(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022145041
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】超電導層の接続構造、超電導線材、超電導コイル、及び超電導機器
(51)【国際特許分類】
H01B 12/06 20060101AFI20220926BHJP
H01F 6/06 20060101ALI20220926BHJP
H01R 4/68 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
H01B12/06 ZAA
H01F6/06 140
H01R4/68
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021046286
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【弁理士】
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【弁理士】
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】服部 靖
(72)【発明者】
【氏名】江口 朋子
(72)【発明者】
【氏名】萩原 将也
(72)【発明者】
【氏名】アルベサール 恵子
【テーマコード(参考)】
5G321
【Fターム(参考)】
5G321AA02
5G321AA04
5G321BA02
5G321BA05
5G321CA18
5G321CA21
5G321CA24
5G321CA52
(57)【要約】
【課題】低い電気抵抗と高い機械的強度を実現できる超電導層の接続構造を提供する。
【解決手段】実施形態の超電導層の接続構造は、第1の超電導層と第1の基板とを含み第1の方向に延びる第1の超電導部材と第1の超電導層に対向する第2の超電導層と第2の基板と、を含み第1の方向に延びる第2の超電導部材であって、第2の方向の幅が第1の幅である第1の領域と、第2の方向の幅が第2の幅である第2の領域と、第2の領域に対し第2の方向に離間し第2の方向の幅が第3の幅である第3の領域を有し、第2の幅及び第3の幅は第1の幅よりも小さい、第2の超電導部材と、第1の超電導層と第2の超電導層との間に設けられ、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む接続層と、を備え、第2の領域と第3の領域の間の部分の、第1の方向に垂直で第2の方向に垂直な第3の方向に、第1の超電導層が存在する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の超電導層と、前記第1の超電導層を支持する第1の基板と、を含み第1の方向に延びる第1の超電導部材と、
前記第1の超電導層に対向する第2の超電導層と、前記第2の超電導層を支持する第2の基板と、を含み前記第1の方向に延びる第2の超電導部材であって、
前記第1の方向に垂直な第2の方向の幅が第1の幅である第1の領域と、前記第2の方向の幅が第2の幅である第2の領域と、前記第2の領域に対し前記第2の方向に離間し前記第2の方向の幅が第3の幅である第3の領域を有し、
前記第2の幅は前記第1の幅よりも小さく、前記第3の幅は前記第1の幅よりも小さく、
前記第2の領域の前記第1の方向の端部は前記第1の領域に接し、前記第3の領域の前記第1の方向の端部は前記第1の領域に接する、第2の超電導部材と、
希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含み、前記第1の超電導層と前記第2の超電導層とを接続する接続層と、
を備え、
前記第2の領域と前記第3の領域の間の前記第1の超電導層が存在しない部分の、前記第1の方向に垂直で前記第2の方向に垂直な第3の方向に、前記第1の超電導層が存在する、超電導層の接続構造。
【請求項2】
前記第2の領域と前記第3の領域との間の部分の、前記第1の方向と反対方向に前記第2の超電導部材は存在しない請求項1記載の超電導層の接続構造。
【請求項3】
前記第2の領域と前記第3の領域との間の部分の、前記第3の方向に前記接続層が存在する請求項1又は請求項2記載の超電導層の接続構造。
【請求項4】
前記第2の幅は前記第1の方向に向かって大きくなり、前記第3の幅は前記第1の方向に向かって大きくなる請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の超電導層の接続構造。
【請求項5】
前記第2の超電導部材の形状は、前記第2の超電導部材の前記第2の方向の中心を通り前記第1の方向に平行な線分に対して、線対称である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の超電導層の接続構造。
【請求項6】
前記第2の超電導部材の前記接続層と接する部分の面積は、前記第2の超電導部材の前記第1の方向の反対方向の端部と前記第1の超電導部材の前記第1の方向の端部との間の前記第1の方向の距離と前記第2の超電導部材の前記第2の方向の幅との積の50%以上である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の超電導層の接続構造。
【請求項7】
前記第2の領域の前記第1の方向の端部と前記第1の超電導部材の前記第1の方向の端部との間の前記第1の方向の距離は、前記第2の超電導部材の前記第2の方向の幅よりも小さい請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の超電導層の接続構造。
【請求項8】
前記第2の領域の前記第1の方向の端部と前記第1の超電導部材の前記第1の方向の端部との間の前記第1の方向の距離は、前記第2の超電導部材の前記第2の方向の幅の4分の1以上である請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の超電導層の接続構造。
【請求項9】
前記第2の領域と前記第3の領域との間に設けられた補強材を、更に備える請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の超電導層の接続構造。
【請求項10】
前記第2の超電導層に対向する第3の超電導層と、前記第3の超電導層を支持する第3の基板と、を含み前記第1の方向に延びる第3の超電導部材であって、
前記第2の方向の幅が第4の幅である第4の領域と、前記第2の方向の幅が第5の幅である第5の領域と、前記第5の領域に対し前記第2の方向に離間し前記第2の方向の幅が第6の幅である第6の領域を有し、
前記第5の幅は前記第4の幅よりも小さく、前記第6の幅は前記第4の幅よりも小さく、
前記第5の領域の前記第1の方向の端部は前記第4の領域に接し、前記第6の領域の前記第1の方向の端部は前記第4の領域に接する、第3の超電導部材を、更に備え、
前記第3の超電導層と前記第2の超電導層との間に前記接続層が設けられ、
前記第5の領域と前記第6の領域の間の部分の、前記第3の方向と反対方向に、前記第2の超電導層が存在する、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の超電導層の接続構造。
【請求項11】
前記第5の領域と前記第6の領域との間の部分の、前記第1の方向と反対方向に前記第3の超電導部材は存在しない請求項10記載の超電導層の接続構造。
【請求項12】
前記第5の領域と前記第6の領域との間の部分の、前記第3の方向の反対方向に前記接続層が存在する請求項10又は請求項11記載の超電導層の接続構造。
【請求項13】
前記第5の幅は前記第1の方向に向かって大きくなり、前記第6の幅は前記第1の方向に向かって大きくなる請求項10から請求項12のいずれか1項に記載の超電導層の接続構造。
【請求項14】
前記第3の超電導部材の形状は、前記第3の超電導部材の前記第2の方向の中心を通り前記第1の方向に平行な線分に対して、線対称である請求項10から請求項13のいずれか1項に記載の超電導層の接続構造。
【請求項15】
前記第3の超電導部材の前記接続層と接する部分の面積は、前記第3の超電導部材の前記第1の方向の反対方向の端部と前記第2の超電導部材の前記第1の方向の端部との間の前記第1の方向の距離と前記第3の超電導部材の前記第2の方向の幅との積の50%以上である請求項10から請求項14のいずれか1項に記載の超電導層の接続構造。
【請求項16】
前記第5の領域の前記第1の方向の端部と前記第2の超電導部材の前記第1の方向の端部との間の前記第1の方向の距離は、前記第3の超電導部材の前記第2の方向の幅よりも小さい請求項10から請求項15のいずれか1項に記載の超電導層の接続構造。
【請求項17】
前記第5の領域の前記第1の方向の端部と前記第2の超電導部材の前記第1の方向の端部との間の前記第1の方向の距離は、前記第3の超電導部材の前記第2の方向の幅の4分の1以上である請求項10から請求項16のいずれか1項に記載の超電導層の接続構造。
【請求項18】
前記第5の領域と前記第6の領域との間に設けられた補強材を、更に備える請求項10から請求項17のいずれか1項に記載の超電導層の接続構造。
【請求項19】
請求項1から請求項18のいずれか1項に記載の超電導層の接続構造を備える超電導線材。
【請求項20】
請求項19記載の超電導線材を備える超電導コイル。
【請求項21】
請求項20記載の超電導コイルを備える超電導機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、超電導層の接続構造、超電導線材、超電導コイル、及び超電導機器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、核磁気共鳴装置(NMR)や磁気共鳴画像診断装置(MRI)では、強い磁場を発生させるために超電導コイルが用いられる。超電導コイルは、巻枠に超電導線材を巻き回すことにより形成されている。
【0003】
