(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022145020
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】メモリシステム
(51)【国際特許分類】
G11C 19/28 20060101AFI20220926BHJP
G06F 12/00 20060101ALI20220926BHJP
G06F 12/06 20060101ALI20220926BHJP
G11C 11/56 20060101ALI20220926BHJP
G11C 16/04 20060101ALI20220926BHJP
H01L 27/11556 20170101ALI20220926BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
G11C19/28 100
G06F12/00 597U
G06F12/06 520D
G11C11/56 200
G11C16/04 170
H01L27/11556
H01L29/78 371
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021046262
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100103263
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 康
(72)【発明者】
【氏名】佐貫 朋也
(72)【発明者】
【氏名】吉水 康人
(72)【発明者】
【氏名】中塚 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】堀井 秀人
(72)【発明者】
【氏名】前田 高志
【テーマコード(参考)】
5B074
5B160
5B225
5F083
5F101
【Fターム(参考)】
5B074AA10
5B160CA18
5B160MM18
5B225BA02
5B225BA19
5B225CA06
5B225DA01
5B225EA05
5B225EJ02
5B225FA07
5F083EP02
5F083EP22
5F083EP32
5F083EP76
5F083ER21
5F083GA01
5F083GA06
5F083GA10
5F083GA25
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5F083ZA21
5F101BA02
5F101BB02
5F101BD16
5F101BD22
5F101BD30
5F101BD34
5F101BE07
5F101BF05
(57)【要約】
【課題】大容量で低コストなストレージデバイス
【解決手段】メモリシステムは、複数のメモリセルが直列に接続されたストリングを複数有するメモリセルアレイと、
前記ストリング内の前記複数のメモリセルに記憶するべき、又は記憶されたデータに応じた電荷を、前記複数のメモリセル内のチャネルのポテンシャル井戸間で転送する制御を行うコントローラと、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のメモリセルが直列に接続されたストリングを複数有するメモリセルアレイと、
前記ストリング内の前記複数のメモリセルに記憶するべき、又は記憶されたデータに応じた電荷を、前記複数のメモリセル内のチャネルのポテンシャル井戸間で転送する制御を行うコントローラと、を備える、メモリシステム。
【請求項2】
前記ストリング内の前記複数のメモリセルのゲートに接続される複数の第1配線を備え、
前記複数の第1配線のそれぞれは、前記ストリング内の2以上の前記メモリセルのゲートに接続される、請求項1に記載のメモリシステム。
【請求項3】
前記複数の第1配線は、前記ストリング内の前記複数のメモリセルの接続順に、順繰りに対応するゲートに接続される、請求項2に記載のメモリシステム。
【請求項4】
前記ストリング内の前記複数のメモリセルのうち、隣接する2つのメモリセルのゲートに接続される2つの前記第1配線の電圧を相違させることで、一方のメモリセル内のポテンシャル井戸から他方のメモリセル内のポテンシャル井戸に電荷を転送する、請求項2又は3に記載のメモリシステム。
【請求項5】
前記複数のメモリセル内のポテンシャル井戸間でデータを転送する際には、前記複数のメモリセルに接続される前記複数の第1配線には、予め定めた複数の電圧レベルの電圧が順繰りに印加される、請求項2乃至4のいずれか一項に記載のメモリシステム。
【請求項6】
前記メモリセルは、
前記複数の第1配線のいずれかが接続されるゲートと、
前記ゲートと前記チャネルとの間に配置される浮遊ゲートと、を有し、
前記チャネルは、前記ゲートの電圧に応じて深さが調整される前記ポテンシャル井戸を有し、
前記ストリングを構成する前記複数のメモリセルのそれぞれが有する前記ポテンシャル井戸は、それぞれ繋がっている、請求項2乃至5のいずれか一項に記載のメモリシステム。
【請求項7】
前記浮遊ゲートは、多値データに応じた電荷を蓄積し、
前記ポテンシャル井戸は、多値データに応じた電荷を転送する、請求項6に記載のメモリシステム。
【請求項8】
前記コントローラは、データ読出し時に前記浮遊ゲートの蓄積電荷をポテンシャル井戸に移動させる際にゲートに印加させる電圧を、データ転送時に隣接する前記メモリセルのポテンシャル井戸から電荷の転送を受ける際に前記ゲートに印加される電圧よりも低くする、請求項6又は7に記載のメモリシステム。
【請求項9】
データ読出し時に前記浮遊ゲートから前記ポテンシャル井戸に移動する電荷は、前記浮遊ゲートの蓄積電荷が多い程少ない、請求項6乃至8のいずれか一項に記載のメモリシステム。
【請求項10】
