IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝メモリ株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022145049
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】半導体記憶装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 27/11507 20170101AFI20220926BHJP
   H01L 27/11582 20170101ALI20220926BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20220926BHJP
   G11C 11/22 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
H01L27/11507
H01L27/11582
H01L29/78 371
G11C11/22 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】26
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021046295
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【弁理士】
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【弁理士】
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 都文
(72)【発明者】
【氏名】上牟田 雄一
【テーマコード(参考)】
5F083
5F101
【Fターム(参考)】
5F083EP22
5F083EP33
5F083EP34
5F083EP76
5F083FR06
5F083GA10
5F083JA02
5F083JA03
5F083JA14
5F083JA39
5F083KA01
5F083KA05
5F083KA11
5F083LA12
5F083LA16
5F083LA20
5F083PR03
5F083PR05
5F083PR21
5F101BA45
5F101BB02
5F101BD16
5F101BD30
5F101BD34
5F101BE07
5F101BH02
5F101BH14
5F101BH15
(57)【要約】
【課題】安定動作する半導体記憶装置を提供する。
【解決手段】実施形態の半導体記憶装置は、第1の方向に延びる半導体層と、第1のゲート電極層と、第1の方向に第1のゲート電極層と離間して設けられた第2のゲート電極層と、ハフニウム(Hf)又はジルコニウム(Zr)の少なくともいずれか一方の金属元素と酸素(O)を含むゲート絶縁層であって、ゲート絶縁層は、第1のゲート電極層と半導体層との間の第1の領域と、第1のゲート電極層と第2のゲート電極層との間の第2の領域と、第2のゲート電極層と半導体層との間の第3の領域を含み、第1の領域は直方晶系又は三方晶系の結晶を主たる構成物質とし、第2の領域と半導体層との間の距離は、第1の領域と半導体層との間の距離よりも大きい、ゲート絶縁層と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に延びる半導体層と、
第1のゲート電極層と、
前記第1の方向に前記第1のゲート電極層と離間して設けられた第2のゲート電極層と、
ハフニウム(Hf)又はジルコニウム(Zr)の少なくともいずれか一方の金属元素と酸素(O)を含むゲート絶縁層であって、前記ゲート絶縁層は、前記第1のゲート電極層と前記半導体層との間の第1の領域と、前記第1のゲート電極層と前記第2のゲート電極層との間の第2の領域と、前記第2のゲート電極層と前記半導体層との間の第3の領域を含み、前記第1の領域は直方晶系又は三方晶系の結晶を主たる構成物質とし、前記第2の領域と前記半導体層との間の距離は、前記第1の領域と前記半導体層との間の距離よりも大きい、ゲート絶縁層と、
を備える半導体記憶装置。
【請求項2】
前記第2の領域は、直方晶系又は三方晶系の結晶を主たる構成物質とする請求項1記載の半導体記憶装置。
【請求項3】
前記ゲート絶縁層と前記半導体層との間に設けられ、前記ゲート絶縁層の材料と異なる材料の第1の絶縁層を、更に備える請求項1又は請求項2記載の半導体記憶装置。
【請求項4】
前記第1の領域と前記第1の絶縁層との間に設けられた導電層を、更に備える請求項3記載の半導体記憶装置。
【請求項5】
前記第2の領域と前記第1の絶縁層との間に設けられ、前記ゲート絶縁層の材料と異なる材料の第2の絶縁層を、更に備える請求項3又は請求項4記載の半導体記憶装置。
【請求項6】
前記第2の領域の厚さは、前記第1の領域の厚さよりも薄い請求項1ないし請求項5いずれか一項記載の半導体記憶装置。
【請求項7】
前記第2の領域は、直方晶系及び三方晶系の結晶以外を主たる構成物質とする請求項1ないし請求項6いずれか一項記載の半導体記憶装置。
【請求項8】
前記第1のゲート電極層は、第1の部分と、前記第1の部分よりも前記半導体層に近い第2の部分を含み、前記第2の部分の前記第1の方向の長さは、前記第1の部分の前記第1の方向の長さよりも短い請求項1ないし請求項7いずれか一項記載の半導体記憶装置。
【請求項9】
前記第3の領域は、直方晶系又は三方晶系の結晶を主たる構成物質とする請求項1ないし請求項8いずれか一項記載の半導体記憶装置。
【請求項10】
前記第1の領域は強誘電体である請求項1ないし請求項9いずれか一項記載の半導体記憶装置。
【請求項11】
第1の方向に延びる半導体層と、
第1のゲート電極層と、
前記第1の方向に前記第1のゲート電極層と離間して設けられた第2のゲート電極層と、
ハフニウム(Hf)又はジルコニウム(Zr)の少なくともいずれか一方の金属元素と酸素(O)を含むゲート絶縁層であって、前記ゲート絶縁層は、前記第1のゲート電極層と前記半導体層との間の第1の領域と、前記第1のゲート電極層と前記第2のゲート電極層との間の第2の領域と、前記第2のゲート電極層と前記半導体層との間の第3の領域を含み、前記第1の領域は強誘電体であり、前記第2の領域と前記半導体層との間の距離は、前記第1の領域と前記半導体層との間の距離よりも大きい、ゲート絶縁層と、
を備える半導体記憶装置。
【請求項12】
前記第2の領域は、強誘電体である請求項11記載の半導体記憶装置。
【請求項13】
前記ゲート絶縁層と前記半導体層との間に設けられ、前記ゲート絶縁層の材料と異なる材料の第1の絶縁層を、更に備える請求項11又は請求項12記載の半導体記憶装置。
【請求項14】
前記第1の領域と前記第1の絶縁層との間に設けられた導電層を、更に備える請求項13記載の半導体記憶装置。
【請求項15】
前記第2の領域と前記第1の絶縁層との間に設けられ、前記ゲート絶縁層の材料と異なる材料の第2の絶縁層を、更に備える請求項13又は請求項14記載の半導体記憶装置。
【請求項16】
第1の方向に延びる半導体層と、
ゲート電極層と、
前記ゲート電極層と前記半導体層との間に設けられ、ハフニウム(Hf)又はジルコニウム(Zr)の少なくともいずれか一方の金属元素と酸素(O)を含み、直方晶系又は三方晶系の結晶を主たる構成物質とするゲート絶縁層と、
前記ゲート絶縁層と前記半導体層との間に設けられた絶縁層と、
前記ゲート絶縁層と前記絶縁層との間に設けられた導電層であって、前記ゲート絶縁層を間に挟んで前記ゲート電極層と前記第1の方向に対向する第1の部分を含む導電層と、
を備える半導体記憶装置。
【請求項17】
前記導電層は、前記ゲート絶縁層を間に挟んで前記ゲート電極層と、前記第1の方向に垂直な第2の方向に対向する第2の部分を更に含む請求項16記載の半導体記憶装置。
【請求項18】
前記導電層は、前記ゲート電極層と前記第1の方向に対向する第3の部分を更に含み、前記第1の部分と前記第3の部分の間に前記ゲート電極層が設けられた請求項16又は請求項17記載の半導体記憶装置。
【請求項19】
前記ゲート電極層は、前記導電層と前記第1の方向に対向する第4の部分と、前記導電層と前記第1の方向に対向する第5の部分とを更に含み、前記第4の部分と前記第5の部分の間に前記導電層が設けられた請求項16又は請求項17記載の半導体記憶装置。
【請求項20】
前記ゲート電極層は、第6の部分と、前記第6の部分よりも前記半導体層に近い第7の部分を含み、前記第7の部分の前記第1の方向の長さは、前記第6の部分の前記第1の方向の長さよりも短い請求項16ないし請求項19いずれか一項記載の半導体記憶装置。
【請求項21】
前記ゲート絶縁層は強誘電体である請求項16ないし請求項20いずれか一項記載の半導体記憶装置。
【請求項22】
第1の方向に延びる半導体層と、
ゲート電極層と、
