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特開2022-144957冷却器、半導体装置及び電力変換装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022144957
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】冷却器、半導体装置及び電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/473 20060101AFI20220926BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20220926BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20220926BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
H01L23/46 Z
H01L25/04 C
H02M7/48 Z
H05K7/20 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021046172
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】讃岐 育孝
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 祐司
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
5H770
【Fターム(参考)】
5E322AA07
5E322AB01
5E322AB02
5E322DA00
5E322EA10
5E322FA01
5E322FA04
5F136CB06
5F136CB07
5F136CB08
5F136DA07
5F136DA27
5F136FA02
5F136FA03
5H770BA02
5H770DA03
5H770PA12
5H770PA14
5H770PA15
5H770PA16
5H770PA17
5H770PA42
5H770QA06
5H770QA21
5H770QA27
(57)【要約】
【課題】 半導体モジュールが動作している状態で、半導体モジュールを効率よく冷却できる。
【解決手段】 第1方向に離隔して並んで設けられ、前記第1方向に交差する第2方向に延びて設けられる流路を有する複数の多穴管と、前記複数の多穴管のそれぞれの一方が接続される第1ヘッダと、前記複数の多穴管のそれぞれの他方が接続される第2ヘッダと、を備え、前記第1ヘッダ及び前記第2ヘッダのそれぞれは、前記第1方向及び前記第2方向に延在する壁部に、被設置対象に固定される固定部を有する冷却器。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に離隔して並んで設けられ、前記第1方向に交差する第2方向に延びて設けられる流路を有する複数の多穴管と、
前記複数の多穴管のそれぞれの一方が接続される第1ヘッダと、
前記複数の多穴管のそれぞれの他方が接続される第2ヘッダと、
を備え、
前記第1ヘッダ及び前記第2ヘッダのそれぞれは、前記第1方向及び前記第2方向に延在する壁部に、被設置対象に固定される固定部を有する、
冷却器。
【請求項2】
前記固定部は、前記壁部に固定される第1板部と、前記第1板部と接続し前記被設置対象に固定される第2板部と、を備える、
請求項1に記載の冷却器。
【請求項3】
前記第2板部は、前記被設置対象に対して前記第1方向に固定される、
請求項2に記載の冷却器。
【請求項4】
前記第2板部は、前記被設置対象に対して前記第2方向に固定される、
請求項2に記載の冷却器。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の冷却器と、
隣接する前記多穴管の間に半導体パッケージと、を備える、
半導体装置。
【請求項6】
請求項5に記載の半導体装置を備える、
