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特開2022-145037発電量推定装置、電力供給システム、および発電量推定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022145037
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】発電量推定装置、電力供給システム、および発電量推定方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/38 20060101AFI20220926BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20220926BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
H02J3/38 110
H02J3/00 170
H02J3/38 130
H02J13/00 301A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021046282
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】菅野 純弥
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 聡
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
【Fターム(参考)】
5G064AA04
5G064CB03
5G064CB08
5G064CB12
5G064DA02
5G064DA03
5G066AA03
5G066HB02
5G066HB03
5G066HB06
(57)【要約】
【課題】移動電源車による需要家への電力供給時に、需要家の分散形電源装置による発電量を簡単に推定できるようにする。
【解決手段】本発明の代表的な実施の形態に係る発電量推定装置3は、電力の送電側の装置2と系統連系保護継電器を有する分散形電源装置50を含む電力の受電側の装置5_1~5_nとを接続する電力供給経路4において、分散形電源装置50の系統連系保護継電器が動作していない状態での前記送電側から前記受電側に流れる電流iの計測値i0と、前記分散形電源装置の系統連系保護継電器が動作している状態での前記電流の計測値i2との差Δiに基づいて、分散形電源装置50の発電量を推定することを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力の送電側の装置と系統連系保護継電器を有する分散形電源装置を含む電力の受電側の装置とを接続する電力供給経路において、前記分散形電源装置の前記系統連系保護継電器が動作していない状態での前記送電側から前記受電側に流れる電流の計測値と、前記分散形電源装置の前記系統連系保護継電器が動作している状態での前記電流の計測値との差に基づいて、前記分散形電源装置の発電量を推定する
発電量推定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発電量推定装置において、
前記電流の計測値を取得する電流値取得部と、
前記電流値取得部によって取得した前記電流の計測値に基づいて、前記電力供給経路に接続されている前記分散形電源装置の発電量の推定値を算出する発電量算出部と、
前記電力の送電側の装置に対して前記分散形電源装置の前記系統連系保護継電器を動作させるか否かを指示する指示信号を出力するとともに前記電流値取得部および前記発電量算出部を制御することにより、前記分散形電源装置の発電量を推定するための発電量推定処理を実行する制御部と、を有し、
前記発電量算出部は、前記発電量推定処理において、前記分散形電源装置の前記系統連系保護継電器が動作していない状態での前記電流の計測値と前記分散形電源装置の前記系統連系保護継電器が動作している状態での前記電流の計測値との差と、前記電力供給経路の電圧の値とに基づいて、前記分散形電源装置の発電量の推定値を算出する
発電量推定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の発電量推定装置において、
前記発電量算出部は、前記差を複数回算出し、複数の前記差の平均値に基づいて、前記分散形電源装置の発電量の推定値を算出する
発電量推定装置。
【請求項4】
請求項3に記載の発電量推定装置において、
前記発電量算出部は、前記分散形電源装置の前記系統連系保護継電器が動作していない状態から前記分散形電源装置の前記系統連系保護継電器が動作している状態に遷移したときの前記差と、前記分散形電源装置の前記系統連系保護継電器が動作している状態から前記分散形電源装置の前記系統連系保護継電器が動作していない状態に遷移したときの前記差とを算出する
発電量推定装置。
【請求項5】
請求項4に記載の発電量推定装置において、
前記制御部は、算出した複数の前記差のばらつきが許容値を超えている場合には、前記発電量推定処理を停止し、所定期間の経過後に前記発電量推定処理を再開する
発電量推定装置。
【請求項6】
請求項2乃至5の何れか一項に記載の発電量推定装置において、
前記制御部は、予め設定された時刻に、前記発電量推定処理を開始する
発電量推定装置。
【請求項7】
請求項2乃至6の何れか一項に記載の発電量推定装置において、
日射量の計測値を取得する日射量取得部を更に有し、
前記分散形電源装置は、太陽光発電装置であって、
前記発電量算出部は、前記発電量推定処理によって算出した前記発電量の推定値とそのときの前記日射量の計測値との相関に基づいて、前記日射量の計測値から前記発電量の推定値を算出する
発電量推定装置。
【請求項8】
請求項2乃至7の何れか一項に記載の発電量推定装置と、
前記電力供給経路に電力を供給する前記送電側の装置としての移動電源車と、を備え、
前記移動電源車は、前記指示信号に応じて、前記分散形電源装置の前記系統連系保護継電器を動作させる