前記コントローラは、前記ストリング内の同一の前記第1配線が接続されるゲートを有する2以上の前記メモリセル内の前記浮遊ゲートの蓄積電荷を、並行して対応する前記ポテンシャル井戸にそれぞれ移動させる、請求項6乃至9のいずれか一項に記載のメモリシステム。
【請求項11】
前記コントローラは、読出し対象でない前記メモリセルをオフさせることにより、オフ状態の前記メモリセル内の前記ポテンシャル井戸中の電荷を廃棄する、請求項6乃至10のいずれか一項に記載のメモリシステム。
【請求項12】
前記ストリング内の前記複数のメモリセルは、前記ストリング内のオフ状態の前記メモリセル内の前記ポテンシャル井戸中の電荷を集約させるポテンシャル井戸を有する電荷集約用のメモリセルを有し、
前記電荷集約用のメモリセルのゲートに接続される前記第1配線は、電荷集約用の所定の電圧に設定される、請求項6乃至11のいずれか一項に記載のメモリシステム。
【請求項13】
前記コントローラは、前記メモリセル内の前記複数のメモリセルのうち、書込対象の全メモリセルの前記ポテンシャル井戸に電荷を転送した後、前記書込対象の全メモリセルのゲートに接続される特定の前記第1配線にデータ転送時の電圧よりも高いプログラム電圧を印加して、前記書込対象の全メモリセルの前記浮遊ゲートに、対応する前記ポテンシャル井戸から電荷を転送する、請求項6乃至12のいずれか一項に記載のメモリシステム。
【請求項14】
前記コントローラは、一回の書込動作で、前記プログラム電圧が印加される前記第1配線に接続されるすべての前記メモリセルについて、一括して対応する前記ポテンシャル井戸から前記浮遊ゲートに電荷を転送する、請求項13に記載のメモリシステム。
【請求項15】
複数の前記ストリングの一端側に配置される複数の第2配線を備え、
前記複数のメモリセルのそれぞれが有するチャネルのポテンシャル井戸間で転送されるデータは、前記複数の第2配線にて送受される、請求項1乃至14のいずれか一項に記載のメモリシステム。
【請求項16】
前記複数の第2配線上の信号を読み出すとともに、前記複数の第2配線にデータ書き込みための信号を送出する読出し/書き込み制御回路を備える、請求項15に記載のメモリシステム。
【請求項17】
前記メモリセルアレイ内の前記ストリングは、NANDフラッシュメモリ内のストリングと同じ回路構成を有する、請求項1乃至16のいずれか一項に記載のメモリシステム。
【請求項18】
基板上に積層される複数の第1導電層と、
前記複数の第1導電層の間にそれぞれ積層される複数の第2導電層と、
前記複数の第1導電層及び前記複数の第2導電層の積層方向に延び、前記複数の第1導電層及び前記複数の第2導電層の交差部に前記複数のメモリセルを形成するピラーと、
前記複数の第1導電層及び前記複数の第2導電層の積層方向に延び、前記複数の第1導電層に接続される第1コンタクトプラグと、
前記複数の第1導電層及び前記複数の第2導電層の積層方向に延び、前記複数の第2導電層に接続される第2コンタクトプラグと、を備える、請求項1乃至17のいずれか一項に記載のメモリシステム。
【請求項19】
前記メモリセルアレイが実装されて-40℃以下に設定される第1基板と、
前記コントローラが実装されて-40℃以上の温度に設定され、前記第1基板と信号伝送ケーブルを介して信号の送受を行う第2基板と、を備える、請求項1乃至18のいずれか一項に記載のメモリシステム。
【請求項20】
前記第1基板は、液体窒素中に配置される、請求項19に記載のメモリシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、メモリシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
フラッシュメモリの発明と製品化以来、大容量で低コストなメモリおよびストレージが継続して求められている。例えば、三次元型のNANDフラッシュメモリでは、垂直方向に積み重ねるワード線の層数の増加させることで大容量化そして低コストを図ろうとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国公開公報US2019/0164985
【特許文献2】米国特許公報US7911265
【特許文献3】米国特許公報US7369377
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
3D NANDフラッシュメモリでは、現在100層を超えるワード線のそれぞれにコンタクトを形成して結線されており、その先でワード線制御用の回路と接続されているため、ワード線1本ずつ印可電圧が制御できるようになっている。ワード線の層数が増えていくと、ワード線へのコンタクトに必要な領域が大きくなること、および、ワード線制御用の回路が大きくなることで、チップサイズが大きくなり、コストが増大するという課題がある。また、層数の増加とともに、読み出し時のセンス電流が減少することにより、動作が難しくなるという課題がある。
【0005】
本発明の一態様では、これらの課題を解決するためのデバイス構造と動作方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一実施形態によれば、複数のメモリセルが直列に接続されたストリングを複数有するメモリセルアレイと、
前記ストリング内の前記複数のメモリセルに記憶するべき、又は記憶されたデータに応じた電荷を、前記複数のメモリセル内のチャネルのポテンシャル井戸間で転送する制御を行うコントローラと、を備えるメモリシステムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一実施形態によるメモリシステムの概略構成を示すブロック図。
【
図2】
図1のメモリセルアレイの一例を示す回路図。
【
図4】
図3のストリングを用いて電荷の転送を行う手順を模式的に示す図。
