(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022145048
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】ニンニク風味増強方法
(51)【国際特許分類】
A23L 27/00 20160101AFI20220926BHJP
A23L 27/10 20160101ALI20220926BHJP
【FI】
A23L27/00 Z
A23L27/00 101A
A23L27/00 101Z
A23L27/10 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021046293
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】000175283
【氏名又は名称】三栄源エフ・エフ・アイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牛谷 健作
(72)【発明者】
【氏名】池上 侑希
【テーマコード(参考)】
4B047
【Fターム(参考)】
4B047LB03
4B047LB08
4B047LB09
4B047LG05
4B047LG17
4B047LG18
4B047LG20
4B047LG32
4B047LG34
4B047LG46
4B047LP02
(57)【要約】
【課題】ニンニク風味の増強剤、当該増強剤を含有するニンニク成分含有飲食物、ニンニク成分含有飲食物についてニンニク風味を増強する方法を提供する。
【解決手段】スクラロース、ソーマチン、ネオテーム、ラカンカ抽出物、アセスルファムカリウム、ステビア抽出物、及びアスパルテームよりなる群から選択される少なくとも1種を含有する、ニンニク風味増強剤を用いる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクラロース、ソーマチン、ネオテーム、ラカンカ抽出物、アセスルファムカリウム、ステビア抽出物、及びアスパルテームよりなる群から選択される少なくとも1種を含有する、ニンニク風味増強剤。
【請求項2】
請求項1に記載するニンニク風味増強剤をニンニク風味を増強する有効量含有する、ニンニク成分含有飲食物。
【請求項3】
ニンニク成分含有飲食物を、スクラロース、ソーマチン、ネオテーム、ラカンカ抽出物、アセスルファムカリウム、ステビア抽出物、及びアスパルテームよりなる群から選択される少なくとも1種と共存させる工程を有する、ニンニク風味が増強されたニンニク成分含有飲食物の製造方法。
【請求項4】
ニンニク成分またはニンニク成分を含む飲食物を、スクラロース、ソーマチン、ネオテーム、ラカンカ抽出物、アセスルファムカリウム、ステビア抽出物、及びアスパルテームよりなる群から選択される少なくとも1種と共存させることを特徴とする、ニンニク風味を増強する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はニンニク風味増強剤に関する。また本発明はニンニク風味が増強されてなるニンニク成分含有飲食物、及びその製造方法に関する。さらに本発明はニンニク成分含有飲食物についてニンニク風味を増強する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ニンニクは、生又は加工した状態で、飲食物の香辛料、薬味または総菜として広く使用されている食品素材である。ニンニクをスライスしたり、切り刻んだりすると、揮発性の独特な香りと味がするが、これは主としてニンニクに含まれているアリシン(Allicin)や硫化アリル(Ally)等の有機硫化物に起因する。このようなニンニクの香りと味は、飲食物の風味を増強し、食欲を増進させる効果を発揮することが知られている。
【0003】
従来、甘草とニンニクを特定の割合で併用した天然調味料が知られている(特許文献1)。特許文献1には、前記天然調味料によると、肉類(魚を含む)の固有の味を増進させ、異臭を除去し、肉質を改善させ、肉類固有の匂いと香りを蘇らせ食生活を楽しくすることができることが記載されている(発明の効果の欄参照)。この天然調味料の肉類の異臭除去は、甘草に含まれる配糖体(グリシルレチン酸)に基づいて脂肪質分解能力を有することに基づくことが記載されている。しかし、甘草にニンニクの風味(香り)を増強する作用があることは記載も示唆もされていない。また、甘草以外の高甘味度甘味料に、ニンニクの風味を増強する作用があることも知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ニンニク成分含有飲食物について、ニンニク風味を増強する技術を提供することを目的とする。より詳細には、第1に、本発明はニンニク風味増強剤を提供することを目的とする。第2に、ニンニク風味が増強されてなるニンニク成分含有飲食物、及びその製造方法を提供することを目的とする。第3に、ニンニク成分含有飲食物についてニンニク風味を増強する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねていたところ、スクラロース、ソーマチン、ネオテーム、ラカンカ抽出物、アセスルファムカリウム、ステビア抽出物、及びアスパルテームといった従来甘味料として使用されている成分に、ニンニク成分の風味を増強する作用があることを見出し、またその作用は甘味を呈する量だけでなく、甘味を呈さない量でも発揮することを確認した。これらの知見から、これらの成分をニンニク風味増強剤として、ニンニク成分に共存させることで、ニンニク風味が増強された飲食物が得られることを確認して本発明を完成した。本発明はかかる知見に基づいて、さらに研究を重ねて完成したものであり、下記の実施形態を有するものである。
