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特開2022-145083プロピレン重合体組成物および発泡体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022145083
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】プロピレン重合体組成物および発泡体
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/10 20060101AFI20220926BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20220926BHJP
   C08J 9/04 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
C08L23/10
C08L23/08
C08J9/04 101
C08J9/04 CES
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021046337
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】597075823
【氏名又は名称】住化プラステック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】柴田 晟至
【テーマコード(参考)】
4F074
4J002
【Fターム(参考)】
4F074AA17
4F074AA24
4F074AA98
4F074AB05
4F074BA32
4F074BC13
4F074CA22
4F074DA02
4F074DA08
4F074DA33
4F074DA34
4F074DA35
4F074DA59
4J002BB05Y
4J002BB12W
4J002BB14X
4J002GG01
4J002GG02
4J002GL00
4J002GN00
(57)【要約】
【課題】発泡倍率が高く、耐衝撃性に優れたプロピレン系発泡体を提供する。
【解決手段】2種以上のプロピレン重合体成分と、温度190℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレートが10g/10分未満であり、密度が850~910kg/mであり、エチレン単量体単位と炭素原子数3~8のα-オレフィン単量体単位とを含むエチレン-α-オレフィン共重合体(3)とを含有し、温度230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレートが12~23g/10分であり、下記式(1)を満たすプロピレン重合体組成物。
MT≧7.52×MFR(-0.576)+1 (1)
(式中、MTは、温度190℃、引き取り速度15.7m/分で測定されるメルトテンション(g)を示す。MFRは、温度230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(g/10分)を示す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種以上のプロピレン重合体成分と、
温度190℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレートが10g/10分未満であり、密度が850~910kg/mであり、エチレン単量体単位と炭素原子数3~8のα-オレフィン単量体単位とを含むエチレン-α-オレフィン共重合体(3)とを含有し、
温度230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレートが12~23g/10分であり、
下記式(1)を満たすプロピレン重合体組成物。
MT≧7.52×MFR(-0.576)+1 (1)
(式中、
MTは、温度190℃、引き取り速度15.7m/分で測定されるメルトテンション(g)を示す。
MFRは、温度230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(g/10分)を示す。)
【請求項2】
プロピレン重合材料(1)を含み、
当該プロピレン重合材料(1)は、前記2種以上のプロピレン重合体成分として、プロピレン重合体成分(11)とプロピレン重合体成分(12)とを含み、
前記プロピレン重合体成分(11)は、極限粘度が6~15dL/gであり、
前記プロピレン重合体成分(12)は、極限粘度が0.5~1.3dL/gであり、
前記プロピレン重合材料(1)の温度230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレートが2~11g/10分である、請求項1に記載のプロピレン重合体組成物。
【請求項3】
前記プロピレン重合体成分(11)の含有量と、前記プロピレン重合体成分(12)の含有量と、前記エチレン-α-オレフィン共重合体(3)の含有量と、の合計100質量%に対して、
プロピレン重合体成分(11)の含有量が5~20質量%であり、
プロピレン重合体成分(12)の含有量が45~88質量%であり、
エチレン-α-オレフィン共重合体(3)の含有量が7~40質量%である、請求項2に記載のプロピレン重合体組成物。
【請求項4】
さらに、1種以上のプロピレン重合体成分を含み、温度230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレートが50g/10分以上であるプロピレン重合材料(2)を含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロピレン重合体組成物。
【請求項5】
前記プロピレン重合体成分(11)の含有量と、前記プロピレン重合体成分(12)の含有量と、前記プロピレン重合材料(2)の含有量と、前記エチレン-α-オレフィン共重合体(3)の含有量の合計100質量%に対して、
プロピレン重合体成分(11)の含有量が5~17質量%であり、
プロピレン重合体成分(12)の含有量が24~63質量%であり、
プロピレン重合材料(2)の含有量が25~54質量%であり、
エチレン-α-オレフィン共重合体(3)の含有量が7~25質量%である、請求項4に記載のプロピレン重合体組成物。
【請求項6】
下記式(2)で算出されるメルトテンション比が1.7未満である、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロピレン重合体組成物。
MT=MT/MT (2)
(式中、
MTは、プロピレン重合体組成物のメルトテンション比を示す。
MTは、引き取り速度28.3m/分で測定したプロピレン重合体組成物のメルトテンション(g)を示す。
MTは、引き取り速度3.2m/分で測定したプロピレン重合体組成物のメルトテンション(g)を示す。)
