(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022144953
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】走査形放射温度計
(51)【国際特許分類】
G01J 5/08 20220101AFI20220926BHJP
【FI】
G01J5/08 D
G01J5/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021046166
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】000133526
【氏名又は名称】株式会社チノー
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】杉山 清孝
(72)【発明者】
【氏名】藤井 那幸
【テーマコード(参考)】
2G066
【Fターム(参考)】
2G066AA01
2G066BA25
2G066CA01
(57)【要約】
【課題】モータの回転軸に加わるスラスト荷重を軽減する。
【解決手段】走査形放射温度計は、モータ7にて回転駆動され、測定対象からの放射光を反射する反射面11aを有する4面回転ミラー11を備え、測定対象からの放射光を所定の走査範囲で走査する走査手段2と、モータ7の回転軸7aに取り付けられるモータ側磁力カップリング17と4面回転ミラー11の回転軸11bに取り付けられる回転体側磁力カップリング16からなり、モータ7の回転を4面回転ミラー11に伝達する一対の磁力カップリング15と、回転体側磁力カップリング16の磁石部16aに押し付けて一対の磁力カップリング15のギャップ部分に設けられる弾性体14と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象からの放射光を所定の走査範囲で走査して測定対象の各位置における温度を測定する走査形放射温度計において、
モータにて回転駆動され、前記測定対象からの放射光を反射する反射面を有する回転体を備え、前記測定対象からの放射光を前記走査範囲で走査する走査手段と、
前記モータの回転軸に取り付けられるモータ側磁力カップリングと前記回転体の回転軸に取り付けられる回転体側磁力カップリングからなり、前記モータの回転を前記回転体に伝達する一対の磁力カップリングと、
前記回転体側磁力カップリングの磁石部に押し付けて前記一対の磁力カップリングのギャップ部分に設けられる弾性体と、を備えたことを特徴とする走査形放射温度計。
【請求項2】
前記弾性体は、前記一対の磁力カップリングに面接触して設けられることを特徴とする請求項1に記載の走査形放射温度計。
【請求項3】
前記弾性体は、前記磁石部の端面形状に合わせた形で形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の走査形放射温度計。
【請求項4】
前記弾性体は、前記一対の磁力カップリングの何れかに両面テープまたは接着剤で固定されていることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の走査形放射温度計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象からの放射光を所定の走査範囲で走査して測定対象の各位置における温度を測定する走査形放射温度計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
走査形放射温度計は、測定対象からの放射光を所定の走査範囲で走査して測定対象の各位置における温度を測定する温度計として従来から知られている。
【0003】
例えば下記特許文献1の走査形放射温度計では、測定対象の各位置における温度を測定するにあたって、側面に傾斜角の異なる複数の反射面を有するポリゴンミラーをモータにより回転駆動して測定対象面を2次元走査し、測定対象面からの赤外線をポリゴンミラーで反射させ、このポリゴンミラーで反射された測定光を集光レンズにより赤外線検出器の検出面に集光させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した特許文献1の走査形放射温度計において、ポリゴンミラーをモータにより回転駆動するにあたって、タイミングベルトを介してモータの回転軸とポリゴンミラーの回転軸との間を接続する構成を採用すると、タイミングベルトが繰り返し使用により摩耗した際に発生するゴミの混入問題がある。