【0007】
(I)ニンニク風味増強剤
スクラロース、ソーマチン、ネオテーム、ラカンカ抽出物、アセスルファムカリウム、ステビア抽出物、及びアスパルテームよりなる群から選択される少なくとも1種を含有する、ニンニク風味増強剤。
【0008】
(II)ニンニク成分含有飲食物、及びその製造方法
(1)(I)に記載するニンニク風味増強剤を、ニンニク風味を増強する有効量含有する、ニンニク成分含有飲食物。
(2)ニンニク成分含有飲食物を、スクラロース、ソーマチン、ネオテーム、ラカンカ抽出物、アセスルファムカリウム、ステビア抽出物、及びアスパルテームよりなる群から選択される少なくとも1種と共存させる工程を有する、ニンニク風味が増強されたニンニク成分含有飲食物の製造方法。
【0009】
(III)ニンニク風味増強方法
ニンニク成分またはこれを含有する飲食物を、スクラロース、ソーマチン、ネオテーム、ラカンカ抽出物、アセスルファムカリウム、ステビア抽出物、及びアスパルテームよりなる群から選択される少なくとも1種と共存させることを特徴とする、ニンニク風味を増強する方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明のニンニク風味増強剤は、ニンニク成分含有飲食物においてニンニク成分と共存させることで、ニンニク風味を増強することができる。つまり、本発明のニンニク風味増強剤およびそれを用いたニンニク風味増強方法によれば、ニンニク成分含有飲食物に対して、そのニンニクの風味を増強する効果を発揮し、ニンニク風味が増強されてなる飲食物を調製し提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書中、語句「含む」又は語句「含有する」は、語句「からなる」、及び語句「のみからなる」を包含することを意図して用いられる。本明細書中に記載の操作、及び工程は、特に記載のない限り、室温で実施され得る。本明細書中、用語「室温」は、技術常識に従って理解され、例えば15~25℃の範囲内の温度を意味することができる。
【0012】
本発明において、ニンニク風味を増強するとは、ニンニク成分に起因して感じられるニンニク風味の強さを増大(エンハンス)することを意味する。ここで対象とする「風味」は主としてニンニクの臭いである。臭いには、鼻で直接感じる臭い(オルソネーザルアロマ)と、口に含んだとき、または飲み込んだときに、喉の奥から鼻腔内で感じる臭い(レトロネーザルアロマ)の2種類がある。本発明で対象とする臭いは、後者の、口に含んだとき、または飲み込んだときに、喉の奥から鼻腔内で感じる臭いである。
【0013】
ニンニク風味のもとになるニンニク成分にはアリシンが含まれる。ニンニクに本来含まれている成分は、無臭のアリインという成分であるが、ニンニクの組織を破壊するとアリイナーゼという酵素がアリインに作用し、揮発性成分であるアリシンとα-アミノアクリル酸を生成することが知られている。また、アリシンは不安定であり、熱や化学反応によりジアリルジスルフィド等のスルフィド化合物(臭い成分)や、無機硫黄化合物、メルカプタン、トリスルフィド、チオスルホネート、アルデヒド、アルコールに変化することが知られている。
【0014】
(I)ニンニク風味増強剤
本発明のニンニク風味増強剤(以下、「本増強剤」とも称する)は、スクラロース、ソーマチン、ネオテーム、ラカンカ抽出物、アセスルファムカリウム、ステビア抽出物、及びアスパルテームよりなる群から選択される少なくとも1種を含有することを特徴とする。
【0015】
(スクラロース)
スクラロース(化学名: 1,6-Dichloro-1,6-dideoxy-β-D-fructofuranosyl-4-chloro-4-deoxy-α-D-galactopyranoside)は、ショ糖(砂糖)の約600倍の甘味度を有していることが知られている甘味成分である。水に溶けやすく、安定性に優れているため、甘味料としてだけでなく、従来広く様々な用途で食品に使用されている成分である。ちなみにスクラロースの甘味の閾値は約5ppmである。これは商業的に入手することができ、例えば三栄源エフ・エフ・アイ株式会社から市販されている。
【0016】
(ソーマチン)
ソーマチンは、西アフリカ原産のクズウコン科の植物Thaumatococcus
