(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022144910
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28D 1/03 20060101AFI20220926BHJP
F28F 21/06 20060101ALI20220926BHJP
H05K 7/20 20060101ALN20220926BHJP
【FI】
F28D1/03
F28F21/06
H05K7/20 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021046111
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】501428187
【氏名又は名称】昭和電工パッケージング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】南谷 広治
(72)【発明者】
【氏名】田中 克美
【テーマコード(参考)】
3L103
5E322
【Fターム(参考)】
3L103AA12
3L103BB20
3L103DD12
3L103DD54
3L103DD55
3L103DD93
5E322AA01
5E322AA03
5E322AA06
5E322AB06
5E322EA10
(57)【要約】
【課題】金属製の伝熱層の腐食を簡単かつ確実に防止できる熱交換器を提供する。
【解決手段】本発明は、内部を熱交換媒体が流通する外包体1と、一部が外包体1の内面に接触した状態で外包体1に収容されるインナーフィン2とを備えた熱交換器を対象とする。本熱交換器は、外包体1が、金属層の少なくとも片面側に樹脂層が積層された外包ラミネート材L1によって構成され、インナーフィン2、金属製の伝熱層51の両面側に樹脂製の熱融着層52がそれぞれ積層された内芯ラミネート材L2によって構成される。内芯ラミネート材L2の側縁7aに、薄縁部7が形成され、薄縁部7は、伝熱層51の側縁6aと、その側縁6aの両面側に積層される樹脂製の伝熱層側縁積層部72と、伝熱層51の端面6bを被覆する樹脂製の伝熱層端面被覆部73とを含む。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部を熱交換媒体が流通する外包体と、一部が前記外包体の内面に接触した状態で前記外包体に収容されるインナーフィンとを備えた熱交換器であって、
前記外包体が、金属層の少なくとも片面側に樹脂層が積層された外包ラミネート材によって構成され、
前記インナーフィンは、金属製の伝熱層の両面側に樹脂製の熱融着層がそれぞれ積層された内芯ラミネート材によって構成され、
前記内芯ラミネート材の側縁に、薄縁部が形成され、
前記薄縁部は、前記伝熱層の側縁と、その側縁の両面側に積層される樹脂製の伝熱層側縁積層部と、前記伝熱層の端面を被覆する樹脂製の伝熱層端面被覆部とを含むことを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記熱融着層、前記伝熱層側縁積層部および前記伝熱層端面被覆部は連続して一体に形成されている請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記伝熱層側縁積層部および前記伝熱層端面被覆部は、前記熱融着層の溶融樹脂成形体によって構成されている請求項1または2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記熱融着層の厚さを「T1」とし、前記伝熱層側縁積層部の厚さを「T2」として、
T1=0.02mm~0.5mm
T2=1/6×T1~2/3×T1
の関係式が成立するように構成されている請求項1~3のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記伝熱層側縁積層部の幅を「W1」として、
W1=2mm~15mm
の関係式が成立するように構成されている請求項1~4のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項6】
前記伝熱層端面被覆部の幅を「W2」として、
W2=0.01mm~2mm
の関係式が成立するように構成されている請求項1~5のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項7】
内部を熱交換媒体が流通し、かつ金属層の少なくとも片面側に樹脂層が積層された外包ラミネート材によって構成された外包体内に、一部が前記外包体の内面に接触した状態で収容されるようにした熱交換器用インナーフィンであって、
金属製の伝熱層の両面側に樹脂製の熱融着層がそれぞれ積層された内芯ラミネート材によって構成され、
前記内芯ラミネート材の側縁に、薄縁部が形成され、
前記薄縁部は、前記伝熱層の側縁と、その側縁の両面側に積層される樹脂製の伝熱層側縁積層部と、前記伝熱層の端面を被覆する樹脂製の伝熱層端面被覆部とを含むことを特徴とする熱交換器用インナーフィン。
【請求項8】
内部を熱交換媒体が流通し、かつ金属層の少なくとも片面側に樹脂層が積層された外包ラミネート材によって構成された外包体内に、一部が前記外包体の内面に接触した状態で収容されるようにした熱交換器用インナーフィンの製造方法であって、
