(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022144917
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】液晶素子
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20220926BHJP
【FI】
G02B5/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021046120
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小橋 淳二
(72)【発明者】
【氏名】岡 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】冨岡 安
(72)【発明者】
【氏名】井桁 幸一
【テーマコード(参考)】
2H149
【Fターム(参考)】
2H149AB22
2H149AB26
2H149BA05
2H149BA27
2H149BB28
2H149CA02
2H149EA12
2H149FA27W
2H149FC01
2H149FD46
(57)【要約】
【課題】大面積化及び量産化が可能な液晶素子を提供する。
【解決手段】本実施形態の液晶素子は、第1主面を有する透明基板と、前記第1主面に配置され、一方向に並んだ複数の構造体と、前記構造体の各々の表面に配置された配向膜と、コレステリック液晶を有し、前記配向膜に接する液晶層と、を備え、前記コレステリック液晶の螺旋軸は、前記第1主面に対して傾斜し、前記構造体の各々は、前記第1主面に対して傾斜した第1面を有し、複数の前記構造体において、各々の前記第1面は、互いに平行であり、前記配向膜は、前記第1面と前記液晶層との間に介在している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面を有する透明基板と、
前記第1主面に配置され、一方向に並んだ複数の構造体と、
前記構造体の各々の表面に配置された配向膜と、
コレステリック液晶を有し、前記配向膜に接する液晶層と、を備え、
前記コレステリック液晶の螺旋軸は、前記第1主面に対して傾斜し、
前記構造体の各々は、前記第1主面に対して傾斜した第1面を有し、
複数の前記構造体において、各々の前記第1面は、互いに平行であり、
前記配向膜は、前記第1面と前記液晶層との間に介在している、液晶素子。
【請求項2】
前記螺旋軸は、前記第1面の法線にほぼ平行である、請求項1に記載の液晶素子。
【請求項3】
前記構造体の各々は、前記第1面と鋭角に交差する第2面を有し、
前記配向膜は、前記第2面と前記液晶層との間に介在している、請求項1に記載の液晶素子。
【請求項4】
前記構造体の各々は、前記第1面と鋭角に交差する第2面を有し、
前記液晶層は、前記第2面に接している、請求項1に記載の液晶素子。
【請求項5】
前記第2面は、前記第1主面と直交している、請求項3または4に記載の液晶素子。
【請求項6】
前記第2面は、前記第1主面に対して傾斜している、請求項3または4に記載の液晶素子。
【請求項7】
前記構造体の各々は、前記第1面と直交する第2面を有し、
前記配向膜は、前記第2面と前記液晶層との間に介在している、請求項1に記載の液晶素子。
【請求項8】
前記構造体の各々は、前記第1面に直交する第2面を有し、
前記液晶層は、前記第2面に接している、請求項1に記載の液晶素子。
【請求項9】
前記第1主面に対する前記第1面の傾斜角度は、前記第1主面に対する前記第2面の傾斜角度より小さい、請求項7または8に記載の液晶素子。
【請求項10】
第1主面を有する透明基板と、
前記第1主面に配置され、一方向に並んだ複数の構造体と、
前記構造体の各々の表面に配置された配向膜と、
コレステリック液晶を有し、前記配向膜に接する液晶層と、を備え、
前記コレステリック液晶の螺旋軸は、前記第1主面に対して傾斜し、
前記構造体の表面は、第1上面と、前記第1上面とは異なる高さの第2上面と、前記第1上面と前記第2上面との間の側面と、を含む階段状に形成され、
前記配向膜は、前記第1上面及び前記第2上面と前記液晶層との間に介在している、液晶素子。
【請求項11】
前記側面は、前記第1上面の一端と前記第2上面の他端とを接続し、
前記螺旋軸は、前記第1上面の一端と前記第2上面の一端とを接続する面の法線にほぼ平行である、請求項10に記載の液晶素子。
