(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022145056
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】テンプレート、テンプレートの製造方法、パターン形成方法、半導体装置の製造方法、テンプレート測定装置、および、テンプレート測定方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20220926BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20220926BHJP
B29C 59/02 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
G03F7/20 504
G03F7/20 505
B29C59/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021046305
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(72)【発明者】
【氏名】高居 康介
(72)【発明者】
【氏名】金光 真吾
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 典子
【テーマコード(参考)】
2H197
4F209
5F146
【Fターム(参考)】
2H197AA26
2H197AA29
2H197AB15
2H197CA07
2H197CA09
2H197HA10
2H197JA12
2H197JA15
4F209AA44
4F209AF01
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4F209PA02
4F209PB01
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5F146AA09
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5F146DA30
5F146EA18
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5F146EA26
5F146EB02
(57)【要約】
【課題】適切にパターンを形成することができるテンプレート、テンプレートの製造方法、パターン形成方法、半導体装置の製造方法、テンプレート測定装置、および、テンプレート測定方法を提供する。
【解決手段】本実施形態によるテンプレートは、半導体製造工程のリソグラフィ工程に用いられるテンプレートである。第1基板は、第1面と、該第1面の一部から突出している第2面と、第2面と第1面との間に位置する側面であって第2面との接続部において第2面に対して傾斜する側面とを含む。導電膜は、少なくとも第1面上に設けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体製造工程のリソグラフィ工程に用いられるテンプレートであって、
第1面と、該第1面の一部から突出している第2面と、前記第2面と前記第1面との間に位置する側面であって、前記第2面との接続部において前記第2面に対して傾斜する第1側面と、を含む第1基板、および、
少なくとも前記第1側面に設けられた材料膜を備える、テンプレート。
【請求項2】
前記第2面に対して前記側面の傾斜角は20度より大きく、かつ、80度未満である、請求項1に記載のテンプレート。
【請求項3】
前記側面は、前記第2面の外周の一部分に繋がる第1側面部分において前記第2面に対して傾斜する、請求項1または請求項2に記載のテンプレート。
【請求項4】
前記材料膜は、導電膜であって、前記第1側面部分において、前記第2面、前記側面および前記第1面上に電気的に接続されている、請求項3に記載のテンプレート。
【請求項5】
半導体製造工程のリソグラフィ工程に用いられるテンプレートであって、
第1面と、該第1面の一部から突出している第2面と、前記第2面と前記第1面との間を繋ぐ側面とを含む第1基板を備え、
前記側面は、
前記第1面に繋がっており、前記第1面に対して第1角度で傾斜する第1傾斜面と、
前記第2面に繋がっており、前記第2面に対して第2角度で傾斜する第2傾斜面と、
前記第1傾斜面と前記第2傾斜面との間に設けられ、前記第1面または前記第2面に対する角度が前記第1または第2角度よりも小さいステップ面とを含む、テンプレート。
【請求項6】
前記第1基板は、前記リソグラフィ工程における転写パターンを前記第1面に有する、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のテンプレート。
【請求項7】
半導体製造工程のリソグラフィ工程に用いられるテンプレート製造方法であって、
請求項1または請求項5に記載のテンプレートの導電膜上にレジスト膜を形成し、
前記レジスト膜を所望のパターンに加工し、
前記レジスト膜に電子線を照射し、
前記レジスト膜をマスクとして用いて前記導電膜を加工し、
前記導電膜をマスクとして用いて前記第1基板を加工する、ことを具備するテンプレートの製造方法。
【請求項8】
請求項1または請求項5に記載のテンプレートの前記第1面を転写対象に接触させ、
前記転写対象を硬化させ、
前記テンプレートの前記第1面を前記転写対象から離す、ことを具備するパターン形成方法。
【請求項9】
基板上にレジスト膜を形成し、
請求項1または請求項5に記載のテンプレートの前記第1面を前記レジスト膜に接触させ、
前記レジスト膜を硬化させ、
前記テンプレートの前記第1面を前記レジスト膜から離す、ことを具備する半導体装置の製造方法。
【請求項10】
テンプレートを保持する保持部と、
前記テンプレート上の導電膜に電気的に接続可能な第1電極部と、
前記保持部に設けられ、前記テンプレートの前記第2面とは反対側の第3面側に配置される第2電極部と、
前記第1電極部と前記第2電極部との間に電力を印加する電源と、
前記導電膜と前記第2電極部との間のインピーダンスを測定する測定部と、を備える測定装置。
