(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022144935
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】姿勢制御装置及び姿勢制御方法
(51)【国際特許分類】
G03B 5/00 20210101AFI20220926BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20220926BHJP
G03B 17/56 20210101ALI20220926BHJP
H04N 5/222 20060101ALI20220926BHJP
H04N 5/232 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
G03B5/00 J
G03B15/00 P
G03B17/56 B
G03B17/56 Z
H04N5/222 100
H04N5/232 480
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021046140
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】000104630
【氏名又は名称】キヤノンプレシジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【弁理士】
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【弁理士】
【氏名又は名称】水本 敦也
(72)【発明者】
【氏名】會津 誠世
(72)【発明者】
【氏名】小林 大毅
(72)【発明者】
【氏名】山本 陽平
【テーマコード(参考)】
2H105
2K005
5C122
【Fターム(参考)】
2H105AA06
2H105AA14
2H105AA25
2H105AA53
2H105AA55
2K005AA20
2K005BA42
2K005BA52
2K005BA54
2K005CA04
2K005CA13
2K005CA14
2K005CA22
2K005CA38
2K005CA52
5C122EA41
5C122GD09
5C122HA77
5C122HA78
5C122HA82
5C122HA88
5C122HB01
5C122HB10
(57)【要約】
【課題】制御対応軸が変化しても安定した姿勢制御を行うことが可能であり、補正後の姿勢情報の精度を向上させることが可能であり、少ない通信情報や時間で補正を行うことが可能な制御装置を提供すること。
【解決手段】制御装置は、制御対象を保持する保持部の第1角速度及び第1加速度を用いて保持部の第1姿勢角を推定する第1推定部と、保持部を第1軸周りに回転させる第1駆動部と、保持部を第1軸に直交する第2軸周りに回転させる第2駆動部と、第1駆動部と保持部との第1相対角度を用いて第1加速度を補正することで算出される第1補正加速度、第1相対角度を用いて第1角速度を補正することで算出される第1補正角速度、及び第1駆動部の角速度を用いて、保持部の第2姿勢角を算出する第2推定部とを有し、第1駆動部は、第1姿勢角を用いて姿勢制御を行い、第2駆動部は、第2姿勢角を用いて姿勢制御を行う。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御対象の姿勢制御を行う姿勢制御装置であって、
前記制御対象を保持する保持部と、
前記保持部の第1角速度及び第1加速度を検出する第1検出部と、
前記第1角速度及び前記第1加速度を用いて前記保持部の第1姿勢角を推定する第1姿勢推定部と、
第1モータを用いて前記保持部を第1軸周りに回転させる第1駆動部と、
第2モータを用いて前記保持部を前記第1軸に直交する第2軸周りに回転させる第2駆動部と、
前記第1駆動部と前記保持部との第1相対角度を算出する第1相対角度算出部と、
前記第1相対角度を用いて前記第1加速度を補正することで第1補正加速度を算出する第1加速度補正部と、
前記第1相対角度を用いて前記第1角速度を補正することで第1補正角速度を算出する第1角速度補正部と、
前記第1駆動部の角速度を算出する角速度算出部と、
前記第1補正加速度、前記第1補正角速度、及び前記第1駆動部の角速度を用いて前記保持部の第2姿勢角を算出する第2姿勢推定部とを有し、
前記第1駆動部は、前記第1姿勢角を用いて姿勢制御を行い、
前記第2駆動部は、前記第2姿勢角を用いて姿勢制御を行うことを特徴とする姿勢制御装置。
【請求項2】
前記第1モータの回転角を検知する第1回転角検知部を更に有し、
前記第1相対角度算出部は、前記第1姿勢角と前記第1モータの回転角とを用いて前記第1相対角度を算出することを特徴とする請求項1に記載の姿勢制御装置。
【請求項3】
