(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022145137
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】リコイルスタータ
(51)【国際特許分類】
F02N 3/02 20060101AFI20220926BHJP
【FI】
F02N3/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021046421
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391014000
【氏名又は名称】スターテング工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 充宏
(72)【発明者】
【氏名】木下 雄大郎
(72)【発明者】
【氏名】水野 智康
(72)【発明者】
【氏名】堀越 義則
(57)【要約】
【課題】ラチェット爪が振動することを抑制できるリコイルスタータを提供する。
【解決手段】リール26に巻かれたリコイルロープ27が引かれることにより、リコイルロープ27を介したリール26の回転力によってエンジン3の駆動軸を回転させ、エンジン3を始動させるリコイルスタータにおいて、リール26には、リコイルロープ27によるリール26の回転と共にリール26の径方向に回動して、駆動軸に設けられたプーリ80に係合するラチェット爪50が設けられ、リール26の回転軸であるリール軸には、ラチェット爪50を覆うガイド部材が設けられ、ガイド部材には、ラチェット爪50に当接するリブ65が設けられる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リールに巻かれたリコイルロープが引かれることにより、前記リコイルロープを介した前記リールの回転力によってエンジンの駆動軸を回転させ、前記エンジンを始動させるリコイルスタータにおいて、
前記リールには、前記リコイルロープによる前記リールの回転と共に前記リールの径方向に回動して、前記駆動軸に設けられたプーリに係合するラチェット爪が設けられ、
前記リールの回転軸であるリール軸には、前記ラチェット爪を覆うガイド部材が設けられ、
前記ガイド部材には、前記ラチェット爪に当接するリブが設けられる
ことを特徴とするリコイルスタータ。
【請求項2】
前記リブは、前記リコイルロープが引かれることによる前記リールの回転と共に、前記ガイド部材の周方向に移動する前記ラチェット爪を開放する
ことを特徴とする請求項1に記載のリコイルスタータ。
【請求項3】
前記ラチェット爪には、突部が設けられ、
前記ガイド部材には、前記突部が係合するガイド溝が設けられ、
前記ガイド部材は、前記リコイルロープが引かれた場合であっても静止状態を維持し、
前記突部は、前記リコイルロープが引かれることによる前記リールの回転と共に、前記ガイド溝に沿って移動し、
前記ガイド部材は、前記突部が前記ガイド溝のどの位置に移動しても、前記突部を覆う円板形状を有する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のリコイルスタータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リコイルスタータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リールと、リールに巻かれたリコイルロープとを備え、当該リコイルロープが引かれることによって、リールが回転してエンジンの駆動軸を回転させ、当該エンジンを始動させるリコイルスタータがある。このようなリコイルスタータには、ラチェット爪が設けられ、当該ラチェット爪が駆動軸に設けられたプーリに係合することで、リールの回転力をエンジンの駆動軸に伝達させるものが知られている。このラチェット爪は、リールの回転に伴って回動し、当該リールの回転方向に応じて、プーリと係合、または離脱可能となっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のリコイルスタータでは、例えばエンジンの駆動に伴う振動が当該リコイルスタータに伝達されてラチェット部材が振動し、当該ラチェット部材や、ラチェット部材と接する他の部品に摩耗が生じる虞があった。
