(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022145040
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】ウルトラファインバブル液の製造方法、及びウルトラファインバブル液
(51)【国際特許分類】
B01F 23/20 20220101AFI20220926BHJP
B01F 25/40 20220101ALI20220926BHJP
C02F 1/68 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
B01F3/04 Z
B01F5/06
C02F1/68 520B
C02F1/68 530A
C02F1/68 540Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021046285
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 大祐
(72)【発明者】
【氏名】堀内 一輝
【テーマコード(参考)】
4G035
【Fターム(参考)】
4G035AB15
4G035AB28
4G035AC26
4G035AE13
4G035AE17
(57)【要約】
【課題】緩やかな条件で微生物や微粒子等の除去が可能なウルトラファインバブル液の製造方法を提供する。
【解決手段】直径がナノメートルオーダーとされる気泡と液体とが混合した混合液を、少なくともポリプロピレンとナイロンを含む材料の中から選択される材料で構成されるメンブレンフィルター66で濾過する濾過工程を含むウルトラファインバブル液の製造方法。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直径がナノメートルオーダーとされる気泡と液体とが混合した混合液を、少なくともポリプロピレンとナイロンを含む材料の中から選択される材料で構成される高分子濾過膜で濾過する濾過工程を含むことを特徴とするウルトラファインバブル液の製造方法。
【請求項2】
前記濾過工程では、前記混合液を、少なくともポリプロピレンを含んで構成される前記高分子濾過膜で濾過することを特徴とする請求項1に記載のウルトラファインバブル液の製造方法。
【請求項3】
前記濾過工程では、前記混合液を、細孔径が0.22μm以下とされる前記高分子濾過膜で濾過することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のウルトラファインバブル液の製造方法。
【請求項4】
前記濾過工程では、前記気泡が空気を包含し、前記液体として水を用いた場合に、前記混合液の濾過後の前記気泡の濃度が、その濾過前の前記気泡の濃度に比して38%以上となるように、前記混合液を前記高分子濾過膜で濾過することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のウルトラファインバブル液の製造方法。
【請求項5】
直径がナノメートルオーダーとされる気泡と液体とが混合した混合液を、少なくともポリプロピレンとナイロンを含む材料の中から選択される材料で構成される高分子濾過膜で濾過したことを特徴とするウルトラファインバブル液。
【請求項6】
前記液体は、直径が0.22μm以上の微生物が含有されていないことを特徴とする請求項5に記載のウルトラファインバブル液。
【請求項7】
前記液体は、ヒドロキシ基を有する分子からなることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のウルトラファインバブル液。
【請求項8】
前記液体は、水であることを特徴とする請求項7に記載のウルトラファインバブル液。
【請求項9】
前記気泡は、窒素を含む気体、酸素を含む気体、フッ素を含む気体、水素を含む気体、又は空気から選択される少なくとも一つの気体を包含することを特徴とする請求項5から請求項8のいずれか1項に記載のウルトラファインバブル液。
【請求項10】
前記気泡に包含される気体と前記液体とが加圧された状態にて、細孔を有する細孔体を通過してなる前記混合液が、前記高分子濾過膜を通過してなることを特徴とする請求項5から請求項9のいずれか1項に記載のウルトラファインバブル液。
【請求項11】
前記細孔体は、セラミックスであることを特徴とする請求項10に記載のウルトラファインバブル液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ウルトラファインバブル液の製造方法、及びウルトラファインバブル液に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、直径がナノメートルオーダーとされる気泡(ウルトラファインバブル)を含む液体(ウルトラファインバブル液)が、多様な分野において注目されており、当該液体を生成する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、微小気泡発生装置内に保持された多孔質アルミナからなる複数の気泡発生管に、ポンプにより圧送した液体を流し、その管外にガスボンベから送出された気体を送り込んで、管内に1μm以下の気泡が吹き込まれた液体を生成すること、が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示の方法では、外部から微小気泡発生装置内に供給される液体に微生物や微粒子等が混入していたり、微小気泡発生装置内等で微生物や微粒子等が液体に生じたりした場合、当該微生物や微粒子等がウルトラファインバブル液に含まれてしまう可能性が考えられる。このような微生物や微粒子等を含むウルトラファインバブル液は、その期待される効果(例えば、動植物の育成に用いた場合の成長促進性等)が低下すること、気泡の濃度を測定するときに微生物や微粒子等がノイズとして測定結果に含まれてしまい気泡の濃度とその期待される効果との相関や再現性を正確に得ることができず管理上の問題が生じること、等が生じる虞がある。