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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022144912
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】精製装置及び精製方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/56 20060101AFI20220926BHJP
   C01B 3/04 20060101ALI20220926BHJP
   B01D 53/047 20060101ALI20220926BHJP
   B01J 20/08 20060101ALI20220926BHJP
   B01J 20/18 20060101ALI20220926BHJP
   B01J 20/34 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
C01B3/56 Z
C01B3/04 B
B01D53/047
B01J20/08 A
B01J20/18 A
B01J20/34 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021046114
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】足立 貴義
【テーマコード(参考)】
4D012
4G066
4G140
【Fターム(参考)】
4D012BA01
4D012BA02
4D012BA10
4D012CA08
4D012CB16
4D012CD07
4D012CD10
4D012CG06
4D012CJ01
4D012CJ02
4D012CJ05
4G066AA20B
4G066AA61B
4G066CA27
4G066CA29
4G066DA04
4G066GA07
4G140FA02
4G140FB06
4G140FC03
4G140FD01
4G140FE02
(57)【要約】
【課題】アンモニアからの水素製造方法において、水素からアンモニアと窒素を除去する上で、装置全体の簡略化を行い、水素の製造コストを下げる。
【解決手段】原料水素ガスからアンモニア及び窒素ガスの不純物を吸着除去する吸着剤を充填する吸着筒を複数有し、連続的に水素ガスの精製を行うPSA装置5を備えた精製装置であって、前記PSA装置5は、各吸着筒で、加圧工程、吸着工程、均圧工程、脱圧工程、再生工程、均圧工程を順に繰り返し吸着分離を行うものであり、前記不純物を吸着除去する吸着剤が、アンモニアを吸着除去する第1吸着剤101および窒素ガスを吸着除去する第2吸着剤103がそれぞれ原料水素ガス入口側からこの順序で充填され、前記第1吸着剤101と前記第2吸着剤103との間に熱交換部102を設けた。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料水素ガスからアンモニア及び窒素ガスの不純物を吸着除去する吸着剤を充填する吸着筒を複数有し、連続的に水素ガスの精製を行うPSA装置を備えた精製装置であって、
前記PSA装置は、各吸着筒で、
a・・原料水素ガスを吸着筒に導入する加圧工程、
b・・原料水素ガスから前記不純物を吸着除去する吸着工程、
c・・吸着工程終了後、吸着筒内を他の吸着筒と同じ圧力まで減圧する均圧工程、
d・・吸着筒内のガスを一定の流量で排出する脱圧工程、
e・・吸着筒内を真空排気するとともに、再生用水素ガスを吸着筒に導入して吸着剤を再生させる再生工程、
f・・再生工程終了後、吸着筒内を他の吸着筒と同じ圧力まで加圧する均圧工程
のaからfの工程を順に繰り返し吸着分離を行うものであり、
前記不純物を吸着除去する吸着剤が、アンモニアを吸着除去する第1吸着剤および窒素ガスを吸着除去する第2吸着剤がそれぞれ原料水素ガス入口側からこの順序で充填され、
前記第1吸着剤と前記第2吸着剤との間に熱交換部を設けたことを特徴とする精製装置。
【請求項2】
前記原料水素ガスは、アンモニアを触媒に分解させることにより発生させることを特徴とする請求項1記載の精製装置。
【請求項3】
前記第1吸着剤は、活性アルミナであることを特徴とする請求項1又は2記載の精製装置。
【請求項4】
前記第2吸着剤は、ゼオライトであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項記載の精製装置。
【請求項5】
前記再生用水素ガスの一部を前記熱交換部に導入することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項記載の精製装置。
【請求項6】
前記PSA装置が、吸着筒を3塔以上有し、第一筒において吸着工程を行う時に、第二筒では脱圧工程を、第三筒以降のいずれか1筒では再生工程を行っていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項記載の精製装置。
【請求項7】
原料水素ガスからアンモニア及び窒素ガスの不純物を吸着除去する吸着剤を充填する吸着筒を複数有するPSA装置により、連続的に水素ガスの精製を行う精製方法であって、
前記PSA装置は、各吸着筒で、
a・・原料水素ガスを吸着筒に導入する加圧工程、
b・・原料水素ガスから前記不純物を吸着除去する吸着工程、
c・・吸着工程終了後、吸着筒内を他の吸着筒と同じ圧力まで減圧する均圧工程、
d・・吸着筒内のガスを一定の流量で排出する脱圧工程、
e・・吸着筒内を真空排気するとともに、再生用水素ガスを吸着筒に導入して吸着剤を再生させる再生工程、
f・・再生工程終了後、吸着筒内を他の吸着筒と同じ圧力まで加圧する均圧工程
のaからfの工程を順に繰り返し吸着分離を行い、
前記吸着工程において、前記原料水素ガスを第1吸着剤に接触させてアンモニアを除去し、次に熱交換部に通して吸着熱を除去し、次に第2吸着剤に接触させて窒素ガスを除去することを特徴とする精製方法。
【請求項8】
前記原料水素ガスは、アンモニアを触媒に分解させることにより発生させることを特徴とする請求項7記載の精製方法。
【請求項9】
前記第1吸着剤は、活性アルミナであることを特徴とする請求項7又は8記載の精製方法。
【請求項10】
前記第2吸着剤は、ゼオライトであることを特徴とする請求項7乃至9のいずれか一項記載の精製方法。
【請求項11】
