(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022145152
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】樹脂フィルム、包装体、生肉包装体及び生肉の保存方法
(51)【国際特許分類】
B65D 65/40 20060101AFI20220926BHJP
B65D 85/50 20060101ALI20220926BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20220926BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
B65D65/40 D
B65D85/50 110
B32B27/00 H
B32B27/32 E
B32B27/32 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021046441
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504150450
【氏名又は名称】国立大学法人神戸大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100194250
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 直志
(72)【発明者】
【氏名】大槻 彰良
(72)【発明者】
【氏名】山口 啓太
(72)【発明者】
【氏名】福井 宇内
(72)【発明者】
【氏名】上田 修司
【テーマコード(参考)】
3E035
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E035AA04
3E035BA10
3E035BC02
3E035BD02
3E035CA07
3E035DA01
3E086AD18
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3E086BA04
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3E086BB05
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3E086BB66
3E086CA22
3E086DA08
4F100AK04A
4F100AK04D
4F100AK04E
4F100AK06A
4F100AK68D
4F100AK69C
4F100AK70B
4F100AL07E
4F100AR00C
4F100AT00A
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4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100CB00E
4F100GB18
4F100GB23
4F100JD03C
4F100JK07
4F100JL12D
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】冷凍下においてもフィルムが脆くならず、冷凍包装した生肉の劣化を抑制して長期保管でき、さらに解凍時に発生するドリップを抑制して旨味成分の流出を防止し、従来より味を低下させることなく長期保管可能な包装体の提供。
【解決手段】蓋材及び底材を備えた冷凍生肉用真空包装体の蓋材用樹脂フィルムであって、温度23℃、相対湿度60%の条件下での、酸素透過量が、100cc/(m
2・day・atm)以下であり、温度140℃における動的弾性率E’が10
4以上10
7Pa以下である樹脂フィルム。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓋材及び底材を備えた冷凍生肉用真空包装体の蓋材用樹脂フィルムであって、
温度23℃、相対湿度60%の条件下での、酸素透過量が、100cc/(m2・day・atm)以下であり、温度140℃における動的弾性率E’が104以上107Pa以下である樹脂フィルム。
【請求項2】
前記樹脂フィルムの熱機械分析時に、2000μmの変位を示す温度が120℃以上である、請求項1に記載の樹脂フィルム。
【請求項3】
前記樹脂フィルムのゲル分率が30%以上である、請求項1に記載の樹脂フィルム。
【請求項4】
前記樹脂フィルムが、吸収線量13~300kGyの条件で電子線照射されたものである、請求項1~3のいずれか一項に記載の樹脂フィルム。
【請求項5】
前記樹脂フィルムの前記熱機械分析時に、温度が100℃での変位が500μm以下である、請求項2に記載の樹脂フィルム。
【請求項6】
前記樹脂フィルムが、
外層と、
前記外層に隣接する機能層と、
酸素バリア層と、
シーラント層と、
を備えた多層フィルムである、請求項1~5のいずれか一項に記載の樹脂フィルム。
【請求項7】
前記外層がポリエチレンを含む、請求項6に記載の樹脂フィルム。
【請求項8】
前記機能層がアイオノマーを含む、請求項6または7に記載の樹脂フィルム。
【請求項9】
前記シーラント層がポリエチレン系樹脂を含む、請求項6~8のいずれか一項に記載の樹脂フィルム。
【請求項10】
前記冷凍生肉用真空包装体が冷凍生肉用スキンパック包装体である、請求項1~9のいずれか一項に記載の樹脂フィルム。
【請求項11】
蓋材及び底材を備えた冷凍生肉用真空包装体であって、請求項1~10のいずれか一項に記載の樹脂フィルムを前記蓋材とする包装体。
【請求項12】
前記底材の酸素透過量が、300cc/(m2・day・atm)以下である、請求項11に記載の包装体。
【請求項13】
請求項11または12に記載の包装体における底材と蓋材によって生肉が真空包装された生肉包装体。
【請求項14】
請求項13に記載の生肉包装体を-84℃以上0℃未満で保存する生肉の保存方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂フィルム、包装体、生肉包装体及び生肉の保存方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食用の生肉は、例えば、樹脂トレーに載せられた状態で、酸素バリア性が低い透明樹脂フィルムを用いて樹脂トレーごと包装されたり、袋状の包装体で包装されて、小売りされる(特許文献1参照)。しかし、樹脂トレーに載せられた形態であると、10℃条件では3日程度、4℃条件では6日程度、0℃条件では7日程度が可食期間とされている。それ以上に可食期間を延ばすためには、バリア真空包装が一般的であり、冷凍状態で保管すれば、2か月以上可食期間を延ばすことができる(食肉の期限表示のための試験方法ガイドライン)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、真空包装された生肉を冷凍すると、保管後の解凍時にドリップが流出し、味が落ちるのが一般的である。従来の生肉用の真空包装体は、この点で改善の余地が残されている。また、冷凍下において、従来のトレー及び真空包装体は包材が脆くなってしまい、保存に向かない点も課題であった。
【0005】
本発明は、冷凍下においてもフィルムが脆くならず、冷凍包装した生肉の劣化を抑制して長期保管でき、さらに解凍時に発生するドリップを抑制して旨味成分の流出を防止し、従来より味を低下させることなく長期保管可能な包装体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の構成を採用する。
[1].蓋材及び底材を備えた冷凍生肉用真空包装体の蓋材用樹脂フィルムであって、温度23℃、相対湿度60%の条件下での、酸素透過量が、100cc/(m2・day・atm)以下であり、温度140℃における動的弾性率E’が104以上107Pa以下である樹脂フィルム。
[2].前記樹脂フィルムの熱機械分析時に、2000μmの変位を示す温度が120℃以上である、[1]に記載の樹脂フィルム。
[3].前記樹脂フィルムのゲル分率が30%以上である、[1]に記載の樹脂フィルム。
[4].前記樹脂フィルムが、吸収線量13~300kGyの条件で電子線照射されたものである、[1]~[3]のいずれか1つに記載の樹脂フィルム。
[5].前記樹脂フィルムの前記熱機械分析時に、温度が100℃での変位が500μm以下である、[2]に記載の樹脂フィルム。
[6].前記樹脂フィルムが、外層と、前記外層に隣接する機能層と、酸素バリア層と、シーラント層と、を備えた多層フィルムである、[1]~[5]のいずれか1つに記載の樹脂フィルム。
[7].前記外層がポリエチレンを含む、[6]に記載の樹脂フィルム。
[8].前記機能層がアイオノマーを含む、[6]または[7]に記載の樹脂フィルム。
[9].前記シーラント層がポリエチレン系樹脂を含む、[6]~[8]のいずれか1つに記載の樹脂フィルム。
[10].前記冷凍生肉用真空包装体が冷凍生肉用スキンパック包装体である、[1]~[9]のいずれか1つに記載の樹脂フィルム。
[11].蓋材及び底材を備えた冷凍生肉用真空包装体であって、[1]~[10]のいずれか1つに記載の樹脂フィルムを前記蓋材とする包装体。