一方、ウルトラファインバブル液から微生物等を除去するために、例えば加熱やUV照射等を行った場合は、外部からエネルギーが付与されることによって、例えば気泡が凝集したり気泡内部のガスが水蒸気と置換したりする等、ウルトラファインバブル性質が変化する虞がある。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、緩やかな条件で微生物や微粒子等の除去が可能なウルトラファインバブル液の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、直径がナノメートルオーダーとされる気泡と液体とが混合した混合液を、少なくともポリプロピレンとナイロンを含む材料の中から選択される材料で構成される高分子濾過膜で濾過する濾過工程を含むことに特徴を有するウルトラファインバブル液の製造方法である。
【0007】
このようなウルトラファインバブル液の製造方法によると、濾過工程において、混合液における単位体積当たりの気泡(ウルトラファインバブル)の個数(以下、気泡の濃度と呼ぶことがある)が低下することを抑制しつつ、混合液に含まれる微生物や微粒子等を比較的緩やかな条件で除去することができる。
尚、ナノメートルオーダーとは、1nm以上999nm以下の範囲の値とする。
【0008】
前記濾過工程では、前記混合液を、少なくともポリプロピレンを含んで構成される前記高分子濾過膜で濾過することとすることができる。このようなウルトラファインバブル液の製造方法によると、混合液における気泡の濃度の低下をより抑制することができる。
【0009】
前記濾過工程では、前記混合液を、細孔径が0.22μm以下とされる前記高分子濾過膜で濾過することとすることができる。このようなウルトラファインバブル液の製造方法によると、混合液に含まれる微生物や微粒子等を好適に除去することができる。
【0010】
前記濾過工程では、前記気泡が空気を包含し、前記液体として水を用いた場合に、前記混合液の濾過後の前記気泡の濃度が、その濾過前の前記気泡の濃度に比して38%以上となるように、前記混合液を前記高分子濾過膜で濾過することができる。このようなウルトラファインバブル液の製造方法によると、比較的気泡の濃度が高いウルトラファインバブル液を得ることができる。
【0011】
また、本発明は、直径がナノメートルオーダーとされる気泡と液体とが混合した混合液を、少なくともポリプロピレンとナイロンを含む材料の中から選択される材料で構成される高分子濾過膜で濾過したことに特徴を有するウルトラファインバブル液である。
【0012】
このようなウルトラファインバブル液によると、比較的気泡の濃度が高く、微生物や微粒子等が除去されたものとなる。また、このようなウルトラファインバブル液を、動植物の育成に用いることで、その成長速度や成長の質等を向上させることが可能となる。また、このようなウルトラファインバブル液を、洗浄水として用いることで、洗浄効果を向上させることができるとともに、精密な洗浄が可能となる。また、このようなウルトラファインバブル液を注射液や輸液等に用いてこれらを浄化することにより、感染症等を避けることが可能となる。また、このようなウルトラファインバブル液を、薬剤等と共に人体に用いることで、薬剤等の生理活性を向上することが期待できる。
【0013】
前記液体は、直径が0.22μm以上の微生物が含有されていないものとしてもよい。前記液体は、ヒドロキシ基を有する分子からなるものとしてもよい。前記液体は、水でもよい。前記気泡は、窒素を含む気体、酸素を含む気体、フッ素を含む気体、水素を含む気体、又は空気から選択される少なくとも一つの気体を包含するものとしてもよい。前記ウルトラファインバブル液は、前記気泡に包含される気体と前記液体とが加圧された状態にて、細孔を有する細孔体を通過してなる前記混合液が、前記高分子濾過膜を通過してなるものとしてもよい。前記細孔体は、セラミックスでもよい。このようなウルトラファインバブル液によると、動植物の育成や洗浄水等に用いた場合の効果を向上させることが可能となる。尚、このような気泡に含まれる気体としては、例えば、水蒸気、重水素、三重水素、希ガス(He、Ne、Kr、Xe、Rn、Ar)、オゾン、一酸化炭素、二酸化炭素、窒素酸化物(NOx)、アンモニア、塩素、塩化水素ガス、炭化水素(メタン、エタン、プロパン、ブタン、ヘキサン)、芳香族化合物(アルコール類、アミン類、アルデヒド類、エステル類、エーテル類、ケトン類、テルペン類、ラクトン類、チオール類)、硫化水素、フッ化ガス(CF4、C2F6、C3F8、C4F8、CHF3、SF6、NF3)等のうち1種又は2種以上の気体を採用することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、緩やかな条件で微生物や微粒子等の除去が可能なウルトラファインバブル液の製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態において、混合液の生成装置を示す説明図
【
図3】空気を含む気泡を有するファインバブル液における各値を示すグラフ
【
図4】窒素を含む気泡を有するファインバブル液における各値を示すグラフ
【
図5】C
3F
8を含む気泡を有するファインバブル液における各値を示すグラフ
【
図6】濾過工程を繰り返した場合のファインバブル液における各値を示すグラフ
【
図7】水素を含む気泡を有するファインバブル液における各値を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態>
本発明の実施形態を
図1から
図7によって説明する。本実施形態では、ウルトラファインバブル液及びその製造方法について説明する。ウルトラファインバブル液の製造方法は、大別すると、直径がナノメートルオーダーとされる気泡と液体とが混合した混合液を生成する生成工程と、混合液を高分子濾過膜で濾過してウルトラファインバブル液を得る濾過工程と、を含む。尚、便宜上、濾過前のウルトラファインバブル液を、混合液と呼ぶ。