daniellii(Benn.)Benth. & Hook. f.の種子に多く含まれる分子量約21000の蛋白質(植物性蛋白)であり、ショ糖(砂糖)の3000~8000倍もの甘味度を有するため天然甘味料として使用されている。ソーマチンの甘味の閾値は約1ppmである。これは、簡便には、実施例に記載の通り、商業的に入手することができる。
【0017】
(ネオテーム)
ネオテームは、N-[N-(3,3-ジメチルブチル)-L-α-アスパルチル]-L-フェニルアラニン 1-メチルエステルという化学名を有し、ショ糖の約10,000倍の甘味度を有する。ネオテームの甘味の閾値は約1ppmである。これは、簡便には、実施例に記載の通り、商業的に入手することができる。
【0018】
(ラカンカ抽出物)
羅漢果(学名:Siraitia grosvenoriigrosvenorii(Swingle)C.Jeffrey ex A.M.Lu & Zhi Y.Zhang (Momordica grosvenorii Swingle))は、中国を原産地とするウリ科ラカンカ属のつる性の多年生植物である。本発明が対象とするラカンカ抽出物は、産地の別を問わず、羅漢果の果実、好ましくは羅漢果の生果実から、水又はエタノール等の有機溶媒を用いて抽出されたモグロシドVを含有する抽出物である。モグロシドVは、ラカンカ抽出物に含まれているトリテルペン系配糖体であり、ショ糖(砂糖)の約300~500倍の甘味度を有していることが知られている甘味成分でもある。
【0019】
本増強剤で用いられるラカンカ抽出物のモグロシドV含有量は、本発明の効果を奏することを限度として、特に制限されない。言い換えれば、本増強剤において、モグロシドVは、ラカンカ抽出物から精製された状態で使用することもできるし、また、ラカンカ抽出物に含まれるモグロシドV以外のトリテルペン系配糖体(モグロール、モグロシドIE1、モグロシドIA1、モグロシドIIE、モグロシドIII、モグロシドIV、モグロシドIVE、シメノシドI、11-オキソモグロシドV、5α,6α-エポキシモグロシド)と混合した状態で使用することもできる。本発明において「ラカンカ抽出物」の用語には、これらの両方の意味が包含される。ラカンカ抽出物中のモグロシドVの含有量は、全体の10質量%以上であることが好ましい。より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、よりさらに好ましくは40質量%以上であり、とりわけ好ましくは50質量%以上である。
【0020】
こうしたラカンカ抽出物は、羅漢果の果実から抽出し、さらに必要に応じて精製処理することで調製することも可能であるが、簡便には商業的に入手することができる。例えば、市販されているラカンカ抽出物として「サンナチュレ(登録商標) M30」(30質量%モグロシドV含有物)、「サンナチュレ(登録商標) M50」(50質量%モグロシドV含有品)[以上、いずれも三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製]を例示することができる。
【0021】
(アセスルファムカリウム)
アセスルファムカリウムは、6-メチル-1,2,3-オキサチアジン-4(3H)-オン-2,2-ジオキシド(6-methyl-1,2,3-oxathiazine-4(3H)-one 2,2-dioxide) のカリウム塩であり、ショ糖(砂糖)の200倍もの甘味度を有する高甘味度甘味料である。ちなみにアセスルファムカリウムの甘味の閾値は約15ppmである。これは、簡便には、実施例に記載の通り、商業的に入手することができる。
【0022】
(ステビア抽出物)
ステビアレバウディアナ・ベルトニ(学名:Stevia rebaudiana(Bertoni)Bertoni)(本発明では「ステビア」と略称する)は、南米パラグアイを原産地とするキク科ステビア属に属する植物である。本発明が対象とするステビア抽出物は、製造の別を問わず、例えばステビアの葉又は茎などから、水またはエタノール等の有機溶媒を用いて抽出された物が含まれる。また、本発明が対象とするステビア抽出物には、任意のステビオール配糖体を多くまたは精製された状態で含むように、前記抽出処理後、濃縮や分画などの精製処理を施したものであってもよい。つまり、本発明が対象とするステビア抽出物は、ステビオール配糖体を粗精製された状態で含むものであってもよいし、また精製された状態で含むものであってもよい。当該ステビオール配糖体は、ステビオール骨格を有する配糖体であればよく、制限されないものの、例えば、ステビオサイド、レバウディオサイドA、レバウディオサイドB、レバウディオサイドC、レバウディオサイドD、レバウディオサイドE、レバウディオサイドF、レバウディオサイドG、レバウディオサイドH、レバウディオサイドI、レバウディオサイドJ、レバウディオサイドK、レバウディオサイドL、レバウディオサイドN、レバウディオサイドO、ズルコサイドA、ズルコサイドB、レブソサイド、ステビオ―ルモノサイド、ステビオールビオサイド等が例示される。なお、レバウディオサイドAは、ショ糖(砂糖)の300~450倍の甘味度を有していることが知られている甘味成分でもある。また、本発明が対象とするステビア抽出物は、ステビオール骨格を有する配糖体またはそれを含む限り、前記天然物から抽出または精製されたものに限らず、発酵技術を用いて調製されるステビオール配糖体またはそれを含むものであってもよい。
