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特開2022-145017遠赤外線センサ用パッケージ及びその製造方法、並びに、遠赤外線センサ及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022145017
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】遠赤外線センサ用パッケージ及びその製造方法、並びに、遠赤外線センサ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01J 1/02 20060101AFI20220926BHJP
   H01L 31/02 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
G01J1/02 C
H01L31/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021046259
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】000005038
【氏名又は名称】セイコーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】田家 良久
【テーマコード(参考)】
2G065
5F849
【Fターム(参考)】
2G065AA04
2G065AB02
2G065BA02
2G065BA36
2G065BA38
5F849AB02
5F849BA25
5F849BA28
5F849GA04
5F849JA05
5F849JA20
5F849LA01
5F849XB02
5F849XB32
(57)【要約】
【課題】低背化した構成でありながら光の入射範囲をより広角化でき、遠赤外線を効率よく受光可能な遠赤外線センサ用パッケージ及びその製造方法、並びに、遠赤外線センサ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】上面2a側にデバイス領域22と電極配置領域23a,23bとを有する第1基板2と、第1基板2の上面2a側に接合され、下面3a側にキャビティ部32と接合部31とを有するとともに、接合部31の外側において、第1基板2の電極配置領域23a,23bを露出させるように設けられる第2基板3とを備え、第2基板3は、該第2基板3の下面3a側及び該下面3a側とは反対側である上面3b側の両方の外縁において、上面3b側から下面3a側に向かうに従って、平面視で第2基板3の外側方向に向かうよう、互いに沿うように傾斜した傾斜面とされている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面側に、デバイス領域と、平面視で前記デバイス領域の外側に配置される電極配置領域とを有する第1基板と、
前記第1基板の前記一面側に前記デバイス領域を覆うように接合される第2基板であって、前記第1基板との接合面である下面側に、前記デバイス領域との間に封止空間を形成するための凹状のキャビティ部と、平面視で前記キャビティ部を囲むように設けられる接合部とを有するとともに、平面視で前記接合部の外側の少なくとも一部において、前記第1基板の前記電極配置領域を露出させるように設けられる第2基板と、
を備え、
前記第2基板は、該第2基板の前記下面側及び該下面側とは反対側である上面側の両方の外縁において、前記上面側から前記下面側に向かうに従って、平面視で前記第2基板の外側方向に向かうよう、互いに沿うように傾斜した傾斜面とされていることを特徴とする遠赤外線センサ用パッケージ。
【請求項2】
前記第1基板及び前記第2基板がシリコン基板からなることを特徴とする請求項1に記載の遠赤外線センサ用パッケージ。
【請求項3】
前記第2基板における、前記傾斜面が、前記シリコン基板の(100)面をウェットエッチングでシリコン異方性エッチングすることで出現した、前記シリコン基板の(111)面からなる傾斜面とされ、且つ、該傾斜面の傾斜角度が、前記シリコン基板の結晶異方性に由来する角度とされていることを特徴とする請求項2に記載の遠赤外線センサ用パッケージ。
【請求項4】
前記第1基板及び前記第2基板が平面視矩形状とされており、
前記電極配置領域が、前記第1基板及び前記第2基板における平面視で少なくとも一辺側に沿って配置されていることを特徴とする請求項1~請求項3の何れか一項に記載の遠赤外線センサ用パッケージ。
【請求項5】
前記第2基板における前記接合部の周縁部が面取りされていることを特徴とする請求項1~請求項4の何れか一項に記載の遠赤外線センサ用パッケージ。
【請求項6】
請求項1~請求項5の何れか一項に記載の遠赤外線センサ用パッケージと、
前記第1基板の前記デバイス領域に配置される遠赤外線検出素子と、
前記第1基板における前記電極配置領域に配置される電極と、
前記第1基板における、前記第2基板に設けられた前記接合部に対応する位置に設けられている第1金属接合膜と、
前記第2基板における前記接合部の端面を覆うように設けられる第2金属接合膜と、
を備え、
前記第1金属接合膜と前記第2金属接合膜とが接合されていることで、前記遠赤外線検出素子上に前記封止空間を確保しながら、前記第1基板と前記第2基板とが接合されていることを特徴とする遠赤外線センサ。
【請求項7】
前記第2基板における前記封止空間に露出した面のうち、前記第1基板に設けられる前記遠赤外線検出素子と対向する位置を除いて配置され、且つ、前記遠赤外線検出素子と対向する位置を介して、ガス吸着層が一対の線状に設けられていることを特徴とする請求項6に記載の遠赤外線センサ。
【請求項8】
前記ガス吸着層は、前記遠赤外線検出素子と対向する位置を介して、一対で複数の線状に設けられることを特徴とする請求項7に記載の遠赤外線センサ。
【請求項9】
基板材料の表面をエッチングすることにより、一面側に凹状のデバイス領域を形成して第1基板を得る工程(1)と、
基板材料の表面をエッチングすることにより、前記基板材料の少なくとも一部に貫通領域を形成するとともに、前記第1基板との接合面となる下面側に凹状のキャビティ部を形成し、さらに、平面視で前記キャビティ部を囲むように設けられる接合部を形成して第2基板を得る工程(2)と、を備え、
前記工程(2)は、前記第2基板の前記下面側及び該下面側とは反対側である上面側の両方の外縁において、前記上面側から前記下面側に向かうに従って、平面視で前記第2基板の外側方向に向かうよう、互いに沿うように傾斜した傾斜面として形成することを特徴とする遠赤外線センサ用パッケージの製造方法。
【請求項10】
前記第1基板及び前記第2基板としてシリコン基板からなる基板材料を用いることを特徴とする請求項9に記載の遠赤外線センサ用パッケージの製造方法。
【請求項11】
前記工程(2)は、前記第2基板における前記傾斜面を、前記シリコン基板の(100)面をウェットエッチングでシリコン異方性エッチングすることで出現する、前記シリコン基板の(111)面からなる傾斜面として形成し、且つ、該傾斜面の傾斜角度を、前記シリコン基板の結晶異方性に由来する角度とすることを特徴とする請求項10に記載の遠赤外線センサ用パッケージの製造方法。
【請求項12】
さらに、前記工程(2)と同時、又は、該工程(2)の後に、前記第2基板における前記接合部の周縁部を、ドライエッチングによって面取りする工程(10)を備えることを特徴とする請求項9~請求項11の何れか一項に記載の遠赤外線センサ用パッケージの製造方法。
【請求項13】
請求項9~請求項12の何れか一項に記載の遠赤外線センサ用パッケージの製造方法に備えられる工程(1)及び工程(2)を有する遠赤外線センサの製造方法であって、
前記工程(1)及び前記工程(2)の後に、
前記工程(1)で得られた前記第1基板の一面側に、前記第2基板に設けられた前記接合部に対応する位置で第1金属接合膜を形成する工程(3)と、
前記工程(1)で得られた前記第1基板の一面側における電極配置領域に電極を配置する工程(4)と、
前記工程(1)で得られた前記第1基板の前記デバイス領域に遠赤外線検出素子を配置する工程(5)と、
前記工程(2)で得られた前記第2基板における前記接合部の端面を覆うように第2金属接合膜を形成する工程(6)と、
前記第1基板と前記第2基板との間に前記遠赤外線検出素子が配置されるように前記第1基板と前記第2基板とを重ね合わせ、前記第1金属接合膜と前記第2金属接合膜とを互いに加圧して接合させることで、前記遠赤外線検出素子上に前記封止空間を確保しながら、前記第1基板と前記第2基板とを接合する工程(8)と、
ダイシングラインに沿って前記第1基板を切断することにより、チップ単位に個片化する工程(9)と、
を備えることを特徴とする遠赤外線センサの製造方法。
【請求項14】
さらに、前記工程(2)で得られた前記第2基板における、前記キャビティ部によって確保される前記封止空間に露出する面のうち、前記第1基板に設けられた前記遠赤外線検出素子と対向する位置を除いた少なくとも一部を覆うようにゲッター剤を塗布することにより、前記遠赤外線検出素子と対向する位置を介して、一対の線状にガス吸着層を形成する工程(7)を備えることを特徴とする請求項13に記載の遠赤外線センサの製造方法。
【請求項15】
前記工程(7)は、前記ガス吸着層を、前記遠赤外線検出素子と対向する位置を介して、一対で複数の線状に形成することを特徴とする請求項14に記載の遠赤外線センサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、遠赤外線センサ用パッケージ及びその製造方法、並びに、遠赤外線センサ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種の電子デバイスにおいて、これら電子デバイスの小型化や高機能化等に伴い、より一層の小型化及び薄型化が求められるようになっている。
また、スマートフォン等の小型電子機器においても、さらなる薄型化が進められており、それに搭載される光センサ等に対しても、より一層の低背化が求められている。
【0003】
ここで、電子機器の薄型化の要求に対しては、例えば、構成部材の各々の厚みを従来よりもさらに薄くする手段が考えられるが、構成部材の厚みを薄くし過ぎると、機械的強度が損なわれ、電子機器の製品品質が低下するおそれがある。このため、電子デバイスの小型化や低背化の要求に対しては、それらの寸法を電子部品の寸法に近づけることが有効であり、例えば、ウエハーレベルパッケージ技術を用いること等も提案されている。
【0004】
しかしながら、光センサのような電子デバイスを低背化した場合、光センサに対して広い角度から光が入射することになる。このため、例えば、照度センサ等の光センサにおいては、赤外線カットフィルタのカットオフ波長帯域がずれることにより、照度センサの出力に影響が及び、正確な照度を検知できないという問題があった。
【0005】
上記のような問題を解決することを目的として、赤外線吸収性組成物からなる層を付加することで、光の入射角依存性を低減した光センサ装置が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の光センサ装置のように、赤外線吸収性組成物からなる層を付加した場合、光センサ装置自体の構成部材が多くなることから、複雑な構造が必要になり、コストアップすることが避けられないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2016/181786号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一方、例えば、遠赤外線センサにおいては、光の入射範囲をより広角化させる要求が高まっている。このため、遠赤外線センサを、ウエハーレベルパッケージ技術を用いて低背化することで、広い角度から光を入射させることが検討されている。
【0009】