【請求項12】
前記液晶層は、前記側面に接している、請求項10に記載の液晶素子。
【請求項13】
前記構造体は、透明な樹脂材料によって形成されている、請求項1乃至12のいずれか1項に記載の液晶素子。
【請求項14】
前記構造体の屈折率は、前記透明基板の屈折率、及び、前記液晶層の屈折率と同等である、請求項13に記載の液晶素子。
【請求項15】
前記構造体の高さは、5μm以下である、請求項13に記載の液晶素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、液晶素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、コレステリック液晶を用いた各種液晶素子が検討されている。コレステリック液晶は、螺旋ピッチに応じて特定波長の光を反射する性質を有している。一例では、光学層の凹凸面上に設けられる反射層として、コレステリック液晶を適用した光学体が提案されている。
このようなコレステリック液晶を所定の方向に配向し、面内で所望の位相分布を形成するための技術としては、光配向剤を利用した円偏光干渉露光法が知られている。しかしながら、干渉露光が可能な範囲は制限されるため、大面積化が困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-227154号公報
【特許文献2】特開2013-114073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本実施形態の目的は、大面積化及び量産化が可能な液晶素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態に係る液晶素子は、
第1主面を有する透明基板と、前記第1主面に配置され、一方向に並んだ複数の構造体と、前記構造体の各々の表面に配置された配向膜と、コレステリック液晶を有し、前記配向膜に接する液晶層と、を備え、前記コレステリック液晶の螺旋軸は、前記第1主面に対して傾斜し、前記構造体の各々は、前記第1主面に対して傾斜した第1面を有し、複数の前記構造体において、各々の前記第1面は、互いに平行であり、前記配向膜は、前記第1面と前記液晶層との間に介在している。
【0006】
他の実施形態に係る液晶素子は、
第1主面を有する透明基板と、前記第1主面に配置され、一方向に並んだ複数の構造体と、前記構造体の各々の表面に配置された配向膜と、コレステリック液晶を有し、前記配向膜に接する液晶層と、を備え、前記コレステリック液晶の螺旋軸は、前記第1主面に対して傾斜し、前記構造体の表面は、第1上面と、前記第1上面とは異なる高さの第2上面と、前記第1上面と前記第2上面との間の側面と、を含む階段状に形成され、前記配向膜は、前記第1上面及び前記第2上面と前記液晶層との間に介在している。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る液晶素子10の一例を示す断面図である。
【
図2】
図2は、反射型の偏光回折格子RPGの光学作用を説明するための図である。
【
図3】
図3は、液晶素子10の一構成例を示す断面図である。
【
図4】
図4は、
図3に示した液晶素子10の構造体20を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、液晶素子10の他の構成例を示す断面図である。
【
図6】
図6は、液晶素子10の他の構成例を示す断面図である。
【
図7】
図7は、液晶素子10の他の構成例を示す断面図である。
【
図8】
図8は、液晶素子10の他の構成例を示す断面図である。
【
図9】
図9は、液晶素子10の他の構成例を示す断面図である。
【
図10】
図10は、液晶素子10の他の構成例を示す断面図である。
【
図11】
図11は、液晶素子10の実施例1を示す断面図である。
【
図12】
図12は、液晶素子10の実施例2を示す断面図である。
【
図13】
図13は、液晶素子10の実施例3を示す断面図である
【
図14】
図14は、液晶素子10の他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、開示はあくまで一例に過ぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を適宜省略することがある。
【0009】