本発明は、ラチェット爪が振動することを抑制できるリコイルスタータを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、リールに巻かれたリコイルロープが引かれることにより、前記リコイルロープを介した前記リールの回転力によってエンジンの駆動軸を回転させ、前記エンジンを始動させるリコイルスタータにおいて、前記リールには、前記リコイルロープによる前記リールの回転と共に前記リールの径方向に回動して、前記駆動軸に設けられたプーリに係合するラチェット爪が設けられ、前記リールの回転軸であるリール軸には、前記ラチェット爪を覆うガイド部材が設けられ、前記ガイド部材には、前記ラチェット爪に当接するリブが設けられることを特徴とするリコイルスタータである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ラチェット爪が振動することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施形態に係る発電機の内部の概略構成を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施の形態を添付図面に基づいて説明する。なお、各添付図面において、Upは、上方を示し、Frは、前方を示し、Lhは、左方を示す。
図1は、本発明の実施形態に係る発電機1の内部の概略構成を示す側面断面図である。
図1では、Grは、発電機1の設置面を示す。
図1に示すように、発電機1は、樹脂により形成された筐体2を備えている。筐体2の内部には、エンジン3が収容されている。
【0009】
また、筐体2の内部には、燃料タンク4が収容されている。筐体2の天板には、燃料タンク4の給油口5が筐体2の外部に突出して設けられている。給油口5には、給油口5を開閉するための給油キャップ6が着脱自在に取り付けられている。
【0010】
筐体2の下面に設けられた底部カバー7には、筐体2を支持する支持部16が取り付けられている。エンジン3には出力軸8が設けられている。エンジン3の出力軸8にはオルタネータ9が出力軸8と同軸状に取り付けられている。
【0011】
また、出力軸8のオルタネータ9の前方には、ファン10が同軸状に取り付けられている。ファン10の前方には、エンジン3を始動させるためのリコイル11が配置されている。エンジン3を駆動することにより、オルタネータ9が回転駆動され発電が行われる。エンジン3を駆動することにより、ファン10が回転駆動され、筐体2の外部空気を取り入れてエンジン3側に送風する。
【0012】
エンジン3の外側には、ファン10による送風をエンジン3の周囲に案内するシュラウド12が配置されている。シュラウド12の前端には、オルタネータ9およびファン10を被覆するファンカバー13が配置されている。ファンカバー13は、前側が小径となるようにテーパ状に形成されており、ファンカバー13の前端部には、通風用開口14が形成されている。
【0013】
通風用開口14は、エンジン3の回転軸と略同心状に形成されている。ファン10の前方には、インバータ15が設置されている。筐体2の前面には、電源コンセントや操作ボタンなどが配置されたコントロールパネル18が取り付けられている。
【0014】
また、筐体2の前面には、筐体2の内部に外気を取り入れるための吸気口19が形成されている。筐体2の後面には、筐体2の内部の空気を排出するための排気口20が形成されている。発電機1では、エンジン3を駆動してファン10を回転駆動させることにより、筐体2の外部空気を吸気口19から取り入れる。
【0015】
吸気口19からの空気は、通風用開口14を介してファンカバー13の内側に流入し、エンジン3とシュラウド12との間を流れる際に、エンジン3を冷却した後、排気口20から外部に排出される。
【0016】
エンジン3の後方には、排気管21を介してマフラー22が設けられている。
排気管21は、エンジン3からの排気をマフラー22に導くものであり、マフラー22は排気を浄化し、排気音を低減するものである。
マフラー22は、テールパイプ23を備えており、当該テールパイプ23の後端は、筐体2の背面から外部に露出している。
【0017】
次いでリコイル11について説明する。
