(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022014510
(43)【公開日】2022-01-20
(54)【発明の名称】筋肉電気刺激装置
(51)【国際特許分類】
A61N 1/36 20060101AFI20220113BHJP
【FI】
A61N1/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020116846
(22)【出願日】2020-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】599081255
【氏名又は名称】株式会社エフ・ピー・エス
(74)【代理人】
【識別番号】230116447
【弁護士】
【氏名又は名称】野中 啓孝
(72)【発明者】
【氏名】堀 昌司
(72)【発明者】
【氏名】晝間 信治
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼ 美都子
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053JJ02
(57)【要約】
【課題】
利用者の身体部位に高密着し、筋肉電気刺激部が利用者の身体部位に密着した状態を保ちやすい筋肉電気刺激装置を提供する。また、利用者のほぼすべての身体部位に適合することができる筋肉電気刺激装置を提供する。
【解決手段】
1μm未満の厚さの導電性高分子の自立膜で構成され、利用者の第一身体部位にパルス電流を付与する筋肉電気刺激部を備えた筋肉電気刺激装置による。また、更に、第一身体部位とは異なる利用者の第二身体部位の生体情報を取得する検出部と、検出部において取得された生体情報に基づいて筋肉電気刺激部に出力するパルス電流を制御する制御部とを備えた筋肉電気刺激装置による。
当該自立膜が、分子間力で利用者の身体部位に高密着するために、利用者の身体部位に密着した状態を保ちやすい。これにより、パルス電流が効果的に付与され、利用者に痛みを与えにくいという効果を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1μm未満の厚さの導電性高分子の自立膜で構成され利用者の第一身体部位にパルス電流を付与する筋肉電気刺激部、を備えた筋肉電気刺激装置。
【請求項2】
更に、前記第一身体部位とは異なる前記利用者の第二身体部位の生体情報を取得する検出部と、
前記検出部において取得された前記生体情報に基づいて前記筋肉電気刺激部に出力するパルス電流を制御する制御部と、
を備えた請求項1記載の筋肉電気刺激装置。
【請求項3】
前記生体情報が、血圧、心拍、血中酸素濃度のいずれかであることを特徴とする請求項2に記載の筋肉電気刺激装置。
【請求項4】
前記筋肉電気刺激部が付与するパルス電流が、4~20Hzの低周波であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の筋肉電気刺激装置。
【請求項5】
前記制御部が、通常は15~20Hzのパルス電流を付与しつつ、前記生体情報が予め設定された閾値を超えた場合に、4~8Hzのパルス電流に変更することを特徴とする請求項2~4のいずれか1項に記載の筋肉電気刺激装置。
【請求項6】
前記閾値が、利用者が装置を使用する前の平常時生体情報に基づいて算出されることを特徴とする請求項2~5のいずれか1項に記載の筋肉電気刺激装置。
【請求項7】
前記検出部がウェアラブル端末であり、パルス電流が付与されていない状態の前記利用者の平常時生体情報を継続的に検出することを特徴とする請求項2~6のいずれか1項に記載の筋肉電気刺激装置。
【請求項8】
前記閾値が、前記平常時生体情報を累積したデータに基づいて設定されたものであることを特徴とする請求項2~7のいずれか1項に記載の筋肉電気刺激装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筋肉電気刺激装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、パルス電流を利用者の筋肉に付与することで、慢性的な運動不足、過度の肥満、整形外科的疾患などのために運動を十分に行えない人々や、糖尿病性合併症、心血管系合併症などの臓器障害により運動制限されている患者に対して、過度な運動を強いることなく、筋肥大や代謝等を促進することができることが知られている。このような装置は、EMS(Electrical Muscle Stimulation)と呼ばれる。