【請求項11】
テンプレートを保持する保持部と、第1電極部と、前記保持部に設けられた第2電極部と、前記第1電極部と前記第2電極部との間に交流電圧を印加する電圧源と、を備える測定装置を用いた測定方法であって、
前記保持部に前記テンプレートを載置し、
前記テンプレートの前記導電膜に前記第1電極部を電気的に接続し、
前記第1電極部と前記第2電極部との間に電力を印加し、
前記導電膜と前記第2電極部との間のインピーダンスを測定する、ことを具備する測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、テンプレート、テンプレートの製造方法、パターン形成方法、半導体装置の製造方法、テンプレート測定装置、および、テンプレート測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
NIL(Nano Imprint Lithography)に用いられるテンプレート用基板は、その表面に段差を有する場合がある。この場合、基板からテンプレートを作成する際に、基板の表面の段差がテンプレートのパターン形成に悪影響を及ぼすおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許登録第6596136号公報(米国特許公開第2019/0101822号公報)
【特許文献2】特許登録第6167609号公報
【特許文献3】特開2019-165095号公報(米国特許公開第2019/0287794号公報)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
適切にパターンを形成することができるテンプレート、テンプレートの製造方法、パターン形成方法、半導体装置の製造方法、テンプレート測定装置、および、テンプレート測定方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態によるテンプレートは、半導体製造工程のリソグラフィ工程に用いられるテンプレートである。第1基板は、第1面と、該第1面の一部から突出している第2面と、第2面と第1面との間に位置する側面であって第2面との接続部において第2面に対して傾斜する側面とを含む。導電膜は、少なくとも第1面上に設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態によるテンプレート用基板の構成例を示す断面図。
【
図2】第1実施形態によるテンプレート用基板の構成例を示す平面図。
【
図3】第1実施形態によるテンプレートの製造方法の一例を示す断面図。
【
図4】
図3に続く、テンプレートの製造方法の一例を示す断面図。
【
図5】
図4に続く、テンプレートの製造方法の一例を示す断面図。
【
図6】
図5に続く、テンプレートの製造方法の一例を示す断面図。
【
図7】
図6に続く、テンプレートの製造方法の一例を示す断面図。
【
図8】
図7に続く、テンプレートの製造方法の一例を示す断面図。
【
図9】
図8に続く、テンプレートの製造方法の一例を示す断面図。
【
図10】
図9に続く、テンプレートの製造方法の一例を示す断面図。
【
図11】
図10に続く、テンプレートの製造方法の一例を示す断面図。
【
図12】
図11に続く、テンプレートの製造方法の一例を示す断面図。
【
図13】
図12に続く、テンプレートの製造方法の一例を示す断面図。
【
図14】
図13に続く、テンプレートの製造方法の一例を示す断面図。
【
図15】
図14に続く、テンプレートの製造方法の一例を示す断面図。
【
図16】
図15に続く、テンプレートの製造方法の一例を示す断面図。
【
図17】
図16に続く、テンプレートの製造方法の一例を示す断面図。
【
図18】
図17に続く、テンプレートの製造方法の一例を示す断面図。
【
図19】
図18に続く、テンプレートの製造方法の一例を示す断面図。
【
図20】
図19に続く、テンプレートの製造方法の一例を示す断面図。
【
図21】第2実施形態によるテンプレート用基板の構成例を示す断面図。
【
図22】第2実施形態によるテンプレート用基板の構成例を示す平面図。
【
図23】導電膜3を有するテンプレート用基板の構成例を示す断面図。
【
図24】第3実施形態によるテンプレート用基板の構成例を示す断面図。
【
図25】第3実施形態によるテンプレート用基板の製造方法の一例を示す断面図。
【
図26】第3実施形態によるテンプレート用基板の製造方法の一例を示す断面図。
【
図27】第3実施形態によるテンプレート用基板の製造方法の一例を示す断面図。
【
図28】第3実施形態によるテンプレート用基板の製造方法の一例を示す断面図。
【
図29】第4実施形態によるテンプレートの構成例を示す断面図。
【
図30】第5実施形態によるテンプレートの構成例を示す断面図。
【
図31】第6実施形態によるテンプレートの構成例を示す断面図。
【
図32】第7実施形態によるパターン形成方法の一例を示す断面図。
【
図33】
図32に続く、テンプレートの製造方法の一例を示す断面図。
【
図34】
図33に続く、テンプレートの製造方法の一例を示す断面図。
【
図35】テンプレート用基板の測定装置の一例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。図面は模式的または概念的なものであり、各部分の比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。明細書と図面において、既出の図面に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態によるテンプレート用基板1の構成例を示す断面図である。
図2は、第1実施形態によるテンプレート用基板1の構成例を示す平面図である。尚、テンプレート用基板1の主面F1に対して垂直方向をZ方向とする。Z方向に対して直交する方向をX方向とし、Z方向およびX方向に直交する方向をYとする。
【0009】