なお、図面には、必要に応じて理解を容易にするために、互いに直交するX軸、Y軸、及び、Z軸を記載する。X軸に沿った方向をX方向または第1方向と称し、Y軸に沿った方向をY方向または第2方向と称し、Z軸に沿った方向をZ方向または第3方向と称する。X軸及びY軸によって規定される面をX-Y平面と称し、X軸及びZ軸によって規定される面をX-Z平面と称する。X-Y平面を見ることを平面視という。第1方向X及び第2方向Yは、液晶素子に含まれる基板の主面に平行な方向に相当し、また、第3方向Zは、液晶素子の厚さ方向に相当する。
【0010】
図1は、本実施形態に係る液晶素子10の一例を示す断面図である。
液晶素子10は、透明基板11と、配向膜AL11と、液晶層LCと、保護層12と、を備えている。透明基板11は、第3方向Zにおいて保護層12と対向している。液晶層LCは、反射型の偏光回折格子RPGとして機能し、透明基板11と保護層12との間に位置している。
【0011】
透明基板11及び保護層12は、例えば、透明なガラス板または透明な合成樹脂板によって構成されている。透明基板11は、第1主面11Aを有している。第1主面11Aは、X-Y平面に平行な面である。
【0012】
配向膜AL11は、透明基板11の第1主面11Aに配置されている。配向膜AL11は、例えば、ポリイミドによって形成され、X-Y平面に沿った配向規制力を有する水平配向膜である。また、一例では、配向膜AL11は、空間的に変化する液晶配向パターンを形成するための光配向膜あるいは単分子膜である。
【0013】
液晶層LCは、配向膜AL11及び保護層12の間に配置され、配向膜AL11及び保護層12に接している。液晶層LCは、主面LSを有している。ここでの主面LSは、例えば、液晶層LCと配向膜AL11との境界であり、また、X-Y平面と平行な面である。
【0014】
液晶層LCは、コレステリック液晶(液晶構造体)CLを有している。なお、
図1では、簡略化のため、コレステリック液晶CLを構成する液晶分子LM1として、X-Y平面に平行な同一平面に位置する複数の液晶分子のうちの1つの液晶分子LM1を図示しており、この液晶分子LM1の配向方向は、同一平面に位置する複数の液晶分子の平均的な配向方向に相当する。
【0015】
1つのコレステリック液晶CLに着目すると、コレステリック液晶CLは、その一端側に位置する液晶分子LM11と、その他端側に位置する液晶分子LM12と、を有している。液晶分子LM11は配向膜AL11に近接し、液晶分子LM12は保護層12に近接している。液晶分子LM11及び液晶分子LM12を含む複数の液晶分子LM1は、螺旋軸AXを中心として、旋回しながら螺旋状に積み重ねられ、コレステリック液晶CLを構成している。
【0016】
コレステリック液晶CLは、螺旋ピッチPを有している。螺旋ピッチPは、螺旋の1周期(液晶分子LM1が360度回転するのに要する螺旋軸AXに沿った厚さ)を示す。
図1に示す例では、螺旋軸AXは、第1主面11Aあるいは液晶層LCの法線方向である第3方向Zに対して傾斜している。
【0017】
液晶層LCにおいて、複数のコレステリック液晶CLは、第1方向Xに配列されるとともに、第2方向Yにも配列されている。第1方向Xに沿って隣接する複数のコレステリック液晶CLは、互いに配向方向が異なっている。配向膜AL11に沿って並んだ複数の液晶分子LM11の配向方向、及び、保護層12に沿って並んだ複数の液晶分子LM12の配向方向は、連続的に変化している。なお、液晶層LCにおいて、第2方向Yに沿って隣接する複数のコレステリック液晶CLは、互いに配向方向が揃っている。
【0018】
液晶層LCは、配向膜AL11と保護層12との間に、一点鎖線で示すような複数の反射面RSを有している。複数の反射面RSは、互いに略平行である。反射面RSは、ブラッグの法則に従って、入射光のうち、一部の円偏光を反射し、他の円偏光を透過する。ここでの反射面RSは、液晶分子LM1の配向方向が揃った面、あるいは、空間位相が揃った面(等位相面)に相当する。
図1に示すX-Z断面においては、反射面RSは、第1主面11Aあるいは液晶層LCの主面LSに対して傾斜している。
【0019】
コレステリック液晶CLは、特定波長λの光のうち、コレステリック液晶CLの旋回方向と同じ旋回方向の円偏光を反射する。例えば、コレステリック液晶CLの旋回方向が右回りの場合、特定波長λの光のうち、右回りの円偏光を反射し、左回りの円偏光を透過する。同様に、コレステリック液晶CLの旋回方向が左回りの場合、特定波長λの光のうち、左回りの円偏光を反射し、右回りの円偏光を透過する。
