側(吸着面9に近い側)の一端部がN極となるように、当該第2アルニコ磁石14bが着磁されている点で第1磁気ユニット14aと異なる。また、第2アルニコ磁石14bの他端部は、S極に着磁されている。また、第2磁気ユニット11bのコイル(第2コイル)12bは、第1磁気ユニット11aのコイル(第1コイル)12aとは逆方向となるように第2ボビン13bに巻かれて配設されており、第2コイル12bと第1コイル12aとは、直列に接続されている。そのコイル12a、12bに一方向に所定時間、所定値の電流を流すことにより、第1アルニコ磁石14aおよび第2アルニコ磁石14bが一度に磁極が切り換えられる。
【0014】
上記第1磁気ユニット11aの永久磁石(以下、第1ネオジム磁石19aと呼ぶ)は、その内周側がN極となるように、また、外周側がS極となるように着磁されている。また、上記第2磁気ユニット11bの永久磁石(第2ネオジム磁石19b)は、その内周側がS極となるように、また、外周側がN極となるように着磁されている。このため、第1アルニコ磁石14aの一端部がS極であり、第2アルニコ磁石14bの一端部がN極である磁気クランプ装置の磁化解除状態では、
図3中の二点鎖線で示すように、磁束が、第1アルニコ磁石14aを起点として、第1磁気ユニット11aの磁極部材(第1磁極部材15a)、第1ネオジム磁石19a、磁気プレート8、第2ネオジム磁石19b、第2磁気ユニット11bの磁極部材(第2磁極部材15b)、第2アルニコ磁石14b、磁気プレート8を順に通って第1アルニコ磁石14aに戻る。このとき、磁気プレート8内部にだけ磁界が発生するので、磁気プレート8に金型7を近づけても磁気吸着されない。
【0015】
また、第1アルニコ磁石14aの一端部がS極からN極に切り換えられると共に、第2アルニコ磁石14bの一端部がN極からS極に切り換えられた磁気クランプ装置の磁化状態では、
図4中の二点鎖線で示すように、磁束の一部は、第1アルニコ磁石14aを起点として、第1磁極部材15a、金型7、第2磁極部材15b、第2アルニコ磁石14b、磁気プレート8を順に通って第1アルニコ磁石14aに戻る。このとき、磁界が磁気プレート8とその磁気プレート8に接触された金型7とに跨って発生するので、金型7が磁気プレート8に磁気吸着される。
【0016】
本実施形態の磁気クランプ装置6では、ネオジム磁石19と非磁性部材16との間に形成される環状空間18内に探りコイル20が、非磁性部材16の外周面に沿って巻かれるように配設される。その探りコイル20は、磁極部材15やアルニコ磁石14を通過する磁束を検出するものである。上記第1磁気ユニット11aの探りコイル(第1探りコイル)20aが、第2磁気ユニットの探りコイル(第2探りコイル)20bに直列に接続される。その第2探りコイル20bは、第1探りコイル20aとは逆方向となるように第1磁気ユニット11bの非磁性部材16の外周面沿って巻かれるように配設される。上記第1磁気ユニット11aの装着孔10と第2磁気ユニット11bの装着孔10とを連通させる連通孔21が磁気プレート8の裏面に開口され、第1探りコイル20aの一端と第1探りコイル20bの一端とが連通孔21内に挿入される。それら探りコイル20a、20bが連通孔21内で結線される。このようにして、隣り合う磁気ユニット11a、11bの探りコイル20a、20bが直列に接続される。その探りコイル20a、20bに発生する誘起電圧を制御装置の電圧計が所定時間ごと(1msec程度)に計測する。その測定結果が、制御装置のメモリ部に送られて記録されていく。そのメモリ部に記録された誘起電圧eとコイルの巻き数Nとから磁束の変化量dφが、次の式を使って制御装置の演算部によって算出される。
e=-Ndφ/dt
なお、上記式において、出力電圧eを時間で積分し、コイルの巻き数Nで除することで磁束変化量φが算出される。