前記ゲート電極層と前記半導体層との間に設けられ、ハフニウム(Hf)又はジルコニウム(Zr)の少なくともいずれか一方の金属元素と酸素(O)を含み、強誘電体であるゲート絶縁層と、
前記ゲート絶縁層と前記半導体層との間に設けられた絶縁層と、
前記ゲート絶縁層と前記絶縁層との間に設けられた導電層であって、前記ゲート絶縁層を間に挟んで前記ゲート電極層と前記第1の方向に対向する第1の部分を含む導電層と、
を備える半導体記憶装置。
【請求項23】
前記導電層は、前記ゲート絶縁層を間に挟んで前記ゲート電極層と、前記第1の方向に垂直な第2の方向に対向する第2の部分を更に含む請求項22記載の半導体記憶装置。
【請求項24】
前記導電層は、前記ゲート電極層と前記第1の方向に対向する第3の部分を更に含み、前記第1の部分と前記第3の部分の間に前記ゲート電極層が設けられた請求項22又は請求項23記載の半導体記憶装置。
【請求項25】
前記ゲート電極層は、前記導電層と前記第1の方向に対向する第4の部分と、前記導電層と前記第1の方向に対向する第5の部分とを更に含み、前記第4の部分と前記第5の部分の間に前記導電層が設けられた請求項22又は請求項23記載の半導体記憶装置。
【請求項26】
前記ゲート電極層は、第6の部分と、前記第6の部分よりも前記半導体層に近い第7の部分を含み、前記第7の部分の前記第1の方向の長さは、前記第6の部分の前記第1の方向の長さよりも短い請求項22ないし請求項25いずれか一項記載の半導体記憶装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
強誘電体メモリが不揮発性メモリとして注目されている。例えば、Field Effect Transistor(FET)型のトランジスタのゲート絶縁層に強誘電体層を適用し、トランジスタの閾値電圧を変調するFerroelectric FET(FeFET)型の3端子型メモリがある。トランジスタの閾値電圧は、強誘電体層の分極状態を変化させることにより変調される。
【0003】
メモリセルを3次元的に配置した3次元NANDフラッシュメモリは、高い集積度と低いコストを実現する。3次元NANDフラッシュメモリでは、例えば、複数の絶縁層と複数のゲート電極層とが交互に積層された積層体に、積層体を貫通するメモリホールが形成されている。3次元NANDフラッシュメモリのメモリセルとして、FeFET型の3端子型メモリを適用することで、ゲート絶縁層の薄膜化が可能となる。したがって、メモリホールの穴径を縮小することでき、メモリセルの微細化が可能となる。よって、FeFET型の3端子型メモリを適用することで、メモリの集積度を更に高くすることが可能となる。メモリセルを微細化した場合でも、安定動作する3次元NANDフラッシュメモリの実現が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-155644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、安定動作する半導体記憶装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の半導体記憶装置は、第1の方向に延びる半導体層と、第1のゲート電極層と、前記第1の方向に前記第1のゲート電極層と離間して設けられた第2のゲート電極層と、ハフニウム(Hf)又はジルコニウム(Zr)の少なくともいずれか一方の金属元素と酸素(O)を含むゲート絶縁層であって、前記ゲート絶縁層は、前記第1のゲート電極層と前記半導体層との間の第1の領域と、前記第1のゲート電極層と前記第2のゲート電極層との間の第2の領域と、前記第2のゲート電極層と前記半導体層との間の第3の領域を含み、前記第1の領域は直方晶系又は三方晶系の結晶を主たる構成物質とし、前記第2の領域と前記半導体層との間の距離は、前記第1の領域と前記半導体層との間の距離よりも大きい、ゲート絶縁層と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態の半導体記憶装置のメモリセルアレイの回路図。
図2】第1の実施形態の半導体記憶装置のメモリセルアレイの模式断面図。
図3】第1の実施形態の半導体記憶装置のメモリセルの模式断面図。
図4】第1の実施形態の半導体記憶装置の製造方法を示す模式断面図。
図5】第1の実施形態の半導体記憶装置の製造方法を示す模式断面図。
図6】第1の実施形態の半導体記憶装置の製造方法を示す模式断面図。
図7】第1の実施形態の半導体記憶装置の製造方法を示す模式断面図。
図8】第1の実施形態の半導体記憶装置の製造方法を示す模式断面図。
図9】第1の実施形態の半導体記憶装置の製造方法を示す模式断面図。
図10】第1の実施形態の半導体記憶装置の製造方法を示す模式断面図。
図11】第1の実施形態の半導体記憶装置の製造方法を示す模式断面図。
図12】比較例の半導体記憶装置のメモリセルの模式断面図。
図13】第1の実施形態の半導体記憶装置の変形例のメモリセルの模式断面図。
図14】第2の実施形態の半導体記憶装置のメモリセルの模式断面図。
図15】第2の実施形態の半導体記憶装置の変形例のメモリセルの模式断面図。
図16】第3の実施形態の半導体記憶装置のメモリセルの模式断面図。
図17】第3の実施形態の半導体記憶装置の変形例のメモリセルの模式断面図。
図18】第4の実施形態の半導体記憶装置のメモリセルの模式断面図。
図19】第4の実施形態の半導体記憶装置の製造方法を示す模式断面図。
図20】第4の実施形態の半導体記憶装置の製造方法を示す模式断面図。
図21】第4の実施形態の半導体記憶装置の製造方法を示す模式断面図。
図22】第4の実施形態の半導体記憶装置の製造方法を示す模式断面図。
図23】第4の実施形態の半導体記憶装置の製造方法を示す模式断面図。
図24】第4の実施形態の半導体記憶装置の製造方法を示す模式断面図。
図25】第4の実施形態の半導体記憶装置の製造方法を示す模式断面図。
図26】第4の実施形態の半導体記憶装置の製造方法を示す模式断面図。
図27】第4の実施形態の半導体記憶装置の製造方法を示す模式断面図。
図28】第5の実施形態の半導体記憶装置のメモリセルの模式断面図。
図29】第5の実施形態の半導体記憶装置の製造方法を示す模式断面図。
図30】第5の実施形態の半導体記憶装置の製造方法を示す模式断面図。
図31】第5の実施形態の半導体記憶装置の製造方法を示す模式断面図。
図32】第5の実施形態の半導体記憶装置の製造方法を示す模式断面図。
図33】第5の実施形態の半導体記憶装置の製造方法を示す模式断面図。
図34】第5の実施形態の半導体記憶装置の製造方法を示す模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しつつ実施形態を説明する。なお、以下の説明では、同一又は類似の部材などには同一の符号を付し、一度説明した部材などについては適宜その説明を省略する場合がある。
【0009】
また、本明細書中、便宜上「上」、又は、「下」という用語を用いる場合がある。「上」、又は、「下」とはあくまで図面内での相対的位置関係を示す用語であり、重力に対する位置関係を規定する用語ではない。
【0010】
本明細書中の半導体記憶装置を構成する部材の化学組成の定性分析及び定量分析は、例えば、二次イオン質量分析法(Secondary Ion Mass Spectroscopy:SIMS)、エネルギー分散型X線分光法(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy:EDX)や電子エネルギー損失分光法(Electron Energy Loss Spectroscopy:EELS)などにより行うことが可能である。また、半導体記憶装置を構成する部材の厚さ、部材間の距離等の測定には、例えば、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM)を用いることが可能である。また、半導体記憶装置を構成する部材の構成物質の結晶系の同定、結晶系の存在割合の大小比較には、例えば、透過型電子顕微鏡やX線回折分析(X-ray Diffraction:XRD)や電子線回折分析(Electron Beam Diffraction:EBD)やX線光電分光分析(X-ray Photoelectron Spectroscopy:XPS)や放射光X線散乱解析(Synchrotron Radiation X-ray Absorption Fine Structure:XAFS)を用いることが可能である。
【0011】
本明細書中「強誘電体」とは、外部から電場を印加せずとも自発的な分極(自発分極)があり、外部から電場を印加すると分極が反転する物質を意味する。また、本明細書中「常誘電体」とは電場を印加すると分極が生じ、電場を除去すると分極が消滅する物質を意味する。
【0012】
(第1の実施形態)