【0023】
本発明において、前記の各種ステビオール配糖体は、2種以上のステビオール配糖体が混合した状態で使用することもできる。ステビア抽出物中のステビオール配糖体の含有量は、本発明の効果を奏することを限度として制限されないが、全体の90質量%以上であることが好ましい。より好ましくは95質量%以上である。なお、本発明が対象とするステビア抽出物には、α-グルコシルトランスフェラーゼ等を用いて、上記ステビア抽出物にグルコースやフルクトース等の糖を転移した酵素処理ステビア抽出物も含まれる。当該酵素処理ステビア抽出物には、α-グルコシル化ステビオール配糖体を主成分としたステビア抽出物も含まれる。
【0024】
こうしたステビア抽出物は、ステビアの葉や茎等を原料として抽出し、さらに必要に応じて精製処理することで調製することも可能であるが、簡便には、実施例に記載の通り、商業的に入手することができる。
【0025】
(アスパルテーム)
アスパルテーム(化学名:N-(L-α-Aspartyl)-L-phenylalanine, 1-methyl ester)は、ショ糖(砂糖)の100~200倍の甘味度を有するアミノ酸に由来する甘味成分であり、フェニルアラニンのメチルエステルと、アスパラギン酸とがペプチド結合した構造を持つジペプチドのメチルエステルである。ちなみにアスパルテームの甘味の閾値は約25ppmである。これは商業的に入手することができ、例えば味の素株式会社から市販されている。
【0026】
(本増強剤)
本増強剤は、前述するスクラロース、ソーマチン、ネオテーム、ラカンカ抽出物、アセスルファムカリウム、ステビア抽出物、及びアスパルテームよりなる群から選択される少なくとも1種を含有するものであればよく、1種単独で含有するものであっても、また2種以上を組み合わせて含有するものであってもよい。なお、本増強剤に含まれる各成分の割合は、ニンニク成分と共存させることで、ニンニク風味を増強するという目的に適うものであればよく、その限りにおいて、100質量%を限度として適宜設定することができる。
【0027】
2種以上を組み合わせる態様として、制限されないものの、好ましくはステビア抽出物とラカンカ抽出物とが少なくとも含まれる組み合わせを例示することができる。この場合、制限されないものの、ステビア抽出物として、好ましくはレバウディオサイドAの含有量が90質量%以上、より好ましくは95質量%以上のものを用い、またラカンカ抽出物として、好ましくはモグロシドVの含有量が30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、特に好ましくは50質量%以上のものを用いることが望ましい。ステビア抽出物とラカンカ抽出物との配合比は、本発明の効果を奏することを限度として特に制限されないものの、一例を挙げると、本増強剤に含まれるレバウディオサイドAとモグロシドVとの配合比が質量比(以下、同じ)で50:50~99:1となるような組み合わせを挙げることができる。
【0028】
本増強剤は、ニンニク成分を含有する飲食物(ニンニク成分含有飲食物)のニンニク風味を増強するために用いられる。具体的には、ニンニク成分含有飲食物を調理する際に配合して一緒に調理するか、または調理されたニンニク成分含有飲食物を摂取する際に、当該ニンニク成分含有飲食物に添加するなどの態様で用いられ、こうすることでニンニク成分含有飲食物を摂取したときに感じるニンニク風味を増強することができる。なお、前記調理には、好ましくは加熱調理が含まれる。
このような使用態様で用いることができれば、本増強剤の形態は特に問わないが、一つの態様として、粉末状、顆粒状、タブレット状、及びカプセル剤状などの固体の製剤形態、ならびに液状(水溶液、分散液状、懸濁液状を含む)、乳液状、シロップ状、ペースト状、及びジェル状などの半固体又は液体の製剤形態を挙げることができる。
【0029】
本増強剤は、本発明の効果を妨げないことを限度として、スクラロース、ソーマチン、ネオテーム、ラカンカ抽出物、アセスルファムカリウム、ステビア抽出物、及びアスパルテームよりなる群から選択される少なくとも1種(以下「本有効成分」と総称する場合がある)を前述する製剤形態に調製する際に、その形態に応じて、飲食物に配合可能な可食性の担体(基剤)、可食成分、及び添加剤を適宜配合することもできる。
【0030】