【0020】
このような液晶層LCは、液晶分子LM11及び液晶分子LM12を含む液晶分子LM1の配向方向が固定された状態で硬化している。つまり、液晶分子LM1の配向方向は、電界に応じて制御されるものではない。このため、液晶素子10は、配向制御のための電極を備えていない。
【0021】
一般的に、垂直入射した光に対するコレステリック液晶CLの選択反射帯域Δλは、コレステリック液晶CLの螺旋ピッチP、異常光に対する屈折率ne、及び、常光に対する屈折率noに基づいて、「no*P~ne*P」で示される。このため、反射面RSにおいて特定波長λの円偏光を効率よく反射するためには、特定波長λが選択反射波長帯Δλに含まれるように、螺旋ピッチP、屈折率ne及びnoが設定される。
【0022】
図2は、反射型の偏光回折格子RPGの光学作用を説明するための図である。
図2の左側に示すように、入射光として非偏光状態の光NPが偏光回折格子RPGの法線方向から入射した場合、偏光回折格子RPGは、光NPのうちの第1円偏光C1を反射面RSで反射するとともに、第2円偏光C2を透過する。第1円偏光C1は、傾斜した反射面RSにおいて斜め方向に反射される。第2円偏光C2は、反射面RSを透過し、偏光回折格子RPGの法線方向に直進する。
【0023】
図2の右側に示すように、入射光として非偏光状態の光NPが偏光回折格子RPGに対して斜め方向から入射した場合も同様に、偏光回折格子RPGは、光NPのうちの第1円偏光C1を反射面RSで反射するとともに、第2円偏光C2を透過する。第1円偏光C1は、傾斜した反射面RSにおいて法線方向に反射される。第2円偏光C2は、反射面RSを透過し、偏光回折格子RPGに対して斜め方向に直進する。
【0024】
以下に、いくつかの構成例について説明する。なお、各構成例においては、主な相違点を中心に説明し、同一構成については同一の参照符号を付して説明を省略する場合がある。
【0025】
《構成例1》
図3は、液晶素子10の一構成例を示す断面図である。
図4は、
図3に示した液晶素子10の構造体20を示す斜視図である。
【0026】
液晶素子10は、透明基板11の第1主面11Aに配置された複数の構造体20を備えている。複数の構造体20は、第1方向Xに等ピッチで並んでいる。第1方向Xに隣接する構造体20は、互いに繋がっていてもよいし、離間していてもよい。構造体20の各々は、X-Z平面において三角形状の断面を有し、第2方向Yに延出した三角柱として形成されている。構造体20は、表面を形成する第1面21及び第2面22と、透明基板11に接する底面23を、を有している。
【0027】
第1面21は、第1主面11Aに対して傾斜している。第1面21と第1主面11Aとのなす角度θ1は、鋭角である。構造体20の各々の第1面21は、互いに平行である。
第2面22は、第1方向Xに隣接する構造体20の第1面21の間に位置する面である。第2面22は、第1面21と鋭角に交差している。第1面21と第2面22との交差部は、第2方向Yに延出し、構造体20の稜線を形成するものであるが、丸みを帯びていてもよい。第1面21と第2面22とのなす角度θ2は、角度θ1より大きい鋭角である(θ1<θ2)。また、第2面22は、第1主面11Aと直交している。構造体20の各々の第2面22は、互いに平行である。
【0028】
配向膜AL11は、第1面21及び第2面22にそれぞれ配置されている。つまり、配向膜AL11は、第1面21と液晶層LCとの間に介在するとともに、第2面22と液晶層LCとの間に介在している。配向膜AL11のうち、特に第1面21に配置された部分については、第1面21に平行な面内において所定の方向に配向規制力を有するように構成されている。
【0029】
コレステリック液晶CLに含まれる液晶分子のうち、配向膜AL11に近接する液晶分子LM11は、配向膜AL11の配向規制力により、第1面21と平行な面内において、所定の方向に配向している。図示した例では、液晶分子LM11は、その長軸がX-Z平面において第1面21に沿うように配向しているが、その長軸が第2方向Yに沿うように配向してもよい。
【0030】
コレステリック液晶CLの螺旋軸AXは、第1面21の法線21Nにほぼ平行である。螺旋軸AX及び法線21Nは、第1主面11Aに対して傾斜している。第1主面11Aと螺旋軸AXとのなす角度(あるいは、第1主面11Aと法線21Nとのなす角度)θαは、鋭角であり、ここでは角度θ2と同等である。このようなコレステリック液晶CLにより、第1主面11Aに対して傾斜した反射面RSが形成される。