前記再生工程において、前記再生用水素ガスの一部を前記熱交換部に導入することを特徴とする請求項7乃至10のいずれか一項記載の精製方法。
【請求項12】
前記PSA装置が、吸着筒を3塔以上有し、第一筒において吸着工程を行う時に、第二筒では脱圧工程を、第三筒以降のいずれか1筒では再生工程を行っていることを特徴とする請求項7乃至11のいずれか一項記載の精製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精製装置及び精製方法、詳しくは、PSA装置により連続的に水素ガスの精製を行う精製装置及び精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、将来の自動車用燃料として水素ガスの利用が進められている。しかし、水素ガスは液化するためには超低温が必要であり、常温で輸送するには高圧の状態を保つしかなく、大量輸送が困難な物質である。そこで、従来から、水素を窒素と反応させてアンモニアにして輸送し、ユースポイントで当該アンモニアを分解して水素ガスを発生させて利用する方法が検討されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-177615号公報
【特許文献2】特開2017-104778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アンモニアは触媒の下で加熱すると分解し、水素と窒素とを発生することが知られている。しかしながら、その分解ガスには、分解生成物としての水素ガスと窒素ガスの他に、未分解のアンモニアや元々アンモニア中に含まれていたメタンなどが含まれている。FCV用の燃料に利用される水素ガスには高純度が求められているので、分解後の水素ガスに含まれる窒素ガスやアンモニアなどを低濃度まで除去する必要がある。
【0005】
FCV用の燃料として利用するための基準濃度として、アンモニアは0.2ppm以下、窒素ガスは100ppm以下まで除去する必要がある。当該除去を行うために、従来は、アンモニアの除去をゼオライトの熱再生型のTSA(温度スイング吸着)装置で、窒素ガスの除去をPSA(圧力スイング吸着)装置で、それぞれ別々に行っていたので(特許文献1、2を参照。)、装置全体が複雑かつ高価になるという問題があった(図4を参照。)。
【0006】
また、アンモニアは吸着剤への吸着力が強く、PSA装置での脱圧や真空排気だけでは吸着剤から十分脱離させることができないために、PSA装置を長時間稼働するとアンモニアが吸着剤へ蓄積していき、その後蓄積されたアンモニアが徐々に精製された水素ガス中に漏れ出してくるという問題があった。
【0007】
また、アンモニアや窒素を吸着除去すると、吸着熱による発熱が大きいためにガスの温度が上昇してしまって吸着能力が低下するという問題があった。また、吸着剤の再生時においてアンモニアや窒素が脱離する際に脱離熱(脱離冷熱)が発生し、ガスの温度が低下して吸着剤の再生が不十分になるという問題もあった。
【0008】
以上の点に鑑みて、本発明は、アンモニアから分解される原料水素ガスからアンモニアと窒素を除去する上で、装置全体の簡略化を行い、水素の製造コストを下げることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の発明は、原料水素ガスからアンモニア及び窒素ガスの不純物を吸着除去する吸着剤を充填する吸着筒を複数有し、連続的に水素ガスの精製を行うPSA装置を備えた精製装置であって、前記PSA装置は、各吸着筒で、a・・原料水素ガスを吸着筒に導入する加圧工程、b・・原料水素ガスから前記不純物を吸着除去する吸着工程、c・・吸着工程終了後、吸着筒内を他の吸着筒と同じ圧力まで減圧する均圧工程、d・・吸着筒内のガスを一定の流量で排出する脱圧工程、e・・吸着筒内を真空排気するとともに、再生用水素ガスを吸着筒に導入して吸着剤を再生させる再生工程、f・・再生工程終了後、吸着筒内を他の吸着筒と同じ圧力まで加圧する均圧工程のaからfの工程を順に繰り返し吸着分離を行うものであり、前記不純物を吸着除去する吸着剤が、アンモニアを吸着除去する第1吸着剤および窒素ガスを吸着除去する第2吸着剤がそれぞれ原料水素ガス入口側からこの順序で充填され、前記第1吸着剤と前記第2吸着剤との間に熱交換部を設けたことを特徴とするものである。
【0010】
本発明の第2の発明は、上記第1の発明において、前記原料水素ガスは、アンモニアを触媒に分解させることにより発生させることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の第3の発明は、上記第1又は第2の発明において、前記第1吸着剤は、活性アルミナであることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の第4の発明は、上記第1~第3のいずれか一つの発明において、前記第2吸着剤は、ゼオライトであることを特徴とするものである。
【0013】
本発明の第5の発明は、上記第1~第4のいずれか一つの発明において、前記再生用水素ガスの一部を前記熱交換部に導入することを特徴とするものである。
【0014】
本発明の第6の発明は、上記第1~第5のいずれか一つの発明において、前記PSA装置が、吸着筒を3筒以上有し、第一筒において吸着工程を行う時に、第二筒では脱圧工程を、第三筒以降のいずれか1筒では再生工程を行っていることを特徴とするものである。
【0015】
本発明の第7の発明は、原料水素ガスからアンモニア及び窒素ガスの不純物を吸着除去する吸着剤を充填する吸着筒を複数有するPSA装置により、連続的に水素ガスの精製を行う精製方法であって、前記PSA装置は、各吸着筒で、a・・原料水素ガスを吸着筒に導入する加圧工程、b・・原料水素ガスから前記不純物を吸着除去する吸着工程、c・・吸着工程終了後、吸着筒内を他の吸着筒と同じ圧力まで減圧する均圧工程、d・・吸着筒内のガスを一定の流量で排出する脱圧工程、e・・吸着筒内を真空排気するとともに、再生用水素ガスを吸着筒に導入して吸着剤を再生させる再生工程、f・・再生工程終了後、吸着筒内を他の吸着筒と同じ圧力まで加圧する均圧工程のaからfの工程を順に繰り返し吸着分離を行い、前記吸着工程において、前記原料水素ガスを第1吸着剤に接触させてアンモニアを除去し、次に熱交換部に通して吸着熱を除去し、次に第2吸着剤に接触させて窒素ガスを除去することを特徴とするものである。
【0016】