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のプロピレン重合体組成物を含有する発泡体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプロピレン重合体組成物および発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
プロピレン発泡体は、包装、通函、仕切り板、食品容器、文具、建材、自動車内装材等に使用されている。
【0003】
引用文献1には、Tダイを用いて共押出し法により得られた、プロピレン系樹脂発泡層の表面に樹脂層および樹脂層を有するプロピレン系樹脂製多層発泡シートにおいて、発泡層、樹脂層および樹脂層が、190℃におけるメルトテンション(MT(190))と230℃におけるメルトフローレート(MFR(230))とが、MT(190)≧7.52×MFR(230)(-0.576)を満足する直鎖状プロピレン系重合体を10質量%以上含んでいるプロピレン系樹脂製多層発泡シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-291626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような多層発泡シートにおいて、発泡倍率のさらなる高倍率化は軽量化やコスト低減につながるため、高いニーズがある。しかしながら、発泡のさらなる高倍率化は、発泡体の耐衝撃性の低下を引き起こすという点において、改善の余地があった。
【0006】
本発明の目的は、発泡倍率が高く、耐衝撃性に優れたプロピレン系発泡体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る2種以上のプロピレン重合体成分と、温度190℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレートが10g/10分未満であり、密度が850~910kg/mであり、エチレン単量体単位と炭素原子数3~8のα-オレフィン単量体単位とを含むエチレン-α-オレフィン共重合体(3)とを含有し、温度230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレートが12~23g/10分であり、下記式(1)を満たすプロピレン重合体組成物
MT≧7.52×MFR(-0.576)+1 (1)
(式中、MTは、温度190℃、引き取り速度15.7m/分で測定されるメルトテンション(g)を示す。MFRは、温度230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(g/10分)を示す。)
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、発泡倍率が高く、耐衝撃性に優れたプロピレン系発泡体が得られるプロピレン重合体組成物、およびその発泡体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔プロピレン重合体組成物〕
以下、本発明の一実施形態に係るプロピレン重合体組成物について、詳細に説明する。一実施形態に係るプロピレン重合体組成物は、2種以上のプロピレン重合体成分とエチレン-α-オレフィン共重合体(3)とを含有し、温度230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレートが12~23g/10分であり、下記式(1)を満たす。
【0010】
MT≧7.52×MFR(-0.576)+1 (1)
(式中、MTは、温度190℃、引き取り速度15.7m/分で測定されるメルトテンション(g)を示す。MFRは、温度230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(g/10分)を示す。)
【0011】
メルトテンションは、シリンダから押出された溶融樹脂を引き取るときに、当該溶融樹脂に加わる張力として評価される。メルトテンションは、溶融張力測定機を用いて測定できる。具体的には、溶融したプロピレン重合体組成物を、ロードセルを備えた滑車を通して、引き取りローラによって所定の速度で引き取り、このとき滑車に加わる荷重(g)をロードセルで測定することで求めることができる。メルトテンションは、シリンダによる溶融温度190℃の条件で評価する。
【0012】
メルトテンションは、プロピレン重合体組成物が溶融変形したときにおける硬さの程度を張力として求めるパラメータであり、プロピレン重合体組成物から発泡体を製造する際の気泡成長に影響する。たとえば、プロピレン重合体組成物は、押出機の内部にて溶融され、発泡ガスが混合された後、ダイから溶融押出され、引取りロールで引き取ることで発泡体に成形され得る。ここで、ダイから押出されたプロピレン重合体組成物は、冷却されつつ引取りロールによって引き取られ得る。このとき、プロピレン重合体組成物は、その内部に発泡ガスによる気泡が形成されつつ、延伸されることで発泡体が形成され得る。
【0013】
上記式(1)を満たす、プロピレン重合体組成物は、メルトフローレート(MFR)が所定の範囲内であることにより、発泡体製造時の気泡成長初期において、プロピレン重合体組成物内部において好適に気泡を発生させることができる。また、プロピレン重合体組成物は、15.7m/分という速い引き取り速度で測定したメルトテンションが上記式(1)を満たすことより、発泡体製造時の気泡成長末期において、気泡が過度に成長し、気泡破れが発生することを好適に防止できる。
【0014】
限定されるものではないが、上記MTは、2.2~6.0gであることが好ましく、2.3~4.5gであることがより好ましい。
【0015】
一実施形態に係るプロピレン重合体組成物は、温度230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレートが12~23g/10分であり、14~22g/10分であることがより好ましい。一実施形態に係るプロピレン重合体組成物は、温度230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレートが14.0~30.0g/10分の範囲内であり、上記式(1)を満たすことにより、発泡性が良好で、耐衝撃性に優れるプロピレン発泡体が得られるプロピレン重合体組成物とすることができる。以下、プロピレン発泡体のことを単に「発泡体」と称する場合がある。
【0016】
なお、「発泡倍率」は、水中置換法を用いた測定方法で、発泡体の密度を求め、発泡体の密度を未発泡のプロピレン重合体組成物の密度で除することで算出される発泡倍率のことを指す。発泡倍率が高いほど発泡性は良好である。
【0017】
発泡体の「耐衝撃性」とは、JIS K5600-5-3:1999に規定されるデュポン衝撃試験で評価できる。