前記第1相対角度算出部は、前記第1姿勢角、前記第1モータの回転角、及び前記第1駆動部に対する前記第2駆動部の相対角を用いて前記第1相対角度を算出することを特徴とする請求項2に記載の姿勢制御装置。
【請求項4】
前記保持部、前記第1駆動部、及び前記第2駆動部を支持する支持部と、
前記支持部の第2角速度及び第2加速度を検出する第2検出部と、
前記第2角速度及び前記第2加速度を用いて前記支持部の姿勢角を推定する支持部姿勢推定部とを更に有し、
前記第1相対角度算出部は、前記第1姿勢角と前記支持部の姿勢角とを用いて、前記第1相対角度を算出することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の姿勢制御装置。
【請求項5】
前記第1相対角度算出部は、前記第1姿勢角、前記支持部の姿勢角、及び前記第1駆動部に対する前記第2駆動部の相対角を用いて前記第1相対角度を算出することを特徴とする請求項4に記載の姿勢制御装置。
【請求項6】
前記第1モータの回転角を検知する第1回転角検知部を更に有し、
前記角速度算出部は、前記第1モータの回転角を単位時間で微分することで、前記第1駆動部の角速度を算出することを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の姿勢制御装置。
【請求項7】
前記保持部、前記第1駆動部、及び前記第2駆動部を支持する支持部と、
前記支持部の第2角速度及び第2加速度を検出する第2検出部とを更に有し、
前記角速度算出部は、前記第2角速度を用いて前記第1駆動部の角速度を算出することを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の姿勢制御装置。
【請求項8】
第3モータを用いて前記保持部を前記第1軸と前記第2軸とに直交する第3軸周りに回転させる第3駆動部を更に有し、
前記第3駆動部は、前記第2姿勢角を用いて姿勢制御を行うことを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載の姿勢制御装置。
【請求項9】
第3モータを用いて前記保持部を前記第1軸と前記第2軸とに直交する第3軸周りに回転させる第3駆動部と、
前記第1駆動部と前記保持部との第2相対角度を算出する第2相対角度算出部と、
前記第2相対角度を用いて前記第1加速度を補正することで第2補正加速度を算出する第2加速度補正部と、
前記第2相対角度を用いて前記第1角速度を補正することで第2補正角速度を算出する第2角速度補正部と、
前記第2補正加速度、前記第2補正角速度、及び前記第1駆動部の角速度を用いて、前記保持部の第3姿勢角を算出する第3姿勢推定部とを更に有し、
前記第3駆動部は、前記第3姿勢角を用いて姿勢制御を行うことを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載の姿勢制御装置。
【請求項10】
前記第1モータの回転角を検知する第1回転角検知部を更に有し、
前記第2相対角度算出部は、前記第1姿勢角、前記第1モータの回転角、及び記第1駆動部に対する前記第3駆動部の相対角を用いて前記第2相対角度を算出することを特徴とする請求項9に記載の姿勢制御装置。
【請求項11】
前記保持部、前記第1駆動部、前記第2駆動部、及び前記第3駆動部を支持する支持部と、
前記支持部の第2角速度及び第2加速度を検出する第2検出部と、
前記第2角速度及び前記第2加速度を用いて前記支持部の姿勢角を推定する支持部姿勢推定部とを更に有し、
前記第2相対角度算出部は、前記第1姿勢角、前記支持部の姿勢角、及び前記第1駆動部に対する前記第3駆動部の相対角とを用いて、前記第2相対角度を算出することを特徴とする請求項9又は10に記載の姿勢制御装置。
【請求項12】
前記姿勢制御装置は、スタビライザであることを特徴とする請求項1乃至11の何れか一項に記載の姿勢制御装置。
【請求項13】
前記制御対象として、撮像光学系により形成された被写体像を撮像する撮像手段を更に有し、
前記姿勢制御装置は、撮像装置であることを特徴とする請求項1乃至11の何れか一項に記載の姿勢制御装置。
【請求項14】
制御対象の姿勢制御を行う姿勢制御方法であって、
前記制御対象を保持する保持部の第1角速度及び第1加速度を検出するステップと、
前記第1角速度及び前記第1加速度を用いて前記保持部の第1姿勢角を推定するステップと、
第1モータを用いて前記保持部を第1軸周りに回転させる第1駆動部と前記保持部との第1相対角度を算出するステップと、
前記第1相対角度を用いて前記第1加速度を補正することで第1補正加速度を算出するステップと、
前記第1相対角度を用いて前記第1角速度を補正することで第1補正角速度を算出するステップと、
前記第1駆動部の角速度を算出するステップと、