しかしながら、ウエハーレベルパッケージ技術によって遠赤外線センサを低背化させた場合、例えば、互いのウエハーが平板であると、斜め方向からの光が入射したときに、部材の厚みの分だけ、遠赤外線の部材への透過距離が長くなることになる。このため、光センサへの光の入射強度が減衰してしまうことから、効率よく遠赤外線を受光することが困難になるという問題があった。
【0010】
本開示は上記問題点に鑑みてなされたものであり、低背化した構成でありながら、光の入射範囲をより広角化させることができ、遠赤外線を効率よく受光することが可能な遠赤外線センサ用パッケージ及びその製造方法、並びに、遠赤外線センサ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本開示の遠赤外線センサは、以下に示す構成を採用する。
[1] 本開示の一態様に係る遠赤外線センサ用パッケージは、一面側に、デバイス領域と、平面視で前記デバイス領域の外側に配置される電極配置領域とを有する第1基板と、前記第1基板の前記一面側に前記デバイス領域を覆うように接合される第2基板であって、前記第1基板との接合面である下面側に、前記デバイス領域との間に封止空間を形成するための凹状のキャビティ部と、平面視で前記キャビティ部を囲むように設けられる接合部とを有するとともに、平面視で前記接合部の外側の少なくとも一部において、前記第1基板の前記電極配置領域を露出させるように設けられる第2基板と、を備え、前記第2基板は、該第2基板の前記下面側及び該下面側とは反対側である上面側の両方の外縁において、前記上面側から前記下面側に向かうに従って、平面視で前記第2基板の外側方向に向かうよう、互いに沿うように傾斜した傾斜面とされていることを特徴とする遠赤外線センサ用パッケージである。
【0012】
本態様によれば、第2基板における下面側及び該下面側とは反対側である上面側の両方の外縁において、上面側から下面側に向かうに従って、平面視で第2基板の外側方向に向かうよう、互いに沿うように傾斜した傾斜面とされていることにより、上面側と下面側の外縁で第2基板が薄肉化されているので、斜め方向から入射した遠赤外線が減衰するのを抑制できる。これにより、光の入射範囲を広角化させることができるので、遠赤外線の検出角度を広角化することが可能になる。従って、低背化した構成でありながら、遠赤外線を、広角化した検出角度で効率よく受光できる。
また、第2基板が上記の傾斜面を有していることで、第1基板の電極配置領域を露出させる部分における、第2基板の上面側の開口が大きくなるので、電極にワイヤーボンディングすることで、プリント基板等に対するCOB(Chip On Board)でモジュールを製作する際に、ボンディングツールであるキャピラリーと干渉するのを回避できる。これにより、第2基板における、キャピラリーとの干渉を回避するためのスペースを極小化することができる。従って、ワイヤーボンディングによる接合品質が確保されるとともに、パッケージ全体を小型化することができるので、製品コストを低減することが可能になる。
【0013】
[2] 上記[1]の態様の遠赤外線センサ用パッケージにおいて、前記第1基板及び前記第2基板がシリコン基板からなることが好ましい。
【0014】
本態様の遠赤外線センサ用パッケージによれば、第1基板及び第2基板がシリコン基板からなることで、第2基板における遠赤外線の透過率が高められ、遠赤外線を効率よく受光することが可能になる。
また、第1基板及び第2基板が、加工性に優れるシリコン基板からなることで、ドライエッチング又はウェットエッチングで加工するときの精度が向上する。また、第1基板及び第2基板として、一般的に流通している、特に面方位が(100)面であるシリコン基板を採用することにより、入手容易性に優れるとともに、製造コストを抑制することが可能となる。
【0015】
[3] 上記[2]の態様の遠赤外線センサ用パッケージにおいて、前記第2基板における、前記傾斜面が、前記シリコン基板の(100)面をウェットエッチングでシリコン異方性エッチングすることで出現した、前記シリコン基板の(111)面からなる傾斜面とされ、且つ、該傾斜面の傾斜角度が、前記シリコン基板の結晶異方性に由来する角度とされている構成であってもよい。
【0016】
本態様の遠赤外線センサ用パッケージによれば、第2基板における上記の傾斜面、具体的には、第2基板の周端である側面側及びキャビティ部の内側面が、シリコン基板の(111)面からなる、シリコン基板の結晶異方性に由来する結晶角度である約54.7°の傾きを有している。このように、シリコン基板の結晶方位性に由来する安定した角度を有する傾斜面とされていることで、接合部の肉厚がより安定して均一化されるので、上述したような、低背化した構成でありながら、遠赤外線を、広角化した検出角度で効率よく受光できる効果がさらに安定的に得られる。
【0017】
[4] 上記[1]~[3]の何れかの態様の遠赤外線センサ用パッケージにおいて、前記第1基板及び前記第2基板が平面視矩形状とされており、前記電極配置領域が、前記第1基板及び前記第2基板における平面視で少なくとも一辺側に沿って配置されている構成を採用することができる。
【0018】
本態様の遠赤外線センサ用パッケージによれば、電極を設けるための電極配置領域を、例えば、第1基板の一辺側のみに設けてもよいし、さらに、この一辺側と対向する他辺側にも設けることもできるので、例えば、遠赤外線センサ用パッケージをプリント基板等に対してCOBする場合のスペース等を想定しながら、フレキシブルに構成できる。従って、例えば、第1基板の一辺側にのみ電極配置領域を設けた場合には、遠赤外線センサ用パッケージ、並びに、遠赤外線センサが搭載されるプリント基板を小型化することが可能となり、さらに他辺側にも電極配置領域を設けた場合には、より複雑な電気的接続に対応することも可能となる。
【0019】
[5] 上記[1]~[4]の何れかの態様の遠赤外線センサ用パッケージにおいて、前記第2基板における前記接合部の周縁部が面取りされている構成を採用することがより好ましい。
【0020】
本態様の遠赤外線センサ用パッケージによれば、接合部の周縁部が面取りされていることで、ダイシングによってチップ単位に個片化する際に、ダイシングブレードの接触圧力に起因する欠けや、チッピングが発生するのを抑制できるので、センサ特性が向上するとともに、歩留まりも向上する。
【0021】
[6] 本開示の一態様に係る遠赤外線センサは、上記の[1]~[5]の何れかの態様の遠赤外線センサ用パッケージと、前記第1基板の前記デバイス領域に配置される遠赤外線検出素子と、前記第1基板における前記電極配置領域に配置される電極と、前記第1基板における、前記第2基板に設けられた前記接合部に対応する位置に設けられている第1金属接合膜と、前記第2基板における前記接合部の端面を覆うように設けられる第2金属接合膜と、を備え、前記第1金属接合膜と前記第2金属接合膜とが接合されていることで、前記遠赤外線検出素子上に前記封止空間を確保しながら、前記第1基板と前記第2基板とが接合されていることを特徴とする遠赤外線センサである。
【0022】
本態様によれば、第2基板における下面側及び該下面側とは反対側である上面側の両方の外縁において、上面側から下面側に向かうに従って、平面視で第2基板の外側方向に向かうよう、互いに沿うように傾斜した傾斜面とされてなる、上記態様の遠赤外線センサ用パッケージを備えることにより、上述したように、斜め方向から入射して遠赤外線検出素子に向かう遠赤外線が減衰するのを抑制できる。これにより、光の入射範囲を広角化させることができるので、低背化した構成でありながら、遠赤外線を、広角化した検出角度で効率よく受光できる遠赤外線センサが実現できる。
また、第2基板が上記の傾斜面を有した構成である上記態様の遠赤外線センサ用パッケージを備えることにより、上述したように、第1基板の電極配置領域を露出させる部分における、第2基板の上面側の開口が大きくなるので、電極にワイヤーボンディングする際にキャピラリーと干渉するのを回避できる。これにより、第2基板における、キャピラリーとの干渉を回避するためのスペースを極小化することができるので、ワイヤーボンディングによる接合品質が確保されるとともに、パッケージ全体を小型化することが可能となり、製品コストが低減された遠赤外線センサが実現できる。
【0023】
[7] 上記[6]の態様の遠赤外線センサにおいて、前記第2基板における前記封止空間に露出した面のうち、前記第1基板に設けられる前記遠赤外線検出素子と対向する位置を除いて配置され、且つ、前記遠赤外線検出素子と対向する位置を介して、ガス吸着層が一対の線状に設けられていることがより好ましい。
【0024】
本態様の遠赤外線センサによれば、光が入射してくる方向が決まっている場合に、光の入射を阻害しない位置にガス吸着層を設けることができる。また、このような構成のガス吸着層を備えることで、減圧された封止空間内のガスを効果的に吸着できる。これにより、外部からの遠赤外線の入射効率を高める効果と、キャビティ内の真空度を高める効果の両方が得られるので、遠赤外線を、広角化した検出角度でより効率よく受光できるとともに、遠赤外線検出素子による受光感度がより高められる。
【0025】
[8] 上記[7]の態様の遠赤外線センサにおいて、前記ガス吸着層が、前記遠赤外線検出素子と対向する位置を介して、一対で複数の線状に設けられていることがさらに好ましい。
【0026】
本態様の遠赤外線センサによれば、一対で複数の線状に設けられたガス吸着層を備えることで、ガス吸着層が配置されている方向から光が入射する場合であっても、パッケージの内部に効率よく光を入射させることができる。これにより、外部からの遠赤外線の入射効率をさらに高める効果と、キャビティ内の真空度を高める効果の両方が得られるので、遠赤外線を、広角化した検出角度でより効率よく受光できるとともに、遠赤外線検出素子による受光感度がさらに高められる。
【0027】
[9] 本開示の一態様に係る遠赤外線センサ用パッケージの製造方法は、基板材料の表面をエッチングすることにより、一面側に凹状のデバイス領域を形成して第1基板を得る工程(1)と、基板材料の表面をエッチングすることにより、前記基板材料の少なくとも一部に貫通領域を形成するとともに、前記第1基板との接合面となる下面側に凹状のキャビティ部を形成し、さらに、平面視で前記キャビティ部を囲むように設けられる接合部を形成して第2基板を得る工程(2)と、を備え、前記工程(2)は、前記第2基板の前記下面側及び該下面側とは反対側である上面側の両方の外縁において、前記上面側から前記下面側に向かうに従って、平面視で前記第2基板の外側方向に向かうよう、互いに沿うように傾斜した傾斜面として形成することを特徴とする遠赤外線センサ用パッケージの製造方法である。
【0028】
本態様によれば、工程(2)において、第2基板における下面側及び該下面側とは反対側である上面側の両方の外縁において、上面側から下面側に向かうに従って、平面視で第2基板の外側方向に向かうよう、互いに沿うように傾斜した傾斜面に形成することで、上面側と下面側の外縁で第2基板が薄肉化されるので、斜め方向から入射した遠赤外線が減衰するのを抑制できる遠赤外線センサ用パッケージを製造できる。これにより、光の入射範囲が広角化され、低背化した構成でありながら、遠赤外線を、広角化した検出角度で効率よく受光できる遠赤外線センサ用パッケージが得られる。
さらに、工程(2)において、第2基板に上記の傾斜面を形成することで、第1基板の電極配置領域を露出させる部分における、第2基板の上面側の開口が大きくなるので、電極にワイヤーボンディングする際に、ボンディングツールであるキャピラリーと干渉するのを回避できる。これにより、第2基板における、キャピラリーとの干渉を回避するためのスペースを極小化することができ、ワイヤーボンディングによる接合品質が確保されるとともに、パッケージ全体を小型化できるので、遠赤外線センサ用パッケージを低コストで製造することが可能になる。
【0029】