図2は、リコイル11の斜視図である。
リコイル11は、リコイルスタータの一例に対応する。リコイル11は、リコイルカバー25と、当該リコイルカバー25の裏面側に回転自在に支持される略環状のリール26と、リール26に巻回されるリコイルロープ27とを備える。
リコイルロープ27の一端は、リコイルカバー25に設けられた挿通孔29を介して当該リコイルカバー25の外部に引き出されている。このリコイルロープ27の一端には、リコイルグリップ28が取り付けられている。リール26は、リコイルロープ27が引かれることによって、回転される。
【0018】
図3は、リコイル11の縦断面図である。
図3では、リコイルロープ27が引かれた場合におけるリール26の回転方向Rを矢印で示し、リコイルロープ27が引かれた場合におけるリール26の回転軸Aを二点鎖線で示している。
図3に示すように、リコイルカバー25には、エンジン3側に突出する円柱状のリールボス30が設けられている。このリールボス30には、先端からリコイルカバー25の前面側に向かって窪む凹部31が設けられている。
【0019】
リールボス30には、ゼンマイばね39の一端が取り付けられている。ゼンマイばね39は、リールボス30を中心軸として、当該リールボス30に巻き付けられるように配置されている。換言すれば、ゼンマイばね39は、中央にリールボス30が挿通されるようにリコイルカバー25に収められている。
【0020】
凹部31には、リールボス30よりも小径で、リールボス30と同様に、エンジン3側に突出する円柱状のガイドボス32が設けられている。ガイドボス32の先端は、リールボス30の先端よりもエンジン3側に突出している。ガイドボス32の端面には、ねじ孔33が設けられている。
【0021】
凹部31には、コイルばね34が収められている。コイルばね34は、内側にガイドボス32が挿通されている。すなわち、凹部31において、コイルばね34は、ガイドボス32とリールボス30との間に配置されている。コイルばね34の一端は、ガイドボス32の先端と略同一の位置に配置されている。
【0022】
上述の通り、リコイルカバー25の裏面側には、リール26が回転自在に支持されている。
リール26の略中央には、回転中心部40が設けられている。この回転中心部40は、発電機1の前後方向に沿って延びる略円柱状に形成されている。
回転中心部40の略中央には、当該回転中心部40の厚さ方向に沿って延びる貫通孔41が設けられている。この貫通孔41には、リールボス30が挿通されている。これによって、リール26は、リールボス30を軸として、回転自在に当該リールボス30に軸支される。すなわち、リールボス30は、リール26の回転軸であるリール軸として機能する。
【0023】
回転中心部40には、ゼンマイばね39の他端が取り付けられている。リール26は、このゼンマイばね39の弾性力によって、リコイルロープ27が引かれた場合におけるリール26の回転方向Rとは逆方向に付勢されている。
【0024】
図4は、リール26をエンジン3側から視た平面図である。
図4では、ラチェット爪50を省略して示している。
図4に示すように、回転中心部40には、複数の収容部42が設けられている。収容部42は、回転中心部40のエンジン3側に位置する天面からリコイルカバー25側に向かって窪む凹形状を有する。また、これらの収容部42は、回転中心部40の周縁に配置されている。本実施形態では、回転中心部40には、回転軸Aが通る点を対称点Pとして、互いに点対称となるように2つの収容部42が設けられている。
収容部42の天面には、リコイルカバー25側に向かってさらに窪む軸穴43が設けられている。
収容部42には、当該収容部42の天面から、起立して設けられる平面である収容面45が形成されている。
【0025】
図5は、リール26をエンジン3側から視た平面図である。
各収容部42には、ラチェット爪50が取り付けられている。本実施形態のラチェット爪50は、いずれも樹脂材で形成され、所定の長さ寸法を有した爪状の部材である。ラチェット爪50の回転中心部40側に位置する面には、凸状の回動軸52が設けられている。この回動軸52は、ラチェット爪50の長手方向における一方の端部側に設けられている。この回動軸52は、軸穴43に嵌合されている。これによって、ラチェット爪50は、回転中心部40に回動自在に軸支される。