本発明の第8の発明は、上記第7の発明において、前記原料水素ガスは、アンモニアを触媒に分解させることにより発生させることを特徴とするものである。
【0017】
本発明の第9の発明は、上記第7又は第8の発明において、前記第1吸着剤は、活性アルミナであることを特徴とするものである。
【0018】
本発明の第10の発明は、上記第7~第9のいずれか一つの発明において、前記第2吸着剤は、ゼオライトであることを特徴とするものである。
【0019】
本発明の第11の発明は、上記第7~第10のいずれか一つの発明において、前記再生工程において、前記再生用水素ガスの一部を前記熱交換部に導入することを特徴とするものである。
【0020】
本発明の第12の発明は、上記第7~第11のいずれか一つの発明において、前記PSA装置が、吸着筒を3塔以上有し、第一筒において吸着工程を行う時に、第二筒では脱圧工程を、第三筒以降のいずれか1筒では再生工程を行っていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明の精製装置及び精製方法によれば、水素からアンモニアと窒素を除去する上で、装置全体の簡略化を行い、水素の製造コストを下げることができる。また、得られる水素ガスは高純度であり、FCV燃料としても利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の精製方法に用いられる水素ガス製造装置の構成を示した図である。
図2】本発明の精製方法におけるPSA装置の一形態例を示す系統図である。
図3】上記PSA装置における吸着筒の構造を示す図である。
図4】従来の水素ガス製造装置の構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本発明の精製方法に用いられる水素ガス製造装置1(精製装置)の構成の一例を示す模式図である。図1に示すように、水素ガス製造装置1は、アンモニア供給源2、アンモニア分解装置3と、昇圧ポンプ4と、PSA装置5と、空気供給源6と、昇圧ポンプ8と、ラインL1~L7とを備えている。TSA装置を備えずに、PSA装置5のみを備える点で、図4に示されるような従来技術と異なっている。以下に水素ガス製造装置1の各構成要素に関して説明する。
【0024】
アンモニア供給源2は、ラインL1を介してアンモニアをアンモニア分解装置3に供給する。ラインL1は、一端がアンモニア供給源2と接続され、他端がアンモニア分解装置3と接続されている。アンモニアは、ボンベ、タンク、トラック、及びパイプライン等の公知の方法でアンモニア供給源2に供給される。
【0025】
アンモニア分解装置3は、下式(1)に示されるアンモニア分解反応によって、アンモニア供給源2から供給されるアンモニアを窒素ガスと水素ガスとに分解する。かかる分解反応は、アンモニア分解装置3が有する反応室7で行われる。この水素ガスを原料水素ガスとして後述するPSA装置5に供給するが、窒素ガス、アンモニア残渣やメタンガス等の不純物が含まれている状態である。
2NH → N+3H ・・・(1)
【0026】
アンモニア分解装置3は、特に制限されず、公知の反応器であってよい。例えば、アンモニア分解装置は、燃焼熱等の熱量を与えることによって上記式(1)で示されるアンモニア分解反応を行う。そのため、アンモニア分解装置3は、反応室7に安定的に熱量を供給する。反応室7には、アンモニア分解触媒が充填されている。アンモニア分解触媒は、上記式(1)で示されるアンモニア分解反応を促進する。アンモニア分解触媒としては、ニッケル、ルテニウム等の公知の触媒が挙げられる。
【0027】
ラインL2は、一端がアンモニア分解装置3と接続され、他端が昇圧ポンプ4と接続されている。昇圧ポンプ4は、ラインL2を介してアンモニア分解装置3から供給される原料水素ガス(アンモニア分解ガス)の圧力を上昇させるポンプである。
【0028】
ラインL3は、一端が昇圧ポンプ4と接続され、他端がPSA装置5と接続されている。PSA装置5は、ラインL3を介して供給される原料水素ガスを精製する装置であり、不純物を原料ガスから除去して、水素ガスを精製する。
【0029】
ラインL4は、PSA装置5の吸着工程にある吸着塔から精製された水素ガスを取り出すためのラインである。
【0030】
ラインL5は、PSA装置5の再生工程又は脱圧工程にある吸着筒から排出されるオフガスを取り出すためのラインである。当該ラインL5は、一端がPSA装置5と接続され、他端が昇圧ポンプ8と接続されている。
【0031】
ラインL6は、一端が昇圧ポンプ8と接続され、他端がアンモニア分解装置3と接続されている。昇圧ポンプ8によって圧力が上昇したオフガスは、ラインL6を介してアンモニア分解装置3に導入され、前記アンモニア分解装置3の燃料として再利用される。
【0032】
ラインL7は、一端が空気供給源6と接続され、他端がラインL6と接続されている。
空気供給源6は、ラインL7を介して、ラインL6に空気を導出し、オフガスに空気中の酸素成分を混入することによって、オフガスをアンモニア分解装置3の実用的な燃料とする。
【0033】
図2は、PSA装置5の一形態例を示す系統図である。当該図2に示すように、PSA装置5は、原料水素ガス(アンモニア分解ガス)供給ライン10、オフガス排出ライン20、脱圧ライン30、水素ガス回収ライン40、再生ガス導入ライン50、均圧ライン60、第1乃至第3の吸着筒70A~70C、真空ポンプ22、第1のタンク23、昇圧ポンプ24、第2のタンク25、バルブVa1~Va6、Vb1~Vb6、Vc1~Vc6、バルブV、及び返送ライン80を備えて概略構成されている。
【0034】
原料水素ガス供給ライン10は、一端が原料水素ガス供給源12と接続されており、他端が第1乃至第3の供給分岐ライン11A、11B、11Cに分岐されている。原料水素ガス供給源12は、図1におけるラインL3から続くものであり、昇圧ポンプ4によって昇圧された原料水素ガスが供給される。
【0035】
第1の供給分岐ライン11Aは、第1の吸着筒70Aの下端と接続された接続管71Aと接続されている。第1の供給分岐ライン11Aは、接続管71Aを介して、第1の吸着筒70Aの下端に原料ガスを供給する。
第2の供給分岐ライン11Bは、第2の吸着筒70Bの下端と接続された接続管71Bと接続されている。第2の供給分岐ライン11Bは、接続管71Bを介して、第2の吸着筒70Bの下端に原料ガスを供給する。