第1の実施形態の半導体記憶装置は、第1の方向に延びる半導体層と、第1のゲート電極層と、第1の方向に第1のゲート電極層と離間して設けられた第2のゲート電極層と、ハフニウム(Hf)又はジルコニウム(Zr)の少なくともいずれか一方の金属元素と酸素(O)を含むゲート絶縁層であって、ゲート絶縁層は、第1のゲート電極層と半導体層との間の第1の領域と、第1のゲート電極層と第2のゲート電極層との間の第2の領域と、第2のゲート電極層と半導体層との間の第3の領域を含み、第1の領域は直方晶系又は三方晶系の結晶を主たる構成物質とし、第2の領域と半導体層との間の距離は、第1の領域と半導体層との間の距離よりも大きい、ゲート絶縁層と、を備える。
【0013】
第1の実施形態の半導体記憶装置は、Metal Ferroelectrics Semiconductor構造(MFS構造)のメモリセルを有する3次元NANDフラッシュメモリである。
【0014】
図1は、第1の実施形態の半導体記憶装置のメモリセルアレイの回路図である。
【0015】
第1の実施形態の3次元NANDフラッシュメモリのメモリセルアレイ100は、図1に示すように複数のワード線WL、共通ソース線CSL、ソース選択ゲート線SGS、複数のチャネル層CL、複数のドレイン選択ゲート線SGD、複数のビット線BL、及び、複数のメモリストリングMSを備える。
【0016】
図1におけるz方向が、第1の方向の一例である。図1におけるy方向が第2の方向の一例である。図1におけるx方向が第3の方向の一例である。なお、第1の方向は、z方向及びその逆方向も含む概念である。また、第2の方向は、y方向及びその逆方向も含む概念である。また、第3の方向は、x方向及びその逆方向も含む概念である。
【0017】
複数のワード線WLがz方向に積層される。複数のワード線WLがz方向に離間して設けられる。複数のチャネル層CLは、z方向に延びる。複数のビット線BLは、x方向に延びる。
【0018】
図1に示すように、メモリストリングMSは、共通ソース線CSLとビット線BLとの間に直列接続されたソース選択トランジスタSST、複数のメモリセルトランジスタMT、及び、ドレイン選択トランジスタSDTで構成される。ビット線BLとドレイン選択ゲート線SGDにより1本のメモリストリングMSが選択され、ワード線WLにより1個のメモリセルトランジスタMTが選択可能となる。
【0019】
図2は、第1の実施形態の半導体記憶装置のメモリセルアレイの模式断面図である。図2は、図1のメモリセルアレイ100の中の、例えば点線で囲まれる一個のメモリストリングMSの中の複数のメモリセルの断面を示す。
【0020】
図2(a)は、メモリセルアレイ100のyz断面図である。図2(a)は、図2(b)のBB’断面である。図2(b)は、メモリセルアレイ100のxy断面図である。図2(b)は、図2(a)のAA’断面である。図2(a)中、破線で囲まれた領域が、1個のメモリセルである。
【0021】
図3は、第1の実施形態の半導体記憶装置のメモリセルの模式断面図である。図3は、2つのメモリセルの一部の拡大断面図である。
【0022】
メモリセルアレイ100は、図2に示すように、複数のワード線WL、半導体層10、ゲート絶縁層12、界面絶縁層14、複数の第1の層間絶縁層16、及び複数の第2の層間絶縁層18を備える。複数のワード線WLと複数の第1の層間絶縁層16が積層体30を構成する。
【0023】
界面絶縁層14は、第1の絶縁層の一例である。第2の層間絶縁層18は、第2の絶縁層の一例である。
【0024】
2つのメモリセルは、図3に示すように、第1のワード線WL1、第2のワード線WL2、半導体層10、ゲート絶縁層12、界面絶縁層14、第1の層間絶縁層16、及び第2の層間絶縁層18を備える。ゲート絶縁層12は、第1の領域12a、第2の領域12b、及び第3の領域12cを含む。
【0025】
第1のワード線WL1は、複数のワード線の一つである。第1のワード線WL1は、第1のゲート電極層の一例である。第2のワード線WL2は、複数のワード線の一つである。第2のワード線WL2は、第2のゲート電極層の一例である。
【0026】
ワード線WL及び第1の層間絶縁層16は、例えば、図示しない半導体基板上に設けられる。
【0027】
ワード線WLと第1の層間絶縁層16は、半導体基板の上に、z方向に交互に積層される。ワード線WLは、z方向に離間して配置される。例えば、第2のワード線WL2は、第1のワード線WL1に対してz方向に離間して設けられる。複数のワード線WLと複数の第1の層間絶縁層16が積層体30を構成する。
【0028】
ワード線WLは、板状の導電体である。ワード線WLは、例えば、金属、金属窒化物、金属炭化物、又は、半導体である。ワード線WLは、例えば、タングステン(W)である。ワード線WLは、メモリセルトランジスタMTの制御電極として機能する。
【0029】
ワード線WLのz方向の長さは、例えば、5nm以上40nm以下である。
【0030】
第1の層間絶縁層16は、ワード線WLとワード線WLを分離する。第1の層間絶縁層16は、例えば、第1のワード線WL1と第2のワード線WL2を分離する。第1の層間絶縁層16は、例えば、酸化物、酸窒化物、又は、窒化物である。第1の層間絶縁層16は、例えば、酸化シリコンである。
【0031】
第1の層間絶縁層16のz方向の長さは、例えば、5nm以上40nm以下である。
【0032】
半導体層10は、積層体30の中に設けられる。半導体層10は、z方向に延びる。半導体層10は、積層体30を貫通して設けられる。半導体層10は、例えば、円柱状又は円筒状である。半導体層10は、チャネル層CLに対応する。
【0033】
半導体層10は、例えば、多結晶の半導体である。半導体層10は、例えば、多結晶シリコンである。半導体層10は、メモリセルトランジスタMTのチャネルとして機能する。
【0034】
ゲート絶縁層12は、ワード線WLと半導体層10との間に設けられる。ゲート絶縁層12は、ハフニウム(Hf)又はジルコニウム(Zr)の少なくともいずれか一方の金属元素と酸素(O)を含む。以下、説明を簡便にするため、ゲート絶縁層12に含まれるハフニウム(Hf)又はジルコニウム(Zr)の少なくともいずれか一方の金属元素を、主金属元素(main constituent metal element)と称する場合がある。
【0035】
ゲート絶縁層12に含まれる酸素(O)以外の元素の原子濃度の中で、主金属元素の原子濃度が最も高い。ゲート絶縁層12に含まれる酸素(O)以外の元素の原子濃度の総和の中に、主金属元素の原子濃度の占める割合は、例えば、90%以上である。
【0036】
ゲート絶縁層12は、酸化ハフニウム及び酸化ジルコニウムの少なくともいずれか一方を含む酸化物を含む。
【0037】
ゲート絶縁層12は、例えば、酸化ハフニウムを主成分とする。酸化ハフニウムを主成分とするとは、ゲート絶縁層12に含まれる物質の中で、酸化ハフニウムのモル比率が最も高いことを意味する。ゲート絶縁層12に含まれる酸化ハフニウムのモル比率は、例えば、90%以上である。
【0038】
ゲート絶縁層12は、例えば、酸化ジルコニウムを主成分とする。酸化ジルコニウムを主成分とするとは、ゲート絶縁層12に含まれる物質の中で、酸化ジルコニウムのモル比率が最も高いことを意味する。
【0039】
ゲート絶縁層12に含まれる酸化ジルコニウムのモル比率は、例えば、40%以上60%以下である。ゲート絶縁層12に含まれる酸化物は、例えば、酸化ハフニウムと酸化ジルコニウムとの混晶である。
【0040】
酸化ハフニウムは、直方晶系又は三方晶系の結晶である場合、強誘電性を有する。酸化ハフニウムは、直方晶系又は三方晶系の結晶である場合、強誘電体である。
【0041】
強誘電性を有する酸化ハフニウムは、例えば、第三直方晶系(Orthorhombic III、空間群Pbc2、空間群番号29番)、又は、三方晶系(Trigonal、空間群R3m又はP3又はR3、空間群番号160番又は143番又は146番)の結晶である場合に、強誘電性を有する。
【0042】
酸化ハフニウムは、直方晶系又は三方晶系の結晶以外の結晶である場合、又は、非晶質である場合、強誘電性を有しない。酸化ハフニウムは、直方晶系又は三方晶系の結晶以外の結晶である場合、又は、非晶質である場合は、常誘電体である。直方晶系又は三方晶系以外とは、立方晶系、六方晶系、正方晶系、単斜晶系、三斜晶系である。
【0043】
酸化ジルコニウムは、直方晶系又は三方晶系の結晶である場合、強誘電性を有する。酸化ジルコニウムは、直方晶系又は三方晶系の結晶である場合、強誘電体である。
【0044】
強誘電性を有する酸化ジルコニウムは、例えば、第三直方晶系(Orthorhombic III、空間群Pbc2、空間群番号29番)、又は、三方晶系(Trigonal、空間群R3m又はP3又はR3、空間群番号160番又は143番又は146番)の結晶である場合に、強誘電性を有する。
【0045】
酸化ジルコニウムは、直方晶系又は三方晶系の結晶以外の結晶である場合、又は、非晶質である場合、強誘電性を有しない。酸化ジルコニウムは、直方晶系又は三方晶系の結晶以外の結晶である場合、又は、非晶質である場合は、常誘電体である。
【0046】