電力供給システム。
【請求項9】
請求項8に記載の電力供給システムにおいて、
前記移動電源車は、前記電力供給経路に供給する電圧を変化させて、前記分散形電源装置の前記系統連系保護継電器を動作させる
電力供給システム。
【請求項10】
請求項8に記載の電力供給システムにおいて、
前記移動電源車は、前記電力供給経路に供給する電圧の周波数を変化させて、前記分散形電源装置の前記系統連系保護継電器を動作させる
電力供給システム。
【請求項11】
電力の送電側の装置と系統連系保護継電器を有する分散形電源装置を含む電力の受電側の装置とを接続する電力供給経路において、前記分散形電源装置の前記系統連系保護継電器が動作していない状態での前記送電側から前記受電側に流れる電流を計測する第1ステップと、
前記分散形電源装置の前記系統連系保護継電器が動作していない状態での前記電流を計測する第2ステップと、
前記第1ステップで取得した電流の計測値と前記第2ステップで取得した前記電流の計測値との差を算出する第3ステップと、
前記第3ステップで算出した前記差に基づいて、前記分散形電源装置の発電量を推定する第4ステップと、を含む
発電量推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電量推定装置、電力供給システム、および発電量推定方法に関し、例えば、移動電源車から分散形電源装置を備えた需要家への電力供給時に、分散形電源装置による発電量を推定するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、災害による大規模停電時や配電線の工事および点検時等において、ビルや一般家庭の需要家に電力を供給する臨時電源として、電源車(移動電源車)が知られている。移動電源車とは、トラックやトレーラなどの車両に原動機、発電機、および付帯設備を搭載した移動式の自家用発電装置である。
【0003】
近年、移動電源車の接続先の需要家において、太陽光発電装置(Photovoltaic Apparatus)等の分散形電源装置が設置され、配電系統に連系されている場合がある。このような需要家に移動電源車から電力を供給する際に、その需要家側の需要を超えた電力が分散形電源装置から発生した場合、分散形電源装置側から移動電源車側に電力の逆潮流が発生する。
【0004】
電力の逆潮流が発生した場合、移動電源車の発電機が停止してしまう。移動電源車の発電機が一旦停止すると、発電機を再度復帰させるまでに時間を要し、発電機が復帰するまでの間に停電が発生してしまうため、移動電源車を使用する場合には、発電機を停止させないようにすることが非常に重要である。
【0005】
従来、移動電源車への電力の逆潮流を防止するための技術として、移動電源車の発電機に抵抗を接続する手法が知られている(例えば、特許文献1参照)。これによれば、抵抗によって電力が常に消費されているので、移動電源車への逆潮流の発生が防止され、移動電源車の発電機が停止することを回避することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-32770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、移動電源車の発電機に抵抗を常時接続した場合、抵抗において常時、電力が消費されるため、発電機を駆動するための原動機の燃料が無駄に消費され、移動電源車の運転時間が短くなり、移動電源車の効率の低下を招く。
【0008】
そこで、本願発明者らは、分散形電源装置が連系されている需要家に移動電源車から電力を供給する場合に分散形電源装置による発電量を推定することができれば、逆潮流によって移動電源車の発電機が停止するリスクを把握することができ、適切な対応策を講ずることが可能になると考えた。
【0009】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、移動電源車による需要家への電力供給時に、需要家の分散形電源装置による発電量を容易に推定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の代表的な実施の形態に係る発電量推定装置は、電力の送電側の装置と系統連系保護継電器を有する分散形電源装置を含む電力の受電側の装置とを接続する電力供給経路において、前記分散形電源装置の系統連系保護継電器が動作していない状態での前記送電側から前記受電側に流れる電流の計測値と、前記分散形電源装置の系統連系保護継電器が動作している状態での前記電流の計測値との差に基づいて、前記分散形電源装置の発電量を推定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る発電量推定装置によれば、移動電源車による需要家への電力供給時に、需要家の分散形電源装置による発電量を容易に推定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態1に係る発電量推定装置を備えた電力供給システムの構成を示す図である。
図2】本発明の実施の形態1に係る電力供給システムにおける移動電源車と発電量推定装置の具体的な構成を示す図である。
図3】実施の形態1に係る発電量推定装置による分散形電源装置の発電量の推定方法を説明するための図である。
図4】実施の形態1に係る発電量推定装置による発電量推定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図5】実施の形態2に係る電力供給システムにおける移動電源車と発電量推定装置の具体的な構成を示す図である。
図6】分散形電源装置としての太陽光発電装置の発電量と日射量との関係を説明するための図である。
図7】実施の形態2に係る発電量推定装置による日射量から発電量を推定する処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
【0014】