第3の供給分岐ライン11Cは、第3の吸着筒70Cの下端と接続された接続管71Cと接続されている。第3の供給分岐ライン11Cは、接続管71Cを介して、第3の吸着筒70Cの下端に原料ガスを供給する。
【0036】
オフガス排出ライン20は、再生中の各吸着筒から排出されるオフガスを挿通する。オフガス排出ライン20は、一端が第1乃至第3の排出分岐ライン21A、21B、21Cに分岐されており、他端が図1におけるラインL5と接続されて、オフガスを燃料として再利用している。
【0037】
第1の排出分岐ライン21Aは、接続管71Aと接続されている。第1の排出分岐ライン21Aは、接続管71Aを介して、第1の吸着筒70Aの下端から排出されるオフガスを挿通する。
第2の排出分岐ライン21Bは、接続管71Bと接続されている。第2の排出分岐ライン21Bは、接続管71Bを介して、第2の吸着筒70Bの下端から排出されるオフガスを挿通する。
第3の排出分岐ライン21Cは、接続管71Cと接続されている。第3の排出分岐ライン21Cは、接続管71Cを介して、第3の吸着筒70Cの下端から排出されるオフガスを挿通する。
【0038】
このように、本形態例に係るPSA装置5では、第1乃至第3の排出分岐ライン21A~21Cは、各吸着塔の下端に接続されている。なお、各吸着塔が再生工程にあるとき、各吸着筒の上端が一次側であり、各吸着筒の下端が二次側(オフガスの排出口側)となる。
【0039】
オフガス排出ライン20には、真空ポンプ22と、第1のタンク23と、昇圧ポンプ24と、第2のタンク25とが、二次側に向けてこの順で直列に設けられている。
【0040】
真空ポンプ22は、オフガス排出ライン20のうち、第1乃至第3の排出分岐ライン21A~21Cの分岐位置と第1のタンク23との間に位置する部分に設けられている。真空ポンプ22は、オフガス排出ライン20を介して、第1乃至第3の吸着筒70A~70C内を吸引することで、オフガスを第1のタンク23に導く。なお、真空ポンプ22は各吸着筒70A~70C内を真空排気することもできる。
【0041】
第1のタンク23は、オフガス排出ライン20に設けられている。具体的には、第1のタンク23は、オフガス排出ライン20のうち、真空ポンプ22と昇圧ポンプ24との間に位置する部分に設けられている。第1のタンク23は、オフガス排出ライン20を介して、第1乃至第3の吸着筒70A~70Cから排出されたオフガスを一時的に貯留するタンクである。第1のタンク23は、オフガスを一時的に貯留した後、第2のタンク25に供給する。
【0042】
昇圧ポンプ24は、オフガス排出ライン20のうち、第1のタンク23と第2のタンク25との間に位置する部分に設けられている。昇圧ポンプ24は、オフガス排出ライン20を介して、第1のタンク23内に一時的に貯留されたオフガスを昇圧する昇圧手段の一例である。昇圧ポンプ24によって昇圧されたオフガスは、第1のタンク23から第2のタンク25に圧送される。
【0043】
第2のタンク25は、オフガス排出ライン20のうち、第1のタンク23の二次側の部分に設けられている。第2のタンク25は、第1のタンク23を介して供給されたオフガスを一定の圧力に維持しながら貯留する。また、第2のタンク25は、オフガスをアンモニア分解装置3の燃料ガスとするために、ラインL5に供給する。
【0044】
PSA装置5の運転中には、第1のタンク23内の圧力は、大気圧程度に維持されていることが好ましい。特に、各吸着塔の少なくとも1つが脱圧工程、または再生工程の少なくとも一方を行っている間に、第1のタンク23内の圧力が大気圧程度に維持されていることが好ましい。この場合、真空ポンプ22の二次側の圧力である背圧が大気圧程度に維持され、真空ポンプ22が正常に動作して各吸着塔内を吸引し、吸着塔内の不純物が脱離しやすくなるため好ましい。
【0045】
第1のタンク23内の圧力が大気圧程度に維持されやすくなる観点から、第1のタンク23の容積は第2のタンク25の容積より、大きいことが好ましい。
また、第1のタンク23、及び第2のタンク25は、水素ガスが各タンクの外部に漏れるのを防ぐために、気密性を有していることが好ましい。
なお、第2のタンク内の圧力は、オフガスを一定の圧力に維持しながら貯留しやすくなるため、第1のタンク23内の圧力より高く維持されていることが好ましい。
【0046】
脱圧ライン30は、一端が第1乃至第3の脱圧分岐ライン31A、31B、31Cに分岐されており、他端が、第1のタンク23と接続されている。
【0047】
第1の脱圧分岐ライン31Aは、接続管71Aと接続されている。第1の脱圧分岐ライン31Aは、接続管71Aを介して、第1の吸着筒70Aの下端から排出されるオフガスを挿通する。
第2の脱圧分岐ライン31Bは、接続管71Bと接続されている。第2の脱圧分岐ライン31Bは、接続管71Bを介して、第2の吸着筒70Bの下端から排出されるオフガスを挿通する。
第3の脱圧分岐ライン31Cは、接続管71Cと接続されている。第3の脱圧分岐ライン31Cは、接続管71Cを介して、第3の吸着筒70Cの下端から排出されるオフガスを挿通する。
【0048】
水素ガス回収ライン40は、一端が第1乃至第3の回収分岐ライン41A、41B、41Cに分岐されており、他端が、図1におけるラインL4と接続されている。
【0049】
第1の回収分岐ライン41Aは、接続管72Aと接続されている。第1の回収分岐ライン41Aは、接続管72Aを介して、第1の吸着筒70Aの上端から精製された水素ガスを回収する。
第2の回収分岐ライン41Bは、接続管72Bと接続されている。第2の回収分岐ライン41Bは、接続管72Bを介して、第2の吸着筒70Bの上端から精製された水素ガスを回収する。
第3の回収分岐ライン41Cは、接続管72Cと接続されている。第3の回収分岐ライン41Cは、接続管72Cを介して、第3の吸着筒70Cの上端から精製された水素ガスを回収する。
【0050】
再生ガス導入ライン50は、一端が第1乃至第3の導入分岐ライン51A、51B、51Cに分岐されており、他端が、水素ガス回収ライン40に接続点43を介して接続されている。
【0051】
第1の導入分岐ライン51Aは、接続管72Aと接続されている。第1の導入分岐ライン51Aは、接続管72Aを介して、第1の吸着筒70Aの上端に再生ガスを導入する。
第2の導入分岐ライン51Bは、接続管72Bと接続されている。第2の導入分岐ライン51Bは、接続管72Bを介して、第2の吸着筒70Bの上端に再生ガスを導入する。