【0018】
(メルトテンション比)
一実施形態メルトテンション比とは、下記式(1)で示す通り、28.3m/分の引取速度と、3.2m/分の引取速度でプロピレン重合体組成物を引き取った際のメルトテンションの比のことである。
【0019】
一実施形態に係るプロピレン重合体組成物は、下記式(2)で算出されるメルトテンション比が1.7未満であってもよい。
【0020】
MT=MT/MT (2)
(式中、MTは、プロピレン重合体組成物のメルトテンション比を示す。MTは、引き取り速度28.3m/分で測定したプロピレン重合体組成物のメルトテンション(g)を示す。MTは、引き取り速度3.2m/分で測定したプロピレン重合体組成物のメルトテンション(g)を示す。)
【0021】
一実施形態に係るプロピレン重合体組成物は、上記の式(1)の要件を満たし、式(2)に規定されたメルトテンション比が1.7未満であってもよい。一実施形態に係るプロピレン重合体組成物は、エチレン-α-オレフィン共重合体(3)の作用により、式(2)に規定されたメルトテンション比が1.7未満であっても、発泡体の製造時に気泡成長を好適に制御でき、高い発泡倍率が達成できるプロピレン重合体組成物とすることができる。また、エチレン-α-オレフィン共重合体(3)を含むことにより、発泡体に高い耐衝撃性を付与できる。
【0022】
一実施形態に係るプロピレン重合体組成物のメルトテンション比は1.1以上であることが好ましく、1.2以上であることがより好ましい。
【0023】
〔プロピレン重合体組成物に含まれる成分〕
(エチレン-α-オレフィン共重合体(3))
一実施形態に係るプロピレン重合体組成物が含むエチレン-α-オレフィン共重合体(3)は、エチレン単量体単位と炭素原子数3~8のα-オレフィン単量体単位とを含む、エチレン-α-オレフィン共重合体であるとよい。また、エチレン-α-オレフィン共重合体(3)は、温度190℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレートが10g/10分未満であるとよく、9g/10分未満であることが好ましい。密度が850~910kg/mであるとよい。
【0024】
このようなエチレン-α-オレフィン共重合体(3)は、プロピレン重合体組成物にガスを注入して発泡体を製造した場合に、気泡成長末期において、気泡成長を好適に抑制する作用がある。このため、発泡体製造時の気泡壁破れを防ぐことが可能である。また、上述の通り規定されたエチレン-α-オレフィン共重合体(3)を含むことにより、一実施形態に係るプロピレン重合体組成物を用いて高倍率化した発泡体を作製した場合であっても、耐衝撃性を向上させることができる。このような観点から、エチレン-α-オレフィン共重合体(3)は、温度190℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレートが10g/10分未満であるとよく、9g/10分未満であることが好ましい。エチレン-α-オレフィン共重合体(3)は、温度190℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレートが10g/10分未満として、よりメルトフローレートが低い程、気泡成長末期において、気泡成長を好適に抑制することができる。プロピレン重合体組成物は、式(1)の要件を満たし、所定のメルトフローレートを有するエチレン-α-オレフィン共重合体(3)を含むことにより、高い発泡倍率と、高い耐衝撃性という、一見、トレードオフの関係になり得る2つ特性を兼ね備える発泡体を製造できる。
【0025】
α-オレフィンの例としては、炭素数4~10のα-オレフィンが挙げられ、炭素数4~10のα-オレフィンとしては、例えば、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、3-メチル-1-ブテン等が挙げられ、好ましくは、炭素数4~10のα-オレフィンであり、より好ましくは、1-ブテン、1-ヘキセンまたは1-オクテンである。
【0026】
エチレン-α-オレフィン共重合体(3)の具体例は、エチレン-1-ブテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-1-オクテン共重合体、エチレン-1-デセン共重合体、エチレン-(3-メチル-1-ブテン)共重合体であり、これらは、1種単独であってもよく、2種以上の混合物であってもよい。また、エチレン重合体(3)は、エチレン単独重合体と、エチレンとα-オレフィンとの共重合体との混合物であってもよい。
【0027】
エチレン-α-オレフィン共重合体(3)は、公知の重合触媒を用いて、公知の重合方法によって製造することができる。
【0028】
重合触媒としては、例えば、メタロセン触媒に代表される均一系触媒系、チーグラー型触媒系、チーグラー・ナッタ型触媒系等が挙げられる。均一系触媒系としては、例えば、シクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属化合物とアルキルアルミノキサンからなる触媒系、シクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属化合物とそれと反応してイオン性の錯体を形成する化合物および有機アルミニウム化合物からなる触媒系、シリカ、粘土鉱物等の無機粒子にシクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属化合物、イオン性の錯体を形成する化合物および有機アルミニウム化合物等の触媒成分を担持し変性させた触媒系等が挙げられる。また、上記の触媒系の存在下でエチレンおよびα-オレフィンを予備重合させて調製される予備重合触媒系が挙げられる。
【0029】
(プロピレン重合材料(1))
プロピレン重合材料(1)は、2種類以上のプロピレン重合体成分を含有している。ここで、2種類以上のプロピレン重合体成分は、プロピレン重合体成分(11)および(12)であり得る。これらプロピレン重合体成分(11)および(12)は、プロピレン重合材料(1)の成分として、当該プロピレン重合体組成物に含まれているとよい。また、プロピレン重合体組成物は、プロピレン重合材料(2)を含んでいることがより好ましい。
【0030】
プロピレン重合材料(1)は温度230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレートが2~11g/10分であることが好ましい。プロピレン重合材料(1)のメルトフローレートが当該範囲内であることで、プロピレン発泡体の製造過程において、十分に伸長変形するプロピレン樹脂とすることができる。プロピレン重合材料(1)のメルトフローレートが当該範囲内であることで、プロピレン重合体組成物から発泡体を製造する過程において、十分に伸長変形するプロピレン樹脂組成物とすることができる。また、プロピレン重合材料(1)のメルトフローレートを、当該範囲を参照し、より小さくすることで、式(1)に示すメルトテンションを高くすることができる。