超電導線材を長尺化するために、例えば、複数の超電導線材を接続する。例えば、2本の超電導線材の端部を接続構造を用いて接続する。超電導線材を接続する接続構造には、低い電気抵抗と高い機械的強度が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許6258775号公報
【特許文献2】特開2018-142409号公報
【特許文献3】特許6356048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、低い電気抵抗と高い機械的強度を実現できる超電導層の接続構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の超電導層の接続構造は、第1の超電導層と、前記第1の超電導層を支持する第1の基板と、を含み第1の方向に延びる第1の超電導部材と、前記第1の超電導層に対向する第2の超電導層と、前記第2の超電導層を支持する第2の基板と、を含み前記第1の方向に延びる第2の超電導部材であって、前記第1の方向に垂直な第2の方向の幅が第1の幅である第1の領域と、前記第2の方向の幅が第2の幅である第2の領域と、前記第2の領域に対し前記第2の方向に離間し前記第2の方向の幅が第3の幅である第3の領域を有し、前記第2の幅は前記第1の幅よりも小さく、前記第3の幅は前記第1の幅よりも小さく、前記第2の領域の前記第1の方向の端部は前記第1の領域に接し、前記第3の領域の前記第1の方向の端部は第1の領域に接する、第2の超電導部材と、前記第1の超電導層と前記第2の超電導層との間に設けられ、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む接続層と、を備え、前記第2の領域と前記第3の領域の間の部分の、前記第1の方向に垂直で前記第2の方向に垂直な第3の方向に、前記第1の超電導層が存在する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】第1の実施形態の超電導層の接続構造の模式平面図及び模式断面図。
【
図3】第1の実施形態の超電導層の接続構造の模式断面図。
【
図4】第1の実施形態の超電導層の接続構造の説明図。
【
図5】第1の実施形態の超電導層の接続方法の第1の超電導線材、第2の超電導線材、及び第3の超電導線材の準備の説明図。
【
図6】第1の実施形態の超電導層の接続方法の第1の保護層、第2の保護層、及び第3の保護層の除去の説明図。
【
図7】第1の実施形態の超電導層の接続方法の第2の超電導層の上へのスラリーの塗布の説明図。
【
図8】第1の実施形態の超電導層の接続方法の第1の超電導層と第2の超電導層、及び、第3の超電導層と第2の超電導層を向き合わせた状態の説明図。
【
図9】第1の実施形態の超電導層の接続方法の第1の超電導層と第2の超電導層、及び、第3の超電導層と第2の超電導層を重ね合わせた状態の説明図。
【
図10】第1の実施形態の超電導層の接続方法の第1の超電導層と第2の超電導層、及び、第3の超電導層と第2の超電導層を加圧した状態の説明図。
【
図12】第1の実施形態の超電導層の接続構造の酸素供給効果の説明図。
【
図13】第1の実施形態の超電導層の接続構造の電流特性向上効果の説明図。
【
図14】第1の実施形態の超電導層の接続構造の変形例の模式断面図。
【
図15】第2の実施形態の超電導層の接続構造の模式平面図。
【
図16】第2の実施形態の超電導層の接続構造の変形例の模式平面図。
【
図17】第3の実施形態の超電導層の接続構造の模式平面図。
【
図18】第4の実施形態の超電導層の接続構造の模式平面図及び模式断面図。
【
図19】第5の実施形態の超電導層の接続構造の模式断面図。
【
図20】第5の実施形態の超電導層の接続構造の模式平面図及び模式断面図。
【
図21】第6の実施形態の超電導層の接続構造の模式断面図。
【
図22】第6の実施形態の超電導層の接続構造の模式平面図及び模式断面図。
【
図23】第7の実施形態の超電導コイルの模式斜視図。
【
図24】第7の実施形態の超電導コイルの模式断面図。
【
図25】第8の実施形態の超電導機器のブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明では、同一又は類似の部材などには同一の符号を付し、一度説明した部材などについては適宜その説明を省略する場合がある。
【0009】
本明細書中、結晶等に含まれる元素の検出及び元素の原子濃度の測定は、例えば、エネルギー分散型X線分光法(EDX)又は波長分散型X線分析法(WDX)を用いて行うことが可能である。また、粒子等に含まれる物質の同定は、例えば、粉末X線回折法を用いて行うことが可能である。
【0010】
(第1の実施形態)
第1の実施形態の超電導層の接続構造は、第1の超電導層と、第1の超電導層を支持する第1の基板と、を含み第1の方向に延びる第1の超電導部材と、第1の超電導層に対向する第2の超電導層と、第2の超電導層を支持する第2の基板と、を含み第1の方向に延びる第2の超電導部材であって、第1の方向に垂直な第2の方向の幅が第1の幅である第1の領域と、第2の方向の幅が第2の幅である第2の領域と、第2の領域に対し第2の方向に離間し第2の方向の幅が第3の幅である第3の領域を有し、第2の幅は第1の幅よりも小さく、第3の幅は前記第1の幅よりも小さく、第2の領域の第1の方向の端部は第1の領域に接し、第3の領域の第1の方向の端部は第1の領域に接する、第2の超電導部材と、第1の超電導層と第2の超電導層との間に設けられ、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む接続層と、を備え、第2の領域と第3の領域の間の部分の、第1の方向に垂直で第2の方向に垂直な第3の方向に、第1の超電導層が存在する。また、第1の実施形態の超電導層の接続構造は、第2の超電導層に対向する第3の超電導層と、第3の超電導層を支持する第3の基板と、を含み第1の方向に延びる第3の超電導部材であって、第2の方向の幅が第4の幅である第4の領域と、第2の方向の幅が第5の幅である第5の領域と、第5の領域に対し第2の方向に離間し第2の方向の幅が第6の幅である第6の領域を有し、第5の幅は第4の幅よりも小さく、第6の幅は第4の幅よりも小さく、第5の領域の第1の方向の端部は第4の領域に接し、第6の領域の第1の方向の端部は第4の領域に接する、第3の超電導部材を、更に備え、第3の超導電層と第2の超電導層との間に接続層が設けられ、第5の領域と第6の領域の間の部分の、第3の方向と反対方向に、第2の超電導層が存在する。
【0011】
また、第1の実施形態の超電導線材は、第1の実施形態の超電導層の接続構造を備える。
【0012】
図1は、第1の実施形態の超電導線材の模式断面図である。第1の実施形態の超電導線材100は、第1の超電導線材10、第2の超電導線材20、及び、第3の超電導線材30を備える。
【0013】
第1の超電導線材10は、第1の超電導部材の一例である。第2の超電導線材20は、第2の超電導部材の一例である。第3の超電導線材30は、第2の超電導部材の一例である。
【0014】
第1の超電導線材10は、第1の方向に延びる。第2の超電導線材20は、第1の方向に延びる。第3の超電導線材30は、第1の方向に延びる。第1の実施形態の超電導線材100は、第1の超電導線材10と第3の超電導線材30が、第2の超電導線材20を用いて接続されることで、第1の方向に長尺化されている。
【0015】
第2の超電導線材20の第1の方向の長さは、例えば、第1の超電導線材10の第1の方向の長さよりも短い。また、第2の超電導線材20の第1の方向の長さは、例えば、第3の超電導線材30の第1の方向の長さよりも短い。第2の超電導線材20は、第1の超電導線材10と第3の超電導線材30を接続する接続部材として機能する。
【0016】
第1の実施形態の超電導線材100は、接続構造50を備える。接続構造50において、第1の超電導線材10と第2の超電導線材20が接続される。接続構造50において、第2の超電導線材20と第3の超電導線材30が接続される。
【0017】
第1の超電導線材10は、第1の基板11、第1の中間層12、第1の超電導層13、第1の保護層14を備える。第2の超電導線材20は、第2の基板21、第2の中間層22、第2の超電導層23を備える。第3の超電導線材30は、第3の基板31、第3の中間層32、第3の超電導層33、第3の保護層34を備える。
【0018】
第1の基板11は、例えば、金属である。第1の基板11は、例えば、ニッケル合金又は銅合金である。第1の基板11は、例えば、ニッケルタングステン合金である。
【0019】
第1の超電導層13は、例えば、酸化物超電導層である。第1の超電導層13は、例えば、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む。第1の超電導層13は、例えば、酸化物超電導層である。第1の超電導層13は、例えば、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む結晶を含む。第1の超電導層13は、例えば、イットリウム(Y)、ランタン(La)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホロミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、及びルテチウム(Lu)から成る群のうちの少なくとも1つの希土類元素(RE)を含む。
【0020】
第1の超電導層13は、例えば、ペロブスカイト構造を有する単結晶を含む。
【0021】
第1の超電導層13は、例えば、第1の中間層12の上に、Metal Organic Decomposition法(MOD法)、Pulse Laser Depositopn法(PLD法)、又は、Metal Organic Chemical Vapor Deposition法(MOCVD法)を用いて形成される。
【0022】
第1の中間層12は、第1の基板11と第1の超電導層13との間に設けられる。第1の中間層12は、例えば、第1の超電導層13に接する。第1の中間層12は、第1の中間層12の上に形成される第1の超電導層13の結晶配向性を向上させる機能を有する。
【0023】