テンプレート用基板1は、NIL(Nano Imprint Lithography)で用いられるテンプレート(レプリカテンプレート)の基板であり、所謂パターンが形成される前のテンプレートである。レプリカテンプレートは、半導体ウェハのリソグラフィ工程において、パターンを転写するために用いられる、所謂パターンが形成されたテンプレートである。テンプレート用基板1には、例えば、石英等の透光性材料が用いられる。テンプレートは、例えば、半導体製造工程のリソグラフィ工程において、微細パターンを半導体基板(図示せず)上のレジスト膜に転写するために用いられる。
【0010】
テンプレートは、転写パターンを有する面がそれ以外の面よりも突出したメサ構造を有する。これは、半導体ウェハのレジストにパターンを転写する際に、転写パターン以外の領域においてテンプレートがレジストに接触することを抑制するためである。従って、テンプレートのもととなるテンプレート用基板1も、同様にメサ構造を有する。
【0011】
図1に示すように、テンプレート用基板1は、第1基板としての基板2と、導電膜3とを備える。基板2は、主面F1と、突出面F2と、側面F3とを備える。基板2には、例えば、石英等の透光性材料が用いられる。第1面としての主面F1は、X-Y面に対して略平行な平坦面である。第2面としての突出面F2は、主面F1の中心部からZ方向に突出しており、主面F1と同様に、X-Y面に対して略平行な平坦面である。側面F3は、主面F1と突出面F2との間を繋ぐ面であり、
図2に示すように、突出面F2の外周に沿って設けられている。側面F3は、少なくとも突出面F2との接続部において突出面F2に対して傾斜する。このように、基板2は、突出面F2が主面F1から突出した、所謂、メサ構造を有する。
【0012】
導電膜3は、主面F1、突出面F2および側面F3上を被覆するように設けられている。突出面F2上の導電膜3は、主面F1上の導電膜3と側面F3上の導電膜3を介して電気的に接続されている。側面F3は、
図1に示すように、突出面F2および主面F1に対して傾斜しているので、導電膜3の材料は、Z方向から異方的にスパッタされても側面F3上に十分に成膜可能である。導電膜3には、例えば、クロム等の導電性金属が用いられる。
【0013】
図2に示すように、Z方向から見た平面視において、主面F1および突出面F2は、例えば、略四角形を有し、略正方向または略長方形を有する。側面F3は、突出面F2の外周に沿って突出面F2を囲むように設けられるので、略四角形の枠形状を有する。また、側面F3は、突出面F2に対して傾斜するので、Z方向からの平面視においてその全体が見えている。
【0014】
また、本実施形態において、導電膜3は、主面F1、突出面F2および側面F3上を全体的に被覆している。導電膜3は、突出面F2の外周全体において側面F3上に設けられており、突出面F2から主面F1に亘って設けられている。主面F1の導電膜3の一部には、電極4が接続されており、導電膜3をグランド(基準電位源)に接続することができる。これにより、突出面F2上の導電膜3にチャージされた電荷は、側面F3上の導電膜3を介して主面F1上電極4からグランドへ逃がすことができる。
【0015】
もし、側面F3が突出面F2または主面F1に対してほぼ垂直面または逆テーパー面を含む場合、導電膜3の材料は、側面F3のうちその垂直面上にはほとんど形成されない。この場合、突出面F2上の導電膜3は、主面F1上の導電膜3と電気的に切断されてしまい、突出面F2上の導電膜3にチャージされた電荷を逃がすことができなくなる。
【0016】
テンプレート用基板1の突出面F2に転写パターンを形成するために、突出面F2上にレジスト膜(図示せず)が塗布される。レジスト膜には、マスタテンプレートを用いてパターンを転写した後、EB(Electron Beam)を照射する。EB照射により、レジスト膜を改質させ、ドライエッチングにおけるレジスト膜の耐加工性を向上させることができる。しかし、このEB露光の電荷が突出面F2上の導電膜3に蓄積され意図しない放電が生じると、テンプレート用基板1が損傷するおそれがある。
【0017】
これに対し、本実施形態では、側面F3が主面F1および突出面F2に対して順テーパー状に傾斜しており、導電膜3によって被覆されている。これにより、突出面F2上の導電膜3は、側面F3上の導電膜3を介して主面F1上の導電膜3に電気的に接続されるので、突出面F2上の導電膜3にチャージされた電荷は、電極4からグランドへ放出することができる。その結果、突出面F2上の導電膜3はチャージアップしないので、上記レジスト膜にEBを充分に照射し、レジスト膜のエッチング耐性を向上させることができる。
【0018】
図1に示すように、主面F1と突出面F2は平行面であり、側面F3は主面F1と突出面F2をつなぐ線上となっている。ここで、側面F3の傾斜角(メサ角)は、YまたはX方向から見た側面F3に対する接線と、突出面F2とのなす角のうち最大値とする。
図1の例では、側面F3の接線はF3a、F3b、F3cを例示したが、側面F3の全ての接線のうち、突出面F2とのなす角が最大となるのはF3bであり、この角度を傾斜角θと定義する。
【0019】
また、例えば、YまたはX方向から見た側面F3が複数の斜辺で構成されている場合、側面F3の傾斜角(メサ角)θは、それらの斜辺のうち主面F1または突出面F2に対して傾斜の最も大きな角とする。YまたはX方向から見た側面F3が曲線で構成されている場合、側面F3の傾斜角(メサ角)θは、側面F3に対する接線と主面F1または突出面F2との成す角のうち最大値とする。
【0020】
側面F3が順テーパー面であるためには、側面F3の傾斜角θは、0度より大きく、かつ、90度より小さい必要がある。導電膜3が側面F3を充分に被覆するためには、側面F3の傾斜角は、20度~80度であることが好ましい。より好ましくは、側面F3の傾斜角は、30度~70度である。また、側面F3は、傾斜角θが上記範囲内であれば、曲面で構成されていてもよい。順テーパーは、換言すると、
図1に示すように、突出面F2に対して垂直断面において、側面F3は突出面F2から主面F1に近づくに従って突出面F2の中心から外方へ広がっている状態を示す。
【0021】