【0017】
図1は、生成工程において混合液Mを生成する生成装置1を示している。生成装置1は、第1タンク10と、第1タンク10の底面10A側に接続された第2タンク20と、第1タンク10に気体を供給する気体供給部30と、第1タンク10に液体を供給する液体供給部40と、気体と液体の供給等を制御する制御部50と、を備えている。第1タンク10及び第2タンク20は、気密状態を保ちつつ気体や液体を一時的に貯留可能な筐体とされている。第1タンク10及び第2タンク20には、内部の圧力を検出可能な圧力検出部11,21がそれぞれ設けられている。
【0018】
気体供給部30は、第1タンク10に供給される気体が流れる流路の開閉を行う気体開閉弁32と、当該気体供給部30の圧力を検出する圧力検出部31と、を備える。気体としては、例えば、窒素を含む気体、酸素を含む気体、フッ素を含む気体、水素を含む気体、又は空気からなる群から選択される少なくとも1種又は2種以上の気体を採用することができる。また、このような気体としては、水蒸気、重水素、三重水素、希ガス(He、Ne、Kr、Xe、Rn、Ar)、オゾン、一酸化炭素、二酸化炭素、窒素酸化物(NOx)、アンモニア、塩素、塩化水素ガス、炭化水素(メタン、エタン、プロパン、ブタン、ヘキサン)、芳香族化合物(アルコール類、アミン類、アルデヒド類、エステル類、エーテル類、ケトン類、テルペン類、ラクトン類、チオール類)、硫化水素、フッ化ガス(CF4、C2F6、C3F8、C4F8、CHF3、SF6、NF3)等のうち1種又は2種以上の気体を採用することができる。
【0019】
液体供給部40は、第1タンク10に供給される液体が流れる流路の開閉を行う液体開閉弁41を備える。液体としては、例えば、水、エタノール等のアルコール、又は過酸化水素水からなる群から選択される少なくとも1種又は2種以上の液体を採用することができる。その中でも、液体としては、ヒドロキシ基を有する分子からなるものが好ましく、水がより好ましい。
【0020】
第2タンク20は、第1タンク10の底面10Aを貫通し第1タンク10の内部に連通した管状の連通管22と、連通管22の下部に設けられたエレメント(細孔体)24と、連通管22の途中部分に設けられた噴射弁23と、を備える。連通管22は、第1タンク10に貯留した気体と液体とをエレメント24に流通させる。噴射弁23は、連通管22を流通する気体と液体の流路の開閉を行う。
【0021】
制御部50は、第1タンク10、第2タンク20、気体供給部30、及び液体供給部40に電気的に接続されており、圧力検出部11,21,31で検出した圧力等に基づいて、気体開閉弁32、液体開閉弁41及び噴射弁23の開閉を制御する。
【0022】
エレメント24は、筒状をなすセラミックスとされ、その全体に多数の細孔が連なるように形成されている。エレメント24は、連通管22の下部に取り付けられており、連通管22を流通する気体と液体とが当該エレメント24の内部24Aに流れ込むことが可能な構成とされている。エレメント24を構成するセラミックスは、例えば、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、ジルコニア、チタニア、ムライト、マグネシア、セリア、ドープセリア、アルミナセメント、リン酸カルシウム、ガラス、チタン酸バリウム、フェライト、ステアタイト、フォルステライト、炭化ケイ素、ゼオライト、シリカガラス、ケイ酸塩ガラス、及びシラスガラスからなる群より選択される1種又は2種以上の材料を焼結してなる焼結体とされる。その中でも、セラミックスとしては、アルミナを焼結してなる焼結体が好ましい。
【0023】
生成工程では、まず、気体供給部30から第1タンク10に気体を供給して、第1タンク10と第2タンク20の内部に当該気体を充満させておく。そして、液体開閉弁41、気体開閉弁32、及び噴射弁23を閉じた後に、液体開閉弁41を開いて第1タンク10に液体を供給する。その後、液体開閉弁41を閉じ、気体開閉弁32を開いて第1タンク10に気体を供給する。このとき、気体開閉弁32の開閉を調整することで、第1タンク10の内部の圧力が大気圧よりも高い圧力(例えば0.5MPa)となるように気体を供給する。これにより、第1タンク10の内部には、気体と液体とが加圧されて貯留した状態となる。一方、第2タンク20の内部の圧力が、加圧後の第1タンク10の内部の圧力よりも低くなるように調整しておく。
【0024】
この状態で噴射弁23を開くと、第1タンク10に貯留した気体と液体とが、連通管22を流通してエレメント24の内部24Aに流れ込み、エレメント24の内部24Aから外部に噴射する。このとき、エレメント24の内部24Aに流れ込んだ気体と液体とは、エレメント24の複数の細孔を通過してエレメント24の外部に噴射することで、当該気体を包含する気泡と当該液体とが混合した混合液Mとなって第2タンク20に貯留する。混合液Mは、第2タンク20に設けられた取出口19から外部に取り出すことができる。
【0025】
上記工程によって生成した混合液Mには、直径がナノメートルオーダーとされる気泡(ウルトラファインバブル)が生じている。このような気泡の直径は、例えば、エレメント24の細孔の孔径を変更すること等により調整可能とされる。エレメント24の細孔の孔径は、例えば、当該エレメント24を構成するセラミックスの材料の粒径(例えば、アルミナの粒径)を変更すること等により調整可能とされる。上記気泡の直径としては、50nm以上が好ましく、100nm以上がより好ましく、300nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましい。
【0026】