第1の中間層12は、例えば、希土類酸化物を含む。第1の中間層12は、例えば、複数の膜の積層構造を備える。第1の中間層12は、例えば、第1の基板11側から、酸化イットリウム(Y2O3)、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、酸化セリウム(CeO2)が積層された構造を有する。
【0024】
第1の保護層14は、第1の超電導層13の上に設けられる。第1の保護層14は、例えば、第1の超電導層13に接する。第1の保護層14は、第1の超電導層13を保護する機能を有する。
【0025】
第1の保護層14は、例えば、金属である、第1の保護層14は、例えば、銀(Ag)又は銅(Cu)を含む。
【0026】
第2の基板21は、例えば、金属である。第2の基板21は、例えば、ニッケル合金又は銅合金である。第2の基板21は、例えば、ニッケルタングステン合金である。
【0027】
第2の超電導層23は、第1の超電導層13に対向する。第2の超電導層23は、例えば、酸化物超電導層である。第2の超電導層23は、例えば、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む。第2の超電導層23は、例えば、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む結晶を含む。第2の超電導層23は、例えば、イットリウム(Y)、ランタン(La)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホロミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、及びルテチウム(Lu)から成る群のうちの少なくとも1つの希土類元素(RE)を含む。
【0028】
第2の超電導層23は、例えば、ペロブスカイト構造を有する単結晶を含む。
【0029】
第2の超電導層23は、例えば、第2の中間層22の上に、金属有機物堆積法MOD法、PLD法、又は、MOCVD法を用いて形成される。
【0030】
第2の中間層22は、第2の基板21と第2の超電導層23との間に設けられる。第2の中間層22は、例えば、第2の超電導層23に接する。第2の中間層22は、第2の中間層22の上に形成される第2の超電導層23の結晶配向性を向上させる機能を有する。
【0031】
第2の中間層22は、例えば、希土類酸化物を含む。第2の中間層22は、例えば、複数の膜の積層構造を備える。第2の中間層22は、例えば、第2の基板21側から、酸化イットリウム(Y2O3)、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、酸化セリウム(CeO2)が積層された構造を有する。
【0032】
第3の基板31は、例えば、金属である。第3の基板31は、例えば、ニッケル合金又は銅合金である。第3の基板31は、例えば、ニッケルタングステン合金である。
【0033】
第3の超電導層33は、第2の超電導層23に対向する。第3の超電導層33は、例えば、酸化物超電導層である。第3の超電導層33は、例えば、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む。第3の超電導層33は、例えば、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む結晶を含む。第3の超電導層33は、例えば、イットリウム(Y)、ランタン(La)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホロミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、及びルテチウム(Lu)から成る群のうちの少なくとも1つの希土類元素(RE)を含む。
【0034】
第3の超電導層33は、例えば、ペロブスカイト構造を有する単結晶を含む。
【0035】
第3の超電導層33は、例えば、第3の中間層32の上に、MOD法、PLD法、又は、MOCVD法を用いて形成される。
【0036】
第3の中間層32は、第3の基板31と第3の超電導層33との間に設けられる。第3の中間層32は、例えば、第3の超電導層33に接する。第3の中間層32は、第3の中間層32の上に形成される第3の超電導層33の結晶配向性を向上させる機能を有する。
【0037】
第3の中間層32は、例えば、希土類酸化物を含む。第3の中間層32は、例えば、複数の膜の積層構造を備える。第3の中間層32は、例えば、第3の基板31側から、酸化イットリウム(Y2O3)、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、酸化セリウム(CeO2)が積層された構造を有する。
【0038】
第3の保護層34は、第3の超電導層33の上に設けられる。第3の保護層34は、例えば、第3の超電導層33に接する。第3の保護層34は、第3の超電導層33を保護する機能を有する。
【0039】
第3の保護層34は、例えば、金属である、第3の保護層34は、例えば、銀(Ag)又は銅(Cu)を含む。
【0040】
接続層40は、第1の超電導層13と第2の超電導層23との間に設けられる。接続層40は、第1の超電導層13に接する。接続層40は、第2の超電導層23に接する。
【0041】
接続層40は、第2の超電導層23と第3の超電導層33との間に設けられる。接続層40は、第2の超電導層23に接する。接続層40は、第3の超電導層33に接する。
【0042】
第1の超電導層13と第2の超電導層23との間の接続層40と、第2の超電導層23と第3の超電導層33との間の接続層40は、例えば、連続している。第1の超電導層13と第2の超電導層23との間の接続層40と、第2の超電導層23と第3の超電導層33との間の接続層40は、例えば、分離されていても構わない。
【0043】
接続層40は、例えば、第1の超電導層13と第3の超電導層33との間に存在しない。第1の超電導層13と第3の超電導層33との間は、例えば、空隙(air gap)である。
【0044】
接続層40は、酸化物超電導層である。接続層40は、超電導体を含む。
【0045】
接続層40は、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む。接続層40は、例えば、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む結晶を含む。結晶は、希土類酸化物である。結晶は、例えば、ペロブスカイト構造を有する単結晶又は多結晶である。結晶は、例えば、(RE)Ba2Cu3Oδ(REは希土類元素、6≦δ≦7)で表記される化学組成を有する。
【0046】
接続層40は、例えば、イットリウム(Y)、ランタン(La)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホロミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、及びルテチウム(Lu)から成る群のうちの少なくとも1つの希土類元素(RE)を含む。
【0047】
図2は、第1の実施形態の超電導層の接続構造の模式平面図及び模式断面図である。
図2(a)は表面図、
図2(b)は裏面図、
図2(c)は、
図2(a)及び
図2(b)のAA’断面図である。なお、
図1は、
図2(a)及び
図2(b)のBB’断面を含む断面である。
【0048】
図3は、第1の実施形態の超電導層の接続構造の模式断面図である。
図3(a)は、
図2(a)及び
図2(b)のCC’断面図である。
図3(b)は、
図2(a)及び
図2(b)のDD’断面図である。
【0049】
図2(a)では、第2の超電導線材20のみにハッチングを施している。また、
図2(b)では、第1の超電導線材10及び第3の超電導線材30のみにハッチングを施している。
【0050】
また、超電導線材100の第2の超電導線材20が設けられた側の面を表面、反対側の面を裏面と称する。
【0051】
また、第1の方向に対し、垂直な方向を第2の方向と定義する。また、第1の方向に垂直で第2の方向に垂直な方向を、第3の方向と定義する。
【0052】
第3の超電導線材30は、第1の超電導線材10の第1の方向に位置する。また、第1の超電導線材10は、第2の超電導線材20の第3の方向に位置する。また、第2の超電導線材20は、第3の超電導線材30の第3の方向の反対方向に位置する。
【0053】
第1の実施形態の接続構造50は、2つの超電導層を物理的及び電気的に接続する構造である。
【0054】
接続構造50は、第1の超電導線材10、第2の超電導線材20、第3の超電導線材30、及び、接続層40を備える。
【0055】
第1の超電導線材10は、第1の超電導部材の一例である。第2の超電導線材20は、第2の超電導部材の一例である。第3の超電導線材30は、第3の超電導部材の一例である。
【0056】
第1の超電導線材10は、第1の基板11、第1の中間層12、第1の超電導層13、第1の保護層14を備える。第2の超電導線材20は、第2の基板21、第2の中間層22、第2の超電導層23を備える。第3の超電導線材30は、第3の基板31、第3の中間層32、第3の超電導層33、第3の保護層34を備える。
【0057】
第2の超電導線材20は、幅広領域20a、第1の幅狭領域20b、第2の幅狭領域20c、スリット部20xを含む。
【0058】
幅広領域20aは、第1の領域の一例である。第1の幅狭領域20bは、第2の領域の一例である。第2の幅狭領域20cは第3の領域の一例である。スリット部20xは、第2の領域と第3の領域との間の部分の一例である。
【0059】
幅広領域20aの第2の方向の幅は、第1の幅w1である。第1の幅狭領域20bの第2の方向の幅は、第2の幅w2である。第2の幅狭領域20cの第2の方向の幅は、第3の幅w3である。
【0060】
第2の幅w2は第1の幅w1よりも小さい。第3の幅w3は第1の幅w1よりも小さい。
【0061】
第1の幅狭領域20bの第1の方向の端部は幅広領域20aに接する。第2の幅狭領域20cの第1の方向の端部は幅広領域20aに接する。第2の幅狭領域20cは、第1の幅狭領域20bに対し、第2の方向に離間する。第1の幅狭領域20bの第2の超電導層23と、第2の幅狭領域20cの第2の超電導層23は、第2の方向に離間する。
