(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022144960
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】樹脂成形方法、インサートフィルム、樹脂成形品
(51)【国際特許分類】
B29C 45/14 20060101AFI20220926BHJP
【FI】
B29C45/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021046177
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】000231361
【氏名又は名称】NISSHA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100158610
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 新吾
(74)【代理人】
【識別番号】100121120
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 尚
(72)【発明者】
【氏名】瀧西 徳勲
(72)【発明者】
【氏名】安江 彩
(72)【発明者】
【氏名】東川 季裕
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AD08
4F206AD09
4F206AD20
4F206JA07
4F206JB12
4F206JB19
4F206JF05
(57)【要約】
【課題】樹脂成形品の意匠の品質を向上させる。
【解決手段】成形方法は、フィルム本体15とフィルム本体15の第1面15aに形成された配線17とを有する加飾フィルム11と、第1面15aにおいて配線17を覆うように設けられ配線17より柔らかく且つ塑性変形しやすい圧力吸収層13とを有するインサートフィルム7を準備する工程、インサートフィルム7を第1金型3及び第2金型5内に配置する工程、及びフィルム本体15の第2面15b側に溶融樹脂9Aを投入する工程を有している。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム本体と前記フィルム本体の第1面に形成された配線とを有する加飾フィルムと、前記第1面において前記配線を覆うように設けられ前記配線より柔らかく且つ塑性変形しやすい圧力吸収層とを有するインサートフィルムを準備する工程と、
前記インサートフィルムを金型内に配置する工程と、
前記フィルム本体の第2面側に又は前記圧力吸収層の前記フィルム本体と反対側の面側に溶融樹脂を投入する工程と、
を備えた成形方法。
【請求項2】
前記圧力吸収層の硬度は、前記配線の硬度の40%以下である、請求項1に記載の成形方法。
【請求項3】
前記圧力吸収層の塑性変形仕事量は、前記配線の塑性変形仕事量の2倍以上である、請求項1又は2に記載の成形方法。
【請求項4】
前記圧力吸収層の厚みは、前記配線の厚みの2倍以上である、請求項1~3のいずれかに記載の成形方法。
【請求項5】
フィルム本体と前記フィルム本体の第1面に形成された配線とを有する加飾フィルムと、
前記フィルム本体の前記第1面に設けられ、前記フィルム本体の第2面側で樹脂成形された後に前記フィルム本体から剥がされる圧力吸収層と、
を備えたインサートフィルム。
【請求項6】
前記圧力吸収層の硬度は、前記配線の硬度の40%以下である、請求項5に記載のインサートフィルム。
【請求項7】
前記圧力吸収層の塑性変形仕事量は、前記配線の塑性変形仕事量の2倍以上である、請求項5又は6に記載のインサートフィルム。
【請求項8】
前記圧力吸収層の厚みは、前記配線の厚みの2倍以上である、請求項5~7のいずれかに記載のインサートフィルム。
【請求項9】
成形樹脂と、
前記成形樹脂に結合されたフィルム本体と、前記フィルム本体の前記成形樹脂と反対側面に形成された配線と、を備え、
前記配線は、前記フィルム本体にめり込んでいない、樹脂成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形方法に関し、特に、樹脂加飾用フィルムを成形樹脂にインサートして一体成形する樹脂成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