ゲート絶縁層12は、例えば、シリコン(Si)、ジルコニウム(Zr)、アルミニウム(Al)、イットリウム(Y)、ストロンチウム(Sr)、ランタン(La)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、及びバリウム(Ba)からなる群から選ばれる少なくとも一つの添加元素を含む。ゲート絶縁層12に含まれる酸化物は、上記添加元素を含む。酸化物が酸化ハフニウムの場合、上記添加元素を含むことにより、酸化ハフニウムに強誘電性が発現しやすくなる。
【0047】
ゲート絶縁層12は、第1の領域12a、第2の領域12b、及び第3の領域12cを含む。
【0048】
第1の領域12aは、第1のワード線WL1と半導体層10との間に設けられる。第3の領域12cは、第2のワード線WL2と半導体層10との間に設けられる。
【0049】
第1の領域12a及び第3の領域12cは、直方晶系又は三方晶系の結晶を主たる構成物質とする。直方晶系又は三方晶系の結晶を主たる構成物質とするとは、第1の領域12a及び第3の領域12cを構成する物質のなかで、直方晶系又は三方晶系の結晶が最も高い存在割合を示すことを意味する。
【0050】
第1の領域12a及び第3の領域12cは、直方晶系又は三方晶系の結晶の存在割合が、直方晶系及び三方晶系の結晶以外の結晶又は非晶質相の存在割合よりも大きい。存在割合は、例えば、モル比又は体積比である。第1の領域12a及び第3の領域12cは、結晶質である。
【0051】
第1の領域12a及び第3の領域12cは、強誘電体である。第1の領域12a及び第3の領域12cに含まれる酸化物は、強誘電体である。
【0052】
強誘電性を有する第1の領域12a及び第3の領域12cは、メモリセルMCのFeFETのゲート絶縁層として機能する。
【0053】
第2の領域12bは、第1のワード線WL1と第2のワード線WL2との間に設けられる。第2の領域12bは、直方晶系又は三方晶系の結晶を主たる構成物質とする。第2の領域12bは、強誘電体である。なお、第2の領域12bが常誘電体となってもかまわない。
【0054】
第2の領域12bと半導体層10との間の距離(図3中のL1)は、第1の領域12aと半導体層10との間の距離(図3中のL2)よりも大きい。第2の領域12bと半導体層10との間の距離(図3中のL1)は、例えば、第1のワード線WL1と半導体層10との間の距離よりも大きい。
【0055】
界面絶縁層14は、ゲート絶縁層12と半導体層10との間に設けられる。界面絶縁層14は、第1のワード線WL1と半導体層10との間に設けられる。界面絶縁層14は、第2のワード線WL2と半導体層10との間に設けられる。
【0056】
界面絶縁層14の材料は、例えば、ゲート絶縁層12の材料と異なる。界面絶縁層14は、例えば、酸化物、酸窒化物、又は、窒化物である。界面絶縁層14は、例えば、酸化シリコンである。
【0057】
界面絶縁層14のy方向の厚さは、例えば、ゲート絶縁層12のy方向の厚さよりも薄い。
【0058】
なお、界面絶縁層14を省略して、ゲート絶縁層12が直接半導体層10と接する構造とすることも可能である。
【0059】
第2の層間絶縁層18は、ゲート絶縁層12の第2の領域12bと界面絶縁層14との間に設けられる。第2の層間絶縁層18は、ゲート絶縁層12の第2の領域12bと半導体層10との間に設けられる。第2の層間絶縁層18は、第1の層間絶縁層16と半導体層10との間に設けられる。第2の層間絶縁層18と第1の層間絶縁層16との間に、第2の領域12bが設けられる。
【0060】
第2の層間絶縁層18の材料は、ゲート絶縁層12の材料と異なる。第2の層間絶縁層18は、例えば、酸化物、酸窒化物、又は、窒化物である。第2の層間絶縁層18は、例えば、酸化シリコンである。
【0061】
第2の層間絶縁層18のy方向の厚さは、例えば、ゲート絶縁層12のy方向の厚さよりも厚い。
【0062】
第1の実施形態のメモリセルでは、例えば、ゲート絶縁層12の第1の領域12aに含まれる強誘電体の分極反転状態を、第1のワード線WL1と半導体層10の間に印加する電圧によって制御する。第1の領域12aの分極反転状態により、メモリセルトランジスタMTの閾値電圧が変化する。メモリセルトランジスタMTの閾値電圧が変化することで、メモリセルトランジスタMTのオン電流が変化する。例えば、閾値電圧が高くオン電流が低い状態をデータ“0”、閾値電圧が低くオン電流が高い状態をデータ“1”と定義すると、メモリセルは“0”と“1”の1ビットデータを記憶することが可能となる。
【0063】
次に、第1の実施形態の半導体記憶装置の製造方法の一例について説明する。図4図5図6図7図8図9図10、及び図11は、第1の実施形態の半導体記憶装置の製造方法を示す模式断面図である。図4ないし図11は、それぞれ、図2(a)に対応する断面を示す。図4ないし図11は、半導体記憶装置のメモリセルアレイ100の製造方法の一例を示す。
【0064】
最初に、図示しない半導体基板の上に、酸化シリコン層50と窒化シリコン層52とを交互に積層する(図4)。酸化シリコン層50と窒化シリコン層52により積層体30が形成される。酸化シリコン層50と窒化シリコン層52は、例えば、Chemical Vapor Deposition法(CVD法)により形成する。酸化シリコン層50の一部は、最終的に第1の層間絶縁層16となる。
【0065】
次に、酸化シリコン層50と窒化シリコン層52に開口部54を形成する(図5)。開口部54は、例えば、リソグラフィ法とReactive Ion Etching法(RIE法)により形成する。
【0066】
次に、開口部54の内面に露出した酸化シリコン層50を、ウェットエッチングにより選択的に後退させる(図6)。ウェットエッチングには、例えば、バッファードフッ酸溶液を用い、酸化シリコン層50を窒化シリコン層52に対して選択的にエッチングする。
【0067】
次に、酸化ハフニウム膜56を、開口部54内、及び、酸化シリコン層50が後退した領域内に形成する(図7)。酸化ハフニウム膜56は、例えば、Atomic Layer Deposition法(ALD法)により形成する。酸化ハフニウム膜56には、例えば、添加元素としてシリコン(Si)が添加される。酸化ハフニウム膜56の一部は、最終的にゲート絶縁層12となる。
【0068】
次に、酸化シリコン膜58を、開口部54内、及び、酸化シリコン層50が後退した領域内に形成する。酸化シリコン膜58は、例えば、CVD法により形成する。
【0069】
次に、開口部54の内面の酸化シリコン膜58を、エッチングにより除去する(図8)。酸化シリコン膜58は、例えば、RIE法によりエッチングして除去する。酸化シリコン膜58は、酸化シリコン層50が後退した領域内の、酸化ハフニウム膜56の上に残る。酸化シリコン膜58は、最終的に第2の層間絶縁層18となる。
【0070】
次に、開口部54の内面に酸化シリコン膜60を形成する。酸化シリコン膜60は、例えば、CVD法により形成する。酸化シリコン膜60は、最終的に界面絶縁層14となる。
【0071】
次に、開口部54内に多結晶シリコン膜62を形成し、開口部54を埋め込む(図9)。多結晶シリコン膜62は、例えば、CVD法により形成する。多結晶シリコン膜62は、最終的に半導体層10となる。
【0072】
次に、図示しないエッチング用の溝を用いて、窒化シリコン層52をウェットエッチングより選択的に除去する(図10)。ウェットエッチングには、例えば、リン酸溶液を用い、窒化シリコン層52を、酸化シリコン層50、及び酸化ハフニウム膜56に対して選択的にエッチングする。
【0073】
次に、酸化ハフニウム膜56の上に、タングステン膜64を形成する(図11)。タングステン膜64は、例えば、CVD法により形成される。タングステン膜64は、最終的にワード線WLとなる。タングステン膜64の前に、バリアメタル膜として、例えば窒化チタン膜を形成しても構わない。
【0074】
タングステン膜64の形成後に、結晶化アニールを行う。結晶化アニールにより、酸化ハフニウム膜56が強誘電体となる。
【0075】
以上の製造方法により、第1の実施形態の半導体記憶装置が製造される。
【0076】
次に、第1の実施形態の半導体記憶装置の作用及び効果について説明する。
【0077】
図12は、比較例の半導体記憶装置のメモリセルの模式断面図である。図12は、図3に対応する図である。
【0078】
比較例の半導体記憶装置のメモリセルは、ゲート絶縁層12の第2の領域12bと界面絶縁層14との間に第2の層間絶縁層18が設けられない。したがって、第2の領域12bと半導体層10との間の距離(図12中のL1)は、第1の領域12aと半導体層10との間の距離(図12中のL2)は等しい。第2の領域12bは、界面絶縁層14と接する。
【0079】
強誘電体である第2の領域12bには、複数の結晶グレインが含まれる。各結晶グレインが分極ドメインとなる。各結晶グレインの分極状態は、各結晶グレインの結晶方位と電界方向に依存する。第2の領域12bに対向する半導体層10の表面の静電ポテンシャルは各結晶グレインの分極状態に依存する。