【0006】
また、モータの回転軸とポリゴンミラーの回転軸との間を機械的な汎用のカップリングで接続する構成を採用すると、モータの回転軸とポリゴンミラーの回転軸との間の位置調整が必要であり、組み立てが難しく簡単に交換が行えないという問題がある。
【0007】
ここで、上述した問題を解消するため、モータの回転軸とポリゴンミラーの回転軸との間を一対の磁力カップリングで接続する構成が考えられる。しかし、一対の磁力カップリングを用いた構成では、モータの回転力をポリゴンミラーの回転軸に伝達する際、一対の磁力カップリングのそれぞれの磁石部が発生する磁力が引き合い、モータの回転軸にスラスト荷重が生じてモータ内部のベアリングが破損するという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、モータの回転軸に加わるスラスト荷重を軽減することができる走査形放射温度計を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載された走査形放射温度計は、測定対象からの放射光を所定の走査範囲で走査して測定対象の各位置における温度を測定する走査形放射温度計において、
モータにて回転駆動され、前記測定対象からの放射光を反射する反射面を有する回転体を備え、前記測定対象からの放射光を前記走査範囲で走査する走査手段と、
前記モータの回転軸に取り付けられるモータ側磁力カップリングと前記回転体の回転軸に取り付けられる回転体側磁力カップリングからなり、前記モータの回転を前記回転体に伝達する一対の磁力カップリングと、
前記回転体側磁力カップリングの磁石部に押し付けて前記一対の磁力カップリングのギャップ部分に設けられる弾性体と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項2に記載された走査形放射温度計は、請求項1の走査形放射温度計において、
前記弾性体は、前記一対の磁力カップリングに面接触して設けられることを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項3に記載された走査形放射温度計は、請求項1または2の走査形放射温度計において、
前記弾性体は、前記磁石部の端面形状に合わせた形で形成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項4に記載された走査形放射温度計は、請求項1~3の何れかの走査形放射温度計において、
前記弾性体は、前記一対の磁力カップリングの何れかに両面テープまたは接着剤で固定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、磁力の引き合いによるスラスト荷重を弾性体の反発力により減少させてモータにかかる負荷を軽減し、モータ内部のベアリングの破損を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る走査形放射温度計の全体構成を示す図である。
【
図2】本発明に係る走査形放射温度計の走査手段の部分断面図である。
【
図3】(a),(b)本発明に係る走査形放射温度計の視定手段の構成例と出射光を示す図である。
【
図4】(a),(b)本発明に係る走査形放射温度計の視定手段の他の構成例と出射光を示す図である。
【
図5】(a),(b)本発明に係る走査形放射温度計の視定手段の他の構成例と出射光を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
図1に示すように、本実施の形態の走査形放射温度計1は、測定対象Wの表面からの放射光を所定の走査範囲A(例えば90°)で走査して測定対象Wの表面の各位置における温度を測定するものであり、走査手段2、集光手段3、検出手段4、視定手段5、補助反射手段6を備えて概略構成される。
【0017】
走査手段2は、
図2のモータ7により回転駆動される回転体として、隣接する反射面11aが直角をなす枠状の4面回転ミラー11を有する。4面回転ミラー11は、モータ7の回転力が後述する一対の磁力カップリング15を介して回転軸11bに伝達されると、回転軸11bを中心として
図1の矢印B方向に回転駆動される。走査手段2は、4面回転ミラー11の回転により所定の走査範囲Aで走査され、測定対象Wの表面からの放射光を集光手段3に向けて反射する。
【0018】
さらに、走査手段2の構成について