各ラチェット爪50は、回転中心部40の周方向において、等間隔に配置されている。また、回転中心部40に取り付けられた各ラチェット爪50は、回転軸Aが通る点を対称点Pとして、互いに点対称となるように配置されている。
【0026】
ラチェット爪50のエンジン3側に位置する面には、突部であるガイド軸53が設けられている。すなわち、ガイド軸53は、ラチェット爪50において、回動軸52の反対側に設けられている。
ラチェット爪50の長手方向における他方の端部側には、鋭角を形成する先端部54が設けられている。この先端部54の貫通孔41側には、平面である係合面55が設けられている。
【0027】
図3に示すように、リコイル11は、ラチェットガイド60を備えている。ラチェットガイド60は、ガイド部材の一例に対応する。ラチェットガイド60は、回転中心部40の天面と略同径の円板状に形成された部材である。本実施形態のラチェットガイド60は、樹脂材で形成されている。ラチェットガイド60の略中央には、貫通孔である中心孔61が設けられている。この中心孔61には、ガイドボス32が挿通されている。これによって、ラチェットガイド60は、ガイドボス32を軸として、回転自在に当該ガイドボス32に軸支される。
【0028】
ラチェットガイド60のエンジン3側の面には、環状の制動板70が取り付けられる。ラチェットガイド60は、この制動板70を介して、ねじ部材71によって、回転中心部40にねじ止めされている。ねじ部材71は、制動板70に設けられた貫通孔と、中心孔61に挿通され、ねじ孔33に螺合している。
このようにガイドボス32に取り付けられたラチェットガイド60は、コイルばね34と、制動板70とによって、挟み込まれて支持されている。
これによって、ラチェットガイド60は、リール26が回転した場合であっても、一定値以上のトルクが加わるまでは、回転することが抑制される。
【0029】
図6は、ラチェットガイド60をリール26側から視た平面図である。
図6では、ラチェット爪50と係合部81とのラチェットガイド60に対する相対的な配置位置を一点鎖線で仮想的に示す。
ガイドボス32に取り付けられたラチェットガイド60は、回転中心部40から所定の間隔を空けて、当該回転中心部40、及び一対のラチェット爪50を覆っている。
図6に示すように、ラチェットガイド60の回転中心部40の天面に対向する面には、一対のガイド溝62が設けられている。一対のガイド溝62は、ラチェットガイド60において、回転軸Aが通る点を対称点Pとして、互いに点対称となるように配置されている。
【0030】
各ガイド溝62は、円弧溝63と、線状溝64とが連結されて形成されている。円弧溝63は、対称点Pを中心とした弧を描くように曲がって延びる溝部である。各円弧溝63は、ラチェットガイド60の縁部と、中心孔61とのそれぞれから所定の距離を空けて配置されている。
線状溝64は、円弧溝63の一方の端部からラチェットガイド60の縁部まで延びる略直線状の溝部である。
【0031】
各ガイド溝62には、各ラチェット爪50のガイド軸53がそれぞれ係合されている。各ガイド軸53は、ガイド溝62の内部を当該ガイド溝62に沿って摺動可能である。
リコイルロープ27が引かれておらず、リール26が回転していない静止状態にある場合、各ガイド軸53は、円弧溝63の他方の端部内に収められている。この円弧溝63の他方の端部は、ガイド溝62において、ラチェットガイド60の縁部の反対側に位置する。
またこの場合、各ラチェット爪50は、全体が収容部42に収められ、係合面55は、収容面45に全体が当接している。
【0032】
ラチェットガイド60の縁部には、回転中心部40の天面に向かって起立して設けられた一対のリブ65が設けられている。各リブ65は、ラチェットガイド60の周方向において、互いに所定の間隔を空けて配置されている。各リブ65は、収容部42の天面に当接しない程度の高さ寸法をいずれも有している。
【0033】
リコイルロープ27が引かれておらず、リール26が回転していない静止状態にある場合、各リブ65は、回転中心部40の周縁側から、各ラチェット爪50の先端部54にそれぞれが当接している。
すなわち、リコイルロープ27が引かれておらず、リール26が回転していない静止状態にある場合、各先端部54は、収容面45と、リブ65とに挟み込まれることで固定されている。