[12].前記底材の酸素透過量が、300cc/(m2・day・atm)以下である、[11]に記載の包装体。
[13].[11]または[12]に記載の包装体における底材と蓋材によって生肉が真空包装された生肉包装体。
[14].[13]に記載の生肉包装体を-84℃以上0℃未満で保存する生肉の保存方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、冷凍下においてもフィルムが脆くならず、冷凍包装した生肉の劣化を抑制して長期保管でき、さらに解凍時に発生するドリップを抑制して旨味成分の流出を防止し、従来より味を低下させることなく長期保管可能な包装体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る樹脂フィルムの一例を模式的に示す断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る冷凍生肉用真空包装体の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<<樹脂フィルム(蓋材)>>
本発明の一実施形態に係る樹脂フィルムは、蓋材及び底材を備えた冷凍生肉用真空包装体の蓋材用樹脂フィルムである。前記樹脂フィルム(蓋材)は、後述の、酸素透過量と、動的弾性率E’と、の条件を満たし、冷凍生肉用真空包装体の蓋材を作製可能なものであれば、特に限定されない。
【0010】
本明細書において、「冷凍」とは、生肉の品質保持等のために人為的に機器(冷凍機若しくは冷凍庫)又は液体窒素等を用いて生肉を0℃未満の温度で凍結させること、あるいは、自然環境の下で生肉を0℃未満の温度で凍結させることを意味する。前記温度は、例えば、-84℃以上0℃未満であることが好ましく、-83℃以上-1℃以下であることがより好ましく、-82℃以上-2℃以下であることがさらに好ましく、-81℃以上-3℃以下であることが特に好ましい。
【0011】
本明細書において、「真空包装」とは、生肉が配置されている領域の圧力が、5000Pa(50mbar)以下となるように真空引きすることを意味する。前記圧力は、例えば、300Pa以上5000Pa以下であることが好ましく、400Pa以上4900Pa以下であることがより好ましく、500Pa以上4800Pa以下であることがさらに好ましく、600Pa以上4700Pa以下であることが特に好ましい。
【0012】
前記冷凍生肉用真空包装体は、冷凍生肉用スキンパック包装体であることが好ましい。本明細書において、「スキンパック」としては、厚紙、段ボール、底フィルム、トレー等の上に収容物を配置し、その上に加熱したフィルムを被せ、チャンバー内で真空引きすることで、フィルムが収容物に密着固定する包装を意味する。製品の形状に沿って、まるで肌のようにフィルムが製品本体と密着する特徴が、「スキンパック」との名称の由来となっている。
【0013】
温度23℃、相対湿度60%の条件下での、前記樹脂フィルム(蓋材)の酸素透過量は、100cc/(m2・day・atm)以下である。温度23℃、相対湿度60%の条件下での、前記樹脂フィルム(蓋材)の酸素透過量が、100cc/(m2・day・atm)以下であることにより、冷凍包装した生肉の劣化を抑制して長期保管することができる。
【0014】
温度23℃、相対湿度60%の条件下での、前記樹脂フィルム(蓋材)の酸素透過量は、95cc/(m2・day・atm)以下であることが好ましく、90cc/(m2・day・atm)以下であることがより好ましく、85cc/(m2・day・atm)以下であることがさらに好ましく、80cc/(m2・day・atm)以下であることが特に好ましく、例えば、75cc/(m2・day・atm)以下であってもよい。温度23℃、相対湿度60%の条件下での、前記樹脂フィルム(蓋材)の酸素透過量が前記上限値以下であることにより、冷凍包装した生肉の劣化を抑制して長期保管する効果をより向上させることができる。
一方、前記酸素透過量は、0cc/(m2・day・atm)以上である。
【0015】
温度23℃、相対湿度60%の条件下での、前記樹脂フィルム(蓋材)の酸素透過量は、JIS K 7126-2:2006に準拠して測定できる。
【0016】
前記樹脂フィルム(蓋材)の酸素透過量は、例えば、前記樹脂フィルムの含有成分の種類と含有量、前記樹脂フィルムの厚さ等を調節することで、より容易に調節できる。
【0017】
温度140℃における、前記樹脂フィルム(蓋材)の動的弾性率E’は、104以上107Pa以下である。温度140℃における、前記樹脂フィルム(蓋材)の動的弾性率E’が、104以上107Pa以下であることにより、被包装物(収容物)に対する蓋材の追従性を向上させることができる。その結果、解凍時に発生するドリップを抑制して旨味成分の流出を防止し、従来より味を低下させることなく長期保管可能となる。
【0018】
温度140℃における、前記樹脂フィルム(蓋材)の動的弾性率E’は、1.0×104Pa以上1.0×107Pa以下であることが好ましく、1.1×104Pa以上9.9×106Pa以下であることがより好ましく、1.2×104Pa以上9.8×106Pa以下であることがさらに好ましく、1.3×104Pa以上9.7×106Pa以下であることが特に好ましく、例えば、1.4×104Pa以上9.6×106Pa以下であってもよい。温度140℃における、前記樹脂フィルムの動的弾性率E’が前記下限値以上であることにより、被包装物(収容物)に対する蓋材の追従性をより向上させることができる。温度140℃における、前記樹脂フィルムの動的弾性率E’が前記上限値以下であることにより、被包装物(収容物)の形状をより圧迫せずに包装することができる。
【0019】
温度140℃における、前記樹脂フィルム(蓋材)の動的弾性率E’は、JIS K7244-4に準拠して測定できる。具体的には、例えば、動的粘弾性測定装置(日立ハイテクサイエンス社製「DMA 7100」)により測定することができる。また、測定条件は、例えば、幅4mmのサンプルを使用して、引張モードで25℃から160℃の温度範囲において、変位10μm、振動周波数1Hz、昇温速度3℃/minの条件により測定することができる。
【0020】
前記樹脂フィルム(蓋材)の動的弾性率E’は、例えば、前記樹脂フィルムの含有成分の種類と含有量、前記樹脂フィルムの厚さ等を調節することで、より容易に調節できる。
【0021】
前記樹脂フィルムの、熱機械分析(TMA)時における、2000μmの変位を示す温度が120℃以上であるか、又は、ゲル分率が30%以上であることが好ましい。これにより、前記樹脂フィルムの耐熱性が向上し、その結果、前記樹脂フィルムの収容物への追従性が向上する。
【0022】
前記樹脂フィルム(蓋材)の熱機械分析時において、2000μmの変位を示す温度は、120℃以上であることが好ましく、120~200℃であることがより好ましく、123~190℃であることがさらに好ましく、例えば、130~190℃であってもよい。前記温度が前記下限値以上であることで、前記樹脂フィルムの耐熱性がより向上し、その結果、前記樹脂フィルムの収容物への追従性がより向上する。前記温度が前記上限値以下であることで、前記樹脂フィルムの耐熱性が過剰となることが抑制される。
【0023】
前記樹脂フィルムの熱機械分析時において、温度が100℃での変位は、500μm以下であることが好ましく、40~500μmであることがより好ましく、45~400μmであることがさらに好ましく、例えば、50~350μm、55~340μm、及び55~250μmのいずれかであってもよい。前記変位が前記上限値以下であることで、前記樹脂フィルムの溶融張力が向上し、その結果、前記樹脂フィルムの収容物への追従性がより向上する。前記変位が前記下限値以上であることで、前記樹脂フィルムの溶融張力が過剰となることが抑制される。
【0024】
前記樹脂フィルムの熱機械分析は、JIS K 7196に準拠して、標準試料と、分析対象の試料と、を一定速度で昇温したときの熱膨張量の差から、試料の熱膨張量を測定することにより、行うことができる。
【0025】
前記樹脂フィルムの熱機械分析時において、2000μmの変位を示す温度と、温度が100℃での変位は、例えば、前記樹脂フィルムを電子線照射されたものとし、このときの電子線照射の条件を調節することで、調節できる。例えば、前記樹脂フィルムが後述する多層フィルムである場合には、この多層フィルム中の外層又は機能層への電子線照射の条件を調節することで、前記温度及び変位をより容易に調節できる。
【0026】
前記樹脂フィルムは、吸収線量13~300kGyの条件で電子線照射されたものであることが好ましく、吸収線量15~250kGyの条件で電子線照射されたものであることがより好ましく、例えば、吸収線量20~250kGy、45~250kGy、及び70~250kGyのいずれかの条件で電子線照射されたものであってもよい。前記吸収線量がこのような範囲であることで、前記樹脂フィルムの熱機械分析時において、2000μmの変位を示す温度と、温度が100℃での変位が、いずれも上述の数値範囲内となる前記樹脂フィルムが、より容易に得られる。一方、前記吸収線量が前記下限値以上であることで、前記樹脂フィルム(特に、前記樹脂フィルムが後述する多層フィルムである場合には、この多層フィルム中の外層及び機能層)の架橋密度がより向上し、その結果、前記樹脂フィルム全体として、耐熱性及び溶融張力がより向上する。前記吸収線量が前記上限値以下であることで、前記樹脂フィルムの強度が過剰となることが抑制される。