〔1〕本発明の代表的な実施の形態に係る発電量推定装置(3,3A)は、電力の送電側の装置(2)と系統連系保護継電器を有する分散形電源装置(50)を含む電力の受電側の装置(5_1~5_n)とを接続する電力供給経路(4)において、前記分散形電源装置の前記系統連系保護継電器が動作していない状態での前記送電側から前記受電側に流れる電流(i)の計測値(i0,i1)と、前記分散形電源装置の前記系統連系保護継電器が動作している状態での前記電流の計測値(i2)との差(Δi)に基づいて、前記分散形電源装置の発電量を推定することを特徴とする。
【0015】
〔2〕上記〔1〕に記載の発電量推定装置(3,3A)において、前記電流の計測値を取得する電流値取得部(31)と、前記電流値取得部によって取得した前記電流の計測値に基づいて、前記電力供給経路に接続されている前記分散形電源装置の発電量の推定値を算出する発電量算出部(32,32A)と、前記電力の送電側の装置に対して前記分散形電源装置の前記系統連系保護継電器を動作させるか否かを指示する指示信号(Sd)を出力するとともに前記電流値取得部および前記発電量算出部を制御することにより、前記分散形電源装置の発電量を推定するための発電量推定処理を実行する制御部(30)とを有し、前記発電量算出部は、前記発電量推定処理において、前記分散形電源装置の前記系統連系保護継電器が動作していない状態での前記電流の計測値(i0,i1)と前記分散形電源装置の前記系統連系保護継電器が動作している状態での前記電流の計測値(i2)との差(Δiu,Δid)と、前記電力供給経路の電圧の値とに基づいて、前記分散形電源装置の発電量の推定値を算出してもよい。
【0016】
〔3〕上記〔2〕に記載の発電量推定装置(3,3A)において、前記発電量算出部(32,32A)は、前記差を複数回算出し、複数の前記差の平均値(Δia)に基づいて、前記分散形電源装置の発電量の推定値を算出してもよい。
【0017】
〔4〕上記〔3〕に記載の発電量推定装置(3,3A)において、前記発電量算出部(32,32A)は、前記分散形電源装置の前記系統連系保護継電器が動作していない状態から前記分散形電源装置の前記系統連系保護継電器が動作している状態に遷移したときの前記差(Δiu)と、前記分散形電源装置の前記系統連系保護継電器が動作している状態から前記分散形電源装置の前記系統連系保護継電器が動作していない状態に遷移したときの前記差(Δid)とを算出してもよい。
【0018】
〔5〕上記〔4〕に記載の発電量推定装置(3,3A)において、前記制御部は、算出した複数の前記差のばらつきが許容値を超えている場合には、前記発電量推定処理を停止し、所定期間の経過後に前記発電量推定処理を再開してもよい。
【0019】
〔6〕上記〔2〕乃至〔5〕の何れかに記載の発電量推定装置(3,3A)において、前記制御部は、予め設定された時刻に、前記発電量推定処理を開始してもよい。
【0020】
〔7〕上記〔2〕乃至〔6〕の何れかに記載の発電量推定装置(3A)において、日射量の計測値を取得する日射量取得部(33)を更に有し、前記分散形電源装置は、太陽光発電装置であって、前記発電量算出部は、前記発電量推定処理によって算出した前記発電量の推定値(P1)とそのときの前記日射量の計測値(h1)との相関に基づいて、前記日射量の計測値(hx)から前記発電量の推定値(Px)を算出してもよい。
【0021】
〔8〕本発明の代表的な実施の形態に係る電力供給システム(1)は、上記〔2〕乃至〔7〕の何れかに記載の発電量推定装置(3,3A)と、前記電力供給経路に電力を供給する前記送電側の装置としての移動電源車(2)と、を備え、前記移動電源車は、前記指示信号に応じて、前記分散形電源装置の前記系統連系保護継電器を動作させることを特徴とする。
【0022】
〔9〕上記〔8〕に記載の電力供給システムにおいて、前記移動電源車は、前記電力供給経路に供給する電圧を変化させて、前記分散形電源装置の前記系統連系保護継電器を動作させてもよい。
【0023】
〔10〕上記〔8〕に記載の電力供給システムにおいて、前記移動電源車は、前記電力供給経路に供給する電圧の周波数を変化させて、前記分散形電源装置の前記系統連系保護継電器を動作させてもよい。
【0024】
〔11〕本発明の代表的な実施の形態に係る発電量推定方法は、電力の送電側の装置と系統連系保護継電器を有する分散形電源装置を含む電力の受電側の装置とを接続する電力供給経路において、前記分散形電源装置の前記系統連系保護継電器が動作していない状態での前記送電側から前記受電側に流れる電流を計測する第1ステップ(S1,S6)と、前記分散形電源装置の前記系統連系保護継電器が動作している状態での前記電流を計測する第2ステップ(S3)と、前記第1ステップで取得した電流の計測値と前記第2ステップで取得した前記電流の計測値との差を算出する第3ステップ(S4,S7)と、前記第3ステップで算出した前記差に基づいて、前記分散形電源装置の発電量を推定する第4ステップ(S10)と、を含むことを特徴とする。
【0025】
2.実施の形態の具体例
以下、本発明の実施の形態の具体例について図を参照して説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。
【0026】
≪実施の形態1≫
図1は、本発明の実施の形態1に係る発電量推定装置を備えた電力供給システムの構成を示す図である。
【0027】
図1に示す電力供給システム1は、自家発電した電力を外部に供給する移動可能なシステムであって、ビルや一般家庭等の需要家に電力を供給する。図1に示すように、電力供給システム1は、例えば、移動電源車2と発電量推定装置3とを備えている。
【0028】
移動電源車2は、トラックやトレーラなどの車両に原動機、発電機、および付帯設備を搭載した移動式の自家用発電装置である。移動電源車2は、自ら発電した電力を、電力供給経路4を介して、需要家に供給する。電力供給経路4は、電力の送電側の装置と電力の受電側の装置とを接続して電力伝送を実現するためのものであり、例えば、配電線や変圧器等によって実現されている。
【0029】
図1では、需要家が一般家庭である場合を例示しているが、これに限られず、需要家は、ビルや工場等であってもよい。