【
図5】
図3のストリング内のメモリセルに記憶されたデータを読み出す手順を模式的に示す図。
【
図6A】ストリング内の2以上のメモリセルのデータを並行して読み出す手順を模式的に示す図。
【
図7】セットアップ時間を高速化するための読出し手順を模式的に示す図。
【
図8】
図3のストリング内のメモリセルにデータを書き込む手順を模式的に示す図。
【
図9A】ストリングを構成するメモリセルMCの周辺の断面構造を示す図。
【
図10B】ワード線とメモリセルのゲートとの接続部分の断面図。
【
図11】本実施形態によるメモリシステムの一実装例を示す図。
【
図12】第1変形例によるメモリシステムを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、メモリシステムの実施形態について説明する。以下では、メモリシステムの主要な構成部分を中心に説明するが、メモリシステムには、図示又は説明されていない構成部分や機能が存在しうる。以下の説明は、図示又は説明されていない構成部分や機能を除外するものではない。
【0009】
本実施形態によるメモリシステムは、メモリセルアレイとコントローラとを備えている。メモリセルアレイは、複数のメモリセルが直列に接続されたストリングを複数有する。コントローラは、ストリング内の複数のメモリセルに記憶するべき、又は記憶されたデータに応じた電荷を、複数のメモリセル内のチャネルのポテンシャル井戸間で転送する制御を行う。
【0010】
本実施形態によるメモリセルは、不揮発メモリであり、メモリセルの一具体例として、NAND型のフラッシュメモリ(以下、NANDフラッシュメモリと呼ぶ)に類似するデバイス構造を持っており、そのデバイス構造を用いる例を主に説明する。
【0011】
本実施形態によるメモリセルは、チャネルにポテンシャル井戸を有する。ポテンシャル井戸とは、チャネルを通過する電荷を一時的に保持可能な場所であり、ゲートに印加する電圧により、ポテンシャル井戸の深さを調整できる。ゲートに印加する電圧を高くするほど、ポテンシャル井戸が深くなる。隣接するメモリセルのポテンシャル井戸よりもポテンシャル井戸を深くするほど、より多くの電荷を安定に保持可能となる。
【0012】
本実施形態によるコントローラは、ストリングを単位として、データの読出しと書込を行う。ストリングは、複数のメモリセルを直列に接続したものである。本実施形態では、ストリング内の複数のメモリセルのゲートに接続される複数のワード線(第1配線)を備える。複数のワード線のそれぞれは、ストリング内の2以上のメモリセルのゲートに接続される。すなわち、本実施形態では、ワード線の本数をストリング内のメモリセルの数よりも少なくしており、1本のワード線にはストリング内の複数のメモリセルのゲートが接続されるようにしている。
【0013】
ストリング内の複数のメモリセルのうち、隣接する2つのメモリセルのゲートに接続される2つのワード線の電圧を相違させることで、一方のメモリセル内のポテンシャル井戸から他方のメモリセル内のポテンシャル井戸に電荷を転送する。複数のメモリセル内のポテンシャル井戸間でデータを転送する際には、複数のメモリセルに接続される複数のワード線には、予め定めた複数の電圧レベルの電圧が順繰りに印加される。
【0014】
以下、メモリセルとしてNANDフラッシュメモリに類似したデバイス構造を用いた一実施形態によるメモリシステムの構成及び動作を詳細に説明する。
【0015】
図1は一実施形態によるメモリシステム10の概略構成を示すブロック図である。
図1のメモリシステム10は、NANDフラッシュメモリに類似したデバイス構造を用いたSSD(Solid State Drive)の内部構成を示している。
【0016】
図1のメモリシステム10は、NANDフラッシュメモリに類似したデバイス構造を持つストリングセルデバイス100と、コントローラ200とを備えている。後述するように、ストリングセルデバイス100とコントローラ200とは別々の基板に実装される場合がある。
【0017】
図1のストリングセルデバイス100は、複数のメモリセルを備え、データを不揮発に記憶する。コントローラ200は、例えば後述する
図12に示す信号伝送ケーブル2内に設けられるバス101によってストリングセルデバイス100に接続され、ホストバス102によってホスト機器300に接続されるようにしてもよい。コントローラ200は、ストリングセルデバイス100を制御し、またホスト機器300から受信した命令に応答して、ストリングセルデバイス100にアクセスする。ホスト機器300は、例えばパーソナルコンピュータ等の電子機器であり、ホストバスは、種々のインタフェースに従ったバスである。NANDバスは、Toggle IFなどのNANDインタフェースに従って信号の送受信を行う。
【0018】
コントローラ200は、ホストインタフェース回路210、内蔵メモリ(RAM)220、プロセッサ(CPU)230、バッファメモリ240、インタフェース回路250、及びECC(Error Checking and Correcting)回路260を備えている。
【0019】
ホストインタフェース回路210は、ホストバスを介してホスト機器300と接続され、ホスト機器300から受信した命令及びデータを、それぞれCPU230及びバッファメモリ240に転送する。またCPU230の命令に応答して、バッファメモリ240内のデータをホスト機器300へ転送する。
【0020】
CPU230は、コントローラ200全体の動作を制御する。例えばCPU230は、ホスト機器300から書込命令を受信した際には、それに応答して、インタフェース回路250に対して書込命令を発行する。読み出し及び消去の際も同様である。またCPU230は、ウェアレベリング等、ストリングセルデバイス100を管理するための様々な処理を実行する。なお、以下で説明するコントローラ200の動作はファームウェアをCPUが実行することで実現されても良いし、またはハードウェアで実現されても良い。