電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷却器、半導体装置及び電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パワー半導体等を含む半導体モジュールは、動作させると発熱を伴うため、半導体モジュールを用いる電子機器において、半導体モジュールの温度上昇を抑えるために半導体モジュールの冷却が行われる。
【0003】
特許文献1には、半導体モジュールを含む電子機器と、冷媒が流通する冷媒流通路と、半導体モジュールと交互に積層され冷媒が流通するとともに半導体モジュールの主面に接触して熱交換可能な接触面部を有する冷媒管部を備える電力変換装置が開示されている。
【0004】
特許文献2には、電力変換装置のケースにフィン部を収納可能な冷却水路を有し、冷却水路の側面には前述のパワーモジュールが挿入できる挿入口が設けられる電力変換装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-038117号公報
【特許文献2】特開2019-013149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半導体モジュールを用いる電子機器において、半導体モジュールが動作している状態で、効率よく冷却することが求められる。
【0007】
本開示は、半導体モジュールが動作している状態で、半導体モジュールを効率よく冷却する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一の態様によれば、第1方向に離隔して並んで設けられ、前記第1方向に交差する第2方向に延びて設けられる流路を有する複数の多穴管と、前記複数の多穴管のそれぞれの一方が接続される第1ヘッダと、前記複数の多穴管のそれぞれの他方が接続される第2ヘッダと、を備え、前記第1ヘッダ及び前記第2ヘッダのそれぞれは、前記第1方向及び前記第2方向に延在する壁部に、被設置対象に固定される固定部を有する冷却器を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本開示の技術によれば、半導体モジュールが動作している状態で、半導体モジュールを効率よく冷却できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態に係る電力変換装置の斜視図である。
図2図2は、本実施形態に係る電力変換装置の斜視図である。
図3図3は、第1実施形態に係る半導体装置の斜視図である。
図4図4は、第1実施形態に係る半導体装置の分解斜視図である。
図5図5は、第1実施形態に係る半導体装置の半導体パッケージの上面図である。
図6図6は、第1実施形態に係る半導体装置の半導体パッケージの下面図である。
図7図7は、第1実施形態に係る半導体装置の冷却器の斜視図である。
図8図8は、第1実施形態に係る半導体装置の冷却器の分解斜視図である。
図9図9は、第1実施形態に係る半導体装置の冷却器のヘッダの斜視図である。
図10図10は、第1実施形態に係る半導体装置の冷却器の多穴管の側面図である。
図11図11は、第1実施形態に係る半導体装置の断面図である。
図12図12は、第1実施形態に係る半導体装置の断面図である。
図13図13は、第1実施形態に係る半導体装置の半導体パッケージが発熱した際の影響について説明する図である。
図14図14は、第1実施形態に係る半導体装置において半導体パッケージが発熱した際の影響について説明する図である。
図15図15は、第1実施形態に係る半導体装置において半導体パッケージが発熱した際の冷却器の変形をシミュレーションした結果を示す図である。
図16図16は、第2実施形態に係る半導体装置の斜視図である。
図17図17は、比較例の半導体装置において半導体パッケージが発熱した際の影響について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の各実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。なお、各実施形態に係る明細書及び図面の記載に関して、実質的に同一の又は対応する機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省略する場合がある。また、理解の容易のため、図面における各部の縮尺は、実際とは異なる場合がある。