【0031】
プロピレン重合成分(11)は極限粘度が6~15dL/gであることが好ましく、6.5~8.0dL/gであることがより好ましい。プロピレン重合体成分(12)は極限粘度が0.5~1.3dL/gであることが好ましく、0.5~1.0dL/gであることがより好ましい。プロピレン重合体成分(11)および(12)の極限粘度が当該範囲内であることで、プロピレン重合体成分(1)のメルトフローレートが好適な範囲内となる。また、プロピレン重合材料(1)に含まれる、プロピレン重合体成分(11)および(12)の極限粘度の範囲を参考として、プロピレン重合体成分(11)の極限粘度をより大きくすることと、プロピレン重合体成分(12)の極限粘度をより小さくすることとのいずれか一方または両方により、式(1)に示すメルトフローレートに対するプロピレン重合体組成物のメルトテンションをより高くすることができる。また、式(2)に示す、プロピレン重合体組成物のメルトテンション比をより高くすることができる。
【0032】
プロピレン重合体成分(11)の含有量と、プロピレン重合体成分(12)の含有量との合計100質量%に対して、プロピレン重合体成分成分(11)の含有量が6~25質量%であることが好ましく、12~22質量%であることがより好ましく、プロピレン重合体成分成分(12)の含有量が75~94質量%であることが好ましく、78~88質量%であることがより好ましい。
【0033】
プロピレン重合材料(1)はプロピレン重合体成分(11)とプロピレン重合体成分(12)とを連続的に重合して得ることが好ましく、その場合、プロピレン重合材料(1)およびプロピレン重合体成分(11)の極限粘度は、ウベローデ型粘度計を用いて135℃テトラリン(1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン)中で測定できる。
【0034】
そして、プロピレン重合体成分(12)の極限粘度は、プロピレン重合体成分(11)およびプロピレン重合材料(1)の極限粘度ならびにプロピレン重合体成分(11)および(12)の質量より、下記式(2)を用いて算出できる。
【0035】
[η]12=([η]×100-[η]11×W11)/W12 (2)
(式中、 [η]12は、プロピレン重合体成分(12)の極限粘度(dl/g)を示す。[η]は、プロピレン重合材料(1)の極限粘度(dl/g)を示す。[η]11は、プロピレン重合体成分(11)の極限粘度(dl/g)を示す。W11は、プロピレン重合体成分(11)の含有量(質量%)を示す。W12は、プロピレン重合体成分(12)の含有量(質量%)を示す。)
【0036】
プロピレン重合体材料(1)に含まれる、プロピレン重合体成分(11)および(12)は、それぞれポリプロピレン結晶構造を有する結晶性プロピレン重合体成分であり得、プロピレンの単独重合体、またはプロピレンと、結晶性を失わない程度の量のエチレンおよび/またはα-オレフィン等のコモノマーとの共重合体が好ましく、直鎖状であることが好ましい。α-オレフィンの例は、炭素数4~10のα-オレフィンであり、炭素数4~10のα-オレフィンとしては、例えば、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、3-メチル-1-ブテン等が挙げられ、好ましくは、炭素数4~10のα-オレフィンであり、より好ましくは、1-ブテン、1-ヘキセンまたは1-オクテンである。結晶性を失わない程度の量とはコモノマーの種類により異なるが、例えばエチレンの場合、共重合体中のエチレン単位の量は通常10質量%以下、1-ブテン等の他のα-オレフィンの場合、共重合体中のα-オレフィン単位の量は通常30質量%以下であるとよい。プロピレン重合体成分(11)および(12)は同一組成であっても異なっていてもよい。またプロピレン重合体成分(11)および(12)はブロック結合しているものがあってもよい。さらにはプロピレン重合体材料(1)中に、プロピレン重合体成分(11)および(12)がブロック結合したものと、それ以外のプロピレン重合体成分(11)および(12)が共存していてもよい。
【0037】
プロピレン重合体成分(11)の含有量と、プロピレン重合体成分(12)の含有量と、エチレン-α-オレフィン共重合体(3)の含有量と、の合計100質量%に対して、プロピレン重合体成分(11)の含有量が5~20質量%であることが好ましく、9~18質量%であることがより好ましく、プロピレン重合体成分(12)の含有量が45~88質量%であることが好ましく、48~75質量%であることがより好ましく、エチレン-α-オレフィン共重合体(3)の含有量が7~40質量%であることが好ましく、20~40質量%であることがより好ましい。プロピレン重合体成分(11)および(12)の含有量が上述の範囲内であることで、プロピレン重合体成分(1)のメルトフローレートが好適な範囲内にできる。また、プロピレン重合体組成物から製造される発泡体における耐衝撃性を好適に向上させることができる。また、上述の含有量の範囲を参考とし、プロピレン重合体成分(11)、およびプロピレン重合体成分(12)の含有量が多い程、メルトテンションは高くなる傾向を示し、エチレン-α-オレフィン共重合体(3)の含有量が少ない程、プロピレン重合体組成物のメルトテンションを高くすることができる。
【0038】
(プロピレン重合材料(2))
一実施形態のプロピレン重合体組成物は、さらに、1種以上のプロピレン重合体成分を含むプロピレン重合材料(2)を含む。プロピレン重合材料(2)は温度230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレートが50g/10分以上であることが好ましく、70g/10分以上であることがさらに好ましい。
【0039】
メルトフローレートが異なるプロピレン重合材料(1)および(2)を含むことで、一実施形態に係るプロピレン重合体組成物に十分なメルトテンション比を付与することができる。これは、低いメルトフローレートを有するプロピレン重合体材料(1)の伸長変形を、高いメルトフローレートを有する重合体材料(2)が妨げないことによると推定される。ここで、プロピレン重合材料(2)は、温度230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレートが50g/10分以上であり、さらに高いものであることにより、プロピレン重合体組成物に高いメルトテンション比を付与しつつ、プロピレン重合体組成物の低速(3.2m/分)引取時におけるメルトテンションを低くすることに寄与し得る。
【0040】