[10] 上記[9]の態様の遠赤外線センサ用パッケージの製造方法において、前記第1基板及び前記第2基板としてシリコン基板からなる基板材料を用いることが好ましい。
【0030】
本態様の遠赤外線センサ用パッケージの製造方法によれば、基板材料として遠赤外線の透過率に優れたシリコン基板を用いて第1基板及び第2基板を得ることで、第2基板における遠赤外線の透過率が高められ、遠赤外線を効率よく受光することが可能なパッケージが得られる。
また、シリコン基板は加工性に優れているので、ドライエッチング又はウェットエッチングで加工するときの精度が向上する。
また、基板材料として、一般的に流通している、特に面方位が(100)面であるシリコン基板を採用することにより、入手容易性に優れるとともに、製造コストを抑制することが可能となる。
【0031】
[11] 上記[10]の態様の遠赤外線センサ用パッケージの製造方法において、前記工程(2)は、前記第2基板における前記傾斜面を、前記シリコン基板の(100)面をウェットエッチングでシリコン異方性エッチングすることで出現する、前記シリコン基板の(111)面からなる傾斜面として形成し、且つ、該傾斜面の傾斜角度を、前記シリコン基板の結晶異方性に由来する角度とする方法を採用してもよい。
【0032】
本態様の遠赤外線センサ用パッケージの製造方法によれば、工程(2)において、第2基板における上記の傾斜面、即ち、第2基板3の周端である側面側及びキャビティ部の内側面を、シリコン基板の(111)面からなる、シリコン基板の結晶異方性に由来する結晶角度である約54.7°の傾きを有する、安定した角度の傾斜面に形成することで、接合部の肉厚がより安定して均一化される。これにより、上述したような、低背化した構成でありながら、遠赤外線を、広角化した検出角度で効率よく受光できる効果がさらに安定的に得られる遠赤外線センサ用パッケージを製造することが可能になる。
【0033】
[12] 上記[9]~[11]の何れかの態様の遠赤外線センサ用パッケージの製造方法において、さらに、前記工程(2)と同時、又は、該工程(2)の後に、前記第2基板における前記接合部の周縁部を、ドライエッチングによって面取りする工程(10)を備える方法を採用することがより好ましい。
【0034】
本態様の遠赤外線センサ用パッケージの製造方法によれば、工程(10)において、接合部の周縁部をドライエッチングで面取りすることで、ダイシングによってチップ単位に個片化する際に、ダイシングブレードによる応力を分散させることができる。これにより、ダイシングブレードの接触圧力に起因する欠け、あるいはチッピングが発生するのを抑制できるので、パッケージとしての特性が向上するとともに、歩留まりも向上する。
【0035】
[13] 本開示の一態様に係る遠赤外線センサの製造方法は、上記の[9]~[12]の何れかの態様の遠赤外線センサ用パッケージの製造方法に備えられる工程(1)及び工程(2)を有する遠赤外線センサの製造方法であって、前記工程(1)及び前記工程(2)の後に、前記工程(1)で得られた前記第1基板の一面側に、前記第2基板に設けられた前記接合部に対応する位置で第1金属接合膜を形成する工程(3)と、前記工程(1)で得られた前記第1基板の一面側における電極配置領域に電極を配置する工程(4)と、前記工程(1)で得られた前記第1基板の前記デバイス領域に遠赤外線検出素子を配置する工程(5)と、前記工程(2)で得られた前記第2基板における前記接合部の端面を覆うように第2金属接合膜を形成する工程(6)と、前記第1基板と前記第2基板との間に前記遠赤外線検出素子が配置されるように前記第1基板と前記第2基板とを重ね合わせ、前記第1金属接合膜と前記第2金属接合膜とを互いに加圧して接合させることで、前記遠赤外線検出素子上に前記封止空間を確保しながら、前記第1基板と前記第2基板とを接合する工程(8)と、ダイシングラインに沿って前記第1基板を切断することにより、チップ単位に個片化する工程(9)と、を備えることを特徴とする遠赤外線センサの製造方法である。
【0036】
本態様によれば、工程(1)及び工程(2)で、第2基板における下面側及び該下面側とは反対側である上面側の両方の外縁において、上面側から下面側に向かうに従って、平面視で第2基板の外側方向に向かうよう、互いに沿うように傾斜した傾斜面とされた、上記態様の遠赤外線センサ用パッケージを製造した後、上記の工程(3)~(6),(8),(9)の各工程により、上述したように、斜め方向から入射して遠赤外線検出素子に向かう遠赤外線が減衰するのを抑制可能な遠赤外線センサを製造できる。これにより、低背化した構成でありながら、遠赤外線を、広角化した検出角度で効率よく受光できる遠赤外線センサを製造することが可能になる。
また、工程(2)で、第2基板に上記の傾斜面を形成することにより、上述したように、第1基板の電極配置領域を露出させる部分における、第2基板の上面側の開口が大きくなるので、遠赤外線センサを、ワイヤーボンディングによってプリント基板等に実装する際に、キャピラリーと干渉するのを回避できる。これにより、第2基板における、キャピラリーとの干渉を回避するためのスペースを極小化できるので、ワイヤーボンディングによる接合品質が確保されるとともに、パッケージ全体を小型化することが可能となり、遠赤外線を、広角化した検出角度で効率よく受光できる遠赤外線センサを低コストで製造することが可能になる。
【0037】
[14] 上記[13]の態様の遠赤外線センサの製造方法において、さらに、前記工程(2)で得られた前記第2基板における、前記キャビティ部によって確保される前記封止空間に露出する面のうち、前記第1基板に設けられた前記遠赤外線検出素子と対向する位置を除いた少なくとも一部を覆うようにゲッター剤を塗布することにより、前記遠赤外線検出素子と対向する位置を介して、一対の線状にガス吸着層を形成する工程(7)を備えることがより好ましい。
【0038】
本態様の遠赤外線センサの製造方法によれば、光が入射してくる方向が決まっている場合に、工程(7)において、光の入射を阻害しない位置で、遠赤外線検出素子と対向する位置を介して一対の線状にガス吸着層を形成することができる。また、このような構成のガス吸着層により、減圧された封止空間内のガスを効果的に吸着できる。これにより、外部からの遠赤外線の入射効率をより高める効果と、キャビティ内の真空度を高める効果の両方が得られ、遠赤外線を、広角化した検出角度で効率よく受光できるとともに、遠赤外線検出素子による受光感度がより高められた遠赤外線センサを製造できる。
【0039】
[15] 上記[14]の態様の遠赤外線センサの製造方法において、前記工程(7)が、前記ガス吸着層を、前記遠赤外線検出素子と対向する位置を介して、一対で複数の線状に形成する方法であることがさらに好ましい。
【0040】
本態様の遠赤外線センサの製造方法によれば、工程(7)において、一対で複数の線状にガス吸着層を形成することで、ガス吸着層が配置されている方向から光が入射する場合であっても、パッケージの内部に効率よく光を入射させることが可能なガス吸着層を形成できる。これにより、外部からの遠赤外線の入射効率をさらに高める効果と、キャビティ内の真空度を高める効果の両方が得られ、遠赤外線を、広角化した検出角度でより効率よく受光できるとともに、遠赤外線検出素子による受光感度がさらに高められた遠赤外線センサを製造できる。
【発明の効果】
【0041】
本開示によれば、上記構成を備えることにより、低背化した構成でありながら、光の入射範囲をより広角化させることができ、遠赤外線を効率よく受光することが可能な遠赤外線センサ用パッケージ及び遠赤外線センサ、並びにそれらの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本開示の第1の実施形態である遠赤外線センサ用パッケージ及び遠赤外線センサを模式的に説明する平面図である。
図2】本開示の第1の実施形態である遠赤外線センサ用パッケージ及び遠赤外線センサを模式的に説明する図であり、図1中に示すA-A断面図である。
図3A】本開示の第1の実施形態である遠赤外線センサ用パッケージ及び遠赤外線センサの製造方法を模式的に説明する図であり、第2基板を得る工程(2)の手順を示す工程図である。
図3B】本開示の第1の実施形態である遠赤外線センサ用パッケージ及び遠赤外線センサの製造方法を模式的に説明する図であり、第2基板を得る工程(2)の手順を示す工程図である。
図3C】本開示の第1の実施形態である遠赤外線センサの製造方法を模式的に説明する図であり、第2基板における接合部の端面に第2金属接合膜を形成する工程(6)、並びに、封止空間に露出する面の少なくとも一部を覆うようにガス吸着層を形成する工程(7)の手順を示す工程図である。
図3D】本開示の第1の実施形態である遠赤外線センサ用パッケージ及び遠赤外線センサの製造方法を模式的に説明する図であり、第1基板を得る工程(1)、第1基板の一面側に、第2基板の接合部に対応する位置で第1金属接合膜を形成する工程(3)、デバイス領域に遠赤外線検出素子を配置する工程(4)、並びに、第1基板の一面側における電極配置領域に電極を配置する工程(5)の手順を示す工程図である。
図3E】本開示の第1の実施形態である遠赤外線センサの製造方法を模式的に説明する図であり、第1基板と第2基板とを接合して遠赤外線センサを得る工程(8)の手順を示す工程図である。
図3F】本開示の第1の実施形態である遠赤外線センサの製造方法を模式的に説明する図であり、ダイシングラインに沿って第1基板及び第2基板を切断することにより、チップ単位に個片化する工程(9)の手順を示す工程図である。
図4】本開示の第2の実施形態である遠赤外線センサ用パッケージ及び遠赤外線センサを模式的に説明する平面図である。
図5】本開示の第2の実施形態である遠赤外線センサ用パッケージ及び遠赤外線センサを模式的に説明する図であり、図4中に示すB-B断面である。
図6】本開示の第3の実施形態である遠赤外線センサ用パッケージ及び遠赤外線センサを模式的に説明する平面図である。
図7】本開示の第4の実施形態である遠赤外線センサ用パッケージ及び遠赤外線センサを模式的に説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本開示の遠赤外線センサ用パッケージ及びその製造方法、並びに、遠赤外線センサ及びその製造方法の実施形態を挙げ、その構成について図1図7を適宜参照しながら説明する。なお、以下の説明で用いる各図面は、本開示の遠赤外線センサ用パッケージ並びに遠赤外線センサの特徴をわかりやすくするため、便宜上、特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等は実際とは異なる場合がある。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本開示はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0044】
<第1の実施形態>
以下に、本開示の第1の実施形態に係る遠赤外線センサ用パッケージ及び遠赤外線センサ、並びに、それらの製造方法について、図1図2、及び図3A図3Fを参照しながら詳述する。
図1は、本実施形態の遠赤外線センサ(遠赤外線センサ用パッケージ)1を模式的に説明する平面図であり、図2は、図1中に示す遠赤外線センサ1のA-A断面図である。また、図3A図3Fは、本実施形態の遠赤外線センサ(遠赤外線センサ用パッケージ)1の製造方法を説明する図であり、各工程の手順を示す工程図である。
【0045】
[遠赤外線センサ用パッケージ及び遠赤外線センサの構成]
図1及び図2に示すように、本実施形態の遠赤外線センサ用パッケージは、第1基板2(ベース基板)と、第2基板3(リッド基板)とを備える。
そして、本実施形態の遠赤外線センサ1は、上記の遠赤外線センサ用パッケージを構成する第1基板2及び第2基板3に加え、さらに、第1基板2の上面(一面)2aに形成されたデバイス領域22内に配置される遠赤外線検出素子4を備え、概略構成される。