物品の表面を装飾する方法として、インサート成形法がある。インサート成形法とは、基体シート上に図柄層を形成したインサートフィルムを射出成形用金型内に供給し、溶融樹脂の射出成形とインサートフィルムの成形を金型内で同時に行うことでインサートフィルムを成形品に一体的に貼り付ける方法である(例えば、特許文献1を参照)。なお、このようにインサートフィルムの成形も同時に行われる場合は、インモールド成形とも言われる。
インサート成形法は、金型内で成形と同時にインサートフィルムの貼り付けができるので、製造工程を非常に簡略化できる。また、溶融樹脂の射出圧力によりインサートフィルムが伸ばされて金型に追随するので、3次元形状の成形品を容易に得ることができるといった利点がある。
インサートフィルムは、例えば、基体シートと、その片側面(樹脂側面)に形成された図柄層とを有している。さらに、基体シートの図柄層と反対側に配線パターンが設けられたものも知られている。
物品の表面を修飾する他の方法として、フィルムを賦形してから金型に配置して、その後に溶融樹脂の射出成形を行うインサート成形法も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の成形方法では、射出成形において、フィルムが金型コア側に配置され、成形樹脂が金型キャビティ側に配置される。そして、樹脂圧によって、フィルムにある配線パターンが金型コア面に押しつけられ、その結果、配線パターンが膜厚分だけフィルムにめり込んでしまう。これにより、一体成形された樹脂成形品を意匠面側(配線パターンと反対側)から見た場合に、配線パターンが目視できてしまう。つまり、樹脂成形品の意匠の品質が低いという問題がある。
【0005】
本発明の課題は、樹脂成形品の意匠の品質を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
【0007】
本発明の一見地に係る成形方法は、下記の工程を備えている。
◎フィルム本体とフィルム本体の第1面に形成された配線とを有する加飾フィルムと、第1面において配線を覆うように設けられ配線より柔らかく且つ塑性変形しやすい圧力吸収層とを有するインサートフィルムを準備する工程。
◎インサートフィルムを金型内に配置する工程。
◎フィルム本体の第2面側に又は圧力吸収層のフィルム本体と反対側の面側に溶融樹脂を投入する工程。
この方法では、溶融樹脂を投入する工程において、樹脂圧が発生しても、配線はフィルム本体にではなく圧力吸収層にめり込む(つまり、圧力吸収層が変形する)。したがって、樹脂成形品を配線と反対側から見たときに、配線が目視されることはない。つまり、樹脂成形品の意匠の品質が向上する。
【0008】
圧力吸収層の硬度は、配線の硬度の40%以下であってもよい。
この方法では、配線がフィルム本体にめり込みにくくなる。
【0009】
圧力吸収層の塑性変形仕事量は、配線の塑性変形仕事量の2倍以上であってもよい。
この方法では、配線がフィルム本体にめり込みにくくなる。
【0010】
圧力吸収層の厚みは、配線の厚みの2倍以上であってもよい。
この方法では、配線がフィルム本体にめり込みにくくなる。
【0011】
本発明の他の見地に係るインサートフィルムは、加飾フィルムと、圧力吸収層とを備えている。
加飾フィルムは、フィルム本体と、フィルム本体の第1面に形成された配線とを有している。
圧力吸収層は、フィルム本体の第1面に設けられており、フィルム本体の第2面側で樹脂成形が行われた後にフィルム本体から剥がされる。
このインサートフィルムでは、フィルムの第2面側に溶融樹脂を投入する工程において、樹脂圧が発生しても、配線は、フィルム本体にではなく、圧力吸収層にめり込む(つまり、圧力吸収層が変形する)。したがって、樹脂成形品を配線と反対側から見たときに、配線が目視されることはない。つまり、樹脂成形品の意匠の品質が向上する。
【0012】
本発明のさらに他の見地に係る樹脂成形品は、成形樹脂と、成形樹脂に結合されたフィルム本体と、フィルム本体の成形樹脂と反対側面に形成された配線と、を備えている。配線は、フィルム本体にめり込んでいない。
この樹脂成形品では、配線がフィルム本体にめり込んでいない。したがって、樹脂成形品を配線と反対側から見たときに、配線が目視されることはない。つまり、樹脂成形品の意匠の品質が向上する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る成形方法では、樹脂成形品の意匠の品質が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態に係る樹脂成形品の模式的平面図。
【
図9】第2実施形態に係る樹脂成形品の製造工程を示す模式的断面図。
【
図10】第3実施形態に係る樹脂成形品の製造工程を示す模式的断面図。
【
