(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022145122
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】溶解性のマイクロニードルパッチ
(51)【国際特許分類】
A61M 37/00 20060101AFI20220926BHJP
【FI】
A61M37/00 530
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021046405
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】521118318
【氏名又は名称】株式会社マレソルアンドカンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100134072
【弁理士】
【氏名又は名称】白浜 秀二
(72)【発明者】
【氏名】光 勇人
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA72
4C267BB23
4C267CC01
4C267GG16
4C267HH30
(57)【要約】
【課題】sh-ポリペプチド-7を含有する溶解性のマイクロニードルパッチの提供。
【解決手段】マイクロニードルパッチ10が板状部11とニードル部12とを有し、少なくともニードル部12が溶解性のものであって、sh-ポリペプチド-7を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面と裏面とを有する板状部と、前記表面にあるとともに前記裏面から前記表面へ向かう方向へ延びていて高さが同じである多数のニードル部とを有するマイクロニードルパッチであって、
前記マイクロニードルパッチは、少なくとも前記ニードル部がsh-ポリペプチド-7を含む溶解性のものであることを特徴とする前記マイクロニードルパッチ。
【請求項2】
前記ニードル部は、前記板状部につながる基端部と前記基端部の反対端部である頂部とを有していて、前記高さが50~500ミクロンの範囲にあり、隣り合う前記ニードル部どうしの間では、前記頂部どうしの離間寸法が500~5000ミクロンの範囲にある請求項1記載のマイクロニードルパッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトの肌に貼付して使用するのに好適な溶解性のマイクロニードルパッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヒトの肌に貼付して使用するものであって、溶解性を有するマイクロニードルパッチはよく知られている。
【0003】
例えば、特許文献1は、発明の名称を「マイクロニードルシート及びその製造方法」とするものであって、マイクロニードルは、生体内溶解性を有する基材と、その基材中に分散保持された油性成分とを含有する。油性成分としては、バニリルブチル、油溶性ビタミンC誘導体、レチノール、スクワラン、セラミド等が使用される。
【0004】
また、特許文献2には、架橋されたヒアルロン酸、及び糖を含む溶解性マイクロニードルに係る発明が記載されている。糖としては、キシロース、スクロース、マルトース、ラクトース、グルコース等が使用される。このマイクロニードルは、例えばしわ改善用のものとして使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2019/087654号公報
【特許文献2】特表2020-535129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
sh-ポリペプチド-7がヒト成長ホルモンとしての作用・効果を有することは周知である。本発明が課題とするところは、そのsh-ポリペプチド-7がヒトの皮膚に対して使用されたときに、その作用・効果が速やかに発現することを可能にする手段の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために本発明が対象とするのは、表面と裏面とを有する板状部と、前記表面にあるとともに前記裏面から前記表面へ向かう方向へ延びていて高さが同じである多数のニードル部とを有するマイクロニードルパッチである。
【0008】
本発明が特徴とするところは、次のとおりである。すなわち、前記マイクロニードルパッチは、少なくとも前記ニードル部がsh-ポリペプチド-7を含む溶解性のものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るマイクロニードルパッチは、少なくともニードル部が溶解性のものであるから、このマイクロニードルパッチを皮膚に対して圧接しておくと、少なくともニードル部の頂部とその近傍とが皮下にまで届いて溶解し、ニードル部に含まれるsh-ポリペプチド-7の皮下への速やかな浸透が可能になる。その皮下への浸透によって、sh-ポリペプチド-7が持つヒト成長ホルモンとしての作用・効果の速やかな発現が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図面は、本開示に係る本発明の特定の実施形態を示し、発明の不可欠な構成ばかりでなく、選択的及び好ましい実施の形態を含む。
【発明を実施するための形態】
【0011】
添付の図面を参照して、本発明に係る溶解性のマイクロニードルパッチの詳細を説明すると、以下のとおりである。
【0012】
図1は、本発明に係る溶解性のマイクロニードルパッチ10の斜視図であって、マイクロニードルパッチ10の形状の一例を示している。
図2は、
図1のII-II線矢視図であるが、マイクロニードルパッチ10が拡大して示されている。