金属製の伝熱層の両面側に樹脂製の熱融着層がそれぞれ積層された内芯ラミネート材を作製し、
その内芯ラミネート材の側縁にヒートプレス成形を行って、前記伝熱層における側縁および端面を覆い、かつ前記熱融着層の溶融樹脂成形体による薄縁部を成形して、
薄縁部成形後の内芯ラミネート材を用いてインナーフィンを製造するようにしたことを特徴とする熱交換器用インナーフィンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金属層に樹脂層が積層されたラミネート材を利用して製作される熱交換器およびその関連技術に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンやパーソナルコンピュータ等の電子機器におけるCPU回りの発熱対策や、電気自動車やハイブリッド車に搭載される電池モジュールの発熱対策は重要であるが、これらの発熱対策用の熱交換器として、アルミニウム等の伝熱性が高い金属を用いて製作される金属製の熱交換器(冷却器)が周知である(特許文献1~3等)。
【0003】
ところが金属製の熱交換器は、金属加工を基に製作されるため、現状以上の薄型化は困難であり、特にスマートフォンやパーソナルコンピュータのような電子機器における薄い筐体内に組み込んだり、自動車用電池モジュールの各間の狭い空間に組み込むことは困難であった。
【0004】
そこで特許文献4に示すように、金属層の両面に樹脂層が積層されたラミネート材を用いた熱交換器の開発が進められている。
【0005】
この熱交換器は、ラミネート材によって形成された外包体の内部に、ラミネート材によって形成された内芯材(インナーフィン)が収容されるものであり、外包体の内部を循環する冷媒と、外包体の外面に接触する冷却対象部材との間で、インナーフィンを介して熱交換することによって、冷却対象部材を冷却するものである。
【0006】
このような熱交換器は、例えば外包体やインナーフィンは、所定のサイズに切断したラミネート材によって形成するものであるため、上記金属製の冷却器と比較して、設計の自由度や汎用性が増し、小型軽量化、生産効率の向上およびコストの削減を図ることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015-59693号公報
【特許文献2】特開2015-141002号公報
【特許文献3】特開2016-189415号公報
【特許文献4】特開2020-3132号公報
【特許文献5】特開2020-159667号公報
【特許文献6】特開2020-161449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記ラミネート材を用いた熱交換器において例えばインナーフィン用のラミネート材はその切断端面において金属層としての伝熱層が露出されるため、その露出した伝熱層が外包体内を流通する冷媒に接触して、腐食が発生して伝熱性が低下し、ひいては熱交換効率が低下するおそれがある、という課題があった。
【0009】
一方、特許文献5,6には、インナーフィン用のラミネート材における切断端面に樹脂をコーティングして、伝熱層の切断端面を被覆して伝熱層の露出を防止するようにした技術が提案されている。
【0010】
しかしながら、ラミネート材の切断端面に精度良く適切に樹脂をコーティングするという防食処理は、高度な技術が必要で繊細かつ慎重な作業となり、生産効率の低下を来すおそれがあるという課題があった。
【0011】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、ラミネート材を用いた熱交換器であって、伝熱層の腐食を簡単かつ確実に防止できて、優れた伝熱性を維持することができる熱交換器およびその関連技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の手段を備えるものである。
【0013】
[1]内部を熱交換媒体が流通する外包体と、一部が前記外包体の内面に接触した状態で前記外包体に収容されるインナーフィンとを備えた熱交換器であって、
前記外包体が、金属層の少なくとも片面側に樹脂層が積層された外包ラミネート材によって構成され、
前記インナーフィンは、金属製の伝熱層の両面側に樹脂製の熱融着層がそれぞれ積層された内芯ラミネート材によって構成され、
前記内芯ラミネート材の側縁に、薄縁部が形成され、
前記薄縁部は、前記伝熱層の側縁と、その側縁の両面側に積層される樹脂製の伝熱層側縁積層部と、前記伝熱層の端面を被覆する樹脂製の伝熱層端面被覆部とを含むことを特徴とする熱交換器。
【0014】
[2]前記熱融着層、前記伝熱層側縁積層部および前記伝熱層端面被覆部は連続して一体に形成されている前項1に記載の熱交換器。
【0015】
[3]前記伝熱層側縁積層部および前記伝熱層端面被覆部は、前記熱融着層の溶融樹脂成形体によって構成されている前項1または2に記載の熱交換器。
【0016】
[4]前記熱融着層の厚さを「T1」とし、前記伝熱層側縁積層部の厚さを「T2」として、
T1=0.02mm~0.5mm
T2=1/6×T1~2/3×T1
の関係式が成立するように構成されている前項1~3のいずれか1項に記載の熱交換器。
【0017】
