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特開2022-144911アクティブペン、センサコントローラ、及び位置検出装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022144911
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】アクティブペン、センサコントローラ、及び位置検出装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/044 20060101AFI20220926BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20220926BHJP
   G06F 3/03 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
G06F3/044 B
G06F3/041 412
G06F3/03 400A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021046112
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】000139403
【氏名又は名称】株式会社ワコム
(74)【代理人】
【識別番号】100130982
【弁理士】
【氏名又は名称】黒瀬 泰之
(72)【発明者】
【氏名】宮本 雅之
(57)【要約】
【課題】アップリンク信号の受信失敗によりペン入力による描画が止まってしまうことを防止する。
【解決手段】アクティブペン2は、アップリンク信号USの受信タイミングを基準時刻として決定される一連の時間スロットTSを用いてセンサコントローラ31との通信を行うアクティブペン2であって、アップリンク信号USが受信されたか否かを判定し、アップリンク信号USが受信されたと判定した場合に、一連の時間スロットTS内の時間を用いてダウンリンク信号DSaを送信する一方、アップリンク信号USが受信されなかったと判定した場合に、一連の時間スロットTS内の時間及び一連の時間スロットTS外の時間の両方を用いて、一連の時間スロットTSそれぞれの時間長よりも短い時間長の単位信号の繰り返しからなるダウンリンク信号DSbを送信する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アップリンク信号の受信タイミングを基準時刻として決定される一連の時間スロットを用いてセンサコントローラとの通信を行うアクティブペンであって、
前記アップリンク信号が受信されたか否かを判定し、
前記アップリンク信号が受信されたと判定した場合に、前記一連の時間スロット内の時間を用いて前記第1のダウンリンク信号を送信する一方、
前記アップリンク信号が受信されなかったと判定した場合に、前記一連の時間スロット内の時間及び前記一連の時間スロット外の時間の両方を用いて、前記一連の時間スロットそれぞれの時間長よりも短い時間長の単位信号の繰り返しからなる第2のダウンリンク信号を送信する、
アクティブペン。
【請求項2】
前記第2のダウンリンク信号は、時間的に隣接する2つの前記単位信号の間に互いに異なる長さのギャップを含む第1の信号及び第2の信号を含む、
請求項1に記載のアクティブペン。
【請求項3】
ペン先に加わった圧力を検出することによって第1のビット数の筆圧値を取得する圧力センサを含み、
前記第1のダウンリンク信号は前記筆圧値によって変調された信号を含み、
前記第1の信号を構成する前記単位信号は、前記筆圧値のうち上位所定数ビットの一部によって変調された信号を含み、
前記第2の信号を構成する前記単位信号は、前記筆圧値のうち前記上位所定数ビットの残部によって変調された信号を含む、
請求項2に記載のアクティブペン。
【請求項4】
前記第1の信号及び前記第2の信号それぞれの中に一部分ずつ配置される前記筆圧値は、前記アップリンク信号の1送信周期の間に2回以上更新される、
請求項3に記載のアクティブペン。
【請求項5】
前記第2のダウンリンク信号の送信と並行して、前記アップリンク信号の検出動作を行う、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のアクティブペン。
【請求項6】
互いに異なる第1の電極及び第2の電極と、
前記第1の電極の電位に変化を与えることで前記第1のダウンリンク信号及び前記第2のダウンリンク信号を送信する送信回路と、
前記第2の電極の電位の変化を検出することにより前記アップリンク信号を受信する受信回路と、
前記第1の電極の電位の変化が前記受信回路により受信された前記アップリンク信号の電位に影響することを阻止するストップフィルタと、
を含む請求項5に記載のアクティブペン。
【請求項7】
電極及びコイルと、
前記電極の電位に変化を与えることで前記第1のダウンリンク信号及び前記第2のダウンリンク信号を送信する送信回路と、
前記コイルに生ずる誘導電流を検出することにより前記アップリンク信号を受信する受信回路と、
を含む請求項5に記載のアクティブペン。
【請求項8】
センサコントローラとの通信を行うアクティブペンであって、
電極及びコイルと、
前記電極の電位に変化を与えることで、前記センサコントローラに対してダウンリンク信号を送信する送信回路と、
前記コイルに生ずる誘導電流を検出することにより、前記センサコントローラが送信したアップリンク信号を受信する受信回路と、
を含むアクティブペン。
【請求項9】
請求項1に記載のアクティブペンと通信を行うセンサコントローラであって、
前記一連の時間スロットのうちの1つにおいて検出された信号にギャップが含まれるか否かを判定し、
含まれる判定した場合には、前記検出された信号を前記第1のダウンリンク信号として復調する一方、
含まれていないと判定した場合には、前記検出された信号を前記第2のダウンリンク信号として復調する、
センサコントローラ。
【請求項10】
前記第2のダウンリンク信号は、時間的に隣接する2つの前記単位信号の間に互いに異なる長さのギャップを含む第1の信号及び第2の信号を含み、