【0030】
受電側の装置としての需要家設備5は、例えば、需要家負荷51と、需要家負荷51に電力を供給する分散形電源装置50とを含む。需要家負荷51は、需要家の施設内に設置された電気機器等の電力によって動作可能な機器である。
【0031】
分散形電源装置50は、自家用発電装置であって、自ら発電した電力を需要家負荷51に供給する。分散形電源装置50は、発電した電力を蓄電してもよい。分散形電源装置50は、配電系統に連係されており、分散形電源装置50において発電または蓄電した電力を配電系統に供給することが可能となっている。分散形電源装置50としては、太陽光発電装置や家庭用燃料電池等を例示することができる。
【0032】
本実施の形態では、一例として、分散形電源装置50が太陽光発電装置(PV)であるものとして説明する。例えば、分散形電源装置50としての太陽光発電装置は、太陽光発電用電力変換器(PCS)52や高周波除去フィルタ(不図示)を介して配線系統に接続される。また、需要家負荷51は、変圧器を介して配線系統に接続されており、配電系統の3相電力が家庭の単相に降圧されて需要家負荷51に供給される。
【0033】
また、本実施の形態では、移動電源車2が、電力供給経路4を介して複数の需要家設備5_1~5_n(nは2以上の整数)に電力を供給するものとして説明するが、移動電源車2から電力供給を受ける需要家設備5は1つであってもよい。また、移動電源車2から電力供給を受ける需要家設備5_1~5_nの少なくとも一つが分散形電源装置50を備えていればよく、全ての需要家設備5_1~5_nが分散形電源装置50を備えていなくてもよい。
【0034】
分散形電源装置50は、系統連系保護継電器53を備えている。系統連系保護継電器53は、例えば、PCS52に内蔵されている。
【0035】
ここで、系統連系保護継電器53は、電力供給経路4等の系統を保護するための継電器(リレー)である。系統連系保護継電器53は、電力供給経路4の電圧または周波数が予め設定された許容値(整定値)によって定められた範囲内である場合に、停止し、電力供給経路4の電圧または周波数が整定値によって定められた範囲を超えた場合に、動作する。
【0036】
ここで、整定値とは、系統連系保護継電器53を動作させるか否かの基準となる電圧または周波数の値である。
【0037】
具体的には、系統連系保護継電器53は、電力供給経路4の電圧または周波数が整定値によって定められた範囲内である場合に、分散形電源装置50の系統への連系を可能にする。すなわち、系統連系保護継電器53は、分散形電源装置50からの電力の出力(電力供給経路4および需要家負荷51への電力の出力)を可能にする。
【0038】
一方、電力供給経路4の電圧または周波数が整定値によって定められた範囲を超えている場合に、系統連系保護継電器53は、分散形電源装置50の系統への連系を停止させる。すなわち、系統連系保護継電器53は、分散形電源装置50からの電力の出力(電力供給経路4および需要家負荷51への電力の出力)を停止させる。
【0039】
系統連系保護継電器53は、例えば、過電圧継電器(OVR)、不足電圧継電器(UVR)、過周波数継電器(OFR)、および周波数低下継電器(UFR)を含む。
【0040】
過電圧継電器(OVR)は、電力供給経路4の電圧が整定値(例えば、107V)を超えた場合に動作して、分散形電源装置50からの配電系統(電力供給経路4)および需要家負荷51への電力の供給を停止させる。
【0041】
不足電圧継電器(UVR)は、電力供給経路4の電圧が整定値(例えば、95V)よりも低下した場合に動作して、分散形電源装置50からの配電系統(電力供給経路4)および需要家負荷51への電力の供給を停止させる。
【0042】
過周波数継電器(OFR)は、電力供給経路4の周波数が整定値(例えば、51Hz)を超えた場合に動作して、分散形電源装置50からの配電系統(電力供給経路4)および需要家負荷51への電力の供給を停止させる。
【0043】
周波数低下継電器(UFR)は、電力供給経路4の周波数が整定値(例えば、48.5Hz)よりも低下した場合に動作して、分散形電源装置50からの配電系統(電力供給経路4)および需要家負荷51への電力の供給を停止させる。
【0044】
発電量推定装置3は、移動電源車2からの電力の受電側の需要家設備5_1~5_nにおける分散形電源装置50による発電量を推定する装置である。発電量推定装置3の詳細については後述する。
【0045】
電力供給システム1は、例えば、災害による大規模停電時や配電線の工事および点検時のように、三相3線式で交流電力を供給する送電設備(例えば、変電所の変圧器や柱上変圧器等)と電力供給経路4(配電線等)との接続が遮断された状態において、移動電源車2によって発電した電力を、電力供給経路4を介して各需要家設備5_1~5_nに供給する。
【0046】
図2は、本発明の実施の形態1に係る電力供給システム1における移動電源車2と発電量推定装置3の具体的な構成を示す図である。
【0047】
図2に示すように、移動電源車2は、例えば、発電制御装置20、原動機21、発電機22、遮断器23を有している。原動機21によって発生した動力(機械的エネルギー)が発電機22に伝えられ、発電機22がその動力によって発電する。発電機22によって発電された電力は、遮断器23を介して電力供給経路4に出力される。
【0048】
遮断器23は、発電機22と電力供給経路4との間の接続と遮断を切り替える装置である。発電制御装置20は、移動電源車2の各装置を制御して、移動電源車2の動作を統括的に制御する装置である。
【0049】
発電制御装置20は、例えば、各種のメモリおよび当該メモリに記憶されたプログラムにしたがって各種演算を実行するプロセッサを含むプログラム処理装置と、プログラム処理装置によって制御される各種周辺回路と、ユーザからの操作を入力する操作パネル等のユーザインタフェースを含んで構成されている。
【0050】