第3の導入分岐ライン51Cは、接続管72Cと接続されている。第3の導入分岐ライン51Cは、接続管72Cを介して、第3の吸着筒70Cの上端に再生ガスを導入する。
【0052】
再生ガス導入ライン50には、流量調節バルブ52が設けられている。
流量調節バルブ52は、再生ガス導入ライン50のうち、第1乃至第3の導入分岐ライン51A~51Cの分岐位置と、接続点43との間に位置する部分に設けられている。流量調節バルブ52は、水素ガス貯蔵タンク42から、接続点43、及び再生ガス導入ライン50を介して、第1乃至第3の吸着筒70A~70Cに導入される再生ガスの流量を制御する。
【0053】
均圧ライン60は、第1乃至第3の吸着筒70A~70Cの上端を接続するように分岐された第1乃至第3の均圧分岐ライン61A、61B、61Cを有する。
第1の均圧分岐ライン61Aは、接続管72Aと接続されている。第2の均圧分岐ライン61Bは、接続管72Bと接続されている。第3の均圧分岐ライン61Cは、接続管72Cと接続されている。
【0054】
第1の吸着筒70Aは、その下端が接続管71Aと接続されており、上端が接続管72Aと接続されている。
第2の吸着筒70Bは、その下端が接続管71Bと接続されており、上端が接続管72Bと接続されている。
第3の吸着筒70Cは、その下端が接続管71Cと接続されており、上端が接続管72Cと接続されている。
【0055】
図3は、第1乃至第3の吸着筒70A~70Cの構造を示すものである。各吸着筒の内部には、吸着工程において原料水素ガス(アンモニア分解ガス)が導入される側(吸着筒の下側)から順に、第1吸着剤101、熱交換部102、第2吸着剤103が積層配置されている。
【0056】
第1吸着剤101は、活性アルミナが用いられており、原料水素ガス中のアンモニア残渣等を吸着除去する。
【0057】
熱交換部102は、吸着工程において、前記第1吸着剤101でアンモニア残渣等の吸着除去が行われた際に発生する吸着熱を除去するためのものである。また、熱交換部102は、脱圧工程及び再生工程において、前記第2吸着剤103で発生した脱離冷熱を除去するためのものでもある。熱交換部102で除去された熱は、吸着筒の外壁に速やかに逃げるようになっている。
【0058】
第2吸着剤103は、ゼオライトが用いられており、原料水素ガス中の窒素ガス等を吸着除去する。第1吸着剤101及び第2吸着剤103によって原料水素ガスからアンモニア残渣と窒素ガス等が除去されることで、高純度の水素ガスが精製される。
【0059】
なお、図3に示されるように、吸着剤の再生時に、再生ガスである水素ガスを第2吸着剤103に導入するだけでなく、熱交換部102にも直接導入すると、当該再生ガスが第1吸着剤101に直接導入されるようになるので、当該第1吸着剤101におけるアンモニアの脱離を促進することができ、好ましい。
【0060】
バルブVa1は、第1の供給分岐ライン11Aに設けられている。バルブVa2は、第1の排出分岐ライン21Aに設けられている。バルブVa3は、第1の脱圧分岐ライン31Aに設けられている。バルブVa4は、第1の回収分岐ライン41Aに設けられている。バルブVa5は、第1の導入分岐ライン51Aに設けられている。バルブVa6は、第1の均圧分岐ライン61Aに設けられている。
【0061】
バルブVb1は、第2の供給分岐ライン11Bに設けられている。バルブVb2は、第2の排出分岐ライン21Bに設けられている。バルブVb3は、第2の脱圧分岐ライン31Bに設けられている。バルブVb4は、第2の回収分岐ライン41Bに設けられている。バルブVb5は、第2の導入分岐ライン51Bに設けられている。バルブVb6は、第2の均圧分岐ライン61Bに設けられている。
【0062】
バルブVc1は、第3の供給分岐ライン11Cに設けられている。バルブVc2は、第3の排出分岐ライン21Cに設けられている。バルブVc3は、第3の脱圧分岐ライン31Cに設けられている。バルブVc4は、第3の回収分岐ライン41Cに設けられている。バルブVc5は、第3の導入分岐ライン51Cに設けられている。バルブVc6は、第3の均圧分岐ライン61Cに設けられている。
【0063】
バルブVは、返送ライン80に設けられている。バルブVは、第2のタンク25から第1のタンク23にオフガスを導出する際に使用する。バルブVとしては、例えば、流量コントロール用のニードルバルブ、または圧力調節器等を用いることができる。
【0064】
返送ライン80は、第1のタンク23と第2のタンク25とを結ぶ。返送ライン80は、第2のタンク25から、第1のタンク23にオフガスを導出する。
【0065】
以上のように構成された水素ガス精製装置1を用いて、本発明のアンモニアからの水素製造方法は、以下のようにして行われる。
【0066】
以下、図1を参照して、本実施形態の精製方法について、具体的に説明する。
本実施形態の水素ガスの精製方法は、上述の水素ガス製造装置1を用いた精製方法であって、PSA装置5の各吸着筒70A~70Cにおいて、アンモニア分解装置3によって分解された原料水素ガスからアンモニア残渣や窒素ガス等を吸着除去して水素ガスを精製する吸着工程と、吸着工程の後の各吸着筒間の圧力を均衡させる均圧工程と、吸着筒内を減圧して、吸着筒内に残存する原料ガスをオフガスとして排出する脱圧工程と、前記吸着筒内に水素ガスを導入して、吸着筒内に残存する原料水素ガスと、水素ガスとをオフガスとして排出する再生工程と、再生工程の後の各吸着筒間の圧力を均衡させる均圧工程と、吸着筒内部が加圧されて前記吸着工程の準備を行う加圧工程と、を行う。
【0067】
まず、アンモニア供給源2に貯蔵されたアンモニアは、ラインL1を介して、アンモニア分解装置3に導入される。
【0068】
原料水素ガス(アンモニア分解ガス)は、アンモニア分解装置3で、下式(1)に示されるアンモニア分解反応によって、生成される。
2NH → N+3H ・・・(1)
【0069】
アンモニア分解装置3で生成された原料水素ガスには、アンモニア分解装置3で分解されなかった未反応のアンモニア残渣や窒素ガス等の不純物が含まれている。これら不純物を含む原料水素ガスは、ラインL2、昇圧ポンプ4、ラインL3を介して、PSA装置5に圧送される。
【0070】
圧送された原料水素ガスに含まれる水素ガス以外の不純物は、PSA装置5によって、除去され、高純度の水素ガスが製造される。高純度の水素ガスはラインL4を介して、PSA装置5から回収される。
【0071】