【0012】
平行、直角、直交、水平、垂直、上下、左右などの方向には、実施形態の効果を損なわない程度のずれが許容される。角部の形状は、直角に限られず、弓状に丸みを帯びてもよい。平行、直角、直交、水平、垂直には、略平行、略直角、略直交、略水平、略垂直が含まれてもよい。
【0013】
<<電力変換装置>>
本実施形態に係る電力変換装置について説明する。図1及び図2は、本実施形態に係る電力変換装置の斜視図である。図2は、図1の電力変換装置5のカバー51を外した図である。
【0014】
電力変換装置5は、例えば、直流電力を所定の周波数の3相の交流電力に変換する。電力変換装置5は、例えば、自動車等に搭載される。
【0015】
電力変換装置5は、カバー51と、ケース52と、を備える。ケース52は、外部の電源や負荷を接続するためのコネクタ53及びコネクタ54を備える。なお、カバー51及びケース52の組み合わせを筐体50という場合がある。
【0016】
電力変換装置5は、カバー51及びケース52の内部に、制御基板55と、半導体装置1と、コンデンサ56と、を備える。
【0017】
制御基板55は、所望の出力が得られるように、半導体装置1を制御する。半導体装置1は、制御基板55からの制御信号に基づいて、直流電力を3相の交流電力に変換する。コンデンサ56は、コンバータ及びインバータとの間に接続されるコンデンサである。
【0018】
半導体装置1の冷却器30の管112及び管113が、カバー51及びケース52から外部に出されている。管112及び管113の一方から冷媒が流入して、他方から冷媒が流出することにより、冷却器30の中を冷媒が流れる。冷却器30の中に冷媒が流れることにより、半導体パッケージ20が冷却される。
【0019】
<<第1実施形態>>
≪半導体装置1≫
図3は、第1実施形態の半導体装置1の斜視図である。図4は、第1実施形態の半導体装置1の分解斜視図である。半導体装置1は、例えば、3相モータの各相のそれぞれに2つの半導体パッケージ20によって直流を交流に変換して電力を供給する電力変換器である。半導体装置1は、例えば、モータを駆動する電力変換装置に用いられる。
【0020】
なお、図には、説明の便宜のためXYZ直交座標系が設定される場合がある。図面の紙面に対して垂直な座標軸については、座標軸の丸の中にバツ印は紙面に対して奥の方向が正、丸の中に黒丸印は紙面に対して手前側が正であることを表している。ただし、当該座標系は、説明のために定めるものであって、半導体装置1等の姿勢について限定するものではない。
【0021】
なお、本開示では、特に説明しない限り、X軸は冷却器30の第1多穴管30b1、第2多穴管30b2及び第3多穴管30b3それぞれの延在方向とする。また、Y軸は冷却器30の第1多穴管30b1、第2多穴管30b2及び第3多穴管30b3が隣接する方向とする。なお、Y軸方向を、上下方向と呼ぶ場合がある。Z軸は、当該X軸、Y軸に垂直な方向とする。
【0022】
半導体装置1は、複数の半導体パッケージ20と、冷却器30と、を備える。
【0023】
本実施形態の半導体装置1は、6個の半導体パッケージ20を備える。具体的には、半導体装置1は、半導体パッケージ21、半導体パッケージ22、半導体パッケージ23、半導体パッケージ24、半導体パッケージ25及び半導体パッケージ26を備える。なお、以下の説明では、半導体パッケージ21、半導体パッケージ22、半導体パッケージ23、半導体パッケージ24、半導体パッケージ25及び半導体パッケージ26のそれぞれを区別して説明する必要がない場合は、それぞれを総称して半導体パッケージ20と呼ぶ場合がある。
【0024】
半導体パッケージ20は、冷却器30の後述する第1多穴管30b1、第2多穴管30b2及び第3多穴管30b3の間に、横3列、縦2段に配置され、保持される。冷却器30には、冷媒導入口30ap1から冷媒(熱冷媒)、例えば、冷却水、が導入される。また、冷却器30に導入された冷媒は、冷媒導出口30ap2から導出される。半導体パッケージ20は、第1多穴管30b1、第2多穴管30b2及び第3多穴管30b3内を通流する冷却水と熱交換することにより冷却される。