【0021】
インタフェース回路250は、信号伝送ケーブル2内のバスを介してストリングセルデバイス100と接続され、ストリングセルデバイス100との通信を司る。そしてインタフェース回路250は、CPU230から受信した命令に基づき、種々の信号をストリングセルデバイス100へ送信し、またストリングセルデバイス100から受信する。バッファメモリ240は、書込データや読み出しデータを一時的に保持する。
【0022】
RAM220は、例えばDRAMやSRAM等の半導体メモリ5であり、CPU230の作業領域として使用される。そしてRAM220は、ストリングセルデバイス100を管理するためのファームウェアや、各種の管理テーブル等を保持する。
【0023】
ECC回路260は、ストリングセルデバイス100に記憶されるデータに関する誤り検出及び誤り訂正処理を行う。すなわちECC回路260は、データの書込時には誤り訂正符号を生成して、これを書込データに付与し、データの読み出し時にはこれを復号する。
【0024】
次に、ストリングセルデバイス100の構成について説明する。
図1に示すようにストリングセルデバイス100は、メモリセルアレイ110、ロウデコーダ120、ドライバ回路130、カラム制御回路140、レジスタ群150、及びシーケンサ160を備える。
【0025】
メモリセルアレイ110は、ロウ及びカラムに対応付けられた複数の不揮発性のメモリセルを含む複数のブロックBLKを備えている。
図1では一例として4つのブロックBLK0~BLK3が図示されている。そしてメモリセルアレイ110は、コントローラ200から与えられたデータを記憶する。
【0026】
ロウデコーダ120は、ブロックBLK0~BLK3のいずれかを選択し、更に選択したブロックBLKにおけるロウ方向を選択する。ドライバ回路130は、選択されたブロックBLKに対して、ロウデコーダ120を介して電圧を供給する。
【0027】
カラム制御回路140は、データの読み出し時には、メモリセルアレイ110から読み出された信号をセンスし、必要な演算を行う。読み出される信号は、電圧、電荷量、もしくは電流量である。そして、カラム制御回路140は、メモリセルアレイ110から読み出した信号に応じたデータをコントローラ200に出力する。データの書込時には、コントローラ200から受信した書込データを、メモリセルアレイ110に転送する。
【0028】
カラム制御回路140は、データの書込み時には、書き込むデータに応じた信号をビット線を介してメモリセルアレイ110へ送り込む。送り込まれる信号は、電圧、電荷量、もしくは電流量である。
【0029】
レジスタ群150は、アドレスレジスタやコマンドレジスタなどを有する。アドレスレジスタは、コントローラ200から受信したアドレスを保持する。コマンドレジスタは、コントローラ200から受信したコマンドを保持する。
【0030】
シーケンサ160は、レジスタ群150に保持された種々の情報に基づき、ストリングセルデバイス100全体の動作を制御する。
【0031】
図2は
図1のメモリセルアレイ110の一例を示す回路図である。
図2は、メモリセルアレイ110内の一つのブロックBLKの内部構成を示している。各ブロックBLKは、複数のストリング11を有する。各ストリング11は、直列接続された複数のメモリセルトランジスタMCを有する。メモリセルトランジスタMCによりメモリセルが構成されるため、以下では、メモリセルトランジスタMCを単にメモリセルMCと呼ぶ。ストリング11内の複数のメモリセルMCの両端には選択トランジスタQ1、Q2が接続されている。
【0032】
ストリング11ごとにビット線(第2配線)が配置されている。各ビット線は、対応する選択トランジスタQ1を介して、対応するストリング11の一端に接続されている。各ストリング11の他端は、対応する選択トランジスタQ2を介して、共通のソース線SLに接続されている。
【0033】
通常のNANDフラッシュメモリでは、ストリング11内の複数のメモリセルMCのゲートに別々のワード線を接続しているが、
図2では、3つのワード線WL0~WL2を交互に、ストリング11内の各メモリセルMCのゲートに接続している。これにより、個々のワード線は、ストリング11内の2以上のメモリセルMCのゲートに接続されている。このように、本実施形態によるストリング11は、通常のNANDフラッシュメモリのストリングよりも、ワード線の種類を削減できる。特に、ストリング11内のメモリセルMCの数が多いほど、ワード線の数を削減できる。これらワード線は、
図1のロウデコーダに接続されている。
【0034】
(電荷転送方法)
次に、本実施形態によるストリングを用いた電荷転送方法について説明する。
図3はストリングの構造を模式的に示す断面図である。
図3に示すように、ストリング11内の各メモリセルMCは、ゲート12の下方に配置される浮遊ゲート13と、浮遊ゲート13の下方に配置されるチャネル14とを有する。浮遊ゲート13とチャネル14の間にはゲート絶縁膜15が配置される。ゲート12の電圧に応じて、チャネル14内のポテンシャル井戸の深さが変化する。
図3はストリング11内の各メモリセルMCのゲート12が3つのワード線WL0~WL2に順繰りに接続されている例を示している。
【0035】
図4は
図3のストリング11を用いて電荷の転送を行う手順を模式的に示す図である。まず、状態ST1では、ワード線WL0を所定の電圧に設定して、ワード線WL0に接続されるメモリセルMC内のポテンシャル井戸16に電荷を保持する。