【0003】
EMSが付与するパルス電流として、低周波パルス電流を用いることにより、利用者の筋肉に適切な刺激を与えることが知られている(特許文献1)。
【0004】
また、利用者の生命を危険な状態に晒さないよう、利用者の状態を加味した上で、付与するパルス電流を制御することがなされている(特許文献2)。
【0005】
更に、特許文献2には、低周波パルス電流付与手段と利用者の身体部位の変化を検出する検出手段(例:圧力センサ)を備える電気的筋肉刺激装置に一体化させて、利用者の身体部位の変化を低周波パルス電流の強弱にフィードバックさせることが記載されている。
【0006】
特許文献3、非特許文献1では、導電性の高い1μm未満の薄さの自立膜の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実用新案登録3194492
【特許文献2】特開2019-54942
【特許文献3】特表2018-507939
【非特許文献1】J.Mater.Chem.C, 2015, 3, 6539-6548(Roll to roll processing of ultraconformable conducting polymer nanosheets)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1、2記載の電気的筋肉刺激装置における電流付与手段である電極については、特定の種類の技術が開示されているわけではない。例えば、特許文献2の
図1においても、小さいスポット電極(符号16)が開示されているのみである。
【0009】
従来のパルス電流付与手段は、特許文献2のような導電性のゲル体が用いられているが、密着性に課題があった。すなわち、利用者の身体部位は、EMSを使用している間ずっと動き、発汗するため、パルス電流付与手段が利用者に密着した状態を保ちにくく、そのため、パルス電流が効果的に付与できない、パルス電流が付与される箇所が局在化して利用者に痛みを与えるなどという問題があった。特許文献2の
図1においては、電極(符号16)にゲル体(符号17)を使用して、密着性の向上を図っている様子が伺えるが、十分ではなく、また、ゲル体の厚みにより密着性が不均一になってしまい、パルスが付与される個所が局在化して利用者に痛みを与えるという問題があった。
【0010】
更に、特許文献1、2記載の電気的筋肉刺激装置は、所定の身体部位に特化した形状を採用せざるを得ないといった課題があった。例えば、特許文献2の
図1に示された電気的筋肉刺激装置は、利用者の腹部に貼り付ける専用の形状となっており、利用者の首、腕、足など他の身体部位には適合しない。
【0011】
なお、特許文献2、非特許文献1記載の導電性ポリマー自立膜の用途として、大表面積の可撓性電子デバイスなどが記載されているが、これを筋肉電気刺激部に採用することについては知られていなかった。
【0012】
そこで発明者らは、鋭意検討の結果、導電性の高い1μm未満の厚さの自立膜が、利用者の身体部位に自然にかつ高密着で貼りつくことに着目し、これを筋肉電気刺激部に採用することにより、上記密着性の課題を解決できることを見出した。
【0013】
また、導電性の高い1μm未満の厚さの自立膜であれば、ハサミ等で自由に切ることができるため、利用者のほぼすべての身体部位に適合できることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る筋肉電気刺激装置は、1μm未満の厚さの導電性高分子の自立膜で構成され利用者の第一身体部位にパルス電流を付与する筋肉電気刺激部を備える。
【0015】
本発明に係る筋肉電気刺激装置は、他にも、第一身体部位とは異なる前記利用者の第二身体部位の生体情報を取得する検出部と、検出部において取得された生体情報に基づいて筋肉電気刺激部に出力するパルス電流を制御する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る筋肉電気刺激装置は、更に、次のような特徴も有する。
(1)生体情報が、血圧、心拍、血中酸素濃度のいずれかであること。
(2)肉電気刺激部が付与するパルス電流が、4~20Hzの低周波であること。