【0025】
第1多穴管30b1と第2多穴管30b2との間に、第1ヘッダ30aの側から順に並んで、半導体パッケージ21、半導体パッケージ22及び半導体パッケージ23を備える。また、第2多穴管30b2と第3多穴管30b3との間に、第1ヘッダ30aの側から順に並んで、半導体パッケージ24、半導体パッケージ25及び半導体パッケージ26を備える。
【0026】
半導体装置1の半導体パッケージ20と冷却器30のそれぞれの詳細について説明する。
【0027】
<半導体パッケージ20>
図5は、第1実施形態の半導体装置1の半導体パッケージ20の上面図である。図6は、第1実施形態の半導体装置1の半導体パッケージ20の下面図である。
【0028】
半導体パッケージ20は、例えば、1相分の上下アームを構成する2つの半導体素子がパッケージされたいわゆる2in1の半導体パッケージである。また、半導体パッケージ20は、いわゆる両面冷却型の半導体パッケージである。半導体パッケージ20の内部には、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、FET(Field-Effect Transistor)等のパワートランジスタ等の半導体素子が内蔵される。
【0029】
なお、内蔵する半導体素子としては、パワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)やFWD(Free Wheeling Diode)等でもよい。また、載置される半導体素子は、前述のIGBTやFWDをワンチップ化したRB-IGBT(Reverse Blocking-Insulated Gate Bipolar Transistor)でもよい。更に、載置される半導体素子は、前述のIGBTやFWDをワンチップ化したRC-IGBT(Reverse Conducting-Insulated Gate Bipolar Transistor)でもよい。
【0030】
半導体パッケージ20は、略直方体状の形状の樹脂、例えば、エポキシ樹脂等、のケース20dを備える。ケース20dは、上面20dAと、上面20dAの反対側に下面20dBと、を有する。
【0031】
半導体パッケージ20は、ケース20dの側面に、電流端子20a1、電流端子20a2及び電流端子20a3と、制御端子20b1、制御端子20b2、制御端子20b3及び制御端子20b4と、を有する。電流端子20a1、電流端子20a2及び電流端子20a3と、制御端子20b1、制御端子20b2、制御端子20b3及び制御端子20b4とは、半導体パッケージ20のケース20dの側面から突出して設けられる。
【0032】
電流端子20a1、電流端子20a2及び電流端子20a3は、例えば、負荷に電流を流すための端子である。電流端子20a1、電流端子20a2及び電流端子20a3は、導電材料で形成される。制御端子20b1、制御端子20b2、制御端子20b3及び制御端子20b4は、負荷に流す電流を制御するための端子である。制御端子20b1、制御端子20b2、制御端子20b3及び制御端子20b4は、導電材料で形成される。
【0033】
また、半導体パッケージ20は、放熱板20c1及び放熱板20c2を有する。半導体パッケージ20に内蔵される例えばパワートランジスタは、発熱素子であることから、冷却する必要がある。放熱板20c1及び放熱板20c2は、当該発熱素子を放熱するために設けられる。放熱板20c1及び放熱板20c2は、熱伝導性の高い材料、例えば、銅などの金属で形成される。放熱板20c1及び放熱板20c2は、当該発熱素子に熱的に接続される。放熱板20c1は、ケース20dの上面20dAに設けられる。放熱板20c2は、ケース20dの下面20dBに設けられる。
【0034】
<冷却器30>
図7は、第1実施形態の半導体装置1の冷却器30の斜視図である。図8は、第1実施形態の半導体装置1の冷却器30の分解斜視図である。
【0035】