本増強剤を製剤形態に調製する場合、担体や添加剤を用いることで、前述する固体、半固体または液体の剤型など、任意の剤型にすることができる。制限されないものの、一例として、本有効成分を溶解又は分散した水溶液にデキストリン等の賦形剤を配合し、噴霧乾燥又は凍結乾燥等の定法に従って粉末化することで粉末製剤として調製することができるし、さらに造粒されることで顆粒製剤として調製することもできる。また、他の一例として、または前記の固形製剤を少量の水やアルコールで溶解することで、シロップ形状を有する製剤に調製することができる。また、本増強剤は、一剤の形態のほか、二剤の形態(例えば、ラカンカ抽出物を含有する製剤とステビア抽出物を含有する製剤との組み合わせ物など)を有するものであってもよい。
【0031】
ニンニク成分含有飲食物に対する本増強剤の使用量としては、ニンニク風味を増強するという本発明の効果を奏する量であればよく、本増強剤の有効成分(本有効成分)に起因する甘味を考慮して、目的に応じて選択設定することができる。例えば、スクラロースの甘味度はショ糖(スクロース)の600倍、ソーマチンの甘味度はショ糖の3000~8000倍、ネオテームの甘味度はショ糖の10000倍、モグロシドVの甘味度はショ糖の300~500倍、アセスルファムKの甘味度はショ糖の200倍、レバウディオサイドAの甘味度はショ糖の300~450倍、アスパルテームの甘味度はショ糖の100~200倍である。このため、例えば、本増強剤を、甘味を有するように調製する場合は、本有効成分を甘味を発揮する量(甘味の閾値以上の量)で配合することが好ましい。具体的には、例えばスクラロースの配合量としては0.0005質量%以上、ソーマチンの配合量としては0.0001質量%以上、ネオテームの配合量としては0.0001質量%以上、モグロシドVの配合量としては0.001質量%以上、アセスルファムKの配合量としては0.0015質量%以上、レバウディオサイドAの配合としては0.001質量%以上、アスパルテームの配合量としては0.0025質量%以上となるような範囲で適宜調整することができる。一方、本増強剤を、甘味を有しないように調製する場合は、本有効成分を甘味を呈さない量(甘味の閾値未満の量)で配合する。具体的には、スクラロースの配合量としては0.0005質量%未満、ソーマチンの配合量としては0.0001質量%未満、ネオテームの配合量としては0.0001質量%未満、モグロシドVの配合量としては0.001質量%未満、アセスルファムKの配合量としては0.0015質量%未満、レバウディオサイドAの配合としては0.001質量%未満、アスパルテームの配合量としては0.0025質量%未満となるような範囲で適宜調整することができる。なお、実際の甘味の閾値(認知閾値)は、適用するニンニク成分含有飲食物毎に設定することが好ましく、この場合、閾値の設定は極限法に従って行うことが好ましい。
【0032】
本発明において、ニンニク風味を増強するとは、前述するように、ニンニク成分に起因して感じる風味をエンハンスすることを意味する。つまり、ニンニク風味増強とは、ニンニク成分含有飲食物に本増強剤が含まれていることで、そのニンニク風味が、本増強剤を配合しない場合に感じるニンニク風味と比較して増大したと感じさせる作用効果である。こうした作用効果は、通常、訓練された専門パネルによる官能試験によって評価判定することができる。具体的には、対象とするニンニク成分含有飲食物に増強剤(候補物を含む)を添加した場合に、添加していないニンニク成分含有飲食物の臭いと比較して、その臭いが増強したと感じられる場合には、当該増強剤(候補物)は、本増強剤に該当すると判断することができる。
【0033】
(II)ニンニク成分含有飲食物、及びその製造方法
本発明のニンニク成分含有飲食物は、ニンニク成分と前述する本増強剤を含有する飲食物である。ニンニク成分とは、ニンニク特有の風味をもたらす成分であり、これらにはアリシンやそれから派生して生じるスルフィド類が含まれる。またアリシンの酵素反応前駆体であるアリインを含むものであってもよい。これらの成分を含有するものであれば、その状態は問わず、生ニンニクでも、またそれを乾燥、加熱若しくは発酵させたものであってもよい。またその形態も問わず、前記状態のニンニクをスライス、磨り潰し、細切りしたものであってもよいし、さらにその搾り汁やエキスであってもよい。また、ニンニク成分含有飲食物中のニンニク成分の割合は、当該飲食物がニンニク成分に起因する臭いを有することを限度として特に制限されない。ちなみに、限定するものではないが、ニンニクの主な香気成分であるジアリルスルフィド、ジアリルジスルフィドの臭気閾値は0.00022ppmであることが知られている。
【0034】
ニンニク成分含有飲食物に対する本増強剤の配合割合は、本増強剤を配合することによって調製されるニンニク成分含有飲食物が、本発明の効果を奏するものであればよく、その限りにおいて特に制限されない。具体的には、ニンニク成分含有飲食物に配合する本増強剤の種類などに応じて適宜設定調整することができ、制限されないものの、ニンニク成分含有飲食物に適用する本増強剤の割合としては、下記に記載する割合を例示することができる。
【0035】