発電制御装置20は、例えば、ユーザインタフェースを介して入力された指示に応じて、原動機21および発電機22を制御して発電を実行させるとともに、遮断器23の開閉を制御して、移動電源車2からの電力の出力と停止を切り替える。
【0051】
また、詳細は後述するが、発電制御装置20は、発電量推定装置3からの指示信号Sdに応じて、発電機22を制御して各需要家設備5_1~5_nにおける分散形電源装置50の系統連系保護継電器53を動作させることにより、分散形電源装置50による電力供給経路4および需要家負荷51への電力の出力を停止させる。
【0052】
発電量推定装置3は、電力供給経路4において、分散形電源装置50の系統連系保護継電器53が動作していない状態での送電側(移動電源車2)から受電側(分散形電源装置50)に流れる電流iの計測値と、分散形電源装置50の系統連系保護継電器53が動作している状態での電流iの計測値との差に基づいて、分散形電源装置50の発電量を推定する。
【0053】
上述したように、分散形電源装置50の系統連系保護継電器53が動作していない(停止している)状態とは、分散形電源装置50による電力供給経路4および需要家負荷51への電力の出力が可能な状態であり、分散形電源装置50の系統連系保護継電器53が動作している状態とは、分散形電源装置50による電力供給経路4および需要家負荷51への電力の出力が停止している状態である。
【0054】
具体的に、発電量推定装置3は、図2に示すように、制御部30、電流値取得部31、および発電量算出部32を有している。発電量推定装置3は、例えば、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置によって実現することができる。
【0055】
電流値取得部31は、電力供給経路4において送電(移動電源車2)側から受電(各需要家設備5_1~5_n)側に流れる電流iの計測値を取得する機能部である。
【0056】
例えば、電流iは、電力供給経路4に設置された電流計、または移動電源車2内の電流計によって計測される。電流値取得部31は、これらの電流計から電流iの計測値を取得する。
【0057】
発電量算出部32は、電流値取得部31によって取得した電流iの計測値に基づいて、電力供給経路4に接続されている分散形電源装置50の発電量の推定値を算出する機能部である。
【0058】
制御部30は、発電量推定装置3の統括的な制御を行う機能部である。制御部30は、電力の送電側の装置(移動電源車2)に対して分散形電源装置50の系統連系保護継電器53を動作させるか否かを指示する指示信号Sdを出力するとともに、電流値取得部31および発電量算出部32を制御することにより、分散形電源装置50の発電量を推定するための発電量推定処理を実行する。
【0059】
上述した制御部30、電流値取得部31、および発電量算出部32は、例えば、上述した情報処理装置によるプログラム処理によって実現される。
【0060】
具体的に、発電量推定処理において、発電量算出部32は、分散形電源装置50の系統連系保護継電器53が動作していない状態での電流iの計測値と系統連系保護継電器53が動作している状態での電流iの計測値との差Δiと、電力供給経路4の電圧の値とに基づいて、分散形電源装置50の発電量の推定値を算出する。
【0061】
発電量算出部32は、差Δiを複数回算出し、複数の差Δiの平均値Δiaに基づいて、分散形電源装置50の発電量の推定値を算出する。例えば、発電量算出部32は、分散形電源装置50の系統連系保護継電器53が動作していない状態から分散形電源装置50の系統連系保護継電器53が動作している状態に遷移したときの差Δiuと、分散形電源装置50の系統連系保護継電器53が動作している状態から分散形電源装置50の系統連系保護継電器53が動作していない状態に遷移したときの差Δidとを算出し、差Δiuと差Δidとの平均値Δiaに基づいて、分散形電源装置50の発電量の推定値を算出する。
【0062】
なお、発電量算出部32によって算出される発電量の推定値は、電力供給経路4に接続され、且つ発電を行っている分散形電源装置50の発電量の総和である。
【0063】
以下、発電量推定処理について、図3および図4を用いて詳細に説明する。
【0064】
図3は、実施の形態1に係る発電量推定装置3による分散形電源装置50の発電量の推定方法を説明するための図である。
【0065】
図3において、横軸は時間を表し、縦軸は電流iを表している。また、参照符号301は、電力供給経路4において送電側の移動電源車2から受電側の需要家設備5_1~5_nに向かって流れる電流iの時間的な変化を表している。
【0066】
図4は、実施の形態1に係る発電量推定装置3による発電量推定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0067】
ここでは、一例として、需要家設備5_1~5_nにおける各分散形電源装置50の系統連系保護継電器53が動作しておらず、移動電源車2から需要家設備5_1~5_nへの供給電力が安定している状態、すなわち移動電源車2から需要家設備5_1~5_nに向かって流れる電流iが安定している状態をシステム全体の初期状態とする。なお、電力(電流i)が安定している状態とは、例えば、電力(電流i)の変動量が±10%に収まっている状態を言う。
【0068】
初期状態において、例えば、ユーザが発電量推定装置3を操作して発電量推定処理の実行を指示したとき、発電量推定装置3の制御部30は、発電量推定処理を開始する。
【0069】
発電量推定処理において、先ず、制御部30が、電流値取得部31を制御して、各分散形電源装置50の系統連系保護継電器53が動作していない状態での電流値iを取得する(ステップS1)。例えば、図3の時刻t1において、電流値取得部31は、電力供給経路4に流れる電流の計測値i0を電力供給経路4に設置された電流計から取得する。
【0070】
次に、制御部30は、例えば図3の時刻t2において、需要家設備5_1~5_nの各分散形電源装置50の運転を停止させる(ステップS2)。
【0071】