冷却器30は、半導体パッケージ20を冷却する。冷却器30の内部には、冷媒が通流する。冷却器30は、第1多穴管30b1、第2多穴管30b2及び第3多穴管30b3内を通流する冷媒(例えば冷却水)と半導体パッケージ20との間で熱交換することにより、半導体パッケージ20を冷却する。なお、冷媒は水に限らず、不凍液を含む液体でもよい。
【0036】
冷却器30は、第1ヘッダ30aと、第1多穴管30b1、第2多穴管30b2及び第3多穴管30b3と、第2ヘッダ30cと、を備える。第2ヘッダ30cは、第1ヘッダ30aからX軸方向に離隔して設けられる。第1多穴管30b1、第2多穴管30b2及び第3多穴管30b3は、Y軸方向、すなわち、X軸方向と交差する方向、に所定の間隔、具体的には、半導体パッケージ20を保持できる間隔、を隔てて設けられる。
【0037】
なお、X軸方向は、第2方向の一例である。
【0038】
第1ヘッダ30aは、第1多穴管30b1、第2多穴管30b2及び第3多穴管30b3のそれぞれの一端に連結される。具体的には、第1ヘッダ30aは、第1多穴管30b1、第2多穴管30b2及び第3多穴管30b3のそれぞれの-X側の端部に連結される。第2ヘッダ30cは、第1多穴管30b1、第2多穴管30b2及び第3多穴管30b3のそれぞれの他端に連結される。具体的には、第2ヘッダ30cは、第1多穴管30b1、第2多穴管30b2及び第3多穴管30b3のそれぞれの+X側の端部に連結される。
【0039】
[第1ヘッダ30a]
最初に、第1ヘッダ30aについて説明する。図9は、第1実施形態の半導体装置1の冷却器30の第1ヘッダ30aの斜視図である。第1ヘッダ30aは、冷媒を冷却器30の内部に導入するとともに、冷却器30の外部に導出する。第1ヘッダ30aは、壁部30aA、壁部30aB、壁部30aC、壁部30aD、壁部30aE及び壁部30aFにより構成される内部が空洞の直方体状である。
【0040】
第1ヘッダ30aの+X側の壁部である壁部30aEの一部が解放される。具体的には、第1ヘッダ30aは、壁部30aEに開口部30ah1、開口部30ah2及び開口部30ah3を有する。第1ヘッダ30aの開口部30ah1、開口部30ah2及び開口部30ah3には、それぞれ第1多穴管30b1、第2多穴管30b2及び第3多穴管30b3の一端が挿入され、固定される。第1ヘッダ30aと、第1多穴管30b1、第2多穴管30b2及び第3多穴管30b3とは例えばロウ付けにて固定され、水密を確保する。
【0041】
第1ヘッダ30aは、壁部30aFに冷媒導入口30ap1及び冷媒導出口30ap2を有する。冷媒導入口30ap1は、外部の冷却装置から冷媒が導入される。冷媒導出口30ap2は、外部の冷却装置に冷媒を導出する。第1ヘッダ30aは、内部に後述する隔壁を有する。隔壁は、第1ヘッダ30aに導入される冷媒と、第1ヘッダ30aから導出される冷媒とを分ける壁である。隔壁については、後で詳細を述べる。
【0042】
第1ヘッダ30aは、壁部30aDに、被設置対象、具体的には、電力変換装置5のケース52に固定される固定部30afを備える。また、第1ヘッダ30aは、壁部30aBに、被設置対象、具体的には、電力変換装置5のケース52に固定される固定部30agを備える。
【0043】
固定部30af及び固定部30agについて説明する。なお、固定部30agは、固定部30afと同じ形状を有していることから、固定部30afについて説明する。
【0044】
固定部30afは、壁部30aDの側面に平行であって、壁部30aDに固定される第1板部30af1と、第1板部30af1と接続し、被設置対象に固定される第2板部30af2と、を有する。第2板部30af2は、固定部30afをねじにより被設置対象に取り付ける際に、ねじが貫通する貫通穴30afhを有する。
【0045】
[第1多穴管30b1、第2多穴管30b2、第3多穴管30b3]
次に、第1多穴管30b1、第2多穴管30b2及び第3多穴管30b3について説明する。図10は、第1実施形態の半導体装置1の冷却器30の第1多穴管30b1、第2多穴管30b2及び第3多穴管30b3の側面図である。第1多穴管30b1、第2多穴管30b2及び第3多穴管30b3は、長手方向の端部が解放され内部に冷媒が通流する管である。また、第1多穴管30b1、第2多穴管30b2及び第3多穴管30b3は、多穴管の内部を通流する冷媒と熱交換することで半導体パッケージ20を冷却する。