プロピレン重合体材料(2)は、特に限定されないが、メルトフローレートが上述した範囲内であればよい。プロピレン重合材料(2)の例としては、プロピレン重合体材料(1)の例と同様に、例えば、プロピレン単独重合体、ならびにプロピレンとエチレンおよび/またはα-オレフィンなどのコモノマーとの共重合体が挙げられる。α-オレフィンの例としては、プロピレン重合材料(1)と同様のものが挙げられる。
【0041】
プロピレン重合体成分(11)の含有量と、プロピレン重合体成分(12)の含有量と、プロピレン重合材料(2)の含有量と、エチレン-α-オレフィン共重合体(3)の含有量の合計100質量%に対して、プロピレン重合体成分(11)の含有量は5~17質量%であることが好ましく、5.5~10質量%であることがより好ましい。プロピレン重合体成分(12)の含有量は、24~63質量%であることが好ましく、25~45質量%であることがより好ましい。プロピレン重合材料(2)の含有量が25~54質量%であることが好ましく、28~52質量%であることがより好ましい。エチレン-α-オレフィン共重合体(3)の含有量が7~25質量%であることが好ましく、10~23質量%であることがより好ましい。プロピレン重合体成分(11)、プロピレン重合体成分(12)、プロピレン重合材料(2)およびエチレン-α-オレフィン共重合体(3)を当該範囲内とすることで、メルトフローレートに対して高いメルトテンションを示す、すなわち上述の式(1)を満たす、プロピレン重合体組成物を得られる。また、エチレン-α-オレフィン共重合体(3)の含有量が多い程、高い発泡倍率の発泡体を製造したときにおいて、当該発泡体の耐衝撃性を高めることができる。
【0042】
プロピレン重合体成分(11)および(12)、プロピレン重合材料(2)ならびにエチレン-α-オレフィン共重合体(3)の含有量が当該範囲内であることで、発泡体製造時の気泡成長が好適に制御できる。さらに、一実施形態のプロピレン重合体組成物を用いて発泡体を製造した場合、十分な耐衝撃性を有する発泡体とすることができる。
【0043】
〔発泡体〕
一実施形態に係る発泡体は、上述の本発明の一実施形態に係るプロピレン重合体組成物を含有する。
【0044】
一実施形態に係るプロピレン重合体組成物は発泡剤を含んでもよい。発泡剤は特に限定されるものではなく、公知の発泡剤を用いることができる。例えば物理発泡剤としては、炭酸ガス、窒素ガス、空気、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ジクロルエタン、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロモノフルオロメタン、トリクロロモノフルオロメタンを挙げることができ、窒素ガス、炭酸ガス、空気等の安全で環境にやさしい無機ガスを用いることが好ましく、プロピレン系樹脂への溶解性が高いことから、炭酸ガスを用いることがより好ましい。炭酸ガスを用いる場合は、7.4MPa以上、31℃以上の超臨界状態でプロピレン系樹脂に混合することが、樹脂への拡散および溶解性の観点から好ましい。
【0045】
化学発泡剤の例としては、重曹、重曹とクエン酸、クエン酸ナトリウム、ステアリン酸などの有機酸との混合物、アゾジカルボンアミド、トリレンジイソシアネート、4,4’ジフェニルメタンジイソシアネートなどのイソシアネート化合物、アゾビスブチロニトリル、バリウム・アゾジカルボキシレート、ジアゾアミノベンゼン、トリヒドラジノトリアジンなどのアゾ、ジアゾ化合物、ベンゼン・スルホニル・ヒドラジド、P,P’-オキシビス(ベンゼンスルホニル・ヒドラジド)、トルエン・スルホニル・ヒドラジドなどのヒドラジン誘導体、N,N’-ジニトロソ・ペンタメチレン・テトラミン、N,N’-ジメチル-N,N’-ジニトロソ・テレフタルアミドなどのニトロソ化合物、P-トルエン・スルホニル・セミカルバジド、4,4’オキシビスベンゼンスルホニルセミカルバジドなどのセミカルバジド化合物の他アジ化合物、およびトリアゾール化合物を挙げることができる。特に、重曹、クエン酸、またはアゾジカルボンアミドが好ましい。
【0046】
上記の物理発泡剤や化学発泡剤は単体で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。また、化学発泡剤を用いる場合には、その分解温度や分解速度を調整するために発泡助剤を併用してもよい。例えば、アゾジカルボンアミド単体では分解温度が約200℃と高いため、低温で加工したい場合には発泡助剤として酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛、および尿素などを少量添加してもよい。
【0047】
物理発泡剤を用いる場合には、気泡核剤を添加することできる。気泡核剤としては、タルク、シリカ、珪藻土、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、ケイ酸カルシウム、ゼオライト、マイカ、クレー、ワラストナイト、ハイドロタルサイト、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、PMMA等のポリマービーズ、合成アルミノシリケート、および上記の化学発泡剤が例示される。
【0048】
(その他成分)
一実施形態のプロピレン重合体組成物は、必要に応じて各種の添加剤を含んでいてもよい。たとえば、プロピレン重合体組成物の表面に、包装、通函、仕切り板、食品容器、文具、建材、および自動車内装材等の用途に応じた機能を発現させるための添加剤および/または改質樹脂を含むことが好ましい。このような添加剤および/または改質樹脂としては、帯電防止剤、難燃剤、充填剤、酸化防止剤、銅害防止剤、耐候剤、紫外線吸収剤、滑剤、顔料、および発泡剤等が挙げられる。
【0049】
〔発泡体〕
本発明の一実施形態に係る発泡体は、上述に説明した本発明の一実施形態に係るプロピレン重合体組成物を含有する。一実施形態に係る発泡体は、本発明の一実施形態に係るプロピレン重合体組成物を有していればよく、特に限定されないが、たとえばプロピレン重合体組成物の表面に任意の樹脂層を備える多層発泡体であってもよい。
【0050】
一実施形態に係るプロピレン発泡体の発泡倍率および厚みは特に限定されるものではないが、発泡倍率が4倍以上である。一実施形態に係るプロピレン発泡体を、発泡シートとして使用する場合、シート全体の厚みが1~7mmであってもよい。発泡体の発泡倍率およびシートの厚みが当該範囲であることで、一実施形態に係るプロピレン発泡体は薄肉の発泡シートに好適に使用できる。
【0051】
(発泡体の製法)
一実施形態のプロピレン重合体組成物は、Tダイを用いた共押出し法により得られる。プロピレン重合体組成物および発泡剤を押出機を用いて溶融混練を行い、該押出機に接続したフィードブロックまたはTダイ内で積層一体化し、大気中に共押出し、平板状の溶融シートを得る。該平板状の溶融シートを、多層Tダイ直後に設置され冷却温調された多数のロールに接触させる、または、冷却温調された2枚のプレート状の平板の間を接触させながら通過させる等の公知の方法で冷却した後、ニップロールを設けた引取機で引き取り、切断機で所定寸法に切断してプロピレン重合体組成物発泡シートを製造することができる。