【0017】
上記実施形態の磁気クランプ装置6において、磁気クランプ装置6が磁化解除状態から磁化状態に切り換えられるときに磁束が変化し、その磁束の変化量を初期磁束と呼ぶこととする。また、磁気プレート8に磁気吸着された金型7が外力や金型の自重などによって剥がれかかったとき、もしくは、磁気吸着位置がずれたときには、初期磁束から磁束が減少するように変化し、その磁束を磁束消失と呼ぶこととする。
【0018】
前述したように、金型7が剥がれかけるなどしたときに、上記初期磁束から磁束消失分だけ磁束が減少していく。その初期磁束から磁束消失値を差し引いた値が、予め設定された閾値を下回ったときに、磁気プレート8から金型7が落下する可能性があることを制御装置の判定部が判断する。このとき、判定部が判定結果に応じた信号を警告器に送信する。警告器は、金型7が磁気プレート8から落下する可能性がある旨の警告等を表示する。
【0019】
上記のように、警告が表示されたときに、金型7が初めに磁気固定した磁気プレート8上の位置からほとんど移動されておらず成型機1の駆動に何ら問題ないことが作業者などによって確認された場合には、次のような再磁化動作を行う。再磁化動作は、まず、可動盤5を固定盤2に向けて移動させて、可動盤5と固定盤2によって金型7を挟み込む。次いで、磁気クランプ装置6を磁化状態から磁化解除状態に切り換えて、再び磁化解除状態から磁化状態へ切り換える。これにより、磁気クランプ装置6の磁束を、消失する前の初期状態に戻すことができる。
【0020】
本実施形態では、
図2に示すように、磁気プレート8に24個の磁気ユニット11が配設されている。その磁気プレート8が上下左右に4つのエリアに分割されている。その磁気プレート8を正面からみて右上のエリアを第1エリア22aと呼び、右下のエリアを第2エリア22bと呼び、左下のエリアを第3エリア22cと呼び、左上のエリアを第4エリア22dと呼ぶこととする。その第1エリア22aに6つの磁気ユニット11が配設されている。その6つの磁気ユニット11の探りコイル20は、
図2中に点線で示すように直列に接続されて、検出用回路23(第1検出回路23a)を形成し、その検出用回路の端部が(図示しない)制御装置に接続されている。なお、検出用回路23(第1検出回路23aのみならず後述する第2検出回路23bから第4検出回路23dを含む)としての電気配線は、磁気プレート8の裏面壁等に形成される溝や孔内に配設される。また、同様に、後述する反転用回路24(第1反転用回路24aから第4反転用回路24d)としての電気配線も、磁気プレート8の裏面壁等に形成される溝や孔内に配設される。このため、
図2中に検出用回路23と反転用回路24とを併せて点線で示しているが、本実施形態の検出用回路23と反転用回路24とは、別々の配線によって構成されている。
【0021】
上記の第1エリア22a以外の第2エリア22b~第4エリア22dにも、それぞれ、6つの磁気ユニット11が配設され、その6つの磁気ユニット11の6つの探りコイル20が直列に接続されている(第2検出用回路23bから第4検出用回路23d)。その6つの探りコイル20に発生する誘起電圧を、エリアごとに測定することにより、磁束消失時の磁束変化量を制御装置がエリアごとに算出できる。これにより、磁気プレート8に磁気吸着された金型7が当該磁気プレート8に対して移動したり、剥がれたりしたことを制御装置がエリアごとに検出できる。また、各エリアにおける磁束変化量の総量が所定値を超えたときに、磁気プレート8から金型7が落下するおそれがあると制御装置が判断する。
【0022】