前記第1補正加速度、前記第1補正角速度、及び前記第1駆動部の角速度を用いて、前記保持部の第2姿勢角を算出するステップと、
前記第1姿勢角を用いて前記第1駆動部による姿勢制御を行うステップと、
前記第2姿勢角を用いて第2モータを用いて前記保持部を前記第1軸に直交する第2軸周りに回転させる第2駆動部による姿勢制御を行うステップとを有することを特徴とする姿勢制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御対象の姿勢を安定させるための姿勢制御装置及び姿勢制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の駆動軸を有する電動ジンバルの姿勢制御を行っている状態でTILT方向へ持ち手部の姿勢を変化させると、ROLLの制御軸がROLL軸からPAN軸に変化し、PANの制御軸がPAN軸からROLL軸に変化するため、姿勢情報を補正する必要がある。特許文献1には、各駆動部の磁気回転エンコーダからの回転情報を用いて姿勢情報を補正する構成が開示されている。特許文献2には、オフセットするべき角度を考慮した各駆動軸に対する制御コマンドを発行することで、姿勢情報を補正する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-177539号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2019/0063668号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の構成では、各駆動部の磁気回転エンコーダからの回転情報を用いるため、各磁気回転エンコーダが有するリニアリティ誤差が、補正値の誤差に積みあがり、補正後の姿勢情報の精度に悪影響を及ぼしてしまう。また、コントローラが各磁気回転エンコーダの情報を必要とするため、通信情報が多くなったり時間がかかったりしてしまう。
【0005】
また、特許文献2の構成では、オフセット分を常に考慮して制御コマンドを発行しなくてはならないので、通信情報が多くなったり時間がかかったりしてしまう。
【0006】
本発明は、制御対応軸が変化しても安定した姿勢制御を行うことが可能であり、補正後の姿勢情報の精度を向上させることが可能であり、少ない通信情報や時間で補正を行うことが可能な姿勢制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面としての姿勢制御装置は、制御対象の姿勢制御を行う姿勢制御装置であって、制御対象を保持する保持部と、保持部の第1角速度及び第1加速度を検出する第1検出部と、第1角速度及び第1加速度を用いて保持部の第1姿勢角を推定する第1姿勢推定部と、第1モータを用いて保持部を第1軸周りに回転させる第1駆動部と、第2モータを用いて保持部を第1軸に直交する第2軸周りに回転させる第2駆動部と、第1駆動部と保持部との第1相対角度を算出する第1相対角度算出部と、第1相対角度を用いて第1加速度を補正することで第1補正加速度を算出する第1加速度補正部と、第1相対角度を用いて第1角速度を補正することで第1補正角速度を算出する第1角速度補正部と、第1駆動部の角速度を算出する角速度算出部と、第1補正加速度、第1補正角速度、及び第1駆動部の角速度を用いて保持部の第2姿勢角を算出する第2姿勢推定部とを有し、第1駆動部は、第1姿勢角を用いて姿勢制御を行い、第2駆動部は、第2姿勢角を用いて姿勢制御を行うことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の他の側面としての姿勢制御方法は、制御対象の姿勢制御を行う姿勢制御方法であって、制御対象を保持する保持部の第1角速度及び第1加速度を検出するステップと、第1角速度及び第1加速度を用いて保持部の第1姿勢角を推定するステップと、第1モータを用いて保持部を第1軸周りに回転させる第1駆動部と保持部との第1相対角度を算出するステップと、第1相対角度を用いて第1加速度を補正することで第1補正加速度を算出するステップと、第1相対角度を用いて第1角速度を補正することで第1補正角速度を算出するステップと、第1駆動部の角速度を算出するステップと、第1補正加速度、第1補正角速度、及び第1駆動部の角速度を用いて、保持部の第2姿勢角を算出するステップと、第1姿勢角を用いて第1駆動部による姿勢制御を行うステップと、第2姿勢角を用いて第2モータを用いて保持部を第1軸に直交する第2軸周りに回転させる第2駆動部による姿勢制御を行うステップとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、制御対応軸が変化しても安定した姿勢制御を行うことが可能であり、補正後の姿勢情報の精度を向上させることが可能であり、少ない通信情報や時間で補正を行うことが可能な姿勢制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】実施例1の姿勢制御装置のブロック図である。