即ち、本実施形態の遠赤外線センサ1は、詳細を後述するように、第1基板2及び第2基板3を有する遠赤外線センサ用パッケージを含むものである。
【0046】
より詳細に説明すると、本実施形態の遠赤外線センサ1は、まず、上述した第1基板2及び第2基板3を有する本実施形態の遠赤外線センサ用パッケージを備える。
さらに、本実施形態の遠赤外線センサ1は、第1基板2のデバイス領域22に配置される遠赤外線検出素子4と、第1基板2における電極配置領域23a,23bに配置される電極81,82と、第1基板2における、第2基板3に設けられた接合部31に対応する位置に設けられている第1金属接合膜51と、第2基板3における接合部31の端面31aを覆うように設けられる第2金属接合膜52と、を備える。
また、図1及び図2に示す例の遠赤外線センサ1は、第2基板3における、キャビティ部32によって確保されるキャビティCに露出した面のうち、第1基板2に設けられる遠赤外線検出素子4と対向する位置を除いた少なくとも一部に配置されるガス吸着層10が備えられている。
そして、本実施形態の遠赤外線センサ1は、第1金属接合膜51と第2金属接合膜52とが、例えば、金属拡散接合によって接合されていることで、遠赤外線検出素子4上にキャビティCを確保しながら、第1基板2と第2基板3とが接合された構成とされている。
以下、本実施形態の遠赤外線センサ1の各構成についてさらに詳細に説明する。
【0047】
第1基板2は、遠赤外線センサ用パッケージ及び遠赤外線センサ1のベース基板であり、例えば、シリコン基板から構成される。また、第1基板2は、図1に示す例では、平面視で矩形状に形成されている。また、第1基板2の上面2aには、詳細を後述する遠赤外線検出素子4を配置するためのデバイス領域22が凹状に形成されており、図示例においては、平面視で概略中央にデバイス領域22が設けられている。また、第1基板2の上面2aには、平面視でデバイス領域22の外側に配置される電極配置領域23a,23bが設けられている。
【0048】
第1基板2は、シリコン基板をドライエッチングすることにより、デバイス領域22を形成することで得ることができる。デバイス領域22は、例えば、平面視矩形状に形成される領域である。
なお、第1基板2の平面視形状は、図示例のような概略矩形状のものには限定されず、遠赤外線センサ1としての平面視形状に合わせて他の形状を採用することも可能である。
また、本実施形態で説明する例では、第1基板2の上面2a及び下面2bは、デバイス領域22の部分を除いて概略平坦に構成されている。
また、第1基板2は、シリコン基板をウェットエッチングすることにより、デバイス領域22を形成することで得ることも可能である。
【0049】
また、第1基板2には、該第1基板2内に埋設され、遠赤外線検出素子4に電気的に接続される埋め込み配線71,72と、第1基板2上において、対向して配置される第2基板3よりも平面視で外側に設けられ、埋め込み配線71,72と第1コンタクト91a,92aを介して電気的に接続される電極81,82とが備えられている。
また、図1及び図2においては詳細な図示を省略しているが、第2コンタクト91b,92bと遠赤外線検出素子4との間は、第1信号配線部61、又は、第2信号配線部62を介して電気的に接続されており、これにより、電極81,82は、遠赤外線検出素子4から出力された検出信号を外部に向けて送出できるように構成されている。
【0050】
また、図1及び図2等においては図示を省略しているが、本実施形態の遠赤外線センサ1においては、第1基板2におけるデバイス領域22の周囲や、後述する埋め込み配線71,72又は電極81,82の周囲等に、さらに絶縁層が設けられていてもよい。具体的には、図示略の絶縁層は、第1基板2の上面2a側のうち、遠赤外線検出素子4よりも外側の領域に、平面視で遠赤外線検出素子4を囲むように設けることができる。この絶縁層は、絶縁性を有する材料からなり、例えば、二酸化ケイ素(SiO)等のシリコン酸化膜や、シリコン窒化膜(SiN)等から形成される。
【0051】
第2基板3は、遠赤外線センサ1のリッド基板(蓋)であり、第1基板2と同様、例えば、シリコン基板から構成される。また、図示例の第2基板3は、第1基板2と同様、平面視で矩形状に形成されている。
より具体的には、第2基板3は、第1基板2の上面2a側にデバイス領域22を覆うように接合されるものであり、第1基板2との接合面である下面3a側に、デバイス領域22との間にキャビティCを確保するための凹状のキャビティ部32と、平面視でキャビティ部32を囲むように概略枠状で設けられる接合部31とを有する。
また、第2基板3は、平面視で接合部31の外側の少なくとも一部、図示例では、平面視矩形状とされた第2基板3において対向して配置された一辺側と他辺側に沿うように、第1基板2の電極配置領域23a,23bを露出させるための貫通領域33を有する。
図1及び図2に示す例では、貫通領域33が、電極配置領域23a及び電極配置領域23bのそれぞれに対応する位置で、キャビティ部32を介して一対で配置されている。また、図示例では、キャビティ部32が平面視矩形状とされている。
【0052】
そして、第2基板3は、この第2基板3の下面3a側及び下面3a側とは反対側である上面3b側の両方の外縁、即ち、図2中に示すキャビティ部32の内側面32b及び第2基板3の周端である側面31bが、上面3b側から下面3a側に向かうに従って、平面視で第2基板3の外側方向に向かうよう、互いに沿うように傾斜した傾斜面とされている。
【0053】
また、本実施形態おいては、第2基板3における、キャビティ部32の内側面32b及び第2基板3の側面31bが、シリコン基板の(100)面をウェットエッチングでシリコン異方性エッチングすることで出現した、シリコン基板の(111)面からなる傾斜面とされた例を挙げて説明する。
【0054】
また、図2に示す例においては、キャビティ部32の内側面32bが、天井面32aから下面3a側に向かうに従って、平面視で第2基板の外側方向に向かうように傾斜している。これにより、第2基板3は、側面31bとキャビティ部32の内側面32bとが概略平行に構成され、この結果、接合部31の厚みが、上面3bと天井面32aとの間の厚みと概略同じで、均一な厚みとされている。
【0055】
第2基板3は、第1基板2に対して概略平行となるように重ね合わせられる。
第2基板3の平面視形状も、第1基板2の場合と同様、図示例のような概略矩形状には限定されず、遠赤外線センサ1としての平面視形状に合わせて、第1基板2と対応する形状とすることができる。
また、第2基板3は、遠赤外線を透過可能なシリコン基板からなることで、遠赤外線検出素子4に遠赤外線を入射させることが可能な構成とされている。
【0056】
第2基板3におけるキャビティ部32の深さ、即ち、接合部31の高さとしては、キャビティCとして一定容量を有する空間を確保できる高さであれば、特に限定されず、例えば、30~100μmの高さとすることができる。
【0057】
また、接合部31における端面31aの平面視寸法(面積)としては、特に限定されないが、詳細を後述する、第1金属接合膜51と第2金属接合膜52との金属拡散接合による接合強度を確保することも勘案し、例えば、1.5~4.0mm角の概略矩形状とすることができる。
【0058】
また、本実施形態においては、第1基板2及び第2基板3がシリコン基板からなることで、第2基板3における遠赤外線の透過率が高められ、遠赤外線を効率よく受光することが可能になる。
また、第1基板2及び第2基板3が、加工性に優れるシリコン基板からなることで、ドライエッチング又はウェットエッチングで加工するときの精度が向上するので、素子特性にさらに優れたものとなる。
また、第1基板2及び第2基板3として、一般的に流通している、特に面方位が(100)面であるシリコン基板を採用することにより、入手容易性に優れるとともに、製造コストを抑制することが可能となる。
【0059】
本実施形態においては、上記のように、第2基板3におけるキャビティ部32の内側面32b及び第2基板3における側面31bが、ウェットエッチングによって形成される傾斜面とされている。具体的には、シリコン基板を、例えば、ヒドラジン(N)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)等、一般的に用いられているエッチング液を用い、シリコン基板の(100)面をウェットエッチングでシリコン異方性エッチングする。これにより、特に、複雑な工法やエッチング液を使用することなく、シリコンの有する結晶異方性により、深さ方向に向かって(111)面が出現し、この(111)面による傾斜面が形成される。これにより、キャビティ部32の内側面32b及び第2基板3における側面31bが、シリコン基板の結晶異方性に由来する角度、即ち、(111)面が出現した約54.7°の傾斜面に形成される。
【0060】
遠赤外線検出素子4は、上述のように、第1基板2の上面2a側に形成された凹状のデバイス領域22に収容されるように設けられている。また、遠赤外線検出素子4は、上述したように、その検出信号を、電極81,82から外部に向けて送出するように設けられており、第1基板2のデバイス領域22に設置された状態において、その上面側が、減圧空間とされたキャビティCに露出するように設けられる。
【0061】
遠赤外線検出素子4は、例えば、ベース基板である第1基板2の構成材料から構成された部分を有してもよく、外部から供給された材料から構成された部分を有してもよく、また、第1基板2の構成材料と外部から供給された材料とを混合して構成された部分を有してもよい。
【0062】
第1金属接合膜51は、上述したように、第1基板2の上面2aにおける、第2基板3の接合部31に対応した位置に設けられる。
また、第2金属接合膜52は、上述したように、第2基板3における接合部31の端面31aを覆うように設けられる。
本実施形態においては、第1基板2に設けられる第1金属接合膜51と、第2基板3に設けられる第2金属接合膜52とが、例えば、金属拡散接合によって接合されることで金属接合体50が形成され、この金属接合体50によって第1基板2と第2基板3とが接合される。
【0063】
第1金属接合膜51及び第2金属接合膜52は、図1中に示すように、平面視矩形状で概略枠状に形成され、これら第1金属接合膜51と第2金属接合膜52とが金属拡散接合してなる金属接合体50も、平面視矩形状で概略枠状に形成される。
また、第1金属接合膜51と第2金属接合膜52とからなる金属接合体50は、第1基板2と第2基板3とを接合することで、これら第1基板2、第2基板3及び金属接合体50に囲まれたキャビティCを形成する。
【0064】
より具体的には、金属接合体50は、第1基板2の上面2aに配置される第1下地層51a、及び、第1下地層51a上に積層して設けられる第1接合層51bからなる第1金属接合膜51と、第2基板3の接合部31の先端に配置される第2下地層52a、及び、第2下地層52a上に積層して設けられる第2接合層52bからなる第2金属接合膜52とから構成される。
【0065】
第1下地層51a及び第2下地層52aは、それぞれ、第1基板2の上面2a、又は、第2基板3における接合部31の端面31aに接合されて設けられる。上記のような各下地層を備えることにより、第1接合層51bが第1基板2に対して強固に接合されるとともに、第2接合層52bが第2基板3の接合部31に対して強固に接合される。
【0066】
第1下地層51a及び第2下地層52aは、第1基板2の上面2a上、又は、第2基板3の接合部31の先端において、導電性を有する金属材料によって薄膜状に形成されている。
第1下地層51a及び第2下地層52aの材料としては、特に限定されないが、例えば、タンタル(Ta)又は窒化チタン(TiN)からなる薄膜とされていることが好ましい。
また、第1基板2側に設けられる第1下地層51aは、例えば、図示略のグラウンドに接続されている。このグラウンドは、例えば、第1基板2の下面2b側に設けることができるが、第1基板2の上面2a側に設けられていてもよい。