このように、側面F3の傾斜角を上記範囲内にすることによって、側面F3が導電膜3によって十分に被覆され、突出面F2上の導電膜3を主面F1上の電極4に電気的に接続することができる。これにより、突出面F2上の導電膜3の電荷を、電極4からグランドへ逃がすことができる。
【0022】
次に、テンプレートの製造方法を説明する。
【0023】
図3~
図20は、第1実施形態によるテンプレートの製造方法の一例を示す断面図である。まず、主面F1が平坦な基板2を準備する。
図3に示すように、基板2の主面F1上にマスク材101を形成する。基板2には、例えば、石英等の透光性材料が用いられる。基板2の厚みは、例えば、約6.35mmである。マスク材101には、例えば、クロム等のエッチング耐性の高い材料が用いられる。マスク材101の厚みは、例えば、約100nmである。
【0024】
次に、
図4に示すように、リソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて、マスク材101を加工する。例えば、マスク材101上にレジスト膜(図示せず)を形成し、レーザ描画法、電子線描画法またはフォトリソグラフィ法等を用いて、レジスト膜をパターニングする。次に、レジスト膜をマスクとして用いて、ドライエッチング法、あるいは、硝酸セリウム水溶液等を用いたウェットエッチング法でマスク材101を加工する。これにより、
図4に示す構造が得られる。このときマスク材101は、その外縁が、突出面F2の外側に位置するように加工される。
【0025】
レジスト膜を除去した後、マスク材101をマスクとして用いて、DHF(Diluted HydroFluoric acid)またはBHF(Buffered HydroFluoric acid)等のエッチング液で基板2を加工する。このとき、基板2は、等方的にエッチングされ、主面F1がZ方向にエッチングされるとともに、XおよびY方向にもエッチングされる。これにより、基板2は、マスク材101の下部にも入り込むようにエッチングされ、側面F3が順テーパー面として形成される。例えば、20%に希釈したDHF溶液を用いて、約100分間エッチングした場合、主面F1に対する突出面F2の高さが約30μmとなり、側面F3の傾斜角は、約45度となった。また、例えば、BHF溶液を用いて、約100分間エッチングした場合、主面F1に対する突出面F2の高さが約30μmとなり、側面F3の傾斜角は、約85度となった。このように、側面F3の傾斜角は、マスク材101の材料、エッチング液の種類、濃度等を変更することによって制御することができる。本実施形態では、側面F3の傾斜角は、エッチング液を変えることにより調整可能であるが、必要に応じて、基板2とマスク材101との間にシリコン酸化膜等の犠牲層(図示せず)を介在させてもよい。犠牲膜と基板2とのエッチングレートの差を利用して、側面F3の傾斜角を制御してもよい。
【0026】
次に、マスク材101を剥離し、基板2を洗浄する。これにより、
図6に示すようなメサ構造を有する基板2が形成される。基板2は、主面F1から突出する突出面F2を有し、主面F1と突出面F2との間の側面F3が突出面F2に対して傾斜する。
【0027】
次に、機械研磨を用いて基板2の主面とは反対側の裏面を加工し、
図7に示すように、コアアウト7を形成する。コアアウト7は、基板2の裏面の中心部をくり抜いた凹部である。
図1に示すように、コアアウト7は、テンプレート用基板1には必ずしも設けられていなくてもよく、テンプレート用基板1からテンプレートを作成する際に形成してもよい。
【0028】
次に、
図7に示すように、反応性スパッタ法等を用いて、主面F1、突出面F2および側面F3上に、導電膜3を形成する。導電膜3は異方的に成膜されるが、側面F3が傾斜しているので、導電膜3は、主面F1、突出面F2および側面F3の全体を被覆するように形成され得る。導電膜3は、例えば、厚み約3nmのクロム膜でよい。反応性スパッタは、異方性成膜法であるため、平坦な主面F1または突出面F2と傾斜する側面F3との間で導電膜3の膜厚が異なる。従って、主面F1および突出面F2上の導電膜3の厚みが約3nmであるのに対し、側面F3上の導電膜3の厚みは3nm未満となる。例えば、側面F3の傾斜角が45度である場合、突出面F2上の導電膜3と電極4との間の抵抗値は、200キロオームであった。これに対し、側面F3の傾斜角が85度である場合、突出面F2上の導電膜3と電極4との間の抵抗値は、20メガオームであった。このように、側面F3の傾斜角が80度を超えると、突出面F2上の導電膜3と電極4との間の抵抗値がかなり上昇することが分かった。従って、本実施形態では、側面F3の傾斜角は、80度以下であることが好ましい。一方、側面F3の傾斜角が20度未満の場合、突出面F2は、主面F1から十分に突出せず、メサ構造として不十分となる。この場合、隣接する他の転写パターンに影響する可能性があるため、NILのテンプレートとしての機能が得られなくなるおそれがある。従って、側面F3の傾斜角は、20度~80度であることが好ましい。
【0029】
また、突出面F2上の導電膜3と電極4との間の抵抗値を200キロオームより低くし、かつ、隣接する転写パターン間の間隔を狭くするために、側面F3の傾斜角は、30度~70度、さらには、40度~60度にしてもよい。
【0030】
このようにして、
図1に示すテンプレート用基板1が完成する。
【0031】
続いて、
図7(
図1)に示すテンプレート用基板1を用いてパターンが形成されたテンプレートを作成する工程を説明する。
【0032】
突出面F2上の導電膜3上にレジスト膜102を形成し、NIL法によりレジスト膜102にマスタテンプレート606のパターンを転写する。例えば、NIL用レジスト膜102の材料を突出面F2の上方から導電膜3へ滴下する。次に、突出面F2上の導電膜3へマスタテンプレート606を押し付け、
図8に示すように、マスタテンプレート606のパターンを突出面F2上の導電膜3へ転写する。
【0033】
次に、UV(Ultra Violet)光を照射してNIL用レジストを硬化させたのち、マスタテンプレート606をレジスト膜102から引き離す。これにより、