【
図1B】実施例1の姿勢制御装置の変形例のブロック図である。
【
図2】TILT軸とROLL軸とで構成される2軸スタビライザの駆動部の配置関係が0°である場合を示す図である。
【
図3】TILT軸とPAN軸とで構成される2軸スタビライザの駆動部の配置関係が0°である場合を示す図である。
【
図4】TILT軸とROLL軸とで構成される2軸スタビライザの駆動部の配置関係が0°でない場合を示す図である。
【
図6】加速度補正部による加速度補正処理を示すフローチャートである。
【
図7】角速度補正部による角速度補正処理を示すフローチャートである。
【
図8A】実施例2の姿勢制御装置のブロック図である。
【
図8B】実施例2の姿勢制御装置の変形例のブロック図である。
【
図10】TILT軸とROLL軸とPAN軸とで構成される3軸スタビライザの駆動部の配置関係が0°である場合を示す図である。
【
図11】TILT軸とROLL軸とPAN軸とで構成される3軸スタビライザの駆動部の配置関係が0°でない場合を示す図である。
【
図12A】実施例3の姿勢制御装置のブロック図である。
【
図12B】実施例3の姿勢制御装置の変形例のブロック図である。
【
図14A】実施例4の姿勢制御装置のブロック図である。
【
図14B】実施例4の姿勢制御装置の変形例のブロック図である。
【
図15A】実施例5の姿勢制御装置のブロック図である。
【
図15B】実施例5の姿勢制御装置の変形例のブロック図である。
【
図16A】実施例6の姿勢制御装置のブロック図である。
【
図16B】実施例6の姿勢制御装置の変形例のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0012】
各実施例の姿勢制御機器は、制御対象の姿勢制御を行う装置であって、例えば電動スタビライザであってもよいし、撮像装置に組み込まれる装置であってもよい。
【実施例0013】
図1Aは、本実施例の2軸の姿勢制御を行う姿勢制御機器(姿勢制御装置)のブロック図である。本実施例の姿勢制御機器は、第1駆動部100、第2駆動部140、及び保持部300を有する。保持部300は、制御対象を保持すると共に、第1駆動部100及び第2駆動部140により2軸方向へ回転可能に保持される。第1駆動部100は、第1モータ102を用いて保持部300を第1軸周りに回転させ、第2駆動部140は第2モータ142を用いて第1軸に直交する第2軸周りに回転させる。制御対象は例えば、撮像光学系により形成された被写体像を撮像する撮像手段である。第2駆動部140は、第1駆動部100に対して、例えば
図2乃至
図4に示されるように配置されている。
【0014】
保持部300は、保持部300の角速度(第1角速度)及び加速度(第1加速度)を検出する第1IMUセンサ(第1検出部)301を有する。第1駆動部100は、第1駆動回路101、第1モータ102、第1回転角センサ(回転角検知部)103、第1MPU200、及び第1メモリ215を有する。第2駆動部140は、第2駆動回路141、第2モータ142、及び第2回転角センサ143を有する。
【0015】
第1MPU200は、第1駆動信号処理部201、第1姿勢推定部203、第1相対角度算出部204、第1加速度補正部205、第1角速度補正部206、角速度算出部207、第2姿勢推定部208、及び第2駆動信号処理部241を有する。第1MPU200は、第1メモリ215に記憶されているプログラムを実行することにより、姿勢制御機器の各部を制御する。
【0016】
第1姿勢推定部203は、第1IMUセンサ301からの角速度及び加速度を用いて保持部300の姿勢を推定する。具体的には、第1姿勢推定部203は、第1IMUセンサ301からのXYZ軸の各軸の角速度及び加速度を用いて、保持部300の第1姿勢角である、第1TILT角、第1ROLL角、及び第1PAN角を算出する。
【0017】
第1駆動信号処理部201は、第1姿勢推定部203からの第1TILT角とTILT軸目標角度との角度偏差、及び第1IMUセンサ301からのX軸角速度ωx1とTILT軸目標角速度との角速度偏差を取得する。第1駆動信号処理部201は、取得した角度偏差及び角速度偏差を用いたPID制御等により取得される操作量と第1回転角センサ103により検知された第1モータ102の回転角に基づく第1モータ102への通電パターンとを第1駆動回路101に送信する。
【0018】
第1駆動回路101は、第1駆動信号処理部201からの信号に応じて、第1モータ102を駆動する。
【0019】
