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  • 特開-給湯器の故障推定システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022145132
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】給湯器の故障推定システム
(51)【国際特許分類】
   F24H 15/10 20220101AFI20220926BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20220926BHJP
   H04M 11/00 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
F24H1/00 G
G06N20/00
H04M11/00 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021046416
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】長江 悠介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智之
(72)【発明者】
【氏名】牟田 幹彦
(72)【発明者】
【氏名】中島 幸祐
(72)【発明者】
【氏名】玉井 淳基
(72)【発明者】
【氏名】宇都宮 福郎
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 弘明
【テーマコード(参考)】
3L122
5K201
【Fターム(参考)】
3L122BA31
3L122BA36
3L122BA38
3L122EA11
3L122EA35
3L122GA04
5K201BA02
5K201DC04
5K201EA05
5K201EC06
5K201ED08
(57)【要約】
【課題】給湯器の多岐に亘る機種に応じて故障を推定可能な故障推定システムの提供。
【解決手段】給湯器1の仕様情報を含む基本情報データを入力する入力層23aと、給湯器1のメンテナンス時期に関する推定値を出力する出力層23cと、を有する機械学習式の入出力ユニット23と、入出力ユニット23に用いられる複数の学習済データを記憶する学習済データ記憶部25と、学習済データ記憶部25に記憶された複数の学習済データから基本情報データに応じた学習済データを選択して入出力ユニット23に実装する学習済データ選択部26と、が備えられている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各家庭に設置された給湯器の故障推定システムであって、
前記給湯器の仕様情報を含む基本情報データを入力する入力層と、前記給湯器のメンテナンス時期に関する推定値を出力する出力層と、を有する機械学習式の入出力ユニットと、
前記入出力ユニットに用いられる複数の学習済データを記憶する学習済データ記憶部と、
前記学習済データ記憶部に記憶された前記複数の学習済データから前記基本情報データに応じた前記学習済データを選択して前記入出力ユニットに実装する学習済データ選択部と、が備えられている給湯器の故障推定システム。
【請求項2】
前記基本情報データに、前記仕様情報と、前記給湯器の使用環境と、が含まれ、
前記入力層に、前記仕様情報と前記使用環境との夫々が入力される請求項1に記載の給湯器の故障推定システム。
【請求項3】
前記学習済データ記憶部は、前記複数の学習済データの夫々を前記仕様情報毎に記憶し、
前記学習済データ選択部は、前記入力層に入力される前記仕様情報と一致する第一学習済データが前記学習済データ記憶部に存在する場合、前記第一学習済データを選択して前記入出力ユニットに実装し、前記第一学習済データが前記学習済データ記憶部に存在しない場合、前記複数の学習済データの中から前記入力層に入力される前記仕様情報と最も一致率の高い第二学習済データを選択して前記入出力ユニットに実装する請求項1または2に記載の給湯器の故障推定システム。
【請求項4】
前記基本情報データに、前記給湯器の設置場所における水質情報が含まれる請求項1から3の何れか一項に記載の給湯器の故障推定システム。
【請求項5】
前記入力層に、前記給湯器の運転状態に関するデータを有する運転状態データが前記各家庭からデータ通信網を介して入力され、