[5]前記伝熱層側縁積層部の幅を「W1」として、
W1=2mm~15mm
の関係式が成立するように構成されている前項1~4のいずれか1項に記載の熱交換器。
【0018】
[6]前記伝熱層端面被覆部の幅を「W2」として、
W2=0.01mm~2mm
の関係式が成立するように構成されている前項1~5のいずれか1項に記載の熱交換器。
【0019】
[7]内部を熱交換媒体が流通し、かつ金属層の少なくとも片面側に樹脂層が積層された外包ラミネート材によって構成された外包体内に、一部が前記外包体の内面に接触した状態で収容されるようにした熱交換器用インナーフィンであって、
金属製の伝熱層の両面側に樹脂製の熱融着層がそれぞれ積層された内芯ラミネート材によって構成され、
前記内芯ラミネート材の側縁に、薄縁部が形成され、
前記薄縁部は、前記伝熱層の側縁と、その側縁の両面側に積層される樹脂製の伝熱層側縁積層部と、前記伝熱層の端面を被覆する樹脂製の伝熱層端面被覆部とを含むことを特徴とする熱交換器用インナーフィン。
【0020】
[8]内部を熱交換媒体が流通し、かつ金属層の少なくとも片面側に樹脂層が積層された外包ラミネート材によって構成された外包体内に、一部が前記外包体の内面に接触した状態で収容されるようにした熱交換器用インナーフィンの製造方法であって、
金属製の伝熱層の両面側に樹脂製の熱融着層がそれぞれ積層された内芯ラミネート材を作製し、
その内芯ラミネート材の側縁にヒートプレス成形を行って、前記伝熱層における側縁および端面を覆い、かつ前記熱融着層の溶融樹脂成形体による薄縁部を成形して、
薄縁部成形後の内芯ラミネート材を用いてインナーフィンを製造するようにしたことを特徴とする熱交換器用インナーフィンの製造方法。
【発明の効果】
【0021】
発明[1]の熱交換器によれば、インナーフィンの端縁において金属製の伝熱層の側縁が薄縁部によって被覆されているため、伝熱層の端面が露出することがなく、伝熱層に熱交換媒体が接触するのを防止でき、その接触に起因する腐食の発生を確実に防止することができ、良好な伝熱性を維持することができる。さらに内芯ラミネート材の側縁に設けられる薄縁部は、側縁を薄肉化して形成できるため、内芯ラミネート材の側縁にヒートプレス成形するだけで簡単に薄縁部を形成することができる。このため本発明の熱交換器においては、伝熱層の端面を被覆するために、樹脂をコーティングする等の繊細かつ慎重な作業が不要であり、薄縁部を簡単に形成できて、生産効率を向上させることができる。
【0022】
発明[2]~[6]の熱交換器によれば、上記の効果をより確実に得ることができる。
【0023】
発明[7]の熱交換器用インナーフィンによれば、上記発明[1]の主要部を特定するものであるため、上記と同様の効果を得ることができる。
【0024】
発明[8]の製造方法によれば、上記発明[7]の製造プロセスを特定するものであるため、上記と同様の効果を有するインナーフィンを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1はこの発明の実施形態である熱交換器を示す斜視図である。
【
図2】
図2は実施形態の熱交換器を示す図であって、図(a)は平面図、図(b)は図(a)のB-B線断面に相当する断面図、図(c)は図(a)のC-C線断面に相当する断面図である。
【
図3】
図3は実施形態の熱交換器を分解して示す斜視図である。
【
図4】
図4は実施形態の熱交換器に適用されたインナーフィンを示す正面図である。
【
図5】
図5は実施形態の熱交換器に適用された外包ラミネート材の一部を拡大して示す断面図である。
【
図6】
図6は実施形態の熱交換器に適用されたヒートプレス成形前の内芯ラミネート材の側部を拡大して示す断面図である。
【
図7】
図7は実施形態の熱交換器に適用されたヒートプレス成形後の内芯ラミネート材の側部を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1~
図3はこの発明の実施形態である熱交換器を示す図である。これらの図に示すように、本実施形態の熱交換器は、伝熱パネルや伝熱チューブ等として用いられるものであり、ケーシング(容器)としての外包体1と、外包体1の内部に収容されるインナーフィン(内芯材)2と、外包体1の両端部内に収容される一対(両側)のヘッダー(ジョイント部材)3,3とを備えている。
【0027】
外包体1は、平面視矩形状のトレイ部材10と、平面視矩形状のカバー部材15とによって構成されている。
【0028】
トレイ部材10は、外包ラミネート材L1の成形品によって構成されており、深絞り成形や、張出し成形等の冷間成形の手法を用いて、外周縁部を除く中間領域全域が下方に凹陥形成されて、平面視矩形状の凹部11が形成されるとともに、凹部11の開口縁部外周に外方突出状のフランジ部12が一体に形成されている。
【0029】
またカバー部材15は、トレイ部材10における凹部11の前後両端部に対応して一対の出入口16,16が形成されている。言うまでもなく本実施形態においては、一対の出入口16のうち、一方の出入口16が入口として構成され、他方の出入口16が出口として構成されている。
【0030】
トレイ部材10およびカバー部材15は、柔軟性および可撓性を有するラミネートシートないしフィルムである外包ラミネート材L1によって構成されている。
