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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022145128
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】複層ガラスユニット及び複層ガラス
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/06 20060101AFI20220926BHJP
   E06B 3/62 20060101ALI20220926BHJP
   E06B 3/66 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
C03C27/06 101D
E06B3/62
E06B3/66
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021046412
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】000004008
【氏名又は名称】日本板硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】久田 隆司
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一幸
(72)【発明者】
【氏名】山下 厳己
【テーマコード(参考)】
2E016
4G061
【Fターム(参考)】
2E016BA07
2E016CA01
2E016CB01
2E016CC02
2E016DA06
2E016DA07
2E016DD01
2E016EA01
2E016EA02
4G061AA10
4G061BA01
4G061CD25
(57)【要約】
【課題】温度差等による複層ガラスの反りに対して複層ガラスを適正に保持可能な複層ガラスユニット及びこの複層ガラスユニットに用いられる複層ガラスを提供する。
【解決手段】第1ガラス板11と、第2ガラス板12と、封止材と、スペーサーと、を有する複層ガラス10を備えると共に、第1ガラス板11の第1面31及び第2ガラス板12の第4面34の周縁8に対向し、第1ガラス板11及び第2ガラス板12を挟持する枠体20と、第1面31及び第4面34と枠体20との間の隙間を封止するシール部24と、を備え、シール部24は、第1面31及び第4面34の周縁8の角部8aに対向する第一シール領域41と、第1面31及び第4面34の周縁8のうち2つの角部8aに挟まれた辺部8bに対向する第二シール領域42とを有し、第二シール領域42の弾性率が第一シール領域41の弾性率よりも小さい。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と、前記第1面の裏側に設けられる第2面とを有する第1ガラス板と、
前記第2面に対向する第3面と、前記第3面の裏側に設けられる第4面とを有する第2ガラス板と、
前記第1ガラス板及び前記第2ガラス板の外縁全周に設けられ、前記第1ガラス板と前記第2ガラス板との間が断熱された断熱空間を封止する封止材と、
前記第1ガラス板と前記第2ガラス板との間に配置され、前記断熱空間を形成するスペーサーと、を有する複層ガラスを備えると共に、
前記第1面及び前記第4面の周縁に対向し、前記第1ガラス板及び前記第2ガラス板を挟持する枠体と、
前記第1面及び前記第4面と前記枠体との間の隙間を封止するシール部と、を備え、
前記シール部は、前記第1面及び前記第4面の前記周縁の角部に対向する第一シール領域と、前記第1面及び前記第4面の前記周縁のうち2つの前記角部に挟まれた辺部に対向する第二シール領域とを有し、
前記第二シール領域の弾性率が前記第一シール領域の弾性率よりも小さい複層ガラスユニット。
【請求項2】
前記シール部は、前記第二シール領域の厚みが前記第一シール領域の厚みよりも大きい請求項1に記載の複層ガラスユニット。
【請求項3】
前記シール部は、前記第二シール領域において分散して配置されている請求項1または2に記載の複層ガラスユニット。
【請求項4】
第1面と、前記第1面の裏側に設けられる第2面とを有する第1ガラス板と、
前記第2面に対向する第3面と、前記第3面の裏側に設けられる第4面とを有する第2ガラス板と、
前記第1ガラス板及び前記第2ガラス板の外縁全周に設けられ、前記第1ガラス板と前記第2ガラス板との間が断熱された断熱空間を封止する封止材と、
前記第1ガラス板と前記第2ガラス板との間に配置され、前記断熱空間を形成するスペーサーと、を有する複層ガラスを備えると共に、