本実施形態の水素ガスの精製方法では、PSA装置5の脱圧工程または再生工程にある吸着筒からラインL5を介してオフガスが排出される。再生工程では、製造された水素ガスの一部を吸着筒内に再生ガスとして導入しているので、かかるオフガスには、水素ガスが含まれている。そこでオフガスに空気を混入し、燃焼させて発生する熱量をアンモニア分解装置3によるアンモニアの分解反応に利用することができる。オフガスの燃焼を行うことによって、再生ガスを有効利用でき、水素回収(利用)率を実質的に100%とすることができる。
オフガスの燃焼に際して、オフガスはラインL5から昇圧ポンプ8を介してラインL6で圧送され、空気は空気供給源6からラインL7を介して、ラインL6の途中で混入される。
【0072】
以下、図2を参照して、水素ガス精製装置1のPSA装置5における原料水素ガスから水素ガスを精製する各工程について具体的に説明する。
表1は本実施形態の水素ガスの精製方法のうちPSA装置5による不純物の除去の際の各吸着筒の工程を説明するための表である。以下、表1に示す各状態1~9について順番に説明する。なお、表1中、着色された部分の期間は、該当するバルブが開いている状態を示し、着色されていない部分の期間は、バルブが閉じている状態を示す。
【0073】
【表1】
【0074】
表1に示すように、PSA装置5による不純物の除去は、各吸着筒で、加圧工程、吸着工程、均圧工程、脱圧工程、再生工程、均圧工程の各工程を繰り返すことによって行われる。
まず、状態1で、第1の吸着筒70Aでは加圧工程が行われ、第2の吸着筒70Bでは再生工程が行われ、第3の吸着筒70Cでは脱圧工程が行われていた場合を一例として以下の説明を行う。
【0075】
状態1では、バルブVa1、バルブVb2及びバルブVc3が開いており、その他のバルブは閉じている。
【0076】
このとき、第1の吸着筒70Aは、その下端が原料ガス供給ライン10と接続されている。よって、状態1では、原料水素ガスが、原料ガス供給ライン10、第1の供給分岐ライン11A、バルブVa1、及び接続管71Aを介して、第1の吸着筒70Aの下端から吸着剤に供給され、第1の吸着筒70A内が加圧される。すなわち、状態1では、第1の吸着筒70Aで、加圧工程が行われている。
【0077】
また、このとき、第2の吸着筒70Bは、その下端がオフガス排出ライン20と接続されている。よって、状態1では、接続管71B、バルブVb2、第2の排出分岐ライン21B及びオフガス排出ライン20を介して、真空ポンプ22による真空排気によって、不純物の吸着された吸着剤から不純物の脱離が行われ、第1のタンク23にオフガスが排出されて、第2の吸着筒70B内が再生される。すなわち、状態1では、第2の吸着筒70Bで、再生工程が行われている。
【0078】
また、このとき、第3の吸着筒70Cには、その下端が脱圧ライン30と接続されている。よって、状態1では、接続管71C、バルブVc3、第3の脱圧分岐ライン31C及び脱圧ライン30を介して、第1のタンク23にオフガスが排出され、第3の吸着筒70C内が脱圧される。すなわち、状態1では、第3の吸着筒70Cで、脱圧工程が行われている。
【0079】
次に、PSA装置5が上記表1の状態2になるように、バルブVa1、バルブVb2及びバルブVc3を開いたまま、バルブVa4、バルブVb5を開く。
【0080】
バルブVa1を開いたままバルブVa4を開くことにより、第1の吸着筒70Aは、加圧状態から吸着剤での吸着分離が行われ、精製された水素ガスが、接続管72A、バルブVa4、第1の回収分岐ライン41A及び水素ガス回収ライン40を介して、図1におけるラインL4に接続されている。すなわち、状態2では、第1の吸着筒70Aで吸着工程が行われている。
【0081】
また、バルブVb2を開いたままバルブVb5を開くことにより、第2の吸着筒70Bは、再生ガス導入ライン50、第2の導入分岐ライン51B、バルブVb5及び接続管72Bを介して、再生ガスとしての水素ガスが第2の吸着筒70B内に導入された状態で、再生工程が状態1に続いて行われる。すなわち、状態2では、第2の吸着筒70Bで再生工程が引き続き行われている。
【0082】
また、バルブVc3を開いたままにすることにより、第3の吸着筒70Cでは、状態1に続き、状態2でも、脱圧工程が行われている。
【0083】
次に、PSA装置5が上記表1の状態3になるように、バルブVa1、バルブVa4、バルブVb2、バルブVb5、バルブVc3を閉じ、バルブVa6、バルブVb6を開ける。
【0084】
バルブVa1、バルブVa4を閉じ、バルブVa6を開けることにより、第1の吸着塔70Aは、吸着工程の終了後の加圧状態から、接続管72A、第1の均圧分岐ライン61A、バルブVa6及び均圧ライン60を介して、高圧の水素ガスが導出される。
【0085】
また、バルブVb2、バルブVb5を閉じ、バルブVb6を開けることにより、第2の吸着筒70Bは、再生工程の終了後、接続管72B、第2の均圧分岐ライン61B及びバルブVb6を介して均圧ライン60に連通し、第1の吸着筒70Aから導出された高圧の水素ガスが第2の吸着筒70Bに導入される。高圧の水素ガスが第1の吸着筒70Aから導出されると、第1の吸着筒70A内の圧力は、第2の吸着筒70B内の圧力と均圧になるまで減圧される。同時に、第2の吸着筒70B内の圧力は、第1の吸着筒70A内の圧力と均圧になるまで加圧される。すなわち、状態3では、第1の吸着筒70A及び第2の吸着筒70Bで、均圧工程が行われている。
【0086】
また、バルブVc3を閉じることにより、第3の吸着筒70Cは、どのバルブも閉じた状態となるので、状態3では、状態2での脱圧工程が終了した後の状態が保持され、どの工程も進行しない状態になる。
【0087】
次に、PSA装置5が上記表1の状態4になるように、バルブVa6、バルブVb6を閉じ、バルブVa3、バルブVb1、バルブVc2を開ける。
【0088】
バルブVa6を閉じ、バルブVa3を開けることにより、第1の吸着筒70Aは、接続管71A、バルブVa3、第1の脱圧分岐ライン31A及び脱圧ライン30を介して、第1のタンク23にオフガスが排出される。すなわち、状態4では、第1の吸着筒70Aで、脱圧工程が行われている。
【0089】
また、バルブVb6を閉じ、バルブVb1を開けることにより、第2の吸着筒70Bは、原料ガスが、原料ガス供給ライン10、第2の供給分岐ライン11B、バルブVb1、及び接続管71Bを介して、第2の吸着筒70Bの下端から吸着剤に供給され、第1の吸着筒70B内が加圧される。すなわち、状態4では、第2の吸着筒70Bで、加圧工程が行われている。