前記入出力ユニットは、前記基本情報データと前記運転状態データとに基づいて前記推定値を出力する請求項1から4の何れか一項に記載の給湯器の故障推定システム。
【請求項6】
前記推定値は、前記メンテナンス時期に到達するまでの時間であって、
前記時間が前記メンテナンス時期に対して予め設定された閾値よりも近くなると前記メンテナンス時期を報知する報知部が備えられている請求項1から5の何れか一項に記載の給湯器の故障推定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯器の故障推定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示された故障推定システム(文献では「故障予兆検知システム」)では、各家庭に設置された家庭用システム機器からデータ通信網を介して取得された運転状態データが学習済の機械学習ユニットに入力される。そして、機械学習ユニットから出力されるデータに基づいて故障予兆が判定される。機械学習ユニットは、家庭用システム機器の特定の運転状態データを入力することによって、特定の特徴データを出力するように学習される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-170596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
機械学習ユニットで適切な機械学習を行うためには、多量の家庭用システム機器から長期間に亘って多量のデータが送られる必要がある。しかし、家庭用システム機器が給湯器である場合、給湯器の機種は多岐におよぶ。設置台数の少ない機種であると、機械学習を行うための十分なデータを取得できない場合もある。また、市場に出回っている給湯器には、データ通信網に接続されていない給湯器も多数あり、そのような給湯器に対しては現状のシステムでは故障予兆を推定できない。
【0005】
本発明の目的は、給湯器の多岐に亘る機種に応じて故障を推定可能な故障推定システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、各家庭に設置された給湯器の故障推定システムであって、前記給湯器の仕様情報を含む基本情報データを入力する入力層と、前記給湯器のメンテナンス時期に関する推定値を出力する出力層と、を有する機械学習式の入出力ユニットと、前記入出力ユニットに用いられる複数の学習済データを記憶する学習済データ記憶部と、前記学習済データ記憶部に記憶された前記複数の学習済データから前記基本情報データに応じた前記学習済データを選択して前記入出力ユニットに実装する学習済データ選択部と、が備えられていることを特徴とする。
【0007】
給湯器のメンテナンス時期は、仕様によって大きく変化する場合が多いが、仕様情報が共通する給湯器同士であれば、機種の違いがあっても似たような寿命になる場合も多いものと考えられる。本発明によると、学習済データ記憶部に複数の学習済データが記憶され、基本情報データに応じた学習済データが選択される。基本情報データには仕様情報が含まれるため、本発明であれば、複数の学習済データの中から仕様情報に応じた学習済データの選択が可能となる。このため、設置台数の少ない機種の給湯器や、データ通信網に接続されていない給湯器に対しても、共通の仕様情報を有する給湯器の学習済データに基づいて故障予兆が可能となる。これにより、給湯器の多岐に亘る機種に応じて故障を推定可能な故障推定システムが実現される。
【0008】
本発明において、前記基本情報データに、前記仕様情報と、前記給湯器の使用環境と、が含まれ、前記入力層に、前記仕様情報と前記使用環境との夫々が入力されると好適である。
【0009】
給湯器の寿命やメンテナンス時期は、仕様や使用環境によって変わる。本構成であれば、入出力ユニットの入出力構造に仕様や使用環境が考慮され、出力層から出力される推定値の精度が高くなる。
【0010】
本発明において、前記学習済データ記憶部は、前記複数の学習済データの夫々を前記仕様情報毎に記憶し、前記学習済データ選択部は、前記入力層に入力される前記仕様情報と一致する第一学習済データが前記学習済データ記憶部に存在する場合、前記第一学習済データを選択して前記入出力ユニットに実装し、前記第一学習済データが前記学習済データ記憶部に存在しない場合、前記複数の学習済データの中から前記入力層に入力される前記仕様情報と最も一致率の高い第二学習済データを選択して前記入出力ユニットに実装すると好適である。