前記第1面及び前記第4面の周縁に対向し、前記第1ガラス板及び前記第2ガラス板を挟持する枠体と、
前記第1面及び前記第4面と前記枠体との間の隙間を封止するシール部と、を備え、
前記シール部は、前記第1面及び前記第4面の前記周縁の角部のみに対向する複層ガラスユニット。
【請求項5】
第1面と、前記第1面の裏側に設けられる第2面とを有する第1ガラス板と、
前記第2面に対向する第3面と、前記第3面の裏側に設けられる第4面とを有する第2ガラス板と、
前記第1ガラス板及び前記第2ガラス板の外縁全周に設けられ、前記第1ガラス板と前記第2ガラス板との間が断熱された断熱空間を封止する封止材と、
前記第1ガラス板と前記第2ガラス板との間に配置され、前記断熱空間を形成するスペーサーと、を有する複層ガラスを備えると共に、
前記第1面及び前記第4面の周縁に対向し、前記第1ガラス板及び前記第2ガラス板を挟持する枠体と、
前記第1面及び前記第4面と前記枠体との間の隙間を封止するシール部と、を備え、
前記枠体は、前記第1面及び前記第4面の前記周縁の角部に対向する第一枠体領域と、前記第1面及び前記第4面の前記周縁のうち2つの前記角部に挟まれた辺部に対向する第二枠体領域とを有し、
前記枠体は、前記辺部と前記第二枠体領域との間の距離が、前記角部と前記第一枠体領域との間の距離よりも大きくなるよう構成されている複層ガラスユニット。
【請求項6】
第1面と、前記第1面の裏側に設けられる第2面とを有する第1ガラス板と、
前記第2面に対向する第3面と、前記第3面の裏側に設けられる第4面とを有する第2ガラス板と、
前記第1ガラス板及び前記第2ガラス板の外縁全周に設けられ、前記第1ガラス板と前記第2ガラス板との間が断熱された断熱空間を封止する封止材と、
前記第1ガラス板と前記第2ガラス板との間に配置され、前記断熱空間を形成するスペーサーと、を有する複層ガラスを備えると共に、
前記第1面及び前記第4面の周縁に対向し、前記第1ガラス板及び前記第2ガラス板を挟持する枠体と、
前記第1面及び前記第4面と前記枠体との間の隙間を封止するシール部と、を備え、
前記枠体は、前記第1面及び前記第4面の前記周縁の角部に対向する第一枠体領域と、前記第1面及び前記第4面の前記周縁のうち2つ前記角部に挟まれた辺部に対向する第二枠体領域とを有し、
前記第二枠体領域の弾性率が前記第一枠体領域の弾性率よりも小さい複層ガラスユニット。
【請求項7】
前記スペーサーを複数有し、複数の前記スペーサーが所定の間隔毎に設けられている請求項1から6のいずれか一項に記載の複層ガラスユニット。
【請求項8】
前記断熱空間は減圧されている請求項7に記載の複層ガラスユニット。
【請求項9】
前記スペーサーは、前記第1ガラス板及び前記第2ガラス板の周縁に設けられている請求項1から6のいずれか一項に記載の複層ガラスユニット。
【請求項10】
前記断熱空間に乾燥空気又は不活性ガスが封入されている請求項9に記載の複層ガラスユニット。
【請求項11】
前記第2面または前記第3面にLow-E膜が積層されている請求項1から10のいずれか一項に記載の複層ガラスユニット。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の複層ガラスユニットに用いられ、
前記第1ガラス板と、前記第2ガラス板と、前記封止材と、前記スペーサーと、を備えた複層ガラス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複層ガラスユニット及び複層ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複層ガラスの周縁部が枠体に支持された複層ガラスユニットが開示されている。複層ガラスユニットでは、複層ガラスと枠体との間にガスケットを介在させて複層ガラスを支持している。複層ガラスは、一対のガラス板の間に空隙を有した状態で一対のガラス板の周縁が封止材によって封止されて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-54748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載される複層ガラスは、建物の室外に配置された場合に、一対のガラス板の間の空隙の存在により、室外側のガラス板と室内側のガラス板との間で温度差が生じる。この温度差を受けて、室外側のガラス板及び室内側のガラス板には反りが発生することがある。このとき、複層ガラスはガスケット及び枠体によって支持されているものの、ガラス板の周縁角部と周縁中央部とにおいて反り度合いが異なる。このため、ガラス板の局部の反りが大きい場合には、ガスケットにおいてガラス板の反りを十分に吸収できず、複層ガラスの封止材が応力を受けて封止材が変形又は破損する可能性がある。複層ガラスにおいて封止材が変形又は破損した場合には、複層ガラスの空隙に空気や水が入ることにもなり、複層ガラスの断熱性や耐久性が低下することにもなる。