前記一連の時間スロットのうちの1つにおいて検出された信号にギャップが含まれると判定した場合に、含まれていた前記ギャップの長さに基づき、前記検出された信号を前記第1の信号及び前記第2の信号のいずれか一方として復調する、
請求項9に記載のセンサコントローラ。
【請求項11】
タッチ面内におけるアクティブペンの位置を検出する位置検出装置であって、
前記タッチ面内に配置された1以上のループコイルと、
前記タッチ面内に配置された複数のセンサ電極と、
前記1以上のループコイルのそれぞれにアップリンク信号を供給することにより前記アクティブペンに対して前記アップリンク信号を送信するとともに、前記複数のセンサ電極それぞれの電位の変化を検出することにより前記アクティブペンが送信したダウンリンク信号を受信するセンサコントローラと、
を含む位置検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアクティブペン、センサコントローラ、及び位置検出装置に関し、特に、互いに双方向に通信を行うアクティブペン及びセンサコントローラと、そのようなセンサコントローラを含む位置検出装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
センサコントローラからアップリンク信号を受信し、センサコントローラに対してダウンリンク信号を送信するよう構成されたアクティブペンが知られている。特許文献1には、この種のアクティブペンの例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6059410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1にも記載されているように、アクティブペンは、アップリンク信号の受信タイミングを基準時刻として決定される時間スロットを用いて、ダウンリンク信号の送信を行うよう構成される。したがって、アクティブペンがダウンリンク信号の送信を行うためには、アップリンク信号を受信できている必要がある。
【0005】
しかしながら、例えばディスプレイの画素を駆動するための信号のようなノイズがアップリンク信号に重畳することがあり、その結果として、アクティブペンがアップリンク信号の受信に失敗してしまうことがある。そうすると、アクティブペンがダウンリンク信号を送信できなくなり、ペン入力による描画が止まってしまうので、改善が必要とされていた。
【0006】
したがって、本発明の目的の一つは、アップリンク信号の受信失敗によりペン入力による描画が止まってしまうことを防止できるアクティブペン及びセンサコントローラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の側面によるアクティブペンは、アップリンク信号の受信タイミングを基準時刻として決定される一連の時間スロットを用いてセンサコントローラとの通信を行うアクティブペンであって、前記アップリンク信号が受信されたか否かを判定し、前記アップリンク信号が受信されたと判定した場合に、前記一連の時間スロット内の時間を用いて前記第1のダウンリンク信号を送信する一方、前記アップリンク信号が受信されなかったと判定した場合に、前記一連の時間スロット内の時間及び前記一連の時間スロット外の時間の両方を用いて、前記一連の時間スロットそれぞれの時間長よりも短い時間長の単位信号の繰り返しからなる第2のダウンリンク信号を送信する、アクティブペンである。
【0008】
本発明の第1の側面によるセンサコントローラは、本発明の第1の側面によるアクティブペンと通信を行うセンサコントローラであって、前記一連の時間スロットのうちの1つにおいて検出された信号にギャップが含まれるか否かを判定し、含まれる判定した場合には、前記検出された信号を前記第1のダウンリンク信号として復調する一方、含まれていないと判定した場合には、前記検出された信号を前記第2のダウンリンク信号として復調する、センサコントローラである。
【0009】
本発明の第2の側面によるアクティブペンは、センサコントローラとの通信を行うアクティブペンであって、電極及びコイルと、前記電極の電位に変化を与えることで、前記センサコントローラに対してダウンリンク信号を送信する送信回路と、前記コイルに生ずる誘導電流を検出することにより、前記センサコントローラが送信したアップリンク信号を受信する受信回路と、を含むアクティブペンである。
【0010】
本発明の第2の側面による位置検出装置は、タッチ面内におけるアクティブペンの位置を検出する位置検出装置であって、前記タッチ面内に配置された1以上のループコイルと、前記タッチ面内に配置された複数のセンサ電極と、前記1以上のループコイルのそれぞれにアップリンク信号を供給することにより前記アクティブペンに対して前記アップリンク信号を送信するとともに、前記複数のセンサ電極それぞれの電位の変化を検出することにより前記アクティブペンが送信したダウンリンク信号を受信するセンサコントローラと、を含む位置検出装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の第1の側面によれば、アクティブペンがアップリンク信号の受信に失敗し、時間スロットの時間的位置が分からなくなったとしても、アクティブペンからのダウンリンク信号の送信を継続できるので、アップリンク信号の受信失敗によりペン入力による描画が止まってしまうことを防止できる。
【0012】
本発明の第2の側面によれば、静電結合方式に比べてノイズの影響を受けにくい電磁誘導方式によりアップリンク信号を送信することができるので、アップリンク信号の受信失敗によりペン入力による描画が止まってしまうことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1の実施の形態による位置検出システム1の構成を示す図である。
図2図1に示したセンサ30aの平面図である。
図3図1に示した処理回路26dの状態遷移図である。
図4】アクティブペン2及びセンサコントローラ31の動作を説明する図である。
図5】アクティブペン2及びセンサコントローラ31の動作を説明する図である。