図4の状態ST1では、左端のワード線WL0に接続されるゲート12の下方のポテンシャル井戸16に2個の電荷を保持し、右端から3番目のワード線WL0に接続されるメモリセルMC内のポテンシャル井戸16に1個の電荷を保持する例を示している。電荷の数がデータの違いを表しており、
図3と
図4は、ポテンシャル井戸16に1個の電荷が存在する場合、2個の電荷が存在する場合の2種類のデータを記憶する例を示している。
【0036】
次に、状態ST2では、ワード線WL1をワード線WL0よりも高い電圧に設定する。これにより、ワード線WL1に接続されるメモリセルMC内のポテンシャル井戸16は、ワード線WL0に接続されるメモリセルMC内のポテンシャル井戸16よりも深くなる。よって、ワード線WL1の下方のポテンシャル井戸16から、隣のワード線WL2の下方のポテンシャル井戸16に電荷が転送される。これにより、
図3に示すように、ワード線WL0に接続されるメモリセルMC内のポテンシャル井戸16内の電荷は、その隣のワード線WL1に接続されるメモリセルMC内のポテンシャル井戸16内に転送される。
【0037】
次に、状態ST3では、ワード線WL0の電圧を状態ST2よりも低くする。これにより、ワード線WL0の下方のポテンシャル井戸16は浅くなり、ワード線WL1の下方のポテンシャル井戸16内の電荷は、ワード線WL0に接続されるメモリセルMCのポテンシャル井戸16に移動できなくなり、安定に保持される。
【0038】
次に、状態ST4では、ワード線WL1の電圧を状態ST3よりも低くする。ただし、ワード線WL1の電圧は、ワード線WL0やワード線WL2の電圧よりも高くする。これにより、状態ST3と同様に、ポテンシャル井戸16内の電荷を保持できる。
【0039】
このように、ワード線WL0~WL2に印加される電圧を、少なくとも3通りに順繰りに変化させることで、ストリング11内の複数のメモリセルMC内のポテンシャル井戸16間で電荷の転送を継続的に行うことができ、ストリング11内の各メモリセルMCのデータをビット線まで転送でき、また、ビット線からのデータをストリング11内の任意のメモリセルMCまで転送することができる。よって、ストリング11内に直列接続されるメモリセルMCの個数によらず、わずか3本のワード線WL0~WL2で、任意のメモリセルのチャネル部にデータとなる電荷の移動を行うことができる。
【0040】
(読出し方法)
図5は
図3のストリング11内のメモリセルMCに記憶されたデータを読み出す手順を模式的に示す図である。
図3及び
図4では、ストリング11内の、ワード線WL0~WL2のそれぞれに接続される2以上のメモリセルMCを並行して動作させて電荷転送を行う例を示したが、
図5は、ストリング11内の各メモリセルMCのゲート電圧を個別に制御する例を示している。
【0041】
まず、状態ST11では、ストリング11内の左端から4番目のメモリセルMCのデータを読み出すべく、このゲート12に接続されるワード線WL0を所定の電圧V_copyに設定して、浮遊ゲート13内の蓄積電荷に応じた電荷をポテンシャル井戸16に発生させる。このとき、ストリング11内の左端から1~3番目のメモリセルMCのゲート12に接続されるワード線WL0~WL2は、電荷転送用の電圧V_passに設定されており、ポテンシャル井戸16には3つずつ電荷が保持されている例を示している。V_pass>V_copyである。
【0042】
ストリング11内の左端から1~3番目のメモリセルMCは、読出し対象ではないため、読出し対象のメモリセルMC内のチャネル14の電荷転送の妨げにならないようにする必要がある。そこで、状態ST12では、左端から1~3番目のメモリセルMCをオフ状態にする。これにより、これらメモリセルMC内のポテンシャル井戸16は浅くなり、ポテンシャル井戸16に保持されていた電荷はソース線SLの方向に転送されて廃棄される。ストリング11の一端を選択トランジスタQ1を介してビット線に接続して、ストリング11の他端を選択トランジスタQ2を介してソース線SLに接続することで、各メモリセルMCのチャネル14の基準電位が定まり、チャネル14内に電荷が発生するまでの時間を短縮できる。
【0043】
また、状態ST2では、左端から4番目の読出し対象のメモリセルMCのゲート12に接続されるワード線WL0に電圧V_wellを印加する。V_well>V_passである。これにより、このメモリセルMC内のポテンシャル井戸16は深くなり、状態ST11で発生された電荷を安定に保持できる。
【0044】
図5では、ストリング11内の各メモリセルMCのゲート電圧を個別に制御する例を示したが、本実施形態では、ストリング11内のメモリセルMCの数よりも少ない数のワード線を各メモリセルMCに接続することを念頭に置いており、これにより、ストリング11内の2以上のメモリセルMCのデータを並行して読み出すことができる。
【0045】
図6A及び
図6Bはストリング11内の2以上のメモリセルMCのデータを並行して読み出す手順を模式的に示す図である。
図6A及び
図6Bでは、ストリング11内の複数のメモリセルMCのゲート12に3本のワード線WL0~WL2が順繰りに接続される例を示している。状態ST21では、ワード線WL0を電圧V_copyに設定し、ワード線WL1、WL2を電圧V_passに設定する。V_pass>V_copyである。これにより、読出し対象でないワード線WL1、WL2に接続されたメモリセルMC内のポテンシャル井戸16には、同量の電荷(例えば、3個の電荷)が保持される。一方、ワード線WL0に接続されるメモリセルMC内のポテンシャル井戸16には、浮遊ゲート13内の電荷量に応じた電荷が発生される。