【0062】
スリット部20xは、第1の幅狭領域20bと第2の幅狭領域20cの間に設けられる。スリット部20xは、第1の幅狭領域20bと第2の幅狭領域20cの間の部分に対応する。スリット部20xは、第2の超電導線材20に設けられた溝である。第2の超電導層23は、スリット部20xで分断されている。
【0063】
スリット部20xの第3の方向には、接続層40及び第1の超電導層13が存在する。第1の幅狭領域20bと第2の幅狭領域20cの間の部分の第3の方向には、接続層40及び第1の超電導層13が存在する。
【0064】
スリット部20xの第1の方向と反対方向には、第2の超電導線材20は存在しない。第1の幅狭領域20bと第2の幅狭領域20cの間の部分の第1の方向と反対方向には、第2の超電導線材20は存在しない。
【0065】
第3の超電導線材30は、幅広領域30a、第1の幅狭領域30b、第2の幅狭領域30c、スリット部30xを含む。
【0066】
幅広領域30aは、第4の領域の一例である。第1の幅狭領域30bは、第5の領域の一例である。第2の幅狭領域30cは第6の領域の一例である。スリット部30xは、第5の領域と第6の領域との間の部分の一例である。
【0067】
幅広領域30aの第2の方向の幅は、第4の幅w4である。第1の幅狭領域30bの第2の方向の幅は、第5の幅w5である。第2の幅狭領域30cの第2の方向の幅は、第6の幅w6である。
【0068】
第5の幅w5は第4の幅w4よりも小さい。第6の幅w6は第4の幅w4よりも小さい。
【0069】
第1の幅狭領域30bの第1の方向の端部は幅広領域30aに接する。第2の幅狭領域30cの第1の方向の端部は幅広領域30aに接する。第2の幅狭領域30cは、第1の幅狭領域30bに対し、第2の方向に離間する。第1の幅狭領域30bの第3の超電導層33と、第2の幅狭領域30cの第3の超電導層33は、第2の方向に離間する。
【0070】
スリット部30xは、第1の幅狭領域30bと第2の幅狭領域30cの間に設けられる。スリット部30xは、第1の幅狭領域30bと第2の幅狭領域30cの間の部分に対応する。スリット部30xは、第3の超電導線材30に設けられた溝である。第3の超電導層33は、スリット部30xで分断されている。
【0071】
スリット部30xの第3の方向と反対方向には、接続層40及び第2の超電導層23が存在する。第1の幅狭領域30bと第2の幅狭領域30cの間の部分の第3の方向と反対方向には、接続層40及び第2の超電導層23が存在する。
【0072】
スリット部30xの第1の方向と反対方向には、第3の超電導線材30は存在しない。第1の幅狭領域30bと第2の幅狭領域30cの間の部分の第1の方向と反対方向には、第3の超電導線材30は存在しない。
【0073】
図4は、第1の実施形態の超電導層の接続構造の説明図である。
図4(a)、
図4(b)、及び
図4(c)は、それぞれ、
図2(a)、
図2(b)、及び
図2(c)に対応する図である。
【0074】
第2の超電導線材20の形状は、例えば、第2の超電導線材20の第2の方向の中心を通り第1の方向に平行な線分SS’に対して、線対称である。
【0075】
第2の超電導線材20の接続層40と接する部分の面積をS1と定義する。第2の超電導線材20の第1の方向の反対方向の端部E1と第1の超電導線材10の第1の方向の端部E2との間の第1の方向の距離d1と、第2の超電導線材20の第2の方向の幅waとの積をS2と定義する。例えば、S1は、S2の50%以上である。
【0076】
スリット部20xの面積をS3と定義する。例えば、スリット部20xの面積S3は、S2の50%未満である。
【0077】
第2の超電導線材20の第1の方向の反対方向の端部E1と第1の幅狭領域20bの第1の方向の端部E3との間の距離は、第2の超電導線材20の第1の方向の反対方向の端部E1と第1の超電導線材10の第1の方向の端部E2との間の第1の方向の距離d1よりも小さい。言い換えれば、スリット部20xの第1の方向の長さは、第2の超電導線材20の第1の方向の反対方向の端部E1と第1の超電導線材10の第1の方向の端部E2との間の第1の方向の距離d1よりも短い。
【0078】
例えば、第1の幅狭領域20bの第1の方向の端部E3と第1の超電導線材10の第1の方向の端部E2との間の第1の方向の距離d2は、第2の超電導線材20の第2の方向の幅waよりも小さい。言い換えれば、例えば、スリット部20xと第1の超電導線材10の第1の方向の端部E2との間の第1の方向の距離d2は、第2の超電導線材20の第2の方向の幅waよりも小さい。
【0079】
例えば、第1の幅狭領域20bの第1の方向の端部E3と第1の超電導線材10の第1の方向の端部E2との間の第1の方向の距離d2は、第2の超電導線材20の第2の方向の幅waの4分の1以上である。言い換えれば、例えば、スリット部20xと第1の超電導線材10の第1の方向の端部E2との間の第1の方向の距離d2は、第2の超電導線材20の第2の方向の幅waの4分の1以上である。
【0080】
第3の超電導線材30の形状は、例えば、第3の超電導線材30の第2の方向の中心を通り第1の方向に平行な線分SS’に対して、線対称である。
【0081】
第3の超電導線材30の接続層40と接する部分の面積をS4と定義する。第3の超電導線材30の第1の方向の反対方向の端部E4と第2の超電導線材20の第1の方向の端部E5との間の第1の方向の距離d3と、第3の超電導線材30の第2の方向の幅wbとの積をS5と定義する。例えば、S4は、S5の50%以上である。
【0082】
スリット部30xの面積をS6と定義する。例えば、スリット部30xの面積S6は、S5の50%未満である。
【0083】
第3の超電導線材30の第1の方向の反対方向の端部E4と第1の幅狭領域30bの第1の方向の端部E6との間の距離は、第3の超電導線材30の第1の方向の反対方向の端部E4と第2の超電導線材20の第1の方向の端部E5との間の第1の方向の距離d3よりも小さい。言い換えれば、スリット部30xの第1の方向の長さは、第3の超電導線材30の第1の方向の反対方向の端部E4と第2の超電導線材20の第1の方向の端部E5との間の第1の方向の距離d3よりも短い。
【0084】
例えば、第1の幅狭領域30bの第1の方向の端部E6と第2の超電導線材20の第1の方向の端部E5との間の第1の方向の距離d4は、第3の超電導線材30の第2の方向の幅wbよりも小さい。言い換えれば、例えば、スリット部30xと第2の超電導線材20の第1の方向の端部E5との間の第1の方向の距離d4は、第3の超電導線材30の第2の方向の幅wbよりも小さい。
【0085】
例えば、第1の幅狭領域30bの第1の方向の端部E6と第2の超電導線材20の第1の方向の端部E5との間の第1の方向の距離d4は、第3の超電導線材30の第2の方向の幅wbの4分の1以上である。言い換えれば、例えば、スリット部30xと第2の超電導線材20の第1の方向の端部E5との間の第1の方向の距離d4は、第3の超電導線材30の第2の方向の幅wbの4分の1以上である。
【0086】
次に、第1の実施形態の超電導層の接続方法の一例について説明する。
【0087】
図5、
図6、
図7、
図8、
図9、及び
図10は、第1の実施形態の超電導層の接続方法の説明図である。
図5は、第1の実施形態の超電導層の接続方法の第1の超電導線材、第2の超電導線材、及び第3の超電導線材の準備の説明図である。
図6は、第1の保護層、第2の保護層、及び第3の保護層の除去の説明図である。
図7は、第1の実施形態の超電導層の接続方法の第2の超電導層の上へのスラリーの塗布の説明図である。
図8は、第1の実施形態の超電導層の接続方法の第1の超電導層と第2の超電導層、及び、第3の超電導層と第2の超電導層を向き合わせた状態の説明図である。
図9は、第1の実施形態の超電導層の接続方法の第1の超電導層と第2の超電導層、及び、第3の超電導層と第2の超電導層を重ね合わせた状態の説明図である。
図10は、第1の実施形態の超電導層の接続方法の第1の超電導層と第2の超電導層、及び、第3の超電導層と第2の超電導層を加圧した状態の説明図である。
【0088】
第1の実施形態の超電導層の接続方法は、第1の超電導層と、第1の超電導層を支持する第1の基板と、を含む第1の超電導部材と、第2の超電導層と、第2の超電導層を支持する第2の基板と、を含み第1の方向に延びる第2の超電導部材であって、第1の方向に垂直な第2の方向の幅が第1の幅である第1の領域と、第2の方向の幅が第2の幅である第2の領域と、第2の領域に対し第2の方向に離間し第2の方向の幅が第3の幅である第3の領域を有し、第2の幅は第1の幅よりも小さく、第3の幅は第1の幅よりも小さく、第2の領域の第1の方向の端部は第1の領域に接し、第3の領域の第1の方向の端部は第1の領域に接する、第2の超電導部材と、を準備し、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含むスラリーを作製し、第1の超電導層又は第2の超電導層の上に、スラリーを塗布し、スラリーを間に挟んで、第1の超電導層と第2の超電導層を重ね合わせ、第1の温度で第1の熱処理を行い、第1の熱処理と同じ酸素分圧、又は、第1の熱処理よりも高い酸素分圧を有する雰囲気中で、第2の温度の第2の熱処理を行う。
【0089】
最初に、第1の超電導線材10、第2の超電導線材20、及び、第3の超電導線材30を準備する(
図5)。
【0090】
第1の超電導線材10は、第1の基板11、第1の中間層12、第1の超電導層13、第1の保護層14を備える。第2の超電導線材20は、第2の基板21、第2の中間層22、第2の超電導層23、第2の保護層24を備える。第3の超電導線材30は、第3の基板31、第3の中間層32、第3の超電導層33、第3の保護層34を備える。
【0091】
次に、第1の超電導層13の上の第1の保護層14を一部除去する。また、第3の超電導層33の上の第3の保護層34を一部除去する。さらに、第2の超電導層23の上の第2の保護層24を除去する(
図6)。第1の保護層14、第2の保護層24、及び第3の保護層34は、例えば、ウェットエッチング法を用いて除去する。
【0092】