【0067】
第1接合層51b及び第2接合層52bは、上記のように、それぞれ、第1下地層51a上、又は、第2下地層52a上に積層されている。
第1接合層51b及び第2接合層52bの材料としては、特に限定されないが、例えば、第1下地層51a及び第2下地層52aの材料としてタンタルを用いた場合には、第1接合層51b及び第2接合層52bの材料として金(Au)を用いる。また、第1下地層51a及び第2下地層52aの材料として窒化チタンを用いた場合には、第1接合層51b及び第2接合層52bの材料としてアルミニウム(Al)を用いる。
【0068】
そして、本実施形態においては、第1接合層51bと第2接合層52bとが、同じ材料同士で接合されるように構成される。即ち、第1接合層51b及び第2接合層52bは、両方が同じ材料、即ち、金(Au)又はアルミニウム(Al)の何れか一方の材料を含むように構成される。
【0069】
金属接合体50を構成する第1金属接合膜51及び第2金属接合膜52を上記材料から構成した場合、各層の厚さは特に限定されない。一方、電気的特性や接合時の強度等を勘案し、第1下地層51a及び第2下地層52aをタンタルから構成し、第1接合層51b及び第2接合層52bを金から構成した場合には、例えば、{第1接合層51b(又は第2接合層52b):0.5nm~2μm/第1下地層51a(又は第2下地層52a):0.05~0.2μm}の範囲とすることが好ましい。
同様に、第1下地層51a及び第2下地層52aを窒化チタンから構成し、第1接合層51b及び第2接合層52bをアルミニウムから構成した場合には、例えば、{第1接合層51b(又は第2接合層52b):1~3μm/第1下地層51a(又は第2下地層52a):0.05~0.5μm}の範囲とすることが好ましい。
【0070】
また、金属接合体50によるキャビティCに対する封止幅、即ち、接合部31に対応して平面視矩形状に形成された第2金属接合膜52及び第1金属接合膜51の最大幅としても、特に限定されない。一方、この部分の接合性を高め、キャビティCの封止気密性をより高めることを考慮した場合、第1金属接合膜51及び第2金属接合膜52の最大幅は、第1下地層51a及び第2下地層52aをタンタルから構成し、第1接合層51b及び第2接合層52bを金から構成した場合には、例えば、0.10~0.30mmとすることが好ましい。また、第1下地層51a及び第2下地層52aを窒化チタンから構成し、第1接合層51b及び第2接合層52bをアルミニウムから構成した場合には、第2金属接合膜52及び第1金属接合膜51の最大幅は、例えば、0.03~0.1mmの幅とすることが好ましい。
【0071】
本実施形態においては、金属接合体50をなす第1金属接合膜51及び第2金属接合膜52を、上記のような層構造から構成することにより、第1基板2と第2基板3とを重ね合わせて加圧した際に、第1下地層51a及び第1接合層51bと、第2下地層52a及び第2接合層52bとの間に金属拡散接合が発現される。これにより、金属接合体50を強固な接合構造とし、且つ、第1基板2と第2基板3とを、キャビティCにおける封止性を高めながら強固に接合することが可能になる。
【0072】
なお、本実施形態においては、第1基板2と第2基板3とを接合するにあたり、第1金属接合膜51及び第2金属接合膜52を上記材料から構成して金属拡散接合させることには限定されない。例えば、第1金属接合膜51及び第2金属接合膜52の各層を金(Au)又はスズ(Sn)から構成し、Au-Sn共晶接合させた構成を採用してもよい。この場合、例えば、第1下地層51a及び第2下地層52a、並びに、第1接合層51b及び第2接合層52bを、それぞれAu-Sn共晶合金から形成し、共晶温度まで加熱及び溶融させることで、第1下地層51a及び第1接合層51bと、第2下地層52a及び第2接合層52bとの間を共晶接合させる。これにより、第1基板2と第2基板3とを強固且つ安定して接合することができ、キャビティCの高い封止気密性が得られる。
【0073】
第1金属接合膜51及び第2金属接合膜52の各層を金又はスズから構成した場合の、各層の組成としては、特に限定されないが、例えば、Au-Snを20~22%で含むものを用いることができる。
また、この場合の第1金属接合膜51及び第2金属接合膜52の各層の厚みも、特に限定されないが、例えば、5~10μmの厚みを有するペースト状又はリボン状に構成することができる。
また、第1金属接合膜51と第2金属接合膜52とをAu-Sn共晶接合させた場合の封止幅、即ち、第1金属接合膜51及び第2金属接合膜52の幅についても、特に限定されないが、例えば、0.1~0.5mmの範囲とすることができる。
【0074】
さらに、第1基板2の上面2aには、上述した電極81,82、埋め込み配線71,72、第1コンタクト91a,92a及び第2コンタクト91b,92bが設けられている。
【0075】
埋め込み配線71,72は、上述したように、遠赤外線検出素子4と電極81,82とを電気的に接続するものである。埋め込み配線71,72は、電極81,82及び遠赤外線検出素子4における図示略の出力端子の数に応じて複数で設けられており、図2中においては、埋め込み配線71,72の一部のみを示している。また、電極81,82は、遠赤外線検出素子4に対して、第1信号配線部61及び第2信号配線部62を介して電気的に接続されている。また、図示例の埋め込み配線71,72は、第1基板2の厚さ方向において、中央部よりも上方に埋設されており、電極81,82、並びに、第1信号配線部61及び第2信号配線部62の下方にわたるように配置されている。
【0076】
埋め込み配線71,72の材料としては、優れた導電性を有する配線材料又は電極材料であれば、特に限定されず、従来からこの分野で用いられている金属材料等を何ら制限無く用いることができる。このような材料としては、例えば、ポリシリコン配線やアルミニウム(Al)配線等、埋め込み配線に一般的に用いられる導電性材料が挙げられる。
【0077】
電極81,82は、埋め込み配線71,72及び第1コンタクト91a,92a等を介して遠赤外線検出素子4と電気的に接続され、遠赤外線検出素子4による検出信号等を外部に出力するものである。電極81,82は、第1基板2の上面2a上に確保された電極配置領域23a,23bにおいて、それぞれ対向する縁部に沿って設けられており、図示例においては、電極81と電極82とが、それぞれ対向して5カ所に設けられている。また、電極81,82は、平面視で、第1基板2と対向して設けられる第2基板3よりも外側に設けられている。電極81,82は、例えば、遠赤外線検出素子4による検出信号等を必要とする種々の外部機器に対して電気的に接続可能に設けられる。
【0078】
電極81,82の材料としても、従来からこの分野で用いられている金属材料等を何ら制限無く用いることができ、例えば、アルミシリコン合金(AlSi)及び窒化チタン(TiN)をスパッタリング法によって順次積層したもの等を用いることができる。
また、詳細を後述するように、電極81,82を、第1金属接合膜51と同じ工程で同時に形成する場合には、これら各電極の材料として、上述した第1金属接合膜51と同じ材料を用いればよい。
【0079】
第1コンタクト91a,92aは、埋め込み配線71,72と電極81,82とを電気的に接続するものであり、第2コンタクト91b,92bは、埋め込み配線71,72と第1信号配線部61又は第2信号配線部62とを電気的に接続するものである。図2に示す例においては、第1コンタクト91a,92aが埋め込み配線71,72の一端側に接続され、第2コンタクト91b,92bが、埋め込み配線71,72の他端側に接続されている。
【0080】
上記により、遠赤外線検出素子4は、第1信号配線部61及び第2信号配線部62、第2コンタクト91b,92b、埋め込み配線71,72、及び、第1コンタクト91a,92aを介して電極81,82と電気的に接続されている。
【0081】
第1コンタクト91a,92a及び第2コンタクト91b,92bを構成する材料としても、特に限定されず、従来からこの分野で用いられている金属材料を何ら制限無く用いることができる。
また、電極81,82の場合と同様、第1コンタクト91a,92a及び第2コンタクト91b,92bを、第1金属接合膜51と同じ工程で同時に形成する場合には、これら各コンタクトの材料として、上述した第1金属接合膜51と同じ材料を用いればよい。
【0082】
ガス吸着層10は、上述したように、第2基板3における、キャビティ部32によって確保されるキャビティCに露出した面のうち、第1基板2に設けられた遠赤外線検出素子4と対向する部分を除いた位置に設けられる。図1及び図2に示す例においては、ガス吸着層10が、平面視で、第2基板3における遠赤外線検出素子4と対向する部分を取り囲むように、平面視囲繞形状で設けられている。
【0083】
ガス吸着層10の材質は、例えば、水素や酸素等のガスを吸着できるゲッター剤からなるものであれば、とくに限定されず、例えば、少なくとも、チタン、ジルコニウム又はニッケル等を含むゲッター剤からなるものを採用することができる。ガス吸着層10を、上記のゲッター剤から構成することで、ガス吸着層10によるキャビティC内のガス吸着効果が向上し、真空度がさらに高められる。
【0084】
なお、ガス吸着層10の寸法及び形状は、特に限定されず、ガス吸着層10によるキャビティC内のガス吸着効率を勘案しながら、適宜、設計することができる。また、ガス吸着層10の平面視形状は、図1に示す例のように、第2基板3におけるキャビティ部32によって確保されるキャビティCに露出した面のうち、遠赤外線検出素子4に対応する位置の周囲全体を取り囲む矩形状とすることが、ガス吸着層10の配置面積を大きく確保でき、キャビティC内の気密品質が高められる点から好ましい。
【0085】
また、本実施形態においては、ガス吸着層10を、遠赤外線検出素子4と重ならない位置にのみ形成した例を示しているが、遠赤外線検出素子4における受光に支障が生じない程度であれば、遠赤外線検出素子4とガス吸着層10とが若干重なった構成とすることも可能である。
一方、遠赤外線センサとしての特性を最大限まで高める観点からは、図1及び図2等に示す例のように、遠赤外線検出素子4とガス吸着層10とが全く重ならない構成とすることがより好ましい。
【0086】
本実施形態の遠赤外線センサ用パッケージを含む遠赤外線センサ1によれば、上述したように、第2基板3における下面3a側及び上面3b側の両方の外縁、即ち、キャビティ部32の内側面32b及び第2基板3の周端である側面31bが、上面3b側から下面3a側に向かうに従って平面視で第2基板3の外側方向に向かうよう、互いに沿うように傾斜した傾斜面とされていることにより、第2基板3におけるこの部分が薄肉化されているので、斜め方向から入射した遠赤外線が減衰するのを抑制できる。これにより、光の入射範囲を広角化させることができるので、遠赤外線の検出角度を広角化することが可能になる。従って、低背化した構成でありながら、遠赤外線を、広角化した検出角度で効率よく受光できる。
【0087】
また、第2基板3における側面31b及びキャビティ部32の内側面32bが上記のような傾斜面とされていることで、第1基板2の電極配置領域23a,23bを露出させる部分における、第2基板3の上面3b側の開口(図2及び図3E等に示す貫通領域33を参照)が大きくなる。これにより、電極81,82にワイヤーボンディングすることで、プリント基板等に対するCOB(Chip On Board)でモジュールを製作する際に、ボンディングツールであるキャピラリーと干渉するのを回避でき、第2基板3における、キャピラリーとの干渉を回避するためのスペースを極小化することができる。従って、ワイヤーボンディングによる接合品質が確保されるとともに、遠赤外線センサを構成するパッケージ全体を小型化することができるので、製品コストを低減することが可能になる。
【0088】