図9に示す構造が得られる。尚、マスタテンプレート606と導電膜3との接触を避けるために、マスタテンプレート606にレジスト膜102の一部を残してもよい。
【0034】
次に、
図10に示すように、レジスト膜102にEBを照射してレジスト膜102を改質させる。例えば、真空中に基板2を配置し、直上の電子銃から突出面F2の上方のレジスト膜102に対してEBを照射する。この手法を「EBキュア」とも称する。このとき、電極4はプローブを介して接地されており、電極4と電気的に接続された導電膜3に照射された電荷または電子は、電極4およびプローブを介してグランドへ放出される。側面F3の傾斜角が20度~80度である場合、突出面F2上の導電膜3は、側面F3上の導電膜3を介して主面F1上の導電膜3および電極4(
図2参照)に電気的に低抵抗で接続される。従って、EB照射の電荷は突出面F2上の導電膜3に蓄積されない。
【0035】
もし、側面F3の傾斜角が80度を超えている場合、突出面F2上の導電膜3と電極4との間の抵抗値が高くなり、導電膜3はチャージアップするおそれがある。これにより導電膜3が放電すると、基板2が損傷するおそれがある。
【0036】
これに対し、本実施形態によれば、突出面F2上の導電膜3の電荷をグランドへ逃がすことができる。これにより、基板2を損傷することなく、テンプレートを形成することができる。
【0037】
次に、ドライエッチング法を用いて、レジスト膜102のパターンを導電膜3に転写する。次に、導電膜3をハードマスクとして用いてドライエッチング法で基板2を加工する。これにより、
図11に示す構造が得られる。このとき、レジスト膜102がEB露光によって十分に改質されていない場合(例えば、側面F3の傾斜角が80度を超えている場合)、レジスト膜102のパターンが加工途中で消失してしまい、該パターンが導電膜3に正確に転写されなくなってしまう。これに対し、レジスト膜102がEB露光によって十分に改質されている場合(例えば、側面F3の傾斜角が80度未満の場合)、レジスト膜102のパターンが導電膜3および基板2に正確に転写され得る。
【0038】
次に、
図12に示すように、ハードマスクとしての導電膜3が剥離され、洗浄される。これにより、テンプレートの突出面F2にパターンが形成される。次に、必要に応じてテンプレートのパターンの計測および検査が実施される。
なお、
図11および
図12に示す工程の後に、突出面F2に形成されたパターンを覆いつつ、突出面F2の外周部を露出させたマスクをさらに形成し、突出面F2の外周部を部分的にエッチングしてもよい。これにより、側面F3の上部が部分的にエッチングされ、複数の面を有する側面が形成される。すなわち、多段のメサ構造が形成される。
【0039】
次に、
図13に示すように、テンプレート用基板1の主面F1、突出面F2および側面F3上に遮光膜5の材料を成膜する。遮光膜5の材料には、例えば、クロム等の遮光性導電材料が用いられる。遮光膜5の材料は、例えば、120nmの厚みのクロム膜でもよい。このとき、遮光膜5の材料は、突出面F2上のパターンの上面および底面にも成膜される。
【0040】
次に、主面F1、突出面F2および側面F3上にレジスト膜103を塗布し、レーザ描画法を用いて、突出面F2上のレジスト膜103および側面F3上のレジスト膜103の一部を描画し、現像する。これにより、
図14に示すように、レジスト膜103がパターニングされて、突出面F2上の遮光膜5の材料および側面F3の一部(上部)の遮光膜5の材料が露出される。
【0041】
次に、レジスト膜103をマスクとして用いて、ドライエッチング法で遮光膜5の材料を加工する。これにより、
図15に示すように、突出面F2上の遮光膜5の材料および側面F3の一部(上部)の遮光膜5の材料を除去する。突出面F2のパターン上に堆積された遮光膜5の材料も除去される。よって、遮光膜5は、側面F3の途中から下部と主面F1上に残置される。
【0042】
次に、
図16に示すように、主面F1、突出面F2および側面F3上にマーク膜6を堆積する。マーク膜6は、突出面F2および側面F3の一部(上部)の上、並びに、遮光膜5の上に形成される。マーク膜6は、突出面F2のパターンの上面および底面にも形成される。マーク膜6には、例えば、クロム等の遮光性導電材料が用いられる。マーク膜6の材料は、例えば、約10nmの厚みのクロム膜でよい。マーク膜6は、半導体ウェハにパターンを転写する際に必要なアライメントマークとなる。
【0043】
突出面F2および側面F3の上部のマーク膜6上にレジスト膜104を形成し、NIL法によりレジスト膜104にマスタテンプレート607のパターンを転写する。例えば、NIL用レジスト膜104の材料を突出面F2の上方からマーク膜6へ滴下する。このとき、レジスト膜104の材料は、突出面F2および側面F3のうち遮光膜5の無い領域に滴下される。レジスト膜104の材料は、側面F3上の遮光膜5の端部に或る程度重複して設けられてもよい。
【0044】
次に、突出面F2および側面F3の上のレジスト膜104へマスタテンプレート607を押印し、
図17に示すように、マスタテンプレート607のパターンを突出面F2上の導電膜3へ転写する。アライメントマークとなるパターンの端部にレジスト膜104を残置させるために、マスタテンプレート607は、突出面F2のパターンの中心部に相当する位置に凸部を有する。
【0045】
次に、UV光を照射してレジスト膜104を硬化させたのち、マスタテンプレート607をレジスト膜104から引き離す。これにより、
図18に示す構造が得られる。レジスト膜104は、側面F3の上部から突出面F2のパターンのうちアライメントマークに用いられる端部パターンPEに亘って厚く形成され、端部パターンPE以外のパターン領域には比較的薄く形成される。
【0046】
次に、
図19に示すように、レジスト膜104をエッチバックする。これにより、レジスト膜104は、端部パターンPEおよび側面F3の上部に残り、端部パターンPE以外のパターン領域から除去される。
【0047】
次に、レジスト膜104をマスクとして用いて、マーク膜6をドライエッチング法で加工する。これにより、