図6Aは、ワード線WL0に接続される3つのメモリセルMC内の浮遊ゲート13に蓄積されていた電荷がそれぞれ異なる例を示している。左端のメモリセルMC内の浮遊ゲート13には2個の電荷が蓄積され、左端から4番目のメモリセルMC内の浮遊ゲート13には1個の電荷が蓄積され、右側3番目のメモリセルMCは消去状態であり、浮遊ゲート13に電荷が蓄積されていない状態を示している。この状態で、ワード線WL0に電圧V_copyを印加すると、左端のメモリセルMC内のポテンシャル井戸16には1個の電荷が発生され、左端から4番目のメモリセルMC内のポテンシャル井戸16には2個の電荷が発生され、右端から3番目のメモリセルMC内のポテンシャル井戸16には3個の電荷が発生される。浮遊ゲート13に蓄積される電荷量が多いほど、メモリセルMCの閾値電圧は低くなり、ゲートにV_copyを印加したときにチャネル14内のポテンシャル井戸16に発生される電荷量が少なくなる。よって、浮遊ゲート13の蓄積電荷量に応じて、ポテンシャル井戸16に発生される電荷量はメモリセルMCごとに変化する。
【0046】
次に、状態ST22では、ワード線WL0の電圧V_copyを維持した状態で、ワード線WL1、WL2が接続されるメモリセルMCをオフ状態にする。これにより、ワード線WL1、WL2に接続されるメモリセルMC内のポテンシャル井戸16が浅くなり、これらメモリセルMC内のポテンシャル井戸16で発生された電荷はソース線SLに廃棄される。その後、
図6Bに示した状態ST23では、ワード線WL0の電圧をV_copyからV_wellに変えることで、ワード線WL0が接続されるメモリセルMC内のポテンシャル井戸16に電荷を安定に保持できる。このポテンシャル井戸16に保持された電荷は、その後、ワード線WL0~WL2の電圧を順繰りに変化させることで、ビット線まで順次転送される。
【0047】
図6A及び
図6Bに示すように、ストリング11内の特定のメモリセルMCのデータを読み出す場合、読出し対象でないメモリセルMC内のポテンシャル井戸16の電荷を廃棄した後に、読出し対象のメモリセルMC内のポテンシャル井戸16の電荷を転送する必要がある。このため、読出し対象でないメモリセルMC内のポテンシャル井戸16の電荷を迅速に廃棄して、読出し対象のメモリセルMC内のデータを読み出すためのセットアップ時間を高速化するのが望ましい。
【0048】
図7はセットアップ時間を高速化するための読出し手順を模式的に示す図である。
図7は、ストリング11内の複数のメモリセルMCのゲート12に5本のワード線WL0~WL4を順繰りに接続する例を示している。5本のワード線WL0~WL4のうち1本は、読出し対象でないメモリセルMC内のポテンシャル井戸16の電荷を、一つに集めるために用いられる。このためのワード線の電圧をV_collectとする。V_collect>V_copyである。電圧V_collectが印加されるゲート12を有するメモリセルMC内のポテンシャル井戸16はより深くなる。
【0049】
図7の状態ST31では、
図6Aの状態ST21と同様に、読出し対象のメモリセルMCのゲート12に接続されるワード線WL0を電圧V_copyに設定し、読出し対象でないメモリセルMCのゲート12に接続されるワード線WL1~WL4を電圧V_passに設定する。これにより、読出し対象のメモリセルMC内のポテンシャル井戸16には、対応する浮遊ゲート13内の蓄積電荷に応じた電荷が発生される。また、読出し対象でないメモリセルMC内のポテンシャル井戸16には、同量の電荷(例えば、3個の電荷)が保持される。
【0050】
次に、状態ST32では、読出し対象でないメモリセルMCのうち一つのゲート12に接続されるワード線WL3を電圧V_collectに設定するとともに、読出し対象でない他のメモリセルMCをオフ状態にする。これにより、オフ状態のメモリセルMCのポテンシャル井戸16が浅くなり、これらポテンシャル井戸16に保持されていた電荷が、電圧V_collectが印加されるメモリセルMC内のポテンシャル井戸16に転送される。これにより、読出し対象でないメモリセルMC内のポテンシャル井戸16の電荷を一つのポテンシャル井戸16に集めることができる。このポテンシャル井戸16に集められた電荷は、順次隣接するメモリセルMC内のポテンシャル井戸16に転送されて、最終的にはビット線まで転送されて、破棄することができる。
【0051】
(書込方法)
データの書込は、ストリング11内の同一のワード線が接続されている2つ以上のメモリセルMCに対して、1回の書込動作で、一括(並行)して行われる。書込には、例えば、固定電荷注入(Constant Charge Injection)と呼ばれる手法を用いることができる。
【0052】
図8は
図3のストリング11内のメモリセルMCにデータを書き込む手順を模式的に示す図である。データの書込時には、ビット線からストリング11に転送されてきたデータに応じた電荷を、書込対象のメモリセルMC内のポテンシャル井戸16に転送する。
図8は、ワード線WL0を電圧V_wellに設定し、ワード線WL0に接続される3つのメモリセルMCにデータを一括(並行)して書き込む例を示している。
図8の例では、左端のメモリセルMC内のポテンシャル井戸16には2個の電荷が保持され、左端から4番目のメモリセルMC内のポテンシャル井戸16には1個の電荷が保持され、右端から3番目のメモリセルMC内のポテンシャル井戸16には3個の電荷が保持されている。このように、
図8は多値書込を行う例を示している。
【0053】
次に、状態ST42では、ワード線WL0を電圧V_progに設定する。V_prog>V_wellである。これにより、ポテンシャル井戸16にあった電荷は、浮遊ゲート13に移動し、ワード線WL0に接続される3つのメモリセルMCに、一括(並行)してデータが書き込まれる。
【0054】
本実施形態によるメモリセルMCは、電荷トラップ膜ではなく、浮遊ゲート13に電荷を蓄積している。浮遊ゲート13に電荷を蓄積することで、チャネル14内のポテンシャル井戸16からの電荷を約100%の捕獲率で浮遊ゲート13に蓄積できる。
【0055】
(メモリセルMCの構造)