図6】(a)は、図5に示したダウンリンク信号DSbの構成を示す図であり、(b)及び(c)はそれぞれ、ダウンリンク信号DSbの変調をDBPSKによって行う場合におけるチップ信号TIP及びリング信号RINGの構成を示す図であり、(d)及び(e)はそれぞれ、ダウンリンク信号DSbの変調をDQPSKによって行う場合におけるチップ信号TIP及びリング信号RINGの構成を示す図である。
図7図1に示した処理回路26dが行う処理を示す処理フロー図である。
図8図1に示したセンサコントローラ31が行う処理を示す処理フロー図である。
図9図1に示したセンサコントローラ31が行う処理を示す処理フロー図である。
図10】本発明の第2の実施の形態による位置検出システム1の構成を示す図である。
図11図10に示したセンサ30bの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施の形態による位置検出システム1の構成を示す図である。同図に示すように、位置検出システム1は、アクティブペン2と、アクティブペン2を検出する位置検出装置である電子機器3とを備えて構成される。
【0016】
電子機器3は、例えばタブレットコンピュータやデジタイザなどのタッチ面3aを有するコンピュータである。電子機器3内には、タッチ面3aの直下に配置されたセンサ30aと、センサ30aに接続されたセンサコントローラ31と、センサ30aと重畳して配置されたディスプレイ32と、これらを含む電子機器3の各部を制御するホストプロセッサ33とが設けられる。
【0017】
ホストプロセッサ33は電子機器3の中央処理装置であり、図示しないメモリから各種のプログラムを読み出し、実行するように構成される。こうして実行されるプログラムには、電子機器3のオペレーティングシステムや描画アプリケーションを含む各種のアプリケーションが含まれる。このうち描画アプリケーションは、センサコントローラ31から供給される位置及びデータに基づいてデジタルインクを生成し、電子機器3内のメモリに記憶する処理や、生成したデジタルインクをレンダリングし、その結果を示す映像信号を生成してディスプレイ32に供給する処理を実行するためのプログラムである。ディスプレイ32は、ホストプロセッサ33から供給される映像信号を表示する装置であり、例えば液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイによって構成される。
【0018】
センサコントローラ31は、センサ30aを介してアクティブペン2と双方向に通信することによって、タッチ面3a内におけるアクティブペン2の位置を導出するとともに、アクティブペン2からデータを取得し、導出した位置及び取得したデータを、都度ホストプロセッサ33に供給する機能を有する集積回路である。本実施の形態においては、センサコントローラ31とアクティブペン2の間の通信は、双方向ともに、電子機器3側の電極(後述するセンサ電極30x,30y)と、アクティブペン2側の電極(後述するペン先電極21及びリング電極22)との間に形成される静電容量を介して行う静電結合方式の通信によって行われる。以下では、センサコントローラ31からアクティブペン2に対して送信される信号をアップリンク信号USと称し、アクティブペン2からセンサコントローラ31に対して送信される信号をダウンリンク信号DSと称する。
【0019】
図2は、センサ30aの平面図である。同図に示すように、センサ30aは、タッチ面3a内に配置された各複数のセンサ電極30x,30yを含んで構成される。複数のセンサ電極30xは、それぞれ図示したy方向に延在する導電体であり、図示したx方向に等間隔で並置される。また、複数のセンサ電極30yは、それぞれ図示したx方向に延在する導電体であり、図示したy方向に等間隔で並置される。センサコントローラ31は、複数のセンサ電極30x及び複数のセンサ電極30yの一方の電位に変化を与えることで、アクティブペン2に対してアップリンク信号USを送信する。センサコントローラ31はまた、各複数のセンサ電極30x,30yそれぞれの電位の変化を検出することにより、アクティブペン2が送信したダウンリンク信号DSを受信する。
【0020】
ここで、電子機器3は所謂「インセル型」の位置検出装置であり、センサ30aを構成する複数のセンサ電極30x及び複数のセンサ電極30yの一方がディスプレイ32の共通電極(各画素に共通に接地電位を供給するための電極)を兼ねている。したがってセンサコントローラ31は、ディスプレイ32内の画素を駆動するタイミングでは、センサ30aを用いてアップリンク信号USの送信やダウンリンク信号DSの受信を行うことができない。そこでセンサコントローラ31は、ホストプロセッサ33からディスプレイ32内の画素を駆動するタイミングを取得し、画素の駆動周期によって定まる一定の周期でアップリンク信号USの送信を行うとともに、それぞれ画素の駆動インターバルに相当する複数の時間スロットをアップリンク信号USの送信インターバルに設定し、各時間スロット内の時間を用いてアクティブペン2からのダウンリンク信号DSを受信するよう構成される。
【0021】
アップリンク信号USは、アクティブペン2に対する命令を示すコマンドによって変調された信号であり、各送信ビットを所定のチップ列(拡散符号)により拡散してなるパルス波(矩形波)によって構成される。所定のチップ列のチップ長(=アップリンク信号USのパルス周期)は例えば1μsec又は2μsecであり、エッジ期間(立ち上がり期間又は立ち下がり期間)は例えば10nsecである。
【0022】
一方、ダウンリンク信号DSは、センサコントローラ31にアクティブペン2の位置を検出させるための位置信号、又は、アップリンク信号USにより送信を指示されたデータ(後述する筆圧値、スイッチ情報など)によって変調されたデータ信号である。ただし、位置信号の送信は必須ではなく、センサコントローラ31は、データ信号からもアクティブペン2の位置を検出し得る。ダウンリンク信号DSの具体的な構成は、直前のアップリンク信号USの受信の有無によって異なる。以下では、直前にアップリンク信号USが受信された場合に送信されるダウンリンク信号DSをダウンリンク信号DSa(第1のダウンリンク信号)と称し、直前にアップリンク信号USが受信されなかった場合に送信されるダウンリンク信号DSをダウンリンク信号DSb(第2のダウンリンク信号)と称する。
【0023】