また、上記各エリア22内に配設される6つの磁気ユニット11において、アルニコ磁石14の磁極を反転させるコイル12が直列に接続されて磁極反転用回路25(第1磁極反転用回路25a)を形成し、その磁極反転用回路25aの端部が(図示しない)電源装置に接続されている。他のエリアの磁気ユニット11もエリアごとに直列に接続されている(第2磁極反転回路25bから第4磁極反転回路25d)。このため、磁気プレート8から金型7が落下するおそれがあると制御装置が判断した場合には、磁気クランプ装置が金型を磁気吸着する磁力を初期状態に戻すために、当該磁気クランプ装置6を一旦磁化解除状態にして、その後、磁化状態に切り換える。その手順は次のようである。まず、4つのエリアのうちの3つのエリアの磁気ユニットによって金型を落下させずに磁気吸着できるときの磁束を金型ごとに予め測定もしくは算出しておき、その測定値もしくは算出値(以下、測定値等という)を基準値として制御装置のメモリ部に記憶しておく。4つのエリアのうちの3つのエリアの磁束の合計が基準値に達した場合には、成型機1の動作を停止して(成型機1の作動に影響ない場合には成型機1を動作させたままでもよい)、4つのエリア22のうちの1つのエリアの磁気ユニット11を磁化状態から磁化解除状態へ切り換えた後、磁化状態へ再度切り換える(以下、再磁化動作という)。この再磁化動作を他の3つのエリアの磁気ユニットにおいても順に実施する。このため、金型を固定盤と可動盤で挟み込む必要がある前述の従来の磁気クランプ装置とは異なり、本実施形態の磁気クランプ装置6では金型7を挟み込む必要がない。従って、本実施形態の磁気クランプ装置では再磁化動作を簡素にできる。
【0023】
図5は、本発明の第2実施形態を示している。この第2実施形態においては、上記の第1実施形態の構成部材と同じ部材(または類似する部材)には原則として同一の参照数字を付けて説明する。この第2実施形態が上記の第1実施形態と異なる点は次の通りである。
【0024】
図5に示す磁気プレート8が5つのエリアに分けられている。その5つのエリアのうちの中央のエリアを第1エリア22aと呼ぶこととして、その第1エリア22aの右側のエリアと左側のエリアとに離間されて配置されている2つのエリアを合わせて第2エリア22bと呼ぶこととして、その第2エリア22bより左右外側の2つのエリアを併せて第3エリア22cと呼ぶこととする。第1エリア22aには16個の磁気ユニット11が設けられ、その16個の磁気ユニット11の磁極反転用のコイル12が直列に接続されると共に、探りコイル20も直列に接続される。また、第2エリア22bの8個の磁気ユニット11および第3エリア11の8個の磁気ユニットにおいても、第1エリア22aと同様に磁極反転用のコイル12および探りコイル20が、エリアごとに直列に接続される。
【0025】
上記磁気クランプ装置6において、サイズの異なる金型7が磁気プレート8に磁気吸着されることがある。そのサイズが、例えば、すべてのエリアを覆う程度の大きさである大型金型7A、第1エリア22aおよび第2エリア22bを覆う程度の大きさである中型金型7B、第1エリア22aのみを覆う程度の大きさである小型金型7Cであるときに、上記磁気クランプ装置6は次のような手順でそれぞれの金型7を磁気プレート8に磁気吸着させる。まず、固定盤2と可動盤3とによって挟み込んだ状態の大型金型7Aを磁気吸着させるときに、第1エリア22aおよび第2エリア22bの磁気ユニット11を作動させて磁化解除状態から磁化状態に切り換える。このとき、第2エリア22bの探りコイル20に発生する誘起電圧から磁束が算出される。その算出磁束値が所定値以上のときに、第3エリア22cの磁気ユニット11を作動させる。これにより、3つのエリアの磁気ユニット11によって大型金型7Aが吸着固定される。
【0026】
上記の磁気クランプ装置6が中型金型7Bを磁気プレート8に磁気吸着させる手順は、大型の金型7Aと同じである。このとき、第3エリア22cの探りコイル20に誘起電圧がほとんど発生しないので、制御装置は、金型7のサイズが中型であることを検知する。