本増強剤としてスクラロースを用いる場合、飲食物中のスクラロースの含有量(摂食時の飲食物の湿重量物換算)としては0.05ppm以上の範囲を例示することができる。好ましくは0.5ppm以上、より好ましくは1ppm以上を例示することができる。なお、上限は特に制限されないが、スクラロースを、甘味を呈さない量で使用する場合は、甘味の閾値未満になるように調整することが好ましい。実際の甘味の閾値(認知閾値)は、適用する飲食物毎に個別に設定することが好ましく、閾値の設定は極限法に従って行うことができる。また、一般にスクラロースは濃度が5ppmを超えると甘味を呈するようになるため、これを基準とすることもできる。スクラロースを甘味を呈する量で使用する場合は、前記量に拘泥されることなく上限値を設定することができる。この場合でも、例えば飲食物中のスクラロースの濃度が500ppm以下になるように調整することができる。
【0036】
本増強剤としてソーマチンを用いる場合、飲食物中のソーマチンの含有量(摂食時の飲食物の湿重量物換算)としては0.005ppm以上の範囲を例示することができる。好ましくは0.05ppm以上、より好ましくは0.1ppm以上を例示することができる。なお、上限は特に制限されないが、ソーマチンを、甘味を呈さない量で使用する場合は、前記と同様に甘味の閾値(認知閾値)未満で調整することが好ましい。また、一般にソーマチンは濃度が約1ppmを超えると甘味を呈するようになるため、これを基準とすることもできる。ソーマチンを甘味を呈する量で使用する場合は、前記量に拘泥されることなく上限値を設定することができる。この場合でも、例えば飲食物中のソーマチンの濃度が100ppm以下になるように調整することができる。
【0037】
本増強剤としてネオテームを用いる場合、飲食物中のネオテームの含有量(摂食時の飲食物の湿重量物換算)としては0.005ppm以上の範囲を例示することができる。好ましくは0.05ppm以上、より好ましくは0.1ppm以上を例示することができる。なお、上限は特に制限されないが、ネオテームを、甘味を呈さない量で使用する場合は、前記と同様に甘味の閾値(認知閾値)未満で調整することが好ましい。また、一般にネオテームは濃度が1ppmを超えると甘味を呈するようになるため、これを基準とすることもできる。ネオテームを甘味を呈する量で使用する場合は、前記量に拘泥されることなく上限値を設定することができる。この場合でも、例えば飲食物中のネオテームの濃度が100ppm以下になるように調整することができる。
【0038】
本増強剤としてラカンカ抽出物を用いる場合、飲食物中のラカンカ抽出物の含有量(摂食時の飲食物の湿重量物換算)は、モグロシドVの濃度に換算して、0.1ppm以上の範囲を例示することができる。好ましくは1ppm%以上、より好ましくは2ppm%以上を例示することができる。上限は特に制限されないが、ラカンカ抽出物を、甘味を呈さない量で使用する場合は、前記と同様に甘味の閾値(認知閾値)未満で調整することが好ましい。また、一般にモグロシドVは10ppmを超えると甘味を呈するようになるため、これを基準とすることもできる。ラカンカ抽出物を甘味を呈する量で使用する場合は、前記量に拘泥されることなく上限値を設定することができる。この場合でも、例えば飲食物中のモグロシドVの濃度が100ppm以下になるように調整することができる。
【0039】
本増強剤としてアセスルファムKを用いる場合、飲食物中のアセスルファムKの含有量(摂食時の飲食物の湿重量物換算)としては0.15ppm以上の範囲を例示することができる。好ましくは1.5ppm以上、より好ましくは3ppm以上を例示することができる。なお、上限は特に制限されないが、アセスルファムKを、甘味を呈さない量で使用する場合は、前記と同様に甘味の閾値(認知閾値)未満で調整することが好ましい。また、一般にアセスルファムKは濃度が15ppmを超えると甘味を呈するようになるため、これを基準とすることもできる。アセスルファムKを甘味を呈する量で使用する場合は、前記量に拘泥されることなく上限値を設定することができる。この場合でも、例えば飲食物中のアセスルファムKの濃度が1500ppm以下になるように調整することができる。
【0040】
本増強剤としてステビア抽出物を用いる場合、飲食物中のステビア抽出物の含有量(摂食時の飲食物の湿重量物換算)は、レバウディオサイドAの濃度に換算して0.1ppm以上の範囲を例示することができる。好ましくは1ppm以上、より好ましくは2ppm以上を例示することができる。上限は特に制限されないが、ステビア抽出物を、甘味を呈さない量で使用する場合は、前記と同様に甘味の閾値(認知閾値)未満になるように調整することが好ましい。また、一般にレバウディオサイドAは10ppmを超えると甘味を呈するようになるため、これを基準とすることもできる。ステビア抽出物を甘味を呈する量で使用する場合は、前記量に拘泥されることなく上限値を設定することができる。この場合でも、例えば飲食物中のレバウディオサイドAの濃度が1000ppm以下になるように調整することができる。
【0041】