また、本実施形態の遠赤外線センサ用パッケージを含む遠赤外線センサ1によれば、第2基板3において、さらに、キャビティ部32の内側面32bが傾斜面であることで、接合部31が均一に薄肉化されるので、斜め方向から入射した遠赤外線が減衰するのをより効果的に抑制できる。これにより、光の入射範囲をより広角化させることができるので、上述したような、低背化した構成でありながら、遠赤外線を、広角化した検出角度で効率よく受光できる効果がより安定的に得られる。
【0089】
また、本実施形態の遠赤外線センサ用パッケージを含む遠赤外線センサ1によれば、第2基板3における上記の傾斜面、具体的には、第2基板3の側面31b及びキャビティ部32の内側面32bの傾斜角度が、シリコン基板の(111)面からなる、シリコン基板の結晶異方性に由来する結晶角度である約54.7°の傾きを有している。このように、シリコン基板の結晶方位性に由来する安定した角度を有する傾斜面とされていることで、接合部31の肉厚がより安定して均一化されるので、上述したような、低背化した構成でありながら、遠赤外線を、広角化した検出角度で効率よく受光できる効果がさらに安定的に得られる。
【0090】
次に、本実施形態の遠赤外線センサ1を用いた各種検出に係る処理の一例について説明する。
まず、赤外線が第2基板3の上面3b側から入射して第2基板3を透過すると、遠赤外線検出素子4は、その遠赤外線を検出して検出信号を出力する。遠赤外線検出素子4から出力された検出信号は、第1信号配線部61及び第2信号配線部62、第2コンタクト91b,92b、埋め込み配線71,72、及び、第1コンタクト91a,92aを通り、電極81,82から外部に向けて出力される。電極81,82から出力された検出信号は、図示略の外部機器等に送信されて所定の動作が行われる。
【0091】
[遠赤外線センサ用パッケージ及び遠赤外線センサの製造方法]
次に、本実施形態の遠赤外線センサ用パッケージを含む遠赤外線センサ1を製造する方法について、図3A図3Fを適宜参照しながら詳述する(遠赤外線センサ1の構成については図1及び図2も適宜参照)。
【0092】
本実施形態の遠赤外線センサ1の製造方法は、例えば、図1及び図2に示すような本実施形態の遠赤外線センサ1を製造する方法であり、まず、遠赤外線センサ用パッケージを製造するための、少なくとも以下の工程(1),(2)を含む方法である。
工程(1):基板材料の表面をエッチングすることにより、上面2a側に凹状のデバイス領域22を形成して第1基板2を得る。
工程(2):基板材料の表面をエッチングすることにより、シリコン基板の少なくとも一部に貫通領域33を形成するとともに、第1基板2との接合面となる下面3a側に凹状のキャビティ部32を形成し、さらに、平面視でキャビティ部32を囲むように設けられる接合部31を形成して第2基板3を得る。この際、第2基板3の下面3a側及び上面3b側の両方の外縁、即ち、キャビティ部32の内側面32b及び第2基板3の周端である側面31bを、第2基板3の上面3b側から下面3a側に向かうに従って、平面視で第2基板3の外側に向かって傾斜するよう、互いに沿うように傾斜した傾斜面として形成する。
【0093】
そして、本実施形態の遠赤外線センサ1の製造方法は、上記の工程(1)及び工程(2)の後に、さらに、少なくとも以下の工程(3)~(9)を含む方法である。
工程(3):工程(1)で得られた第1基板2の上面2a側に、第2基板3に設けられた接合部31に対応する位置で第1金属接合膜51を形成する。
工程(4):工程(1)で得られた第1基板2の上面2a側における電極配置領域23a,23bに、電極81,82を配置する。
工程(5):工程(1)で得られた第1基板2のデバイス領域22に遠赤外線検出素子4を配置する。
工程(6):工程(2)で得られた第2基板3における接合部31の端面31aを覆うように第2金属接合膜52を形成する。
工程(8):第1基板2と第2基板3との間に遠赤外線検出素子4が配置されるように第1基板2と第2基板3とを重ね合わせ、第1金属接合膜51と第2金属接合膜52とを互いに加圧して金属拡散接合させることで、遠赤外線検出素子4上にキャビティCを確保しながら、第1基板2と第2基板3とを接合する。
工程(9):ダイシングラインLに沿って第1基板2及び第2基板3を切断することにより、チップ単位に個片化する。
【0094】
また、本実施形態においては、上記の工程(6)と工程(8)との間に、さらに、工程(2)で得られた第2基板3における、キャビティ部32によって確保されるキャビティCに露出する面のうち、第1基板2に設けられた前記遠赤外線検出素子4と対向する位置を除いた少なくとも一部を覆うようにゲッター剤を塗布してガス吸着層10を形成する工程(7)を備えた例について説明する。
【0095】
まず、工程(1)において、例えばシリコン基板等からなる基板材料の表面をウェットエッチング又はドライエッチングし、遠赤外線検出素子4を収容する凹状のデバイス領域22を形成して第1基板2を作製する(図3D中の第1基板2を参照)。
具体的には、工程(1)では、まず、基板材料となるシリコン基板の表面に、例えば、フォトリソグラフィ法により、凹状のデバイス領域22をウェットエッチングで形成するための、図示略のレジストパターンを形成する。
次いで、シリコン基板の表面をドライエッチング又はウェットエッチングすることにより、凹状のデバイス領域22を形成する。
その後、第1基板2からレジストパターンを剥離する。
【0096】
工程(1)においては、フォトリソグラフィ法によってレジストパターンを形成するにあたり、例えば、スピンコート法等を用いて、従来公知の条件でレジストパターンを形成することができる。
また、工程(1)においては、ドライエッチングを用いてシリコン基板をエッチング加工することができる一方、ウェットエッチングを用いた方法も採用できる。このように、工程(1)においてウェットエッチングを行う場合の条件としても、特に限定されず、例えば、従来からシリコン基板のエッチングに一般的に用いられている、ヒドラジン(N)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)等のエッチング液を用いることができる。また、エッチング液の温度やエッチング時間等の各条件についても、従来公知の条件を何ら制限無く採用できる。
【0097】
次いで、本実施形態で説明する例においては、上記の工程(1)において、第1基板2におけるデバイス領域22を除く位置に埋め込み配線71,72を形成する(図3D中の第1基板2を参照)。
【0098】
具体的には、まず、第1基板2の上面2aに、図示略の絶縁膜(酸化膜)を形成する。
次いで、上記の図示略の絶縁膜を形成した領域に、例えば、{TiN/AlSi/TiN}の積層構造、あるいは、ポリシリコンからなる埋め込み配線膜を、例えば、スパッタリング法や蒸着法(CVD法)等の方法で成膜する。
次いで、フォトリソグラフィ法により、埋め込み配線71,72を形成するための、図示略のレジストパターンを形成する。
次いで、上記の埋め込み配線膜をドライエッチングすることにより、パターニングされた埋め込み配線71,72を形成する。
次いで、第1基板2からレジストパターンを剥離する。
【0099】
次いで、埋め込み配線71,72上に、図示略の絶縁膜(酸化膜や窒化膜)を、例えば、蒸着法によって形成することにより、埋め込み配線71,72を覆い込む。
その後、必要に応じて、埋め込み配線71,72上に形成した図示略の絶縁膜を、例えば、CMP法(化学機械研磨:Chemical Mechanical Polishing)等の方法で平坦化する。
【0100】
次いで、本実施形態で説明する例においては、上記の工程(1)において、さらに、後述する工程(3)において第1コンタクト91a,92a及び第2コンタクト91b,92bを設けるためのホールを形成する。
この際、まず、第1基板2の上面2aにおける、上記のホールの形成予定位置(第1コンタクト91a、92a及び第2コンタクト91b,92bに対応する位置)を除いた全面に、フォトリソグラフィ法によってレジストパターンを形成する。
次いで、第1基板2の上面2aをドライエッチングすることにより、埋め込み配線71,72の両端に対応する位置に、第1コンタクト91a,92a及び第2コンタクト91b,92bを設けるためのホールを形成する。
次いで、第1基板2からレジストパターンを剥離する。
【0101】
本実施形態では、上記工程(1)を実施するとともに、工程(2)において、上述したような、シリコン基板の(100)面をエッチングすることにより、シリコン基板の少なくとも一部に貫通領域33を形成するとともに、下面3a側に、凹状のキャビティ部32を形成し、さらに、平面視でキャビティ部32を囲むように概略枠状に設けられる接合部31を形成して第2基板3を作製するプロセスを実施する(図3A図3Bを参照)。
【0102】
即ち、工程(2)においては、まず、基板材料として、例えば、シリコン基板を準備する。
次いで、シリコン基板の表面に、フォトリソグラフィ法により、キャビティ部32、貫通領域33、及び側面31bが傾斜した接合部31をウェットエッチングで形成するための、図示略の酸化膜等からなるマスクパターンを形成する。
【0103】
次いで、シリコン基板の一面側(表面:上面3b側)をウェットエッチングすることにより、図3Aに示すように、まず、貫通領域33を形成しながらシリコン基板を矩形状に分割する。この際、本実施形態で説明する工程(2)においては、例えば、シリコン基板の(100)面をウェットエッチングでシリコン異方性エッチングすることで、シリコン基板の側面側を、シリコン基板の(111)面を出現させた傾斜面として形成する。これにより、シリコン基板からなる第2基板3における、上面3b側の外縁となる側面31bを、上面3b側から下面3a側に向かうに従って、平面視で第2基板3の外側に向かうように傾斜した傾斜面とされた、シリコン基板の結晶異方性に由来する角度である約54.7°の傾斜面からなる側面31bを有した接合部31を形成する。
【0104】
上述したように、第2基板3の側面31bの傾斜面はシリコン基板をエッチングする際の、シリコンの異方性によって形成される。より具体的には、第2基板3として(100)面を有するシリコン基板を採用し、このシリコン基板をエッチングしたとき、シリコンの結晶異方性に起因するエッチング速度の勾配が生じる。このような作用により、図示例のような傾斜面とされた形状を有し、(111)面が出現した側面31bが得られる。このような手順で得られた第2基板3は、接合部31における側面31bの形状精度等がより高められたものとなる。
【0105】
工程(2)で形成する貫通領域33の寸法や平面視形状は、特に限定されず、電極81,82を露出させ、且つ、外部との結線等を施しやすい形状であれば、如何なる形状、寸法であってもよい。
【0106】
次いで、シリコン基板の他面側(第1基板2との接合面となる下面3a側)をウェットエッチングすることにより、図3Bに示すように、接合部31に囲まれるように凹状のキャビティ部32を形成する。
本実施形態で説明する例の工程(2)では、シリコン基板からなる第2基板3の下面3a側の外縁、即ち、キャビティ部32の内側面32bを、シリコン基板の(100)面をウェットエッチングでシリコン異方性エッチングすることで、シリコン基板の(111)面を出現させた傾斜面として形成する。これにより、キャビティ部32の内側面32bを、上記の側面31bと互いに沿うように傾斜した傾斜面、即ち、上面3b側から下面3a側に向かうに従って、平面視で第2基板3の外側に向かって傾斜するように、シリコン基板の結晶異方性に由来する角度である約54.7°の傾斜面として形成する。本実施形態の製造方法で得られる遠赤外線センサ1は、上記のキャビティ部32に対応する領域が封止空間であるキャビティCとして確保される。
その後、第2基板3から図示略の酸化膜等からなるマスクパターンを剥離する。
【0107】