これによって、ラチェット爪50に振動が伝播した場合であっても、当該ラチェット爪50が振動することや、回動することが抑制される。
【0034】
図3に示すように、出力軸8の先端部には、プーリ80が取り付けられている。プーリ80は、桶状に形成された部材であり、当該プーリ80は、底面が回転中心部40の天面に対向する位置に配置されている。
プーリ80には、複数の係合部81が設けられている。これらの係合部81は、プーリ80の周方向において、互いに所定の間隔を空けて配置されている。各係合部81は、いずれも回転中心部40の周面に対向する位置まで延びて形成されている。
【0035】
次に、本実施形態の作用について説明する。
発電機1では、作業者がリコイルグリップ28を把持して引き出すことによって、リコイルロープ27が引き出されてリール26が回転する。リール26のこの回転力がプーリ80を介して出力軸8に伝わることで、当該出力軸8が回転する。出力軸8は、エンジンの駆動軸であるため、これによって、エンジン3が始動する。
発電機1では、エンジン3が駆動することによって、出力軸8を介して、オルタネータ9のロータが回転し、当該オルタネータ9から電圧を供給することができる。
【0036】
リコイル11の動きについて詳述すると、上述の通り、リコイルロープ27が引かれておらず、リール26が回転していない静止状態にある場合、各ラチェット爪50は、全体が収容部42に収められている。すなわち、各ラチェット爪50は、回転中心部40の半径方向内側に配置されている。
【0037】
図7は、リコイルロープ27が引き出された場合におけるラチェットガイド60をリール26側から視た平面図である。
図7では、ラチェット爪50と係合部81とのラチェットガイド60に対する相対的な配置位置を一点鎖線で仮想的に示す。
図7に示すように、リコイルロープ27が引き出されると、リール26は、回転方向Rに沿って回転する。一方、ラチェットガイド60は、回転せずに静止状態を維持する。これによって、各ラチェット爪50は、ラチェットガイド60に対して相対回転する。
そして、ガイド軸53は、ガイド溝62の内部を、当該ガイド溝62に沿って、円弧溝63の他方の端部から線状溝64が連結されたラチェットガイド60の縁部まで摺動する。
同時に、各ラチェット爪50の先端部54は、回転中心部40の周方向に沿って、各リブ65からそれぞれ離間する。
【0038】
これによって、ラチェット爪50は、回動軸52を軸として、回転中心部40の半径方向外方に回動する。そして、各ラチェット爪50は、先端部54が係合部81にそれぞれ係合する。この状態でリール26がさらに回り続けると、各ラチェット爪50が係合部81を介して、プーリ80にトルクを加え、当該プーリ80を回転させる。これによって、プーリ80を介して、リール26の回転力が出力軸8に加えられて、当該出力軸8が回転し、エンジン3が始動する。
【0039】
各ラチェット爪50の先端部54が係合部81に係合すると、ガイド軸53に押されてラチェットガイド60もまた各ラチェット爪50やリール26と一体となって回転を開始する。
【0040】
エンジン3が始動した後において、リール26は、ゼンマイばね39に蓄積された回転力によって、エンジン3の始動時と逆方向に回転され、引き出されたリコイルロープ27が巻き戻される。
この場合、各ラチェット爪50は、ラチェットガイド60に対して、リコイルロープ27が引き出された場合とは逆方向に相対回転する。
そして、ガイド軸53は、ガイド溝62の内部を、当該ガイド溝62に沿って、リコイルロープ27が引き出された場合とは逆方向に摺動する。
そして、各ラチェット爪50は、リール26が回転していない静止状態における位置に戻る。
【0041】
なお、リール26が回転する場合において、各ガイド軸53は、ガイド溝62の内部から抜け出ることなく摺動する。すなわち、各ガイド軸53は、リール26の回転時、及び静止状態のいずれの場合であってもラチェットガイド60に常に覆われている。
また、リール26が回転する場合において、リブ65は、常に収容部42の内部に配置されている。このため、リブ65が回転中心部40に接触することが抑制される。
【0042】