図2には、濾過工程において混合液Mを濾過するフィルター(濾過装置)2を示している。本実施形態では、フィルター2は、例えば、シリンジの先端に取り付けて使用するシリンジフィルターとされる。フィルター2は、収容部60と、収容部60に嵌め込まれた蓋部61と、を備え、収容部60と蓋部61との間(当該フィルター2の内部)に空間が設けられている。蓋部61は、混合液Mがフィルター2の内部に流入する流入部62と、収容部60側に突出した突部63と、を備える。収容部60は、濾過された混合液M(ウルトラファインバブル液U)がフィルター2の内部から外部に流出する流出部64を備える。フィルター2において、流入部62側(上側)が、混合液Mの上流側であり、流出部64側(下側)が、混合液Mの下流側である。
【0027】
収容部60と蓋部61との間には、蓋部61の突部63に支持されているプレフィルター65と、プレフィルター65の下流側に配されたメンブレンフィルター(高分子濾過膜)66と、が配されている。プレフィルター65は、例えば、ガラス繊維が交絡して膜状をなした膜状体が複数積層してなる多層構造(例えば、3層構造)とされる。プレフィルター65の膜状体の材料としては、ガラス以外の無機物や、セルロース等の有機物が繊維状をなすものを用いてもよい。プレフィルター65の形状としては、膜状に限らず、混合液Mの流通方向(上下方向)を高さ方向とする柱状としてもよい。
【0028】
メンブレンフィルター66は、高分子材料からなり、厚み方向(上下方向)に貫通した細孔を複数有しており、全体として膜状をなしている。メンブレンフィルター66は、その複数の細孔のうち、最大の径(細孔径)が、0.22μm以下とされる。これにより、後述する濾過工程において、混合液Mを構成する液体から直径が0.22μm以上の微生物を除去することができる。尚、メンブレンフィルター66の形状としては、膜状に限らず、上下方向を高さ方向とする柱状としてもよい。
【0029】
メンブレンフィルター66を構成する高分子材料としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンやポリスチレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリフッ化ビニリデンやポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂、ニトロセルロース、セルロースアセテート等のセルロースエステル、ニトロセルロースとセルロースアセテートの混合物等からなるセルロース混合エステル、ナイロン等のポリアミド樹脂、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン等の群から選択される1種又は2種以上の材料を採用することができる。その中でも、高分子材料としては、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエーテルスルホン、セルロースアセテートが好ましく、ポリプロピレン、ナイロンがより好ましく、ポリプロピレンがさらに好ましい。
【0030】
濾過工程では、
図1に示す生成装置1の取出口19から取り出した混合液Mを、シリンジで吸引し、
図2に示すフィルター2の流入部62から当該フィルター2の内部に流入させる。これにより、混合液Mをフィルター2のプレフィルター65とメンブレンフィルター66とに順次通過させて濾過する。プレフィルター65とメンブレンフィルター66とを通過した混合液Mは、ウルトラファインバブル液Uとして流出部64から外部に流出する。このようにして、直径がナノメートルオーダーとされる気泡と液体とを含むウルトラファインバブル液Uを得る。
【0031】
続いて、本実施形態における効果について説明する。本実施形態では、直径がナノメートルオーダーとされる気泡と液体とが混合した混合液Mを、少なくともポリプロピレンとナイロンを含む材料の中から選択される材料で構成されるメンブレンフィルター66で濾過する濾過工程を含むウルトラファインバブル液Uの製造方法を示した。
【0032】
このようなウルトラファインバブル液Uの製造方法によると、濾過工程において、混合液Mにおける気泡の濃度が低下することを抑制しつつ、混合液Mに含まれる微生物や微粒子等を比較的緩やかな条件で除去することができる。
【0033】
濾過工程では、混合液Mを、少なくともポリプロピレンを含んで構成されるメンブレンフィルター66で濾過する。このようなウルトラファインバブル液Uの製造方法によると、混合液Mにおける気泡の濃度の低下をより抑制することができる。
【0034】
濾過工程では、混合液Mを、細孔径が0.22μm以下とされるメンブレンフィルター66で濾過する。このようなウルトラファインバブル液Uの製造方法によると、混合液Mに含まれる微生物や微粒子等を好適に除去することができる。
【0035】
濾過工程では、気泡が空気を包含し、液体として水を用いた場合に、混合液Mの濾過後の気泡の濃度が、その濾過前の気泡の濃度に比して38%以上となるように、混合液Mをメンブレンフィルター66で濾過する。このようなウルトラファインバブル液Uの製造方法によると、比較的気泡の濃度が高いウルトラファインバブル液Uを得ることができる。
【0036】
また、本実施形態では、直径がナノメートルオーダーとされる気泡と液体とが混合した混合液Mを、少なくともポリプロピレンとナイロンを含む材料の中から選択される材料で構成されるメンブレンフィルター66で濾過したことに特徴を有するウルトラファインバブル液Uを示した。
【0037】
このようなウルトラファインバブル液Uによると、比較的気泡の濃度が高く、微生物や微粒子等が除去されたものとなる。また、このようなウルトラファインバブル液Uは、抗菌性や抗ウィルス性に優れたものとなる。また、このようなウルトラファインバブル液Uを、動植物の育成に用いることで、その成長速度や成長の質等を向上させることが可能となる。また、このようなウルトラファインバブル液Uを、洗浄水として用いることで、洗浄効果を向上させることができるとともに、精密な洗浄が可能となる。また、このようなウルトラファインバブル液Uを注射液や輸液等に用いてこれらを浄化することにより、感染症等を避けることが可能となる。また、このようなウルトラファインバブル液Uを、薬剤等と共に人体に用いることで、薬剤等の生理活性を向上することが期待できる。