【0027】
電子線照射により前記樹脂フィルム(特に、前記樹脂フィルムが後述する多層フィルムである場合には、この多層フィルム中の外層及び機能層)の架橋密度が向上する理由は定かではないが、以下のように推測される。すなわち、前記樹脂フィルムに電子線が照射されると、樹脂(例えば、ポリエチレン、アイオノマー)中の炭素-水素結合が切断され、切断された結合末端にラジカルが発生する。発生したラジカルは、分子鎖の分子運動により、他の樹脂の分子鎖(例えば、他のポリエチレン分子鎖、他のアイオノマー分子鎖)に接触し、水素原子を引き抜いて、他の樹脂の分子鎖(例えば、他のポリエチレン分子鎖、他のアイオノマー分子鎖)中の炭素原子と結合し、その結果、架橋構造が形成されるものと推測される。
【0028】
電子線照射時の加速電圧は、100~300kVであることが好ましく、120~280kVであることがより好ましく、140~260kVであることがさらに好ましい。電子線照射時の加速電圧がこのような範囲であることで、前記樹脂フィルムの熱機械分析時において、2000μmの変位を示す温度と、温度が100℃での変位が、いずれも上述の数値範囲内となる前記樹脂フィルムが、より容易に得られる。一方、電子線照射時の加速電圧が前記下限値以上であることで、前記樹脂フィルム(特に、前記樹脂フィルムが後述する多層フィルムである場合には、この多層フィルム中の外層及び機能層)の架橋密度がより向上し、その結果、前記樹脂フィルム全体として、耐熱性及び溶融張力がより向上する。電子線照射時の加速電圧が前記上限値以下であることで、前記樹脂フィルムの強度が過剰となることが抑制される。
【0029】
前記樹脂フィルムのゲル分率は、30%以上であることが好ましく、30~90%であることがより好ましく、32~85%であることがさらに好ましく、例えば、40~82%、48~82%、及び55~82%のいずれかであってもよい。前記樹脂フィルムのゲル分率が前記下限値以上であることで、前記樹脂フィルムの耐熱性及び溶融張力が向上し、その結果、収容物への追従性が向上する。前記樹脂フィルムのゲル分率が前記上限値以下であることで、前記樹脂フィルムの強度が過剰となることが抑制される。
【0030】
前記樹脂フィルムのゲル分率は、フィルムの架橋部分が溶媒に溶解しないことを利用して、JIS K 6769に準拠して測定できる。すなわち、樹脂フィルムをキシレン等の有機溶媒中に浸漬し、溶解せずに残った不溶フィルムを乾燥させ、次いで、得られた乾燥物の質量を測定し、溶解前の樹脂フィルムの質量と、前記不溶フィルムの乾燥物の質量と、からゲル分率を算出できる。より具体的には、例えば、樹脂フィルム(質量Xg)を、ステンレス製金網(質量Yg)で包み、加熱した溶媒中に浸漬し、次いで、ステンレス製金網で包まれた樹脂フィルム(換言すると、前記不溶フィルム)を取り出す。次いで、これを真空乾燥させ、乾燥後のステンレス製金網で包まれた樹脂フィルム(換言すると、前記不溶フィルム)の質量(Zg)を測定する。そして、下記式(1):
樹脂フィルムのゲル分率(質量%)=(Z-Y)/X×100 (1)
により、樹脂フィルムのゲル分率を算出する。
【0031】
前記樹脂フィルムのゲル分率は、例えば、前記樹脂フィルム(特に、前記樹脂フィルムが後述する多層フィルムである場合には、この多層フィルム中の外層又は機能層)を電子線照射されたものとし、このときの電子線照射の条件を調節することで、調節できる。この場合の電子線照射時の条件としては、上述の、前記樹脂フィルムの熱機械分析時において、2000μmの変位を示す温度と、温度が100℃での変位と、を調節するときと同様の、吸収線量と、電子線照射の加速電圧と、を採用できる。
【0032】
前記樹脂フィルムは、上述の、熱機械分析時に2000μmの変位を示す温度と、ゲル分率と、のいずれか一方の条件を満たすか、又は両方の条件を満たすことが好ましい。すなわち、前記樹脂フィルムとしては、例えば、その熱機械分析時に2000μmの変位を示す温度が120℃以上であり、かつ、ゲル分率が30%未満であるもの;その熱機械分析時に2000μmの変位を示す温度が120℃未満であり、かつ、ゲル分率が30%以上であるもの;その熱機械分析時に2000μmの変位を示す温度が120℃以上であり、かつ、ゲル分率が30%以上であるものが挙げられる。
ただし、通常は、前記樹脂フィルムは、上述の両方の条件を満たすもの、すなわち、その熱機械分析時に2000μmの変位を示す温度が120℃以上であり、かつ、ゲル分率が30%以上であるものがより好ましい。
【0033】
前記樹脂フィルム(蓋材)の厚さは、60μm以上であることが好ましく、70~400μmであることがより好ましく、80~300μmであることがさらに好ましく、例えば、100~200μmであってもよい。前記樹脂フィルムの厚さが前記下限値以上であることで、前記樹脂フィルムの強度がより向上する。前記樹脂フィルムの厚さが前記上限値以下であることで、前記樹脂フィルムの厚さが過剰となることが抑制される。
【0034】
前記樹脂フィルムは、複数の層が積層されて構成された積層フィルムであることが好ましい。
積層フィルムである前記樹脂フィルムで好ましいものとしては、例えば、外層と、前記外層に隣接する機能層と、酸素バリア層と、シーラント層と、を備えた多層フィルムが挙げられる。
【0035】
前記樹脂フィルム(蓋材)においては、その種類によらず、すべての層が透明性を有し、前記樹脂フィルムが透明性を有すること、すなわち、前記樹脂フィルムは透明樹脂フィルムであることが好ましい。このような樹脂フィルムを用いて構成された冷凍生肉用真空包装体においては、樹脂フィルム(蓋材)を介して、収容物である生肉を容易に視認できる。
【0036】
前記樹脂フィルム(蓋材)のより詳細な構成と、その製造方法については、別途詳細に説明する。
【0037】
以下、図面を参照しながら、本発明についてより詳細に説明する。なお、以降の説明で用いる図は、本発明の特徴を分かり易くするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
【0038】
<<樹脂フィルム(蓋材)の一実施形態>>
図1は、本実施形態における樹脂フィルム(蓋材)のうち、前記多層フィルム(積層フィルム)の一例を模式的に示す断面図である。
ここに示す多層フィルム1は、外層12と、外層12に隣接する機能層13と、酸素バリア層14と、シーラント層11と、を備えている。多層フィルム1において、外層12は一方の最表層であり、シーラント層11は他方の最表層である。
【0039】
さらに、多層フィルム1は、シーラント層11側から外層12側へ向けて、シーラント層11上に配置された耐ピンホール層16と、耐ピンホール層16と酸素バリア層14との間に配置された接着層15と、酸素バリア層14と機能層13との間に配置された接着層15と、を備えている。
すなわち、多層フィルム1は、シーラント層11、耐ピンホール層16、接着層15、酸素バリア層14、接着層15、機能層13及び外層12がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて、構成されている。
【0040】
<シーラント層>
シーラント層11は、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリエチレン、アイオノマー、ポリエチレン系コポリマー等のポリエチレン系樹脂(本明細書においては、「シーラント層中ポリエチレン系樹脂」と称することがある)を含んでいてもよい。シーラント層11がシーラント層中ポリエチレン系樹脂を含んでいることにより、多層フィルム1の、被着体との擬似接着性発現によるイージーピール性が向上する。
【0041】
本明細書において、「ポリエチレン系樹脂」とは、少なくともエチレンから誘導された構成単位を有する樹脂であって、エチレンから誘導された構成単位のみを有していてもよいし、エチレンから誘導された構成単位と、それ以外の構成単位を有していてもよい。
【0042】
シーラント層11は、シーラント層中ポリエチレン系樹脂のみを含んでいてもよい(すなわち、シーラント層中ポリエチレン系樹脂からなるものであってもよい)し、シーラント層中ポリエチレン系樹脂と、それ以外の成分(本明細書においては、「他の成分」と称することがある)を含んでいてもよい(すなわち、シーラント層中ポリエチレン系樹脂と、前記他の成分と、からなるものであってもよい)。
【0043】
シーラント層11が含む前記他の成分は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択でき、例えば、樹脂成分及び非樹脂成分のいずれであってもよい。
樹脂成分である前記他の成分は、シーラント層中ポリエチレン系樹脂に該当しない樹脂である。
樹脂成分である前記他の成分は、1種のモノマーの重合体である単独重合体であってもよいし、2種以上のモノマーの重合体である共重合体であってもよい。
【0044】
非樹脂成分である前記他の成分としては、例えば、当該分野で公知の添加剤が挙げられる。