【0031】
図5に示すように外包ラミネート材L1は、金属(金属箔)製の伝熱層51と、その伝熱層51の一面(内面)に積層された熱融着性の樹脂である熱融着層52と、伝熱層51の他面(外面)に積層された耐熱性の樹脂である保護層53とを備えている。なお本実施形態において、「箔」という用語は、フィルム、薄板、シートも含む意味で用いられている。
【0032】
外包ラミネート材L1における伝熱層51としては、アルミニウム箔、銅箔、ステンレス(SUS)箔、ニッケル箔、ニッケルメッキ加工した銅箔、ニッケルと銅から成るクラッドメタル等を好適に用いることができる。なお本実施形態において、「アルミニウム」「銅」「ニッケル」「チタン」という用語は、それらの合金も含む意味で用いられている。
【0033】
伝熱層51は、金属箔層や集熱層とも称されるものであり、厚みが30μm~200μmのものを用いるのが良く、より好ましくは40μm~150μmのものを用いるのが良い。
【0034】
熱融着層52としては、オレフィン系樹脂またはそれらの変性樹脂、カルボン酸を有するオレフィン重合体を含む樹脂によって構成されるものを好適に用いることができる。
【0035】
オレフィン系樹脂またはそれらの変性樹脂としては、無延伸ポリプロピレンフィル(CPP)、ポリエチレンフィルム(LDPE、LLDPE、HDPE)、酸変性したポリオレフィン樹脂等を好適例として挙げることができる。
【0036】
またカルボン酸を有するオレフィン重合体を含む樹脂としては、アイオノマー樹脂、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン-アクリル酸メチル共重合体(EMA)等を好適例として挙げることができる。
【0037】
これらの樹脂のフィルムないしシートを伝熱層51に貼り付けたり、これらの樹脂を塗布コートすることによって、熱融着層52を形成することができる。
【0038】
熱融着層52は、シーラント層とも称されるものであり、厚みが20μm~500μmのものを用いるのが良く、より好ましくは30μm~80μmのものを用いるのが良い。
【0039】
保護層53としては、耐熱性樹脂であるポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等によって構成されるものを好適例として挙げることができ、これらの樹脂のフィルムないしシートを伝熱層51に貼り付けたり、これらの樹脂を塗布コートすることによって、保護層53を形成することができる。
【0040】
保護層53は、被覆層とも称されるものであり、厚みが6μm~100μmのものを用いるのが良く、より好ましくは9μm~50μmのものを用いるのが良い。
【0041】
なお上記のようなアルミニウム箔製の伝熱層51に、熱融着層52および保護層53用の上記樹脂フィルムを、2液硬化型接着剤でラミネート加工する場合には予め、アルミニウム箔に対し焼鈍または洗浄等で脱脂を行って、化成処理等の表面処理を施した方が良好な接着性が得られるので、好ましい。
【0042】
以上の構成の外包ラミネート材L1を所定サイズに切断し、必要に応じて上記のように熱成形して、外包体1としてのトレイ部材10およびカバー部材15を形成する。
【0043】
一方、インナーフィン2は内芯ラミネート材L2の成形品によって構成されている。内芯ラミネート材L2は
図6に示すように、金属(金属箔)製の伝熱層61と、その伝熱層61の両面(内面および外面)に積層された熱融着性の樹脂である熱融着層62とを備えている。
【0044】
内芯ラミネート材L2における伝熱層61としては、アルミニウム箔、銅箔等を好適に用いることができる。
【0045】
伝熱層61は、金属箔層や集熱層とも称されるものであり、厚みが30μm~200μmのものを用いるのが良く、より好ましくは40μm~150μmのものを用いるのが良い。
【0046】
熱融着層52としては、オレフィン系樹脂またはそれらの変性樹脂、カルボン酸を有するオレフィン重合体を含む樹脂によって構成されるものを好適に用いることができる。
【0047】
オレフィン系樹脂またはそれらの変性樹脂としては、無延伸ポリプロピレンフィル(CPP)、ポリエチレンフィルム(LDPE、LLDPE、HDPE)、酸変性したポリオレフィン樹脂を好適例として挙げることができる。
【0048】
またカルボン酸を有するオレフィン重合体を含む樹脂としては、アイオノマー樹脂、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン-アクリル酸メチル共重合体(EMA)等を好適例として挙げることができる。
【0049】
これらの樹脂のフィルムないしシートを伝熱層61に貼り付けたり、これらの樹脂を塗布コートすることによって、熱融着層62を形成することができる。
【0050】
熱融着層62は、シーラント層とも称されるものであり、厚みが20μm~500μmのものを用いるのが良く、より好ましくは30μm~80μmのものを用いるのが良い。
【0051】
なお内芯ラミネート材L2用の伝熱層61に対しても、必要に応じて上記と同様に、化成処理等の表面処理を施しておくのが好ましい。
【0052】
本実施形態においては、内芯ラミネート材L2を所定サイズに切断した後、その切断した内芯ラミネート材L2の切断端部に対し端部防食処理を行う。