図20に示すように、マーク膜6が、端部パターンPEおよび側面F3のうち遮光膜5から露出されている領域に残置される。マーク膜6が、突出面F2の中心部のパターン領域からは除去される。これにより、
図20に示すように、端部パターンPEにマーク膜6を残置させるとともに、側面F3および主面F1を遮光膜5またはマーク膜6で被覆することができる。マーク膜6には、例えば、クロムが用いられるので、マーク膜6は、遮光膜としても機能し得る。これにより、本実施形態によるテンプレート10が完成する。
【0048】
テンプレート10は、図示しない半導体ウェハ上に塗布されたNIL用レジスト膜に押し付けられる。このとき、UVを照射してレジスト膜を硬化させ、その後、テンプレート10をレジスト膜から離す。このような転写処理により、突出面F2のパターンがレジスト膜に転写される。この転写処理を繰り返し実行することによって、同じパターンを半導体ウェハ上のレジスト膜に転写することができる。
【0049】
ここで、転写処理を繰り返すと、レジスト膜とテンプレート10との摩擦により、静電気が発生する。本実施形態によるテンプレート10は、側面F3および主面F1が導電性の遮光膜5およびマーク膜6で被覆されている。これにより、静電気の電荷は、遮光膜5およびマーク膜6を介して電極4からグランドへ放出することができる。よって、テンプレート10におけるチャージアップが抑制され、テンプレート10の寿命を長くすることができる。
【0050】
尚、遮光膜5とマーク膜6には、同じ材料(例えば、クロム)が用いられているが、これに限定されず、遮光膜5とマーク膜6には導電性の異種材料が用いられてもよい。
【0051】
(第2実施形態:テンプレート用基板1)
図21は、第2実施形態によるテンプレート用基板1の構成例を示す断面図である。
図22は、第2実施形態によるテンプレート用基板1の構成例を示す平面図である。
図21は、
図22のA-A線に沿った断面を示す。
図23は、導電膜3を有するテンプレート用基板1の構成例を示す断面図である。
【0052】
第2実施形態では、
図22に示すように、側面F3は、突出面F2の外周の一部分に繋がる側面部分F3_1において突出面F2または主面F1に対して順テーパー状に傾斜している。即ち、側面部分F3_1における傾斜角度θ2は、20度~80度である。一方、側面部分F3_1以外の側面部分F3_2は、突出面F2または主面F1に対して略垂直または逆テーパーとなっている個所を含む。
【0053】
このようなテンプレート用基板1では、
図23に示すように、導電膜3は、側面部分F3_2には成膜されない場合があるが、順テーパー状の傾斜面になっている側面部分F3_1には成膜される。従って、突出面F2上の導電膜3は、側面部分F3_1上の導電膜3を介して主面F1上の導電膜3に連続的にかつ電気的に接続される。これにより、
図10を参照して説明したEB照射による電荷は、突出面F2上の導電膜3から側面部分F3_1上の導電膜3を介して主面F1上の電極4に排出され得る。
【0054】
第2実施形態のその他の構成は第1実施形態の対応する構成と同様でよい。これにより、第2実施形態は、第1実施形態のテンプレート用基板1と同様の効果を得ることができる。
【0055】
(第3実施形態:テンプレート用基板1)
図24は、第3実施形態によるテンプレート用基板1の構成例を示す断面図である。第3実施形態では、側面F3がステップ状に形成されており、複数の傾斜面で構成される。例えば、側面F3は、傾斜面F3_1と、傾斜面F3_2と、ステップ面F3sとを含む。傾斜面F3_1は、主面F1に繋がっており、主面F1の面に対して角度θ1で傾斜している。傾斜面F3_2は、突出面F2に繋がっており、突出面F2の面に対して角度θ2で傾斜している。ステップ面F3sは、傾斜面F3_1と傾斜面F3_2との間を接続しており、主面F1および突出面F2に対して略平行に近い面(平坦面)である。即ち、ステップ面F3sは、主面F1および突出面F2に対する角度が角度θ1およびθ2よりも小さい。これにより、側面F3は、傾斜面F3_1、ステップ面F3s、傾斜面F3_2のように、異なる複数の角度で傾斜する(または平坦な)複数の面で構成される。尚、
図24では図示しないが、テンプレートのパターンの計測および検査を行う場合、
図23で示した導電膜3が
図24のテンプレート用基板1上にも設けられている。
【0056】
角度θ1、θ2は、等しくてもよいが、互いに異なっていてもよい。角度θ2が角度θ1より小さいと、半導体基板のNIL工程において半導体基板上のレジストと接触する箇所が増え、転写パターン(ショット)間の距離を大きくする必要がある。転写パターン(ショット)間の距離を小さくするために。角度θ2は、角度θ1より大きくすることが好ましい。角度θ1は、例えば、20度~60度であり、角度θ2は、例えば、40度~80度である。その理由は第1実施形態と同様に、導電膜3の抵抗値をより低くし、かつ、隣接する転写パターン間の間隔を狭くするためであり、転写パターン間距離に影響する角度θ2は比較的大きいことが好ましく、かつ、導電膜3の全体的な抵抗値を低くするため角度θ1は小さくすることが望ましい。
【0057】
また、主面F1からステップ面F3sまでの厚み(高さ)d1、および、ステップ面F3sから突出面F2までの厚み(高さ)d2は、等しくてもよいが、互いに異なっていてもよい。
【0058】
第3実施形態のその他の構成は、第1実施形態の対応する構成と同様でよい。従って、第3実施形態も第1実施形態のテンプレート用基板1と同様の効果を得ることができる。
【0059】
次に、第3実施形態によるテンプレート用基板1の製造方法について説明する。
【0060】
図25~
図28は、第3実施形態によるテンプレート用基板1の製造方法の一例を示す断面図である。
【0061】
まず、基板2の主面F1上に犠牲層110を形成し、犠牲層110上にマスク材111を形成する。犠牲層110には、基板2およびマスク材111よりもエッチングレートの高い材料が用いられる。犠牲層110には、例えば、シリコン酸化膜等が用いられる。マスク材111には、エッチングレートが基板2よりも高く、かつ、犠牲層110よりも低い材料が用いられる。マスク材111には、例えば、クロム等の金属材料が用いられる。