【0031】
上記の構造体20は、例えば透明な樹脂材料によって形成されているが、ガラスによって形成されていてもよい。構造体20は、透明基板11と同一材料によって形成されていてもよいし、透明基板11とは異なる材料によって形成されていてもよい。但し、構造体20の屈折率は、透明基板11の屈折率と同等であり、また、液晶層LCの屈折率と同等である。なお、液晶層LCの屈折率は、常光屈折率no及び異常光屈折率をneの二乗平均平方根(RMS)に相当する。ここでの『同等』とは、屈折率差が0.2以下であり、好ましくは屈折率差が0.1未満である。このような屈折率の関係により、構造体20と透明基板11との間での不所望な回折あるいは反射が抑制され、また、構造体20と液晶層LCとの間での不所望な回折あるいは反射が抑制される。
【0032】
一例では、構造体20は、いわゆるナノインプリント技術を用いて形成することができる。このような構造体20を形成するための材料としては、熱硬化型樹脂や、紫外線等の光に反応する光硬化型樹脂が適用される。
【0033】
ここで、構造体20の寸法例について説明する。図の右側に構造体20を拡大して示す。ここで、構造体20の第1方向Xに沿った底面23の長さ(あるいはい構造体20のピッチ)をLとし、構造体20の第3方向Zに沿った高さをHとする。このとき、tanθ1=H/Lの関係が成り立つ。また、第1面21の法線方向に、螺旋の半ピッチP/2の整数倍に相当する距離に亘って液晶分子が並ぶことを想定すると、H*cosθ1≒m*P/2の関係が成り立つ。但し、mは整数である。
【0034】
これらの関係式を整理すると、長さLは、L≒m*P/(2*sinθ1)を満たすように設定される。また、高さHは、H≒m*P/(2*cosθ1)=L*tanθ1を満たすように設定される。
【0035】
コレステリック液晶CLの螺旋軸AXに沿った長さは、P*Nとして表記される。但し、Nは整数である。コレステリック液晶CLにおいて好ましい反射率を得る観点で、Nは4以上であることが望ましい。なお、Nが10以上の場合には、反射率はほぼ飽和する傾向にある。
【0036】
一例として、螺旋ピッチPが500nmの場合、コレステリック液晶CLの長さは、少なくとも2μm~5μm以上である。このようなケースにおいて、構造体20の高さHは、コレステリック液晶CLの長さより小さいことが望ましく、例えば5μm以下である。また、構造体20の長さLについては、第1面21の傾斜角であるθ1と高さHとに基づいて決定される。θ1が20°であり、高さHが5μmである場合、長さLは13.7μmである。
【0037】
ここで、液晶素子10の製造方法の一例を簡単に説明する。
まず、透明基板11の第1主面11Aに、構造体20を形成するための材料(例えば紫外線硬化型樹脂)を塗布し、溶媒を除去して材料が仮硬化した状態を形成する。
【0038】
続いて、予め構造体20の形状に応じた凹部が形成された金型を、仮硬化した状態の材料に重ね合わせ、加圧しながら紫外線を照射する。これにより、材料が金型の凹部に応じた形状に硬化し、構造体20が形成される。その後、金型を除去する。
【0039】
続いて、構造体20に接するように、カイラル剤が添加された液晶材料を塗布する。このとき、液晶材料に含まれる液晶分子の配向方向は、以下のようにして固定される。すなわち、第1面21に近接する液晶分子LM11は、配向膜AL11の配向規制力に応じて所定の方向に配向する。コレステリック液晶CLは、液晶分子LM11を含む複数の液晶分子が並んだ連続体としてみなすことができる。このため、液晶分子LM11の配向方向が構造体20によって規定されることにより、他の液晶分子LM1も螺旋軸AXを中心に旋回するように配向する。これにより、構造体20の傾斜に応じて螺旋軸AXが傾斜したコレステリック液晶CLを得ることができる。その後、紫外線等の光を照射して液晶材料を硬化させ、液晶層LCを形成する。
そして、液晶層LCの上に保護層12を配置して、液晶素子10が製造される。
【0040】
このような第1構成例によれば、波長オーダーの微小な凹凸を有する金型を用いて、微小な構造体20を容易に形成することができる。このような構造体20は、液晶材料が塗布された際に、液晶材料に含まれる液晶分子の配向方向を規定する機能を有している。構造体20のパターンは、所望の角度で傾斜した螺旋軸AXを有するコレステリック液晶CLを得るように形成されている。これにより、所望の角度で傾斜した反射面RSを有する液晶素子10が得られる。このように、円偏光干渉露光法を適用した場合と比較して、容易に液晶素子10を得ることができ、大面積化及び量産化が可能となる。