前記添加剤としては、例えば、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、無機粒子、減粘剤、増粘剤、熱安定化剤、滑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0045】
シーラント層11が含む前記他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0046】
シーラント層11における、シーラント層11の総質量に対する、シーラント層中ポリエチレン系樹脂の含有量の割合は、65~100質量%であることが好ましく、70~100質量%であることがより好ましく、75~100質量%であることがさらに好ましく、例えば、85~100質量%であってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、被着体との擬似接着性発現によるイージーピール性がより向上する。
前記割合は、通常、後述するシーラント層形成用組成物における、常温で気化しない成分の総含有量(質量部)に対する、シーラント層中ポリエチレン系樹脂の含有量(質量部)の割合、と同じである。
【0047】
本明細書において、「常温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち平常の温度を意味し、例えば、15~25℃の温度等が挙げられる。
【0048】
シーラント層11は、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。シーラント層11が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0049】
本明細書においては、シーラント層11の場合に限らず、「複数層が互いに同一でも異なっていてもよい」とは、「すべての層が同一であってもよいし、すべての層が異なっていてもよいし、一部の層のみが同一であってもよい」ことを意味し、さらに「複数層が互いに異なる」とは、「各層の構成材料及び厚さの少なくとも一方が互いに異なる」ことを意味する。
【0050】
シーラント層11の厚さは、特に限定されないが、4~96μmであることが好ましく、7~93μmであることがより好ましく、10~90μmであることがさらに好ましく、例えば、10~70μm、10~50μm、及び10~30μmのいずれかであってもよい。シーラント層11の厚さが前記下限値以上であることで、シーラント層11の強度がより高くなる。シーラント層11の厚さが前記上限値以下であることで、シーラント層11の厚さが過剰となることが抑制されるとともに、多層フィルム1を加熱によりシールしたときに、シール強度がより高くなる。
ここで、「シーラント層11の厚さ」とは、シーラント層11全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなるシーラント層11の厚さとは、シーラント層11を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0051】
シーラント層11の、外層12側とは反対側の露出面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)11aは、シール面である。
【0052】
<外層>
外層12は、ポリエチレン(PE)等のポリオレフィン系樹脂、又はポリエチレンテレフタレート系樹脂(PET、PETG)等のポリエステル系樹脂(本明細書においては、ポリオレフィン系樹脂およびポリエステル系樹脂を総称して「外層中樹脂」と称することがある)を含んでいてもよい。外層12が外層中樹脂を含んでいることにより、多層フィルム1に対して、外層12側の外部から電子線照射することにより、外層12の架橋密度を向上させることができる。その結果、多層フィルム1を用いて構成された冷凍生肉用真空包装体の収容物への追従性が向上する。
【0053】
外層12は、外層中樹脂のみを含んでいてもよい(すなわち、外層中樹脂からなるものであってもよい)し、外層中樹脂と、それ以外の成分(本明細書においては、「他の成分」と称することがある)を含んでいてもよい(すなわち、外層中樹脂と、前記他の成分と、からなるものであってもよい)。
【0054】
外層12が含む外層中樹脂は、密度が0.945g/cm3以下の低密度ポリエチレンであることが好ましく、密度が0.943g/cm3以下の低密度ポリエチレンであることがより好ましく、密度が0.941g/cm3以下の低密度ポリエチレンであることがさらに好ましい。このような低密度のポリエチレン(LDPE)を含むことで、多層フィルム1に対して、外層12側の外部から電子線照射することにより、外層12の架橋密度をより向上させることができる。
【0055】
外層12が含む外層中樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0056】
外層12が含む前記他の成分は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択でき、例えば、樹脂成分及び非樹脂成分のいずれであってもよい。
樹脂成分である前記他の成分は、外層中樹脂以外の樹脂である。
【0057】
外層12が含む前記他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0058】
外層12における、外層12の総質量に対する、外層中樹脂の含有量の割合は、50質量%以上であることが好ましく、55~100質量%であることがより好ましく、60~100質量%であることがさらに好ましく、例えば、70~100質量%、及び85~100質量%のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、多層フィルム1に対して、外層12側の外部から電子線照射することにより、外層12の架橋密度をより向上させることができる。
前記割合は、通常、後述する外層形成用組成物における、常温で気化しない成分の総含有量(質量部)に対する、外層中樹脂の含有量(質量部)の割合、と同じである。
【0059】
外層12は、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。外層12が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0060】
外層12の厚さは、特に限定されないが、4~146μmであることが好ましく、7~143μmであることがより好ましく、10~140μmであることがさらに好ましく、例えば、10~110μm、10~100μm、10~90μm、10~80μm、及び10~70μmのいずれかであってもよい。外層12の厚さが前記下限値以上であることで、多層フィルム1に対して、外層12側の外部から電子線照射することにより、外層12の架橋密度をより向上させることができる。外層12の厚さが前記上限値以下であることで、外層12の厚さが過剰となることが抑制される。
ここで、「外層12の厚さ」とは、外層12全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる外層12の厚さとは、外層12を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0061】
多層フィルム1の厚さに対する、外層12の厚さの割合は、特に限定されないが、10%以上であることが好ましく、12~88%であることがより好ましく、14~86%であることがさらに好ましい。前記割合が前記下限値以上であることで、多層フィルム1に対して、外層12側の外部から電子線照射することにより得られる効果が、より高くなる。前記割合が前記上限値以下であることで、外層12の厚さが過剰となることが抑制される。
【0062】
<機能層>
機能層13は、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリエチレン、アイオノマー、ポリエチレン系コポリマー等のポリエチレン系樹脂(本明細書においては、「機能層中ポリエチレン系樹脂」と称することがある)を含み、外層12に隣接していてもよい。機能層13が機能層中ポリエチレン系樹脂を含んでいることにより、多層フィルム1に対して、外層12側の外部から電子線照射した場合に、機能層13の架橋密度を向上させることができる。その結果、多層フィルム1を用いて構成された冷凍生肉用真空包装体の収容物への追従性が、より向上する。
【0063】
機能層13は、機能層中ポリエチレン系樹脂のみを含んでいてもよい(すなわち、機能層中ポリエチレン系樹脂からなるものであってもよい)し、機能層中ポリエチレン系樹脂と、それ以外の成分(本明細書においては、「他の成分」と称することがある)を含んでいてもよい(すなわち、機能層中ポリエチレン系樹脂と、前記他の成分と、からなるものであってもよい)。
【0064】
機能層13が含む前記機能層中ポリエチレン系樹脂としては、例えば、エチレンと少量のアクリル酸又はメタクリル酸との共重合体が、その中の酸部分と、金属イオンと、の塩形成によって、イオン橋かけ構造を有している樹脂が挙げられる。
【0065】