【0005】
そこで、温度差等による複層ガラスの反りに対して複層ガラスを適正に保持可能な複層ガラスユニット及びこの複層ガラスユニットに用いられる複層ガラスが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る複層ガラスユニットの特徴構成は、第1面と、前記第1面の裏側に設けられる第2面とを有する第1ガラス板と、前記第2面に対向する第3面と、前記第3面の裏側に設けられる第4面とを有する第2ガラス板と、前記第1ガラス板及び前記第2ガラス板の外縁全周に設けられ、前記第1ガラス板と前記第2ガラス板との間が断熱された断熱空間を封止する封止材と、前記第1ガラス板と前記第2ガラス板との間に配置され、前記断熱空間を形成するスペーサーと、を有する複層ガラスを備えると共に、前記第1面及び前記第4面の周縁に対向し、前記第1ガラス板及び前記第2ガラス板を挟持する枠体と、前記第1面及び前記第4面と前記枠体との間の隙間を封止するシール部と、を備え、前記シール部は、前記第1面及び前記第4面の前記周縁の角部に対向する第一シール領域と、前記第1面及び前記第4面の前記周縁のうち2つの前記角部に挟まれた辺部に対向する第二シール領域とを有し、前記第二シール領域の弾性率が前記第一シール領域の弾性率よりも小さい点にある。
【0007】
温度差を受けた複層ガラスでは、第1ガラス板または第2ガラス板は、周縁のうち角部よりも2つの角部に挟まれた辺部において変形(反り)が起こり易い。そこで、本構成では、複層ガラスと枠体との間に配置されるシール部において、複層ガラスの第1ガラス板及び第2ガラス板の周縁のうち辺部に対向する第二シール領域の弾性率が角部に対向する第一シール領域の弾性率よりも小さくなるように構成されている。これにより、複層ガラスの辺部の変形(反り)はシール部の第二シール領域によって許容され易くなる。その結果、複層ガラスの封止材が受ける応力を低減することができるので、封止材の耐久性を向上させることができる。こうして、複層ガラスを適正に保持可能な複層ガラスユニットを実現することができた。
【0008】
他の特徴構成は、前記シール部は、前記第二シール領域の厚みが前記第一シール領域の厚みよりも大きい点にある。
【0009】
本構成のように、シール部において第二シール領域の厚みが第一シール領域の厚みよりも大きいことで、複層ガラスの辺部の変形した際に第二シール領域は弾性変形し易くなる。これにより、複層ガラスの辺部の変形はシール部の第二シール領域によって許容され易くなる。
【0010】
他の特徴構成は、前記シール部は、前記第二シール領域において分散して配置されている点にある。
【0011】
本構成のように、シール部が第二シール領域において分散して配置されていると、複層ガラスの辺部に対するシール部の当接領域が小さくなる。これにより、複層ガラスの辺部の変形はシール部の第二シール領域によって許容され易くなる。
【0012】
本発明に係る複層ガラスユニットの特徴構成は、第1面と、前記第1面の裏側に設けられる第2面とを有する第1ガラス板と、前記第2面に対向する第3面と、前記第3面の裏側に設けられる第4面とを有する第2ガラス板と、前記第1ガラス板及び前記第2ガラス板の外縁全周に設けられ、前記第1ガラス板と前記第2ガラス板との間が断熱された断熱空間を封止する封止材と、前記第1ガラス板と第2ガラス板との間に配置され、前記断熱空間を形成するスペーサーと、を有する複層ガラスを備えると共に、前記第1面及び前記第4面の周縁に対向し、前記第1ガラス板及び前記第2ガラス板を挟持する枠体と、前記第1面及び前記第4面と前記枠体との間の隙間を封止するシール部と、を備え、前記シール部は、前記第1面及び前記第4面の前記周縁の角部のみに対向する点にある。
【0013】
本構成のように、シール部が第1ガラス板の第1面及び第2ガラス板の第4面の周縁の角部のみに対向することで、第1面及び第4面の周縁のうち2つの角部に挟まれた辺部にはシール部は対向せず、当該辺部と枠体との間に空隙が存在することになる。したがって、複層ガラスの辺部の変形は当該空隙の存在により許容され易くなる。その結果、複層ガラスの封止材が受ける応力を低減することができるので、封止材の耐久性を向上させることができる。こうして、複層ガラスを適正に保持可能な複層ガラスユニットを実現することができた。
【0014】