【0046】
第1多穴管30b1、第2多穴管30b2及び第3多穴管30b3の短手方向の断面は外形が略長方形状になっている。第1多穴管30b1、第2多穴管30b2及び第3多穴管30b3は、内部に分割された流路30bcを有するいわゆるマイクロチャネルである。
【0047】
第1多穴管30b1、第2多穴管30b2及び第3多穴管30b3の各流路30bcは、Y軸方向(上下方向)に長い矩形状のマイクロチャネルになっている。なお、流路30bcは、Y軸方向に2段以上分けてもよい。
【0048】
なお、Y軸方向(上下方向)は、第1方向の一例である。
【0049】
第1多穴管30b1、第2多穴管30b2及び第3多穴管30b3は、冷却面30bA、冷却面30bBを有する。半導体パッケージ20を冷却器30で冷却する場合には、冷却面30bA又は冷却面30bBに冷却する半導体パッケージ20が接触して設けられる。具体的には、冷却面30bAまたは冷却面30bBと、半導体パッケージ20の放熱板20c1または放熱板20c2とがハンダ付けや熱伝導グリス等の後述する接合部材で熱的に接合される。
【0050】
第1多穴管30b1、第2多穴管30b2及び第3多穴管30b3のそれぞれの流路30bcは、第1多穴管30b1、第2多穴管30b2及び第3多穴管30b3のそれぞれの延在方向に対して一様な断面積を有する。第1多穴管30b1、第2多穴管30b2及び第3多穴管30b3のそれぞれの流路30bcの延在方向と冷媒の流れ方向は、X軸方向で一致する。なお、流路30bcの断面積とは、本開示においては、それぞれの流路30bcの延在方向、すなわち、冷媒の流れ方向に垂直な面の断面積とする。
【0051】
第1多穴管30b1、第2多穴管30b2及び第3多穴管30b3の少なくとも1本の多穴管は、第1ヘッダ30aから第2ヘッダ30cの方向に冷媒が流れ、残りの多穴管は、第2ヘッダ30cから第1ヘッダ30aの方向に冷媒が流れる。なお、以下の説明において、第1ヘッダ30aから第2ヘッダ30cの方向に冷媒が流れる多穴管を上流側多穴管、第2ヘッダ30cから第1ヘッダ30aの方向に冷媒が流れる多穴管を下流側多穴管、という場合がある。
【0052】
[第2ヘッダ30c]
第2ヘッダ30cは、第1多穴管30b1、第2多穴管30b2及び第3多穴管30b3の少なくとも一本の多穴管から導入された冷媒を、第1多穴管30b1、第2多穴管30b2及び第3多穴管30b3の残りの多穴管に導入する。いいかえると、第2ヘッダ30cは、上流側多穴管から導入された冷媒を、下流側多穴管に導入する。
【0053】
第2ヘッダ30cは、片側が解放された空洞となっている。具体的には、第2ヘッダ30cは、-X側の面に開口部30ch1、開口部30ch2及び開口部30ch3を有する。第2ヘッダ30cの解放側には、第1多穴管30b1、第2多穴管30b2及び第3多穴管30b3の他端が挿入され、固定される。具体的には、開口部30ch1には、第1多穴管30b1の他端が挿入され、固定される。開口部30ch2には、第2多穴管30b2の他端が挿入され、固定される。開口部30ch3には、第3多穴管30b3の他端が挿入され、固定される。第2ヘッダ30cと、第1多穴管30b1、第2多穴管30b2及び第3多穴管30b3とは例えばロウ付けにて固定され、水密を確保する。
【0054】
第2ヘッダ30cは、壁部30cDに、被設置対象、具体的には、電力変換装置5のケース52に固定される固定部30cfを備える。また、第2ヘッダ30cは、壁部30cBに、被設置対象、具体的には、電力変換装置5のケース52に固定される固定部30cgを備える。
【0055】
固定部30af及び固定部30cgは、固定部30afと同様の形状を有する。
【0056】
<第1ヘッダ30aの隔壁>
ここで、第1ヘッダ30aに設けられる隔壁について説明する。最初に、第1ヘッダ30aに設けられる隔壁の位置を決めるための条件について説明する。
【0057】
外部の冷却装置から冷却器30に導入される冷媒は、半導体パッケージ20から熱を吸収して冷却器30から導出される。よって、冷却器30を通流する冷媒は、導入された直後において一番温度が低く、徐々に熱を吸収して温度が高くなる。すなわち、上流側多穴管を流れる冷媒の温度より、下流側多穴管の冷媒の温度は高くなる。