前記金属イオンとしては、例えば、ナトリウムイオン、亜鉛イオン等が挙げられる。本明細書において、金属イオンがナトリウムイオンである場合のアイオノマーをナトリウム系アイオノマーと称し、金属イオンが亜鉛イオンである場合のアイオノマーを亜鉛系アイオノマーと称することがある。
【0066】
機能層13が含む機能層中ポリエチレン系樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0067】
機能層13が含む前記他の成分は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択でき、例えば、樹脂成分及び非樹脂成分のいずれであってもよい。
樹脂成分である前記他の成分は、機能層中ポリエチレン系樹脂以外の樹脂である。
【0068】
機能層13が含む前記他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0069】
機能層13における、機能層13の総質量に対する、機能層中ポリエチレン系樹脂の含有量の割合は、50質量%以上であることが好ましく、55~100質量%であることがより好ましく、60~100質量%であることがさらに好ましく、例えば、70~100質量%、及び85~100質量%のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、多層フィルム1に対して、外層12側の外部から電子線照射することにより、機能層13の架橋密度をより向上させることができる。
前記割合は、通常、後述する機能層形成用組成物における、常温で気化しない成分の総含有量(質量部)に対する、機能層中ポリエチレン系樹脂の含有量(質量部)の割合、と同じである。
【0070】
機能層13は、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。機能層13が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0071】
機能層13の厚さは、4~146μmであることが好ましく、7~143μmであることがより好ましく、10~140μmであることがさらに好ましく、例えば、10~110μm、10~80μm、10~50μm、及び10~30μmのいずれかであってもよい。機能層13の厚さが前記下限値以上であることで、多層フィルム1に対して、外層12側の外部から電子線照射することにより、機能層13の架橋密度をより向上させることができる。機能層13の厚さが前記上限値以下であることで、機能層13の厚さが過剰となることが抑制される。
ここで、「機能層13の厚さ」とは、機能層13全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる機能層13の厚さとは、機能層13を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0072】
多層フィルム1の厚さに対する、機能層13の厚さの割合は、特に限定されないが、10%以上であることが好ましく、11~89%であることがより好ましく、12~88%であることがさらに好ましい。前記割合が前記下限値以上であることで、多層フィルム1に対して、外層12側の外部から電子線照射することにより得られる効果が、より高くなる。前記割合が前記上限値以下であることで、機能層13の厚さが過剰となることが抑制される。
【0073】
<酸素バリア層>
酸素バリア層14は、多層フィルム1に強い酸素バリア性(換言すると、酸素ガスの透過を抑制する性質)を付与する。
【0074】
酸素バリア層14は、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH、別名:エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物)又はポリ塩化ビニリデン(PVDC)(本明細書においては、EVOHおよびPVDCを総称して「酸素バリア性付与樹脂」と称することがある)を含んでいることが好ましい。このような酸素バリア層14を備えた多層フィルム1の酸素バリア性は、より高くなる。
【0075】
酸素バリア層14は、酸素バリア性付与樹脂のみを含んでいてもよい(すなわち、酸素バリア性付与樹脂からなるものであってもよい)し、酸素バリア性付与樹脂と、それ以外の成分(本明細書においては、「他の成分」と称することがある)を含んでいてもよい(すなわち、酸素バリア性付与樹脂と、前記他の成分と、からなるものであってもよい)。
【0076】
酸素バリア層14が含む前記他の成分は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択でき、例えば、樹脂成分及び非樹脂成分のいずれであってもよい。
樹脂成分である前記他の成分は、酸素バリア性付与樹脂以外の樹脂である。
非樹脂成分である前記他の成分としては、例えば、シーラント層11が含む他の成分として先に挙げた添加剤と同じものが挙げられる。
【0077】
酸素バリア層14が含む他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0078】
酸素バリア層14における、酸素バリア層14の総質量に対する、酸素バリア性付与樹脂の含有量の割合は、50~100質量%であることが好ましく、60~100質量%であることがより好ましく、70~100質量%であることがさらに好ましく、例えば、85~100質量%であってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、多層フィルム1の酸素バリア性がより高くなる。
前記割合は、通常、後述する酸素バリア層形成用組成物における、常温で気化しない成分の総含有量(質量部)に対する、酸素バリア性付与樹脂の含有量(質量部)の割合、と同じである。
【0079】
酸素バリア層14は、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。酸素バリア層14が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0080】
酸素バリア層14の厚さは、1~100μmであることが好ましく、1.5~90μmであることがより好ましく、2~80μmであることがさらに好ましく、例えば、4~60μm、4~40μm、及び4~20μmのいずれかであってもよい。酸素バリア層14の厚さが前記下限値以上であることで、多層フィルム1の酸素バリア性がより高くなる。酸素バリア層14の厚さが前記上限値以下であることで、酸素バリア層14の厚さが過剰となることが抑制される。
ここで、「酸素バリア層14の厚さ」とは、酸素バリア層14全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる酸素バリア層14の厚さとは、酸素バリア層14を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0081】
多層フィルム1の厚さに対する、酸素バリア層14の厚さの割合は、特に限定されないが、1%以上であることが好ましく、2~30%であることがより好ましく、3~25%であることがさらに好ましい。前記割合が前記下限値以上であることで、多層フィルム1の酸素バリア性がより高くなる。前記割合が前記上限値以下であることで、酸素バリア層14の厚さが過剰となることが抑制される。
【0082】
食品用のスキンパック包装体の場合、食品の酸化劣化を抑制するために、スキンパック包装体を構成する多層フィルムには、酸素バリア層を備えていることが求められる。しかし、酸素バリア層の存在によって、スキンパック包装体の食品への追従性(シワを生じることなく食品に密着する性質)が低下するという問題点があった。これに対して、外層12及び機能層13を備えた本実施形態の多層フィルム1を用いて構成されたスキンパック包装体では、このような問題点が改善されている。その理由は、外層12及び機能層13の存在により、多層フィルム1の耐熱性及び溶融張力が向上しており、その結果、多層フィルム1は、収容物への追従性に優れているためである。
【0083】
<接着層>
接着層15は、接着剤を含む。
接着層15は、その両面に隣接する2層を接着する。多層フィルム1において、耐ピンホール層16と酸素バリア層14との間に配置されている接着層15は、耐ピンホール層16と酸素バリア層14とを接着し、酸素バリア層14と機能層13との間に配置されている接着層15は、酸素バリア層14と機能層13とを接着している。本明細書においては、これら2層の接着層15を互いに区別するために、必要に応じて、耐ピンホール層16と酸素バリア層14との間に配置されている接着層15を第1接着層151と称し、酸素バリア層14と機能層13との間に配置されている接着層15を第2接着層152と称することがある。
これら2層の接着層15(第1接着層151及び第2接着層152)は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0084】
接着層15が含む前記接着剤は、接着対象の2層を十分な強度で接着できるものであれば、特に限定されない。
前記接着剤としては、例えば、オレフィン系樹脂(すなわち、1種又は2種以上のモノマーであるオレフィンの重合体)等の接着性樹脂が挙げられる。
【0085】