【0011】
給湯器の機種は多岐におよぶため、推定対象の給湯器に学習済データが存在しない場合が考えられる。本構成であれば、学習済データの存在しない給湯器であっても、一致率の高い第二学習済データに基づいて推定値が出力されるため、給湯器の多種多様な機種に対してメンテナンス時期を推定できる。
【0012】
本発明において、前記基本情報データに、前記給湯器の設置場所における水質情報が含まれると好適である。
【0013】
本願発明者の知見によると、給湯器に供給される水の水質は、給湯器の寿命に影響を及ぼす。本構成であれば、基本情報データに、給湯器の設置場所における水質情報が含まれるため、出力層から出力される推定値の精度が一層向上する。
【0014】
本発明において、前記入力層に、前記給湯器の運転状態を示す運転状態データが前記各家庭からデータ通信網を介して入力され、前記入出力ユニットは、前記基本情報データと前記運転状態データとに基づいて前記推定値を出力すると好適である。
【0015】
本構成であれば、運転状態データが各家庭からデータ通信網を介して入力層に入力されるため、給湯器の運転状態に応じた推定値の出力が可能となる。これにより、出力層から出力される推定値の精度が一層向上する。
【0016】
本発明において、前記推定値は、前記メンテナンス時期に到達するまでの時間であって、前記時間が前記メンテナンス時期に対して予め設定された閾値よりも近くなると前記メンテナンス時期を報知する報知部が備えられていると好適である。
【0017】
本構成によって、作業者は、給湯器が故障する前に給湯器を容易にメンテナンスできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】各世帯に配備された給湯器と管理コンピュータとの接続を示す図である。
図2】給湯器の故障推定システムを示すブロック図である。
図3】学習済データを機械学習ユニットに実装するフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
故障推定システムは、給湯器1におけるメンテナンス時期を推定する。故障推定システムは、例えば、ガスサービスセンタに設置されている管理コンピュータ2に構築されている。図1に示されるように、戸建住宅や集合住宅の夫々に給湯器1が配備されている。なお、図1では、集合住宅における給湯器1が図示されていないが、集合住宅の各世帯に給湯器1が配備されている。各世帯に配備された給湯器1の夫々の制御ユニットと、管理コンピュータ2と、はインターネットや公衆回線などからなるデータ通信網DNを通じて接続されている。これにより、給湯器1の制御ユニットと管理コンピュータ2との間で種々の情報が送受信可能である。
【0020】
図2に示されるように、管理コンピュータ2に、データ取得部21と、データ格納部22と、機械学習ユニット23と、報知部24と、学習済データ記憶部25と、学習済データ選択部26と、が備えられている。機械学習ユニット23は、本発明の『機械学習式の入出力ユニット』に相当する。
【0021】
複数の給湯器1の夫々の運転状態データ及び仕様情報が、給湯器1からデータ通信網DNを介してデータ取得部21へ送られる。つまり、データ取得部21は、複数の給湯器1の夫々からデータ通信網DNを介して、給湯器1の仕様情報と、給湯器1の運転状態に関する運転情報データと、を取得する。給湯器1からデータ取得部21へ送られる頻度は、一時間に一回であっても良いし、一日に一回であっても良い。そして、運転状態データは、運転状態データ群の一部としてデータ格納部22に格納される。データ格納部22に格納されるデータに、運転状態データ群と、基本情報データ群と、が含まれている。
【0022】