【0038】
液体は、直径が0.22μm以上の微生物が含有されていないものとされる。液体は、ヒドロキシ基を有する分子であり、水である。気泡は、窒素を含む気体、酸素を含む気体、フッ素を含む気体、水素を含む気体、又は空気から選択される少なくとも一つの気体を包含する。ウルトラファインバブル液Uは、気泡に包含される気体と液体とが加圧された状態にて、細孔を有するエレメント24を通過してなる混合液Mが、メンブレンフィルター66を通過してなる。エレメント24は、セラミックスである。このようなウルトラファインバブル液Uによると、動植物の育成や洗浄水等に用いた場合の効果を向上させることが可能となる。
【0039】
尚、上記液体として、比較的高い清浄度が求められるものを採用して本願発明を適用することが好ましい。具体的には、上記液体として、純水、蒸留水、水道水、飲料、酒類、調味液等の一般的な液体、化粧水、美容液、ふき取り化粧液、クレンジング、乳液、日焼け止め等の化粧品、口腔洗浄液、入れ歯洗浄液、鼻腔洗浄液、コンタクトレンズの洗浄液等の医薬部外品、 重水、半導体洗浄用液、バブル核融合用液体、水耕栽培用液、人工海水等の産業用の液体、培地、培養液、ph緩衝液等のバイオ分野で用いられる液体、 又は、目薬、皮膚塗布薬、輸液製剤、注射製剤、緩衝液、生理食塩水、透析液、気管支洗浄液、腸内洗浄液、浣腸薬、胃洗浄液、血液製剤、注射用水(注射液に使用される清浄な水)、細胞外液補充液、人工膠質液等の医療用の液体等を採用することができる。
【実施例0040】
以下、実施例に基づいて本技術を詳細に説明する。なお、本技術はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0041】
<実施例1-1>
(混合液の調製)
生成装置の第1タンク(内部容量300ml)に、液体供給部から液体として純水0.5mlを供給した後、気体供給部から気体として空気を0.5Mpaの圧力で供給した。そして、噴射弁を開き、細孔径が1300nmとされるエレメントから気泡と液体とが混合した混合液を噴射させた。エレメントとしては、アルミナの焼結体を用いた。この工程を複数回繰り返して、第2タンクに混合液を貯留させた。得られた混合液の気泡の濃度は、1.33E+9個/mlであった。尚、気泡の濃度(個/ml)は、ナノサイト(登録商標:マルバーン社製 ナノトラッキング粒子径測定装置 NS300)を用いて測定した。ナノサイトでは、直径が30nm以上999nm以下の気泡の濃度を測定するものとする。
【0042】
(ウルトラファインバブル液の調整)
第2タンクから取り出した混合液のうち、50mLをシリンジで吸引した後、シリンジの先端にフィルターを取り付けて、シリンジから混合液をフィルターに流通させて濾過した。フィルターのうち、プレフィルターとしては、ガラス繊維が交絡して膜状をなした膜状体が3層積層したものを用い、メンブレンフィルター(高分子濾過膜)としては、直径が13mmとされ、細孔径が0.22μmとされ、ポリプロピレン(PP)から構成されるもの(Membrane-Solutions LLC製、品番PP013022)を用いた。混合液を当該フィルターで濾過して、実施例1-1のウルトラファインバブル液を得た。
【0043】
<実施例1-2>
フィルターのうち、メンブレンフィルターとして、ポリエーテルスルホン(PES)から構成されるもの(Membrane-Solutions LLC製、品番PES013022S)を用いたほかは、実施例1-1と同様にして、実施例1-2のウルトラファインバブル液を得た。
【0044】
<実施例1-3>
フィルターのうち、メンブレンフィルターとして、ナイロン(NY)から構成されるもの(Membrane-Solutions LLC製、品番NY013022)を用いたほかは、実施例1-1と同様にして、実施例1-3のウルトラファインバブル液を得た。
【0045】
<比較例1-1>
フィルターのうち、メンブレンフィルターとして、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から構成されるもの(Membrane-Solutions LLC製、品番PTFE013022L)を用いたほかは、実施例1-1と同様にして、比較例1-1のウルトラファインバブル液を得た。
【0046】
<比較例1-2>
フィルターのうち、メンブレンフィルターとして、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)から構成されるもの(Membrane-Solutions LLC製、品番PVDF013022)を用いたほかは、実施例1-1と同様にして、比較例1-2のファインバブル液を得た。
【0047】
<比較例1-3>
フィルターのうち、メンブレンフィルターとして、セルロースアセテート(CA)から構成されるもの(Membrane-Solutions LLC製、品番CA013022S)を用いたほかは、実施例1-1と同様にして、比較例1-3のウルトラファインバブル液を得た。
【0048】
<比較例1-4>
フィルターのうち、メンブレンフィルターとして、セルロース(MCE)から構成されるもの(Membrane-Solutions LLC製、品番MCE013022)を用いたほかは、実施例1-1と同様にして、比較例1-4のウルトラファインバブル液を得た。
【0049】
[濾過後の気泡の濃度と残留率の評価]
上記各実施例及び各比較例にて得られたファインバブル液における気泡の濃度を、ナノサイトを用いて測定した。結果を表1及び
図3に示す。尚、表1において、残留率(%)とは、ウルトラファインバブル液の気泡の濃度(濾過後の気泡の濃度)を、実施例1-1における混合液の気泡の濃度(1.33E+9個/ml)で除した値を百分率で示したものである。
