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  • 特開-インキ補充装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022144979
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】インキ補充装置
(51)【国際特許分類】
   B43K 11/00 20060101AFI20220926BHJP
【FI】
B43K11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021046207
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】390017891
【氏名又は名称】シヤチハタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078101
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 達雄
(74)【代理人】
【識別番号】100085523
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 文夫
(74)【代理人】
【識別番号】230117259
【弁護士】
【氏名又は名称】綿貫 敬典
(72)【発明者】
【氏名】影山 伴廣
(57)【要約】
【課題】カートリッジへのインキ補充後のインキ漏れを抑制することが可能なインキ補充装置を提供すること。
【解決手段】インキ注入口に、弾性体に付勢される弁体44と、前記弁体と当接してインキ注入口を閉塞する弁座とを備えたカートリッジ41にインキを補充することが可能なインキ補充装置1であって、インキタンク2と、下端にインキ吐出口が設けられた補充用ノズル3と、補充用ノズル3に内蔵され先端を補充用ノズル3から突出させたノズル弁33と、前記ノズル弁33をインキ吐出口方向に付勢する弾性体と、前記ノズル弁33と当接してインキ吐出口を閉塞するノズル側弁座とを備え、補充用ノズル3側の弾性体のばね定数が、カートリッジ41側の弾性体のばね定数よりも大きいことを特徴とするインキ補充装置1とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インキ注入口に、弾性体に付勢される弁体と、前記弁体と当接してインキ注入口を閉塞する弁座とを備えたカートリッジにインキを補充することが可能なインキ補充装置であって、
インキタンクと、下端にインキ吐出口が設けられた補充用ノズルと、
補充用ノズルに内蔵され先端を補充用ノズルから突出させたノズル弁と、
前記ノズル弁をインキ吐出口方向に付勢する弾性体と、
前記ノズル弁と当接してインキ吐出口を閉塞するノズル側弁座とを備え、
補充用ノズル側の弾性体のばね定数が、カートリッジ側の弾性体のばね定数よりも大きいことを特徴とするインキ補充装置。
【請求項2】
補充用ノズルとカートリッジが接近するときには前記ノズル弁が前記弁体に押し付けられてカートリッジ側の弁が先行して開き、補充用ノズルとカートリッジが離れるときには補充用ノズル側の弁が先行して閉じることを特徴とする請求項1に記載のインキ補充装置。
【請求項3】
補充用ノズルの先端部にスリット状のインキ流路が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のインキ補充装置。
【請求項4】
前記ノズル側弁座が補充用ノズルの先端部に設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のインキ補充装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カートリッジへのインキ補充装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば筆記具に設けられるようなインキを貯蔵するカートリッジが知られている。筆記具に設けられるカートリッジとしては、インキを使い切ると筆記具を廃棄せざるを得ない使い捨てのもののほかに、インキが空になった際に新しいカートリッジと交換することで筆記具を継続使用可能としたもの、または詰め替え用インキを補充して繰り返し使用できるもの等がある。カートリッジに詰め替え用インキを繰り返し補充可能とすることは、資源保護の観点だけでなく、筆記具を頻回使用する場合は結果的にコストを削減できるので好ましい。