本実施形態によるメモリセルアレイ110は、二次元平面上に形成してもよいし、3次元構造にしてもよい。以下では、3次元構造のメモリセルアレイ110の一例を説明する。
図9A、
図9B、
図10A、及び
図10Bは、本実施形態によるメモリセルアレイ110の要部の断面図である。より詳細には、
図9Aはストリング11を構成するメモリセルMCの周辺の断面構造を示し、
図9Bは
図9Aの一部であるメモリセルMCの詳細な断面図である。以下では、基板面を水平方向、基板面の法線方向を上下方向と呼ぶ。
【0056】
図10Aに示すように、メモリセルアレイ110は、上下方向に延びる複数のピラーPLと複数のコンタクトプラグCC1~CC3とを備えている。
図9Aに示すように、各ピラーPLの側壁部分に上下方向に複数のメモリセルMCが配置されている。複数のコンタクトプラグCC1~CC3は、複数のワード線に対応して設けられている。
図10Bに示すように、各コンタクトプラグCC1~CC3は、その側壁部分にて、対応するワード線に接続されている。以下、ピラーPLとコンタクトプラグCC1~CC3の構造をより詳細に説明する。
【0057】
図9Aに示すように、各ピラーPLのコア層CRの側壁部分には、半導体基板のp型ウェル領域(P-well)40上に上下方向に複数のストリング11が形成されている。各ストリング11は、複数の配線層42に接続された選択トランジスタSGSと、複数の配線層(ワード線)43に接続された複数のメモリセルトランジスタMT0~MT7と、複数の配線層44に接続された選択トランジスタSGDとを上下方向に積層した構造になっている。
【0058】
メモリセルMCは、
図9Bに示すように、中心軸から外周側に向かって、コア層CR、チャネル14、トンネル絶縁層41、浮遊ゲート13、ブロック絶縁層45、ゲート電極となる配線層43からなる積層構造のピラーPLを有する。ピラーPLの側壁部分には、ゲート電極43に繋がる複数のワード線WLが配置されている。。コア層CRは、ストリング11の電流経路として機能し、メモリセルトランジスタMC並びに選択トランジスタSGS及びSGDの動作時にチャネル14が形成される領域となる。
【0059】
また、p型ウェル領域40の表面内には、n+型不純物拡散層及びp+型不純物拡散層が形成されている。n+型不純物拡散層上にはコンタクトプラグ50が形成され、コンタクトプラグ50上には、ソース線SLとして機能する配線層が形成される。またp+型不純物拡散層上にはコンタクトプラグ51が形成され、コンタクトプラグ51上には、ウェル配線CPWELLとして機能する配線層が形成される。ウェル配線CPWELLは消去電圧を印加するために用いられる。
【0060】
図9Aに示したメモリセルアレイ110は、
図9Aの紙面の奥行き方向に複数配列されており、奥行き方向に一列に並ぶ複数のストリング11の集合によって、1つのフィンガーが形成される。他のフィンガーは例えば
図9Aの左右方向に形成されている。
【0061】
メモリセルMCの上方には、ビット線BLが配置され、その先に
図1に示すカラム制御回路140が配置されている。カラム制御回路140には、読出し/書込み回路が内蔵されている。読出し/書込み回路により、メモリセルアレイ110をシフトレジスタ型メモリとして動作させることができる。シフトレジスタ型メモリとは、
図4~
図8で説明したように、各メモリセルMC内のポテンシャル井戸16に保持された電荷を順次転送可能なNANDフラッシュメモリに類似したデバイス構造を持つストリングセルデバイスである。
【0062】
このように、ビット線BLの先に設けられるカラム制御回路140内に読出し/書込み回路を設けることにより、微弱な信号の転送と、その信号の読出しが可能となる。また、シフトレジスタ型メモリにおけるワード線は、通常のNANDメモリ等のように、1ビットごとの書込及び読出しの制御は行うのではなく、隣り合うメモリセルMC間での電荷転送を行う。このため、隣り合うワード線間で電位変調ができればよく、例えば、互いに隣り合わない複数のワード線をいくつかの組に束ねてロウデコーダ120に接続することができる。また、選択ゲートSTDに接続される選択ゲート線SGDも、ロウデコーダ120に接続される。
【0063】
コンタクトプラグCC1~CC3は、
図10Aの例では、複数のピラーPLによるメモリセルアレイ110の形成領域の外側に配置されている。コンタクトプラグCC1~CC3の上端は、不図示の上層配線等を介してドライバ回路130に接続されている。コンタクトプラグCC1~CC3の周囲を取り巻くように、ワード線WL0~WL6が基板面の法線方向に配置されている。
【0064】
図10Bに示すように、コンタクトプラグCC1は、ワード線WL2、WL6の高さ位置にあるフランジF1を介してワード線WL2、WL6と接続され、その他のワード線には接続されていない。コンタクトプラグCC2は、ワード線WL1、WL5の高さ位置にあるフランジF2を介してワード線WL1、WL5と接続され、その他のワード線には接続されていない。コンタクトプラグCC3は、ワード線WL0、WL4の高さ位置にあるフランジF3を介してワード線WL0、WL4と接続され、その他のワード線には接続されていない。
【0065】
このように、ワード線WL0~WL6は、コンタクトプラグCC1~CC3のいずれかに接続されている。また、積層方向に隣接するワード線同士は、3つのコンタクトプラグCC1~CC3のうち、互いに異なるコンタクトプラグCC1~CC3に接続されている。
【0066】
本実施形態では、メモリセルMC内のポテンシャル井戸16に保持されている電荷を、隣接するメモリセルMCのポテンシャル井戸16間で順次転送することにより、データの書込と読出しを行う。ポテンシャル井戸16に保持される電荷量は微細化が進むほど少なくなり、また、多値レベルが高くなるほど、ポテンシャル井戸16に保持される電荷量の差分量は小さくなる。このため、メモリセルMC内の浮遊ゲート13やポテンシャル井戸16内の電荷が熱やリーク等により消失することがないような環境下でデータの書込や読出しを行う必要がある。