【0052】
押出機としては、単軸や多軸押出機を用いることができ、複数の押出機を組み合わせたタンデム押出機も使用可能である。プロピレン重合体組成物および発泡剤の混練に用いる押出機としては、2軸押出機が好ましく、スクリュー1回転あたりの押出量が多くて所定の押出量を低回転で得ることができ、スクリュー回転によるせん断発熱の少ない構造の押出機を用いることがより好ましい。スクリュー本体に冷却媒体を循環させ、温調してもよい。
【0053】
各押出機と、フィードブロックまたは多層Tダイとの間にギアポンプを設け、原料供給用に定量フィーダーを設けて、スクリューまたはギアポンプの回転数または原料供給量へフィードバックしてギアポンプ入口圧力を一定に制御するシステムも押出発泡状態の安定化に有効である。
【0054】
各押出機と、フィードブロックまたは多層Tダイとをつなぐアダプタには、スタティックミキサーなどを挿入して樹脂温度均一化をはかるのも発泡状態の安定化に有効である。
【0055】
物理発泡剤を用いる場合、プロピレン重合体組成物用押出機は溶融した樹脂中に発泡剤を圧入できる構造であるが、圧入位置以前には樹脂原料を十分に溶融可塑化させ、圧入以降は樹脂と発泡剤を十分に混合均一化させ、発泡に適切な樹脂温に制御できることが必要である。
【0056】
一実施形態に係るプロピレン発泡体の表面に、必要に応じてコロナ処理、オゾン処理や帯電防止剤塗布などの表面処理を行うこともできる。また実施形態に係るプロピレン発泡体の片面もしくは両面に、用途に応じてシートやフィルム等の表皮材を積層して表皮材積層プロピレン発泡体としてもよい。一実施形態のプロピレン発泡体および表皮材積層プロピレン発泡体に、真空成形等の熱成形を施すことも可能である。
【0057】
発泡体に任意の層を積層させる場合、積層用のシートまたはフィルム等の表皮材としては用途に応じて公知のものを使用することができ、例えば、アルミニウムや鉄等の金属、熱可塑性樹脂、紙、合成紙等から構成される薄板が挙げられる。熱可塑性樹脂もしくは麻等の植物素材やガラス等の無機材料からなる不織布や織布を積層してもよい。また、用いる薄板表面にエンボスや印刷などの加飾が施されていてもよい。発泡体を表皮材として積層貼合してもよい。
【0058】
例えば一実施形態の発泡体を食品包装用に使用する場合には、10~100μm厚みのプロピレン系樹脂製フィルムやガスバリア樹脂製フィルムを積層して用いることが好ましい。ガスバリア樹脂としては、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリアミドなどを使用することができる。なお、これらガスバリア樹脂は単独または混合して使用してもよいし、ガスバリア樹脂からなるフィルムを2種類以上積層して使用してもよい。
【0059】
一実施形態の発泡体を自動車内装材用に用いる場合には、不織布、織布、およびカーペット等を積層することが好ましい。他に包装用途、例えば、箱の仕切り板として使用する場合には、内容物保護のために緩衝シートを積層してもよい。
【0060】
一実施形態に係るプロピレン発泡体への表皮材の積層方法は特に限定されることはなく、例えば、接着剤をプロピレン発泡体表面に塗布して積層する方法、接着樹脂製フィルムがラミネートされた表皮材を用い、接着樹脂製フィルム面を加熱溶融させてプロピレン発泡体と積層する方法、ヒーターや熱風などを用いて表皮材と発泡体との積層面を溶融させて積層する方法、溶融樹脂を表皮材と発泡シートとの間に押出しラミネートして積層する方法等が挙げられる。
【0061】
一実施形態に係るプロピレン発泡体は、包装、通函、仕切り板、食品容器、文具、建材、自動車内装材等に使用することができる。
【0062】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0063】
〔まとめ〕
本発明の一実施形態に係るプロピレン重合体組成物は、2種以上のプロピレン重合体成分と、温度190℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレートが10g/10分未満であり、密度が850~910kg/mであり、エチレン単量体単位と炭素原子数3~8のα-オレフィン単量体単位とを含むエチレン-α-オレフィン共重合体(3)とを含有し、温度230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレートが12~23g/10分であり、下記式(1)を満たす。
【0064】
MT≧7.52×MFR(-0.576)+1 (1)
(式中、MTは、温度190℃、引き取り速度15.7m/分で測定されるメルトテンション(g)を示す。MFRは、温度230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(g/10分)を示す。)
【0065】
この構成により、一実施形態のプロピレン重合体を用いて発泡体を製造した場合に、発泡性が良好で、耐衝撃性に優れた発泡体とすることが可能である。
【0066】
また、本発明の一実施形態に係るプロピレン重合体組成物は、前記プロピレン重合体組成物がプロピレン重合材料(1)を含み、前記プロピレン重合材料(1)は、極限粘度が6~15dL/gであるプロピレン重合体成分(11)と、極限粘度が0.5~1.3dL/gであるプロピレン重合体成分(12)とを含み、前記プロピレン重合材料(1)は温度230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレートが2~11g/10分である。
【0067】
プロピレン重合体成分(11)および(12)の極限粘度が当該範囲内であることで、プロピレン重合体材料(1)のメルトフローレートが好適な範囲内となる。また、プロピレン重合材料(1)のメルトフローレートが当該範囲内であることで、プロピレン発泡体の製造過程において、十分に伸長変形するプロピレン樹脂とすることができる。
【0068】
また、本発明の一実施形態に係るプロピレン重合体組成物は、前記プロピレン重合体成分(11)の含有量と、前記プロピレン重合体成分(12)の含有量と、前記エチレン-α-オレフィン共重合体(3)の含有量と、の合計100質量%に対して、プロピレン重合体成分(11)の含有量が5~20質量%であり、プロピレン重合体成分(12)の含有量が45~88質量%であり、エチレン-α-オレフィン共重合体(3)の含有量が7~40質量%である。この構成により、プロピレン重合体組成物のメルトフローレートが好適な範囲内となる。
【0069】