図11】第4実施形態に係る樹脂成形品の製造工程を示す模式的断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1.第1実施形態
(1)樹脂成形品の基本構成
図1及び
図2を用いて、本発明の一実施形態としての樹脂成形品1を説明する。
図1は、第1実施形態の樹脂成形品の模式的平面図である。
図2は、樹脂成形品の模式的断面図である。
【0016】
樹脂成形品1は、この実施形態では、自動車の前面に装着されるエンブレムとしての電磁波透過性カバーである。電磁波透過性カバーは、ミリ波レーダの前側に配置される。
【0017】
樹脂成形品1は、成形樹脂9を有している。成形樹脂9は、着色又は透明である。
着色樹脂部材は、例えば、黒色であり、凹凸形状つまり立体的な模様形状を有している。着色樹脂部材は、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合合成樹脂)、AES(アクリロニトリル・エチレン・スチレン共重合合成樹脂)、ASA(アクリロニトリル・スチレン・アクリレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、有色のPC(ポリカーボネート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の合成樹脂、又はこれらの複合樹脂からなる。
透明性樹脂部材は、例えば、無色のPCやPMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂)等の透明合成樹脂によって形成されている。
【0018】
樹脂成形品1は、加飾フィルム11を有している。加飾フィルム11は、フィルム本体15を有している。フィルム本体15は、例えば熱可塑性樹脂製であり、第1面15aと第2面15bとを有している。
フィルム本体15の第2面15bには、成形樹脂9が一体成形されている。加飾フィルム11は、フィルム本体15の第1面15aに形成された配線17を有している。つまり、配線17は、フィルム本体15の成形樹脂9と反対側の面に設けられている。
配線17は、例えば、銀が用いられる。配線17の厚みは、例えば、5~10μmである。
【0019】
本実施形態では、配線17は、透明性ヒータとして機能する。
配線17によって、樹脂成形品1の表面に雪や氷が付着するのを防止できる。さらに、配線17によって、樹脂成形品1の表面に付着した雪や氷を速やかに融解できる。
配線17は、交差するパターンを有している。ただし、配線17は、縦、横、斜めのいずれであってもよい。配線は、ヒータ以外の機能を実現するものでもよい。例えば、配線は、アンテナやセンサを実現してもよい。
【0020】
加飾フィルム11は、フィルム本体15の第2面15bに形成された絵柄層19を有している。絵柄層19によって、金属調意匠又は他の模様からなる意匠を実現できる。
この実施形態では、配線17は、フィルム本体15にめり込んでいない。したがって、樹脂成形品1を配線17と反対側から見たときに、配線17が目視されることはない。つまり、樹脂成形品1の意匠の品質が向上する。
配線17がフィルム本体15にめり込んでいないとは、めり込んだ量がゼロ又は配線17の厚みの1/10未満であることを意味する。
【0021】
(2)インサートフィルム
図3を用いて、インサートフィルム7を説明する。
図3は、樹脂成形品の製造工程を示す模式的断面図である。
インサートフィルム7は、あらかじめ賦形された状態で金型のキャビティ内にセットされ、金型のキャビティの形状の成形体が形成されると同時に、インサートフィルム成形体に一体化される(後述)。つまり、インサートフィルム7は、成形同時加飾による加飾成形品の成形に用いられる。
【0022】
インサートフィルム7は、加飾フィルム11(前述)と、圧力吸収層13とを有している。
圧力吸収層13は、フィルム本体15の第1面15aにおいて配線17を覆うように設けられている。圧力吸収層13は、配線17より柔らかく且つ塑性変形しやすい。
圧力吸収層13の硬度は、配線17の硬度の40%以下であることが好ましい。一例として、Agの硬さが50N/mm2である場合に、圧力吸収層の硬さは20N/mm2以下であることが好ましい。また、圧力吸収層13の硬度は、配線17の硬度の30%以下、20%以下であることがさらに好ましい。
【0023】
圧力吸収層13の塑性変形仕事量は、配線17の塑性変形仕事量の2倍以上であることが好ましく、2.5倍以上、3倍以上であることがさらに好ましい。また、塑性変形の最大値は、3×10-9Nm以上であることが好ましく、5×10-9Nm以上であることがさらに好ましい。