運転状態データ群は、給湯器1からデータ通信網DNを介してデータ取得部21へ送られた運転状態データの集合体である。運転状態データ群に、主に給湯器1の故障の予兆となるデータが含まれる。運転状態データ群に、給湯器1の累積使用時間、給湯器1の累積給湯使用量、給湯器1の燃焼ファンの回転数(瞬時値)、給湯器1の燃焼ファンの電流値(瞬時値)、風呂ポンプの回転数(瞬時値)、制御ユニットにおけるPWM比(瞬時値)、給湯器1に備えられたサーミスタの温度(瞬時値)、等の時系列データが含まれる。なお、給湯器1の燃焼ファンは、給湯器1のガスバーナーに燃焼用の空気を供給するファンである。また、給湯器1が、例えば床暖房機能と浴室乾燥暖房機能とを有する場合、給湯器1の使用時間は、例えば、給湯用バーナーの使用時間と、床暖房用バーナーの使用時間と、浴室乾燥暖房用バーナーの使用時間と、に分けられても良い。給湯器1が床暖房機能や浴室乾燥暖房機能を有する場合、熱媒用ポンプの回転数が運転状態データ群に含まれても良い。
【0023】
基本情報データ群は、給湯器1の仕様情報、給湯器1の使用環境等である。給湯器1の仕様情報は、例えば給湯器1の機種や品番や型番、出湯号数、構造(例えば1缶2水、2缶3水等)、機能(給湯・ふろ自動・追い炊き・床暖房・浴室暖房)、燃料の種類(13A、LPG、灯油等)、排気バリエーション、潜熱回収機構の有無、ドレン排水方式の有無、メーカー、製造年月日、等である。給湯器1の使用環境は、例えば給湯器1の設置年月日(使用年数)、給湯器1が使用される家庭の家族構成、世帯人数、住宅の延床面積、住宅の断熱性能及び機密性能、住宅の区分(戸建住宅/集合住宅、新築物件/既築物件、所有物件/賃貸物件等の区分)、給湯器1の使用される地域情報等である。地域情報は、図1に地域A,B,Cで例示される給湯器1の設置場所、給湯器1の設置場所における水道水の水質情報、給湯器1の設置場所における海岸からの距離等である。水質情報に、塩素濃度分布、地域ごとの水質要因による不具合の有無、水素イオン指数、不純物濃度等が含まれる。加えて、基本情報データ群には、複数の給湯器1の夫々のメンテナンス履歴(例えば部品の交換履歴等)も記憶される。
【0024】
基本情報データ群は、データ通信網DNを介してデータ取得部21で取得される仕様情報と、データ通信網DNを介さずに取得されたオフラインデータと、の集合体である。オフラインデータは、例えば、給湯器1の設置時に作業者(例えば給湯器1のメンテナンス担当者、以下同じ)が取得した情報であっても良いし、ユーザーが記入したアンケート用紙から取得した情報であっても良い。
【0025】
機械学習ユニット23は、深層学習を用いて機械学習可能なニューラルネットワークによって構成され、入力層23aと隠れ層23bと出力層23cとを有する。図2では、隠れ層23bは一層だけであるため、三層構造のニューラルネットワークが示される。
【0026】
ニューラルネットワークは深層学習によって非線形特性を有する入出力関係を同定できることで知られている。複数の給湯器1がデータ通信網DNに常時接続され、給湯器1の運転状態データやエラーログデータ等が複数の給湯器1の夫々の制御ユニットから管理コンピュータ2へ送られる。本実施形態では、機械学習ユニット23は、給湯器1で実際に発生した故障履歴の蓄積に基づいて深層学習を可能なように構成されている。このような深層学習によって学習された学習済データは、学習済データ記憶部25に記憶される。給湯器1の機種は複数存在し、学習済データ記憶部25には複数の学習済データが機種ごとに記憶される。給湯器1の機種は、基本情報データ群に格納されている給湯器1の仕様情報に含まれる。つまり、学習済データ記憶部25は、複数の学習済データの夫々を仕様情報毎に記憶する。学習済データ選択部26は、学習済データ記憶部25に記憶された複数の学習済データから基本情報データにおける仕様情報に応じた学習済データを選択して機械学習ユニット23に実装する。
【0027】
入力層23aに、上述の運転状態データと基本情報データとが入力される。給湯器1から送られた仕様情報に、給湯器1の型番等が含まれる。データ格納部22に格納された基本情報データ群には、給湯器1の仕様情報に加えて、当該型番の給湯器1の設置場所や設置時期、設置場所における建物の情報(例えば戸建住宅、集合住宅、持家、賃貸、築年数、断熱性能等の情報)、設置場所における世帯情報(家族構成、世代別情報)、等の使用環境の情報が含まれる。つまり、基本情報データ群に給湯器1の仕様情報が含まれ、各家庭の給湯器1からデータ通信網DNを介して送られた仕様情報が、データ格納部22に格納された基本情報データ群に紐付けられる。そして、各家庭の給湯器1からデータ通信網DNを介して送られた仕様情報に基づいて、当該仕様情報と紐付けられた基本情報データがデータ格納部22から読み出され、入力層23aに入力される。また、給湯器1の運転状態に関するデータを有する運転状態データが、各家庭からデータ通信網DNを介して入力層23aに入力される。