エンジン3が駆動すると、当該エンジン3の駆動に伴う振動がリコイル11の各部に伝わる。
本実施形態では、各ラチェット爪50の各先端部54は、収容面45と、リブ65とに挟み込まれることで固定されている。
これによって、発電機1では、ラチェット爪50に振動が伝播した場合であっても、当該ラチェット爪50が振動することや、回動することを抑制することができる。
【0043】
以上説明したように、本実施形態によれば、リコイル11のリール26には、リコイルロープ27によるリール26の回転と共にリール26の径方向に回動して、出力軸8に設けられたプーリ80に係合するラチェット爪50が設けられている。リール26の回転軸であるとして機能するリールボス30には、ガイドボス32が設けられている。このガイドボス32には、ラチェット爪50を覆うラチェットガイド60が設けられ、ガイド部材には、ラチェット爪50に当接するリブ65が設けられている構成とした。
【0044】
これによれば、各ラチェット爪50の各先端部54は、収容面45と、リブ65とに挟み込まれることで固定されている。このため、発電機1では、ラチェット爪50に振動が伝播した場合であっても、当該ラチェット爪50が振動することや、回動することを抑制することができ、当該ラチェット爪50やリール26の耐久性や、ラチェット爪50の振動による騒音の抑制を図ることができる。
また、ばね等の付勢部材を用いることなく、各ラチェット爪50を固定することができるため、部品点数を増加させることなくラチェット爪50の振動を抑制すると共に、リコイルロープ27の引き戻し荷重の増加を抑制できる。
【0045】
また、本実施形態によれば、リブ65は、リコイルロープ27が引かれることによるリール26の回転と共に、ラチェットガイド60の周方向に移動するラチェット爪50を開放する構成とした。
これによれば、リブ65は、リール26が回転する場合に、ラチェット爪50から離間される。このため、リコイル11では、リール26が回転する場合に、ラチェット爪50を開放して、スムーズに回動させることができる。
【0046】
また、本実施形態によれば、ラチェット爪50には、ガイド軸53が設けられ、ラチェットガイド60には、ガイド軸53が係合するガイド溝62が設けられ、当該ラチェットガイド60は、リコイルロープ27が引かれた場合であっても静止状態を維持する。ガイド軸53は、リコイルロープ27が引かれることによるリール26の回転と共に、ガイド溝62に沿って移動し、ラチェットガイド60は、ガイド軸53がガイド溝62のどの位置に移動しても、当該ガイド軸53を覆う円板形状を有する構成とした。
これによれば、ラチェットガイド60の形態、寸法を安定させ、工作容易性、剛性の向上を図ることができる。また、ガイド軸53は、リール26の回転時、及び静止状態のいずれの場合であってもラチェットガイド60に常に覆われることとなる。このため、ガイド軸53の摩耗を抑制することができる。
【0047】
上述した実施形態は、本発明の一態様を例示したものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変形、及び応用が可能である。
上述した実施形態では、リコイルスタータに1は、発電機1に取り付けられているとしたが、これに限らず、船外機や芝刈り機、チェーンソー等、手動で内燃機関を始動させる各種の装置に設けられていてもよい。
【0048】
また、リコイル11には、アシストぜんまい等の蓄力手段や、加速手段が設けられた、所謂加速式リコイルスタータや蓄力式リコイルスタータであってもよい。
また、リール26に設けられるラチェット爪50の数は、2つに限らず、3つ以上が設けられていてもよい。
また、
図3に示すように、出力軸8は、リール26の回転軸Aと同軸となるように形成されているとしたが、これに限らず、出力軸8は、回転軸Aと異なる軸線上に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 発電機
8 出力軸(駆動軸)
11 リコイル(リコイルスタータ)
26 リール
27 リコイルロープ
30 リールボス(回転軸)
32 ガイドボス
50 ラチェット爪
53 ガイド軸(凸部)
54 先端部
55 係合面
60 ラチェットガイド(ガイド部材)
62 ガイド溝
65 リブ
80 プーリ
A 回転軸
R 回転方向