【0053】
すなわち
図6に示すように、内芯ラミネート材L2を切断した際にその切断端部には、金属製の伝熱層61の端面6bが露出している。この内芯ラミネート材L2の切断端部周辺である側縁(通常は周囲4側縁)6aを、上下一対のシール金型4,4によって加熱しつつ挟み込んで加圧することにより(ヒートプレス成形することにより)、ヒートプレス成形前の内芯ラミネート材L2の側縁6aにおける熱融着層62を溶融して一部を残留させつつ、残りを外側方に流動させて、その状態で冷却固化する。
【0054】
これにより
図7に示すように、内芯ラミネート材L2の側縁6aを、未加圧部に比べて厚さが薄い薄縁部7に形成する。この薄縁部7は、伝熱層61の側縁6aと、熱融着層62の残留した樹脂の成形体であり、かつ伝熱層61の側縁6aの両面に積層される伝熱層側縁積層部72と、熱融着層62の流動した樹脂の成形体であり、かつ伝熱層61の端面6bを被覆する伝熱層端面被覆部73とを含むものである。換言すると、伝熱層側縁積層部72および伝熱層端面被覆部73は、熱融着層62の樹脂の一部を溶融させて成形した熱融着層62の溶融樹脂の成形体によって形成されている。従って伝熱層側縁積層部72は、熱融着層62に連続して一体に形成されるとともに、伝熱層端面被覆部73は、伝熱層側縁積層部72に連続して一体に形成されている。
【0055】
こうして内芯ラミネート材L2に対しヒートプレス成形による端部防食処理を行って、伝熱層61の切断端面6bを薄縁部7によって確実に被覆する。
【0056】
なお言うまでもなく、一対のシール金型4、4におけるキャビティ41は、薄縁部7に対応する形状に形成されている。
【0057】
ここで本実施形態においては、熱融着層62の厚さを「T1」とし、伝熱層側縁積層部72の厚さを「T2」とし、伝熱層側縁積層部72の幅を「W1」とし、伝熱層端面被覆部73の幅を「W2」として、以下の関係式を成立させるのが良い。
【0058】
すなわちT2=1/6×T1~2/3×T1を成立させるのが良く、より好ましくはT2=1/3×T1~1/2×T1を成立させるのが良い。なおT1は既述した通り、20μm~500μm(0.02mm~0.5mm)に設定するが良く、より好ましくは30μm~80μm(0.03mm~0.08mm)に設定するが良い。
【0059】
さらにW1=2mm~15mmを成立させるのが良く、より好ましくはW1=3mm~8mmを成立させるのが良い
またW2=0.01mm~2mmを成立させるのが良く、より好ましくはW2=0.05mm~1.0mmを成立させるのが良い
本実施形態においてこれらの関係式を満足させた場合、薄縁部7によって、伝熱層61の切断端面6bを確実に被覆することができる。その結果後述するように、伝熱層61に冷媒等の熱交換媒体が接触するのを確実に防止でき、伝熱層61の腐食劣化を確実に防止することができる。換言すると、伝熱層側縁積層部72の厚さ「T2」や幅「T1」、伝熱層端面被覆部の幅「T2」が小さ過ぎる場合には、伝熱層61の腐食を確実に防止することができず、また逆に、必要以上に大きくしたとしても、それに見合う効果を十分に得ることができず、好ましくない。
【0060】
こうしてヒートプレス成形(端部防食処理)を行った内芯ラミネート材L2に対し、凹凸加工を行ってインナーフィン2を作製するものである。インナーフィン2の加工方法は、特に限定されるものではないが、例えば内芯ラミネート材L2を一対のエンボスロールまたは一対のコルゲートロールによって挟み込みつつ、その一対のロール間に通過させることにより、凹凸を成形する方法を例示することができる。さらにはプレス機や、プレス金型を用いて、内芯ラミネート材L2に凹凸部を成形する方法を例示することができる。
【0061】
図2~
図4に示すようにインナーフィン2は、凹部25および凸部26が交互に連続して形成された角波形状(矩形波形状)、いわゆるデジタル信号波形に形成されている。すなわち本実施形態のインナーフィン2における凹部底面(底壁)および凸部頂面(頂壁)は、平坦に形成され、かつ熱交換器組付状態において、トレイ部材10の底壁(下壁)およびカバー部材15の天壁(上壁)に対し平行に配置されている。さらにインナーフィン2は、隣り合う凹部底壁および凸部頂壁間を連結する立ち上がり壁が、凹部底壁および凸部頂壁に対し、または熱交換器組付状態における外包体1の上下壁に対し垂直に配置されている。
【0062】
なお本実施形態においては、角波形状のインナーフィン2を用いているが、それだけに限られず、本発明においては、断面円弧状凹部および凸部が交互に連続して形成された一般的な波形状(正弦波形状)、いわゆるアナログ信号波形に形成されたものを用いても良い。もっとも本発明においては、インナーフィンは、外包体の内面に接合される凹部および凸部が設けられていれば、どのような形状のものでも使用することができる。
【0063】
このインナーフィン2が、トレイ部材10の凹部11における両端部を除いた中間部に収容される。収容されたインナーフィン2は、その山筋方向および谷筋方向(
図3の紙面に向かって左右方向)がトレイ部材10の長さ方向(