工程(2)においても、工程(1)と同様、フォトリソグラフィ法によってレジストパターンを形成するにあたり、例えばスピンコート法等を用いて、従来公知の条件で酸化膜等からなるマスクパターンを形成することができる。また、工程(2)におけるウェットエッチング条件としても、工程(1)で説明した条件と同様、従来からシリコン基板のエッチングに一般的に用いられている、N、KOH、TMAH等のエッチング液を用いることができ、エッチング液の温度やエッチング時間等の各条件についても従来公知の条件を何ら制限無く採用できる。これにより、特に、複雑な工法やエッチング液を使用することなく、シリコンの有する結晶異方性により、深さ方向に向かって(111)面が出現し、この(111)面による傾斜面を形成できる。
【0108】
本実施形態では、工程(2)において、例えば、接合部31及び貫通領域33をウェットエッチングで形成した後、エッチング条件を適宜変更したうえで、キャビティ部32をウェットエッチングで形成することで、それぞれ別工程で形成する方法を採用することができる。このように、接合部31及び貫通領域33と、キャビティ部32とを別工程で形成する場合であっても、同じウェットエッチング装置を用いることができるので、生産効率が向上するとともに、製造コストを低減することも可能となる。
【0109】
次に、工程(3)においては、工程(1)で得られた第1基板2の上面2a側に、第2基板3に設けられた接合部31に対応する位置で、金属膜からなる第1金属接合膜51を形成する(図3Dを参照)。
また、本実施形態で説明する例では、工程(3)及び工程(4)を同時に実施することにより、第1基板2の上面2aに、上記の第1金属接合膜51とともに、電極配置領域23a,23bに、電極81,82を形成することも可能である。また、本実施形態では、同時に実施する工程(3)及び工程(4)において、上記の第1金属接合膜51及び電極81,82に加え、さらに、第1コンタクト91a,92a、第2コンタクト91b,92b、第1信号配線部61及び第2信号配線部62を同時に形成することも可能である。
【0110】
具体的には、まず、デバイス領域22が形成された第1基板2の上面2aに、スプレーコート法等のフォトリソグラフィ法により、第1金属接合膜51を形成するための、図示略の酸化膜等からなるレジストパターンを形成する。この際、第1基板2の上面2aにおける、第2基板3の接合部31に対応する位置、第1コンタクト91a,92a、第1信号配線部61及び第2信号配線部62、第2コンタクト91b,92bを形成するためのホールの位置、並びに、電極81,82の形成予定位置を除いた全面にレジストパターンを形成する。
【0111】
次いで、例えば、スパッタリング法、蒸着法又はめっき法等の方法により、第1基板2の上面2a上に、第1下地層51aと第1接合層51bとが積層されてなる第1金属接合膜51を形成する。
なお、工程(3)においては、材料及び積層順を適宜選択することにより、上述したような{Au/Ta}構造、又は、{Al/TiN}構造の薄膜からなる第1金属接合膜51を形成することができる。
また、この際、第2基板3側に形成される第2金属接合膜52が{Au/Ta}構造である場合には、第1金属接合膜51も同様の材料から形成する。この場合には、第1金属接合膜51のAu層(第1接合層51b)と第2金属接合膜52のAu層(第2接合層52b)とが接合するように、各層の積層順を調整する。
同様に、第2金属接合膜52が{Al/TiN}構造からなる場合には、第1金属接合膜51も同様の材料から形成する。この場合には、第1金属接合膜51のAl層(第1接合層51b)と第2金属接合膜52のAl層(第2接合層52b)とが接合するように、各層の積層順を調整する。
その後、第1基板2の上面2aから図示略のレジストパターンを剥離する。
【0112】
また、本実施形態で説明する例の工程(3)においては、図3D中に示すように、第1基板2の上面2a側に、スパッタリング法、蒸着法又はめっき法等の方法によって導電性材料を積層することにより、第1コンタクト91a,92a及び第2コンタクト91b,92bを、それぞれ埋め込み配線71,72の両端側に接続するように形成する。
さらに、工程(4)において、第1コンタクト91a,92aに対してそれぞれ接続するように、電極81,82を形成するとともに、第2コンタクト91b,92bに対してそれぞれ接続するように、第1信号配線部61及び第2信号配線部62を形成する。
【0113】
この際、第1コンタクト91a,92a及び第2コンタクト91b,92bを、例えば、タングステン(W)を用いて、スパッタリング法や蒸着法等の方法により、上記の工程(2)で形成したホール内に埋め込むように形成することができる。また、電極81,82については、これら電極81,82の形成予定位置(電極配置領域23a,23b)に、TiN及びAlSiを、スパッタリング法等の方法で順次積層することで形成することができる。さらに、第1信号配線部61及び第2信号配線部62についても、これらの形成予定位置に、TiN及びAlSiを、スパッタリング法等の方法で順次積層することで形成することができる。
【0114】
一方、例えば、第1コンタクト91a,92a及び第2コンタクト91b,92b、電極81,82、並びに第1信号配線部61及び第2信号配線部62を、第1金属接合膜51と同じ工程で同時に形成する場合には、上述した第1金属接合膜51と同じ材料を用い、例えば、スパッタリング法、蒸着法又はめっき法等によって形成することができる。この場合、第1コンタクト91a,92a及び第2コンタクト91b,92b、電極81,82、並びに第1信号配線部61及び第2信号配線部62は、第1金属接合膜51と同様の積層構造、即ち、{Au/Ta}構造、又は、{Al/TiN}構造を有するものとなる。
【0115】
次に、工程(5)においては、工程(1)で得られた第1基板2のデバイス領域22に、遠赤外線検出素子4を配置する(図3Dを参照)。
【0116】
次に、本実施形態では、上記の工程(3)、工程(4)及び工程(5)を実施するとともに、これらと平行して、工程(6)において、上述したような、第2基板3に形成された接合部31の端面31aを覆うように第2金属接合膜52を形成するプロセスを実施する(図3Cを参照)。
【0117】
具体的には、まず、工程(2)で得られた第2基板3の下面3a側に、スプレーコート法等のフォトリソグラフィ法により、第2金属接合膜52を形成するための、図示略の酸化膜等からなるレジストパターンを形成する。この際、第2基板3の下面3a側における接合部31の端面31aの部分を除いた全面にレジストパターンを形成する。
【0118】
次いで、例えば、スパッタリング法、蒸着法又はめっき法等の方法により、図3Cに示すように、接合部31の端面31aに、第2下地層52aと第2接合層52bとが積層されてなる第2金属接合膜52を形成する。
この際、材料及び積層順を適宜選択することにより、上述したような{Au/Ta}構造、又は、{Al/TiN}構造の薄膜からなる第2金属接合膜52を形成することができる。
その後、第2基板3の下面3aから図示略のレジストパターンを剥離する。
【0119】
なお、上記の工程(3)及び工程(6)では、後述の工程(8)において、第1金属接合膜51と第2金属接合膜52とをAu-Sn共晶接合させることを目的として、例えば、第1金属接合膜51及び第2金属接合膜52の各層を金(Au)又はスズ(Sn)から構成することも可能である。
【0120】
次に、工程(7)においては、上述したように、第2基板3における、キャビティ部32によって確保されるキャビティCに露出する面のうち、第1基板2に設けられた遠赤外線検出素子4と対向する位置を除いた少なくとも一部を覆うようにゲッター剤を塗布することで、ガス吸着層10を形成する(図3Cを参照)。
【0121】
具体的には、まず、第2基板3の下面3a側に、スプレーコート法等のフォトリソグラフィ法によって図示略のレジストパターンを形成するか、又は、第2基板3の下面3a側を、パターン化された図示略のメタルマスクで覆う。この際、第2基板3の下面3aにおける、遠赤外線検出素子4と対向する位置を除く全面を覆うように、上記のレジストパターンを形成するか、又は、メタルマスクを配置する。
【0122】
そして、例えば、チタン、ジルコニウム又はニッケルを含むゲッター剤を、従来公知のディスペンサーやスクリーン印刷法、あるいは、スパッタリング法や蒸着法等を用い、第2基板3の下面3aに塗布する。この際、図3C等に示すように、ガス吸着層10が、第2基板3の下面3aにおける、遠赤外線検出素子4と対向する位置の周囲を取り囲むように、ゲッター剤を塗布する。
その後、第2基板3から図示略のレジストパターン又はメタルマスクを剥離する。
【0123】
次に、工程(8)においては、上述したように、第1基板2と第2基板3との間に遠赤外線検出素子4が配置されるように第1基板2と第2基板3とを重ね合わせ、第1金属接合膜51と第2金属接合膜52とを互いに加圧して金属拡散接合させることで、遠赤外線検出素子4上にキャビティCを確保しながら、第1基板2と第2基板3とを接合する(図3Eを参照)。
【0124】
具体的には、まず、図3Eに示すように、第1金属接合膜51と第2金属接合膜52とを突き合わせるように、第1基板2と第2基板3とを重ね合わせる。
次いで、第1基板2と第2基板3とを互いに加圧することにより、第1金属接合膜51と第2金属接合膜52との間に金属拡散接合を発現させ、これらの部分を接合することで、金属接合体50を形成させる。
【0125】
上記の拡散接合を行う際の条件、即ち、遠赤外線センサ1のキャビティCを封止する条件としては、特に限定されないが、例えば、第1基板2側の第1金属接合膜51、並びに、第2基板3側の第2金属接合膜52が{Au(第1接合層51b又は第2接合層52b)/Ta(第1下地層51a又は第2下地層52a)}の層構造である場合には、例えば、温度条件を300~350℃の範囲とし、加圧力を450~900kPaの範囲とすることが好ましい。
【0126】
一方、第1金属接合膜51、並びに、第2金属接合膜52が{Al(第1接合層51b又は第2接合層52b)/TiN(第1下地層51a又は第2下地層52a)}の層構造である場合には、例えば、温度条件を350~400℃の範囲とし、加圧力を27~60MPaの範囲とすることが好ましい。
【0127】
上述したように、第1基板2と第2基板3とを接合する際の、金属接合体50によるキャビティCに対する封止幅(接合幅)、即ち、接合部31に対応して形成された金属接合体50の最大幅としても特に限定されない。一方、この部分の接合性を高め、キャビティCの封止気密性をより高めること等を考慮すると、上記の封止幅(最大幅)は、第1下地層51a及び第2下地層52aをTaとし、第1接合層51b及び第2接合層52bをAuとした場合には、例えば、0.10~0.30mmとすることが好ましい。また、第1下地層51a及び第2下地層52aをTiN、第1接合層51b及び第2接合層52bをAlとした場合には、例えば、0.03~0.1mmの幅とすることが好ましい。
【0128】
また、工程(8)においては、上述したように、第1金属接合膜51及び第2金属接合膜52の各層を金(Au)又はスズ(Sn)から構成することで、Au-Sn共晶接合させることで金属接合体50を形成させてもよい。この場合には、例えば、温度条件を300~400℃の範囲とし、加圧力を0~1kPaの範囲としたうえで、封止幅を0.1~0.5mmとすることが好ましい。
【0129】
そして、本実施形態では、工程(9)において、図3Fに示すように、ダイシングラインLに沿って、ブレードダイシング等によって第1基板2を切断することにより、チップ単位に個片化する。
以上の各工程により、本実施形態の遠赤外線センサ用パッケージを含む遠赤外線センサ1を製造することができる。
なお、上記の各工程は、可能な範囲で、その工程順を変更したり、あるいは、同じ工程として行ったりすることも可能である。
【0130】