【0080】
第2の領域12bに対向する半導体層10の表面を流れるキャリア電子は、例えば、静電ポテンシャルの高い部分に挟まれた静電ポテンシャルの狭窄部を通って流れることになる。例えば、このような狭窄部の直上の第2の領域12bと界面絶縁層14との界面に電子がトラップされると、トラップされた電子によるキャリア電子の散乱が大きくなる。したがって、第1のワード線WL1と第2のワード線WL2の間の半導体層10を流れる電流の変動が大きくなる。
【0081】
さらに、電子がトラップとデトラップを繰り返すことで、第1のワード線WL1と第2のワード線WL2の間の半導体層10を流れる電流が不安定となる。第1のワード線WL1と第2のワード線WL2を流れる電流が不安定となることで、メモリセルの動作が不安定となる。例えば、メモリセルの書き込み動作、読み出し動作の際にメモリストリングMSに流れる電流が不安定となり、メモリセルの動作が不安定となる。
【0082】
第1の実施形態の半導体記憶装置のメモリセルは、第2の領域12bと半導体層10との間の距離(図3中のL1)が、第1の領域12aと半導体層10との間の距離(図3中のL2)よりも大きい。このため、第2の領域12bが半導体層10から離れている。したがって、第2の領域12bに含まれる結晶グレインの分極状態の、半導体層10の表面の静電ポテンシャルに与える影響が低減される。よって、第1のワード線WL1と第2のワード線WL2の間の半導体層10を流れる電流が安定し、メモリセルの動作が安定する。
【0083】
図13は、第1の実施形態の半導体記憶装置の変形例のメモリセルの模式断面図である。第1の実施形態の半導体記憶装置の変形例は、第1のゲート電極層は、第1の部分と、第1の部分よりも半導体層に近い第2の部分を含み、第2の部分の第1の方向の長さは、第1の部分の第1の方向の長さよりも短い点で、第1の実施形態の半導体記憶装置と異なる。
【0084】
第1のワード線WL1は、幅広部分WL1aと幅狭部分WL1bとを含む。幅広部分WL1aは、第1の部分の一例である。幅狭部分WL1bは、第2の部分の一例である。幅狭部分WL1bは、幅広部分WL1aよりも半導体層10に近い。
【0085】
幅狭部分WL1bのz方向の長さ(図13中のL3)は、幅広部分WL1aのz方向の長さ(図13中のL4)よりも短い。
【0086】
変形例のメモリセルによれば、第1のワード線WL1と第2のワード線WL2との間隔を、半導体層10に近い側で広げることが可能である。したがって、第1のワード線WL1と第2のワード線WL2との間を埋め込む第2の層間絶縁層18の形成が容易となる。また、書き込み動作時又は読出し動作時の、第1のワード線WL1と第2のワード線WL2との間の干渉を抑制することが可能である。
【0087】
以上、第1の実施形態の半導体記憶装置及び変形例によれば、ワード線WLとワード線WLの間の半導体層を流れる電流が安定し、メモリセルの安定動作が可能となる。よって、安定動作する半導体記憶装置が実現できる。
【0088】
(第2の実施形態)
第2の実施形態の半導体記憶装置は、第2の領域の厚さは、第1の領域の厚さよりも薄い点で、第1の実施形態の半導体記憶装置と異なる。以下、第1の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する場合がある。
【0089】
図14は、第2の実施形態の半導体記憶装置のメモリセルの模式断面図である。図14は、2つのメモリセルの一部の拡大断面図である。
【0090】
第2の実施形態の半導体記憶装置の2つのメモリセルは、図14に示すように、第1のワード線WL1、第2のワード線WL2、半導体層10、ゲート絶縁層12、界面絶縁層14、第1の層間絶縁層16、及び第2の層間絶縁層18を備える。ゲート絶縁層12は、第1の領域12a、第2の領域12b、及び第3の領域12cを含む。
【0091】
界面絶縁層14は、第1の絶縁層の一例である。第2の層間絶縁層18は、第2の絶縁層の一例である。第1のワード線WL1は、第1のゲート電極層の一例である。第2のワード線WL2は、第2のゲート電極層の一例である。
【0092】
ゲート絶縁層12は、第1の層12x及び第2の層12yを含む。第2の層12yと半導体層10との間に、第1の層12xが設けられる。
【0093】
ゲート絶縁層12の第1の領域12a及び第3の領域12cは、第1の層12x及び第2の層12yを含む。ゲート絶縁層12の第2の領域12bは、第2の層12yを含む。ゲート絶縁層12の第2の領域12bは、第1の層12xを含まない。
【0094】
第2の領域12bのy方向の厚さ(図14中のt2)は、第1の領域12aのy方向の厚さ(図14中のt1)よりも薄い。
【0095】
第2の実施形態の半導体記憶装置のメモリセルを製造する際、例えば、第1の層12xの形成と、第2の層の形成を、別工程で行う。
【0096】
例えば、結晶化アニールで、酸化ハフニウム膜を結晶化させる際、酸化ハフニウム膜の膜厚が薄いと、強誘電体となりにくい。言い換えれば、酸化ハフニウム膜の膜厚が薄いと直方晶系又は三方晶系の結晶が形成されにくい。
【0097】
このため、第2の領域12bの厚さを薄くすることにより、第2の領域12bが強誘電体となりにくく、第2の領域12bの強誘電性が第1の領域12aと比較して弱くなる。したがって、第2の領域12bに含まれる結晶グレインの分極状態の、半導体層10の表面の静電ポテンシャルに与える影響が更に低減される。よって、第1のワード線WL1と第2のワード線WL2の間の半導体層10を流れる電流が更に安定し、メモリセルの動作が安定する。
【0098】
第2の領域12bは、例えば、直方晶系及び三方晶系の結晶以外を主たる構成物質とする。直方晶系及び三方晶系の結晶以外を主たる構成物質とするとは、第2の領域12bを構成する物質のなかで、直方晶系及び三方晶系の結晶以外の物質が最も高い存在割合を示すことを意味する。
【0099】
第2の領域12bは、例えば、直方晶系及び三方晶系の結晶以外の結晶又は非晶質相の存在割合が、直方晶系又は三方晶系の結晶の存在割合よりも大きい。第2の領域12bは、例えば、結晶質又は非晶質である。
【0100】
なお、第2の領域12bが常誘電体となってもかまわない。
【0101】
図15は、第2の実施形態の半導体記憶装置の変形例のメモリセルの模式断面図である。第2の実施形態の半導体記憶装置の変形例は、第1のゲート電極層は、第1の部分と、第1の部分よりも半導体層に近い第2の部分を含み、第2の部分の第1の方向の長さは、第1の部分の第1の方向の長さよりも短い点で、第2の実施形態の半導体記憶装置と異なる。
【0102】
第1のワード線WL1は、幅広部分WL1aと幅狭部分WL1bとを含む。幅広部分WL1aは、第1の部分の一例である。幅狭部分WL1bは、第2の部分の一例である。幅狭部分WL1bは、幅広部分WL1aよりも半導体層10に近い。
【0103】
幅狭部分WL1bのz方向の長さ(図15中のL3)は、幅広部分WL1aのz方向の長さ(図15中のL4)よりも短い。
【0104】
変形例のメモリセルによれば、第1のワード線WL1と第2のワード線WL2との間隔を、半導体層10に近い側で広げることが可能である。したがって、第1のワード線WL1と第2のワード線WL2との間を埋め込む第2の層間絶縁層18の形成が容易となる。
【0105】
以上、第2の実施形態の半導体記憶装置及び変形例によれば、ワード線WLとワード線WLの間の半導体層を流れる電流が安定し、メモリセルの安定動作が可能となる。よって、安定動作する半導体記憶装置が実現できる。
【0106】
(第3の実施形態)
第3の実施形態の半導体記憶装置は、第1の領域と第1の絶縁層との間に設けられた導電層を、更に備える点で、第1の実施形態の半導体記憶装置と異なる。以下、第1の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する場合がある。
【0107】
第3の実施形態の半導体記憶装置は、Metal Ferroelectrics Metal Insulator Semiconductor構造(MFMIS構造)のメモリセルを有する3次元NANDフラッシュメモリである。
【0108】
図16は、第3の実施形態の半導体記憶装置のメモリセルの模式断面図である。図16は、2つのメモリセルの一部の拡大断面図である。
【0109】
2つのメモリセルは、図17に示すように、第1のワード線WL1、第2のワード線WL2、半導体層10、ゲート絶縁層12、界面絶縁層14、第1の層間絶縁層16、第2の層間絶縁層18、及び導電層20を備える。ゲート絶縁層12は、第1の領域12a、第2の領域12b、及び第3の領域12cを含む。
【0110】
界面絶縁層14は、第1の絶縁層の一例である。第2の層間絶縁層18は、第2の絶縁層の一例である。第1のワード線WL1は、第1のゲート電極層の一例である。第2のワード線WL2は、第2のゲート電極層の一例である。