本発明に係る複層ガラスユニットの特徴構成は、第1面と、前記第1面の裏側に設けられる第2面とを有する第1ガラス板と、前記第2面に対向する第3面と、前記第3面の裏側に設けられる第4面とを有する第2ガラス板と、前記第1ガラス板及び前記第2ガラス板の外縁全周に設けられ、前記第1ガラス板と前記第2ガラス板との間が断熱された断熱空間を封止する封止材と、前記第1ガラス板と前記第2ガラス板との間に配置され、前記断熱空間を形成するスペーサーと、を有する複層ガラスを備えると共に、前記第1面及び前記第4面の周縁に対向し、前記第1ガラス板及び前記第2ガラス板を挟持する枠体と、前記第1面及び前記第4面と前記枠体との間の隙間を封止するシール部と、を備え、前記枠体は、前記第1面及び前記第4面の前記周縁の角部に対向する第一枠体領域と、前記第1面及び前記第4面の前記周縁のうち2つの前記角部に挟まれた辺部に対向する第二枠体領域とを有し、前記枠体は、前記辺部と前記第二枠体領域との間の距離が、前記角部と前記第一枠体領域との間の距離よりも大きくなるよう構成されている点にある。
【0015】
本構成のように、枠体は、第1面及び第4面の周縁のうち2つの角部に挟まれた辺部と第二枠体領域との間の距離が、第1面及び第4面の周縁の角部と第一枠体領域との間の距離よりも大きいことで、辺部と第二枠体領域との間には厚みの大きいシール部やシール部と第二枠体領域との間に空隙を設けたりすることができる。これにより、複層ガラスの辺部の変形は第二枠体領域との間において許容され易くなる。
【0016】
本発明に係る複層ガラスユニットの特徴構成は、第1面と、前記第1面の裏側に設けられる第2面とを有する第1ガラス板と、前記第2面に対向する第3面と、前記第3面の裏側に設けられる第4面とを有する第2ガラス板と、前記第1ガラス板及び前記第2ガラス板の外縁全周に設けられ、前記第1ガラス板と前記第2ガラス板との間が断熱された断熱空間を封止する封止材と、前記第1ガラス板と第2ガラス板との間に配置され、前記断熱空間を形成するスペーサーと、を有する複層ガラスを備えると共に、前記第1面及び前記第4面の周縁に対向し、前記第1ガラス板及び前記第2ガラス板を挟持する枠体と、前記第1面及び前記第4面と前記枠体との間の隙間を封止するシール部と、を備え、前記枠体は、前記第1面及び前記第4面の前記周縁の角部に対向する第一枠体領域と、前記第1面及び前記第4面の前記周縁のうち2つ前記角部に挟まれた辺部に対向する第二枠体領域とを有し、前記第二枠体領域の弾性率が前記第一枠体領域の弾性率よりも小さい点にある。
【0017】
本構成のように、枠体において、第1面及び第4面の周縁のうち2つ角部に挟まれた辺部に対向する第二枠体領域の弾性率が、第1面及び第4面の周縁の角部に対向する第一枠体領域の弾性率よりも小さいことで、複層ガラスの辺部の変形は第二枠体領域の存在により許容され易くなる。その結果、複層ガラスの封止材が受ける応力を低減することができるので、封止材の耐久性を向上させることができる。こうして、複層ガラスを適正に保持可能な複層ガラスユニットを実現することができた。
【0018】
他の特徴構成は、前記スペーサーを複数有し、複数の前記スペーサーが所定の間隔毎に設けられている点にある。
【0019】
本構成によれば、複数のスペーサーが所定の間隔毎に設けられているので、複数のスペーサーによって第1ガラス板と第2ガラス板との間の断熱空間の間隔を保持し易くなる。
【0020】
他の特徴構成は、前記断熱空間は減圧されている点にある。
【0021】
本構成のように、断熱空間が減圧されていることで、複層ガラスにおいて断熱性能を向上させることができる。
【0022】
他の特徴構成は、前記スペーサーは、前記第1ガラス板及び前記第2ガラス板の周縁に設けられている点にある。
【0023】
本構成のように、スペーサーが第1ガラス板及び第2ガラス板の周縁に設けられることで、第1ガラス板及び第2ガラス板の外縁全周に設けられて断熱された断熱空間を封止する封止材を容易に配置することできる。
【0024】
他の特徴構成は、前記断熱空間に乾燥空気又は不活性ガスが封入されている点にある。
【0025】
本構成のように、断熱空間に乾燥空気又は不活性ガスが封入されていることで、複層ガラスにおいて断熱性能を向上させることができる。
【0026】
他の特徴構成は、前記第2面または前記第3面にLow-E膜が積層されている点にある。
【0027】
Low-E膜とは、低放射性の特殊金属膜をコーティングし、熱エネルギーを有する赤外線域における反射率を大きくした膜である。本構成の複層ガラスユニットにおいて、第1ガラスの第1面を室外側とし、第2ガラス板の第4面を室外側として、以下説明する。Low-E膜が第2面に積層されることで、室外からの太陽熱がLow-E膜で反射されるため、複層ガラスの遮熱性能が向上する。一方、Low-E膜が第3面に積層されることで、室内の暖房熱等がLow-E膜で反射されるため、複層ガラスの断熱性能が向上する。