(3)制御部が、通常は15~20Hzのパルス電流を付与しつつ、前記生体情報が予め設定された閾値を超えた場合に、4~8Hzのパルス電流に変更すること。
(4)閾値が、利用者が装置を使用する前の平常時生体情報に基づいて算出されること。
(5)検出部がウェアラブル端末であり、パルス電流が付与されていない状態の利用者の平常時生体情報を継続的に検出すること。
(6)閾値が、平常時生体情報を累積したデータに基づいて設定されたものであること。
【発明の効果】
【0017】
本発明の筋肉電気刺激装置によれば、パルス電流を付与する筋肉電気刺激部が利用者の身体部位に高密着するため、利用者の身体部位に密着した状態を保ちやすい。これにより、パルス電流が効果的に付与され、利用者に痛みを与えにくいという効果を有する。また、利用者のほぼすべての身体部位に適合することができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1実施形態における筋肉電気刺激装置の概要を説明する図である。
【
図2】データ保管部5に保管されるデータを説明する図である。
【
図3】本発明の第2実施形態における筋肉電気刺激装置の概要を説明する図である。
【
図4】本発明の第3実施形態における筋肉電気刺激装置の概要を説明する図である。
【
図5】本発明の実施形態の処理方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の筋肉電気刺激装置を実施するための実施形態について詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0020】
本発明における筋肉電気刺激部は、1μm未満の厚さの導電性高分子の自立膜で構成されている。この自立膜は、厚みが1μm未満であるため、自然に利用者の第一身体部位に貼り付くようになる。この現象の詳細な理由は不明であるものの、例えば、Biomater. Sci., 2019, 7, 520-531の報告によれば、分子間力が働くなるためだと推測される。
【0021】
この分子間力により、筋肉電気刺激部を、利用者の第一身体部位に高密着させることができる。自立膜の厚みは、耐久性やハンドリングの観点から、20nm以上であることが好ましい。また、分子間力の観点から、500nm未満であることが好ましい。
【0022】
このように自立膜が自然に利用者に貼りつくという性質を有するため、筋肉電気刺激部を利用者の第一身体部位に固定するための接着剤やバンドなどの固定具がなくても、自立膜全体が利用者の身体部位に高密着するという利点を有する。これにより、パルス電流が効果的に付与され、利用者に痛みを与えにくく、利用者の肌かぶれ等の心配が少なくなるという利点を有する。
【0023】
本発明における筋肉電気刺激部は、その大きさや形は自由に加工でき、かつフレキシブルであるので、利用者のあらゆる身体部位にフィットさせることができるという利点を有する。具体的には、例えば、バンド状(4cm×20cm、4cm×90cm)とすることができる。この場合、筋肉電気刺激部が、手首、足首、胴を一周することができる。効果的な電圧印加のため、筋肉電気刺激部の幅は、4cm以上あることが好ましい。
【0024】
本発明における筋肉電気刺激部は、プラスの電圧を印加する第1電極と、マイナスの電荷を印加する第2電極に分けられ、それぞれ電源部に接続される。第1、2電極を利用者の別の位置に貼り付けて使用することで、その間の筋肉に刺激を与えることができる。
【0025】
本発明における導電性高分子としては、導電性が高く、化学安定性が優れているポリマーであれば特に制限はなく、公知の導電性高分子を用いることができる。導電性高分子の具体例としては、例えば、ポリ(3、4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)/スルホン酸ポリスチレン(PSS)が典型的に用いられる。
【0026】
本発明における導電性高分子を1μm未満の厚さの自立膜に加工する技術としては、スピンコーティング技術(特表2013-543925)やロールツーロール技術(上記特許文献2、非特許文献1)など公知の技術が挙げられる。特に、後者の技術によれば、単純、安価に広い面積を製造することができるなど生産性が高いために好ましい。本発明の自立膜の厚みは、原子間力顕微鏡(AFM)などで測定することができる。
【0027】