圧力吸収層13の厚みは、配線17の厚みの2倍以上でることが好ましく、2.5倍以上、3倍以上であることが好ましい。
なお、上記複数の特徴は全て満たされることが最も好ましいが、少なくとも圧力吸収層13が配線17より柔らかく且つ塑性変形しやすければ、本実施形態では優れた効果が得られる。また、上記複数の特徴の一つだけであっても、従来に比べて優れた効果が得られる。
【0024】
圧力吸収層13の材料は、例えば、アクリル系、ウレタンアクリル系などの樹脂であり、例えばウレタン系アクリレートが好ましい。また、伸びや柔らかさのあるアクリル系のUV硬化インクが好ましい。
【0025】
(3)樹脂成形品の製造方法
図3~
図5を用いて、樹脂成形品1の製造方法を説明する。
図4及び
図5は、樹脂成形品の製造工程を示す模式的断面図である。
【0026】
図3に示すように、第1金型3と第2金型5を用いる。第1金型3は、固定金型であり、対向側に凹部(図示せず)を有している。第2金型5は、可動金型であり、対向側が概ね平面である。
最初に、インサートフィルム7を第1金型3にセットする。続いて、インサートフィルム7が、第1金型3側に吸引される。
【0027】
次に、
図3及び
図4に示すように、ゲート(図示せず)から第1金型3側に溶融樹脂9Aを射出し、それによりインサートフィルム7を溶融樹脂9Aに一体成形する。このとき、樹脂圧が発生しても、配線17は、フィルム本体15にではなく、圧力吸収層13にめり込む(つまり、圧力吸収層13が変形する)。これは、前述のように、圧力吸収層13が配線17より柔らかく且つ塑性変形しやすいからである。
【0028】
次に、
図5に示すように、第1金型3及び第2金型5から、一体成形された成形樹脂9及びインサートフィルム7が取り出される。
さらに、インサートフィルム7の圧力吸収層13が、フィルム本体15から剥がされる。その結果、
図2に示すように、配線17が露出した状態の樹脂成形品1が得られる。
その後、一例として、樹脂成形品1のインサートフィルム7側に樹脂成形が行われ、それにより配線17が覆われる。また、配線17はオーバーコーティングによって覆われてもよい。
【0029】
(4)実施例
本願出願人は、圧力吸収層として適した材料からなる実施例1~3の荷重-変位特性を実験した。実験の結果は、下記の実施例1~3として説明される。
実験に用いた硬度計は、例えば、超微小押し込み硬さ試験機ENT-2100((株)エリオニクス)である。測定方法として、ダイヤモンドでできた圧子を微小荷重で試料に押し込み、その際の押し込み深さ・くぼみの面積を高分解能の変位計で連続測定することにより試料表面の力学的特性を評価した。本装置は荷重負荷機構である定点荷重方式により、圧子の動きと向きが試料表面に対して垂直方向に拘束され、また負荷機構部の熱膨張や動特性による荷重不安定性が抑えられて正確な荷重負荷を測定する。また規格ISO14577-1に準拠した解析手法を採用している。
【0030】
(4-1)実施例1
図6を用いて、実施例1の荷重-変位特性を説明する。
図6は、実施例1の荷重-変位特性を示すグラフである。
配線(銀)と実施例1(UV-3、ウレタン系アクリレート)の変位に対する荷重の変化を測定した。縦軸が、圧子をサンプルに押し込む荷重である。横軸が、圧子がサンプルに進入する深さの変位である。横軸と荷重変位曲線との間の面積がサンプルの変形の割合を示す。
実施例1に対して0から3mN(最大試験力)まで負荷を増加し(荷重印加工程)、次に3mNから0まで荷重を減らし(徐荷工程)、その間の圧子のサンプルへの進入量を測定した。
【0031】
実施例1の最大押し込み深さは、2.73μmであった。
実施例1のマルテンス硬度は、17.48N/mm2であった。
実施例1の塑性変形の最大値は、3.31×10-9Nmであった。
【0032】
実施例1を圧力吸収層13として用いた場合、樹脂成形品1において、樹脂9側から配線17は見えなかった。
【0033】
(4-2)実施例2
図7を用いて、実施例2の荷重-変位特性を説明する。
図7は、実施例2の荷重-変位特性を示すグラフである。
配線(銀)と実施例2(GEL-3、ウレタン系アクリレート)の変位に対する荷重の変化を測定した。
実施例2の最大押し込み深さは、8.00μmであった。
実施例2のマルテンス硬度は、1.894N/mm
2であった。
実施例2の塑性変形の最大値は、3.19×10
-9Nmであった。
【0034】
実施例2を圧力吸収層13として用いた場合、樹脂成形品1において、樹脂9側から配線17は見えなかった。
【0035】
(4-3)実施例3