図2の断面図を参照しながら説明する。走査手段2の4面回転ミラー11は、4つの反射面11aが立設されるフランジ12aを有する筒状部12がベアリング13を介して回転軸11bと接続される。
【0019】
4面回転ミラー11は、弾性体14がギャップ部分に挟み込まれた一対の磁力カップリング15を介してモータ7と連結される。
【0020】
一対の磁力カップリング15は、回転体側磁力カップリング16とモータ側磁力カップリング17からなる。回転体側磁力カップリング16は、筒状部12内の回転軸11bの先端部(
図2では上端部)に取り付けられ、磁石部16aと磁石部16aを保持するホルダ部16bで構成される。
【0021】
モータ側磁力カップリング17は、モータ7の回転軸7aの先端部(
図2では下端部)に取り付けられ、回転体側磁力カップリング16と同一構成の磁石部17aと磁石部17aを保持するホルダ部17bで構成される。
【0022】
弾性体14は、例えばゴム、スポンジなどで構成され、回転体側磁力カップリング16の磁石部16aとモータ側磁力カップリング17の磁石部17aの端面形状に合わせた形状(外形がほぼ相似する形状)で互いの中心を一致させて磁石部16a,17a内に収まるように形成される。具体的に、弾性体14は、回転体側磁力カップリング16の磁石部16aとモータ側磁力カップリング17の磁石部17aの端面形状が円形であればリング状で互いの中心を一致させて磁石部16a,17a内に収まるように形成され、回転体側磁力カップリング16の磁石部16aとモータ側磁力カップリング17の磁石部17aの端面形状が四角形であれば枠状で互いの中心を一致させて磁石部16a,17a内に収まるように形成される。
【0023】
すなわち、弾性体14は、磁石部16a,17aの端面形状に合わせた形状とせず、磁石部16a,17aからはみ出すと、はみ出した部分が圧縮されないため無意味になり、圧縮された際にいびつな形状に変形して力が分散し均等に圧がかからず、長期使用中に不具合が起きる可能性があることを懸念し、磁石部16a,17aの端面形状に合わせた形状で互いの中心を一致させて磁石部16a,17a内に収めている。
【0024】
弾性体14は、モータ7の内部のベアリングが磁力によるスラスト荷重(モータ7の回転軸7a方向に働く荷重)を受けて破損するのを防ぐものであり、回転体側磁力カップリング16の磁石部16aに押し付けられ、回転体側磁力カップリング16の磁石部16aとモータ側磁力カップリング17の磁石部17aとの間に面接触して潰された状態で密着して設けられる。これにより、モータ7の回転力が一対の磁力カップリング15により4面回転ミラー11に伝達されて回転駆動した際、回転体側磁力カップリング16の磁石部16aとモータ側磁力カップリング17の磁石部17aの磁力が引き合う力を弾性体14の反発力でキャンセルし、モータ7にかかる負荷を軽減する。
【0025】
なお、一対の磁力カップリング15への弾性体14の取付は、一対の磁力カップリング15による圧縮の力のみの固定、回転定側磁力カップリング16または回転体側磁力カップリング17に両面テープで固定、回転定側磁力カップリング16または回転体側磁力カップリング17に接着剤で固定などがある。両面テープや接着剤を用いれば、一対の磁力カップリング15への弾性体14の密着力を高めるとともに、組み立てがしやすくなる効果がある。
【0026】
集光手段3は、集光レンズで構成され、走査手段2にて走査される測定対象Wからの放射光を検出手段4に集光する。
【0027】
検出手段4は、検出素子(単素子、複数素子)が配置され、集光手段3にて集光される測定対象Wからの放射光を検出素子の検出面にて検出する。なお、検出手段4にて検出された測定対象Wからの放射光は電気信号に変換され、従来より周知の信号処理(後述する温度ドリフトの補正を含む)によって測定対象Wの表面における各位置の温度が算出される。
【0028】
視定手段5は、
図1の走査手段2の走査範囲A(例えば90°)に合わせたレーザ視程角C(例えば90°)が得られるように、レーザダイオード5aと、コリメートレンズ、ロッドレンズ、三角柱ミラーを適宜組み合わせた光学系5bを備えて構成される。
【0029】
視定手段5は、測定対象Wの走査範囲Aを目視で確認するため、レーザダイオード5aからのレーザ光(可視光:例えば赤色)の光路を光学系5bにて変換し、光路が変換されたレーザ光を走査範囲Aに合わせたレーザ視程角Cで測定対象Wに向けて出射する。視定手段5としては、
図3(a)、
図4(a)、
図5(a)の何れかの構成を採用することができる。
【0030】