【0111】
導電層20は、第1の領域12aと界面絶縁層14との間に設けられる。導電層20は、第3の領域12cと界面絶縁層14との間に設けられる。
【0112】
導電層20は、例えば、第1の領域12a及び第3の領域12cに接する。導電層20は、例えば、界面絶縁層14に接する。
【0113】
導電層20は、導電体である。導電層20は、例えば、金属、金属窒化物、又は金属酸化物である。導電層20は、例えば、チタン、窒化チタン、酸化チタン、タンタル、窒化タンタル、酸化タンタル、タングステン、窒化タングステン、又は酸化タングステンである。
【0114】
導電層20のy方向の厚さは、例えば、界面絶縁層14のy方向の厚さよりも厚い。
【0115】
第2の領域12bと半導体層10との間の距離(図16中のL1)は、第1の領域12aと半導体層10との間の距離(図16中のL2)よりも大きい。第2の領域12bと半導体層10との間の距離(図16中のL1)は、第1のワード線WL1と半導体層10との間の距離よりも大きい。
【0116】
次に、第3の実施形態の半導体記憶装置の作用及び効果について説明する。
【0117】
強誘電体である第1の領域12aには、複数の結晶グレインが含まれる。各結晶グレインが分極ドメインとなる。各結晶グレインの分極状態は、各結晶グレインの結晶方位と電界方向に依存する。第1の領域12aに対向する半導体層10の表面の静電ポテンシャルは各結晶グレインの分極状態に依存する。言い換えれば、第1のワード線WL1で制御される閾値電圧が、各結晶グレインが対向する部分によって局所的に異なる。
【0118】
メモリセルが微細化されると、一つの結晶グレインの分極状態の、メモリセルトランジスタMTの閾値電圧への寄与度が大きくなる。したがって、メモリセルが微細化されると、メモリセルトランジスタMTの閾値電圧のばらつきが大きくなる。
【0119】
さらに、例えば、メモリセルに印加される電気的ストレスにより、第1の領域12aの一つの結晶グレインの分極状態が反転した場合を考える。一つの結晶グレインの分極状態の、メモリセルトランジスタMTの閾値電圧への寄与度が大きいため、分極状態の反転に伴うメモリセルトランジスタMTの閾値電圧の変動が大きくなる。したがって、例えば、メモリセルに記憶されたデータが破壊されるおそれある。
【0120】
第3の実施形態の半導体記憶装置は、第1の領域12aと界面絶縁層14との間に導電層20が設けられる。導電層20は導電体であるため、導電層20の界面絶縁層14と対向する側の表面は等電位面となる。このため、第1の領域12aに含まれる結晶グレインに、分極状態のばらつきがあったとしても、導電層20を設けることで分極状態のばらつきが平均化される。したがって、一つの結晶グレインの分極状態の、メモリセルトランジスタMTの閾値電圧への寄与度が小さくなる。よって、メモリセルトランジスタMTの閾値電圧のばらつきが抑制される。
【0121】
また、一つの結晶グレインの分極状態の、メモリセルトランジスタMTの閾値電圧への寄与度が小さくなるため、分極状態の反転に伴うメモリセルトランジスタMTの閾値電圧の変動も抑制される。
【0122】
また、第3の実施形態の半導体記憶装置は、第2の領域12bと半導体層10との間の距離(図16中のL1)が、第1の領域12aと半導体層10との間の距離(図16中のL2)よりも大きい。したがって、第1の実施形態の半導体記憶装置と同様、ワード線WLとワード線WLの間の半導体層を流れる電流が安定し、メモリセルの安定動作が可能となる。
【0123】
図17は、第3の実施形態の半導体記憶装置の変形例のメモリセルの模式断面図である。第3の実施形態の半導体記憶装置の変形例は、第1のゲート電極層は、第1の部分と、第1の部分よりも半導体層に近い第2の部分を含み、第2の部分の第1の方向の長さは、第1の部分の第1の方向の長さよりも短い点で、第3の実施形態の半導体記憶装置と異なる。
【0124】
第1のワード線WL1は、幅広部分WL1aと幅狭部分WL1bとを含む。幅広部分WL1aは、第1の部分の一例である。幅狭部分WL1bは、第2の部分の一例である。幅狭部分WL1bは、幅広部分WL1aよりも半導体層10に近い。
【0125】
幅狭部分WL1bのz方向の長さ(図17中のL3)は、幅広部分WL1aのz方向の長さ(図17中のL4)よりも短い。
【0126】
変形例のメモリセルによれば、第1のワード線WL1と第2のワード線WL2との間隔を、半導体層10に近い側で広げることが可能である。したがって、第1のワード線WL1と第2のワード線WL2との間を埋め込む第2の層間絶縁層18の形成が容易となる。
【0127】
以上、第3の実施形態の半導体記憶装置及び変形例によれば、ワード線WLとワード線WLの間の半導体層を流れる電流が安定し、メモリセルの安定動作が可能となる。また、導電層を設けることで、メモリセルトランジスタの閾値電圧のばらつき及び変動が抑制される。よって、安定動作する半導体記憶装置が実現できる。
【0128】
(第4の実施形態)
第4の実施形態の半導体記憶装置は、第1の方向に延びる半導体層と、ゲート電極層と、ゲート電極層と半導体層との間に設けられ、ハフニウム(Hf)又はジルコニウム(Zr)の少なくともいずれか一方の金属元素と酸素(O)を含み、直方晶系又は三方晶系の結晶を主たる構成物質とするゲート絶縁層と、ゲート絶縁層と半導体層との間に設けられた絶縁層と、ゲート絶縁層と絶縁層との間に設けられた導電層であって、ゲート絶縁層を間に挟んでゲート電極層と第1の方向に対向する第1の部分を含む導電層と、を備える。第4の実施形態の半導体記憶装置は、導電層が、ゲート絶縁層を間に挟んでゲート電極層と第1の方向に対向する第1の部分を含む点で、第3の実施形態の半導体記憶装置と異なる。以下、第3の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する場合がある。
【0129】
第4の実施形態の半導体記憶装置は、MFMIS構造のメモリセルを有する3次元NANDフラッシュメモリである。
【0130】
図18は、第4の実施形態の半導体記憶装置のメモリセルの模式断面図である。図18は、メモリセルの一部の拡大断面図である。
【0131】
メモリセルは、図18に示すように、第1のワード線WL1、第2のワード線WL2、半導体層10、ゲート絶縁層12、界面絶縁層14、第1の層間絶縁層16、第2の層間絶縁層18、導電層20、及び中間絶縁層22を備える。ゲート絶縁層12は、第1の領域12a、第2の領域12b、及び第3の領域12cを含む。
【0132】
界面絶縁層14は、絶縁層の一例である。第1のワード線WL1は、ゲート電極層の一例である。
【0133】
導電層20は、ゲート絶縁層12と界面絶縁層14との間に設けられる。導電層20は、第1の領域12aと界面絶縁層14との間に設けられる。導電層20は、第3の領域12cと界面絶縁層14との間に設けられる。導電層20は、ゲート絶縁層12を間に挟んで第1のワード線WL1とy方向に対向する。
【0134】
導電層20は、例えば、第1の領域12a及び第3の領域12cに接する。導電層20は、例えば、界面絶縁層14に接する。
【0135】
導電層20は、第1の端部20a、第2の端部20b、及び中央部20cを含む。第1の端部20aは、第1の部分の一例である。中央部20cは、第2の部分の一例である。第2の端部20bは、第3の部分の一例である。
【0136】
第1の端部20aは、ゲート絶縁層12と第2の層間絶縁層18との間に設けられる。第2の端部20bは、ゲート絶縁層12と第2の層間絶縁層18との間に設けられる。第2の端部20bは、第1の端部20aのz方向に位置する。中央部20cは、第1の領域12aと界面絶縁層14との間に設けられる。中央部20cは、第1の端部20aと第2の端部20bとの間に設けられる。中央部20cは、ゲート絶縁層12を間に挟んで第1のワード線WL1とy方向に対向する。
【0137】
導電層20は、ゲート絶縁層12を間に挟んで第1のワード線WL1とz方向に対向する。第1の端部20aは、ゲート絶縁層12を間に挟んで第1のワード線WL1とz方向に対向する。第2の端部20bは、ゲート絶縁層12を間に挟んで第1のワード線WL1とz方向に対向する。第1の端部20aと第2の端部20bとの間に、第1のワード線WL1が設けられる。
【0138】
導電層20は、導電体である。導電層20は、例えば、金属、金属窒化物、又は金属酸化物である。導電層20は、例えば、チタン、窒化チタン、酸化チタン、タンタル、窒化タンタル、酸化タンタル、タングステン、窒化タングステン、又は酸化タングステンである。
【0139】
導電層20のy方向の厚さは、例えば、界面絶縁層14のy方向の厚さよりも厚い。
【0140】
中間絶縁層22は、ゲート絶縁層12の第2の領域12bと、第2の層間絶縁層18との間に設けられる。中間絶縁層22は、ゲート絶縁層12の第2の領域12bと、導電層20との間に設けられる。
【0141】