接着層15が含む前記オレフィン系樹脂として、より具体的には、例えば、エチレン系共重合体、プロピレン系共重合体、ブテン系共重合体等が挙げられる。
前記エチレン系共重合体とは、エチレンと、エチレン以外のモノマーと、の共重合体である。
前記プロピレン系共重合体とは、プロピレンと、プロピレン以外のモノマーと、の共重合体である。
前記ブテン系共重合体とは、ブテンと、ブテン以外のモノマーと、の共重合体である。
【0086】
接着層15が含む前記エチレン系共重合体としては、例えば、エチレンとビニル基含有モノマーとの共重合体等が挙げられる。
エチレンとビニル基含有モノマーとの共重合体としては、例えば、無水マレイン酸グラフト変性直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン-アクリル酸エチル-無水マレイン酸共重合体(E-EA-MAH)、アイオノマー(ION)、エチレン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
前記アイオノマーとしては、例えば、機能層13が含むものとして先に挙げたアイオノマーと、同じものが挙げられる。
【0087】
接着層15が含む前記プロピレン系共重合体としては、例えば、プロピレンとビニル基含有モノマーとの共重合体等が挙げられる。
プロピレンとビニル基含有モノマーとの共重合体としては、例えば、無水マレイン酸グラフト変性直鎖状低密度ポリプロピレン、プロピレン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0088】
接着層15が含む前記ブテン系共重合体としては、例えば、1-ブテンとビニル基含有モノマーとの共重合体、2-ブテンとビニル基含有モノマーとの共重合体、これら共重合体の変性物(変性共重合体)等が挙げられる。
【0089】
接着層15は、接着剤のみを含んでいてもよい(すなわち、接着剤からなるものであってもよい)し、接着剤と、それ以外の成分(本明細書においては、「他の成分」と称することがある)を含んでいてもよい(すなわち、接着剤と、前記他の成分と、からなるものであってもよい)。
【0090】
接着層15が含む接着剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0091】
接着層15が含む前記他の成分は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択でき、例えば、樹脂成分及び非樹脂成分のいずれであってもよい。
【0092】
接着層15が含む前記他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0093】
接着層15における、接着層15の総質量に対する、接着剤の含有量の割合は、例えば、50~100質量%であってもよい。
前記割合は、通常、後述する接着層形成用組成物における、常温で気化しない成分の総含有量(質量部)に対する、接着剤の含有量(質量部)の割合、と同じである。
【0094】
接着層15は、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。接着層15が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0095】
接着層15の厚さは、4~96μmであることが好ましく、7~93μmであることがより好ましく、例えば、7~80μm、7~60μm、7~40μm、及び7~20μmのいずれかであってもよい。接着層15の厚さが前記下限値以上であることで、接着対象の2層の接着強度がより高くなる。接着層15の厚さが前記上限値以下であることで、接着層15の厚さが過剰となることが抑制される。
ここで、「接着層15の厚さ」とは、接着層15全体の厚さ(例えば、耐ピンホール層16と酸素バリア層14との間に配置されている接着層15全体の厚さ、酸素バリア層14と機能層13との間に配置されている接着層15全体の厚さ)を意味し、例えば、複数層からなる接着層15の厚さとは、接着層15を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0096】
<耐ピンホール層>
多層フィルム1は、耐ピンホール層16を備えていなくてもよいが、耐ピンホール層16を備えていることにより、その耐ピンホール性がより高くなる。そして、この多層フィルム1を用いて構成された包装体においては、その加熱処理時における強度の低下を抑制できる。
【0097】
耐ピンホール層16は、アイオノマー、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリエチレン、ポリエチレン系コポリマー等のポリエチレン系樹脂(本明細書においては、「耐ピンホール層中ポリエチレン系樹脂」と称することがある)を含んでいることが好ましい。耐ピンホール層16が耐ピンホール層中ポリエチレン系樹脂を含んでいることにより、多層フィルム1の耐ピンホール性がより高くなるとともに、多層フィルム1に対して、外層12側の外部から電子線照射した場合に、耐ピンホール層16の架橋密度を向上させることができる。その結果、多層フィルム1を用いて構成された冷凍生肉用真空包装体の収容物への追従性が、より向上する。
【0098】
耐ピンホール層16は、耐ピンホール層中ポリエチレン系樹脂のみを含んでいてもよい(すなわち、耐ピンホール層中ポリエチレン系樹脂からなるものであってもよい)し、耐ピンホール層中ポリエチレン系樹脂と、それ以外の成分(本明細書においては、「他の成分」と称することがある)を含んでいてもよい(すなわち、耐ピンホール層中ポリエチレン系樹脂と、前記他の成分と、からなるものであってもよい)。
【0099】
耐ピンホール層16が含む耐ピンホール層中ポリエチレン系樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0100】
耐ピンホール層16が含む前記他の成分は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択でき、例えば、樹脂成分及び非樹脂成分のいずれであってもよい。
樹脂成分である前記他の成分は、耐ピンホール層中ポリエチレン系樹脂以外の樹脂である。
【0101】
耐ピンホール層16が含む前記他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0102】
耐ピンホール層16における、耐ピンホール層16の総質量に対する、耐ピンホール層中ポリエチレン系樹脂の含有量の割合は、50質量%以上であることが好ましく、55~100質量%であることがより好ましく、60~100質量%であることがさらに好ましく、例えば、70~100質量%、及び85~100質量%のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、多層フィルム1の、耐ピンホール層中ポリエチレン系樹脂を含んでいることにより得られる効果が、より高くなる。
前記割合は、通常、後述する耐ピンホール層形成用組成物における、常温で気化しない成分の総含有量(質量部)に対する、耐ピンホール層中ポリエチレン系樹脂の含有量(質量部)の割合、と同じである。
【0103】
耐ピンホール層16は、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。耐ピンホール層16が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0104】
耐ピンホール層16の厚さは、4~146μmであることが好ましく、7~143μmであることがより好ましく、10~140μmであることがさらに好ましく、例えば、10~110μm、10~80μm、及び10~50μmのいずれかであってもよい。耐ピンホール層16の厚さが前記下限値以上であることで、多層フィルム1の耐ピンホール性がより高くなる。耐ピンホール層16の厚さが前記上限値以下であることで、耐ピンホール層16の厚さが過剰となることが抑制される。
ここで、「耐ピンホール層16の厚さ」とは、耐ピンホール層16全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる耐ピンホール層16の厚さとは、耐ピンホール層16を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0105】
多層フィルム1の厚さに対する、耐ピンホール層16の厚さの割合は、特に限定されないが、10%以上であることが好ましく、11~89%であることがより好ましく、12~88%であることがさらに好ましい。前記割合が前記下限値以上であることで、多層フィルム1の耐ピンホール性がより高くなる。前記割合が前記上限値以下であることで、耐ピンホール層16の厚さが過剰となることが抑制される。
【0106】
<他の層>
多層フィルム1は、本発明の効果を損なわない範囲内において、シーラント層11と、外層12と、機能層13と、酸素バリア層14と、接着層15と、耐ピンホール層16と、のいずれにも該当しない、他の層を備えていてもよい。
【0107】
前記他の層の種類及び配置位置は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。