【0090】
また、バルブVc2を開けることにより、第3の吸着筒70Cは、不純物の吸着された吸着剤で、接続管71C、バルブVc2、第3の排出分岐ライン21C及びオフガス排出ライン20を介して、真空ポンプ22による真空排気によって、不純物の脱離が行われ、第1のタンク23にオフガスが排出されて、第3の吸着筒70C内が再生される。すなわち、状態4では、第3の吸着筒70Cで、再生工程が行われている。
【0091】
次に、PSA装置5が上記表1の状態5になるように、バルブVa3、バルブVb1、バルブVc2は開けたまま、バルブVb4、バルブVc5を開ける。
バルブVa3を開いたままにすることにより、第1の吸着筒70Aでは、状態4に続き、状態5でも、脱圧工程が行われている。
【0092】
また、バルブVb1を開けたままバルブVb4を開けることにより、第2の吸着筒70Bは、加圧状態から吸着剤での吸着分離が行われ、精製された水素ガスが、接続管72B、バルブVb4、第2の回収分岐ライン41B及び水素ガス回収ライン40を介して、図1におけるラインL4に接続されている。すなわち、状態5では、第2の吸着筒70Bで吸着工程が行われている。
【0093】
また、バルブVc2を開けたままバルブVc5を開けることにより、第3の吸着筒70Cは、再生ガス導入ライン50、第3の導入分岐ライン51C、バルブVc5及び接続管72Cを介して、再生ガスとしての水素ガスが第3の吸着筒70C内に導入された状態で、再生工程が状態4に続いて行われる。すなわち、状態5では、第3の吸着筒70Cで再生工程が引き続き行われている。
【0094】
次に、PSA装置5が上記表1の状態6になるように、バルブVa3、バルブVb1、バルブVb4、バルブVc2、バルブVc5を閉じ、バルブVb6、バルブVc6を開ける。
【0095】
バルブVa3を閉じることにより、第1の吸着筒70Aは、どのバルブも閉じた状態となるので、状態6では、状態5での脱圧工程が終了した後の状態が保持され、どの工程も進行しない状態になる。
【0096】
また、バルブVb1、バルブVb4を閉じ、バルブVb6を開けることにより、第2の吸着筒70Bは、吸着工程の終了後の加圧状態から、接続管72B、第2の均圧分岐ライン61B、バルブVb6及び均圧ライン60を介して、高圧の水素ガスが導出される。
【0097】
また、バルブVc2、バルブVc5を閉じ、バルブVc6を開けることにより、第3の吸着筒70Cは、再生工程の終了後、接続管72C、第3の均圧分岐ライン61C及びバルブVc6を介して均圧ライン60に連通し、第2の吸着筒70Bから導出された高圧の水素ガスが第3の吸着筒70Cに導入される。高圧の水素ガスが第2の吸着筒70Bから導出されると、第2の吸着筒70B内の圧力は、第3の吸着筒70C内の圧力と均圧になるまで減圧される。同時に、第3の吸着筒70C内の圧力は、第2の吸着筒70B内の圧力と均圧になるまで加圧される。すなわち、状態6では、第2の吸着筒70B及び第3の吸着筒70Cで、均圧工程が行われている。
【0098】
次に、PSA装置5が上記表1の状態7になるように、バルブVb6、バルブVc6を閉じ、バルブVa2、バルブVb3、バルブVc1を開ける。
【0099】
バルブVa2を開けることにより、第1の吸着筒70Aは、不純物の吸着された吸着剤で、接続管71A、バルブVa2、第1の排出分岐ライン21A及びオフガス排出ライン20を介して、真空ポンプ22による真空排気によって、不純物の脱離が行われ、第1のタンク23にオフガスが排出されて、第1の吸着筒70A内が再生される。すなわち、状態7では、第1の吸着筒70Aで、再生工程が行われている。
【0100】
また、バルブVb6を閉じ、バルブVb3を開けることにより、第2の吸着筒70Bは、接続管71B、バルブVb3、第2の脱圧分岐ライン31B及び脱圧ライン30を介して、第1のタンク23にオフガスが排出される。すなわち、状態7では、第2の吸着筒70Bで、脱圧工程が行われている。
【0101】
また、バルブVc6を閉じ、バルブVc1を開けることにより、第3の吸着筒70Cは、原料水素ガスが、原料ガス供給ライン10、第3の供給分岐ライン11C、バルブVc1、及び接続管71Cを介して、第3の吸着筒70Cの下端から吸着剤に供給され、第3の吸着筒70C内が加圧される。すなわち、状態7では、第3の吸着筒70Cで、加圧工程が行われている。
【0102】
次に、PSA装置5が上記表1の状態8になるように、バルブVa2、バルブVb3、バルブVc1は開けたまま、バルブVa5、バルブVc4を開ける。
【0103】
バルブVa2を開けたままバルブVa5を開けることにより、第1の吸着筒70Aは、再生ガス導入ライン50、第1の導入分岐ライン51A、バルブVa5及び接続管72Aを介して、再生ガスとしての水素ガスが第1の吸着筒70A内に導入された状態で、再生工程が状態7に続いて行われる。すなわち、状態8では、第1の吸着筒70Aで再生工程が引き続き行われている。
【0104】
また、バルブVb3を開けたままにすることにより、第2の吸着筒70Bでは、状態7に続き、状態8でも、脱圧工程が行われている。
【0105】
また、バルブVc1を開けたままバルブVc4を開けることにより、第3の吸着筒70Cは、加圧状態から吸着剤での吸着分離が行われ、精製された水素ガスが、接続管72C、バルブVc4、第3の回収分岐ライン41C及び水素ガス回収ライン40を介して、水素ガス貯蔵タンク42に貯蔵される。すなわち、状態8では、第3の吸着筒70Cで吸着工程が行われている。
【0106】
次に、PSA装置5が上記表1の状態9になるように、バルブVa2、バルブVa5、バルブVb3、バルブVc1、バルブVc4を閉じ、バルブVa6、バルブVc6を開ける。
【0107】
バルブVb3を閉じることにより、第2の吸着筒70Bは、どのバルブも閉じた状態となるので、状態9では、状態8での脱圧工程が終了した後の状態が保持され、どの工程も進行しない状態になる。
【0108】
また、バルブVc1を閉じ、バルブVc6を開けることにより、第3の吸着筒70Cは、吸着工程の終了後の加圧状態から、接続管72C、第3の均圧分岐ライン61C、バルブVc6及び均圧ライン60を介して、高圧の水素ガスが導出される。
【0109】