【0028】
本発明に係る複層ガラスの特徴構成は、上記構成の何れかの複層ガラスユニットに用いられ、前記第1ガラス板と、前記第2ガラス板と、前記封止材と、前記スペーサーと、を備えた点にある。
【0029】
本構成の複層ガラスは、上記構成の複層ガラスユニットに用いられることで適正に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】第1実施形態の複層ガラスユニットの正面図である。
図2図1のII-II矢視断面図である。
図3図1のIII-III矢視断面図である。
図4】従来の複層ガラスユニットの模式断面図ある。
図5】第1実施形態の複層ガラスユニットの模式断面図ある。
図6】第1実施形態の変形例の縦断面図ある。
図7】第2実施形態の部分横断面図である。
図8】第3実施形態の部分横断面図である。
図9】第4実施形態の部分横断面図である。
図10】第5実施形態の部分横断面図である。
図11】第6実施形態の部分横断面図である。
図12】他の実施形態の部分縦断面図である。
図13】他の実施形態の部分縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に、本発明に係る複層ガラスユニットの実施形態について、図面に基づいて説明する。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0032】
〔第1実施形態〕
本発明に係る複層ガラスユニット(以下、「ガラスユニット」と称する)100の第1実施形態について、図1図5に基づいて説明する。ガラスユニット100は、複層ガラス10と、枠体20と、複層ガラス10と枠体20との間に配置されるシール部24と、を備える。
【0033】
図2に示されるように、複層ガラス10は、第1ガラス板11と第2ガラス板12と、第1ガラス板11と第2ガラス板12との間に配置される封止材13及びスペーサー14とによって構成される。封止材13は、第1ガラス板11及び第2ガラス板12の外縁全周に設けられ、第1ガラス板11と第2ガラス板12との間が断熱された断熱空間5を封止する。スペーサー14は、第1ガラス板11と第2ガラス板12との間に配置され、断熱空間5を形成する。断熱空間5には、例えば乾燥空気又は不活性ガス等が封入されている。スペーサー14は樹脂によって形成されている。封止材13は、スペーサー14よりも複層ガラス10の外周側に位置して断熱空間5と外気との流通を遮断する。第1ガラス板11は、第1面31と、第1面31の裏側に設けられる第2面32とを有する耐熱ガラスである。第2ガラス板12は、第1ガラス板11の第2面32に対向する第3面33と、第3面33の裏側に設けられる第4面34とを有するLow-Eガラスである。本実施形態では、第1ガラス板11の第1面31が室外側に配置されている。
【0034】
図1及び図2に示されるように、複層ガラス10は、4辺の周縁8を有する矩形状であり、周縁8に沿った凹部を有する枠体20に嵌め込み固定されている。枠体20は、第1面31及び第4面34の周縁8に対向し、第1ガラス板11及び第2ガラス板12を挟持する。本実施形態では、枠体20が凹部を有するサッシの固定枠である。複層ガラス10の4辺を嵌め込む枠体20の凹部の底面に、複層ガラス10の端面4の保護機能を備えたセッティングブロック22が設置されている。複層ガラス10の端面4は、第1ガラス板11の端面16と、封止材13の端面と、第2ガラス板12の端面17とを含む。セッティングブロック22は、複層ガラス10の重量を十分に分散して支持できる程度に複層ガラス10の下端部の数箇所に設置されていればよく、複層ガラス10の4辺の全領域に亘って設ける必要はないが、複層ガラス10の4辺の全領域に亘って設けても良い。
【0035】
複層ガラス10を枠体20で固定するため、複層ガラス10と枠体20との間にバックアップ材23が設けられる。さらに、複層ガラス10と枠体20との間にシール部24が設けられる。シール部24は、第1ガラス板11及び第2ガラス板12の周縁8に配置され、枠体20の凹部への水の浸入を防止する。また、シール部24は、複層ガラス10が封止材13を有しない場合には断熱空間5と外気との流通を遮断することもできる。こうして、複層ガラス10は、シール部24を介して枠体20に挟持可能に構成されており、シール部24によって枠体20との隙間が埋められている。シール部24は、弾性を有する各種ゴムや樹脂によって構成されている。
【0036】