【0108】
多層フィルム1が備えている前記他の層は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0109】
前記他の層は、その1種あたり、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。前記他の層が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0110】
前記他の層の厚さは、その種類に応じて任意に設定でき、特に限定されない。
【0111】
多層フィルム1は、前記他の層を備えている場合、前記他の層をそれ以外の層と接着するための接着層(例えば、接着層15等)をさらに備えていてもよい。
【0112】
多層フィルム1の厚さは、先に説明した前記樹脂フィルム(蓋材)の厚さと同じである。
【0113】
本実施形態における多層フィルムは、上述のものに限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、一部の構成が変更、削除又は追加されたものであってもよい。
例えば、前記多層フィルムは、耐ピンホール層と、接着層と、機能層と、のいずれか1種又は2種以上を備えていなくてもよい。ただし、前記多層フィルムは、
図1に示すように、シーラント層と、耐ピンホール層と、接着層と、酸素バリア層と、接着層と、機能層と、外層と、をこの順に備えていることが好ましい。
【0114】
<<樹脂フィルム(蓋材)の製造方法>>
前記樹脂フィルム(蓋材)は、その種類に応じて、公知の方法で製造できる。
例えば、前記多層フィルム等の積層フィルムは、数台の押出機を用いて、各層の形成材料となる樹脂や樹脂組成物等を溶融押出するフィードブロック法や、マルチマニホールド法等の共押出Tダイ法、空冷式又は水冷式共押出インフレーション法等により、製造できる。
【0115】
また、前記積層フィルムは、その中のいずれかの層の形成材料となる樹脂や樹脂組成物等を、積層フィルムを構成するための別の層の表面にコーティングして、必要に応じて乾燥させることにより、積層フィルム中の積層構造を形成し、必要に応じて、これら以外の層を目的とする配置形態となるようにさらに積層することでも、製造できる。
【0116】
また、前記積層フィルムは、そのうちのいずれか2層以上を構成するための2枚以上のフィルムをあらかじめ別々に作製しておき、接着剤を用いてこれらフィルムを、ドライラミネート法、押出ラミネート法、ホットメルトラミネート法及びウェットラミネート法のいずれかによって貼り合わせて積層し、必要に応じて、これら以外の層を目的とする配置形態となるようにさらに積層することでも、製造できる。このとき、接着剤として、前記接着層を形成可能なものを用いてもよい。
【0117】
また、前記積層フィルムは、上記のように、あらかじめ別々に作製しておいた2枚以上のフィルムを、接着剤を用いずに、サーマル(熱)ラミネート法等によって貼り合わせて積層し、必要に応じて、これら以外の層を目的とする配置形態となるようにさらに積層することでも、製造できる。
【0118】
前記積層フィルムを製造するときには、ここまでに挙げた、積層フィルム中のいずれかの層(フィルム)の形成方法を、2以上組み合わせてもよい。
【0119】
製造方法がいずれの場合であっても、前記積層フィルム中のいずれかの層の形成材料となる前記樹脂組成物は、形成する層が目的とする成分(構成材料)を、目的とする含有量で含むように、含有成分の種類と含有量を調節して、製造すればよい。例えば、前記樹脂組成物中の、常温で気化しない成分同士の含有量の比率は、通常、この樹脂組成物から形成された層中の、前記成分同士の含有量の比率と同じとなる。
【0120】
シーラント層(
図1に示す多層フィルム1においては、シーラント層11)を形成するための樹脂組成物(本明細書においては、「シーラント層形成用組成物」と称することがある)としては、例えば、前記シーラント層中ポリエチレン系樹脂と、必要に応じて前記他の成分と、を含むものが挙げられる。
【0121】
外層(
図1に示す多層フィルム1においては、外層12)を形成するための樹脂組成物(本明細書においては、「外層形成用組成物」と称することがある)としては、例えば、前記外層中樹脂と、必要に応じて前記他の成分と、を含むものが挙げられる。
【0122】
機能層(
図1に示す多層フィルム1においては、機能層13)を形成するための樹脂組成物(本明細書においては、「機能層形成用組成物」と称することがある)としては、例えば、前記機能層中ポリエチレン系樹脂と、必要に応じて前記他の成分と、を含むものが挙げられる。
【0123】
酸素バリア層(
図1に示す多層フィルム1においては、酸素バリア層14)を形成するための樹脂組成物(本明細書においては、「酸素バリア層形成用組成物」と称することがある)としては、例えば、前記酸素バリア性付与樹脂と、必要に応じて前記他の成分と、を含むものが挙げられる。
【0124】
耐ピンホール層(
図1に示す多層フィルム1においては、耐ピンホール層16)を形成するための樹脂組成物(本明細書においては、「耐ピンホール層形成用組成物」と称することがある)としては、例えば、前記耐ピンホール層中ポリエチレン系樹脂と、必要に応じて前記他の成分と、を含むものが挙げられる。
【0125】
接着層(
図1に示す多層フィルム1においては、接着層15)を形成するための樹脂組成物(本明細書においては、「接着層形成用組成物」と称することがある)としては、例えば、前記接着剤と、必要に応じて前記他の成分と、を含むものが挙げられる。
【0126】
<<底材>>
前記底材は、その酸素透過量が300cc/(m2・day・atm)以下であり、冷凍生肉用真空包装体の底材として利用可能なものであれば、特に限定されない。
前記底材は、公知のものであってもよい。
【0127】
温度23℃、相対湿度60%の条件下での、前記底材の酸素透過量は、300cc/(m2・day・atm)以下であり、260cc/(m2・day・atm)以下であることが好ましく、例えば、200cc/(m2・day・atm)以下、150cc/(m2・day・atm)以下、100cc/(m2・day・atm)以下、及び50cc/(m2・day・atm)以下のいずれかであってもよい。
一方、前記酸素透過量は、0cc/(m2・day・atm)以上である。
【0128】
温度23℃、相対湿度60%の条件下での、前記底材の酸素透過量は、JIS K 7126-2:2006に準拠して測定できる。
【0129】
底材の酸素透過量は、例えば、底材の含有成分の種類と含有量、底材の厚さ等を調節することで、より容易に調節できる。
【0130】
底材の厚さは、100μm以上であることが好ましく、110μm以上であることがより好ましく、120μm以上であることがさらに好ましい。底材の厚さが前記下限値以上であることで、底材の強度がより向上する。
底材の厚さは、6000μm以下であることが好ましい。底材の厚さが前記上限値以下であることで、底材の厚さが過剰となることが抑制される。
底材の厚さは、上述のいずれかの下限値と、上限値と、を任意に組み合わせて設定される範囲内に、適宜調節できる。
【0131】
底材においては、その種類によらず、すべての層が透明性を有し、底材が透明性を有していてもよいし、すべての層又は一部の層が透明性を有さず、底材が透明性を有していなくてもよい。透明な底材を用いて構成された冷凍生肉用真空包装体においては、底材を介して、収容物である生肉を容易に視認できる。
【0132】
底材のより詳細な構成と、その製造方法については、別途詳細に説明する。
【0133】
<<底材の一実施形態>>
底材は、複数の層が積層されて構成された積層体であることが好ましい。
積層体である底材で好ましいものとしては、例えば、発泡樹脂層と、前記発泡樹脂層上に設けられた非発泡樹脂層と、を備えた樹脂積層体が挙げられる。
【0134】
前記発泡樹脂層は、公知のものであってよい。
前記発泡樹脂層としては、例えば、ポリスチレン系樹脂(PSP)の発泡体を含む樹脂層等が挙げられる。
【0135】
前記発泡樹脂層の密度は、特に限定されないが、0.05~0.5g/cm3であることが好ましい。
前記発泡樹脂層の発泡率は、特に限定されないが、2~20倍であることが好ましい。 前記発泡樹脂層の厚さは、特に限定されないが、500~6000μmであることが好ましい。
【0136】
前記非発泡樹脂層としては、例えば、イージーピール層と、酸素バリア層と、耐ピンホール層と、接着層と、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された底材用多層フィルムが挙げられる。前記底材用多層フィルムにおいて、イージーピール層は一方の最表層であり、接着層は他方の最表層である。
【0137】
前記底材用多層フィルムは、例えば、前記イージーピール層と前記酸素バリア層との間に、これら2層を接着するための中間接着層を備えていてもよい。
また、前記底材用多層フィルムは、例えば、前記酸素バリア層と前記耐ピンホール層との間に、これら2層を接着するための中間接着層を備えていてもよい。
すなわち、前記底材用多層フィルムは、イージーピール層と、中間接着層と、酸素バリア層と、中間接着層と、耐ピンホール層と、接着層と、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて、構成されていてもよい。