具体的には、発電量推定装置3の制御部30が、分散形電源装置50の系統連系保護継電器53を動作させることを指示する指示信号Sdを移動電源車2に対して出力し、移動電源車2の発電制御装置20が、その指示信号Sdに応じて発電機22を制御して、発電機22の出力電圧および周波数の少なくとも一方を変化させて、各分散形電源装置50による電力供給経路4および需要家負荷51への電力の供給を停止させる。
【0072】
例えば、発電制御装置20は、発電機22から電力供給経路4に供給する電圧を上昇させる。これにより、各分散形電源装置50の系統連系保護継電器53が、電力供給経路4の電圧が予め設定された整定値によって定められた範囲を超えたと判定し、分散形電源装置50からの電力供給経路4および需要家負荷51への電力の出力を停止する。
【0073】
このとき、発電制御装置20は、電圧を上昇させる代わりに、発電機22から電力供給経路4に供給する電圧の周波数を変化させてもよい(周波数を上げる、または下げる)。この場合も同様に、各分散形電源装置50の系統連系保護継電器53が、電力供給経路4の周波数が整定値によって定められた範囲を超えたと判定し、分散形電源装置50からの電力供給経路4および需要家負荷51への電力の出力を停止する。
【0074】
図3に示すように、時刻t2における分散形電源装置50の運転停止の後、各需要家設備5_1~5_nの需要家負荷51には移動電源車2からのみ電力が供給されるので、移動電源車2から各需要家設備5_1~5_nへの供給電力、すなわち電力供給経路4における電流iが増加する。
【0075】
その後、電流i(移動電源車2からの供給電力)が安定した時刻t3において、制御部30が、電流値取得部31を制御して、各分散形電源装置50の系統連系保護継電器53が動作している状態での電流値iを取得する(ステップS3)。例えば、図3の時刻t3において、電流値取得部31は、電力供給経路4に流れる電流の計測値i2を電力供給経路4に設置された電流計から取得する。
【0076】
次に、制御部30は、発電量算出部32を制御して、ステップS3で取得した分散形電源装置50の系統連系保護継電器53が動作している状態での電流値i2とステップS1で取得した分散形電源装置50の系統連系保護継電器53が動作していない状態での電流値i0との差Δiu(=|i2-i0|)を算出させる(ステップS4)。
【0077】
次に、制御部30は、例えば図3の時刻t4において、需要家設備5_1~5_nの各分散形電源装置50の運転を再開させる(ステップS6)。
【0078】
具体的には、制御部30が、分散形電源装置50の系統連系保護継電器53を停止させることを指示する指示信号Sdを移動電源車2に対して出力し、移動電源車2の発電制御装置20が、その指示信号Sdに応じて発電機22を制御して、ステップS2で変化させた発電機22の出力電圧または周波数を通常の値に回復させる。
【0079】
例えば、発電制御装置20は、ステップS2で上昇させた電力供給経路4の電圧を通常時の値まで低下させる。これにより、各分散形電源装置50の系統連系保護継電器53が、電力供給経路4の電圧が整定値によって定められた範囲内にあると判定し、再び、分散形電源装置50からの電力供給経路4および需要家負荷51への電力の供給を可能にする。
【0080】
図3に示すように、時刻t4における分散形電源装置50の運転再開の後、各需要家設備5_1~5_nの需要家負荷51には、移動電源車2と分散形電源装置50とから電力がそれぞれ供給されるので、移動電源車2から各需要家設備5_1~5_nへの供給電力、すなわち電力供給経路4における電流iが減少する。
【0081】
その後、電流iが安定した時刻t5において、制御部30が、電流値取得部31を制御して、各分散形電源装置50の系統連系保護継電器53が動作していない状態での電流値iを再度取得する(ステップS6)。例えば、図3の時刻t5において、電流値取得部31は、電力供給経路4に流れる電流の計測値i1を電力供給経路4に設置された電流計から取得する。
【0082】
次に、制御部30は、発電量算出部32を制御して、ステップS3で取得した分散形電源装置50の系統連系保護継電器53が動作していない状態での電流値i2とステップS6で取得した分散形電源装置50の系統連系保護継電器53が動作していない状態での電流値i1との差Δid(=|i1-i2|)を算出させる(ステップS7)。
【0083】
次に、制御部30は、算出した複数の差Δiのばらつきが許容値を超えているか否かを判定する(ステップS8)。例えば、制御部30は、ステップS4で算出したΔiuとステップS7で算出したΔidとの差|iu-id|が所定の閾値ithを超えているか否かを判定する。
【0084】
差|iu-id|が所定の閾値ithを超えていない場合には(ステップS8:NO)、制御部30は、発電量算出部32を制御して、算出した複数の差Δiの平均値を算出する(ステップS9)。具体的には、ステップS4で算出したΔiuとステップS7で算出したΔidの平均値Δiaを算出させる。
【0085】
次に、発電量算出部32は、電力供給経路4に接続されている分散形電源装置50の発電量の推定値を算出する(ステップS10)。具体的には、発電量算出部32は、ステップS9で算出した差の平均値Δiaと電力供給経路4に供給されている電圧の値とを乗算することにより、分散形電源装置50の発電量の推定値を算出する。
【0086】
一方、ステップS8において、差|iu-id|が所定の閾値ithを超えている場合には(ステップS8:YES)、電力供給経路4の電力が安定していないと判断できるので、制御部30は、発電量推定処理を停止するとともに、時間の計測を開始する(ステップS11)。
【0087】
ステップS11の後、制御部30は、発電量推定処理を停止してから一定期間が経過したか否かを判定する(ステップS12)。制御部30は、一定期間が経過するまで発電量推定処理の停止を継続する。
【0088】
一定期間が経過した場合には(ステップS12:YES)、制御部30は発電量推定処理を再開する。具体的には、制御部30は、ステップS1に戻り、ステップS1~ステップS12までの処理を再実行する。