【0027】
上記の磁気クランプ装置6が小型金型7Cを磁気プレート8に磁気吸着させるときには、まず、第1エリア22aおよび第2エリア22bの磁気ユニット11を作動させて磁化解除状態から磁化状態に切り換える。このとき、第2エリア22bの探りコイル20に誘起電圧がほとんど発生しないので、制御装置は、金型7のサイズが小型であると検知する。また、第1エリア22aおよび第2エリア22bの磁気ユニット11によって小型の金型7を磁気プレート8に十分に磁気吸着できるので、第3エリア22cの磁気ユニット11のコイル12には電流を供給しない。このため、第3エリア22cの磁気ユニット11は作動させないので、消費電力を低く抑えることができる。
【0028】
上記の各実施形態は次のように変更可能である。
上記実施形態では、全ての磁気ユニット11に対して探りコイル20を設けているが、エリア22内に配置される磁気ユニット11のうちの1つの磁気ユニットに選択的に探りコイル20を設けるようにしても良い。また、探りコイル20は、環状空間18に1巻き分だけ挿入されることに代えて、1巻きよりも多く巻くようにしても、または1巻きに満たなくてもよい。
上記実施形態では、磁気プレート8を3つまたは4つのエリアに分割しているが、これに限られず、2つのエリアでも5つ以上でもよい。
上記実施例において、探りコイル20と磁極反転用コイル12とを別々のコイルにしたが、磁極反転用コイル12を探りコイル20として切り換えて使用しても良い。なお、磁極反転用コイル12を探りコイル20として使用する場合には、切り換えのための回路を設ける。磁極反転用コイル12は、ボビン13に複数巻きしているので、巻き数が少ない場合よりも感度が向上するという利点がある。
上記探りコイル20は、非磁性部材16の外周に巻かれるように配設されることに代えて、磁極部材15の外周またはアルニコ磁石の外周に巻かれるように配設されてもよい。
上記警告器は、例示したLED表示器に限られず、スピーカ、警告ランプなど、警告の種別を認識できるものであれば良い。
上記の実施形態では、第1磁気ユニット11aの第1アルニコ磁石14aの一端部がS極に、また、他端部がN極に着磁され、第2磁気ユニット11bの第2アルニコ磁石14bの一端部がN極に、また、他端部がS極に着磁されている。これに代えて、すべての磁気ユニット11のアルニコ磁石14の一端部が同じ磁極となるようにしてもよい。これにより、磁極部材に面するアルニコ磁石14の端部とネオジム磁石19の端部の両方が同じ磁極のときに、磁束が、アルニコ磁石14を起点として、磁極部材15、金型7、磁気プレート8、アルニコ磁石14へと戻る。このとき、金型7が磁気クランプ装置6の吸着面9に磁気吸着される。磁極部材15に面するアルニコ磁石14の端部とネオジム磁石19の端部の両方が異なる磁極のときに、磁束が、アルニコ磁石14を起点として、磁極部材15、ネオジム磁石19、磁気プレート8、アルニコ磁石14へと戻る。このとき、金型7が磁気クランプ装置6に近づけられても、磁気クランプ装置6に磁気吸着されない。
上記各エリア22に複数の磁気ユニット11が配設されることに代えて、1つのエリアに1つの磁気ユニット11が配設されるようにしてもよい。この場合、検出用回路が1つの探りコイルとその探りコイルと制御装置とを接続する配線によって構成される。
【符号の説明】
【0029】
7:金型(磁気吸着対象物),9:吸着面,8:磁気プレート,10:装着孔,11:磁気ユニット,12:磁極反転用コイル,14:アルニコ磁石(反転可能磁石),20:探りコイル,22:エリア,22a:第1エリア,22b:第2エリア,23a:第1検出用回路,23b:第2検出用回路,24a:第1磁極反転用回路,24b:第2磁極反転用回路.