【0003】
カートリッジにインキ等を補充する装置や方法は種々のものが公知である。例えば、特許文献1に記載されているように、流出開口に弁を備えた容器から、ノズル状の通路を経由して、流入開口に弁を備えたカートリッジにインキを補充する装置が知られている。この装置では、容器側とカートリッジ側の弁の開放が同時に行われ、また、弁の閉塞も同時に行われる。そのため、カートリッジにインキが補充されてこれらの弁が閉塞されたあとに、ノズル状の通路に残留したインキが外部に垂れるおそれがあった。このような漏れがあるとカートリッジやその周囲を汚してしまうことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表平9-500339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本件の発明者は、この点について鋭意検討することにより、解決を試みた。本発明が解決しようとする課題は、カートリッジへのインキ補充後のインキ漏れを抑制することが可能なインキ補充装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、インキ注入口に、弾性体に付勢される弁体と、前記弁体と当接してインキ注入口を閉塞する弁座とを備えたカートリッジにインキを補充することが可能なインキ補充装置であって、インキタンクと、下端にインキ吐出口が設けられた補充用ノズルと、補充用ノズルに内蔵され先端を補充用ノズルから突出させたノズル弁と、前記ノズル弁をインキ吐出口方向に付勢する弾性体と、前記ノズル弁と当接してインキ吐出口を閉塞するノズル側弁座とを備え、補充用ノズル側の弾性体のばね定数が、カートリッジ側の弾性体のばね定数よりも大きいことを特徴とするインキ補充装置とする。
【0007】
補充用ノズルとカートリッジが接近するときには前記ノズル弁が前記弁体に押し付けられてカートリッジ側の弁が先行して開き、補充用ノズルとカートリッジが離れるときには補充用ノズル側の弁が先行して閉じることが好ましい。
【0008】
補充用ノズルの先端部にスリット状のインキ流路が形成されていることが好ましい。また、前記ノズル側弁座が補充用ノズルの先端部に設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、カートリッジへのインキ補充後のインキ漏れを抑制することが可能なインキ補充装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態のインキ補充装置の斜視図である。
図2】実施形態のインキ補充装置の断面図である。
図3】実施形態の補充用ノズル及びカートリッジを表す斜視図である。
図4】補充用ノズルがカートリッジに差し込まれておらず、カートリッジ側及び補充用ノズル側の弁がどちらも閉塞されている状態を示す断面図である。
図5】カートリッジ側の弁が開放されていて、補充用ノズル側の弁が閉塞されている状態を示す断面図である。
図6】カートリッジ側及び補充用ノズル側の弁がどちらも開放された状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に発明を実施するための形態を示す。図1図2に示されるように、本実施形態のインキ補充装置1は、筐体11と、筐体11内の上部に設置されるインキタンク2と、インキタンク2に接続される補充用ノズル3とを備え、インキカートリッジにインキを補充することができる装置である。実施形態では、インキを消費するマーカーペンなどの筆記具4に内蔵されるカートリッジ41にインキを補充する。
【0012】
図1図2に示されるように、実施形態の筐体11の表側の面に取付口12が設けられている。筐体11の内部には、取付口12に面する空間である取付凹部13が形成されており、筐体11の外部から取付凹部13内に筆記具4を取り付けることができる。図2に示されるように、実施形態で用いられる筆記具4はペン先の反対側の位置にカートリッジ41が設けられていて、ペン先を下側に、カートリッジ41を上側にする向きで取付凹部13に配置される。インキ補充装置1に取り付けられた筆記具4は取付凹部13内の筆記具保持部15によって保持される。
【0013】
図2図3に示されるように、インキタンク2の底面に、下端にインキ吐出口31を備えた補充用ノズル3が接続されている。取付凹部13に配置された筆記具4は補充用ノズル3の真下に位置し、補充用ノズル3とカートリッジ41とが対向する。
【0014】