図5は、第1相対角度算出部204のブロック図である。第1相対角度算出部204は、第1姿勢角と第1回転角センサ103により検知された第1モータ102の回転角とを用いて第1駆動部100と保持部300との相対角度(第1相対角度)を算出する。具体的には、第1相対角度算出部204は、第1TILT角と、第1回転角センサ103により検知された第1モータ102の回転角及び第1メモリ215に記録されている第1駆動部配置角216との差である第1角度偏差θtdif1を算出する。なお、第1駆動部配置角216は、第1駆動部100に対する第2駆動部140の相対角である。
【0020】
第1加速度補正部205は、第1相対角度算出部204からの相対角度に基づいて保持部300の加速度を補正することで第1補正加速度を算出する。
図6は、第1加速度補正部205による加速度補正処理を示すフローチャートである。
【0021】
ステップS101では、第1加速度補正部205は、第1相対角度算出部204から第1角度偏差θtdif1を取得する。
【0022】
ステップS102では、第1加速度補正部205は、第1姿勢推定部203から保持部300の第1姿勢角として第1ROLL角及び第1PAN角を取得する。
【0023】
なお、ステップS101とステップS102の処理の順番は入れ替えてもよい。
【0024】
ステップS103では、第1加速度補正部205は、第1角度偏差θtdif1と第1ROLL角及び第1PAN角とを用いて、以下の式(1)で表されるZ軸方向にのみ重力加速度が発生している基準加速度ベクトルαbaseをセットする。
【0025】
【0026】
ステップS104では、第1加速度補正部205は、基準加速度ベクトルαbaseを、式(2)を用いて第1角度偏差だけ3次元回転させることで第1変形値α’baseを算出する。
【0027】
【0028】
ステップS105では、第1加速度補正部205は、第1変形値α’baseを、式(3)を用いて第1ROLL角だけ3次元回転させることで第2変形値α”baseを算出する。
【0029】
【0030】
ステップS106では、第1加速度補正部205は、第2変形値α”baseを、式(4)を用いてPAN角だけ3次元回転させることで第1加速度補正値(第1補正加速度)を算出する。
【0031】
【0032】
第1角速度補正部206は、第1相対角度算出部204からの相対角度に基づいて保持部300の角速度を補正することで第1補正角速度を算出する。
図7は、第1角速度補正部206による角速度補正処理を示すフローチャートである。
【0033】
ステップS201では、第1角速度補正部206は、第1相対角度算出部204から第1角度偏差θtdif1を取得する。
【0034】
ステップS202では、第1角速度補正部206は、第1IMUセンサ301から保持部300のY軸角速度ωy1及びZ軸角速度ωz1を取得する。
【0035】
なお、ステップS101とステップS102の処理の順番は入れ替えてもよい。
【0036】
ステップS203では、第1角速度補正部206は、以下の式(5a)及び式(5b)を用いて、第1角度偏差θtdif1及びY軸角速度ωy1から第1Y軸角速度補正値ωycrr1及び第1Z軸角速度補正値ωzccr1を算出する。
【0037】
【0038】
ステップS204では、第1角速度補正部206は、以下の式(6a)及び式(6b)を用いて、第1角度偏差θtdif1及びZ軸角速度ωz1から第2Y軸角速度補正値ωycrr2及び第2Z軸角速度補正値ωzccr2を算出する。
【0039】
【0040】
ステップS205では、第1角速度補正部206は、第1Y軸角速度補正値ωycrr1と第2Y軸角速度補正値ωycrr2との差分値であるY軸角速度補正値(第1補正角速度)を算出する。
【0041】
ステップS206では、第1角速度補正部206は、第1Z軸角速度補正値ωzcrr1と第2Z軸角速度補正値ωzcrr2との差分値であるZ軸角速度補正値(第1補正角速度)を算出する。
【0042】
角速度算出部207は、第1回転角センサ103により検知された第1モータ102の回転角と、第1MPU200のサンプリング周期又は内部クロックとを用いて第1駆動部100の角速度を算出する。具体的には、角速度算出部207は、第1モータ102の回転角を単位時間で微分することで、第1駆動部100の角速度を算出する。
【0043】
第2姿勢推定部208は、第1加速度補正部205からの第1加速度補正値と、第1角速度補正部206からのY軸及びZ軸角速度補正値と、角速度算出部207からの第1駆動部100の角速度とを用いて、保持部300の姿勢を推定する。具体的には、第2姿勢推定部208は、保持部300の第2姿勢角である、第2TILT角、第2ROLL角及び第2PAN角を算出する。
【0044】