【0028】
出力層23cから、給湯器1のメンテナンス時期に関する推定値が出力される。即ち、機械学習ユニット23は、基本情報データと運転状態データとに基づいて、給湯器1のメンテナンス時期に関する推定値を出力する。給湯器1のメンテナンス時期に関する推定値は、例えば給湯器1が故障するまでの推定残り時間であっても良いし、給湯器1のメンテナンスが必要と推定される日時であっても良い。
【0029】
報知部24は、機械学習ユニット23の出力層23cから出力された推定値に基づいて、給湯器1のメンテナンスが必要になるまでの推定残り時間が予め設定された閾値よりも近くなると、給湯器1の故障時期及び(または)メンテナンス時期を報知する。具体的には、給湯器1のメンテナンスが必要になるまでの推定残り時間が予め設定された閾値よりも近くなると、入力層23aに入力された基本情報データと、管理コンピュータ2以外の別システムで管理される契約情報と、の突合せが行われ、メンテナンスの必要な給湯器1の顧客が特定される。そして、報知部24からの報知信号が、データ通信網DNを介して、特定された顧客に関連する外部端末3へ送信される。外部端末3は、報知用に予め設定された端末であって、例えば、メンテナンス会社のコンピュータであっても良いし、当該顧客またはメンテナンス担当者の所有する端末であっても良い。例えば、外部端末3が顧客のスマートフォンであって、当該スマートフォンに、ガスの使用量やガス料金等を通知するアプリケーションがインストールされている場合を仮定する。この場合、当該アプリケーションの表示内容が変更されたり、当該アプリケーションによってプッシュ通知が実行されたりすることによって、顧客に給湯器1のメンテナンスを促す情報が報知されても良い。
【0030】
なお、顧客の契約情報に診断ポイントサービスが紐付けられている。当該診断ポイントサービスは、例えば、給湯器1の使用量、当該アプリケーションの利用回数、給湯器1のメンテナンスサービス(例えばメンテナンス担当者による給湯器1の診断や修理、メンテナンス)の利用等に応じて付与される。当該診断ポイントサービスの利用用途として、例えば別途機器購入やメンテナンス費用への利用等が例示される。
【0031】
給湯器1のメンテナンス時期と、作業者の繁忙期と、が重なると推測される場合、報知部24が外部端末3へ報知信号を出力しても、給湯器1に対するメンテナンス作業が遅延する虞がある。このような不都合を回避するため、報知部24は、推定残り時間に多少の余裕があっても、作業者が繁忙期となる前に外部端末3へ報知信号を出力する構成であっても良い。なお、繁忙期とは、例えば給湯器1の故障が多発する等の理由によって、作業者のスケジュールが過密になりがちな時期である。外部端末3が上述のアプリケーションを実装するスマートフォンであって、当該アプリケーションのプッシュ通知による報知が行われる場合、作業者の閑散期には積極的に給湯器1の診断受診を促し、繁忙期には給湯器1の診断受診を促さない構成であっても良い。
【0032】
〔学習済みデータの選択について〕
ニューラルネットワークの深層学習で高精度な推定値を出力層23cから出力するためには、多くの給湯器1から長年に亘って大量のデータが管理コンピュータ2へ送られることが望ましい。しかし、給湯器1の機種は多岐におよぶため、設置台数の少ない機種であると、深層学習を行うための十分なデータを取得できない場合もある。
【0033】
このため、図3のフローチャートに示されるように、本実施形態の学習済データ選択部26は、学習済データ記憶部25に記憶された学習済データを検索する。そして学習済データ選択部26は、入力層23aに入力される仕様情報と一致する学習済データが学習済データ記憶部25に存在するかどうかを判定する(ステップ#01)。
【0034】
入力層23aに入力される仕様情報と一致する学習済データが学習済データ記憶部25に存在する場合(ステップ#01:Yes)、学習済データ選択部26は、入力層23aに入力される仕様情報と一致する学習済データを学習済データ記憶部25から選択する(ステップ#02)。入力層23aに入力される仕様情報と一致する学習済データは、本発明の『第一学習済データ』に相当する。
【0035】