図3の左右方向)に一致するように配置されている。これにより、インナーフィン2の山筋部および谷筋部に沿って形成されるトンネル部および溝部が、トレイ部材10の長さ方向に沿うように配置され、そのトンネル部および溝部を通って冷媒等の熱交換媒体が外包体1の長さ方向一端側から他端側に向けてスムーズに流通できるように構成されている。
【0064】
図2および
図3に示すように、外包体1の両端部に配置される一対のヘッダー3,3は、熱融着性樹脂の成形品によって構成されている。
【0065】
ヘッダー3は、一側面に開口部32を有する箱状の取付箱部31と、取付箱部31の上壁に設けられたパイプ部33とを備えている。パイプ部33は取付箱部31内に連通しており、パイプ部33の内部と取付箱部31の内部との間で熱交換媒体が往来できるように構成されている。
【0066】
ヘッダー3の成形方法は特に限定されるものではないが、例えば射出成型を用いて成形する方法を好適に採用することができる。
【0067】
このヘッダー3の取付箱部31がトレイ部材10の凹部11におけるインナーフィン2の両側に配置される。さらにヘッダー3のパイプ部33が上向きに配置されるとともに、取付箱部31の開口部32が内側に向けて、つまりインナーフィン2に対向して配置される。
【0068】
こうしてヘッダー3,3をトレイ部材10内に収容して、カバー部材15をトレイ部材10にその開口部を閉塞するように配置する。この場合、カバー部材15の出入口16内に、ヘッダー3,3の上向きのパイプ部33,33を挿通配置する。
【0069】
このように仮組された熱交換器仮組品をヒートプレス成形することによって、接触し合う部材同士の所要部分を熱融着して接合一体化する。この熱融着処理は、トレイ部材10のフランジ部12と、カバー部材15の外周縁部との間を熱融着(ヒートシール)する外包体融着工程(外包体シール工程)と、外包体1(トレイ部材10およびカバー部材15)と、内装品(インナーフィン2およびヘッダー3)との間を熱融着(ヒートシール)する内装品融着工程とを含むものである。
【0070】
また本実施形態において、外包体融着工程と、内装品融着工程とを同時に行う場合を1段シール(1段シール方式)と称し、時間をずらせて別々に行う場合を2段シール(2段シール方式)と称している。
【0071】
本実施形態において、熱融着工程の条件(シール条件)としては、熱融着温度を160℃~200℃に設定するのが良く、より好ましくは170℃~190℃に設定するのが良い。さらに熱融着圧力を0.1MPa~0.5MPaに設定するのが良く、より好ましくは0.15MPa~0.4MPaに設定するのが良い。さらに熱融着時間を2秒~10秒に設定するのが良く、より好ましくは3秒~8秒に設定するのが良い。
【0072】
以上の構成の熱交換器は、電池等を冷却対象部材(熱交換対象部材)として冷却する冷却器(冷却装置)として用いられる。すなわち熱交換器の一方のパイプ部33に、熱交換媒体(冷媒)としての冷却液(冷却水、不凍液等)を流入するための流入管が連結されるとともに、他方のパイプ部33に、冷却液を流出するための流出管が連結される。さらに熱交換器の外包体1における上壁および下壁に冷却対象部材としての電池を接触させた状態に配置する。そしてその状態で一方のパイプ部33から冷却液を一方のヘッダー3を介して外包体1の内部に流入し、その冷却液をインナーフィン2の部分を流通させて、他方のヘッダー3を介して他方のパイプ部33から流出させる。こうして冷却液を外包体1に循環させることにより、その冷却液と電池との間でインナーフィン2および外包体1を介して熱交換することにより、電池が冷却されるものである。
【0073】
以上のように構成された本実施形態の熱交換器によれば、インナーフィン2の端縁において金属製の伝熱層61の切断端面6bが薄縁部7によって被覆されているため、伝熱層61が露出することがなく、伝熱層61に冷媒が接触するのを防止することができる。特に伝熱層61に、冷媒中の腐食要因である水、塩素イオン、銅イオン等が作用して、腐食が発生するのを確実に防止することができ、良好な伝熱性を維持できて、熱交換効率を向上させることができる。
【0074】
また本実施形態の熱交換器においては、内芯ラミネート材L2の側縁6aを薄厚化してその側縁7aの熱融着層62を伝熱層61の端面6b側に流動させて伝熱層端面被覆部73を形成することにより、伝熱層61の端面6bを被覆するものであるため、内芯ラミネート材L2の側縁7aにヒートプレス成形するだけで簡単に薄縁部7(伝熱層端面被覆部73)を形成することができる。このため本実施形態の熱交換器においては、伝熱層の端面を被覆するために、樹脂をコーティングする等の繊細かつ慎重な作業が不要であり、伝熱層端面被覆部73を簡単に形成できて、生産効率を向上させることができる。
【0075】
また本実施形態の熱交換器によれば、外包体1およびインナーフィン2をラミネート材L1,L2を用いて製作するものであるため、面倒な金属加工を用いる必要がなく、効率良く簡単に製作できてコストを削減することができるとともに、ラミネート材L1,L2である外包体1およびインナーフィン2を接合して製作するものであるため、十分に薄型化を図ることができる。
【0076】
なお上記実施形態においては、熱交換器をその内部に冷却用の熱媒体(冷媒)を流通させて冷却器(冷却装置)として用いる場合を例に挙げて説明したが、それだけに限られず、本発明においては、熱交換器をその内部に加熱用の熱媒体(熱媒)を流通させて加熱器(加熱装置)や発熱器(発熱装置)として用いることも可能である。