【0062】
次に、リソグラフィ技術(例えば、レーザ描画法、電子線描画法またはフォトリソグラフィ法等)およびエッチング技術を用いて、マスク材111をメサ構造の形成領域のパターンに加工する。これにより
図25に示す構造が得られる。
【0063】
次に、マスク材111をマスクとして用いて、基板2および犠牲層110をDHFまたはBHFでウェットエッチングする。これにより、
図26に示すように、マスク材111の下の犠牲膜110が端部から等方的にエッチングされ、さらに犠牲膜110の下の基板2の主面F1も等方的にエッチングされる。マスク材111の下の基板2がエッチングされ、傾斜面F3_1が形成される。
【0064】
次に、リソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて、マスク材111を突出面F2の形成領域のパターンに加工する。このとき、Z方向から見た平面視において、マスク材111の大きさは、ステップ面F3sの分だけ犠牲膜110よりも小さくする。これにより、
図27に示す構造が得られる。なお、本構造を得る際、マスク材111は一度目のウェットエッチング後に一旦全て除去した後、再度、基板2の上面全体にマスク材の材料を成膜し、この材料を突出面F2の形成領域のパターンに加工してマスク材111として形成しも構わない。
【0065】
次に、マスク材111をマスクとして用いて、基板2および犠牲層110をDHFまたはBHFで再度ウェットエッチングする。これにより、
図28に示すように、マスク材111の下の犠牲膜110が端部から等方的にエッチングされ、さらに犠牲膜110の下の基板2の主面F1も等方的にエッチングされる。マスク材111の下の基板2が等方的にエッチングされると、傾斜面F3_2が形成される。また、傾斜面F3_1とF3_2との間にステップ面F3sが形成される。
【0066】
その後、マスク材111および犠牲層110を除去することによって、第3実施形態によるテンプレート用基板1が完成する。
【0067】
尚、基板2とマスク材111との密着性が悪い場合、犠牲層110を省略しても、傾斜面F3_1、F3_2を形成可能である場合もある。第3実施形態は、他の実施形態に適用してもよい。
【0068】
(第4実施形態:テンプレート10)
図29は、第4実施形態によるテンプレート10の構成例を示す断面図である。第4実施形態では、側面F3に遮光膜5が設けられている。
図20のテンプレート10は、側面F3および主面F1上に遮光膜5またはマーク膜6を備えている。これに対し、第4実施形態のテンプレート10は、側面F3に遮光膜5が設けられ、主面F1には遮光膜5が設けられていない。
【0069】
この場合、半導体ウェハ上のレジスト膜にテンプレート10の突出面F2を押し付けて該レジスト膜にUV露光する際に、遮光膜5が傾斜面F3からのUV光を遮るので、突出面F2からのUV光のみをレジスト膜に照射することができる。これにより、隣接する他の転写パターンへUV光が漏洩することを抑制することができる。
【0070】
(第5実施形態:テンプレート10)
図30は、第5実施形態によるテンプレート10の構成例を示す断面図である。第5実施形態では、主面F1および側面F3に遮光膜5が設けられている。主面F1上の遮光膜5および側面F3上の遮光膜5は、連続しており、電気的に接続されている。これにより、半導体ウェハ上のレジスト膜からの電荷は、遮光膜5を介して電極4からグランドへ放出することができる。よって、テンプレート10におけるチャージアップが抑制され得る。
【0071】
また、第4実施形態と同様に、側面F3に遮光膜5が設けられているので、隣接する他の転写パターンの形成領域へのUV光の漏洩することを抑制することができる。
【0072】
(第6実施形態)
図31は、第6実施形態によるテンプレート10の構成例を示す断面図である。
図20または
図30に示すように、側面F3に遮光膜5またはマーク膜6が設けられている場合、遮光膜5またはマーク膜6の先端E5が、突出面F2よりもZ方向に突き出る場合がある。この場合、遮光膜5またはマーク膜6の先端E5が、NIL工程において半導体ウェハ上のレジスト膜を貫通して、半導体ウェハ上の構造に接触し、半導体ウェハ上の構造を損傷させるおそれがある。
【0073】
一方、遮光膜5またはマーク膜6の先端E5が突出面F2のパターンの底部よりもZ方向に低い位置にある場合、遮光膜5またはマーク膜6が半導体ウェハ上のレジスト膜に接触できないおそれがある。この場合、遮光膜5またはマーク膜6がレジスト膜からの電荷をグランドへ流すことができなくなる。
【0074】
従って、遮光膜5またはマーク膜6の先端E5は、突出面F2(転写パターンの上面)の高さレベルH1と転写パターンの底面の高さレベルH2との間に位置することが好ましい。これにより、遮光膜5またはマーク膜6は、半導体ウェハの構造を損傷することなく、レジスト膜に接触し、該レジスト膜からの電荷をグランドへ逃がすことができる。
【0075】
(第7実施形態:パターン形成方法)
図32~
図34は、第7実施形態によるパターン形成方法の一例を示す断面図である。第7実施形態では、NIL法を用いて、テンプレート10の転写パターンを半導体ウェハW上に設けられたレジスト膜106に転写する。
【0076】
まず、半導体ウェハW上にレジスト膜106を塗布する。
図32に示すように、テンプレート10のメサ構造を有する突出面F2をレジスト膜106に押し付ける。
【0077】
次に、
図33に示すように、UV生成装置200からUV光をレジスト膜106へ照射する。このとき、UV光は、テンプレート10の裏面側のコアアウト7から照射され、透光性の基板2を介してレジスト膜106に照射される。これにより、レジスト膜106が硬化される。このとき、遮光膜5またはマーク膜6は、電極4を介してグランドGNDに接続されており、接地されている。レジスト膜106とテンプレート10の基板2との間の静電気により発生する電荷は、遮光膜5またはマーク膜6を介してグランドへ放出される。よって、テンプレート10がチャージアップして破損することを抑制することができる。