【0050】
[消泡処理後の気泡の濃度と気泡率の評価]
上記各実施例及び各比較例にて得られたウルトラファインバブル液に対し、消泡処理(冷凍消泡処理)を行い、気泡の濃度と気泡率を求めた。具体的には、得られたウルトラファインバブル液を、1分間に2℃ずつの変化量で、25℃(室温)から-60℃の温度まで冷却して凝固させ、-60℃の温度を2時間維持した。その後、凝固したウルトラファインバブル液を、1分間に2℃ずつの変化量で、-60℃から25℃まで加熱して融解させた(このような手順を、冷凍消泡処理と呼ぶ)。融解後のウルトラファインバブル液における気泡の濃度を、ナノサイトを用いて測定した。結果を表1及び
図3に示す。表1において、気泡率とは、当該気泡率をR
Bとし、消泡処理前のウルトラファインバブル液における気泡の濃度(濾過後の気泡の濃度)をC
Pとし、消泡処理後のウルトラファインバブル液における気泡の濃度をC
Aとした場合に、次式(1)によって算出した値である。
R
B=(C
P-C
A)×100/C
P ・・・(1)
C
AがC
Pよりも増加した場合は、「-」として示す。
【0051】
ナノサイトは、液体に含まれる気泡以外の微粒子等も気泡として判定して測定してしまう可能性がある。冷凍消泡処理や後述する超音波消泡処理を行うことで、液体に含まれる気泡が壊れて消泡する。従って、消泡処理前後の液体に含まれる気泡の濃度をナノサイトで測定することにより、液体に含まれる気泡と気泡以外の微粒子等とを区別して濃度を求めることができる。
【0052】
【0053】
実施例1-1から1-3、及び比較例1-1から1-4の結果によると、空気を包含する気泡と純水とが混合した混合液を濾過してウルトラファインバブル液を得るときは、メンブレンフィルターとしてポリプロピレン、ポリエーテルスルホン、又はナイロンを用いた場合に、比較例に比して残留率及び気泡率が高くなることが分かった。特に、メンブレンフィルターとしてポリプロピレンを用いた場合は、残留率が100.8%であり、気泡率が94.4%であることから、濾過前後における気泡の濃度の低下を好適に抑制して混合液に含まれる微生物や微粒子などを除去することができたといえる。尚、仮に上記混合液に含まれる気泡を消泡させたいときは、残留率が比較的低いもの、即ち、メンブレンフィルターとしてセルロースやセルロースアセテートを用いればよい。なお、以下においてはウルトラファインバブル液をファインバブル液と略して言う場合がある。
【0054】
<実施例2-1>
生成装置の第1タンクに、気体供給部から気体として窒素(N2)を供給し、混合液を調整したこと以外は、実施例1-1と同様にして、実施例2-1のファインバブル液を得た。尚、混合液の気泡の濃度は、4.03E+9個/mLであった。
【0055】
<実施例2-2>
フィルターのうち、メンブレンフィルターとして、ナイロン(NY)から構成される上記のものを用いたほかは、実施例2-1と同様にして、実施例2-2のファインバブル液を得た。
【0056】
<比較例2-1>
フィルターのうち、メンブレンフィルターとして、ポリエーテルスルホン(PES)から構成される上記のものを用いたほかは、実施例2-1と同様にして、比較例2-1のファインバブル液を得た。
【0057】
<比較例2-2>
フィルターのうち、メンブレンフィルターとして、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から構成される上記のものを用いたほかは、実施例2-1と同様にして、比較例2-2のファインバブル液を得た。
【0058】
<比較例2-3>
フィルターのうち、メンブレンフィルターとして、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)から構成される上記のものを用いたほかは、実施例2-1と同様にして、比較例2-3のファインバブル液を得た。
【0059】
<比較例2-4>
フィルターのうち、メンブレンフィルターとして、セルロースアセテート(CA)から構成される上記のものを用いたほかは、実施例2-1と同様にして、比較例2-4のファインバブル液を得た。
【0060】
<比較例2-5>
フィルターのうち、メンブレンフィルターとして、セルロース(MCE)から構成される上記のものを用いたほかは、実施例2-1と同様にして、比較例2-5のファインバブル液を得た。
【0061】
<比較例2-6>
混合液の気泡の濃度が、3.25E+8個/mLであり、フィルターのうち、メンブレンフィルターとして、ポリエチレン(PE)から構成されるもの(GVS filter technology製、品番FJ13BNPPE002AD01)を用いたほかは、実施例2-1と同様にして、比較例2-6のファインバブル液を得た。
【0062】
[濾過後の気泡の濃度と残留率の評価]
上記各実施例及び各比較例について、ウルトラファインバブル液における気泡の濃度を、ナノサイトを用いて測定した。結果を表2及び
図4に示す。尚、表中、残留率(%)とは、ウルトラファインバブル液の気泡の濃度を、実施例2-1における混合液の気泡の濃度(4.03E+9個/ml)で除した値を百分率で示したものである(比較例2-6では、残留率は、混合液の気泡の濃度3.25E+8個/mLで除した値を百分率で示したものである)。
【0063】
[消泡処理後の気泡の濃度と気泡率の評価]
上記各実施形態及び各比較例にて得られたウルトラファインバブル液に対し、上述した冷凍消泡処理を行い、気泡の濃度と気泡率を求めた。結果を表2及び
図4に示す。気泡率は、表1で算出した方法(上記式(1)参照)と同じ方法を用いて算出した。C
AがC
Pよりも増加した場合は、「-」として示す。
【0064】
【0065】