本増強剤としてアスパルテームを用いる場合、飲食物中のアスパルテームの含有量(摂食時の飲食物の湿重量物換算)としては0.25ppm以上の範囲を例示することができる。好ましくは2.5ppm以上、より好ましくは5ppm以上を例示することができる。なお、上限は特に制限されないが、アスパルテームを、甘味を呈さない量で使用する場合は、前記と同様に甘味の閾値(認知閾値)未満で調整することが好ましい。また、一般にアスパルテームは濃度が25ppmを超えると甘味を呈するようになるため、これを基準とすることもできる。アスパルテームを甘味を呈する量で使用する場合は、前記量に拘泥されることなく上限値を設定することができる。この場合でも、例えば飲食物中のアスパルテームの濃度が2500ppm以下になるように調整することができる。
【0042】
なお、スクラロース、ソーマチン、ネオテーム、ラカンカ抽出物、アセスルファムK、ステビア抽出物、又は/及びアスパルテームは、ニンニク成分と共存していればよく、ニンニク成分含有飲食物の製造過程の任意の段階で添加することができるし、またニンニク成分含有飲食物を摂取する前に添加することができる。ニンニク成分含有飲食物の好適な製造方法の詳細は後述する。
【0043】
斯くして本発明のニンニク成分含有飲食物は、スクラロース、ソーマチン、ネオテーム、ラカンカ抽出物、アセスルファムK、ステビア抽出物、及びアスパルテームよりなる群から選択される少なくとも1種を含む本増強剤を含有していることで、これらをいずれも含有しないニンニク成分含有飲食物と比較して、ニンニク成分に起因する臭い(ニンニク風味)が増強されてなることを特徴とする。
【0044】
ニンニク成分含有飲食物についてニンニク風味が増強されているか否かは、本増強剤が配合されたニンニク成分含有飲食物(被験食品)のニンニク風味を、本増強剤が配合されていない以外は前記被験食品と同じ組成からなるニンニク成分含有飲食物(比較食品)のニンニク風味と比較することで評価することができる。この評価において、比較食品と比較して被験食品のほうがニンニク成分に起因する臭い(ニンニク風味)が増大している場合に、被験食品について本増強剤の配合によりニンニク風味が増強されていると判断することができる。具体的な評価方法は、制限されないものの、後述する実施例の記載に従って行うことができる。
【0045】
このように、ニンニク含有飲食物の製造工程で本増強剤を添加配合するか、またはニンニク含有飲食物を摂取するまえに本増強剤を添加配合するという簡便な方法で、ニンニク成分に起因する臭い(ニンニク風味)を増強することができ、その結果、ニンニク風味が増強したニンニク成分含有飲食物を調製し提供することができる。
【0046】
前述する本発明のニンニク成分含有飲食物は、最終のニンニク成分含有飲食物に本増強剤が含まれていればよく、その限りにおいて、本増強剤の配合時期や配合方法など、本発明の飲食物の製造方法は特に制限されない。つまり、本発明のニンニク成分含有飲食物の製造方法は、ニンニク成分を、スクラロース、ソーマチン、ネオテーム、ラカンカ抽出物、アセスルファムカリウム、ステビア抽出物、及びアスパルテームよりなる群から選択される少なくとも1種と共存させる工程を含むものであればよい。
【0047】
(III)ニンニク風味増強方法
本発明のニンニク風味増強方法は、ニンニク成分またはそれを含む飲食物を、スクラロース、ソーマチン、ネオテーム、ラカンカ抽出物、アセスルファムカリウム、ステビア抽出物、及びアスパルテームよりなる群から選択される少なくとも1種と共存させることで実施することができる。スクラロース、ソーマチン、ネオテーム、ラカンカ抽出物、アセスルファムカリウム、ステビア抽出物、及びアスパルテームは、ニンニク成分含有飲食物に対するそれらの配合割合を含めて、前記(I)~(II)で説明した通りであり、前記の記載はここに援用することができる。
【0048】
ニンニク成分またはニンニク成分含有飲食物について、それにスクラロース、ソーマチン、ネオテーム、ラカンカ抽出物、アセスルファムカリウム、ステビア抽出物、及びアスパルテームよりなる群から選択される少なくとも1種(本有効成分)と共存させることでニンニク風味が増強されたか否かは、本有効成分が配合されたニンニク成分含有飲食物(被験食品)のニンニク風味を、本有効成分が配合されていない以外は前記被験食品と同じニンニク成分含有飲食物(比較食品)のニンニク風味と比較することで評価することができる。この評価において、比較食品と比較して被験食品のほうがニンニク風味が増大している場合に、被験食品について本有効成分の配合によりニンニク風味が増強されていると判断することができる。具体的な評価方法は、制限されないものの、後述する実施例の記載に従って行うことができる。
【0049】
このように、本有効成分を配合するという簡便な方法によりニンニク成分に起因する風味(ニンニク風味)を増強することができ、その結果、ニンニク風味が増強したニンニク成分含有飲食物を調製し提供することができる。
【実施例0050】