【0067】
メモリセルMC内の浮遊ゲート13やポテンシャル井戸16に電荷を安定に蓄積及び保持するために、メモリセルアレイ110を極低温の環境下に置くこともできる。これにより、浮遊ゲート13やポテンシャル井戸16内の電荷がリークで消失しにくくなる。なお、極低温とは、例えば-40℃以下の温度である。
【0068】
図11は本実施形態によるメモリシステム10の一実装例を示す図である。
図11のメモリシステム10は、信号伝送ケーブル2で互いに接続された第1基板3及び第2基板4を備えている。第1基板3及び第2基板4の種類は特に問わないが、例えばプリント配線板やガラス基板などである。信号伝送ケーブル2の種類及び長さも問わないが、信号伝送ケーブル2は例えば数十cm以上の長さを有する。信号伝送ケーブル2は、例えば、FPC(Flexible Printed Circuit)でもよいし、その他の信号伝送ケーブル2、例えばUSB(Universal Serial Bus)信号伝送ケーブル2などでもよい。信号ケーブルを数十cm以上とするのは、第1基板3と第2基板4との間での熱の伝達を防止するためである。
【0069】
第1基板3上には
図1のストリングセルデバイス100が実装されており、-40℃以下に設定される。なお、温度計や温度センサは環境条件等により測定誤差を含むため、本明細書における「-40℃以下」とは、目標温度を「-40℃以下」にする趣旨であり、温度センサ等による測定誤差に起因して、-40℃よりも若干高い温度に設定される場合もありうる。
【0070】
第2基板4上にはコントローラ200が実装されており、-40℃以上に設定される。コントローラ200は、ホスト機器からの指示に応じて、メモリ5に対するデータの書込、読み出し又は消去を制御する。コントローラ200は、CMOS回路によって構成されており、動作保証範囲は一般的に-40℃~125℃であるため、従来のSSD製品に使われている技術で製造されたものを使用することができる。
【0071】
図1の例では、メモリ5が実装された第1基板3を例えば液体窒素の中に浸すこともできる。液体窒素は、工業的に安価なコストで製造できるため、液体窒素の中に第1基板3を浸すこと自体は、それほどコストをかけずに実現可能である。なお、第1基板3は、-40℃以下の温度に設定すればよいため、液体窒素以外の冷媒を用いて、冷媒中に第1基板3を配置すればよい。
【0072】
メモリ5が実装された第1基板3を-40℃以下に設定する具体的な一例として、
図12に示す第1変形例によるメモリシステム10のように、-40℃以下の冷媒7が収納された筐体8の中に第1基板3を入れることが考えられる。冷媒7としては、例えば液体窒素や液体二酸化炭素などの沸点が-40℃以下の液体である。また、冷媒7は、人間に無害の物質である必要があることに加えて、安価に入手できるものが望ましい。筐体8は、冷媒7が大気に触れて冷媒7の温度が上昇することを防止し、かつ冷媒7が大気中に拡散して冷媒7の量が減ることを防止するために、できるだけ開口部を小さくした断熱容器等が考えられる。
【0073】
一方、コントローラ200が実装された第2基板4は、-40℃以上に設定すればよいため、冷媒7や冷却部材を用いずに例えば室温に設定してもよい。ただし、コントローラ200が発熱するおそれがある場合は、ヒートシンクなどの冷却部材をコントローラ200に接触させる等の放熱対策が適宜行われる。
【0074】
このように、本実施形態では、メモリセルMC内のチャネル14に形成されるポテンシャル井戸16に保持される電荷を、隣接するメモリセルMC内のポテンシャル井戸16に順次転送することにより、ストリング11内の複数のメモリセルMCに対するデータの書込と読出しを行う。したがって、ストリング11内の複数のメモリセルMCに接続されるワード線の本数を減らすことができ、メモリセルアレイ110の構成を簡略化できる。また、ポテンシャル井戸16は複数の電荷を保持でき、ポテンシャル井戸16が保持する電荷量を個々のメモリセルMCごとに任意に変えられるため、多値データの書込及び読出しも行うことができる。
【0075】
本実施形態によるメモリシステム10は、メモリセルアレイ110を極低温下に配置した状態でデータの書込と読出しを行うこともできる。メモリセルアレイ110を極低温下に配置することで、メモリセルMC内の浮遊ゲート13とポテンシャル井戸16内の電荷のリークや消失を抑えることができ、安定した電荷転送を行うことができる。
【0076】
本開示の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本開示の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本開示の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0077】
2 信号伝送ケーブル、3 第1基板、4 第2基板、7 冷媒、8 筐体、10 メモリシステム、11 ストリング、12 ゲート、13 浮遊ゲート、14 チャネル、15 ゲート絶縁膜、16 ポテンシャル井戸、100 NANDフラッシュメモリ、101 NANDバス、102 ホストバス、110 メモリセルアレイ、120 ロウデコーダ、130 ドライバ回路、140 カラム制御回路、150 レジスタ群、160 シーケンサ、200 コントローラ、210 ホストインタフェース回路、220 内蔵メモリ(RAM)、230 プロセッサ(CPU)、240 バッファメモリ、250 NANDインタフェース回路、260 ECC回路、300 ホスト機器、