図3(a)の視定手段5Aは、レーザダイオード5a、光学系5bとしてコリメートレンズ5b1、ロッドレンズ5b2を備えて構成され、レーザダイオード5aの出射面とコリメートレンズ5b1の入射面のそれぞれの中心が光軸Lと一致するように配置される。また、ロッドレンズ5b2は、コリメートレンズ5b1の出射面側で光軸Lよりも上方に位置して配置される。なお、ロッドレンズ5b2は、コリメートレンズ5b1の出射面側で光軸Lよりも下方に位置して配置してもよい。
【0031】
図3(a)の視定手段5Aでは、レーザダイオード5aから出射されるレーザ光(可視光:例えば赤色)をコリメートレンズ5b1により平行光束R1に絞った後、平行光束R1の一部をロッドレンズ5b2に入射させ、その他の平行光束R1をそのまま通過させる。これにより、
図3(b)に示すように、ロッドレンズ5b2に入射した光線がライン状の光R2として射出され、その他の平行光束R1が中心に集光される。
【0032】
図4(a)の視定手段5Bは、レーザダイオード5a、光学系5bとしてコリメートレンズ5b1、三角柱ミラー5b3を備えて構成され、レーザダイオード5aの出射面とコリメートレンズ5b1の入射面のそれぞれの中心が光軸Lと一致するように配置される。また、三角柱ミラー5b3は、鋭角部をコリメートレンズ5b1側に向けた状態で光軸Lよりも上方に位置して配置される。なお、三角柱ミラー5b3は、鋭角部をコリメートレンズ5b1側に向けた状態で光軸Lよりも下方に位置して配置してもよい。
【0033】
図4(a)の視定手段5Bでは、レーザダイオード5aから出射されるレーザ光(可視光:例えば赤色)をコリメートレンズ5b1により平行光束R1に絞った後、平行光束R1の一部を三角柱ミラー5b3の2つの側面に入射させ、その他の平行光束R1をそのまま通過させる。これにより、
図4(b)に示すように、三角柱ミラー5b3の2つの側面に入射した光線が外側に所定角度(例えばレーザダイオード5aの出射面に対向する三角柱ミラー5b3の鋭角部の角度が45°で走査範囲Aが90°の場合は22.5°)で反射した光R3,R4として射出され、その他の平行光束R1が中心に集光される。
【0034】
図5(a)の視定手段5Cは、レーザダイオード5a、光学系5bとしてコリメートレンズ5b1、ロッドレンズ5b2、三角柱ミラー5b3を備えて構成され、レーザダイオード5aの出射面とコリメートレンズ5b1の入射面のそれぞれの中心が光軸Lと一致するように配置される。また、三角柱ミラー5b3は、鋭角部をコリメートレンズ5b1側に向けた状態で光軸Lよりも上方に位置して配置され、ロッドレンズ5b2がコリメートレンズ5b1の出射面側で三角柱ミラー5b3の上部に配置される。なお、三角柱ミラー5b3は、鋭角部をコリメートレンズ5b1側に向けた状態で光軸Lよりも下方に位置して配置し、ロッドレンズ5b2を三角柱ミラー5b3の下部に配置してもよい。
【0035】
図5(a)の視定手段5Cでは、レーザダイオード5aから出射されるレーザ光(可視光:例えば赤色)をコリメートレンズ5b1により平行光束R1に絞った後、平行光束R1の一部をロッドレンズ5b2に入射させ、平行光束R1の他の一部を三角柱ミラー5b3の2つの側面に入射させ、その他の平行光束R1をそのまま通過させる。これにより、
図5(b)に示すように、ロッドレンズ5b2に入射した光線がライン状の光R2として射出され、三角柱ミラー5b3の2つの側面に入射した光線が外側に所定角度(例えばレーザダイオード5aの出射面に対向する三角柱ミラー5b3の鋭角部の角度が45°で走査範囲Aが90°の場合は22.5°)で反射した光R3,R4として射出され、その他の平行光束R1が中心に集光される。
【0036】
補助反射手段6は、測定対象Wからの放射光が検出手段4の検出面に入射しない状態での温度ドリフトを測定するため、4面回転ミラー11の回転軌跡から外れた位置で検出手段4の検出面と平行に対面して配置される。具体的に、補助反射手段6は、組み立て性や部品点数の増加を考慮して装置の小型化を図るため、4面回転ミラー11に迷光が入るのを防止するミラーカバー18(
図2のモータ7を固定している部品)または筐体の内壁面に配置して取り付けられる。補助反射手段6は、検出手段4が発する放射光(集光手段3が発する放射光を含む)を反射させて検出手段4の検出面に入射する反射光を温度ドリフトとして測定する際に、
図1の実線で示す4面回転ミラー11の左側の反射面11aが検出手段4の検出面と平行に対面する位置において、検出手段4が発して4面回転ミラー11の反射面11aにて反射できない放射光、すなわち、4面回転ミラー11の反射面11aが視野不足によってカバーできない放射光を検出手段4の検出面に向けて反射する。