【0058】
次に、第1ヘッダ30aに設けられる隔壁の位置をについて説明する。第1実施形態の半導体装置1では、第1多穴管30b1及び第2多穴管30b2が上流側多穴管、第3多穴管30b3が下流側多穴管となるように、第1ヘッダ30aの隔壁30awを形成する。
【0059】
図11図12は、第1実施形態の半導体装置1の断面図である。具体的には、図11は、半導体装置1を第1ヘッダ30a部分で、X軸方向に垂直な面で切断した断面図である。具体的には、図12は、半導体装置1をZ方向の中心部分で、Z軸方向に垂直な面で切断した断面図である。なお、半導体パッケージ20については、内部の詳細は省略して、一様な断面として示している。
【0060】
第1実施形態の半導体装置1では、第1多穴管30b1及び第2多穴管30b2が上流側多穴管、第3多穴管30b3が下流側多穴管となるように、隔壁30awを設ける。隔壁30awは、X軸方向において、第1ヘッダ30aの壁部30aFから壁部30aEまで延在する。
【0061】
第1多穴管30b1及び第2多穴管30b2は、壁部30aAの一部、壁部30aB、壁部30aCの一部及び隔壁30awと、壁部30aE及び壁部30aFと、に囲まれる空間SPinに連通する。空間SPinには、冷媒導入口30ap1からの冷媒が導入される。空間SPinに導入された冷媒は、空間SPinに連通する第1多穴管30b1及び第2多穴管30b2から導出される。
【0062】
一方、第3多穴管30b3は、壁部30aAの一部、隔壁30aw、壁部30aCの一部及び壁部30aDと、壁部30aE及び壁部30aFと、に囲まれる空間SPoutに連通する。空間SPoutに連通する第3多穴管30b3から冷媒が導入される。空間SPoutに導入された冷媒は、冷媒導出口30ap2から導出される。
【0063】
<熱による変形について>
第1実施形態に係る半導体装置1の半導体パッケージ20が発熱した際の影響について説明する。図13及び図14は、第1実施形態に係る半導体装置1の半導体パッケージ20が発熱した際の影響について説明する図である。
【0064】
図13は、半導体装置1を組み立てるときの半導体装置1を側面から見た図である。半導体装置1を組み立てる際には、半導体装置1の温度は常温、例えば25℃、である。半導体装置1を組み立てる際には、第1多穴管30b1、第2多穴管30b2及び第3多穴管30b3は、略平行になっている。
【0065】
第1ヘッダ30aは、前述のように、壁部30aDに設けられた固定部30afと、壁部30aBに設けられた固定部30agにより固定される。なお、壁部30aD及び壁部30aBは、第1多穴管30b1、第2多穴管30b2及び第3多穴管30b3が並んで設けられる第1方向であるY方向に延在する。また、壁部30aD及び壁部30aBは、第1多穴管30b1、第2多穴管30b2及び第3多穴管30b3の流路が延びる第2方向であるX方向に延在する。すなわち、壁部30aD及び壁部30aBは、第1方向及び第2方向に延在する。
【0066】
半導体装置1が動作すると、半導体パッケージ20は発熱する。半導体パッケージ20が発熱すると、第1多穴管30b1、第2多穴管30b2及び第3多穴管30b3が半導体パッケージ20によって加熱される。常温で第1ヘッダ30a及び第2ヘッダ30cが固定された状態から、第1多穴管30b1、第2多穴管30b2及び第3多穴管30b3が加熱されると、第1多穴管30b1、第2多穴管30b2及び第3多穴管30b3はそれぞれ熱膨張する。
【0067】
例えば、第1多穴管30b1、第2多穴管30b2及び第3多穴管30b3のそれぞれは、両端固定されていない場合には、多穴管の長さL[m]と冷却管材料の線膨張係数α[1/K]と温度差ΔT[K]に比例して熱膨張する。すなわち、第1多穴管30b1、第2多穴管30b2及び第3多穴管30b3の熱変形量(長さ方向)δは、α×L×ΔTとなる。例えば、多穴管がアルミニウム材により構成される場合は、アルミニウム材の線膨張係数23.8×10-6[1/K]であることから、多穴管の長さ0.15[m]の場合、0.2[mm]の熱膨張が発生する。