なお、図2に示されるように、インキ補充装置1には、カートリッジ41内のインキ残量を検知可能な残量センサ14を設けることができる。残量センサ14は光学式センサであることが好ましい。このような残量センサ14により、カートリッジ41内のインキ量を検出し、インキの補充量を制御することができる。なお、残量センサ14を設けない場合は、カートリッジ内のインキ残量が目視で確認できるような構造とすることが好ましい。
【0015】
取付凹部13に配置された筆記具4のカートリッジ41内のインキ残量が設定値以下の場合、筆記具保持部15に接続された図示しないモータが作動して筆記具保持部15が上昇し、カートリッジ41に補充用ノズル3が差し込まれる。なお、筆記具4を上昇させるのではなく、補充用ノズル3を下降させてもよい。また、モータを設けず手動で操作レバーを操作することによって補充用ノズル3をカートリッジ41に差し込んでもよい。
【0016】
(補充用ノズル)
補充用ノズル3について説明する。図4に示されるように、インキタンク2の底面に接続される補充用ノズル3は、下端にインキ吐出口31を備えている。実施形態の補充用ノズル3は上面と下面が開口した中空の筒状であって、その内側にはノズル側弁室32が形成されている。
【0017】
ノズル側弁室32の内部には、ノズル弁33と、ノズル弁33をインキ吐出口31方向に付勢する弾性体であるノズルばね34とが配置されている。実施形態では、ノズル弁33の外表面に、径方向外側に突出するようにばね受け33aが設けられ、ノズル弁33の外側には、ばね受け33aを上方から押圧するようにノズルばね34が設けられている。ノズル弁33の先端は補充用ノズル3のインキ吐出口31から外側へ突出している。
【0018】
補充用ノズル3の先端部近傍の内面には、ノズル弁33と当接してインキ吐出口31を閉塞するノズル側弁座35が形成されている。ノズルばね34の弾性力は、常時ノズル弁33をノズル側弁座35に押圧するように作用しており、インキ吐出口31はノズル弁33とノズル側弁座35とによって閉塞された状態にある。なお、補充用ノズル3の内壁に付着したインキがノズル外部に漏れることを抑制するために、ノズル側弁座35はインキ吐出口31に近い位置に設けることが好ましい。
【0019】
(カートリッジ)
次に、カートリッジ41について説明する。実施形態で用いられる筆記具4は、例えばインクを入れるカートリッジ41を内蔵したホワイトボード用マーカーとすることができる。筆記具4のカートリッジ41は、図3及び図4に示されるように、ペン先側とは反対側の端部にインキ注入口42を備えている。
【0020】
インキ注入口42は、インキ吐出口31と同様に、弁機構によって開閉可能となっている。実施形態のカートリッジ41には、インキ注入口42からカートリッジ41内部に向けて凹状にくぼむカートリッジ側弁室43が形成されている。カートリッジ側弁室43の底部には、図示しないインキ流通孔が設けられていて、カートリッジ側弁室43に注入されたインキはインキ流通孔からカートリッジ41内に流下する。
【0021】
カートリッジ側弁室43内には、ボール型の弁体44と、弁体44をインキ注入口42方向に付勢する弾性体であるばね45とが設けられ、弁体44はカートリッジ側弁室43内を軸方向に移動可能となっている。カートリッジ側弁室43の、インキ注入口42側の端部には、弁体44と当接してインキ注入口42を閉塞するカートリッジ側弁座46が形成されている。このように、実施形態のインキ注入口42に設けられた弁機構はボールスプリング式であるが、このほかの機構を採用することもできる。
【0022】
(各弾性体の硬さの違いについて)
本発明のインキ補充装置1では、補充用ノズル3側の弁機構を構成する弾性体であるノズルばね34と、カートリッジ41側の弁機構を構成する弾性体であるばね45との間で、ばねの硬さに違いを設けている。具体的には、ノズルばね34のばね定数を、ばね45のばね定数より大きくしてあり、そのため弁機構を閉塞する力は補充用ノズル3側の方がカートリッジ41側より大きくなっている。これにより、後述するとおり、補充用ノズル3側の弁とカートリッジ41側の弁とを時間差を持たせて開閉させることが可能となる。
【0023】
(弁が開く際の各弁機構の動作)