次に、スラリー39を作製する。スラリー39は、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む。
【0093】
スラリー39は、例えば、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む粒子を含む。また、スラリー39は、例えば、希土類元素(RE)と酸素(O)を含む第1の粒子、バリウム(Ba)と酸素(O)を含む第2の粒子、又は、銅(Cu)と酸素(O)を含む第3の粒子を含む。
【0094】
スラリー29は、例えば、焼結助剤及び増粘剤を含む。焼結助剤は、例えば、アルギン酸ナトリウムである。
【0095】
次に、第2の超電導層23の上に、スラリー39を塗布する(
図7)。
【0096】
次に、例えば、第2の超電導線材20を反転し、スラリー39を間に挟んで、第1の超電導層13と第2の超電導層23、及び、第3の超電導層33と第2の超電導層23を向き合わせる(
図8)。そして、第1の超電導層13と第2の超電導層23、及び、第3の超電導層33と第2の超電導層23を重ね合わせる(
図9)。
【0097】
次に、重ね合わせた第1の超電導層13と第2の超電導層23、及び、第3の超電導層33と第2の超電導層23を、加圧する(
図10)。例えば、重ね合わせた部分に錘を乗せることで加圧する。例えば、プレス機を用いて加圧する。例えば、加圧のための冶具を作製し、挟み込むことで加圧することもできる。冶具を用いた場合には、接続の後に冶具を取り外しても良いし、冶具を取り付けたままでも良い。冶具を取り外すとコイルを巻回しやすくなるため、取り外すことが好ましい。
【0098】
次に、第1の温度で第1の熱処理を行う。第1の熱処理は、第1の超電導層13と第2の超電導層23、及び、第3の超電導層33と第2の超電導層23が加圧された状態で行う。
【0099】
第1の温度は、例えば、500℃以上850℃以下である。第1の温度は、例えば、600℃以上800℃以下が好ましい。第1の熱処理は、例えば、大気圧で行う。第1の熱処理は、例えば大気雰囲気中、Ar雰囲気中、窒素雰囲気中、酸素雰囲気中、Arと酸素の混合雰囲気中、又は窒素と酸素の混合雰囲気中で行う。
【0100】
第1の熱処理により、スラリー39中の粒子が反応又は焼結する。
【0101】
第1の熱処理により、例えば、スラリー39中に含まれていた有機物が脱離する。第1の熱処理により、例えば、スラリー39中に含まれていた炭素(C)が脱離する。
【0102】
次に、第2の温度で第2の熱処理を行う。第2の熱処理は酸素を含む雰囲気中で行われる。第2の熱処理は、第1の熱処理と同じ酸素分圧、又は、第1の熱処理よりも高い酸素分圧を有する雰囲気中で行われる。第2の熱処理は酸素アニールである。
【0103】
第2の温度は、例えば、第1の温度よりも低い。第2の温度は、例えば、400℃以上600℃以下である。第2の熱処理は、第1の熱処理の後に第2の温度よりも低い温度まで冷却してから、第2の温度に再加熱して行っても良い。また、第2の熱処理は、第1の熱処理の後に第2の温度まで連続的に降温させて行っても良い。
【0104】
第2の熱処理は、例えば、大気圧中で行われる。第2の熱処理の雰囲気の酸素分圧は、例えば、30%以上である。
【0105】
第1の熱処理及び第2の熱処理により、接続層40が形成される。接続層40に酸化物超電導体の結晶が形成される。
【0106】
接続層40に形成される結晶は、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む。結晶は、希土類酸化物である。結晶は、例えば、ペロブスカイト構造を有する単結晶又は多結晶である。結晶は、例えば、(RE)Ba2Cu3Oδ(REは希土類元素、6≦δ≦7)で表記される化学組成を有する。
【0107】
以上の方法により、第1の超電導層13と第2の超電導層23とが接続される。また、第3の超電導層33と第2の超電導層23とが接続される。以上の方法により、第1の実施形態の接続構造50が形成される。
【0108】
次に、第1の実施形態の超電導層の接続構造50、及び、第1の実施形態の超電導線材100の作用及び効果について説明する。
【0109】
例えば、核磁気共鳴装置(NMR)や磁気共鳴画像診断装置(MRI)では、強い磁場を発生させるために超電導コイルが用いられる。超電導コイルは、巻枠に超電導線材を巻き回すことにより形成されている。
【0110】
超電導線材を長尺化するために、例えば、複数の超電導線材を接続する。例えば、2本の超電導線材の端部を、接続構造を用いて接続する。超電導線材を接続する接続構造には、低い電気抵抗と高い機械的強度が求められる。
【0111】
図11は、比較例の超電導層の接続構造の模式図である。
図11(a)は表面図、
図11(b)は裏面図、
図11(c)は、
図11(a)及び
図11(b)のEE’断面図である。
図11は、第1の実施形態の超電導層の接続構造の
図2に対応する図である。
【0112】
比較例の超電導層の接続構造90は、第2の超電導線材20が、幅広領域20a、第1の幅狭領域20b、第2の幅狭領域20c、スリット部20xを含まない点で第1の実施形態の超電導層の接続構造50と異なる。また、比較例の超電導層の接続構造90は、第3の超電導線材30が、幅広領域30a、第1の幅狭領域30b、第2の幅狭領域30c、スリット部30xを含まない点で第1の実施形態の超電導層の接続構造50と異なる。
【0113】
超電導層の接続構造90を製造する際、スラリー39を、第1の超電導層13と第2の超電導層23との間、及び、第3の超電導層33と第2の超電導層23との間に挟んだ状態で、熱処理を行う。熱処理の際、
図11(a)及び
図11(b)に黒矢印で示すように、第1の超電導線材10、第2の超電導線材20、又は第3の超電導線材30の端部から、酸素が接続層40となるスラリー39に供給される。酸素が接続層40となるスラリー39に供給されることで、酸化物超電導体が形成され、接続層40が低抵抗化する。また、接続層40の機械的強度が高くなる。
【0114】
また、熱処理の際、接続層40となるスラリー39から炭素又は有機物が脱離することにより、酸化物超電導体の形成が促進され、接続層40の電気抵抗が低くなる。また、接続層40の機械的強度が高くなる。
【0115】
比較例の超電導層の接続構造90の場合、熱処理の際、
図11(a)及び
図11(b)に点線で囲まれる領域Rへの酸素の供給が不足するおそれがある。また、比較例の超電導層の接続構造90の場合、熱処理の際、領域Rからの炭素又は有機物の脱離が不十分となるおそれがある。領域Rは、第1の超電導線材10、第2の超電導線材20、及び第3の超電導線材30の端部からの距離が遠い領域である。
【0116】
また、比較例の超電導層の接続構造90の場合、領域Rへの酸素の供給不足、又は、不十分な炭素又は有機物の脱離により、接続層40の電気抵抗が高くなったり、接続層40の機械的強度が低くなったりするおそれがある。
【0117】
図12は、第1の実施形態の超電導層の接続構造の作用及び効果の説明図である。
図12は、第1の実施形態の超電導層の接続構造の酸素供給効果の説明図である。
図12は、
図2に対応する図である。
【0118】
第1の実施形態の超電導層の接続構造50は、第2の超電導線材20が、幅広領域20a、第1の幅狭領域20b、第2の幅狭領域20c、及びスリット部20xを含む。また、超電導層の接続構造50は、第3の超電導線材30が、幅広領域30a、第1の幅狭領域30b、第2の幅狭領域30c、及びスリット部30xを含む。
【0119】
スリット部20x及びスリット部30xが存在することで、比較例の接続構造90と比べ、接続構造50を製造する際、接続層40となるスラリー39に第1の超電導線材10、第2の超電導線材20、及び第3の超電導線材30の端部からの距離が遠い領域がなくなる。
【0120】
図12(a)及び
図12(b)に黒矢印で示すように、熱処理の際に、スリット部20x及びスリット部30xから、接続層40となるスラリー39に十分な量の酸素が供給される。したがって、酸化物超電導体の形成が促進され、接続層40の電気抵抗が低くなる。また、接続層40の機械的強度が高くなる。
【0121】
また、接続層40となるスラリー39から、炭素又は有機物の脱離が十分に行われる。したがって、酸化物超電導体の形成が促進され、接続層40の電気抵抗が低くなる。また、接続層40の機械的強度が高くなる。
【0122】
図13は、第1の実施形態の超電導層の接続構造の作用及び効果の説明図である
図13は、第1の実施形態の超電導層の接続構造の電流特性向上効果の説明図である。
図13は、
図2に対応する図である。
【0123】
図13において、黒矢印は電子の流れを示す。第1の実施形態の超電導層の接続構造50は、
図13に示すように、電流密度が高くなる領域Zの第2の超電導線材20には、スリット部20xが設けられない。また、電流密度が高くなる領域Zの第3の超電導線材30には、スリット部30xが設けられない。したがって、接続構造50に大電流を流すことが可能となる。
【0124】
超電導層の接続構造50において、第2の超電導線材20の形状は、第2の超電導線材20の第2の方向の中心を通り第1の方向に平行な線分SS’に対して、線対称であることが好ましい。第2の超電導線材20の形状が、線対称であることで、電流の流れが均一化し、超電導層の接続構造50の電流特性が安定する。
【0125】
第2の超電導線材20の接続層40と接する部分の面積をS1と定義する。超電導層の接続構造50において、第2の超電導線材20の第1の方向の反対方向の端部E1と第1の超電導線材10の第1の方向の端部E2との間の第1の方向の距離d1と、第2の超電導線材20の第2の方向の幅waとの積をS2と定義する。S1は、S2の50%以上であることが好ましい。また、スリット部20xの面積をS3と定義する。スリット部20xの面積S3は、S2の50%未満であることが好ましい。
【0126】
上記態様により、第2の超電導線材20の接続層40と接する部分の面積の割合が高くなる。よって、超電導層の接続構造50の機械的強度が更に高くなる。
【0127】