また、バルブVa2、バルブVa5を閉じ、バルブVa6を開けることにより、第1の吸着筒70Aは、再生工程の終了後、接続管72A、第1の均圧分岐ライン61A及びバルブVa6を介して均圧ライン60に連通し、第3の吸着筒70Cから導出された高圧の水素ガスが第1の吸着筒70Aに導入される。高圧の水素ガスが第3の吸着筒70Cから導出されると、第3の吸着筒70C内の圧力は、第1の吸着筒70A内の圧力と均圧になるまで減圧される。同時に、第1の吸着筒70A内の圧力は、第3の吸着筒70C内の圧力と均圧になるまで加圧される。すなわち、状態9では、第3の吸着筒70C及び第1の吸着筒70Aで、均圧工程が行われている。
【0110】
以上の状態1~状態9を繰り返して、本実施形態のPSA装置5での不純物の除去が、各吸着筒で、加圧工程、吸着工程、均圧工程、脱圧工程、再生工程、均圧工程の各工程を繰り返すことによって行われる。ここで、脱圧工程と再生工程とが別工程となっていることで、吸着筒内の吸着剤に吸着されたガスが、脱圧時には筒内圧力の変化によって除去され、再生時には真空ポンプによる真空吸引及び再生ガスによる吸着剤の再生によって除去される。
【0111】
そのため、両工程を別工程として行うことにより、吸着剤に吸着されたガスが、吸着剤から効率よく脱離して十分に除去されるという効果が奏される。また、脱圧工程及び再生工程という二工程を擁することで、吸着剤の再生時間を長く設けることができるため、この点からも、吸着剤に吸着されたガスの除去を十分に行うことができる。
【0112】
次に、上記工程のうち、吸着工程における各吸着筒内での原料水素ガスの流れを以下に示す。
図3を参照して、各吸着筒の下端から内部に導入された原料ガスは、まず、第1吸着剤101によってアンモニア残渣が吸着除去される。当該吸着除去の際に吸着熱が生じ、原料水素ガスの温度がいったん上昇するが、当該吸着熱は熱交換部102で除去されるので、原料水素ガスの温度は下げられる。その後、原料水素ガスは第2吸着剤103によって窒素ガス等が吸着除去され、精製された水素ガスとなり回収される。
【0113】
次に、上記工程のうち、脱圧工程及び再生工程における各吸着筒内でのガスの流れを以下に示す。
まず、脱圧工程では、上記吸着工程での原料ガスの導入側(吸着筒の下端)から、吸着筒内に充填されているガスが放出される。
【0114】
次に、再生工程では、前記原料ガスの導入側から真空吸引を行うと同時に、上記吸着工程での原料ガスの導出側(吸着筒の上端)から再生ガスを導入して、各吸着剤に吸着されている窒素ガスとアンモニア等を除去してオフガスとして排出する。
ここで、上記再生工程の際に、再生ガスを、原料水素ガスの導出側からだけでなく、熱交換部102からも導入すると、第1吸着剤101に吸着されているアンモニアに再生ガスが直接届き、第1吸着剤101でのアンモニアの脱離が促進されるので、より好ましい。
【0115】
また、上記脱圧工程及び再生工程では、第2吸着剤103において、吸着されていた窒素ガス等が脱離する際に、当該脱離による脱離熱(脱離冷熱)が生じるため、オフガスの温度がいったん低下する。しかし、当該脱離冷熱は熱交換部102で除去される。そのため、オフガスの温度は熱交換部102において元に戻るので、その後の第1吸着剤101でのアンモニアの脱離が促進される。アンモニアは一般的に吸着剤からの脱離が困難な物質であるので、このようにして脱離が促進されることは、アンモニアの蓄積によるPSA装置の精製能力低下を防ぐものとなり、より好ましい。
【0116】
[実験例]
図1に示される本発明の精製装置を用いて、アンモニアからの水素の精製を行った。当該精製装置における各ラインL1~L5を流れるガスの組成を表2に示す。ラインL4におけるガスがPSA装置での精製後の水素ガスを示している。
【0117】
【表2】
【0118】
[比較例]
図4に示される従来の精製装置を用いて、アンモニアからの水素の精製を行った。当該精製装置における各ラインL1~L5を流れるガスの組成を表3に示す。ラインL4におけるガスがPSA装置での精製後の水素ガスを示している。
【0119】
【表3】
【0120】
以上の結果から、本発明の精製装置及び精製方法は、TSA装置を有さずにPSA装置のみを有する装置を用いて行うので、従来技術と比べて、装置全体が大幅に簡略化されている。そのため、水素の製造コストを下げることができる。また、得られる水素ガスは99.97%以上の高純度であり、アンモニアを0.1ppm未満、窒素ガスを100ppm未満しか含まないので、FCV用の燃料として利用することができる。
【0121】
なお、上記形態例において、PSA装置5は3筒式となっているが、吸着筒の数は必ずしも3つである必要はなく、PSA処理を行う状況に応じて適宜変更が可能である。また、上記形態例において、第1吸着剤101を活性アルミナ、第2吸着剤103をゼオライトとしたが、アンモニア残渣と窒素ガスを除去できるものであれば、それぞれ他の種類の吸着剤であってもよい。例えば、第1吸着剤101としては、活性炭、シリカゲル、樹脂吸着剤なども適用できる。第2吸着剤103としては、特にX型ゼオライトが適用され、さらにはリチウムやカルシウムでイオン交換されたLi-XやCa-Xと呼ばれるゼオライトが最も良く、A型ゼオライトをカルシウムでイオン交換したCa-Aなども適している。但し、アンモニア用の吸着剤として活性アルミナを使用することにより、アンモニアの吸着除去ができると共に、脱圧再生と真空再生で吸着したアンモニアを十分に除去することが可能になった。
【0122】
また、吸着筒内での吸脱着熱を除去するための熱交換部102には、金属製のボールや金属ハニカム構造材、金属メッシュ、金属ウールなどが用いられ、吸着筒内部のガスの温冷熱を吸着塔外壁に速やかに逃がせるものであればよい。金属の例としては、熱伝導性の良いものであればよく、アルミニウムや金、銀、銅、ステンレスや鉄などの材料が挙げられる。
【符号の説明】
【0123】
1・・・水素ガス精製装置、2・・・アンモニア供給源、3・・・アンモニア分解装置、4・・・昇圧ポンプ、5・・・PSA装置、6・・・空気供給源、7・・・反応室、8・・・昇圧ポンプ、10・・・原料水素ガス供給ライン、20・・・オフガス排出ライン、22・・・真空ポンプ、23・・・第1のタンク、24・・・昇圧ポンプ、25・・・第2のタンク、30・・・脱圧ライン、40・・・水素ガス回収ライン、50・・・再生ガス導入ライン、60・・・均圧ライン、70・・・吸着筒、80・・・返送ライン、101・・・第1吸着剤、102・・・熱交換部、103・・・第2吸着剤
図1
図2
図3
図4