ダウンリンク信号DSaは、センサコントローラ31によって設定される一連の時間スロットのそれぞれに分割して送信される信号である。アクティブペン2は、直前のアップリンク信号USの受信タイミングを基準時刻として一連の時間スロットの時間的位置を決定し、決定した各時間スロット内の時間を用いてダウンリンク信号DSaの送信を行う。
【0024】
ここで、アクティブペン2は、1送信周期UpIntvの間に送信するダウンリンク信号DSaの中に、4回にわたって筆圧値を配置するよう構成される。配置される筆圧値としては、その筆圧値を送信する時点で圧力センサ23から供給されている最新の筆圧値が使用される。これにより高い時間分解能で筆圧値を送信することができるので、ホストプロセッサ33は、よりリアルな描画を行えるようになる。
【0025】
ダウンリンク信号DSbは、時間スロットの時間長よりも短い時間長の単位信号の繰り返しからなる信号である。ダウンリンク信号DSbの具体的な構成については後述するが、各単位信号は、所定のデータによって変調されたデータ信号となる。
【0026】
直前のアップリンク信号USの受信に失敗したアクティブペン2は一連の時間スロットの時間的位置を決定することができず、結果として、ダウンリンク信号DSbは一連の時間スロット内の時間及び一連の時間スロット外の時間の両方を用いて送信されることになる。そうすると、センサコントローラ31はダウンリンク信号DSbの一部(一連の時間スロット外の時間に送信された部分)を受信できないことになるが、上記のように単位信号の時間長を設定することにより、少なくとも1つの単位信号を受信できることになる。したがって、アクティブペン2が一連の時間スロットの時間的位置をロストしているにもかかわらず、アクティブペン2からセンサコントローラ31に対してダウンリンク信号DSを送信することが可能になる。
【0027】
物理的には、ダウンリンク信号DSa,DSbはそれぞれ、パルス波(矩形波)、若しくは、正弦波を基にした信号によって構成される。パルス波の場合のダウンリンク信号DSa,DSbはそれぞれ、アップリンク信号USに比べて大幅に長いパルス周期とエッジ期間を有する信号となる。具体的な例を挙げると、パルス周期は例えば4μsec~40μsecとなり、エッジ期間は例えば100nsec~5μsecとなる。一方、正弦波の場合のダウンリンク信号DSa,DSbの周波数は、例えば1.8MHzとなる。パルス波又は正弦波である搬送波の変調方式としては、DQPSK(Differential Quadrature Phase-Shift Keying)又はDBPSK(Differential Binary Phase-Shift Keying)を用いることが好適である。いずれの変調方式を用いるかは、規格により予め定められる。
【0028】
図1に戻る。アクティブペン2は、芯体20と、ペン先電極21(第1の電極)と、リング電極22(第2の電極)と、圧力センサ23と、サイドスイッチ24と、バッテリー25と、集積回路26と、ストップフィルタ27とを有して構成される。芯体20は、アクティブペン2のペン軸を構成する部材である。芯体20の先端はアクティブペン2のペン先を構成し、末端は圧力センサ23に当接している。ペン先電極21及びリング電極22は互いに異なる位置に設けられた導電体であり、ペン先電極21はアクティブペン2のペン先に配置され、リング電極22は、ペン先電極21よりもアクティブペン2の中央寄りの位置に、芯体20を取り囲むように配置される。
【0029】
圧力センサ23は、芯体20の先端に加わる圧力を検出するセンサである。圧力センサ23が検出した圧力は、例えば12ビットの筆圧値として集積回路26に供給される。サイドスイッチ24は、アクティブペン2の表面に設けられた押しボタン式のスイッチであり、ユーザによりオンオフ操作可能に構成される。サイドスイッチ24の操作状態(オンオフ状態)は、例えば2ビットのスイッチ情報として集積回路26に供給される。バッテリー25は、集積回路26が動作するために必要な電力を供給する役割を果たす。
【0030】
集積回路26は、昇圧回路26a、送信回路26b、受信回路26c、及び処理回路26dを含む各種の回路によって構成される集積回路である。送信回路26bはペン先電極21に接続されており、昇圧回路26aを用いてペン先電極21の電位に変化を与えることによって、ダウンリンク信号DSを送信する役割を果たす。受信回路26cはリング電極22に接続されており、リング電極22の電位の変化を検出することによって、アップリンク信号USを受信する役割を果たす。
【0031】
処理回路26dは、受信回路26cによって受信されたアップリンク信号USに応じた処理を実行する回路である。この処理には、アップリンク信号USの受信タイミングを基準時刻として一連の時間スロットの時間的位置を決定する処理と、センサコントローラ31からのコマンドに応じてダウンリンク信号DSを生成し、送信回路26bに送信させる処理と、次のアップリンク信号USを受信回路26cに受信させる処理とが含まれる。
【0032】
図3は、処理回路26dの状態遷移図である。同図に示すように、処理回路26dは、ディスカバリモード、通常モード、自走モードのいずれかにより動作するよう構成される。初期状態はディスカバリモードであり、ディスカバリモードにエントリしている処理回路26dは、連続的又は断続的に、受信回路26cにアップリンク信号USの検出動作を行わせる(ステップS1)。
【0033】
ステップS1の検出動作の結果としてアップリンク信号USが検出された場合、処理回路26dは通常モードにエントリする(ステップS2)。そして、アップリンク信号USの受信タイミングを基準時刻として一連の時間スロットの時間的位置を決定し、その中の時間を用いて送信回路26bにダウンリンク信号DSaを送信させる(ステップS10)とともに、次のアップリンク信号USの受信タイミングが到来した場合には(ステップS11)、受信回路26cに次のアップリンク信号USの検出動作を行わせる(ステップS12)。その結果として次のアップリンク信号USが検出された場合(ステップS13)、そのアップリンク信号USの受信タイミングを基準時刻として改めて一連の時間スロットの時間的位置を決定し、ステップS10の処理を繰り返す。
【0034】