図1及び図3に示すように、シール部24は、第1面31及び第4面34の周縁8の角部8aに対向する第一シール領域41と、第1面31及び第4面34の周縁8のうち2つの角部8a,8aに挟まれた辺部8bに対向する第二シール領域42とを有する。ここで、シール部24においては、第二シール領域42の弾性率が第一シール領域41の弾性率よりも小さい。第一シール領域41の弾性率は、0.2N/mm以上2.0N/mm以下であることが好ましく、0.4N/mm以上1.0N/mm以下であることが更に好ましい。第二シール領域42の弾性率は、0.01N/mm以上0.4N/mm以下であることが好ましく、0.1N/mm以上0.2N/mm以下であることが更に好ましい。シール部24において、第一シール領域41及び第二シール領域42は、異なるゴムや樹脂によって構成される。シール部24は、第一シール領域41のシール材と第二シール領域42のシール材とを接着または溶着して一体化してもよいし、接合しない状態で配置してもよい。
【0037】
以下、図4及び図5を用いて本実施形態の作用効果を説明する。図4は従来のガラスユニット200の構成を示す模式断面図であり、図5は本実施形態のガラスユニット100の構成を示す模式断面図である。
【0038】
図4に示す従来のガラスユニット200では、シール部24aは全体において弾性率が同じである。第1ガラス板11及び第2ガラス板12は、加熱されて高温になると膨張し冷却されて低温になると収縮する。ガラスユニット200において、例えば第2ガラス板12が加熱された状態を想定する。その場合、第2ガラス板12の端面17は枠体20(セッティングブロック22)に当接しているため、第2ガラス板12は板面に沿って膨張することができず板面に垂直な方向に変形して反るようになる。ただし、第2ガラス板12の板面に対向する位置にはシール部24a及び枠体20が存在する。このため、第2ガラス板12は板面に垂直な方向の変形はシール部24a及び枠体20に規制されることとなり、第2ガラス板12はシール部24aからの応力を受ける。
【0039】
シール部24aから第2ガラス板12が受ける応力は、第2ガラス板12において板面に沿う方向にも発生し、第2ガラス板12と封止材13との間のせん断応力として作用する。当該せん断応力により第2ガラス板12と封止材13との界面に剥がれが生じることがあり、その場合には断熱空間5の気密性が失われ、ガラスユニット200の断熱性が損なわることになる。
【0040】
一方、図5に示す本実施形態のガラスユニット100では、第2ガラス板12の2つの角部8aに挟まれた辺部8b(中央部分)がシール部24のうち弾性率の小さい第二シール領域42に対向する。このため、第2ガラス板12が第二シール領域42に向けて反る際に、第2ガラス板12の当該反りを第二シール領域42によって吸収することになる。換言すると、第二シール領域42が第2ガラス板12の反りを吸収する緩衝機能を発揮する。これにより、シール部24から第2ガラス板12が受ける応力を低減することができ、第2ガラス板12に作用するせん断応力が小さくなる。その結果、封止材13の剥離が抑制されるので、断熱空間5の気密性を適正に維持することができる。
【0041】
ガラスユニット100は、第2ガラス板12の第3面33の全面にLow-E膜12aが積層されている。Low-E膜12aは、金属層の単層、又は、金属層、金属酸化物層、金属窒化物層及び金属酸窒化物層から選ばれる2種以上の層を積層した多層からなる。金属層の好適な例としては銀層が挙げられる。金属酸化物層の好適な例としては、酸化スズ層、酸化チタン層または酸化亜鉛層が挙げられる。金属窒化物層の好適な例としては窒化ケイ素が挙げられる。金属酸窒化物層の好適な例としては酸窒化ケイ素が挙げられる。Low-E膜12aは、物理的気相成長法(PVD)等の真空成膜法が好ましく、特にスパッタリング法が大面積を均一に成膜できるため好ましい。
【0042】
Low-E膜12aは、低放射性の特殊金属膜をコーティングし、熱エネルギーを有する赤外線域における反射率を大きくした膜である。ガラスユニット100において、第1ガラス板11の第1面31を室外側とし、第2ガラス板12の第4面34を室外側として、以下説明する。Low-E膜12aが第3面33に積層されることで、室内の暖房熱等がLow-E膜12aで反射されるため、複層ガラス10の断熱性能が向上する。Low-E膜12aは第2面32に積層してもよい。この場合には、室外からの太陽熱が第2面32に積層されたLow-E膜12aで反射されるため、複層ガラス10の遮熱性能が向上する。
【0043】
バックアップ材23及びシール部24は、複層ガラス10を枠体20に支持するための部材なので、複層ガラス10を破損させないように、ある程度の弾性を有する樹脂又はゴムで構成されている。
【0044】
〔第1実施形態の変形例〕