本発明における筋肉電気刺激部は、導電性高分子の自立膜単体であってもよいし、それ以外の層との複合体であってもよい。それ以外の層としては、不織布、ポリマーシート(SBSなど)などが挙げられる。
【0028】
本発明における自立膜は、単層で使用する場合でも、複合層として使用する場合でも、非常に薄いため、PETフィルムなどの基材フィルムの上に担持して保管しておき、使用時に基材フィルムを剥がして利用者に貼り付けることが好ましい。
【0029】
本発明の筋肉電気刺激部に通電させる方法としては、導電性高分子の自立膜に、回路となる導電テープや導電薄膜を貼り付けて電気的に接続させる方法があるが、使用中に導電性高分子の自立膜などが破損して電気的な接続が切断しない態様であれば、どのような方法であってもよい。
【0030】
本発明における第一身体部位は、例えば、腹、膝上、足首などが挙げられる。上記の通り、本発明における筋肉電気刺激部は、その大きさや形は自由に設計でき、かつフレキシブルであるので、利用者のあらゆる身体部位にフィットさせることができるため、第一身体部位について何らの制限はない。
【0031】
ところで、特許文献3記載の電気的筋肉刺激装置は、利用者の所定の身体部位に低周波パルス電流を付与するとともに、同じ所定の身体部位の変化を検出するものであり、身体部位によっては、生体情報が正確に収集できないといった課題があった。例えば、特許文献3の
図1に示された電気的筋肉刺激装置は、利用者の腹部に貼り付けるものであるが(段落0026など)、腹部では、血圧、心拍、血中酸素濃度などの生体情報は取得しにくい。
【0032】
また、使用時のみの生体情報の取得では、利用者の平常時の生体情報が分からないため、利用者が使用時に危険な状態かどうかの判断がしにくいという課題があった。
【0033】
そこで、発明者らは、パルス電流を付与する身体部位とは別の身体部位において、平常時及び使用時の利用者の生体情報を取得し、これに基づいて低周波パルス電流を制御することによって、利用者の身体状態をより正確に把握してフィードバックできることを見出した。
【0034】
すなわち、本発明の筋肉電気刺激装置を実施するための別の実施形態は、第一身体部位とは異なる利用者の第二身体部位の生体情報を取得する検出部と、検出部において取得された生体情報に基づいて前記筋肉電気刺激部に出力するパルス電流を制御する制御部とを備えるものである。以下、この別の実施形態について詳細に説明する。
【0035】
本発明における第二身体部位は、第一身体部位とは異なる利用者の身体部位である。生体情報を取得しやすい身体部位が好ましい。例えば、手首、足首、首、大腿部、胸部など利用者の血管が近くに存在する部位である。好ましい身体部位は、手首である。
【0036】
本発明における検出部は、生体情報を取得するための各種センサを備えている。例えば、血圧センサ、心拍センサ、血中酸素濃度センサ、温度センサ、圧力センサ、筋電位センサなどである。目的や用途に応じて、適切なセンサを選択することができる。
【0037】
本発明における検出部は、各種センサを備える汎用のウェアラブル機器であることが好ましい。このような汎用のウェアラブル機器であれば、近年の健康志向から高機能のウェアラブル機器が多数開発されている状況の中で、各種センサや通信機能を搭載した既製品を利用して安価に検出部を構成することができる。
【0038】
汎用のウェアラブル機器は、当然ながら、利用者が本発明の筋肉電気刺激装置を使用しておらず、パルス電流が付与されていない状態のときでも実用的に着用することができる。つまり、汎用のウェアラブル機器を検出部として用いることにより、利用者のパルス電流が付与されていない日常的な状態の平常時生体情報を長期間にわたって取得することができる。
【0039】
また、汎用のウェアラブル機器は、通信機能も備えていることも多く、検出部で取得した生体情報をワイヤレスで制御部などに送信することができることも利点である。
【0040】
本発明における検出部として、例えば、センサ付きのウォッチ端末を使用すれば、第二身体部位を手首として、生体情報を取得することができる。手首は、血圧、心拍、血中酸素濃度などの生体情報を取得しやすい身体部位であり好ましい。
【0041】
本発明における生体情報は、血圧、心拍、血中酸素濃度、体温、筋電位などである。
【0042】