【0078】
次に、
図34に示すように、テンプレート10をレジスト膜106から離す。このとき、レジスト膜106は硬化されているので、テンプレート10の転写パターンはレジスト膜106に転写される。この転写処理は、半導体ウェハWの表面の他のショット領域にも繰り返し実行(ステップ・アンド・リピート)される。
【0079】
このようなパターン形成方法は、半導体装置を製造するためのリソグラフィ工程に用いることができる。パターニングされたレジスト膜106をマスクとして用いてエッチング技術等で半導体ウェハWまたはその上の材料を所望のパターンに加工することができる。
【0080】
(第8実施形態:テンプレート用基板の測定装置および測定方法)
図35は、テンプレート用基板1の測定装置500の一例を示すブロック図である。測定装置500は、保持部501と、支持部502と、電極部503、504と、交流電圧源505と、測定演算部506とを備えたLCRメータである。測定装置500は、テンプレート用基板1の導電膜3と、テンプレート用基板1のコアアウト7の中心部に配置される電極部503との間のインピーダンスを測定する。これにより、突出面F2上の導電膜3が側面F3上の導電膜3を介して電極部504まで電気的に接続されているか否かを確認する。
【0081】
保持部501は、上記実施形態のいずれかによるテンプレート用基板1を保持可能に構成されている。例えば、テンプレート用基板1が突出面F2とは反対側の裏面F4にコアアウト(凹部)7を有する場合、保持部501は、コアアウト(凹部)7に対応する凸形状を有している。テンプレート用基板1のコアアウト7を保持部501の凸部に嵌めるようにテンプレート用基板1を載置することによって、テンプレート用基板1は、保持部501上の所定位置に固定される。これにより、テンプレート用基板1に対する電極部503の相対位置が固定され、上記インピーダンスを正確に測定することができる。従って、突出面F2上の導電膜3が電極部504まで電気的に接続されているか否かを正確に判断することができる。
【0082】
保持部501は、支持部502と、電極部503とを含む。支持部502は、テンプレート用基板1を裏面F4から支持する。支持部502には、例えば、樹脂等の絶縁材料が用いられる。電極部503は、保持部501の中心部にテンプレート用基板1の裏面F4の直下に対向するように配置されている。これにより、電極部503は、保持部501の中心部において、コアアウト7の中心部に向かって突出し、テンプレート用基板1の突出面F2上の導電膜3に近接するように配置される。これにより、導電膜3が側面F3上で電気的に接続されている場合の上記インピーダンスと、導電膜3が側面F3上で電気的に切断されている場合の上記インピーダンスとの差が大きく現れる。電極部503には、例えば、銅等の導電性金属材料が用いられる。電極部503は、支持部502の底面にも設けられていてもよい。ただし、支持部502の底面の電極部503の部分は省略してもよい。
【0083】
電極部504は、電極4を介して導電膜3に電気的に接続可能なプローブでよい。電極部504には、例えば、銅等の導電性金属材料が用いられる。
【0084】
電圧源505は、電極部503、504のそれぞれに電気的に接続されており、電極部503と電極部504との間に交流電圧を印加する。これにより、導電膜3と電極部503との間の容量に応じた交流電流が流れる。
【0085】
測定演算部506は、測定された交流電圧および交流電流から導電膜3と電極部503との間のインピーダンスを測定する。また、測定演算部506は、インピーダンスに基づいて、導電膜3と電極部503との間の静電容量を算出し、突出面F2上の導電膜3が電極4と電気的に接続されているか否かを判断する。例えば、突出面F2上の導電膜3が電極4と電気的に接続されている場合、導電膜3と電極部503との間の静電容量は、C1となる。例えば、突出面F2上の導電膜3が側面F3において電極4と電気的に切断されている場合、導電膜3と電極部503との間の静電容量は、C2(C2<C1)となる。測定演算部506は、静電容量C1とC2との差に基づいて、突出面F2上の導電膜3が電極4に電気的に接続されているか否かを判断することができる。測定演算部506は、例えば、CPUまたはコンピュータ等でよい。
【0086】
このインピーダンス測定は、
図7~
図9の工程のいずれかにおいて実行すればよい。例えば、
図7のテンプレート用基板1の突出面F2上の導電膜3上にレジスト膜102を形成し、
図9に示すように、リソグラフィ技術(NIL法、電圧選択描画法、フォトリソグラフィ法)を用いてレジスト膜102をパターニングする。次に、本実施形態によるリソグラフィ測定を実行し、その後、
図10に示すように、EBキュアを行う。これにより、突出面F2上の導電膜3が電極4に接続されていることを確認した後に、EBキュアを行うことができる。その結果、突出面F2上の導電膜3に電荷が蓄積することを抑制し、テンプレート用基板1が損傷することを抑制することができる。突出面F2上の導電膜3が電極4から電気的に切断されている場合には、EBキュアを行わないという判断もできる。
【0087】
その後、
図11~
図20を参照して説明した工程を経て、テンプレート10が完成する。尚、本実施形態において、交流電源を用いている。しかし、直流電源を用いて導電膜3と電極部503との間の静電容量に定電流を流し、静電容量の充電時間および放電時間を計測してもよい。これにより、測定演算部506は、充電時間または放電時間の長さに基づいて、導電膜3と電極部503との間の静電容量を判断することができる。測定演算部506は、充電時間または放電時間の長さに基づいて、突出面F2上の導電膜3が電極4に電気的に接続されているか否かを直接判断してもよい。
【0088】
上記実施形態のうち任意に選択した2つ以上の実施形態を組み合わせてもよい。
【0089】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0090】
1 テンプレート用基板、2 基板、3 導電膜、F1 主面、F2 突出面、F3 側面