第2駆動信号処理部241は、第2駆動部140がROLL軸に配置されている場合、第2ROLL角とROLL軸目標角度との角度偏差、及びY軸角速度補正値とROLL軸目標角速度との角速度偏差を算出する。また、第2駆動信号処理部241は、第2駆動部140がPAN軸に配置されている場合、第2PAN角とPAN軸目標角度との角度偏差、及びZ軸角速度補正値とPAN軸目標角速度との角速度偏差を算出する。第2駆動信号処理部241は、取得した角度偏差及び角速度偏差を用いたPID制御等により取得される操作量と、第2回転角センサ143により検知された第2モータ142の回転角に基づく第2モータ142への通電パターンとを第2駆動回路141に送信する。
【0045】
第2駆動回路141は、第2駆動信号処理部241からの信号に応じて、第2モータ142を駆動する。
【0046】
以上説明したように、本実施例では、第1駆動部100は第1姿勢推定部203からの保持部300の第1姿勢角で姿勢制御を行い、第2駆動部140は第2姿勢推定部208からの保持部300の第2姿勢角で姿勢制御を行う。
【0047】
本実施例の構成によれば、加速度及び角速度を補正することで得られる加速度補正値及び角速度補正値を用いて姿勢推定を行うことで得られる姿勢角と、角速度補正値とをTILT軸以外のフィードバック制御に用いる。これにより、持ち手の姿勢に対応可能となり、制御対応軸が変化しても安定した姿勢制御を行うことができる。また、補正後の姿勢情報の精度を向上させることが可能であると共に、少ない通信情報や時間で補正を行うことが可能である。
【0048】
以下、
図1Bを参照して、本実施例の姿勢制御装置の変形例について説明する。
図1Bは、本実施例の姿勢制御装置の変形例のブロック図である。
【0049】
変形例の姿勢制御機器は、本実施例の構成に加え、第1駆動部100、第2駆動部140、及び保持部300を支持する支持部400を有する。支持部400は、支持部400の角速度(第2角速度)及び加速度(第2加速度)を検出する第2IMUセンサ(第2検出部)401を有する。
【0050】
第1駆動部100は、本実施例の構成に加え、第4姿勢推定部(支持部姿勢推定部)214を有する。第4姿勢推定部214は、第2IMUセンサ401からの角速度及び加速度を用いて支持部400の姿勢を推定する。具体的には、第4姿勢推定部214は、第2IMUセンサ401からのXYZ軸の各軸の角速度及び加速度を用いて、支持部400の姿勢角である、第4TILT角、第4ROLL角、及び第4PAN角を算出する。第1相対角度算出部204は、第1角度偏差θtdif1として、第1姿勢推定部203からの第1TILT角と第4姿勢推定部214からの第4TILT角との角度偏差を算出してもよい。角速度算出部207は、第2IMUセンサ401のデータを用いて第1駆動部100の角速度を検知してもよい。
第1MPU200は、実施例1の構成に加え、第3駆動信号処理部271を有する。第3駆動信号処理部271は、第2PAN角とPAN軸目標角度との角度偏差、及びZ軸角速度補正値とPAN軸目標角速度との角速度偏差を算出する。第3駆動信号処理部271は、取得した角度偏差及び角速度偏差を用いたPID制御等により操作量と、第3回転角センサ173により検知された第3モータ172の回転角に基づく第3モータ172への通電パターンとを第3駆動回路171に送信する。
以上説明したように、本実施例の構成によれば、加速度及び角速度を補正することで得られる加速度補正値及び角速度補正値を用いて姿勢推定を行うことで得られる姿勢角と、角速度補正値とをTILT軸以外のフィードバック制御に用いる。これにより、持ち手の姿勢に対応可能となり、制御対応軸が変化しても安定した姿勢制御を行うことができる。また、補正後の姿勢情報の精度を向上させることが可能であると共に、少ない通信情報や時間で補正を行うことが可能である。
なお、第2駆動部140がPAN軸に、第3駆動部170がROLL軸に構成される場合であっても、第2駆動信号処理部241と第3駆動信号処理部271に入力する軸のデータを変更することで、本実施例の構成を適用できるのは言うまでもない。
変形例の姿勢制御機器は、本実施例の構成に加え、第1駆動部100、第2駆動部140、及び保持部300を支持する支持部400を有する。支持部400は、支持部400の角速度及び加速度を検出する第2IMUセンサ401を有する。
第1駆動部100は、本実施例の構成に加え、第4姿勢推定部214を有する。第4姿勢推定部214は、第2IMUセンサ401からの角速度及び加速度を用いて支持部400の姿勢を推定する。具体的には、第4姿勢推定部214は、第2IMUセンサ401からのXYZ軸の各軸の角速度及び加速度を用いて、支持部400の姿勢角である、第4TILT角、第4ROLL角、及び第4PAN角を算出する。第1相対角度算出部204は、第1角度偏差θtdif1として、第1姿勢推定部203からの第1TILT角と第4姿勢推定部214からの第4TILT角との角度偏差を算出してもよい。角速度算出部207は、第2IMUセンサ401のデータを用いて第1駆動部100の角速度を検知してもよい。