一方、ステップS12の検出動作の結果としてアップリンク信号が検出されなかった場合の処理回路26dは、自走モードにエントリする(ステップS14)。自走モードにおける処理回路26dは、ダウンリンク信号DSbを生成して送信回路26bに送信させるとともに、これと並行して、受信回路26cにアップリンク信号USの検出動作を行わせる(ステップS20)。この並行処理は図1に示したストップフィルタ27によって実現されるものであり、その詳細については後述する。ステップS20においてアップリンク信号USが検出された場合、処理回路26dは通常モードに戻る(ステップS21)。そして、アップリンク信号USの受信タイミングを基準時刻として改めて一連の時間スロットの時間的位置を決定し、ステップS10の処理を繰り返す。一方、アップリンク信号USの検出されない状態が所定時間にわたって継続した場合、処理回路26dはディスカバリモードに戻って処理を続ける(ステップS22)。この場合、ダウンリンク信号DSbの送信は停止することになる。
【0035】
図1に戻る。ストップフィルタ27は、リング電極22を用いたアップリンク信号USの検出と、ペン先電極21からのダウンリンク信号DSbの送信とを同時に行えるようにするために、リング電極22と集積回路26の間に挿入されるフィルタ回路である。詳しく説明すると、ダウンリンク信号DSbを送信するために用いる昇圧回路26aによる電位の上昇幅は18~20Vにも達するため、ダウンリンク信号DSbの送信に伴うペン先電極21の電位の変化は受信回路26cにも影響を及ぼす。結果として、受信回路26cにより検出されるアップリンク信号USの電位にダウンリンク信号DSbが重畳されてしまうことから、ダウンリンク信号DSbの送信と同時にはアップリンク信号USを検出することが難しくなってしまう。アクティブペン2がホバー状態(ペン先がタッチ面3aから離れている状態)にあり、リング電極22がセンサ30aから遠い場合には、アップリンク信号USの受信強度が小さくなることから、アップリンク信号USの検出はさらに困難になる。ストップフィルタ27は、ダウンリンク信号DSbの送信に伴うペン先電極21の電位の変化が集積回路26内の受信回路26cにより検出されたアップリンク信号USの電位に影響することを阻止し、それによって、リング電極22を用いたアップリンク信号USの検出と、ペン先電極21からのダウンリンク信号DSbの送信とを同時に行えるようにする役割を果たす。
【0036】
ストップフィルタ27の具体的な構成としては、各種の構成を採用し得る。例えば、ダウンリンク信号DSbが正弦波を基にした信号により構成される場合であれば、ストップフィルタ27は、ダウンリンク信号DSbの周波数を含む特定の周波数帯域を阻止するバンドストップフィルタ(ノッチフィルタ)により構成され得る。また、ダウンリンク信号DSがパルス波によって構成される場合であれば、アップリンク信号USを構成するパルス波を通過させる一方、ダウンリンク信号DSbを構成するパルス波を阻止するよう構成されたハイパスフィルタによって構成され得る。その他、このハイパスフィルタの後段にダウンリンク信号DSbのエッジをミュートするためのミュート回路を設けてもよいし、ゲイン回路及び差動回路の組み合わせ、又は、FIR(Finite Impulse Response)フィルタ、引き算器、及びフィードバック回路の組み合わせによってストップフィルタ27を構成することにより、リング電極22に到来した信号からダウンリンク信号DSbを除去することとしてもよい。
【0037】
図4及び図5は、アクティブペン2及びセンサコントローラ31の動作を説明する図である。以下、これらの図を参照しながら、本実施の形態によるアクティブペン2及びセンサコントローラ31の動作について、より詳しく説明する。
【0038】
図4及び図5の横軸は、時間軸となっている。初めに図4を参照すると、ディスカバリモードにエントリしているアクティブペン2は、リング電極22に到来したアップリンク信号USの検出動作を連続的又は断続的に行う。一方、センサコントローラ31は、ディスプレイ32における画素の駆動周期によって定まる一定の周期UpIntvでアップリンク信号USを送信するとともに、それぞれディスプレイ32における画素の駆動インターバルに相当する一連の時間スロットTSをアップリンク信号USの送信インターバルに設定し、各時間スロットTSにてダウンリンク信号DSの検出動作を行う。
【0039】
時刻t1でアップリンク信号USの受信に成功したアクティブペン2は通常モードにエントリし、アップリンク信号USの受信タイミングを基準時刻として一連の時間スロットTSの時間的位置を決定するとともに、受信したアップリンク信号USを復調することによってセンサコントローラ31が送信したコマンドを取得し、取得したコマンドに従ってダウンリンク信号DSaを生成する。そして、決定した各時間スロットTS内の時間を用いて、生成したダウンリンク信号DSaの送信を行う。一連の時間スロットTS内の時間のみを用いてダウンリンク信号DSの受信を行うセンサコントローラ31は、こうして送信されたダウンリンク信号DSaを問題なく受信できる。
【0040】
次に図5を参照すると、アクティブペン2は、アップリンク信号USが受信されるはずの時刻t2でアップリンク信号USを受信できなかったことを検出することにより、アップリンク信号USの受信に失敗したことを検出する。するとアクティブペン2は自走モードにエントリし、各時間スロットTSの時間長よりも短い時間長の単位信号の繰り返しからなるダウンリンク信号DSbを生成する。そして、一連の時間スロットTS内の時間及び一連の時間スロットTS外の時間の両方を用いて、生成したダウンリンク信号DSbの送信を行う。センサコントローラ31は、一連の時間スロットTS内の時間のみを用いてダウンリンク信号DSの受信を行うが、上記のように各時間スロットTSの所定時間長よりも短い時間長の単位信号の繰り返しによってダウンリンク信号DSbを構成しているので、少なくとも1つの単位信号を受信することができる。
【0041】