本発明における制御部は、検出部で取得された利用者の生体情報に基づいて筋肉電気刺激部に出力するパルス電流の周波数及び強さを制御する。制御方法の一例として、通常は第1周波数領域のパルス電流を付与しつつ、生体情報が予め設定された閾値を超えた場合には、第2周波数領域のパルス電流に変更する制御を行うことが挙げられる。
【0043】
本発明における筋肉電気刺激部において利用者に付与されるパルス電流の周波数は、4~20Hzの低周波であることが好ましい。ここで、1Hzは、1秒間に1回の周波数である。筋肉を効果的に電気的に刺激するには、高周波パルスではなく、低周波パルス電流にする必要があることが知られている。
【0044】
第1周波数領域は、通常の使用時に利用者に対して付与するパルス電流であり、利用者の筋肥大に有効な周波数領域である必要がある(筋肥大モード)。具体的には、第1周波数領域としては、15~20Hzが好ましい。
【0045】
第2周波数領域は、利用者の生体情報が閾値を超えた場合であるので、利用者に負担のかからない周波数領域である必要がある(代謝モード)。具体的には、第2周波数領域としては、4~8Hzが好ましい。
【0046】
この第1、2周波数領域は、予め固定値を設定しておいてもよいし、利用者がある一定範囲で自由に設定できるようにしておいてもよいし、利用者の生体情報に基づいて自動的に算出されるものであってもよい。
【0047】
本発明における制御部は、利用者の生体情報が閾値を大きく超えて危険度が高くなってきた場合には、筋肉電気刺激部に出力するパルス電流をゼロにすることができる。
【0048】
この閾値は、全ての利用者に適合しうる一般的な値を制御部に予め設定しておくこともできるし、利用者の使用前の生体情報を元に当該利用者に合った値を算出して制御部に記憶させることもできる。
【0049】
後者の方法としては、筋肉電気刺激装置の使用開始時に、短い時間だけ測定して利用者の平常時生体情報を取得し、その値を基準として一定の計算式に基づいて閾値を算出して制御部に記憶させることが考えられる。例えば、平常時生体情報が血圧の場合は、平常時血圧の上下幅の2倍の上下幅に相当する値、平常時生体情報が心拍の場合は、平常時心拍の3倍の値、平常時生体情報が血中酸素濃度の場合は、平常時血中酸素濃度から3~5%低い値が挙げられる。
【0050】
検出部がウェアラブル端末で、パルス電流が付与されていない状態の前記利用者の平常時生体情報を継続的に取得できる場合には、累積したデータであり、より正確な平常時生体情報を基準値として用いることができる点で好ましい。
【0051】
本発明における筋肉電気刺激部において利用者に付与されるパルス電流の強さは、予め特定の値を設定しておいてもよいし、閾値を設けた上で生体情報に応じて強弱を制御できるものであってもよいし、利用者が手動で選択できるようにしておいてもよい。
【0052】
本発明の筋肉電気刺激装置を構成する筋肉電気刺激部と検出部と制御部とは、お互いに有線で接続されて一つの電源部がそれぞれに電気を供給する形態であってもよいし、筋肉電気刺激部と検出部と制御部とがそれぞれ独立して電源部を備えると共に無線で通信し合う形態であってもよい。
【0053】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態における筋肉電気刺激装置100の構成例である。
【0054】
本発明の第1実施形態は、筋肉電気刺激部1と、検出部2と、制御部3と、電源部4と、データ保管部5とを備える。筋肉電気刺激部1と、検出部2と、制御部3とは全て電気回路で繋がっており、電気的に接続されている。電源部4は、筋肉電気刺激部1に給電するとともに、電気回路を介して、検出部2、制御部3、電源部4、及びデータ保管部5にも給電する。
【0055】
データ保管部5は、
図2に示す通り、取得する生体情報の種類、それぞれの閾値、検出部2から定期的に送信される生体情報の値などを保管する。制御部3は、データ保管部5に保管されている各種データに基づいて、付与するパルス電流を制御する。
【0056】
(第2実施形態)
図3は、本発明の第2実施形態における筋肉電気刺激装置100の構成例である。
【0057】
本発明の第2実施形態は、それぞれ独立した筋肉電気刺激部1と、検出部2と、制御部3と、データ保管部5とを備える。そして、筋肉電気刺激部1と、検出部2と、制御部3とデータ保管部5とは、それぞれ通信部6を備え、インターネット7を介して、無線で接続されている。なお、電源部4は、筋肉電気刺激部1に給電しているが、検出部2、制御部3、データ保管部5においてもそれぞれ電源部を別途有している(図示しない。)。