入力層23aに入力される仕様情報と一致する学習済データが学習済データ記憶部25に存在しない場合(ステップ#01:No)、学習済データ選択部26は、入力層23aに入力される仕様情報と最も一致率の高い学習済データを学習済データ記憶部25から選択する(ステップ#03)。入力層23aに入力される仕様情報と最も一致率の高い学習済データは、本発明の『第二学習済データ』に相当する。そして学習済データ選択部26は、選択した学習済データを機械学習ユニット23に実装する(ステップ#04)。
【0036】
この構成によって、メンテナンス時期の推定を行うためのデータが十分に取得できていない機種の給湯器1に対しても、構造や機能の類似している機種に基づいて給湯器1の劣化具合の推測が可能となる。また、この構成であれば、給湯器1のメーカーやメンテナンス会社にとって、多種にわたる部品の在庫調整が容易になる。
【0037】
給湯器1の故障は特定の季節に集中して発生することもあり得るため、当該特定の季節に多数の給湯器1が故障すると、作業者の作業が追い付かなくなり、給湯器1の復旧が遅れがちとなる。本実施形態の構成であれば、多種にわたる給湯器1の劣化具合の推測が可能となることによって、作業者は、繁忙期よりも前に給湯器1を効率よくメンテナンスでき、作業者の繁忙期に給湯器1が故障する虞が軽減される。
【0038】
データ通信網DNに接続されていない給湯器1も数多く存在するが、そのような給湯器1に対しても出来るだけ精度よくメンテナンス時期を推定できる構成が望ましい。給湯器1がデータ通信網DNに接続されていない場合、機械学習ユニット23の入力層23aに基本情報データ群のオフラインデータ(家族構成、床暖房機能の有無、浴室乾燥暖房機能の有無、住宅の断熱性能等)が入力される。そして、実際にデータ通信網DNに接続されている給湯器1の運転状態データに基づいて一般的な使用条件が推定される。これにより、出力層23cから給湯器1のメンテナンス時期の目安となる推定値が出力される。つまり、機械学習ユニット23は、基本情報データのみに基づいて推定値を出力することも可能である。
【0039】
メンテナンス対象の給湯器1の基本情報データ群がデータ格納部22に記憶されている。メンテナンス時期において給湯器1において部品交換などのメンテナンス作業が行われると、メンテナンス対象の給湯器1の基本情報データ群が更新され、当該基本情報データ群に給湯器1のメンテナンス履歴が上書き保存される。そして、入力層23aにメンテナンス履歴が入力されると、機械学習ユニット23は、当該メンテナンス履歴に基づいて、給湯器1の次のメンテナンス時期に関する推定値を出力層23cから出力する。なお、基本情報データ群の更新処理は、作業者が管理コンピュータ2や外部端末3を人為操作することによって実行されても良いし、給湯器1の制御ユニットによって交換部品の製造番号が自動的に読み出されて当該製造番号の変化が検知されることによって自動的に実行される構成であっても良い。
【0040】
〔別実施形態〕
本発明は、上述の実施形態に例示された構成に限定されるものではなく、以下、本発明の代表的な別実施形態を例示する。
【0041】
(1)上述の実施形態では、機械学習ユニット23の入力層23aと出力層23cとの間に一層だけ隠れ層23bが存在するが、隠れ層23bは二層以上で構成されても良い。
【0042】
(2)上述の実施形態では、機械学習ユニット23の出力層23cは一つのノードだけで構成されているが、二つ以上のノードで構成されても良い。そして、出力層23cにおける複数のノードの夫々から、給湯器1における部品ごとのメンテナンス時期に関する推定値が出力される構成であっても良い。
【0043】
(3)上述の実施形態では、基本情報データ群と運転状態データ群とが管理コンピュータ2のデータ格納部22に格納されているが、この実施形態に限定されない。例えば、基本情報データ群と運転状態データ群とは、管理コンピュータ2とは別のクラウドサーバに格納されても良い。
【0044】
なお、上述の実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、給湯器の故障推定システムに適用できる。
【符号の説明】
【0046】
1 :給湯器
21 :データ取得部
22 :データ格納部
23 :機械学習ユニット(入出力ユニット)
23a :入力層
23c :出力層
24 :報知部
25 :学習済データ記憶部
26 :学習済データ選択部
DN :データ通信網
図1
図2
図3