さらに、本発明の一実施形態に係るプロピレン重合体組成物は、1種以上のプロピレン重合体成分を含み、温度230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレートが50g/10分以上であるプロピレン重合材料(2)を含有する。この構成により、一実施形態に係るプロピレン重合体組成物に好適なメルトフローレートを付与することができる。
【0070】
さらに、本発明の一実施形態に係るプロピレン重合体組成物は、前記プロピレン重合体成分(11)の含有量と、前記プロピレン重合体成分(12)の含有量と、前記プロピレン重合材料(2)の含有量と、前記エチレン-α-オレフィン共重合体(3)の含有量の合計100質量%に対して、プロピレン重合体成分(11)の含有量が5~17質量%であり、プロピレン重合体成分(12)の含有量が24~63質量%であり、プロピレン重合材料(2)の含有量が25~54質量%であり、エチレン-α-オレフィン共重合体(3)の含有量が7~25質量%である。この構成により、発泡体製造時の気泡成長が好適に制御でき、さらに発泡体に十分な耐衝撃性を付与できるプロピレン重合体組成物とすることができる。
【0071】
また、本発明の一実施形態に係るプロピレン重合体組成物は、下記式(2)で算出されるメルトテンション比が1.7未満である。
【0072】
MT=MT/MT (2)
(式中、MTは、プロピレン重合体組成物のメルトテンション比を示す。MTは、引き取り速度28.3m/分で測定したプロピレン重合体組成物のメルトテンション(g)を示す。MTは、引き取り速度3.2m/分で測定したプロピレン重合体組成物のメルトテンション(g)を示す。)
【0073】
また、本発明の一実施形態に係る発泡体は、本発明の一実施形態に係るプロピレン重合体組成物を含有する。
【実施例0074】
以下、本発明について、実施例および比較例を用いて説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0075】
(1)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
JIS K-7210:1999に規定された方法に従い、温度230℃または190℃、荷重2.16kgの条件で、プロピレン重合体組成物またはプロピレン重合材料のメルトフローレートを測定した。
【0076】
温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定されたメルトフローレートを「MFR(230℃)」と記載し、温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定されたメルトフローレートを「MFR(190℃)」と記載する。
【0077】
(2)メルトテンション(MT)
溶融張力測定機メルトテンションテスター2型(東洋精機社製)を用いて、プロピレン重合体組成物のメルトテンションを下記の条件で測定し、メルトテンション比を算出した。
【0078】
内径9.55mmのシリンダに、長さ8.00mm、内径2.10mmのオリフィスを取り付けた。その後、シリンダにプロピレン重合体組成物を充填し、ピストンを挿入して190℃で5分間予熱して、プロピレン重合体組成物を十分に融解させた。その後、5.7mm/分の速度でピストンを降下させ、オリフィスから溶融し押出されるプロピレン重合体組成物を、滑車を通して15.7m/分で引き取り、滑車に加わる荷重(g)をロードセルで測定し、メルトテンションとした。
【0079】
(3)メルトテンション比(MT比)
東洋精機社製溶融張力測定機を用いて、プロピレン重合体組成物のメルトテンションを下記の条件で測定した。
【0080】
内径9.55mmのシリンダに、長さ8.00mm、内径2.10mmのオリフィスを取り付けた。その後、シリンダにプロピレン重合体組成物を充填し、ピストンを挿入して190℃で5分間予熱して、プロピレン重合体組成物を十分に融解させた。その後、5.7mm/分の速度でピストンを降下させ、オリフィスから溶融し押出されるプロピレン重合体組成物を、滑車を通して速度3.2m/分または28.3m/分で引き取り、滑車とつりあう荷重の重さ(g)をロードセルで測定し、メルトテンションとした。
【0081】
メルトテンション比は、下記式(2)を用いて算出した。
【0082】
MT=MT/MT (2)
(式中、MTは、プロピレン重合体組成物のメルトテンション比を示す。MTは、引き取り速度28.3m/分で測定したプロピレン重合体組成物のメルトテンション(g)を示す。MTは、引き取り速度3.2m/分で測定したプロピレン重合体組成物のメルトテンション(g)を示す。)
(4)極限粘度
ウベローデ型粘度計を用いて135℃テトラリン(1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン)中で、プロピレン重合体成分(11)およびプロピレン重合材料(1)の極限粘度を測定した。
【0083】
プロピレン重合体成分(12)の極限粘度は、プロピレン重合体成分(11)およびプロピレン重合材料(1)の極限粘度並びにプロピレン重合体成分(11)および(12)の質量より、下記式(3)を用いて算出した。
【0084】
[η]12=([η]×100-[η]11×W11)/W12 (3)
(式中、[η]12は、プロピレン重合体成分(12)の極限粘度(dl/g)を示す。[η]は、プロピレン重合材料(1)の極限粘度(dl/g)を示す。[η]11は、プロピレン重合体成分(11)の極限粘度(dl/g)を示す。W11は、プロピレン重合体成分(11)の含有量(質量%)を示す。W12は、プロピレン重合体成分(12)の含有量(質量%)を示す。)
【0085】
(5)発泡倍率
水中置換法を用いた測定方法で、発泡体の密度を求めた。発泡倍率は、発泡体の密度を未発泡のプロピレン重合体組成物の密度で除することで算出した。発泡倍率が高いほど発泡性は良好である。ガス抜けが少なく、発泡倍率が4倍以上の発泡体を、発泡性良好と判断した。
【0086】
(6)発泡体の耐衝撃性
発泡体の耐衝撃性を、JIS K5600-5-3に規定されるデュポン衝撃試験で評価した。発泡体の試験片(70mm×70mm)の温度を-10℃に調整した後、落下荷重300g、落下高さ40cmの条件で、衝撃試験を10回行なった。発泡体にヒビおよび/または割れが生じない割合が60%以上の場合、耐衝撃性が良好と判断した。なお、耐衝撃性試験は発泡性良好のシートのみについて実施した。
【0087】
(7)プロピレン重合材料(1-1)の製造
特開平11-228629号公報に開示された方法によりプロピレンを単独重合し、プロピレン重合体粉末を製造した。プロピレン重合体粉末は、極限粘度が7.0dl/gであるプロピレン重合体成分(11-1)と、極限粘度が0.8dl/gであるプロピレン重合体成分(12-1)とを含むものであった。プロピレン重合体成分(11-1)とプロピレン重合体成分(12-1)との質量比は、19質量%:81質量%であり、プロピレン重合体粉末は、極限粘度が1.9dl/gであった。
【0088】