実施例2-1,2-2、及び比較例2-1から2-6の結果によると、窒素を包含する気泡と純水とが混合した混合液を濾過してウルトラファインバブル液を得るときは、メンブレンフィルターとしてポリプロピレン、又はナイロンを用いた場合に、比較例に比して残留率及び気泡率が高くなることが分かった。特に、メンブレンフィルターとしてポリプロピレンを用いた場合は、残留率が115.9%であり、気泡率が98.7%であることから、濾過前後における気泡の濃度の低下を好適に抑制して混合液に含まれる微生物や微粒子などを除去することができたといえる。尚、仮に上記混合液に含まれる気泡を消泡させたいときは、残留率が比較的低いもの、即ち、メンブレンフィルターとして比較例2-1から2-6に採用された材料を用いればよい。
【0066】
<実施例3-1>
生成装置の第1タンクに、気体供給部から気体としてパーフルオロプロパン(C3F8)を供給し、混合液を調整したこと以外は、実施例1-1と同様にして、実施例3-1のファインバブル液を得た。尚、混合液の気泡の濃度は、5.79E+8個/mLであった。
【0067】
<実施例3-2>
フィルターのうち、メンブレンフィルターとして、ナイロン(NY)から構成される上記のものを用いたほかは、実施例3-1と同様にして、実施例3-2のファインバブル液を得た。
【0068】
<実施例3-3>
フィルターのうち、メンブレンフィルターとして、ポリエーテルスルホン(PES)から構成される上記のものを用いたほかは、実施例3-1と同様にして、実施例3-3のファインバブル液を得た。
【0069】
<実施例3-4>
フィルターのうち、メンブレンフィルターとして、セルロースアセテート(CA)から構成される上記のものを用いたほかは、実施例3-1と同様にして、実施例3-4のファインバブル液を得た。
【0070】
<比較例3-1>
フィルターのうち、メンブレンフィルターとして、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から構成される上記のものを用いたほかは、実施例3-1と同様にして、比較例3-1のファインバブル液を得た。
【0071】
<比較例3-2>
フィルターのうち、メンブレンフィルターとして、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)から構成される上記のものを用いたほかは、実施例3-1と同様にして、比較例3-2のファインバブル液を得た。
【0072】
<比較例3-3>
フィルターのうち、メンブレンフィルターとして、セルロース(MCE)から構成される上記のものを用いたほかは、実施例3-1と同様にして、比較例3-3のファインバブル液を得た。
【0073】
[濾過後の気泡の濃度と残留率の評価]
上記各実施例及び各比較例について、ウルトラファインバブル液における気泡の濃度を、ナノサイトを用いて測定した。結果を表3及び
図5に示す。尚、表中、残留率(%)とは、ウルトラファインバブル液の気泡の濃度を、混合液の気泡の濃度(5.79E+8個/ml)で除した値を百分率で示したものである。
【0074】
[消泡処理後の気泡の濃度と気泡率の評価]
上記各実施形態及び各比較例にて得られたウルトラファインバブル液に対し、上述した冷凍消泡処理を行い、気泡の濃度と気泡率を求めた。結果を表3及び
図5に示す。気泡率は、表1で算出した方法(上記式(1)参照)と同じ方法で算出した。C
AがC
Pよりも増加した場合は、「-」として示す。
【0075】
【0076】
実施例3-1から3-4、及び比較例3-1から3-3の結果によると、パーフルオロプロパンを包含する気泡と純水とが混合した混合液を濾過してウルトラファインバブル液を得るときは、メンブレンフィルターとしてポリプロピレン、ナイロン、又はセルロースアセテートを用いた場合に、比較例に比して残留率及び気泡率が高くなることが分かった。特に、メンブレンフィルターとしてポリプロピレンを用いた場合は、残留率が87.9%であり、気泡率が88.3%であることから、濾過前後における気泡の濃度の低下を好適に抑制して混合液に含まれる微生物や微粒子などを除去することができたといえる。尚、仮に混合液に含まれる気泡を消泡させたいときは、残留率が比較的低いもの、即ち、メンブレンフィルターとして比較例3-1から3-3に採用された材料を用いればよい。
【0077】
<参考例4-1>
実施例2-1で得られたウルトラファインバブル液(混合液を1回濾過したもの)を、シリンジで吸引した後、シリンジの先端に、実施例2-1と同様のフィルター(メンブレンフィルターとしてポリプロピレンから構成される上記のもの)を取り付けて、シリンジから混合液をフィルターに流通させて濾過し、参考例4-1のファインバブル液を得た(参考例4-1では、混合液を2回濾過した)。
【0078】
<参考例4-2>
参考例4-1で得られたウルトラファインバブル液(混合液を2回濾過したもの)を、シリンジで吸引した後、シリンジの先端に、実施例2-1と同様のフィルター(メンブレンフィルターとしてポリプロピレンから構成される上記のもの)を取り付けて、シリンジから混合液をフィルターに流通させて濾過し、参考例4-2のウルトラファインバブル液を得た(参考例4-2では、混合液を3回濾過した)。
【0079】
[濾過後の気泡の濃度、直径、及び残留率の評価]
上記実施例2-1、参考例4-1及び参考例4-2にて得られたウルトラファインバブル液における気泡の濃度及び直径を、ナノサイトを用いて測定した。結果を表4及び
図6に示す。尚、表4において、残留率(%)とは、濾過後の各ファインバブル液の気泡の濃度を、実施例2-1における混合液の気泡の濃度(4.03E+9個/ml)で除した値を百分率で示したものである。
【0080】
【0081】
実施例2-1、参考例4-1及び参考例4-2によると、濾過回数が増加するほど、残留率が低下し、気泡径が小さくなることが分かる。
【0082】
<実施例5-1>
生成装置の第1タンクに、気体供給部から気体として水素(H2)を供給し、混合液を調整したこと以外は、実施例1-1と同様にして、実施例5-1のファインバブル液を得た。尚、混合液の気泡の濃度は、7.04E+8個/mLであった。
【0083】