超電導層の接続構造50において、第1の幅狭領域20bの第1の方向の端部E3と第1の超電導線材10の第1の方向の端部E2との間の第1の方向の距離d2は、第2の超電導線材20の第2の方向の幅waよりも小さいことが好ましい。言い換えれば、超電導層の接続構造50において、スリット部20xと第1の超電導線材10の第1の方向の端部E2との間の第1の方向の距離d2は、第2の超電導線材20の第2の方向の幅waよりも小さいことが好ましい。
【0128】
上記態様により、接続層40となるスラリー39への酸素の供給が更に促進される。また、上記態様により、接続層40となるスラリー39から、炭素又は有機物の脱離が更に促進される。よって、超電導層の接続構造50の電気抵抗が更に低くなり、超電導層の接続構造50の機械的強度が更に高くなる。
【0129】
超電導層の接続構造50において、第1の幅狭領域20bの第1の方向の端部E3と第1の超電導線材10の第1の方向の端部E2との間の第1の方向の距離d2は、第2の超電導線材20の第2の方向の幅waの4分の1以上であることが好ましい。言い換えれば、スリット部20xと第1の超電導線材10の第1の方向の端部E2との間の第1の方向の距離d2は、第2の超電導線材20の第2の方向の幅waの4分の1以上であることが好ましい。
【0130】
上記態様により、電流密度が高くなる領域Zに大電流を流すことが可能になる。
【0131】
超電導層の接続構造50において、第3の超電導線材30の形状は、第3の超電導線材30の第2の方向の中心を通り第1の方向に平行な線分SS’に対して、線対称であることが好ましい。第3の超電導線材30の形状が、線対称であることで、電流の流れが均一化し、超電導層の接続構造50の電流特性が安定する。
【0132】
第3の超電導線材30の接続層40と接する部分の面積をS4と定義する。超電導層の接続構造50において、第3の超電導線材30の第1の方向の反対方向の端部E4と第2の超電導線材20の第1の方向の端部E5との間の第1の方向の距離d3と、第3の超電導線材30の第2の方向の幅wbとの積をS5と定義する。S4は、S5の50%以上であることが好ましい。また、スリット部30xの面積をS6と定義する。超電導層の接続構造50において、スリット部30xの面積S6は、S5の50%未満であることが好ましい。
【0133】
上記態様により、第3の超電導線材30の接続層40と接する部分の面積の割合が高くなり、超電導層の接続構造50の機械的強度が更に高くなる。
【0134】
超電導層の接続構造50において、第1の幅狭領域30bの第1の方向の端部E6と第2の超電導線材20の第1の方向の端部E5との間の第1の方向の距離d4は、第3の超電導線材30の第2の方向の幅wbよりも小さいことが好ましい。言い換えれば、例えば、スリット部30xと第2の超電導線材20の第1の方向の端部E5との間の第1の方向の距離d4は、第3の超電導線材30の第2の方向の幅wbよりも小さいことが好ましい。
【0135】
上記態様により、接続層40となるスラリー39への酸素の供給が更に促進される。また、上記態様により、接続層40となるスラリー39から、炭素又は有機物の脱離が更に促進される。よって、超電導層の接続構造50の電気抵抗が更に低くなり、機械的強度が更に高くなる。
【0136】
超電導層の接続構造50において、第1の幅狭領域30bの第1の方向の端部E6と第2の超電導線材20の第1の方向の端部E5との間の第1の方向の距離d4は、第3の超電導線材30の第2の方向の幅wbの4分の1以上であることが好ましい。言い換えれば、スリット部30xと第2の超電導線材20の第1の方向の端部E5との間の第1の方向の距離d4は、第3の超電導線材30の第2の方向の幅wbの4分の1以上であることが好ましい。
【0137】
上記態様により、電流密度が高くなる領域Zに大電流を流すことが可能になる。
【0138】
超電導層の接続構造50では、第2の超電導線材20にスリット部20xを設け、第3の超電導線材30にスリット部30xを設ける。第2の超電導線材20に2つのスリット部を設ける構造としないことにより、超電導層の接続構造50の機械的強度が高くなる。
【0139】
図14は、第1の実施形態の超電導層の接続構造の変形例の模式断面図である。
図14は、
図2(c)に対応する図である。
【0140】
変形例の超電導層の接続構造51は、スリット部20xの第3の方向には、接続層40が存在しない点で、第1の実施形態の超電導層の接続構造50と異なる。
【0141】
以上、第1の実施形態の超電導層の接続構造、その変形例、及び超電導線材によれば、低い電気抵抗と高い機械的強度を実現できる。
【0142】
(第2の実施形態)
第2の実施形態の超電導層の接続構造及び超電導線材は、第2の幅は第1の方向に向かって大きくなり、第3の幅は第1の方向に向かって大きくなる点、及び、第5の幅は第1の方向に向かって大きくなり、第6の幅は第1の方向に向かって大きくなる点で、第1の実施形態の超電導層の接続構造と異なる。以下、第1の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する場合がある。
【0143】
図15は、第2の実施形態の超電導層の接続構造の模式平面図である。
図15(a)は表面図、
図15(b)は裏面図である。
図15(a)は、第1の実施形態の
図2(a)に対応する図である。
図15(b)は、第1の実施形態の
図2(b)に対応する図である。
【0144】
第2の実施形態の超電導層の接続構造52は、第2の超電導線材20の第1の幅狭領域20bの第2の幅w2が、第1の方向に向かって大きくなる。また、第2の幅狭領域20cの第3の幅w3が、第1の方向に向かって大きくなる。スリット部20xの形状は、台形である。
【0145】
また、第2の実施形態の超電導層の接続構造52は、第3の超電導線材30の第1の幅狭領域30bの第5の幅w5が、第1の方向に向かって大きくなる。また、第3の超電導線材30の第2の幅狭領域30cの第の幅w6が、第1の方向に向かって大きくなる。スリット部30xの形状は、台形である。
【0146】
第2の実施形態の超電導層の接続構造52によれば、電流密度が高くなる領域の抵抗が低下し、大電流を流すことが可能になる。
【0147】
図16は、第2の実施形態の超電導層の接続構造の変形例の模式平面図である。
図16(a)は表面図、
図16(b)は裏面図である。
図16(a)は、
図15(a)に対応する図である。
図16(b)は、
図15(b)に対応する図である。
【0148】
変形例の超電導層の接続構造53において、スリット部20xの形状は、三角形である。また、スリット部30xの形状は、三角形である。
【0149】
以上、第2の実施形態の超電導層の接続構造、その変形例、及び超電導線材によれば、低い電気抵抗と高い機械的強度を実現できる。
【0150】
(第3の実施形態)
第3の実施形態の超電導層の接続構造及び超電導線材は、第2の超電導部材が2つのスリット部を有する点、及び、第3の超電導部材が2つのスリット部を有する点で、第1の実施形態の超電導層の接続構造と異なる。以下、第1の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する場合がある。
【0151】
図17は、第3の実施形態の超電導層の接続構造の模式平面図である。
図17(a)は表面図、
図17(b)は裏面図である。
図17(a)は、第1の実施形態の
図2(a)に対応する図である。
図17(b)は、第1の実施形態の
図2(b)に対応する図である。
【0152】
第3の実施形態の超電導層の接続構造54の第2の超電導線材20は、幅広領域20a、第1の幅狭領域20b、第2の幅狭領域20c、第3の幅狭領域20d、スリット部20x、及びスリット部20yを含む。
【0153】
幅広領域20aの第2の方向の幅は、第1の幅w1である。第3の幅狭領域20dの第2の方向の幅は、第7の幅w7である。第7の幅w7は第1の幅w1よりも小さい。
【0154】
第3の幅狭領域20dの第1の方向の端部は幅広領域20aに接する。第3の幅狭領域20dは、第2の幅狭領域20cに対し第2の方向に離間する。第2の幅狭領域20cの第2の超電導層23と、第3の幅狭領域20dの第2の超電導層23は、第2の方向に離間する。
【0155】
スリット部20yは、第2の幅狭領域20cと第3の幅狭領域20dの間に設けられる。スリット部20yは、第2の幅狭領域20cと第3の幅狭領域20dの間の部分に対応する。スリット部20yは、第2の超電導線材20に設けられた溝である。
【0156】
第3の実施形態の超電導層の接続構造54の第3の超電導線材30は、幅広領域30a、第1の幅狭領域30b、第2の幅狭領域30c、第3の幅狭領域30d、スリット部30x、及びスリット部30yを含む。
【0157】
幅広領域30aの第2の方向の幅は、第4の幅w4である。第3の幅狭領域30dの第2の方向の幅は、第8の幅w8である。第8の幅w8は第4の幅w4よりも小さい。
【0158】
第3の幅狭領域30dの第1の方向の端部は幅広領域30aに接する。第3の幅狭領域30dは、第2の幅狭領域30cに対して第2の方向に離間する。第2の幅狭領域30cの第3の超電導層33と、第3の幅狭領域30dの第3の超電導層33は、第2の方向に離間する。
【0159】
スリット部30yは、第2の幅狭領域30cと第3の幅狭領域30dの間に設けられる。スリット部30yは、第2の幅狭領域30cと第3の幅狭領域30dの間の部分に対応する。スリット部30yは、第3の超電導線材30に設けられた溝である。
【0160】
以上、第3の実施形態の超電導層の接続構造、及び超電導線材によれば、低い電気抵抗と高い機械的強度を実現できる。
【0161】
(第4の実施形態)
第4の実施形態の超電導層の接続構造及び超電導線材は、第2の超電導部材がスリット部にかえて開口部を備える点、及び、第3の超電導部材がスリット部にかえて開口部を備える点で、第1の実施形態の超電導層の接続構造と異なる。以下、第1の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する場合がある。
【0162】
図18は、第4の実施形態の超電導層の接続構造の模式平面図及び模式断面図である。
図18(a)は表面図、
図18(b)は裏面図である。