プロピレン重合体粉末100質量部と、ステアリン酸カルシウム0.05質量部と、商品名イルガノックス(登録商標)1010(BASFジャパン株式会社製)0.10質量部と、商品名イルガフォス(登録商標)168(BASFジャパン株式会社製)0.15質量部とを混合し、230℃で溶融混練して、MFR(230℃)が7.7g/10分であるプロピレン重合材料(1-1)のペレットを得た。
【0089】
(8)プロピレン重合材料(2)
(8-1)プロピレン重合材料(2-1)
プロピレン重合材料(2-1)として、プロピレンを単独重合し、次いで、エチレンとプロピレンを共重合して得られた、プロピレン単独重合体成分とエチレン-プロピレン共重合体成分との混合物(住友化学株式会社製ノーブレン(登録商標)、グレード:AU161C、MFR(230℃)=90g/10分、エチレン-プロピレン共重合体の含有量=11質量%)を用いた。「ノーブレン」は住友化学株式会社の登録商標である。
【0090】
(8-2)プロピレン重合材料(2-2)
プロピレン重合材料(2-2)として、プロピレンを単独重合し、次いで、エチレンとプロピレンを共重合して得られた、プロピレン単独重合体成分とエチレン-プロピレン共重合体成分との混合物(住友化学株式会社製ノーブレン、グレード:AW161C、MFR(230℃)=9g/10分、エチレン-プロピレン共重合体の含有量=14質量%)を用いた。
【0091】
(8-3)プロピレン重合材料(2-3)
プロピレン重合材料(2-3)として、プロピレンを単独重合し、次いで、エチレンとプロピレンを共重合して得られた、プロピレン単独重合体成分とエチレン-プロピレン共重合体成分との混合物(住友化学株式会社製ノーブレン、グレード:AZ564、MFR(230℃)=30g/10分、エチレン-プロピレン共重合体の含有量=13質量%)を用いた。
【0092】
(9)エチレン-α-オレフィン共重合体(3)
(9-1)エチレン-α-オレフィン共重合体(3-1)
エチレン-α-オレフィン共重合体(3-1)として、タフマー(登録商標)DF740(三井化学株式会社製、エチレン-1-ブテン共重合体、MFR(190℃)=3.2g/10分、密度=870kg/m)を使用した。
【0093】
(9-2)エチレン-α-オレフィン共重合体(3-2)
エチレン-α-オレフィン共重合体(3-2)として、エクセレン(登録商標)FX402(住友化学株式会社製、エチレン-1-ヘキセン共重合体、MFR(190℃)=8g/10分、密度=880kg/m)を使用した。「エクセレン」は住友化学株式会社の登録商標である。
【0094】
(9-3)エチレン-α-オレフィン共重合体(3-3)
エチレン-α-オレフィン共重合体(3-3)として、スミカセンE FV401(住友化学株式会社製、エチレン-1-ヘキセン共重合体、MFR(190℃)=4g/10分、密度=903kg/m)を使用した。「スミカセン」は住友化学株式会社の登録商標である。
【0095】
(9-4)エチレン-α-オレフィン共重合体(3-4)
エチレン-α-オレフィン共重合体(3-4)として、タフマー(登録商標)DF8200(三井化学株式会社製、エチレン-1-ブテン共重合体、MFR(190℃)=18g/10分、密度=885kg/m)を使用した。
【0096】
[実施例1]
プロピレン重合材料(1-1)48質量%と、プロピレン重合材料(2-1)32質量%と、エチレン-α-オレフィン共重合体(3-1)20質量%とを溶融混練して、プロピレン重合体組成物を得た。
【0097】
得られたプロピレン重合体組成物100質量部と、気泡核剤(アゾジカルボンアミド含有マスターバッチ、セルマイクMB1023、三協化成製)0.3質量部とを混合した。得られた混合物を、下記に示す押出機のホッパーに投入した。
【0098】
先端にギアポンプを設けた50mmΦ単軸押出機(L/D=42、Lはスクリュー有効長さ、Dはスクリュー径)と、リップ部の樹脂流路幅が100mmかつ厚み1.3mmであるTダイとを接続した押出機。
【0099】
炭酸ガス物理発泡成形により発泡体を得るため、混合物の溶融が進んだ位置で、液化炭酸ガスをダイヤフラム式定量ポンプで105g/hの条件で高圧注入し、混合物をさらに溶融混錬して溶融発泡性混合物を得た。得られた溶融混合物を、ギアポンプを調整して吐出量が12.6kg/hを示すようにしながら、Tダイ内へ導入した後、Tダイより吐出された溶融混合物を、速度2.2m/minで引き取ることで、プロピレン重合体組成物を含有する発泡体を得た。
【0100】
押出機各部温度を170℃~190℃の範囲で調整して、押出機先端部に取り付けられた樹脂温度計が180℃を示すようにした。ギアポンプ部およびTダイ部の温度を180℃に調整した。押出機回転数を調整して、ギアポンプ入口樹脂圧力が7MPaを示すようにした。
【0101】
[実施例2]
プロピレン重合材料(1-1)48質量%と、プロピレン重合材料(2-1)32質量%と、エチレン-α-オレフィン共重合体(3-2)20質量%を溶融混練して、プロピレン重合体組成物を得た以外は、実施例1と同様にして、発泡体を得た。
【0102】
[実施例3]
プロピレン重合材料(1-1)32質量%と、プロピレン重合材料(2-1)48質量%と、エチレン-α-オレフィン共重合体(3-1)20質量%とを溶融混練して、プロピレン重合体組成物を得た以外は、実施例1と同様にして、発泡体を得た。
【0103】
[比較例1]
プロピレン重合材料(1-1)50質量%と、プロピレン重合材料(2-2)40質量%と、エチレン-α-オレフィン共重合体(3-3)10質量%とを溶融混練して、プロピレン重合体組成物を得た以外は、実施例1と同様にして、発泡体を得た。
【0104】
[比較例2]
プロピレン重合材料(1-1)80質量%と、プロピレン重合材料(2-3)20質量%とを溶融混練して、プロピレン重合体組成物を得た以外は、実施例1と同様にして、発泡体を得た。
【0105】
[比較例3]
プロピレン重合材料(1-1)32質量%と、プロピレン重合材料(2-1)48質量%と、エチレン-α-オレフィン共重合体(3-4)20質量%とを溶融混練して、プロピレン重合体組成物を得た以外は、実施例1と同様にして、発泡体を得た。
【0106】
実施例1~3および比較例1~4のプロピレン重合体組成物の成分を表1に示す。また、実施例1~3および比較例1~4のプロピレン重合体組成物のMFR、式(1)の左辺の値、式(1)の右辺の値、式(1)を満たすか否か、およびメルトテンション比を表2に示す。なお、式(1)を満たす場合は「〇」、満たさない場合は「×」で示す。さらに、発泡倍率、および耐衝撃性の測定結果を表3に示す。
【0107】
【表1】
【0108】
【表2】
【0109】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明は、包装、通函、仕切り板、食品容器、文具、建材、自動車内装材等に使用することができる、プロピレン発泡体に利用することができる。