<実施例5-2>
フィルターのうち、メンブレンフィルターとして、ナイロン(NY)から構成される上記のものを用いたほかは、実施例5-1と同様にして、実施例5-2のファインバブル液を得た。
【0084】
<比較例5-1>
フィルターのうち、メンブレンフィルターとして、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から構成される上記のものを用いたほかは、実施例5-1と同様にして、比較例5-1のファインバブル液を得た。
【0085】
<比較例5-2>
フィルターのうち、メンブレンフィルターとして、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)から構成される上記のものを用いたほかは、実施例5-1と同様にして、比較例5-2のファインバブル液を得た。
【0086】
<比較例5-3>
フィルターのうち、メンブレンフィルターとして、ポリエーテルスルホン(PES)から構成される上記のものを用いたほかは、実施例5-1と同様にして、比較例5-3のファインバブル液を得た。
【0087】
<比較例5-4>
フィルターのうち、メンブレンフィルターとして、セルロースアセテート(CA)から構成される上記のものを用いたほかは、実施例5-1と同様にして、比較例5-4のファインバブル液を得た。
【0088】
<比較例5-5>
フィルターのうち、メンブレンフィルターとして、セルロース(MCE)から構成される上記のものを用いたほかは、実施例5-1と同様にして、比較例5-5のファインバブル液を得た。
【0089】
<比較例5-6>
フィルターのうち、メンブレンフィルターとして、ポリエチレン(PE)から構成される上記のもの(GVS filter technology製、品番FJ13BNPPE002AD01)を用いたほかは、実施例5-1と同様にして、比較例5-6のファインバブル液を得た。
【0090】
<比較例5-7>
フィルターのうち、メンブレンフィルターとして、直径が57mmとされ、細孔径が20nmとされ、ポリエチレン(PE)から構成されるもの(Entegris製、Optimizer V-47 Disposable Filters、品番FD5MXFR12)を用いたほかは、実施例5-1と同様にして、比較例5-7のファインバブル液を得た。
【0091】
<比較例5-8>
フィルターによる濾過をしなかったこと以外は、実施例5-1と同様にした。即ち、比較例5-8では、混合液(気泡の濃度7.04E+8個/mL)について、下記の評価を行った。
【0092】
[濾過後の気泡の濃度と残留率の評価]
上記各実施例及び各比較例について、ウルトラファインバブル液における気泡の濃度を、ナノサイトを用いて測定した。結果を表5及び
図7に示す。尚、表中、残留率(%)とは、ウルトラファインバブル液の気泡の濃度を、実施例5-1における混合液の気泡の濃度(7.04E+8個/mL)で除した値を百分率で示したものである。
【0093】
[冷凍消泡処理後の気泡の濃度と気泡率の評価]
上記各実施形態及び各比較例にて得られたウルトラファインバブル液等に対し、上述した冷凍消泡処理を行い、気泡の濃度と気泡率を求めた。結果を表5及び
図7に示す。気泡率は、表1で算出した方法(上記式(1)参照)と同じ方法を用いて算出した。C
AがC
Pよりも増加した場合は、「-」として示す。
【0094】
[超音波消泡処理後の気泡の濃度と気泡率の評価]
上記各実施例及び各比較例にて得られたウルトラファインバブル液等に対し、超音波消泡処理を行い、気泡の濃度と気泡率を求めた。具体的には、得られたウルトラファインバブル液等に対し、超音波を、周波数950Hz、出力50ワットの条件で15分間印加した(このような手順を、超音波消泡処理と呼ぶ)。超音波消泡処理後のウルトラファインバブル液等における気泡の濃度を、ナノサイトを用いて測定した。気泡率は、表1で算出した方法(上記式(1)参照)と同じ方法を用いて算出した。CAがCPよりも増加した場合は、「-」として示す。
【0095】
【0096】
実施例5-1,5-2、及び比較例5-1から5-7の結果によると、水素を包含する気泡と純水とが混合した混合液を濾過してウルトラファインバブル液を得るときは、メンブレンフィルターとしてポリプロピレン、又はナイロンを用いた場合に、比較例に比して残留率及び各気泡率が高くなることが分かった。比較例5-7について、メンブレンフィルター(ポリエチレン)の孔径を小さくした場合、各気泡率の向上がみられたものの、残留率の向上はみられなかった。比較例5-8をみると、混合液(濾過前のウルトラファインバブル液)に対し超音波消泡処理を行った場合の気泡率が44.7%であることから、混合液には、気泡以外の微粒子等が比較的多く混入していると考えられる。一方、実施例5-1,5-2では、超音波消泡処理を行った場合の気泡率がそれぞれ98.2%、83.4%であることから、濾過によって気泡以外の微粒子等を好適に除去できていることがわかる。尚、仮に上記混合液に含まれる気泡を消泡させたいときは、残留率が比較的低いもの、即ち、メンブレンフィルターとして比較例5-1から5-7に採用された材料を用いればよい。
【0097】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0098】
(1)上記実施形態では、混合液の生成装置と濾過装置とは、別体としたが、これに限られない。例えば、生成装置の取出口付近に濾過装置を取り付けることにより、生成装置と濾過装置とを一体的に設けてもよい。これにより、生成装置で生成した混合液を連続的に濾過装置で濾過してウルトラファインバブル液を製造してもよい。
【0099】
(2)細孔体の形状は適宜変更可能である。上記実施形態では、細孔体は、筒状としたが、これに限られない。例えば、細孔体は、板状や球体状であってもよい。また、細孔体の細孔の形は適宜変更可能である。細孔の形は、例えば、細孔体の内外方向を貫通する貫通孔であってもよい。