本実施形態の遠赤外線センサ用パッケージの製造方法、並びに、遠赤外線センサ1の製造方法によれば、工程(1)及び工程(2)で、第2基板3における下面3a側及び上面3b側の両方の外縁、即ち、キャビティ部32の内側面32b及び第2基板3の周端である側面31bにおいて、上面3b側から下面3a側に向かうに従って、平面視で第2基板3の外側方向に向かうよう、互いに沿うように傾斜した傾斜面とされた遠赤外線センサ用パッケージを製造した後、工程(3)~(6),(8),(9)(さらに、工程(7)も含んでもよい)の各工程により、斜め方向から入射して遠赤外線検出素子4に向かう遠赤外線が減衰するのを抑制可能な遠赤外線センサ1を製造できる。これにより、低背化した構成でありながら、遠赤外線を、広角化した検出角度で効率よく受光できる遠赤外線センサ1を製造することが可能になる。
【0131】
また、工程(2)において、第2基板3における下面3a側、即ち、キャビティ部32の内側面32bを傾斜面として形成することで、接合部が均一に薄肉化されるので、斜め方向から入射した遠赤外線が減衰するのをより効果的に抑制できる遠赤外線センサ1を製造することが可能になる。
【0132】
また、工程(2)で、第2基板3における側面31b、及び、キャビティ部32の内側面32bを、上記のような傾斜面に形成することにより、上述したように、第1基板2に設けられた電極81,82を露出させるための貫通領域33における上面3b側の開口が大きくなるので、例えば、遠赤外線センサ1を、ワイヤーボンディングによってプリント基板等に実装する際に、キャピラリーと干渉するのを回避できる。これにより、第2基板3における、キャピラリーとの干渉を回避するためのスペースを極小化できるので、ワイヤーボンディングによる接合品質が確保されるとともに、パッケージ全体を小型化することが可能となる。従って、遠赤外線を、広角化した検出角度で効率よく受光できる遠赤外線センサ1を低コストで製造することが可能になる。
【0133】
また、本実施形態によれば、工程(2)において、さらに、第2基板3のキャビティ部32の内側面32bを傾斜面に形成することで、接合部31を均一に薄肉化できるので、斜め方向から入射した遠赤外線が減衰するのをより効果的に抑制可能となる。これにより、より広角化した検出角度で、遠赤外線を効率よく安定的に受光できる遠赤外線センサ1を製造できる。
【0134】
さらに、本実施形態によれば、工程(2)において、第2基板3におけるシリコン基板の(111)面からなる傾斜面の傾斜角度、即ち、第2基板3の側面31b、及び、キャビティ部32の内側面32bを、シリコン基板の結晶異方性に由来する結晶角度である54.7°の傾きを有する、安定した角度の傾斜面に形成することで、接合部31の肉厚がより安定して均一化される。これにより、上述したような、低背化した構成でありながら、遠赤外線を、広角化した検出角度で効率よく受光できる効果がさらに安定的に得られる遠赤外線センサ1を製造できる。
【0135】
<第2の実施形態>
以下に、本開示の第2の実施形態に係る遠赤外線センサ用パッケージ及び遠赤外線センサ、並びに、それらの製造方法について、図4及び図5を適宜参照しながら詳述する。
図4は、本実施形態の遠赤外線センサ110を模式的に説明する平面図であり、図5は、図4中に示す遠赤外線センサ110のB-B断面図である。
なお、以下に説明する第2の実施形態の遠赤外線センサ110においては、上述した第1の実施形態の遠赤外線センサ1と共通する構成については、図中において同じ符号を付与するとともに、その詳細な説明を省略する場合がある。
【0136】
図4及び図5に示すように、第2の実施形態の遠赤外線センサ110は、第2基板3Aに設けられる貫通領域33、及び、第1基板の上面2aに配置される、電極配置領域23bに設けられた電極82が、第1基板2及び第2基板3Aにおける平面視で一辺側にのみ設けられている点で、第1の実施形態の遠赤外線センサ1とは異なる。
なお、図5に示す例においては、第1信号配線部61と電気的に接続される内部配線、第1コンタクト及び第2コンタクトの図示を省略している。
【0137】
また、図4及び図5に示す遠赤外線センサ110においては、第2基板3Aにおける接合部31Aの周縁部31cが面取りされており、この周縁部31cが垂直面とされている点でも上述した第1の実施形態の遠赤外線センサ1とは異なる。
【0138】
本実施形態のように、第1基板2及び第2基板3Aを平面視矩形状に構成した場合には、少なくとも一辺側に沿って配置されていればよい。また、本開示の遠赤外線センサは、第1,2の実施形態の遠赤外線センサ1,100のように、一辺側と対向する他辺側にも設けた構成を採用してもよい。これにより、第1基板2に設けられる電極81,82、及び、第2基板3Aに設けられる貫通領域33の位置や数は、例えば、遠赤外線センサ用パッケージをプリント基板等に対してCOBする場合のスペース等を想定しながら、フレキシブルに設計することができる。
従って、本実施形態のように、第1基板2の一辺側にのみ、電極82(電極配置領域23b)を設けた場合には、遠赤外線センサ用パッケージ、並びに、遠赤外線センサ110が搭載されるプリント基板を小型化することが可能となる。一方、第1,2の実施形態の遠赤外線センサ1,100のように、さらに他辺側にも電極81(電極配置領域23a)を設けた場合には、より複雑な電気的接続に対応することも可能となる。
【0139】
さらに、本実施形態の遠赤外線センサ110によれば、上記のような、接合部31Aの周縁部31cが面取りされた構成を採用することで、ダイシングによってチップ単位に個片化する際に、ダイシングブレードによる応力を分散させることができる。これにより、ダイシングブレードの接触圧力に起因する欠け、あるいはチッピングが発生するのを抑制できるので、パッケージ及びセンサとしての特性が向上するとともに、歩留まりも向上する。
【0140】
なお、本実施形態の遠赤外線センサ110を製造する場合には、第1の実施形態で説明した工程(1)~(9)に加え、さらに、工程(2)と同時、又は、工程(2)の後に、第2基板3における接合部31の周縁部31cをドライエッチングによって面取りする工程(10)を備える方法を採用できる。
工程(10)を工程(2)と同時に行う場合には、例えば、まず、ウェットエッチングによって第2基板3Aにおける側面31bを傾斜面として形成した後、第2基板3Aの下面3aに形成する凹状のキャビティ部32をドライエッチングによって形成し、これと同時に、接合部31の周縁部31cを面取りする方法を採用できる。
工程(10)を工程(2)の後に行う場合には、まず、工程(2)において、ウェットエッチングによってキャビティ部32及び接合部31を有する第2基板3Aを得た後、工程(10)として、さらにドライエッチングを行うことで接合部31の周縁部31cを面取りする方法を採用できる。
【0141】
<第3の実施形態>
以下に、本開示の第3の実施形態に係る遠赤外線センサについて、図6を適宜参照しながら詳述する。
図6は、本実施形態の遠赤外線センサ120を模式的に説明する平面図である。
【0142】
図6に示すように、本実施形態の遠赤外線センサ120は、ガス吸着層10Aが、第2基板3におけるキャビティCに露出した面のうち、第1基板2に設けられる遠赤外線検出素子4と対向する位置を除いて配置され、且つ、遠赤外線検出素子4と対向する位置を介して、一対の線状に設けられている点で、上述した第1,2の遠赤外線センサ1,110とは異なる。図6に示す例においては、平面視線状のガス吸着層10Aが、遠赤外線検出素子4と対向する位置を介して1箇所ずつ設けられている。
【0143】
本実施形態の遠赤外線センサ120によれば、光が入射してくる方向が決まっている場合に、光の入射を阻害しない位置で一対の線状に配置しながらガス吸着層10Aを設けることができる。また、このような一対の線状に配置されたガス吸着層10Aを備えることで、減圧された封止空間内のガスを効果的に吸着できる。これにより、外部からの遠赤外線の入射効率を高める効果と、キャビティC内の真空度を高める効果の両方が得られるので、遠赤外線を、広角化した検出角度で効率よく受光できるとともに、遠赤外線検出素子4による受光感度がより高められる。
【0144】
なお、本実施形態の遠赤外線センサ120を製造する場合には、第1の実施形態で説明した工程(7)において、ガス吸着層10Aを、第2基板3におけるキャビティCに露出した面のうち、第1基板2に設けられた遠赤外線検出素子4と対向する位置を除いた少なくとも一部を覆うようにゲッター剤を塗布することにより、遠赤外線検出素子4と対向する位置を介して一対の線状となるように形成すればよい。
【0145】
<第4の実施形態>
以下に、本開示の第4の実施形態に係る遠赤外線センサについて、図7を適宜参照しながら詳述する。
図7は、本実施形態の遠赤外線センサ130を模式的に説明する平面図である。
【0146】
図7に示すように、本実施形態の遠赤外線センサ130は、ガス吸着層10Bが、遠赤外線検出素子4と対向する位置を介して、一対で複数の線状に設けられている点で、上述した第3の実施形態に係る遠赤外線センサ120とは異なる。図7に示す例においては、平面視線状のガス吸着層10Bが、遠赤外線検出素子4と対向する位置を介して、3箇所ずつ平行に設けられている。
【0147】
本実施形態の遠赤外線センサ130によれば、一対で複数の線状に設けられたガス吸着層10Bを備えることで、ガス吸着層10Bが配置されている方向から光が入射する場合であっても、パッケージの内部に効率よく光を入射させることができる。これにより、外部からの遠赤外線の入射効率をさらに高める効果と、キャビティC内の真空度を高める効果の両方が得られるので、遠赤外線を、広角化した検出角度でより効率よく受光できるとともに、遠赤外線検出素子4による受光感度がさらに高められる。
【0148】
また、本実施形態の遠赤外線センサ130を製造する場合には、第1の実施形態で説明した工程(7)において、ガス吸着層10Bを、第2基板3におけるキャビティCに露出した面のうち、遠赤外線検出素子4と対向する位置を介して、一対で複数の線状となるように形成すればよい。
【0149】
なお、ガス吸着層の形成位置や形状は、図7(及び図6)に示すようなものには限定されず、詳細な図示は省略するが、例えば、第2基板におけるキャビティに露出した面のうち、遠赤外線検出素子と対向する位置を除く位置に、点状に設けられた構成を採用してもよい。ガス吸着層を点状に形成した場合、外部からの遠赤外線の入射を阻害することなく、実質的な吸着面積を大きく確保できることから、上記同様、キャビティC内のガスを効果的に吸着でき、キャビティC内の真空度が高められる。
【産業上の利用可能性】
【0150】
本開示の遠赤外線センサは、上述したように、低背化した構成でありながら、光の入射範囲をより広角化させることができ、遠赤外線を効率よく受光することが可能なものである。従って、本開示のパッケージは、信頼性の高い各種検出精度が要求される電子機器等における用途、例えば、携帯端末、スマートフォン、センサネットワーク・デバイス、モノのインターネット(IoT)技術等において非常に好適である。
【符号の説明】
【0151】
1,100,110,120,130…遠赤外線センサ(遠赤外線センサ用パッケージ)
2…第1基板
2a…上面
2b…下面
22…デバイス領域
23a,23b…電極配置領域
3,3A…第2基板
3a…下面
3b…上面
31…接合部
31a…端面
31b…側面
31c…周縁部
32,32A…キャビティ部
32a…天井面
32b,32c…内側面
33…貫通領域
4…遠赤外線検出素子
50…金属接合体
51…第1金属接合膜
51a…第1下地層
51b…第1接合層
52…第2金属接合膜
52a…第2下地層
52b…第2接合層
61…第1信号配線部
62…第2信号配線部
71,72…埋め込み配線
81,82…電極
91a,92a…第1コンタクト
91b,92b…第2コンタクト
10…ガス吸着層
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4
図5
図6
図7