図18(a)は、第1の実施形態の
図2(a)に対応する図である。
図18(b)は、第1の実施形態の
図2(b)に対応する図である。
【0163】
第4の実施形態の超電導層の接続構造55の第2の超電導線材20は、幅広領域20a、第1の幅狭領域20b、第2の幅狭領域20c、及び開口部20zを含む。
【0164】
開口部20zは、第1の幅狭領域20bと第2の幅狭領域20cの間に設けられる。開口部20zは、第2の超電導線材20に設けられた穴である。開口部20zの穴の数を複数とすることも可能である。
【0165】
開口部20zの第3の方向には、接続層40及び第1の超電導層13が存在する。第2の超電導層23は、開口部20zで分断されている。開口部20zの第1の方向と反対方向には、第2の超電導線材20が存在する。
【0166】
第4の実施形態の超電導層の接続構造55の第3の超電導線材30は、幅広領域30a、第1の幅狭領域30b、第2の幅狭領域30c、及び開口部30zを含む。
【0167】
開口部30zは、第2の幅狭領域30cと第3の幅狭領域30dの間に設けられる。開口部30zは、第3の超電導線材30に設けられた穴である。開口部30zの穴の数を複数とすることも可能である。
【0168】
開口部30zの第3の方向と反対方向には、接続層40及び第2の超電導層23が存在する。第3の超電導層33は、開口部30zで分断されている。開口部30zの第1の方向と反対方向には、第3の超電導線材30が存在する。
【0169】
以上、第4の実施形態の超電導層の接続構造、及び超電導線材によれば、低い電気抵抗と高い機械的強度を実現できる。
【0170】
(第5の実施形態)
第5の実施形態の超電導層の接続構造及び超電導線材は、第3の超電導部材を備えない点で、第1の実施形態の超電導層の接続構造と異なる。以下、第1の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する場合がある。
【0171】
図19は、第5の実施形態の超電導線材の模式断面図である。第5の実施形態の超電導線材200は、第1の超電導線材10及び第2の超電導線材20を備える。
【0172】
第1の超電導線材10は、第1の方向に延びる。第2の超電導線材20は、第1の方向に延びる。第5の実施形態の超電導線材200は、第1の超電導線材10が第2の超電導線材20と接続されることで、第1の方向に長尺化されている。
【0173】
第5の実施形態の超電導線材200は、接続構造60を備える。接続構造60において、第1の超電導線材10と第2の超電導線材20が接続される。
【0174】
【0175】
図20(a)では、第2の超電導線材20のみにハッチングを施している。また、
図20(b)では、第1の超電導線材10のみにハッチングを施している。
【0176】
第5の実施形態の接続構造60は、第1の超電導線材10、第2の超電導線材20、及び、接続層40を備える。
【0177】
第1の超電導線材10は、第1の超電導部材の一例である。第2の超電導線材20は、第2の超電導部材の一例である。
【0178】
第1の超電導線材10は、第1の基板11、第1の中間層12、第1の超電導層13、第1の保護層14を備える。第2の超電導線材20は、第2の基板21、第2の中間層22、第2の超電導層23を備える。
【0179】
第2の超電導線材20は、幅広領域20a、第1の幅狭領域20b、第2の幅狭領域20c、スリット部20xを含む。
【0180】
以上、第5の実施形態の超電導層の接続構造、及び超電導線材によれば、低い電気抵抗と高い機械的強度を実現できる。
【0181】
(第6の実施形態)
第6の実施形態の超電導層の接続構造及び超電導線材は、補強材を備える点で、第1の実施形態の超電導層の接続構造と異なる。以下、第1の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する場合がある。
【0182】
図21は、第6の実施形態の超電導線材の模式断面図である。第6の実施形態の超電導線材300は、第1の超電導線材10、第2の超電導線材20、及び、第3の超電導線材30を備える。
【0183】
第6の実施形態の超電導線材300は、接続構造61を備える。接続構造61において、第1の超電導線材10と第2の超電導線材20が接続される。接続構造61において、第2の超電導線材20と第3の超電導線材30が接続される。
【0184】
図22は、第6の実施形態の超電導層の接続構造の模式断面図である。
図22(a)は、第1の実施形態の
図3(a)に対応する図である。
図22(b)は、第1の実施形態の
図3(b)に対応する図である。
【0185】
接続構造61の外周部に、接続構造61を囲むように、補強材70が設けられる。補強材70は、接続構造61の機械的強度を向上する機能を有する。
【0186】
補強材70は、第2の超電導線材20の第1の幅狭領域20bと第2の幅狭領域20cとの間に設けられる。補強材70は、スリット部20xを埋める。
【0187】
補強材70は、第3の超電導線材30の第1の幅狭領域30bと第2の幅狭領域30cとの間に設けられる。補強材70は、スリット部30xを埋める。
【0188】
補強材70は、例えば、金属又は樹脂である。補強材70は、例えば、はんだである。補強材70は、例えば、エポキシ樹脂である。
【0189】
以上、第6の実施形態の超電導層の接続構造、及び超電導線材によれば、低い電気抵抗と高い機械的強度を実現できる。
【0190】
(第7の実施形態)
第7の実施形態の超電導コイルは、第1ないし第6の実施形態の超電導線材を備える。以下、第1ないし第6の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する場合がある。
【0191】
図23は、第7の実施形態の超電導コイルの模式斜視図である。
図24は、第7の実施形態の超電導コイルの模式断面図である。
【0192】
第7の実施形態の超電導コイル700は、例えば、NMR、MRI、重粒子線治療器、又は、超電導磁気浮上式鉄道車両などの超電導機器の磁場発生用のコイルとして用いられる。
【0193】
超電導コイル700は、巻枠110、第1の絶縁板111a、第2の絶縁板111b、及び巻線部112を備える。巻線部112は、超電導線材120と、線材間層130を有する。
【0194】
図23は、第1の絶縁板111a、及び第2の絶縁板111bを除いた状態を示す。
【0195】
巻枠110は、例えば、繊維強化プラスチックで形成される。超電導線材120は、例えば、テープ形状である。超電導線材120は、
図23に示すように、巻回中心Cを中心に、同心円状のいわゆるパンケーキ形状に巻枠110に巻き回される。
【0196】
線材間層130は、超電導線材120を固定する機能を有する。線材間層130は、超電導線材120が、超電導機器の使用中の振動や、互いの摩擦により破壊されることを抑制する機能を有する。
【0197】
第1の絶縁板111a及び第2の絶縁板111bは、例えば、繊維強化プラスチックで形成される。第1の絶縁板111a及び第2の絶縁板111bは、巻線部112を外部に対して絶縁する機能を有する。巻線部112は、第1の絶縁板111aと第2の絶縁板111bとの間に位置する。
【0198】
超電導線材120には、第1ないし第6の実施形態の超電導線材が用いられる。
【0199】
以上、第7の実施形態によれば、低い電気抵抗と高い機械的強度を備える超電導線材を備えることで、特性の向上した超電導コイルが実現できる。
【0200】
(第8の実施形態)
第8の実施形態の超電導機器は、第7の実施形態の超電導コイルを備えた超電導機器である。以下、第7の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する。
【0201】
図25は、第8の実施形態の超電導機器のブロック図である。第8の実施形態の超電導機器は、重粒子線治療器800である。重粒子線治療器800は、超電導機器の一例である。
【0202】
重粒子線治療器800は、入射系80、シンクロトロン加速器82、ビーム輸送系84、照射系86、制御系88を備える。
【0203】
入射系80は、例えば、治療に用いる炭素イオンを生成し、シンクロトロン加速器82に入射するための予備加速を行う機能を有する。入射系80は、例えば、イオン発生源と線形加速器を有する。
【0204】
シンクロトロン加速器82は、入射系80から入射された炭素イオンビームを治療に適合したエネルギーまで加速する機能を有する。シンクロトロン加速器82に、第7の実施形態の超電導コイル700が用いられる。
【0205】
ビーム輸送系84は、シンクロトロン加速器82から入射された炭素イオンビームを照射系86まで輸送する機能を有する。ビーム輸送系84は、例えば、偏向電磁石を有する。
【0206】
照射系86は、ビーム輸送系84から入射された炭素イオンビームを照射対象である患者に照射する機能を備える。照射系86は、例えば、炭素イオンビームを任意の方向から照射可能にする回転ガントリーを有する。回転ガントリーに、第7の実施形態の超電導コイル700が用いられる。
【0207】
制御系88は、入射系80、シンクロトロン加速器82、ビーム輸送系84、及び照射系86の制御を行う。制御系88は、例えば、コンピュータである。
【0208】
第8の実施形態の重粒子線治療器800は、シンクロトロン加速器82及び回転ガントリーに、第7の実施形態の超電導コイル700が用いられる。したがって、特性の優れた重粒子線治療器800が実現される。
【0209】
第8の実施形態では、超電導機器の一例として、重粒子線治療器800の場合を説明したが、超電導機器は、核磁気共鳴装置(NMR)、磁気共鳴画像診断装置(MRI)、又は、超電導磁気浮上式鉄道車両であっても構わない。
【実施例0210】
(実施例1)
図1ないし
図4に示す第1の実施形態の超電導層の接続構造を形成した。ハステロイ基材上に中間層とGdBa
2Cu
3O
7-δ層(酸化物超電導層)が形成され、銀及び銅の保護層で覆われた、酸化物超電導線材を3本用意した。1本の線材の長さを1.6cm、残りの2本の線材の長さを10cmとした。1.6cmの線材は両方の端部の間の全体を、硝酸及びアンモニアと過酸化水素の混合溶液を用いてウェットエッチングし、酸化物超電導層を露出させた。10cmの2本の線材は片方の端部から0.8cmの部分を、硝酸及びアンモニアと過酸化水素の混合溶液を用いてウェットエッチングし、酸化物超電導層を露出させた。