図6に示されるように、複層ガラス10は、断熱空間5が減圧された減圧複層ガラスによって構成されていてもよい。図6に示される複層ガラス10では、第2面32及び第3面33の間に、スペーサー14を複数有し、複数のスペーサー14が第2面32及び第3面33の板面において所定の間隔毎に設けられている。
【0045】
複数のスペーサー14は、例えば円柱状の柱体によって構成されている。当該柱体は、アルミナやジルコニアなどのセラミック等によって形成される。柱体は、ジルコニアなどのナノ粒子充填剤を含んでもよい。
【0046】
〔第2実施形態〕
ガラスユニット100の第2実施形態について、図7に基づいて説明する。第1実施形態と同様の部材については同じ番号を付しており、ここでの説明は省略する。
【0047】
本実施形態は、図7に示されるように、枠体20は、第1面31及び第4面34の周縁8の角部8aに対向する第一枠体領域26と、第1面31及び第4面34の周縁8のうち2つの角部8aに挟まれた辺部8bに対向する第二枠体領域27とを有する。ここで、第二枠体領域27の弾性率が第一枠体領域26の弾性率よりも小さい。第一枠体領域26の弾性率は、10N/mm以上250N/mm以下であることが好ましく、70N/mm以上150N/mm以下であることが更に好ましい。第二枠体領域27の弾性率は、0.1N/mm以上70N/mm以下であることが好ましく、30N/mm以上70N/mm以下であることが更に好ましい。
【0048】
第2実施形態では、枠体20において、第二枠体領域27の弾性率が第一枠体領域26の弾性率よりも小さいことで、複層ガラス10の辺部8bの変形は第二枠体領域27により許容され易くなる。また、枠体20自体も熱により変形して第一枠体領域26よりも第二枠体領域27の方が反りやすいが、第二枠体領域27の弾性率を小さくすることにより、枠体20の変形に起因して複層ガラス10へ伝播する応力が緩和される。その結果、複層ガラス10の封止材13が受ける応力を低減することができるので、封止材13の耐久性を向上させることができる。
【0049】
〔第3実施形態〕
ガラスユニット100の第3実施形態について、図8に基づいて説明する。第1実施形態と同様の部材については同じ番号を付しており、ここでの説明は省略する。
【0050】
本実施形態は、図8に示されるように、枠体20は、第1面31及び第4面34の周縁8のうち、角部8aに対向する第一枠体領域26と、辺部8bに対向する第二枠体領域27と、を有し、第二枠体領域27が第一枠体領域26よりも辺部8bから離れるように、ガラス板11,12の板面に対して垂直な方向において、辺部8bと第二枠体領域27との間の距離が、角部8aと第一枠体領域26との間の距離よりも大きくなるように構成されている。
【0051】
シール部24は、第二シール領域42が辺部8bと第二枠体領域27とに亘って配置されている。したがって、シール部24は、第二シール領域42の厚みが第一シール領域41の厚みよりも大きい。第一シール領域41よりも厚みの大きい第二シール領域42が複層ガラス10の辺部8bに対向することで、辺部8bが変形した際に第二シール領域42は弾性変形し易くなる。これにより、複層ガラス10の辺部8bの変形はシール部24の第二シール領域42によって許容され易くなる。その結果、複層ガラス10の封止材13が受ける応力を低減することができるので、封止材13の耐久性を向上させることができる。
【0052】
〔第4実施形態〕
ガラスユニット100の第4実施形態について、図9に基づいて説明する。第1実施形態と同様の部材については同じ番号を付しており、ここでの説明は省略する。
【0053】
本実施形態においても、第3実施形態と同じく、図9に示されるように、枠体20は、第一枠体領域26及び第二枠体領域27を有し、第二枠体領域27が第一枠体領域26よりも辺部8bから離れるように、ガラス板11,12の板面に対して垂直な方向において、辺部8bと第二枠体領域27との間の距離が、角部8aと第一枠体領域26との間の距離よりも大きくなるように構成されている。
【0054】
ただし、本実施形態では第3実施形態とは異なり、シール部24は一定の厚みを有して構成されている。したがって、第一シール領域41と第二シール領域42とは厚みが同じであり、第二シール領域42と第二枠体領域27との間に空隙50が形成されている。
【0055】
本構成により、複層ガラス10の辺部8bの変形は空隙50の存在により許容され易くなる。また、枠体20自体も熱により変形して第一枠体領域26よりも第二枠体領域27の方が反りやすいが、空隙50の存在により、枠体20の変形に起因した応力が複層ガラス10に伝播しない。その結果、複層ガラス10の封止材13が受ける応力を低減することができるので、封止材13の耐久性を向上させることができる。なお、本実施形態におけるシール部24は、第一シール領域41の弾性率と第二シール領域42の弾性率とが同じであってもよい。