【0058】
検出部2は、ウェアラブル端末としてのスマートウォッチである。このスマートウォッチは、血圧、心拍、血中酸素濃度を測定できるセンサを備え、通信部6も内蔵している。このようなスマートウォッチは、市販のスマートウォッチにアプリをダウンロードすることにより、本発明の第2実施形態の検出部2として使用することができる。
【0059】
インターネット7は、インターネット回線に限られず、WiFi、Bluetooth(登録商標)など、筋肉電気刺激部1、検出部2、制御部3、及びデータ保管部5間の通信が可能となる手段であれば何でもよい。
【0060】
(第3実施形態)
図4は、本発明の第3実施形態における筋肉電気刺激装置100の構成例である。
【0061】
本発明の第2実施形態においては、検出部2は、利用者30の第二身体部位である左手首に装着されたウェアラブル端末としてのスマートウォッチ40であり、筋肉電気刺激部50、51(1)は、利用者30の第一身体部位である左脚膝部及び左足足首に貼り付けられている。これにより、筋肉電気刺激部50、51間の筋肉が刺激される。
【0062】
スマートウォッチ40及び電源部4は、それぞれWiFiを介して、制御部3及びデータ保管部5と無線通信を行っている。これにより、検出された利用者30の生体情報が制御部3に送信されると共に、制御部3からは、付与されるべきパルス電流の情報が電源部4に送信される。
【0063】
なお、スマートウォッチ40は、普段から利用者30の生体情報を取得して制御部3に情報を送信している。
【0064】
(第1~3実施形態の処理方法)
図5は、第1、2実施形態において、制御部3が行う処理の一例を示すフローチャートである。
【0065】
本発明の筋肉電気刺激装置の処理が開始されると(ステップS10)、制御部3は、検出部2から送信される生体情報を取得する(ステップS20)。制御部3には、データ保管部5において、予め閾値が設定されている。
【0066】
制御部3は、前記生体情報と前記閾値とを対比して、前記生体情報が前記閾値以上である場合には(ステップS20:YES)、筋肉電気刺激部1において付与するパルス電流を代謝モードにする(ステップS40)。また、前記生体情報が前記閾値未満である場合には(ステップS20:NO)、筋肉電気刺激部1において付与するパルス電流を筋肥大モードにする(ステップS50)。
【0067】
一定時間のパルス電流付与後に、制御部3は、処理を終了するかどうか判断し、処理を終了しない場合には(ステップS60:NO)、最新の生体情報を取得する処理に戻り、以降同様の処理を行う。処理を終了する場合には(ステップS60:YES)、処理終了となる(ステップS70)。
【0068】
制御部3が、処理を終了するかどうかを判断するのは、一つは、利用者30の入力操作である。他にも、前記閾値とは別に、より大きな閾値を設定しておき、この閾値を超えるときには処理を終了するように設定しておいてもよい。利用者30の意思に関わらず、生体情報が危険レベルに達した場合には、自動で処理を終了するためである。
【0069】
(導電性高分子の自立膜の製造例)
ロールツーロール技術を用いて、ポリ(3、4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)/スルホン酸ポリスチレン(PSS)の導電性高分子の自立膜を作製した。この自立膜の厚みをAFMで測定したところ、250nmであった。また、電気伝導率を測定したところ、500S/cm程度であった。
【0070】
本発明の筋肉電気刺激装置は、EMS(Electrical Muscle Stimulation)として用いることができ、慢性的な運動不足、過度の肥満、整形外科的疾患などのために運動を十分に行えない人々や、糖尿病性合併症、心血管系合併症などの臓器障害により運動制限されている患者に対して、過度な運動を強いることなく、筋肥大や代謝等を促進することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 筋肉電気刺激部
2 検出部
3 制御部
4 電源部
5 データ保管部
6 通信部
7 インターネット(無線接続)
10 第一身体部位
20 第二身体部位
30 利用者
40 第一身体部位に取り付けられた検出部
50、51 第二身体部位に取り付けられた筋肉電気刺激部
100 筋肉電気刺激装置