その後、時刻t3でアップリンク信号USの受信に成功したアクティブペン2は、通常モードに戻る。通常モードにおけるアクティブペン2及びセンサコントローラ31の動作は、上述したとおりである。その後も同様に、アクティブペン2は、アップリンク信号USの受信に成功したか失敗したか否かに応じて動作モードを変え、それによって、送信するダウンリンク信号DSの構成を変える。したがって、本実施の形態によるアクティブペン2によれば、アップリンク信号USの受信失敗によりペン入力による描画が止まってしまうことが防止される。
【0042】
図6(a)は、ダウンリンク信号DSbの構成を示す図である。同図に示すように、ダウンリンク信号DSbは、アップリンク信号USの送信周期UpIntvの間に、チップ信号TIP(第1の信号)とリング信号RING(第2の信号)とが交互に8つずつ配置された構成を有している。1つのチップ信号TIP及び1つのリング信号RINGそれぞれの時間長をT1とすると、UpIntv=16×T1となる。
【0043】
図6(b)及び図6(c)はそれぞれ、ダウンリンク信号DSbの変調をDBPSKによって行う場合におけるチップ信号TIP及びリング信号RINGの構成を示す図である。また、図6(d)及び図6(e)はそれぞれ、ダウンリンク信号DSbの変調をDQPSKによって行う場合におけるチップ信号TIP及びリング信号RINGの構成を示す図である。これらの図に示すように、チップ信号TIPは単位信号U1をの繰り返しによって構成され、リング信号RINGは単位信号U2の繰り返しによって構成される。また、チップ信号TIPにおいては時間的に隣接する2つの単位信号U1の間に2シンボル分のギャップGA(信号を送信しない時間)が設けられ、リング信号RINGにおいては時間的に隣接する2つの単位信号U2の間に3シンボル分のギャップGAが設けられる。
【0044】
図6(b)~図6(e)に示すように、単位信号U1,U2はいずれも、1シンボル分のスタートビットSBと、6ビット分のデータとを含む信号である。データのシンボル数は、単位信号U1,U2のいずれにおいても、ダウンリンク信号DSbの変調をDBPSKによって行う場合には6シンボルとなり、ダウンリンク信号DSbの変調をDQPSKによって行う場合には3シンボルとなる。データの内容は単位信号U1と単位信号U2とで異なり、単位信号U1内のデータは、図1に示したサイドスイッチ24の操作状態(オンオフ状態)を示す2ビットのスイッチ情報SWと、図1に示した圧力センサ23によって検出された圧力を示す12ビットの筆圧値の上位3ビット分のデータPと、1ビットのチェックサムCSとによって構成される。一方、単位信号U2内のデータは、図1に示した圧力センサ23によって検出された圧力を示す12ビットの筆圧値の上位8ビットから最上位の3ビット(すなわち、チップ信号TIPによって送信したデータP)を除いた5ビット分のデータPと、1ビットのチェックサムCSとによって構成される。
【0045】
ここで、時間スロットの時間長と単位信号U1,U2の時間長の関係について、具体的な例を挙げて説明する。まず第1の例として、ダウンリンク信号DSbの変調をDBPSKによって行う場合に着目し、1シンボルを2波(2周期分の搬送波)により構成すると仮定すると、単位信号U1,U2はともに、7×2波=14波分の時間長を有することになる。また、搬送波の周波数は例えば114kHzであり、ダウンリンク信号DSbの変調をDBPSKによって行う場合についてアクティブペン2の規格によって定められている1時間スロットの最短時間長は175μsecであることから、時間スロットの時間長を搬送波の波数で表すと、175μsec/(1/114kHz)=19.95波となる。したがって、図6(b)及び図6(c)に示した単位信号U1,U2の構成によれば、単位信号U1,U2の時間長を時間スロットの時間長よりも短くすることが実現されていると言える。
【0046】
次に第2の例として、ダウンリンク信号DSbの変調をDQPSKによって行う場合に着目し、1シンボルを2波(2周期分の搬送波)により構成すると仮定すると、単位信号U1,U2はともに、4×2波=8波分の時間長を有することになる。また、搬送波の周波数は例えば114kHzであり、ダウンリンク信号DSbの変調をDQPSKによって行う場合についてアクティブペン2の規格によって定められている1時間スロットの最短時間長は105μsecであることから、時間スロットの時間長を搬送波の波数で表すと、105μsec/(1/114kHz)=11.97波となる。したがって、図6(d)及び図6(e)に示した単位信号U1,U2の構成によっても、単位信号U1,U2の時間長を時間スロットの時間長よりも短くすることが実現されていると言える。
【0047】
再び図6(a)に着目すると、チップ信号TIP及びリング信号RINGそれぞれの中に一部分ずつ配置される筆圧値は、送信周期UpIntvの間に4回更新される。具体的には、同図に示すように、圧力センサ23から集積回路26に対して4×T1分の時間ごとに新たな筆圧値P~Pが順次供給され、その一部分がチップ信号TIP及びリング信号RINGそれぞれの中に配置される。これにより、ダウンリンク信号DSbを送信する場合においても、ダウンリンク信号DSaを送信する場合と同程度に高い時間分解能で筆圧値を送信することが可能になる。
【0048】
図7は、図1に示した処理回路26dが行う処理を示す処理フロー図である。同図に示すように、処理回路26dはまずディスカバリモードにエントリする(ステップS100)。そして、受信回路26cにアップリンク信号USの検出動作を実行させ(ステップS101)、その結果としてアップリンク信号USが受信されたか否かを判定する(ステップS102)。受信されていないと判定した処理回路26dは、ステップS101からの処理を繰り返す。一方、受信されたと判定した処理回路26dは、通常モードにエントリするとともに(ステップS103)、受信したアップリンク信号USの受信タイミングを基準時刻として、ダウンリンク信号DS及びアップリンク信号USの送受信スケジュールを決定する(ステップS104)。こうして決定される送受信スケジュールには、ダウンリンク信号DSを送信するために用いる一連の時間スロットの時間的位置と、次のアップリンク信号USの検出動作を行うタイミングの時間的位置とが含まれる。
【0049】