【0089】
以上説明したように、実施の形態1に係る発電量推定装置3は、電力の送電側の装置としての移動電源車2と系統連系保護継電器53を有する分散形電源装置50を含む需要家設備5_1~5_nとを接続する電力供給経路4において、分散形電源装置50の系統連系保護継電器53が動作していない状態での送電側から受電側に流れる電流iの計測値と、分散形電源装置50の系統連系保護継電器53が動作している状態での電流iの計測値との差Δiに基づいて、分散形電源装置50の発電量を推定する。
【0090】
具体的には、上述したように、発電量推定装置3は、電流iの計測値を取得する電流値取得部31と、電流iの計測値に基づいて、電力供給経路4に接続されている分散形電源装置50の発電量の推定値を算出する発電量算出部32と、移動電源車2に対して分散形電源装置50の系統連系保護継電器53を動作させるか否かを指示する指示信号Sdを出力するとともに電流値取得部31および発電量算出部32を制御して発電量推定処理を実行する制御部30とを有している。発電量算出部32は、発電量推定処理において、分散形電源装置50の系統連系保護継電器53が動作していない状態での電流iの計測値と系統連系保護継電器53が動作している状態での電流iの計測値との差Δiと、電力供給経路4の電圧の値とに基づいて、分散形電源装置50の発電量の推定値を算出する。
【0091】
これによれば、分散形電源装置50の系統連系保護継電器53が動作していない状態、すなわち分散形電源装置50が発電し、分散形電源装置50と移動電源車2とから需要家負荷51に電力が供給されているときの電流iを測定することにより、全ての需要家負荷51の消費電力のうち移動電源車2から賄われている電力を推定することができる。一方、分散形電源装置50の系統連系保護継電器53が動作している状態、すなわち、分散形電源装置50から電力供給経路4および需要家負荷51への電力の出力が停止している状態において、電流iを測定することにより、全ての需要家負荷51の消費電力を推定することができる。
【0092】
この2つの状態での電流iの差(電力の差)を求めることにより、需要家負荷51を駆動するために分散形電源装置50によって賄われていた電力を推定することができる。この推定した電力を分散形電源装置50の発電量とみなすことで、分散形電源装置50の発電量を容易に推定することが可能となる。
【0093】
このように、本実施の形態に係る発電量推定装置3によれば、各需要家設備5_1~5_nに設置された分散形電源装置50の発電量を個別に測定することなく、電力供給経路4に接続されている分散形電源装置50の発電量を容易に推定することができる。
【0094】
これによれば、大規模停電時や配電線の工事および点検時等に移動電源車2を臨時電源として使用する場合において、移動電源車2の管理者等は、逆潮流が発生して移動電源車2の発電機22が停止するリスクを事前に把握することができるので、移動電源車の発電機に接続する抵抗の必要性等を適切に判断することが可能となる。
【0095】
また、実施の形態1に係る発電量推定装置3において、発電量算出部32は、差Δiを複数回算出し、複数の差Δiの平均値Δiaに基づいて分散形電源装置50の発電量の推定値を算出する。これによれば、差Δiの値に多少のばらつきがある場合であっても、分散形電源装置50の発電量の平均値を推定することが可能となる。
【0096】
また、発電量算出部32は、分散形電源装置50の系統連系保護継電器53が動作していない状態から分散形電源装置50の系統連系保護継電器53が動作している状態に遷移したときの差Δiuと、分散形電源装置50の系統連系保護継電器53が動作している状態から分散形電源装置50の系統連系保護継電器53が動作していない状態に遷移したときの差Δidとを算出し、差Δiuと差Δidの平均値Δiaを算出する。
また、これによれば、発電量推定処理の実行から停止までの一サイクルの間に、2つの差Δiを効率よく算出することができる。
【0097】
また、実施の形態1に係る発電量推定装置3において、制御部30は、算出した複数の差Δiのばらつきが許容値を超えている場合には、発電量推定処理を停止し、所定期間の経過後に発電量推定処理を再開する。
差Δiのばらつきが大きい場合には、日照条件等により分散形電源装置50の発電量が安定していない可能性があり、正確な発電量を推定することができない可能性がある。このような場合には、発電量推定処理を一時的に停止して、所定期間の経過後に、発電量推定処理を再開することで、より正確な発電量を推定することが可能となる。
【0098】
≪実施の形態2≫
図5は、実施の形態2に係る電力供給システム1Aにおける移動電源車2と発電量推定装置3Aの具体的な構成を示す図である。
【0099】
実施の形態2に係る発電量推定装置3Aは、日射量に基づいて分散形電源装置50としての太陽光発電装置の発電量を推定する機能を有している点において、実施の形態1に係る発電量推定装置3と相違し、その他の点においては、発電量推定装置3Aと同様である。
【0100】
図5に示すように、電力供給システム1Aは、日射量を計測する日射計6を備え、発電量推定装置3Aは、日射量取得部33を有している。
【0101】
日射量取得部33は、日射計6によって計測された日射量の計測値を取得する。日射量取得部33は、例えば、制御部30A、電流値取得部31、および発電量算出部32Aと同様に、上述した情報処理装置のプログラム処理によって実現される。
【0102】
なお、日射量取得部33は、電力供給システム1A内の日射計6から日射量のデータを取得する場合に限られず、例えば、インターネット等のネットワークを介して外部のサーバ等から日射量のデータを取得してもよいし、ユーザが発電量推定装置3の入力装置(例えばキーボード等)を操作して入力した日射量のデータを取得してもよい。
【0103】
図6は、分散形電源装置50としての太陽光発電装置の発電量と日射量との関係を説明するための図である。
【0104】