【0056】
〔第5実施形態〕
ガラスユニット100の第5実施形態について、図10に基づいて説明する。第1実施形態と同様の部材については同じ番号を付しており、ここでの説明は省略する。
【0057】
本実施形態では、図10に示されるように、シール部24は、角部8aに対向する領域に第一シール領域41が設けられ、辺部8bに対向する領域には設けられていない。したがって、シール部24は、第1面31及び第4面34の周縁8の角部8aのみに対向する。これにより、第1面31及び第4面34の辺部8bにはシール部24が対向せず、当該辺部8bと枠体20との間に空隙51が存在することになる。したがって、複層ガラス10の辺部8bの変形は当該空隙51の存在により許容され易くなる。また、枠体20自体も熱により変形して第一枠体領域26よりも第二枠体領域27の方が反りやすいが、空隙51の存在により、枠体20の変形に起因した応力が複層ガラス10に伝播しない。その結果、複層ガラス10の封止材13が受ける応力を低減することができるので、封止材13の耐久性を向上させることができる。
【0058】
〔第6実施形態〕
ガラスユニット100の第6実施形態について、図11に基づいて説明する。第1実施形態と同様の部材については同じ番号を付しており、ここでの説明は省略する。
【0059】
本実施形態では、図11に示されるように、シール部24は、第二シール領域42において分散して配置されている。シール部24が第二シール領域42において分散して配置されていると、複層ガラス10の辺部8bに対するシール部24の当接領域が小さくなる。これにより、複層ガラス10の辺部8bの変形はシール部24の第二シール領域42によって許容され易くなる。その結果、複層ガラス10の封止材13が受ける応力を低減することができるので、封止材13の耐久性を向上させることができる。
【0060】
〔他の実施形態〕
(1)ガラスユニット100は、図12に示されるように、シール部24がサッシ枠28に装着するために使用されるグレージングチャネル29に支持される構成でもよい。この場合は、グレージングチャネル29が第1ガラス板11及び第2ガラス板12を挟持する枠体に相当する。
【0061】
(2)ガラスユニット100は、図13に示されるように、シール部24は、枠体20との対向面である外面に複数の突条43を有する形状であってもよい。
【0062】
(3)上記の実施形態では、シール部24において、第二シール領域42が単体のシール材によって構成される例を示したが、第二シール領域42は異なる弾性率を有する複数のシール材によって構成してもよい。異なる弾性率を有する複数のシール材は、例えば第二シール領域42の長手方向における中央側ほど弾性率が小さくなるよう配置してもよい。このように複数のシール材を第二シール領域42に配置することで、第二シール領域42において複層ガラス10の反りの吸収性能をさらに向上させることができる。その他、シール部24として単体のシール材に添加剤を混入したうえで、第一シール領域41及び第二シール領域42において添加剤の量を変えること第二シール領域42の弾性率を第一シール領域41の弾性率よりも小さくなる構成でもよい。
【0063】
(4)上記の実施形態では、枠体20がサッシの固定枠である例を示したが、枠体20はサッシの固定枠に限定されず、一対のL型のアングル等、他の構成であってもよい。
【0064】
(5)上記の実施形態では、ガラスユニット100がセッティングブロック22及びバックアップ材23を含む例を示したが、ガラスユニット100がセッティングブロック22及びバックアップ材23の一方または両方を有さずに構成されていてもよい。
【0065】
(6)上記の実施形態では、ガラス板11,12を耐熱ガラス又はLow-Eガラスで構成したが、ソーダガラスや強化ガラス等で構成されていても良い。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、複層ガラスユニット及び複層ガラスに広く適用することができる。
【符号の説明】
【0067】
4,16,17:端面
5 :断熱空間
8 :周縁
8a :角部
8b :辺部
10 :複層ガラス
11 :第1ガラス板
12 :第2ガラス板
12a :Low-E膜
13 :封止材
14 :スペーサー
20 :枠体
24 :シール部
24a :シール部
26 :第一枠体領域
27 :第二枠体領域
31 :第1面
32 :第2面
33 :第3面
34 :第4面
41 :第一シール領域
42 :第二シール領域
50,51 :空隙
100 :ガラスユニット(複層ガラスユニット)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13