【0068】
半導体装置1において、熱膨張により多穴管が伸びると半導体パッケージ20に負荷がかかるため、伸びを吸収したり、伸びないように両端で固定したりする。伸びの吸収は熱冷媒が水などの液体の場合漏れを防ぐ必要があるため、密閉と伸びの両立できる機構を設ける必要がある。一方、両端を固定されると、多穴管は長手方向には伸びにくくなるが、第1ヘッダ30a及び第2ヘッダ30cに力がかかる。
【0069】
本実施形態に係る半導体装置1の冷却器30は、第1ヘッダ30a及び第2ヘッダ30cの側面で被設置対象に固定される。第1ヘッダ30a及び第2ヘッダ30cがそれぞれの側面で固定されると、図14のように、第1ヘッダ30a及び第2ヘッダ30cのそれぞれのY軸方向の中央部が広がるようになり、第1多穴管30b1及び第3多穴管30b3は、矢印Aの向きに湾曲する。
【0070】
図15は、第1実施形態に係る半導体装置1において半導体パッケージ20が発熱した際の冷却器30の変形をシミュレーションした結果を示す図である。
【0071】
第1多穴管30b1及び第3多穴管30b3が矢印Aの方向に変形すると、多穴管同士の間隔が小さくなる方に変形する。したがって、多穴管と半導体パッケージ20とのギャップを小さくすることができる。
【0072】
ここで比較のために、第1ヘッダ30a及び第2ヘッダ30cを底面、例えば、壁部30aCで固定した場合について、半導体パッケージ20が発熱した際の影響を説明する。
【0073】
図17は、比較例の半導体装置において半導体パッケージが発熱した際の影響について説明する図である。比較例の半導体装置では、多穴管が熱膨張することによって、第1ヘッダ及び第2ヘッダが矢印Bの向きに押し広げられる。したがって、多穴管は矢印Cの向きに弓なりに反る。したがって、多穴管と半導体パッケージが離れる。多穴管と半導体パッケージが離れるため、多穴管と半導体パッケージとの間の熱抵抗を増大し、半導体パッケージを冷却する効率が低下する。
【0074】
第1実施形態に係る半導体装置1は、図14のように、第1ヘッダ30a及び第2ヘッダ30cのそれぞれのY軸方向の中央部が広がるようになり、第1多穴管30b1及び第3多穴管30b3は、矢印Aの向きに湾曲する。したがって、多穴管と半導体パッケージ20とのギャップを小さくして、多穴管と半導体パッケージ20との間の熱抵抗が増加することを防止できる。多穴管と半導体パッケージ20との間の熱抵抗が増加することを防止することにより、半導体パッケージ20を動作させた状態でも半導体パッケージ20を冷却する効率を維持できる。
【0075】
<<第2実施形態>>
≪半導体装置101≫
図16は、第2実施形態に係る半導体装置の一例である半導体装置101の斜視図である。
【0076】
半導体装置101は、複数の半導体パッケージ20と、冷却器130と、を備える。冷却器130は、第1ヘッダ130aと、複数の多穴管130bと、第2ヘッダ130cと、を備える。
【0077】
第1ヘッダ130aは、固定部130af及び固定部130agを備える。第2ヘッダ130cは、固定部130cf及び固定部130cfを備える。固定部130af及び固定部130agは、X軸方向の-X向きに被設置対象に取り付ける。また、固定部130cf及び固定部130cgは、X軸方向の+X向きに被設置対象に取り付ける。
【0078】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0079】
1、101 半導体装置
5 電力変換装置
20、21、22、23、24、25、26 半導体パッケージ
30、130 冷却器
30a、130a 第1ヘッダ
30aB 壁部
30aD 壁部
30af、130af 固定部
30af1 第1板部
30af2 第2板部
30ag、130ag 固定部
30b1 第1多穴管
30b2 第2多穴管
30b3 第3多穴管
30bc 流路
30c、130c 第2ヘッダ
30cf、30cg、130cf、130cg 固定部
50 筐体
51 カバー
52 ケース
SPin 空間
SPout 空間
図1
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