【0041】
《構成例2》
図5は、液晶素子10の他の構成例を示す断面図である。
図5に示す例は、
図3に示した例と比較して、配向膜AL11が第2面22に配置されていない点で相違している。つまり、液晶層LCは、第2面22に接している。
このような配向膜AL11は、例えば、透明基板11の法線(第3方向Z)に対して斜め方向から蒸着する斜方蒸着法を適用して形成することができる。一例では、図の左上に蒸着源を配置し、配向膜材料を蒸着することで、構造体20のうち、蒸着源と対向する第1面21には配向膜材料が付着し、第2面22には配向膜材料が付着せず、図示したような配向膜AL11を得ることができる。
あるいは、構造体20の表面全体を配向膜材料で覆った後に、第2面22を覆う配向膜材料を除去することで、図示したような配向膜AL11を得ることもできる。
【0042】
このような構成例2においても、上記の構成例1と同様の効果が得られる。加えて、第2面22を覆う配向膜が存在しないため、液晶層LCを形成する過程で、第2面22を覆う配向膜による配向規制力の影響を受けず、所望の方向に配向したコレステリック液晶CLを得ることができる。
【0043】
《構成例3》
図6は、液晶素子10の他の構成例を示す断面図である。
図6に示す例は、
図5に示した例と比較して、第2面22が第1主面11A(あるいは底面23)に対して傾斜している点で相違している。第2面22と第1主面11Aとのなす角度θ3は、鈍角である。構造体20の各々の第2面22は、互いに平行である。
【0044】
図6に示す例では、配向膜AL11は、第2面22には配置されていない。このため、液晶層LCは、第2面22に接している。但し、
図3に示した例と同様に、第2面22に配向膜AL11が配置されていてもよい。
このような構成例3においても、上記したのと同様の効果が得られる。
【0045】
《構成例4》
図7は、液晶素子10の他の構成例を示す断面図である。
図7に示す例は、
図3に示した例と比較して、構造体20の形状が異なっている。複数の構造体20は、第1方向Xに等ピッチで並んでいる。第1方向Xに隣接する構造体20は、図示した例では互いに繋がっているが、離間していてもよい。
【0046】
第1面21は、第1主面11Aに対して傾斜している。第1面21と第1主面11Aとのなす角度θ1は、鋭角である。構造体20の各々の第1面21は、互いに平行である。
第2面22は、第1方向Xに隣接する構造体20の第1面21の間に位置する面である。第2面22は、第1面21と直交している。第1面21と第2面22との交差部は、第2方向Yに延出し、構造体20の稜線を形成するものであるが、丸みを帯びていてもよい。また、第2面22は、第1主面11Aに対して傾斜している。第2面22と第1主面11Aとのなす角度θ3は、鋭角である。第1面21の第1主面11Aに対する傾斜角度θ1は、第2面22の第1主面11Aに対する傾斜角度θ3より小さい(θ1<θ3)。構造体20の各々の第2面22は、互いに平行である。
【0047】
配向膜AL11は、第1面21及び第2面22にそれぞれ配置されている。つまり、配向膜AL11は、第1面21と液晶層LCとの間に介在するとともに、第2面22と液晶層LCとの間に介在している。配向膜AL11のうち、特に第1面21に配置された部分については、第1面21に平行な面内において所定の方向に配向規制力を有するように構成されている。
【0048】
コレステリック液晶CLの螺旋軸AXは、第1面21の法線21Nにほぼ平行である。螺旋軸AX及び法線21Nは、第1主面11Aに対して傾斜している。第1主面11Aと螺旋軸AXとのなす角度(あるいは、第1主面11Aと法線21Nとのなす角度)θαは、鋭角であり、ここでは角度θ3と同等である。
【0049】
このような構成例4においても、上記の構成例1と同様の効果が得られる。
【0050】
《構成例5》
図8は、液晶素子10の他の構成例を示す断面図である。
図8に示す例は、
図7に示した例と比較して、配向膜AL11が第2面22に配置されていない点で相違している。つまり、液晶層LCは、第2面22に接している。
このような配向膜AL11の製造方法については、上記の構成例2で説明した通りである。