インキをカートリッジ41に補充する際の各弁機構の動作について説明する。まず、図5に示されるように、インキ補充前のカートリッジ41が上昇して補充用ノズル3とカートリッジ41が接近する。補充用ノズル3がカートリッジ側弁室43内に差し込まれると、補充用ノズル3の下端から外側に突出したノズル弁33の先端が、カートリッジ側の弁体44に当接する。ここで、前述したようにノズル弁33の方が弁体44より強い弾性力を持つばねによって付勢されているので、弁を閉塞する力は補充用ノズル3側の方がカートリッジ41側より強い。したがって、ノズル弁33が弁体44に押し付けられると、弁体44が押し下げられてカートリッジ側弁座46から離れ、カートリッジ41側のインキ注入口42の弁が先行して開く。
【0024】
その後、図6に示されるように、ノズル弁33によって押し下げられた弁体44が、カートリッジ側弁室43の底部に到達すると、弁体44はそれ以上進むことができず前記底部からの垂直抗力を受ける。これにより、弁体44がノズル弁33を押し返す力が大きくなり、ノズル弁33が上方に押し上げられてノズル側弁座35から離れ、補充用ノズル3側のインキ吐出口31の弁が開く。インキ吐出口31の弁が開いた位置でカートリッジ41が上昇を停止し、インクの充填が開始される。
【0025】
(インキ流路について)
補充用ノズル3の先端部には、側壁の一部にスリット36が形成されている。補充用ノズル3側のインキ吐出口31の弁が開くと、インキタンク2内に貯蔵されたインキがノズル側弁室32内を通り、インキ吐出口31から吐出され、スリット36を通ってカートリッジ側弁室43に流入する。カートリッジ側弁室43に流入したインキは弁体44の周囲を伝って流下し、カートリッジ側弁室43の底部に設けられたインキ流通孔を通ってカートリッジ41内に充填される。なお、実施形態では、インキタンク2の下側に補充用ノズル3を配置し、インキが自重によって補充用ノズル3へ流れ込む構造としているが、インキタンク2と補充用ノズル3との間に送液ポンプを設けてインクを送る構造とすることもできる。
【0026】
(弁が閉じる際の各弁機構の動作)
インキが満量充填されカートリッジ41内のインキ残量が所定量以上となった後、両方の弁が閉じる際の各弁機構の動作について説明する。両方の弁が開放されていてインキが流下可能となっているときは、図6に示されるように、行き止まりに押し付けられてカートリッジ41からの垂直抗力を受ける弁体44と、硬いノズルばね34に付勢されるノズル弁33とが互いに押し合う力がつり合っていて、ノズル弁33はノズル側弁座35と当接しない位置で静止している。
【0027】
残量センサ14により、カートリッジ41内のインキが満量になったことを認識すると、モータが作動し補充用ノズル3とカートリッジ41が離れていく。カートリッジ41が所定位置に戻るために下降し始めると、カートリッジ側弁室43の底部が弁体44を押し返す力が弱まる。前述したように、ノズルばね34がノズル弁33を押し下げる力の方が、ばね45が弁体44を押し上げる力より強いので、弁室43底部からの垂直抗力が弱まれば、持ち上げられていたノズル弁33は下降してノズル側弁座35と当接する位置に戻る。このようにして図5に示される状態となり、まず補充用ノズル3側の弁が先行して閉塞される。
【0028】
その後、補充用ノズル3側の弁が閉じられた状態のままカートリッジ41が下降し続けると、ばね45によって上向きに付勢される弁体44がカートリッジ側弁室43内を上昇する。そして、図4に示されるように、弁体44がカートリッジ側弁座43と当接してインキ注入口42の弁を閉塞し、補充用ノズル3がカートリッジ41から引き抜かれる。補充用ノズル3とカートリッジ41との間に所定の距離が空くとカートリッジ41が下降を停止し、筆記具4が取り出し可能となる。
【0029】
このように、ノズルばね34をカートリッジ側のばね45より硬くすることにより補充用ノズル側とカートリッジ側の弁を閉塞するタイミングが前後し、インキを供給する補充用ノズル3側の弁が先に閉じられるので、補充用ノズル3内にインキが残留することを抑制し、補充用ノズル3が引き抜かれた後のインキ漏れを抑制することが可能なインキ補充装置1とすることができる。
【0030】
以上、実施形態を例に挙げて本発明について説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、各種の態様とすることが可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 インキ補充装置
2 インキタンク
3 補充用ノズル
31 インキ吐出口
32 ノズル側弁室
33 ノズル弁
34 ノズルばね
35 ノズル側弁座
36 スリット
4 筆記具
41 カートリッジ
42 インキ注入口
43 カートリッジ側弁室
44 弁体
45 ばね
46 カートリッジ側弁座
図1
図2
図3
図4
図5
図6