【0077】
また上記実施形態においては、外包体1を製作するにあたり、立体成形されたトレイ部材10と、シート状のカバー部材15とを貼り合わせるようにしているが、本発明においては、立体成形された部材(ラミネート材)同士を貼り合わせても良い。さらに外包体1の構成部材を必ずしも立体成形する必要もない。例えば立体成形を行わない場合、2枚のシート状のラミネート材を互いの外周縁部を熱融着等によって接着することによって、ラミネート材製の袋状の外包体を製作するようにしても良い。
【0078】
さらに上記実施形態においては、外包体1を2枚のラミネート材によって製作する場合を例に挙げて説明したが、それだけに限られず、本発明においては、1枚のラミネート材を2つ折りに折り重ねて、重なり合ったラミネート材のうち、折り返し部を除く外周縁部を熱融着等によって接着することにより、袋状の外包体を製作するようにしても良い。さらに言うまでもなく、本発明においては3枚以上のラミネート材を用いて外包体を製作するようにしても良い。
【0079】
また上記実施形態においては、ラミネート材L1,L2として3層構造のものを用いているが、それだけに限られず、本発明においては、外包ラミネート材L1としては、2層構造または4層以上の構造のラミネート材を使用するようにしても良いし、内芯ラミネート材L2としては、4層以上の構造のラミネート材を使用するようにしても良い。
【0080】
また上記実施形態においては、本発明の熱交換器を自動車用等の電池パックの冷却器として用いる場合を例に挙げて説明したが、本発明においては、電池パックの冷却器以外の熱交換器にも適用することができる。例えば自動車用電池パックの加熱用の熱交換器、自動車の電動機、産業機械、家電、情報端末等の電力駆動機器の主電力を制御するための電力用半導体素子(パワーモジュール)の冷却用の熱交換器、パーソナルコンピュータのCPU(中央演算処理装置)の冷却用の熱交換器、家庭用または業務用蓄電池の冷却/加熱用の熱交換器、パーソナルコンピュータの電池パック(電池モジュール)の冷却用の熱交換器、液晶テレビ、有機ELテレビ、プラズマテレビのディスプレイの冷却用の熱交換器や、床暖房設備、寒冷地域での屋根、通路、道路等の融雪設備の熱交換器としても用いることもできる。
【実施例0081】
<実施例1>
上記実施形態の熱交換器に準拠して、以下のように実施例1の熱交換器を製作した。
【0082】
1.外包ラミネート材および外包体の作製
伝熱層51としてのA8021H-Oのアルミニウム箔(厚さ120μm)の一面(外面)に、接着剤を介して保護層53として、厚さ12μmのポリエステル樹脂(PET)を積層する。
【0083】
またアルミニウム箔の他方の面(内面)に、接着剤を介して熱融着層52として、厚さ40μmの無延伸ポリプロピレンフィル(CPP)を積層して、外包ラミネート材(PET12μm/接着剤/AL(A8021H-O)120μm/接着剤/CPP40μm)L1を作製した。
【0084】
この外包ラミネート材L1を深絞り成形することによって、深さ4mm×幅65mm×長さ180の凹部11と、その凹部11の開口縁部全周に幅10mmのフランジ部12とが一体に形成された外包体1のトレイ部材10を作製した。
【0085】
さらに同様の外包ラミネート材L1を切断して、幅85mm×長さ200mmのシート状のカバー部材15を作製した。なおこのカバー部材15における両端部の所定位置には、直径12mmの円形の出入口16を形成した。
【0086】
2.内芯ラミネート材およびインナーフィンの作製
伝熱層61としてのA8021H-Oのアルミニウム箔(厚さ120μm)の両面に、接着剤を介して熱融着層62として、厚さ30μmのCPPを積層して、内芯ラミネート材(CPP30μm/接着剤/AL(A8021H-O)120μm/接着剤/CPP30μm)L2を作製した。
【0087】
この内芯ラミネート材L2を、幅193mm×長さ120mmのサイズに切り出してフィン用ブランクとし、そのブランクの周囲4辺に対し、
図6および
図7に示すようにシール金型4を用いてヒートプレス成形することにより、伝熱層側縁積層部72の幅W1=2mm、伝熱層端面被覆部73の幅W2=0.2mm、厚さ(Al厚み+T2×2)=0.16mmの薄縁部7を形成して、伝熱層61の側縁6aをCPP(伝熱層側縁積層部72および伝熱層端面被覆部73)によって被覆し、ヒートプレス成形後(防食処理後)の内芯ラミネート材L2(防食処理済フィン材)を作製した。
【0088】
このヒートプレス成形後の内芯ラミネート材L2(防食処理済フィン材)に対し、コルゲート加工を行って、
図4に示すようにフィン高さ(Hf)が4mm、フィンピッチ(Pf)が4mm、フィン厚み(Tf)が0.2mm、外側コーナー半径(R4)が0.5mmの角波形状に形成し、その角波シートを、幅65mm×長さ120mmにカットしてインナーフィン2を作製した。
【0089】
なおインナーフィン2の山筋方向および谷筋方向は、長さ方向(縦方向)に沿うように配置されている。
【0090】
3.ヘッダーの作製
縦65mm×横30mm×高さ4mmの取付箱部31に、パイプ部33が一体に成形されたPP製のヘッダー3を準備した(