このような構成例5においても、上記の構成例2と同様の効果が得られる。
【0051】
《構成例6》
図9は、液晶素子10の他の構成例を示す断面図である。
図9に示す例は、上記の例と比較して、構造体20の表面が階段状に形成された点で相違している。複数の構造体20は、第1方向Xに等ピッチで並んでいる。第1方向Xに隣接する構造体20は、図示した例では離間している。
【0052】
すなわち、構造体20の表面は、第1上面U1及び第2上面U2を含む複数の上面と、側面S1乃至S3を含む複数の側面と、を有している。上面の各々は、X-Y平面とほぼ平行な面である。側面の各々は、Y-Z平面とほぼ平行な面である。
第1主面11Aを基準として、第2上面U2までの高さは、第1上面U1までの高さとは異なる。図示した例では、第1上面U1の位置は、第2上面U2の位置よりも高い。
側面S1は、第1上面U1と第2上面U2との間に位置し、第1上面U1の一端と第2上面U2の他端とを接続している。側面S2は構造体20の第1方向Xに沿った一端側に位置し、側面S3は構造体20の第1方向Xに沿った他端側に位置している。なお、
図9においては、第1方向Xを示す矢印の後端側(図の左側)を一端側と称し、第1方向Xを示す矢印の先端側(図の右側)を他端側と称する。
【0053】
配向膜AL11は、第1上面U1及び第2上面U2を含む各上面にそれぞれ配置されている。つまり、配向膜AL11は、各上面と液晶層LCとの間に介在している。一方で、配向膜AL11は、各側面には配置されていない。つまり、液晶層LCは、構造体20の各側面に接している。配向膜AL11は、隣接する構造体20の間の第1主面11Aにも配置されている。
【0054】
第1上面U1の一端と第2上面U2の一端とを接続する面24を図中に一点鎖線で示す。コレステリック液晶CLの螺旋軸AXは、面24の法線24Nにほぼ平行である。螺旋軸AX及び法線24Nは、第1主面11Aに対して傾斜している。
【0055】
このような構成例6においても、上記の構成例1と同様の効果が得られる。
【0056】
《構成例7》
図10は、液晶素子10の他の構成例を示す断面図である。
図10に示す例は、
図9に示した例と比較して、第1方向Xに隣接する構造体20が互いに繋がっている点で相違している。
このような構成例7においても、上記の構成例と同様の効果が得られる。
【0057】
なお、
図9及び
図10に示した各構成例において、構造体20が有する上面の数は、図示した例に限らない。各上面の第1方向Xに沿った幅、及び、各側面の第3方向Zに沿った高さは、一定であることが望ましいが、仮想の面24が平面になるように適宜設定される。
【0058】
次に、いくつかの実施例について説明する。各実施例において、構造体20の形状については詳述しないが、上記の構成例1乃至7のいずれも適用することができる。
【0059】
《実施例1》
図11は、液晶素子10の実施例1を示す断面図である。
液晶素子10は、透明基板11と、構造体20と、コレステリック液晶を含む液晶層LCと、保護層12と、保護層13と、受光素子30と、を備えている。
【0060】
透明基板11は、第1主面11Aと、第1主面11Aの反対側の第2主面11Bと、側面11Cと、を有している。上述したように、構造体20は、第1主面11Aに配置されている。液晶層LCは、構造体20に接するように配置されている。保護層12は、液晶層LCを覆っている。保護層13は、第2主面11Bに配置されている。保護層13の屈折率は、透明基板11の屈折率よりも低い。なお、保護層13は省略してもよい。受光素子30は、側面11Cに対向するように配置されている。
【0061】
ここで、入射光として非偏光状態の光NPが液晶素子10の法線方向から入射した場合を考える。光NPは、保護層13及び透明基板11を透過し、液晶層LCに入射する。液晶層LCに形成された反射面RSは、光NPのうちの特定波長λの第1円偏光C1を反射するとともに、第1円偏光C1とは逆回りの第2円偏光C2を透過する。なお、光NPのうち、特定波長λとは異なる波長の光も反射面RSを透過する。
【0062】
反射面RSで反射された第1円偏光C1は、再び透明基板11に入射する。このとき、反射面RSの傾斜角度は、反射した第1円偏光C1が透明基板11と保護層13との間の界面で全反射されるように設定される。このため、透明基板11に入射した第1円偏光C1は、透明基板11の内部を反射しながら伝播し、側面11Cを透過する。受光素子30は、側面11Cを透過した第1円偏光C1を受光し、受光した光のエネルギーを電力に変換する。このような液晶素子10は、発電装置として利用することができる。