【0013】
マイクロニードルパッチ10は、ヒトの皮膚の適宜の部位に張り付けて、すなわち貼付する態様で使用するものであって、板状部11とニードル部12とを有し、板状部11の周縁部分11aには粘着剤13が塗布されていて、その粘着剤13は剥離可能な保護フィルム17によって被覆保護されている。板状部11は、表面15と裏面16とを有し、表面15の側にニードル部12が形成されている。板状部11はまた、その大きさや形状を自由に決めることができるが、図示例ではマイクロニードルパッチ10の取り扱いが容易となるように矩形に形成されていて、縦方向の寸法Aが30mm、横方向の寸法Bが70mmに設定されている。板状部11の厚さC(
図2参照)も自由に決めることができる値であるが、図示例では0.3mmに設定されている。保護フィルム17には、厚さ0.1mmのプラスチックフィルムが使用されている。マイクロニードルパッチ10を使用する際には、先ず保護フィルム17を周縁部11aから剥離して粘着剤13を露出させ、可撓性の板状部11の表面15を、より直接的にいうならば表面15と一体のニードル部12を身体の所要部位における皮膚に押圧しながら、粘着剤13を利用して周縁部11aを肌に対して圧着する。
【0014】
ニードル部12は、板状部11の表面15から垂直に起立するように延びていて、表面15と一体を成す基部18と、基部18の反対端部である頂部19とを有する。基部18から頂部19までの距離はニードル部12の高さHである。図示例において、高さHは50~500ミクロン、より好ましくは100~150ミクロンの範囲にある。また、隣り合うニードル部12は、頂部19どうしの離間距離が500~5000ミクロンとなるように作られている。すなわち、頂部19どうしは、少なくとも500~5000ミクロン離間している。ニードル部12の高さHは、マイクロニードルパッチ10を使用したときに、すなわち、マイクロニードルパッチ10を皮膚の所要部位に張り付けるように圧接したときに、頂部19が皮膚の角質層を貫通するが、真皮には届くことがないような寸法として設定されることが好ましく、ニードル部12がそのようなものであるときのマイクロニードルパッチ10は、それを使用したときに、皮膚にほとんど痛みを感じさせることがなく所要の効果を発揮することができる。ニードル部12はまた、径方向の断面を適宜の形状に設定することができる。例えば、その形状は、円形、楕円形、長円形、三角形を含む多角形等にすることができる。
【0015】
このように形成されているマイクロニードルパッチ10は、それがヒトの皮膚に対して圧接する態様で貼付されたときに、所要時間、例えば1~3時間程度経過すると、少なくともニードル部12の頂部19とその近傍とが角質層よりも内側、または角質層とそれよりも内側とにおいて溶解して皮膚の内側に浸透した状態となり得るような溶解性を有するものとして作られている。そのためのマイクロニードルパッチ10は、少なくともニードル部12における頂部19とその近傍とが、より好ましくはニードル部12の全体が皮膚の内側においての溶解性を示すとともに、ヒト成長ホルモンのコードを持つsh-ポリペプチド-7(sh-Polypeptide -7)を溶出させることができるように作られている。sh-Polypeptide-7は、米国のPersonal Care Products Councilの命名によるもので、日本化粧品工業連合会での表示名称は合成ヒト遺伝子組換ポリペプチド-7である。同連合会による化粧品表示成分名称リストでは、このポリペプチドが大腸菌E.coliによって産生させた単鎖の合成ヒトペプチドであると説明され、出発遺伝子は、成長ホルモンのコードを持ち、宿主が使用できるようにしたヒト遺伝子情報の合成複製物であるとも説明されている。
【0016】
なお、溶解性を有するマイクロニードルパッチ10は、例えばヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロースナトリウム等の合成または天然の水溶性高分子や、これら水溶性高分子の混合物にsh-ポリペプチド-7(sh-Polypeptide -7)を0.1~10質量%の割合で混合した混合物を所要形状のモールドに流し込み、固化させることによって得ることができる。また、マイクロニードルパッチ10では、必要に応じて、その混合物にポリソルベート80等の乳化剤やポロキサマー188等の界面活性剤、保水剤としてのトレハロース等を混合することができる。
【0017】
マイクロニードルパッチ10を得るためのモールドは、公知でもあり周知でもある。例えば、マイクロニードルパッチ10のニードル部12の形状に対応する凹部が多数形成されたモールドにsh-ポリペプチド-7(sh-Polypeptide -7)等を含む水溶性高分子の混合物を流し込み、固化させて、マイクロニードルパッチ10のニードル部12と板状部11とを有する成形品を作り、モールドからその成形品を取り出してから板状部11の周縁部分11aに粘着剤13を塗布し、粘着剤13の表面に保護フィルム17を張り付けることによってマイクロニードルパッチ10を得ることができる。
【0018】
このようにして得た溶解性のマイクロニードルパッチ10は、多数のニードル部12の先端部19が保護フィルム17で覆われることなく、露出した状態にあるが、ニードル部12が外気や異物によって汚染されることがないように、マイクロニードルパッチ10の全体を適宜の包装材料(図示せず)で包装しておくことが好ましい。
【符号の説明】
【0019】
10・・・マイクロニードルパッチ
11・・・板状部
11a・・周縁部分
12・・・ニードル部
15・・・表面
16・・・裏面
17・・・保護フィルム
18・・・基部
19・・・頂部
A・・・・縦方向の寸法
B・・・・横方向の寸法
C・・・・厚さ