図3参照)。パイプ部33は、内径φ10mm、外径φ12mm、長さが3mmである。
【0091】
4.熱交換器の組み立て
トレイ部材10の凹部11における縦方向(長さ方向)の両端部に、ヘッダー3をパイプ部33を上向きにした状態に収容する。さらにトレイ部材10の凹部11における両ヘッダー3,3間にインナーフィン2を収容した。なお、ヘッダー3の各開口部32は、インナーフィン2の端部に対向するように内側に向けて配置した。
【0092】
次にトレイ部材10の凹部11を上から覆うようにカバー部材15を、その内側の熱融着層52を下にしてトレイ部材10のフランジ部12上に配置した。このとき、カバー部材15の出入口16に、トレイ部材10内のヘッダー3の上向きパイプ部33を挿通させてカバー部材15の上方に突出するように配置した。
【0093】
こうして非接合状態の熱交換器仮組品を作製し、その熱交換器仮組品に対し2段シールで熱融着を行った。1段目のシールは、180℃×0.3MPa×7秒のシール条件で行い、トレイ部材10のフランジ部12と、カバー部材15の外周縁部とを熱融着した。さらに2段目のシールは、190℃×0.3MPa×7秒のシール条件で行い、外包体1と、インナーフィン2およびヘッダー3との間を熱融着した。こうして実施例1の熱交換器を作製した。
【0094】
<実施例2>
外包ラミネート材L1の熱融着層52として、アイオノマー(厚さ50μm)を用いた以外は上記実施例1と同様の外包ラミネート材(PET12μm/接着剤/AL(A8021H-O)120μm/接着剤/アイオノマー50μm)L1を準備した。
【0095】
この外包ラミネート材L1を用いて、上記実施例1と同様にトレイ部材10およびカバー部材15を作製した。
【0096】
内芯ラミネート材L2の熱融着層62として、アイオノマー(厚さ50μm)を用いた以外は上記実施例1と同様の内芯ラミネート材(アイオノマー50μm/接着剤/AL(A8021H-O)120μm/接着剤/アイオノマー50μm)L2を準備した。
【0097】
この内芯ラミネート材L2を、幅193mm×長さ120mmのサイズに切り出してフィン用ブランクとし、そのブランクの周囲4辺に対し、上記実施例1と同様にヒートプレス成形することにより、伝熱層側縁積層部72の幅W1=3mm、伝熱層端面被覆部73の幅W2=0.5mm、厚さ(Al厚み+T2×2)=0.18mmの薄縁部7を形成して、伝熱層61の側縁6aをアイオノマー樹脂(伝熱層側縁積層部72および伝熱層端面被覆部73)によって被覆し、ヒートプレス成形後の内芯ラミネート材L2(防食処理済フィン材)を作製した。
【0098】
このヒートプレス成形後の内芯ラミネート材L2を用いて、上記実施例1と同様な形状のインナーフィン2を作製した。
【0099】
PE製とした以外は上記実施例1と同様にヘッダー3を作製した。
【0100】
これらのトレイ部材10、カバー部材15およびヘッダー3を用いて、上記実施例1と同様に熱交換器仮組品を作製し、その仮組品に対し2段シールで熱融着を行い、実施例2の熱交換器を作製した。
【0101】
なお実施例2の2段シールにおいて、1段目のシールは、140℃×0.3MPaa×7秒のシール条件で行い、トレイ部材10と、カバー部材15とを熱融着し、さらに2段目のシールは、150℃×0.3MPa×7秒のシール条件で行い、外包体1と、インナーフィン2およびヘッダー3との間を熱融着した。
【0102】
<比較例>
内芯ラミネート材(フィン用ブランク)に対しヒートプレス成形による防食処理を行わなかった以外は、上記実施例1と同様にして比較例の熱交換器を作製した。なお言うまでもなく、この熱交換器におけるインナーフィン2は、その切断端面において金属製の伝熱層61が露出しており、その露出した伝熱層61に、熱交換器を循環する冷媒が接触し得る状態となっている。
【0103】
<耐腐食性試験(促進腐食試験)>
腐食液として、OY液(Cl-:195ppm、SO4
2-:60ppm、Cu2+:1ppm、Fe3+:30ppmを含有するpH3の腐食液)を準備した。
【0104】
上記腐食液を、実施例1,2および比較例の熱交換器に対し、一方のパイプ部33から導入して内部を流通させて、他方のパイプ部33から流出させるように循環させた。この循環時の試験条件として、腐食液の温度は60℃とし、流速は1L/分とし、循環時間は連続250時間とした。
【0105】
その試験後に、実施例1,2および比較例の熱交換器の外観を目視により観察して評価した。その結果、熱交換器(外包体)の外観に変化がなく、外包体およびインナーフィン共に腐食が発生していないものを「○(良好)」と評価し、インナーフィンの端面に腐食が発生していたものを「×(不良)」と評価した。その結果を表1に示す。
【0106】
【0107】
上記耐腐食製試験の試験結果(表1)から明らかなように、本発明に関連した実施例1,2の熱交換器は、本発明の要旨を逸脱する比較例の熱交換器に比べて、耐腐食性に優れているのが判る。
この発明の熱交換器は、スマートフォン、タブレット端末、パーソナルコンピュータ等の情報端末のCPU回りや電池回りの発熱対策、液晶TV、有機EL、プラズマTVのディスプレイ回りの発熱対策、自動車のパワーモジュール回りや電池回りの発熱対策用の冷却器のほか、床暖房や除雪に用いられる加熱器として利用することができる。