【0063】
《実施例2》
図12は、液晶素子10の実施例2を示す断面図である。
液晶素子10は、透明基板11と、構造体20と、コレステリック液晶を含む液晶層LCと、透明基板14と、保護層15、受光素子30と、を備えている。
【0064】
透明基板14は、主面14Aと、主面14Aの反対側の主面14Bと、側面14Cと、を有している。液晶層LCは、主面14Aに配置されている。保護層15は、主面14Bに配置されている。保護層15の屈折率は、透明基板14の屈折率よりも低い。なお、保護層15は省略してもよい。受光素子30は、側面14Cに対向するように配置されている。
【0065】
ここで、入射光として非偏光状態の光NPが液晶素子10の法線方向から入射した場合、光NPは、保護層15及び透明基板14を透過し、液晶層LCに入射する。液晶層LCに形成された反射面RSは、光NPのうちの特定波長λの第1円偏光C1を反射するとともに、第1円偏光C1とは逆回りの第2円偏光C2を透過する。
【0066】
反射面RSで反射された第1円偏光C1は、再び透明基板14に入射する。このとき、反射面RSの傾斜角度は、反射した第1円偏光C1が透明基板14と保護層15との間の界面で全反射されるように設定される。このため、透明基板14に入射した第1円偏光C1は、透明基板14の内部を反射しながら伝播し、側面14Cを透過する。受光素子30は、側面14Cを透過した第1円偏光C1を受光し、受光した光のエネルギーを電力に変換する。このような液晶素子10は、発電装置として利用することができる。
【0067】
《実施例3》
図13は、液晶素子10の実施例3を示す断面図である。
液晶素子10は、透明基板11と、構造体20と、コレステリック液晶を含む液晶層LCと、保護層12と、を備えている。
【0068】
ここで、入射光として非偏光状態の光NPが液晶素子10の法線方向から入射した場合、光NPは、保護層12を透過し、液晶層LCに入射する。液晶層LCに形成された反射面RSは、光NPのうちの特定波長λの第1円偏光C1を反射するとともに、第1円偏光C1とは逆回りの第2円偏光C2を透過する。このような液晶素子10は、反射型光学素子として利用することができる。
【0069】
上述した各例では、液晶層LCに形成される反射面RSがほぼ平面である場合について説明したが、これに限らない。例えば、構造体20の形状および配列を工夫することで、曲面の反射面RSを形成することができる。
【0070】
図14は、液晶素子10の他の例を示す断面図である。
図15は、
図14に示した液晶素子10の構造体20を示す斜視図である。
複数の構造体20は、第1方向Xに並んでいる。また、透明基板11の中心線LNに対して図の右側に形成された構造体20の各々は、中心線LNに対して図の左側に形成された構造体20の各々と線対称である。例えば、右側半分の複数の構造体20に着目すると、中心線LNから離れるにしたがって構造体20の第1方向Xに沿った長さが小さくなる。但し、構造体20の各々第3方向Zに沿った高さHは、ほぼ一定である。このため、各構造体20の第1面21の傾斜角度θ1は、中心線LNから離れるにしたがって、次第に増加する。
【0071】
液晶層LCに含まれるコレステリック液晶の螺旋軸は、これらの構造体20の形状に応じて所定の方向に配向する。これにより、
図14に一点鎖線で示したような湾曲した反射面RSが形成される。なお、構造体20の各々は、第2方向Yに延出した三角柱状に形成されているため、反射面RSは、第2方向Yに延出した円筒状に形成される。
【0072】
このように、目標とする形状の反射面RSを形成するためには、構造体20の各々の第1面21が同一方向を向いている必要はなく、複数の方向を向いた構造体20を組み合わせて配置してもよい。
【0073】
以上説明したように、本実施形態によれば、大面積化及び量産化が可能な液晶素子を提供することができる。
【0074】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0075】
10…液晶素子 11…透明基板 11A…第1主面
12…保護層
20…構造体 21…第1面 22…第2面 23…底面
U1…第1上面 U2…第2上面 S1…側面
LC…液晶層 CL…コレステリック液晶 AX…螺旋軸 RS…反射面
AL11…配向膜