続いて処理回路26dは、各時間スロットにおいて、アップリンク信号US内のコマンドに従ってダウンリンク信号DSaを生成し、ステップS104で決定した一連の時間スロット内の時間を用いて送信回路26bに送信させる(ステップS105)。処理回路26dはさらに、ステップS104で決定した送受信スケジュールに従って、受信回路26cに次のアップリンク信号USの検出動作を実行させる(ステップS106)。
【0050】
次に処理回路26dは、ステップS106の結果としてアップリンク信号USが受信されたか否かを判定する(ステップS107)。受信されたと判定した処理回路26dは、ステップS104に戻って処理を繰り返す。一方、受信されていないと判定した処理回路26dは、自走モードにエントリする(ステップS108)。
【0051】
自走モードにエントリした処理回路26dは、受信回路26cによるアップリンク信号USの検出動作を継続しつつ、送信回路26bにダウンリンク信号DSbを送信させる(ステップS109)。上述したように送信回路26bは、一連の時間スロットTS内の時間及び一連の時間スロットTS外の時間の両方を用いて、ダウンリンク信号DSbの送信を行う。
【0052】
ステップS109を実行した処理回路26dは、アップリンク信号USが受信されたか否かを判定する(ステップS110)。その結果、受信されていないと判定した場合の処理回路26dは、自走モードにエントリしてから所定時間が経過したか否かをさらに判定し(ステップS111)、経過していなければステップS109に戻って送受信のための処理を続ける。一方、ステップS110において受信されたと判定した処理回路26dは、ステップS103に処理を移し、通常モードに戻って処理を続ける。また、ステップS111において経過したと判定した処理回路26dは、ステップS103に処理を移し、ディスカバリモードに戻って処理を続ける。
【0053】
図8及び図9は、センサコントローラ31が行う処理を示す処理フロー図である。同図に示すように、センサコントローラ31は、まずアップリンク信号US及びダウンリンク信号DSの送受信スケジュールを決定する(ステップS120)。この決定は、図1に示したホストプロセッサ33から取得されるディスプレイ32の画素の駆動周期の情報に基づいて実行される。また、決定される送受信スケジュールには、アップリンク信号USの初回の送信タイミング及び送信周期(図4等に示した周期UpIntv)と、ダウンリンク信号DSを受信するために用いる一連の時間スロットの時間的位置とが含まれる。
【0054】
続いてセンサコントローラ31は、ステップS120で決定した送受信スケジュールに従ってアップリンク信号USを送信し(ステップS121)、ダウンリンク信号DSの種別を決定済みであるか否かを示す第1フラグに、決定済みでないことを示す値(=False)を設定する(ステップS122)。
【0055】
次にセンサコントローラ31は、ステップS120で決定した各時間スロットにおいて、ステップS124~S137の処理を実行する(ステップS123)。具体的に説明すると、センサコントローラ31はまず、図2に示した各複数のセンサ電極30x,30yそれぞれの電位の変化を検出することにより、ダウンリンク信号DSの検出動作を実行する(ステップS124)。そして、ダウンリンク信号DSが検出されたか否かを判定し(ステップS125)、検出されたと判定した場合には、検出結果に基づいてアクティブペン2の位置を検出する(ステップS126)。一方、検出されなかったと判定した場合には、次の時間スロットまで待機したうえで、ステップS124からの処理を繰り返す。
【0056】
ステップS126を終了したセンサコントローラ31は第1フラグの値を判定し(ステップS127)、TrueであればステップS128に、FalseであればステップS130にそれぞれ処理を移す。ステップS128においてセンサコントローラ31は、送信するダウンリンク信号DSの種別を示す第2フラグの値を判定し(ステップS127)、ダウンリンク信号DSaであることを示す値(=True)であればステップS132に、ダウンリンク信号DSbであることを示す値(=False)であればステップS134にそれぞれ処理を移す。
【0057】
ステップS130においてセンサコントローラ31は、検出されたダウンリンク信号DSの中に図6(b)~図6(e)に示したギャップGAが含まれるか否かを判定する(ステップS130)。その結果、含まれないと判定した場合のセンサコントローラ31は、第1フラグにTrue、第2フラグにTrueをそれぞれ設定したうえで(ステップS131)、受信信号をダウンリンク信号DSaとみなして復調する(ステップS132)。
【0058】
一方、ステップS130において含まれると判定したセンサコントローラ31は、第1フラグにTrue、第2フラグにFalseをそれぞれ設定したうえで(ステップS133)、検出されたギャップGAの長さを判定する(ステップS134)。その結果、2シンボル分であると判定した場合には、受信信号を単位信号U1とみなして復調する(ステップS135)。一方、3シンボル分であると判定した場合には、受信信号を単位信号U2とみなして復調する(ステップS136)。なお、ステップS135又はステップS136の復調処理を行う際、センサコントローラ31は、ギャップGAの位置に基づいて単位信号U1,U2の受信タイミングを取得すればよい。
【0059】
ステップS132、ステップS135、ステップS136のいずれかを終了したセンサコントローラ31は、ステップS126において検出した位置と、ステップS132、ステップS135、又はステップS136における復調の結果として得られたデータとをホストプロセッサ33に供給する(ステップS137)。そして、次の時間スロットまで待機したうえで、ステップS124からの処理を繰り返す。すべての時間スロットの処理を終了したセンサコントローラ31は、ステップS121に戻ってアップリンク信号USの送信を行う。
【0060】
以上説明したように、本実施の形態による位置検出システム1によれば、アクティブペン2がアップリンク信号USの受信に失敗し、時間スロットの時間的位置が分からなくなったとしても、アクティブペン2からのダウンリンク信号DSの送信を継続できるので、アップリンク信号USの受信失敗によりペン入力による描画が止まってしまうことを防止できる。
【0061】