中間絶縁層22の材料は、ゲート絶縁層12の材料と異なる。中間絶縁層22の材料は、第2の層間絶縁層18の材料と異なる。中間絶縁層22は、例えば、酸化物、酸窒化物、又は、窒化物である。第2の層間絶縁層18は、例えば、窒化シリコンである。
【0142】
第1のワード線WL1は、幅広部分WL1aと幅狭部分WL1bとを含む。幅広部分WL1aは、第6の部分の一例である。幅狭部分WL1bは、第7の部分の一例である。幅狭部分WL1bは、幅広部分WL1aよりも半導体層10に近い。
【0143】
幅狭部分WL1bのz方向の長さ(図18中のL3)は、幅広部分WL1aのz方向の長さ(図18中のL4)よりも短い。
【0144】
第2の領域12bと半導体層10との間の距離(図18中のL1)は、第1の領域12aと半導体層10との間の距離(図18中のL2)よりも大きい。第2の領域12bと半導体層10との間の距離(図18中のL1)は、第1のワード線WL1と半導体層10との間の距離よりも大きい。
【0145】
次に、第4の実施形態の半導体記憶装置の製造方法の一例について説明する。図19図20図21図22図23図24図25図26、及び図27は、第4の実施形態の半導体記憶装置の製造方法を示す模式断面図である。
【0146】
最初に、図示しない半導体基板の上に、酸化シリコン層50と窒化シリコン層52とを交互に積層する。酸化シリコン層50と窒化シリコン層52により積層体30が形成される。酸化シリコン層50と窒化シリコン層52は、例えば、CVD法により形成する。酸化シリコン層50の一部は、最終的に第1の層間絶縁層16となる。
【0147】
次に、酸化シリコン層50と窒化シリコン層52に開口部54を形成する(図19)。開口部54は、例えば、リソグラフィ法とRIE法により形成する。
【0148】
次に、開口部54の内面に露出した酸化シリコン層50を、ウェットエッチングにより選択的に後退させる(図20)。ウェットエッチングには、例えば、バッファードフッ酸溶液を用い、酸化シリコン層50を窒化シリコン層52に対して選択的にエッチングする。
【0149】
次に、酸化ハフニウム膜56及び窒化シリコン膜57を、開口部54内、及び、酸化シリコン層50が後退した領域内に形成する(図21)。酸化ハフニウム膜56は、例えば、ALD法により形成する。酸化ハフニウム膜56には、例えば、添加元素としてシリコン(Si)が添加される。酸化ハフニウム膜56の一部は、最終的にゲート絶縁層12となる。窒化シリコン膜57は、例えば、CVD法により形成する。窒化シリコン膜57は、最終的に中間絶縁層22となる。
【0150】
次に、酸化シリコン膜58を、開口部54内、及び、酸化シリコン層50が後退した領域内に形成する。酸化シリコン膜58は、例えば、CVD法により形成する。
【0151】
次に、開口部54の内面の酸化シリコン膜58を、エッチングにより除去する(図22)。酸化シリコン膜58は、例えば、RIE法によりエッチングして除去する。酸化シリコン膜58は、酸化シリコン層50が後退した領域内の、窒化シリコン膜57の上に残る。酸化シリコン膜58は、最終的に第2の層間絶縁層18となる。
【0152】
次に、開口部54の内面に露出した窒化シリコン膜57を、ウェットエッチングにより選択的に後退させる(図23)。ウェットエッチングには、例えば、リン酸溶液を用い、窒化シリコン膜57を、酸化ハフニウム膜56及び酸化シリコン膜58に対して選択的にエッチングする。
【0153】
次に、開口部54の内面に窒化チタン膜59を形成する。窒化チタン膜59は、例えば、CVD法により形成する。
【0154】
次に、開口部54の内面の窒化チタン膜59を、エッチングにより除去する(図24)。窒化チタン膜59は、例えば、RIE法によりエッチングして除去する。窒化チタン膜59は、窒化シリコン膜57が後退した領域内の、酸化ハフニウム膜56の上に残る。窒化チタン膜59は、最終的に導電層20となる。
【0155】
次に、開口部54の内面に酸化シリコン膜60を形成する。酸化シリコン膜60は、例えば、CVD法により形成する。酸化シリコン膜60は、最終的に界面絶縁層14となる。
【0156】
次に、開口部54内に多結晶シリコン膜62を形成し、開口部54を埋め込む(図25)。多結晶シリコン膜62は、例えば、CVD法により形成する。多結晶シリコン膜62は、最終的に半導体層10となる。
【0157】
次に、図示しないエッチング用の溝を用いて、窒化シリコン層52をウェットエッチングより選択的に除去する。ウェットエッチングには、例えば、リン酸溶液を用い、窒化シリコン層52を、酸化シリコン層50、酸化ハフニウム膜56に対して選択的にエッチングする。
【0158】
次に、酸化シリコン層50の一部をウェットエッチングにより除去する(図26)。ウェットエッチングには、例えば、バッファードフッ酸溶液を用い、酸化シリコン層50を酸化ハフニウム膜56に対して選択的にエッチングする。
【0159】
次に、酸化ハフニウム膜56の上に、タングステン膜64を形成する(図27)。タングステン膜64は、例えば、CVD法により形成される。タングステン膜64は、最終的にワード線WLとなる。
【0160】
タングステン膜64の形成後に、結晶化アニールを行う。結晶化アニールにより、酸化ハフニウム膜56が強誘電体となる。
【0161】
以上の製造方法により、第4の実施形態の半導体記憶装置が製造される。
【0162】
次に、第4の実施形態の半導体記憶装置の作用及び効果について説明する。
【0163】
第4の実施形態の半導体記憶装置は、第1の領域12aと界面絶縁層14との間に導電層20が設けられる。したがって、第3の実施形態の半導体記憶装置と同様、メモリセルトランジスタMTの閾値電圧のばらつきが抑制される。また、第3の実施形態の半導体記憶装置と同様、分極状態の反転に伴うメモリセルトランジスタMTの閾値電圧の変動も抑制される。
【0164】
第4の実施形態の半導体記憶装置は、導電層20は、ゲート絶縁層12を間に挟んで第1のワード線WL1とz方向に対向する。したがって、ゲート絶縁層12の中に含まれる結晶グレインの中で、導電層20に接触する結晶グレインの数を増加させることが可能となる。したがって、結晶グレインの分極状態のばらつきを更に平均化することが可能となる。
【0165】
また、導電層20が、第1の端部20a、第2の端部20b、及び中央部20cを含む屈曲した構造を有する。屈曲した構造の導電層20とワード線WLとの間に、ゲート絶縁層12を挟む構造となることで、結晶化アニールの際に、導電層20の形状効果によりゲート絶縁層12の結晶グレインのサイズを小さくすることができる。結晶グレインのサイズを小さくすることで、結晶グレインの分極状態のばらつきを更に平均化することが可能となる。
【0166】
第4の実施形態の半導体記憶装置によれば、第3の実施形態の半導体記憶装置と比較して、結晶グレインの分極状態のばらつきを更に平均化することが可能となる。したがって、メモリセルトランジスタMTの閾値電圧のばらつき、及び、分極状態の反転に伴うメモリセルトランジスタMTの閾値電圧の変動が、更に抑制される。
【0167】
また、第4の実施形態の半導体記憶装置は、第2の領域12bと半導体層10との間の距離(図18中のL1)が、第1の領域12aと半導体層10との間の距離(図18中のL2)よりも大きい。したがって、第1の実施形態の半導体記憶装置と同様、ワード線WLとワード線WLの間の半導体層を流れる電流が安定し、メモリセルの安定動作が可能となる。
【0168】
また、第1のワード線WL1は、幅広部分WL1aと幅狭部分WL1bとを含む。幅狭部分WL1bのz方向の長さ(図18中のL3)は、幅広部分WL1aのz方向の長さ(図18中のL4)よりも短い。したがって、第1のワード線WL1と第2のワード線WL2との間を埋め込む第2の層間絶縁層18、及び中間絶縁層22の形成が容易となる。
【0169】
以上、第4の実施形態の半導体記憶装置によれば、ワード線WLとワード線WLの間の半導体層を流れる電流が安定し、メモリセルの安定動作が可能となる。また、導電層を設けることで、メモリセルトランジスタの閾値電圧のばらつき及び変動が抑制される。よって、安定動作する半導体記憶装置が実現できる。
【0170】
(第5の実施形態)
第5の実施形態の半導体記憶装置は、ゲート電極層は、導電層と第1の方向に対向する第4の部分と、導電層と第1の方向に対向する第5の部分とを更に含み、第4の部分と第5の部分の間に導電層が設けられた点で、第4の実施形態の半導体記憶装置と異なる。以下、第4の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する場合がある。
【0171】
第5の実施形態の半導体記憶装置は、MFMIS構造のメモリセルを有する3次元NANDフラッシュメモリである。
【0172】
図28は、第5の実施形態の半導体記憶装置のメモリセルの模式断面図である。図28は、メモリセルの一部の拡大断面図である。
【0173】
メモリセルは、図28に示すように、ワード線WL、半導体層10、ゲート絶縁層12、界面絶縁層14、第1の層間絶縁層16、及び導電層20を備える。