【0037】
補助反射手段6は、集光手段3のレンズの有効口径が大きく、走査手段2の4面回転ミラー11のみで検出手段4からの放射光を反射して検出手段4の検出面に入射するのが不可能な場合に設けられるものである。
【0038】
なお、集光手段3のレンズの有効口径が小さく、走査手段2の4面回転ミラー11のみで検出手段4からの放射光を反射して検出手段4の検出面に入射することが可能な場合には補助反射手段6を省くことができる。
【0039】
このように、上述した実施の形態では、モータ7と回転体(4面回転ミラー11)との間を接続する一対の磁力カップリング15のギャップ部分に反発力を有して弾性体14を設けた構成を採用している。これにより、磁力の引き合いによるスラスト荷重を弾性体14の反発力により減少させてモータ7にかかる負荷を軽減し、モータ7内部のベアリングの破損を防ぐことができる。
【0040】
また、上述した実施の形態では、モータ7と回転体(4面回転ミラー11)の接続に一対の磁力カップリング15を使用している。これにより、従来のようなタイミングベルトの摩耗によるゴミ混入の問題が解消され、モータの交換時に再度光軸合わせを行う必要もなく、位置再現性もラフで済み、現場でモータの交換を簡単かつ容易に行うことができ、磁力カップリングの利点を活かすことができる。
【0041】
さらに、上述した実施の形態では、検出手段4が発する放射光(集光手段3が発する放射光を含む)を反射させて検出手段4が自己温度を測定する際に、測定対象Wの表面からの放射光を集光手段3に反射させるための4面回転ミラー11を兼用している。これにより、特許文献1のようなミラーを一部に設けたチョッパーをモータで回転させる構成と比較して、余計なモータを増やすことなく構成部品の簡素化を図ることができる。
【0042】
また、集光手段3のレンズの有効口径が大きく、4面回転ミラー11のみで上述した自己温度の測定が不可能な場合であっても、補助反射手段6によるミラーを配置するだけで対応することができる。
【0043】
さらに、上述した実施の形態では、
図3~
図5の何れかの構成による視定手段5A,5B,5Cを採用している。そして、
図3の視定手段5Aによれば、平行光束R1の一部をロッドレンズ5b2に入射させ、その他の平行光束R1をそのまま通過させることにより、走査範囲(視定範囲)Aの中心位置を確認することができる。また、
図4の視定手段5Bによれば、平行光束R1の一部を三角柱ミラー5b3の2つの側面に入射させ、その他の平行光束R1をそのまま通過させることにより、走査範囲(視定範囲)Aの中心位置だけでなく両端位置を確認することができる。さら、
図5の視定手段5Cによれば、
図3の視定手段5Aと
図4の視定手段5Bを組み合わせた構成により、走査範囲(視定範囲)Aの中心位置と両端位置を確認することができる。
【0044】
ところで、上述した実施の形態において、弾性体14を設ける位置は、
図2のモータ7と4面回転ミラー11との間を接続する一対の磁力カップリング15のギャップ部分に限定されず、モータ7とモータ7で回転させたい回転体との間を接続する場合の一対の磁力カップリングのギャップ部分であってもよい。
【0045】
以上、本発明に係る走査形放射温度計の最良の形態について説明したが、この形態による記述及び図面により本発明が限定されることはない。すなわち、この形態に基づいて当業者等によりなされる他の形態、実施例及び運用技術などはすべて本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0046】
1 走査形放射温度計
2 走査手段
3 集光手段
4 検出手段
5A,5B,5C 視定手段
5a レーザダイオード
5b 光学系
5b1 コリメートレンズ
5b2 ロッドレンズ
5b3 三角柱ミラー
6 補助反射手段
6a 反射面
7 モータ
7a 回転軸
11 4面回転ミラー
11a 反射面
11b 回転軸
12 筒状部
12a フランジ
13 ベアリング
14 弾性体
15 一対の磁力カップリング
16 回転体側磁力カップリング
16a 磁石部
16b ホルダ部
17 モータ側磁力カップリング
17a 磁石部
17b ホルダ部
18 ミラーカバー
W 測定対象
A 走査範囲
B 回転方向(4面回転ミラー)
C レーザ視程角
L 光軸
R1 平行光束
R2 ライン状の光
R3,R4 反射光