また、チップ信号TIP及びリング信号RINGそれぞれの中に一部分ずつ配置する筆圧値を送信周期UpIntvの間に4回更新しているので、アクティブペン2がダウンリンク信号DSbを送信する場合であっても、ダウンリンク信号DSaを送信する場合と同程度に高い時間分解能で、アクティブペン2からセンサコントローラ31に対して筆圧値を送信することが可能になる。
【0062】
図10は、本発明の第2の実施の形態による位置検出システム1の構成を示す図である。同図に示すように、本実施の形態による位置検出システム1は、アップリンク信号USの送受信を静電結合方式ではなく電磁誘導方式により行う点で、第1の実施の形態による位置検出システム1と相違する。具体的な構成としては、本実施の形態による位置検出システム1は、アクティブペン2がリング電極22及びストップフィルタ27に代えてコイル28を有する点、及び、電子機器3がセンサ30aに代えてセンサ30bを有する点で、第1の実施の形態による位置検出システム1と相違する。その他の点では第1の実施の形態による位置検出システム1と同様であるので、以下では相違点に着目して説明を続ける。
【0063】
図11は、センサ30bの平面図である。同図に示す各複数のセンサ電極30x,30yは、第1の実施の形態で説明したセンサ30aのものと同様である。センサ30bの特徴は、各複数のセンサ電極30x,30yに加えて、1以上のループコイル30rを有する点にある。センサコントローラ31は、これら1以上のループコイル30rのそれぞれにアップリンク信号USを供給することにより、アクティブペン2に対してアップリンク信号USを送信する。つまり、本実施の形態によるセンサコントローラ31は、各ループコイル30rから生ずる磁界によってアップリンク信号USの送信を行う。
【0064】
ここで、1以上のループコイル30rの具体的な配置は、アクティブペン2がタッチ面3a内のどの位置であってもアップリンク信号USを受信できるように決定すればよい。例えば、図11に示すように、タッチ面3aを2×2のマトリクス状に分割してなる各領域それぞれの縁に沿って延在する4つのループコイル30rを用いればよい。
【0065】
図10に戻る。本実施の形態による受信回路26cは、コイル28に生ずる誘導電流を検出することにより、センサコントローラ31が1以上のループコイル30rを用いて送信したアップリンク信号USの検出を行う。つまり、本実施の形態によるアクティブペン2は、各ループコイル30rから生ずる磁界をコイル28を用いて検出することにより、アップリンク信号USの検出を行う。
【0066】
以上説明したように、本実施の形態による位置検出システム1によれば、静電結合方式に比べてノイズの影響を受けにくい電磁誘導方式によりアップリンク信号USを送信することができるので、アップリンク信号USの受信失敗によりペン入力による描画が止まってしまうことを防止できる。
【0067】
なお、本実施の形態による位置検出システム1によれば、アクティブペン2がアップリンク信号USの受信に失敗する可能性を大きく低減することができるので、第1の実施の形態で説明したダウンリンク信号DSbを使う必要性は乏しく、したがって、ダウンリンク信号DSaのみを用いることとしてよい。ただし、本実施の形態による位置検出システム1においても、第1の実施の形態と同様にダウンリンク信号DSbを使うこととしてもよいのは勿論である。
【0068】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明が、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施され得ることは勿論である。
【0069】
例えば、上記各実施の形態では、チップ信号TIPにおけるギャップGAの長さを2シンボル分とし、リング信号RINGにおけるギャップGAの長さを3シンボル分としたが、チップ信号TIPとリング信号RINGとでギャップGAの長さが異なっていればよく、具体的なギャップGAの長さは2シンボル分又は3シンボル分に限られない。
【0070】
また、上記各実施の形態では、アップリンク信号USの1送信周期UpIntvの中で4回にわたって筆圧値を送信する例を説明したが、筆圧値の送信回数は4回に限定されるものではなく、1回だけ筆圧値を送信することとしてもよいし、2回以上にわたって筆圧値を送信することとしてもよい。
【0071】
また、上記各実施の形態では、インセル型の位置検出装置に本発明を適用した場合の例を説明したが、本発明は、オンセル型やアウトセル型の位置検出装置にも好適に適用できる。この場合においてセンサコントローラ31は、ディスプレイ32の画素の駆動周期の情報をホストプロセッサ33から取得できる場合には、該情報を用いて上記実施の形態と同様にアップリンク信号US及びダウンリンク信号DSの送受信スケジュールを決定すればよいし、ディスプレイ32の画素の駆動周期の情報をホストプロセッサ33から取得できない場合には、ディスプレイ32から生ずるノイズを測定することによって該情報を取得し、取得した該情報を用いて上記実施の形態と同様にアップリンク信号US及びダウンリンク信号DSの送受信スケジュールを決定すればよい。
【符号の説明】
【0072】
1 位置検出システム
2 アクティブペン
3 電子機器
3a タッチ面
20 芯体
21 ペン先電極
22 リング電極
23 圧力センサ
24 サイドスイッチ
25 バッテリー
26 集積回路
26a 昇圧回路
26b 送信回路
26c 受信回路
26d 処理回路
27 ストップフィルタ
28 コイル
30a,30b センサ
30r ループコイル
30x,30y センサ電極
31 センサコントローラ
32 ディスプレイ
33 ホストプロセッサ
CS チェックサム
DS,DSa,DSb ダウンリンク信号
GA ギャップ
12ビットの筆圧値の上位8ビットから最上位の3ビットを除いた5ビット分のデータ
12ビットの筆圧値の上位3ビット分のデータ
RING リング信号
SB スタートビット
SW スイッチ情報
TIP チップ信号
TS 時間スロット
U1,U2 単位信号
UpIntv アップリンク信号USの送信周期
US アップリンク信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11