図6において、横軸は発電量を表し、縦軸は日射量を表している。
図6の参照符号401に示すように、太陽光発電装置による発電量は日射量に略比例することが一般に知られている。したがって、例えば、ある時刻での日射量h1と発電量P1が分かれば、日射量h1と発電量P1の相関関係(比)から、日射量hxのときの発電量(推定値)Pxを算出することができる。
【0105】
そこで、実施の形態2に係る発電量推定装置3Aにおいて、発電量算出部32Aは、実施の形態1の発電量推定装置3と同様の発電量推定処理によって算出した発電量の推定値と、そのときの日射量の計測値との相関関係(比)に基づいて、日射量の計測値から発電量の推定値を算出する。
【0106】
図7は、実施の形態2に係る発電量推定装置3Aによる日射量から発電量を推定する処理の流れを示すフローチャートである。
【0107】
発電量推定装置3Aにおいて、先ず、制御部30Aは、日射量取得部33を制御して、日射量の計測値を取得する(ステップS21)。例えば、日射量取得部33は、日射計6によって計測した日射量の計測値を取得する。
【0108】
次に、制御部30Aは、発電量推定処理を実行する(ステップS22)。具体的には、制御部30Aは、電流値取得部31、発電量算出部32A、および移動電源車2を制御して、図4に示した処理(ステップS1~S12)を実行することにより、分散形電源装置50の発電量の推定値を算出する。
【0109】
次に、制御部30Aは、ステップS21で取得した日射量の計測値(h1)とステップS22で算出した発電量の推定値(P1)とを一組とする測定値ペアを記憶しておく(ステップS23)。
【0110】
その後、制御部30Aは、次の発電量の推定の指示を待つ(ステップS24)。
例えば、ユーザが発電量推定装置3Aを操作して発電量の推定の実行を指示した場合には(ステップS24:YES)、制御部30Aは、日射量取得部33を制御して、日射計6から日射量の計測値hxを取得する(ステップS25)。
【0111】
次に、制御部30Aは、発電量算出部32Aを制御して、ステップS23で記憶した測定値ペアに基づく日射量と発電量の相関関係を用いて、ステップS25で取得した日射量の計測値hxから発電量Pxを推定する(ステップS26)。具体的には、図6に示したように、測定値ペア(h1,P1)に基づく日射量と発電量の比に基づいて、ステップS25で取得した日射量の計測値hxから発電量の推定値Pxを算出する。
【0112】
以上、実施の形態2に係る発電量推定装置3Aは、実施の形態1に係る発電量推定装置3と同様の発電量推定処理によって算出した発電量の推定値とそのときの日射量の計測値との相関に基づいて、日射量の計測値から発電量の推定値を算出する。
【0113】
これによれば、一度、発電量推定処理によって分散形電源装置50の発電量の推定値を算出しておけば、次からは発電量推定処理を実行しなくても、日射量の計測値から発電量を推定することができる。これにより、発電量を推定するために、分散形電源装置50の系統連系保護継電器53を動作させる制御(分散形電源装置50から電力供給経路4および需要家負荷51への電力の供給を停止させる制御)を毎回実施する必要がないので、より簡単に発電量を推定することができ、且つより安定した電力供給を実現することが可能となる。
【0114】
≪実施の形態の拡張≫
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0115】
例えば、上記実施の形態において、差Δiを複数回算出する場合の一例として、分散形電源装置50の系統連系保護継電器53が動作していない状態から系統連系保護継電器53が動作している状態に遷移したときの差Δiuと、分散形電源装置50の系統連系保護継電器53が動作している状態から系統連系保護継電器53が動作していない状態に遷移したときの差Δidを算出する場合を示したが、これに限られない。例えば、時刻を変えて、差Δiuを複数回算出してもよいし、差Δidを複数回算出してもよい。
【0116】
また、上記実施の形態において、複数の差Δiの平均値Δiaに基づいて分散形電源装置50の発電量を算出する場合を例示したが、これに限られない。例えば、発電量算出部32,32Aは、差Δiを一回だけ算出し、算出した一つの差Δiに基づいて分散形電源装置50の発電量を算出してもよい。
【0117】
また、上記実施の形態において、制御部30,30Aは、予め設定された時刻に、発電量推定処理を開始してもよい。例えば、日射量が最も高い時間帯(例えば、正午)に発電量推定処理を実行することにより、一日における分散形電源装置50の発電量の最大値を推定することができる。これによれば、一日におけるその他の時間帯では、推定した発電量を超えることがないと考えることができるので、管理者等は、逆潮流の防止するための措置が必要な時間帯を容易に見積もることが可能となる。
【0118】
また、上記実施の形態において、電力の送電側の装置が移動電源車2である場合について説明したが、電力の送電側の装置は、需要家設備5_1~5_nに電力を供給可能な装置であればよく、移動電源車2に限定されない。
【0119】
また、上述のフローチャートは、動作を説明するための一例を示すものであって、これに限定されない。すなわち、フローチャートの各図に示したステップは具体例であって、このフローに限定されるものではない。例えば、一部の処理の順番が変更されてもよいし、各処理間に他の処理が挿入されてもよいし、一部の処理が並列に行われてもよい。
【符号の説明】
【0120】
1…電力供給システム、2…移動電源車、3,3A…発電量推定装置、4…電力供給経路、5_1~5_n…需要家設備、6…日射計、20…発電制御装置、21…原動機、22…発電機、23…遮断器、30,30A…制御部、31…電流値取得部、32,32A…発電量算出部、33…日射量取得部、50…分散形電源装置、51…需要家負荷、52…PCS、53…系統連系保護継電器、Sd…指示信号。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7