【0174】
ワード線WLは、ゲート電極層の一例である。界面絶縁層14は、絶縁層の一例である。
【0175】
ワード線WLは、先端部WLxと主要部WLyを含む。先端部WLxは、第1の端部WLxa、第2の端部WLxb、及び中央部WLxcを含む。
【0176】
第1の端部WLxaは、第4の部分の一例である。第2の端部WLxbは、第5の部分の一例である。
【0177】
第1の端部WLxaは、ゲート絶縁層12と第1の層間絶縁層16との間に設けられる。第2の端部WLxbは、ゲート絶縁層12と第1の層間絶縁層16との間に設けられる。第2の端部WLxbは、第1の端部WLxaのz方向に位置する。
【0178】
中央部WLxcは、ゲート絶縁層12とワード線WLとの間に位置する。中央部WLxcは、第1の端部WLxaと第2の端部WLxbの間に設けられる。
【0179】
第1の端部WLxaと第2の端部WLxbとの間に、導電層20が設けられる。
【0180】
先端部WLxは、導電体である。先端部WLxは、例えば、金属、金属窒化物、又は金属酸化物である。先端部WLxは、例えば、チタン、窒化チタン、酸化チタン、タンタル、窒化タンタル、酸化タンタル、タングステン、窒化タングステン、又は酸化タングステンである。
【0181】
主要部WLyは、導電体である。主要部WLyは、例えば、金属、金属窒化物、金属炭化物、又は、半導体である。ワード線WLは、例えば、タングステン(W)である。
【0182】
先端部WLxの材料と主要部WLyの材料は、同一であっても異なっていても構わない。
【0183】
導電層20は、ゲート絶縁層12と界面絶縁層14との間に設けられる。導電層20は、ゲート絶縁層12を間に挟んでワード線WLとy方向に対向する。導電層20は、第2の部分の一例である。
【0184】
導電層20は、例えば、界面絶縁層14に接する。
【0185】
導電層20は、ゲート絶縁層12を間に挟んでワード線WLとz方向に対向する。導電層20は、ゲート絶縁層12を間に挟んでワード線WLの先端部WLxとz方向に対向する。
【0186】
導電層20の一部は、ゲート絶縁層12を間に挟んで第1の端部WLxaとz方向に対向する。導電層20の別の一部は、ゲート絶縁層12を間に挟んで第2の端部WLxbとz方向に対向する。導電層20の一部又は導電層20の別の一部は、第1の部分の一例である。
【0187】
導電層20は、導電体である。導電層20は、例えば、金属、金属窒化物、又は金属酸化物である。導電層20は、例えば、チタン、窒化チタン、酸化チタン、タンタル、窒化タンタル、酸化タンタル、タングステン、窒化タングステン、又は酸化タングステンである。
【0188】
導電層20のy方向の厚さは、例えば、界面絶縁層14のy方向の厚さよりも厚い。
【0189】
次に、第5の実施形態の半導体記憶装置の製造方法の一例について説明する。図29図30図31図32図33、及び図34は、第5の実施形態の半導体記憶装置の製造方法を示す模式断面図である。
【0190】
最初に、図示しない半導体基板の上に、酸化シリコン層50と窒化シリコン層52とを交互に積層する。酸化シリコン層50と窒化シリコン層52により積層体30が形成される。酸化シリコン層50と窒化シリコン層52は、例えば、CVD法により形成する。酸化シリコン層50の一部は、最終的に第1の層間絶縁層16となる。
【0191】
次に、酸化シリコン層50と窒化シリコン層52に開口部54を形成する(図29)。開口部54は、例えば、リソグラフィ法とRIE法により形成する。
【0192】
次に、開口部54の内面に露出した窒化シリコン層52を、ウェットエッチングにより選択的に後退させる(図30)。ウェットエッチングには、例えば、リン酸溶液を用い、窒化シリコン層52を酸化シリコン層50に対して選択的にエッチングする。
【0193】
次に、酸化シリコン層50の一部をウェットエッチングにより除去する(図31)。ウェットエッチングには、例えば、バッファードフッ酸溶液を用い、酸化シリコン層50を窒化シリコン層52に対して選択的にエッチングする。
【0194】
次に、窒化チタン膜53、酸化ハフニウム膜56、及び酸化チタン膜55を、開口部54内に形成する。窒化チタン膜53は、例えばCVD法により形成する。酸化ハフニウム膜56は、例えば、ALD法により形成する。酸化ハフニウム膜56には、例えば、添加元素としてシリコン(Si)が添加される。酸化チタン膜55は、例えばCVD法により形成する。
【0195】
次に、開口部54の内面の酸化チタン膜55、酸化ハフニウム膜56、及び窒化チタン膜53を、エッチングにより除去する(図32)。酸化チタン膜55、酸化ハフニウム膜56、及び窒化チタン膜53は、例えば、RIE法によりエッチングして除去する。酸化チタン膜55は、最終的に導電層20となる。酸化ハフニウム膜56は、最終的にゲート絶縁層12となる。窒化チタン膜53は、最終的にワード線WLの先端部WLxとなる。
【0196】
次に、開口部54の内面に露出した窒化チタン膜53を、エッチングにより選択的に後退させる(図33)。窒化チタン膜53を、酸化シリコン層50、酸化ハフニウム膜56及び酸化チタン膜55に対して選択的にエッチングする。
【0197】
次に、開口部54の内面に酸化シリコン膜60を形成する。酸化シリコン膜60は、例えば、CVD法により形成する。酸化シリコン膜60は、最終的に界面絶縁層14となる。
【0198】
次に、開口部54内に多結晶シリコン膜62を形成し、開口部54を埋め込む。多結晶シリコン膜62は、例えば、CVD法により形成する。多結晶シリコン膜62は、最終的に半導体層10となる。
【0199】
次に、図示しないエッチング用の溝を用いて、窒化シリコン層52をウェットエッチングより選択的に除去する。ウェットエッチングには、例えば、リン酸溶液を用い、窒化シリコン層52を、酸化シリコン層50、窒化チタン膜53に対して選択的にエッチングする。
【0200】
次に、窒化チタン膜53の上に、タングステン膜64を形成する(図34)。タングステン膜64は、例えば、CVD法により形成される。タングステン膜64は窒化チタン膜53に接続され、最終的にワード線WLの主要部WLyとなる。
【0201】
タングステン膜64の形成後に、結晶化アニールを行う。結晶化アニールにより、酸化ハフニウム膜56が強誘電体となる。
【0202】
以上の製造方法により、第5の実施形態の半導体記憶装置が製造される。
【0203】
第5の実施形態の半導体記憶装置は、ゲート絶縁層12と界面絶縁層14との間に導電層20が設けられる。第5の実施形態の半導体記憶装置は、導電層20は、ゲート絶縁層12を間に挟んでワード線WLとz方向に対向する。したがって、第4の実施形態の半導体記憶装置と同様、結晶グレインの分極状態のばらつきを更に平均化することが可能となる。よって、第4の実施形態の半導体記憶装置と同様、メモリセルトランジスタMTの閾値電圧のばらつきが抑制される。また、第4の実施形態の半導体記憶装置と同様、分極状態の反転に伴うメモリセルトランジスタMTの閾値電圧の変動も抑制される。
【0204】
以上、第5の実施形態の半導体記憶装置によれば、導電層を設けることで、メモリセルトランジスタの閾値電圧のばらつき及び変動が抑制される。よって、安定動作する半導体記憶装置が実現できる。
【0205】
第1ないし第5の実施形態では、ワード線WLが、板状の導電体であり、半導体層10がワード線WLに囲まれる場合を例に説明した。しかし、例えば、ワード線WLがy方向に延びる線状であり、半導体層10の一部とワード線WLが対向するメモリセルアレイ構造とすることも可能である。半導体層10の内側にz方向に延びる絶縁層が設けられ、この絶縁層が半導体層10によって取り囲まれる構造であっても良い。この絶縁層の材料としては、例えば酸化シリコン等が用いられる。
【0206】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。例えば、一実施形態の構成物質を他の実施形態の構成物質と置き換え又は変更してもよい。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0207】
10 半導体層
12 ゲート絶縁層
12a 第1の領域
12b 第2の領域
12c 第3の領域
14 界面絶縁層(第1の絶縁層、絶縁層)
18 第2の層間絶縁層(第2の絶縁層)
20 導電層(第2の部分)
20a 第1の端部(第1の部分)
20b 第2の端部(第3の部分)
20c 中央部(第2の部分)
WL ワード線(ゲート電極層)
WLxa 第1の端部(第4の部分)
WLxb 第2の端部(第5の部分)
WL1 第1のワード線(第1のゲート電極層、ゲート電極層)
WL1a 幅広部分(第1の部分、第6の部分)
WL1b 幅狭部分(第2の部分、第7の部分)
WL2 第2のワード線(第2のゲート電極層)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34