【0211】
1.6cmの線材の一方の端部から0.6cmの長さで、線材の中心部分を切り取り、幅0.1cmのスリット部を作成した。さらに、10cmの線材のうちの1本の線材の超電導層を、露出した端部から0.6cmの長さで、線材の中心部分を切り取り、幅0.1cmのスリット部を作成した。
【0212】
粒径がサブミクロン程度のGd2O3とBaCO3とCuOの粉末を用意し、適宜秤量したのちに、乳鉢を用いて十分混合した。得られた混合粉に水とアルギン酸ナトリウムを加え、スラリーとした。
【0213】
得られたスラリーを、上記1.6cmの線材の、露出させた酸化物超電導層に塗布した。その後、
図8に示す構造となるように、1.6cmの線材のスラリーを塗布した部分と、10cmの線材の超電導層を露出させた部分とを向かい合わせて重ね合わせ、上下から板で挟み込んだ。板で挟み込んだまま炉に入れ、板の上面に錘を乗せて接続部分に加重を印加した。
【0214】
錘を乗せたまま、大気雰囲気中で780℃に加熱する第1の熱処理を行った。その後、室温付近まで冷却し、炉に酸素ガスを導入して、酸素雰囲気中で500℃に加熱する第2の熱処理を行い、超電導層の接続構造を形成した。
【0215】
接続後の超電導線材の両端に端子をつけ、電気抵抗の温度依存性を測定したところ、93K付近、転移幅約1Kで明確な超電導転移を確認した。実施例1の接続構造の、超電導転移後の臨界電流値を基準値1.0として、以下実施例、比較例において相対臨界電流値を示す。
【0216】
(実施例2)
図15に示す第2の実施形態の超電導層の接続構造を形成した。ハステロイ基材上に中間層とGdBa
2Cu
3O
7-δ層(酸化物超電導層)が形成され、銀及び銅の保護層で覆われた、酸化物超電導線材を3本用意した。1本の線材の長さを1.6cm、残りの2本の線材の長さを10cmとした。1.6cmの線材は両方の端部の間の全体を、硝酸及びアンモニアと過酸化水素の混合溶液を用いてウェットエッチングし、酸化物超電導層を露出させた。10cmの2本の線材は片方の端部から0.8cmの部分を、硝酸及びアンモニアと過酸化水素の混合溶液を用いてウェットエッチングし、酸化物超電導層を露出させた。
【0217】
1.6cmの線材の一方の端部の角から0.12cm、端部から0.6cm、縁から0.18cmの位置まで第1の切り込みを入れた。次に、1.6cmの線材の一方の端部のもう一方の角から0.12cm、端部から0.6cm、縁から0.18cmの位置まで第2の切り込みを入れた。端部から0.6cmの位置にある二つの切り込みを繋げるように切り落とすことでスリット部を作成した。スリット部の形状は端部に向かって広がる台形状である。さらに10cmの線材のうち1本の超電導層も同様にスリット部を作成した。
【0218】
台形状のスリット部を作製したこと以外は、実施例1と同様にして接続構造を形成し、測定、観察をおこなったところ、93K付近、転移幅約1Kで明確な超電導転移を確認した。相対臨界電流値は1.0であった。
【0219】
(実施例3)
図17に示す第3の実施形態の超電導層の接続構造を形成した。ハステロイ基材上に中間層とGdBa
2Cu
3O
7-δ層(酸化物超電導層)が形成され、銀及び銅の保護層で覆われた、酸化物超電導線材を3本用意した。1本の線材の長さを1.6cm、残りの2本の線材の長さを10cmとした。1.6cmの線材は両方の端部の間の全体を、硝酸及びアンモニアと過酸化水素の混合溶液を用いてウェットエッチングし、酸化物超電導層を露出させた。10cmの2本の線材は片方の端部から0.8cmの部分を、硝酸及びアンモニアと過酸化水素の混合溶液を用いてウェットエッチングし、酸化物超電導層を露出させた。
【0220】
1.6cmの線材の一方の端部から0.6cmまで、端部の角から0.075cmを中心に幅0.05cmを切り取り、スリット部を形成した。また、線材の一方の端部から0.6cmまで、端部のもう一方の角から0.075cmを中心に幅0.05cmを切り取り、もう一つのスリット部を形成した。
【0221】
スリット部を2か所作製したこと以外は、実施例1と同様にして接続構造を形成し、測定、観察をおこなったところ、93K付近、転移幅約1Kで明確な超電導転移を確認した。相対臨界電流値は1.0であった。
【0222】
(実施例4)
図18に示す第4の実施形態の超電導層の接続構造を形成した。ハステロイ基材上に中間層とGdBa
2Cu
3O
7-δ層(酸化物超電導層)が形成され、銀及び銅の保護層で覆われた、酸化物超電導線材を3本用意した。1本の線材の長さを1.6cm、残りの2本の線材の長さを10cmとした。1.6cmの線材は両方の端部の間の全体を、硝酸及びアンモニアと過酸化水素の混合溶液を用いてウェットエッチングし、酸化物超電導層を露出させた。10cmの2本の線材は片方の端部から0.8cmの部分を、硝酸及びアンモニアと過酸化水素の混合溶液を用いてウェットエッチングし、酸化物超電導層を露出させた。
【0223】
1.6cmの線材の一方の端部から0.1cmの位置に、長さ0.5cmで幅0.1cmのスリット部をパンチングで作成した。さらに10cmの線材のうち1本の超電導層を露出した端部から0.1cmの位置に、長さ0.5cmで幅0.1cmのスリット部をパンチングで作成した。
【0224】
スリット部が線材端部にかかっていないこと以外は、実施例1と同様にして接続構造を形成し、測定、観察をおこなったところ、93K付近、転移幅約1Kで明確な超電導転移を確認した。相対臨界電流値は1.0であった。
【0225】
(実施例5)
図19及び
図20に示す第5の実施形態の超電導層の接続構造を形成した。ハステロイ基材上に中間層とGdBa
2Cu
3O
7-δ層(酸化物超電導層)が形成され、銀及び銅の保護層で覆われた、10cmの酸化物超電導線材を2本用意した。2本の線材は、片方の端部から0.8cmの部分を、硝酸及びアンモニアと過酸化水素の混合溶液を用いてウェットエッチングし、酸化物超電導層を露出させた。
【0226】
1本の超電導層を露出した端部から0.6cmまで、中心0.1cmを切り取り、スリット部を作成した。
【0227】
粒径がサブミクロン程度のGd2O3とBaCO3とCuOの粉末を用意し、適宜秤量したのちに、乳鉢を用いて十分混合した。得られた混合粉に水とアルギン酸ナトリウムを加え、スラリーとした。
【0228】
得られたスラリーを、スリット部を作製した線材の露出させた酸化物超電導層に塗布した後、線材のスラリーを塗布した部分と、もう1本の線材の超電導層を露出させた部分とを向かい合わせて重ね合わせ、上下から板で挟み込んだ。板で挟み込んだまま炉に入れ、板の上面に錘を乗せて接続部分に加重を印加した。
【0229】
錘を乗せたまま、大気雰囲気中で780℃に加熱し、第1の熱処理を行った。その後、室温付近まで冷却し、炉に酸素ガスを導入して、酸素雰囲気中で500℃に加熱し、第2の熱処理を行い、超電導線層の接続構造を形成した。
【0230】
接続後の超電導線材の両端に端子をつけ、電気抵抗の温度依存性を測定したところ、93K付近、転移幅約1Kで明確な超電導転移を確認した。相対臨界電流値は1.0であった。
【0231】
(比較例1)
図11に示す比較例の超電導層の接続構造を形成した。ハステロイ基材上に中間層とGdBa
2Cu
3O
7-δ層(酸化物超電導層)が形成され、銀及び銅の保護層で覆われた、酸化物超電導線材を3本用意した。1本の線材の長さを1.6cm、残りの2本の線材の長さを10cmとした。1.6cmの線材は両方の端部の間の全体を、硝酸及びアンモニアと過酸化水素の混合溶液を用いてウェットエッチングし、酸化物超電導層を露出させた。10cmの2本の線材は片方の端部から0.8cmの部分を、硝酸及びアンモニアと過酸化水素の混合溶液を用いてウェットエッチングし、酸化物超電導層を露出させた。
【0232】
粒径がサブミクロン程度のGd2O3とBaCO3とCuOの粉末を用意し、適宜秤量したのちに、乳鉢を用いて十分混合した。得られた混合粉に水とアルギン酸ナトリウムを加え、スラリーとした。
【0233】
得られたスラリーを、上記1.6cmの線材の、露出させた酸化物超電導層に塗布した後、
図8に示す構造となるように、1.6cmの線材のスラリーを塗布した部分と、10cmの線材の超電導層を露出させた部分とを向かい合わせて重ね合わせ、上下から板で挟み込んだ。板で挟み込んだまま炉に入れ、板の上面に錘を乗せて接続部分に加重を印加した。
【0234】
錘を乗せたまま、大気雰囲気中で780℃に加熱する第1の熱処理を行った。その後、室温付近まで冷却し、炉に酸素ガスを導入して、酸素雰囲気中で500℃に加熱する第2の熱処理を行い、超電導線層の接続構造を形成した。
【0235】
接続後の超電導線材の両端に端子をつけ、電気抵抗の温度依存性を測定したところ、93K以下で超電導転移を確認した。実施例1よりも温度変化に対して電気抵抗の変化が緩やかになり転移幅は約5Kに広がった。相対臨界電流値は0.7に低下した。
【0236】
接続部断面をSEM及びSEM-EDXで観察したところ、GdBa2Cu3O7-δ組成で、接合部の中心付近に残存した炭酸Baと推測されるBaの偏析が確認された。
【0237】
(実施例6)
図21及び
図22に示す第6の実施形態の接続構造を形成した。実施例1の手順に従い接続構造を形成した後、接続構造を含む長さ2.6cmを銀(Ag)及びインジウム(In)を含むハンダに埋め込むことで補強構造とした。
【0238】
補強を施した超電導線材の両端に端子をつけ、電気抵抗の温度依存性を測定したところ、電気抵抗の温度依存性を測定したところ、93K付近、転移幅約1Kで明確な超電導転移を確認した。相対臨界電流値は1.0であった。
【0239】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。例えば、一実施形態の構成要素を他の実施形態の構成要素と置き換え又は変更してもよい。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。