本発明の内容を以下の実験例や実施例を用いて具体的に説明する。しかし、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。下記において、特に言及する場合を除いて、実験は大気圧及び室温条件下で行っている。また各実験例で採用したパネルは飲食品の風味やフレーバーの官能評価に従事し訓練して社内試験に合格した官能評価適格者であり、対象とする経口組成物の官能評価についてよく訓練したうえで、本実験を実施した。また特に言及する場合を除いて、「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を意味する。
【0051】
以下の実験例に使用した原料は下記の通りである。なお、後述する表2には、原料(製品)の配合量を記載する。併せて、括弧書きで原料(製品)に含まれている甘味成分の換算値を併記する。
(1)スクラロース
スクラロース100%純品:三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製。ショ糖の約600倍の甘味度を有する甘味料製品。
(2)ソーマチン
ネオサンマルク(登録商標)AG(ソーマチン0.15%含有)(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)。ショ糖の約4.5倍の甘味度を有する高甘味度甘味料。
(3)ネオテーム
ミラティー(登録商標)200(ネオテーム2%含有)(DSP五協フード&ケミカル株式会社製)ショ糖の約200倍の甘味度を有する高甘味度甘味料。
(4)ラカンカ抽出物
「サンナチュレ(登録商標)M50」三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製。モグロシドVを50%の割合で含有する、ショ糖の約300倍の甘味度を有する甘味料製品。
(5)アセスルファムカリウム
サネット(三菱商事ライフサイエンス株式会社製)。ショ糖の約200倍の甘味度を有する高甘味度甘味料。
(6)ステビア抽出物
レバウディオJ-100(乾燥粉末製品、守田化学工業(株)製)。レバウディオサイドA 95%以上含有品。ショ糖の約400倍の甘味度を有する高甘味度甘味料。
(7)アスパルテーム
パルスイート(登録商標)ダイエット(味の素株式会社製)。ショ糖の約200倍の甘味度を有する高甘味度甘味料。
(8)ガーリック
業務用冷凍ガーリックペースト(淡路農産食品(株)製)。ガーリックを磨り潰しペースト状にして冷凍したもの。
【0052】
実験例1 ニンニク成分含有組成物のニンニク風味の評価
表1に記載する組成からなる被験試料(評価試料A~H,コントロール試料1~3)を調製し、品温を15℃に調整した後、4名のパネルに、コントロール試料と各評価試料を摂取してもらい、評価試料のニンニク風味の強さを、コントロール試料のニンニク風味の強さとの対比で評価してもらった。なお、ニンニク風味の評価は、被験試料を、各パネルに食べてもらい、口腔から鼻腔にかけて感じる臭い(レトロネーザル)を評価してもらうことで実施した。
【0053】
【0054】
評価試料A~Hのニンニク風味の評価は、下記の基準に従って、各パネルにスコアをつけてもらった。ちなみに、各パネルには、事前にコントロール試料1~3の各々を摂取して、それらのニンニク風味の程度を把握してもらい、パネル間同士でその風味(臭い)並びにその程度を確認しあった後、下記の基準をすり合わせて、各自の内的基準が互いに等しくなるように調整した(以下の実験例2も同じ。)。
【0055】
[評価基準]
3点:コントロール試料3よりも強いニンニク風味
2点:コントロール試料3と同等のニンニク風味
1点:コントロール試料2よりも強いがコントロール試料3より少ない
0点:コントロール試料2と同等のニンニク風味
-1点:コントロール試料1よりも強いがコントロール試料2より少ない
-2点:コントロール試料1と同等のニンニク風味
-3点:コントロール試料1よりもニンニク風味が少ない
【0056】
評価試料A~Hの評価結果を表2に合わせて示す。
【0057】
【0058】
表2に示すように、効果の程度には差があるものの、すべての増強剤に、ニンニク風味を増強する効果が認められた。特に、ニンニク成分含有飲食物の味にほとんど影響を与えない量の配合により、各増強剤は、ニンニク成分の特有の風味を増強する効果が認められた。
【0059】
実験例2 スクラロースのニンニク風味に対する増強作用
本増強剤としてスクラロースを用いて、実験例1と同様に、表3に記載する添加量になるように、1質量%のガーリック含有水溶液にスクラロースを添加して被験試料を調製した。これを、実験例1と同様に、品温15℃の状態で、4名のパネルに摂取してもらい、コントロール試料1~3との比較で、各被験試料のニンニク風味を評価してもらった。
結果を表3に併せて示す。
【0060】
【0061】
表3に記載するように、スクラロースは甘味の閾値未満の量でもニンニク風味を強く増強する効果を発揮することが確認された。寧ろ、甘味が強くなるにつれて、増強効果も弱くなった。このことから、本発明のニンニク風味増強作用は、甘味による作用ではないと考えられる。スクラロースの添加量が0.0003~0.001質量%の範囲(湿重量換算)で、ニンニク成分含有飲食物の味を損なうことなく、ニンニク風味を強く増強する効果が得られることが確認された。