図8を用いて、実施例3の荷重-変位特性を説明する。
図8は、実施例3の荷重-変位特性を示すグラフである。
配線(銀)と実施例3(Y1962-3、アクリル系樹脂)の変位に対する荷重の変化を測定した。
【0036】
実施例3の最大押し込み深さは、6.19μmであった。
実施例3のマルテンス硬度は、3.49N/mm2であった。
実施例3の塑性変形の最大値は、8.42×10-9Nmであった。
【0037】
実施例3を圧力吸収層13として用いた場合、樹脂成形品1において、樹脂9側から配線17は見えなかった。
【0038】
2.第2実施形態
第1実施形態では一体成形された成形樹脂9及びインサートフィルム7が金型から取り出された後に、圧力吸収層13がフィルム本体15から剥がされていた。しかし、圧力吸収層を剥がさない方法及び樹脂成形品も実現可能である。
図9を用いて、そのような実施例を第2実施形態として説明する。
図9は、第2実施形態に係る樹脂成形品の製造工程を示す模式的断面図である。
【0039】
最初に、第1金型(図示せず)及び第2金型(図示せず)から、一体成形された成形樹脂9及びインサートフィルム7が取り出される。
次に、圧力吸収層13を残したまま、圧力吸収層13側に成形樹脂21が接着される。この場合、圧力吸収層13が接着剤として機能する。この結果、樹脂成形品1Aが得られる。
【0040】
3.第3実施形態
図10を用いて、第2実施形態の変形例として、第3実施形態を説明する。
図10は、第3実施形態に係る樹脂成形品の製造工程を示す模式的断面図である。
最初に、第1金型(図示せず)及び第2金型(図示せず)から、一体成形された成形樹脂9及びインサートフィルム7が取り出される。
次に、圧力吸収層13を残したまま、接着層23を介して成形樹脂21が接着される。これは、圧力吸収層13に接着機能がない又は不足する場合に行われる。この結果、樹脂成形品1Bが得られる。
【0041】
4.第4実施形態
第1実施形態では加飾フィルムはフィルム本体15の各面に配線17及び絵柄層19がそれぞれ形成されており、溶融樹脂はフィルム本体15側に供給されていたが、上記の構成及び動作は変更可能である。
図11を用いて、そのような実施例を第4実施形態として説明する。
図11は、第4実施形態に係る樹脂成形品の製造工程を示す模式的断面図である。
加飾フィルム11Cは、フィルム本体15Cと、絵柄層19Cと、配線17Cとを有している。絵柄層19C、配線17Cは、この順で、フィルム本体15C上に印刷されている。これにより、配線17Cは絵柄層19Cによって表側に隠されている。なお、フィルム本体15Cは、PETやPCなどである。
インサートフィルム7Cは、配線17C側に圧力吸収層13Cを有している。
【0042】
本実施形態では、フィルム本体15Cが金型3Cに支持された状態で、圧力吸収層13C側の面(つまり、圧力吸収層13Cの加飾フィルム11Cと反対側の面)側に溶融樹脂が投入され、それにより成形樹脂9Cが圧力吸収層13Cに一体成形される。この結果、樹脂成形品1Cが得られる。
従来の構成であれば、一体成形時に成形圧力により配線17Cが絵柄層19C側に直接めり込み、さらに、フィルム本体15Cが柔らかいので絵柄層19Cのゆがみが配線見えとして成形後にも残ってしまうおそれがあった。
本実施形態では、圧力吸収層13Cを設けることで、一体成形時に配線17Cが圧力吸収層13C側にめり込む。その結果、第1~第3実施形態と同様に、配線見えが防止される。
【0043】
5.他の実施形態
以上、本発明の複数の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施例及び変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
樹脂成型品は、電磁波透過カバーに限定されず、RFIDなどのアンテナ、センサ、LEDやサーミスタなどを実装させたフィルムセンサでもよい。
成形方法は、Agなどの配線厚みを部分的に増す必要がある箇所(実装部品の接点や、コネクターピンとAg配線の接点部など)の配線跡を消すために用いられてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、樹脂加飾用フィルムを成形樹脂にインサートして一体成形する樹脂成形方法に広く適用できる。
【符号の説明】
【0045】
1 :樹脂成形品
3 :第1金型
5 :第2金型
7 :インサートフィルム
9 :成形樹脂
9A :溶融樹脂
11 :加飾フィルム
13 :圧力吸収層
15 :フィルム本体
15a :第1面
15b :第2面
17 :配線
19 :絵柄層