【0138】
本明細書においては、これら2層の中間接着層を互いに区別するために、必要に応じて、前記イージーピール層と前記酸素バリア層との間に配置されている中間接着層を第1中間接着層と称し、前記酸素バリア層と前記耐ピンホール層との間に配置されている中間接着層を第2中間接着層と称することがある。
これら2層の中間接着層(第1中間接着層、第2中間接着層)は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0139】
<イージーピール層>
底材用多層フィルムにおける前記イージーピール層としては、凝集破壊による剥離性を示すものが挙げられる。
凝集破壊による剥離性を示すイージーピール層としては、例えば、非相溶性の2種のポリオレフィンを含むものが挙げられる。
【0140】
底材用多層フィルムにおけるイージーピール層が含む、非相溶性の2種のポリオレフィンとしては、例えば、エチレンから誘導された構成単位を少なくとも有するエチレン系重合体と、プロピレンから誘導された構成単位を少なくとも有するプロピレン系重合体と、が挙げられる。
すなわち、前記イージーピール層としては、例えば、エチレンから誘導された構成単位を少なくとも有するエチレン系重合体、並びに、プロピレンから誘導された構成単位を少なくとも有するプロピレン系重合体、を含むものが挙げられる。
【0141】
底材用多層フィルムにおけるイージーピール層が含む前記エチレン系重合体としては、エチレンの単独重合体と、エチレン系共重合体と、が挙げられる。
【0142】
前記エチレンの単独重合体としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレン(mLLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等が挙げられる。
【0143】
前記エチレン系共重合体は、エチレンから誘導された構成単位と、エチレン以外のモノマーから誘導された構成単位と、を有する。
前記エチレン系共重合体としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン-アクリル酸エチル-無水マレイン酸共重合体(E-EA-MAH)、アイオノマー(ION)等が挙げられる。
前記アイオノマーとしては、例えば、先に説明した多層フィルム1中の機能層13が含むものとして先に挙げたアイオノマーと、同じものが挙げられる。
【0144】
底材用多層フィルムにおけるイージーピール層は、前記エチレン系重合体として、低密度ポリエチレンを含むことが好ましい。このようなイージーピール層のイージーピール性は、より良好である。
【0145】
底材用多層フィルムにおけるイージーピール層が含む、前記プロピレン系重合体としては、プロピレンの単独重合体(すなわちポリプロピレン又はホモポリプロピレン、hPP)と、プロピレン系共重合体と、が挙げられる。
【0146】
前記プロピレン系共重合体は、プロピレンから誘導された構成単位と、プロピレン以外のモノマーから誘導された構成単位と、を有する。
前記プロピレン系共重合体としては、例えば、プロピレン-エチレンランダム共重合体(別名:ポリプロピレンランダムコポリマー、rPP)、プロピレン-エチレンブロック共重合体(別名:ポリプロピレンブロックコポリマー、bPP)等が挙げられる。
【0147】
底材用多層フィルムにおけるイージーピール層は、前記プロピレン系重合体として、ポリプロピレンを含むことが好ましい。このようなイージーピール層のイージーピール性は、より良好である。
【0148】
底材用多層フィルムにおけるイージーピール層が含む、イージーピール性を発現する成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。例えば、イージーピール性を発現する成分が、上述の非相溶性の2種のポリオレフィンである場合、イージーピール層が含むこれらポリオレフィンは、それぞれ、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0149】
底材用多層フィルム中の前記イージーピール層において、前記エチレン系重合体及びプロピレン系重合体の合計含有量(質量部)に対する、前記エチレン系重合体の含有量(質量部)の割合は、10~90質量%であることが好ましく、例えば、30~90質量%、45~90質量%、及び60~90質量%のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、イージーピール層のイージーピール性がより良好となる。前記割合が前記上限値以下であることで、ピール強度がより安定する。
前記割合は、通常、後述する底材用イージーピール層形成用組成物における、前記エチレン系重合体及びプロピレン系重合体の合計含有量(質量部)に対する、前記エチレン系重合体の含有量(質量部)の割合、と同じである。
【0150】
底材用多層フィルムにおけるイージーピール層は、イージーピール性を損なわない範囲で、イージーピール性を発現する成分(例えば、上述の非相溶性の2種のポリオレフィン)以外に、他の成分を含んでいてもよい。
前記イージーピール層が含む前記他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0151】
底材用多層フィルム中のイージーピール層において、イージーピール層の総質量に対する、イージーピール性を発現する成分の含有量の割合(例えば、上述の非相溶性の2種のポリオレフィンの合計含有量の割合)は、50~100質量%であることが好ましく、70~100質量%であることがより好ましく、例えば、80~100質量%、90~100質量%、95~100質量%、97~100質量%、及び99~100質量%のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、イージーピール層のイージーピール性がより良好となる。
前記割合は、通常、後述する底材用イージーピール層形成用組成物における、常温で気化しない成分の総含有量(質量部)に対する、イージーピール性を発現する成分の含有量(質量部)の割合、と同じである。
【0152】
底材用多層フィルムにおけるイージーピール層が含む前記他の成分としては、例えば、防曇剤、アンチブロッキング剤等が挙げられる。
【0153】
底材用多層フィルムにおけるイージーピール層は、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。前記イージーピール層が複数層からなる場合、これら複数層は互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0154】
底材用多層フィルムにおけるイージーピール層の厚さは、2~50μmであることが好ましい。前記イージーピール層の厚さが前記下限値以上であることで、前記イージーピール層のシール強度が適度に高くなる。前記イージーピール層の厚さが前記上限値以下であることで、イージーピール性がより高くなる。
ここで、「イージーピール層の厚さ」とは、イージーピール層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなるイージーピール層の厚さとは、イージーピール層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0155】
底材用多層フィルムの厚さに対する、前記イージーピール層の厚さの割合は、特に限定されないが、5~40%であることが好ましい。前記割合が前記下限値以上であることで、前記イージーピール層のシール強度が適度に高くなる。前記割合が前記上限値以下であることで、イージーピール性がより高くなる。
【0156】
<酸素バリア層>
前記酸素バリア層は、底材用多層フィルムに酸素バリア性(換言すると、酸素ガスの透過を抑制する性質)を付与する。
【0157】
底材用多層フィルムにおける前記酸素バリア層は、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH、別名:エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物)又はポリアミドを含んでいることが好ましい。
【0158】
前記ポリアミドとしては、例えば、4-ナイロン、6-ナイロン、7-ナイロン、11-ナイロン、12-ナイロン、46-ナイロン、66-ナイロン、69-ナイロン、610-ナイロン、611-ナイロン、612-ナイロン、6T-ナイロン、6Iナイロン、6-ナイロンと66-ナイロンとのコポリマー(ナイロン6/66)、6-ナイロンと610-ナイロンとのコポリマー、6-ナイロンと611-ナイロンとのコポリマー、6-ナイロンと12-ナイロンとのコポリマー(ナイロン6/12)、6-ナイロンと612ナイロンとのコポリマー、6-ナイロンと6T-ナイロンとのコポリマー、6-ナイロンと6I-ナイロンとのコポリマー、6-ナイロンと66-ナイロンと610-ナイロンとのコポリマー、6-ナイロンと66-ナイロンと12-ナイロンとのコポリマー(ナイロン6/66/12)、6-ナイロンと66-ナイロンと612-ナイロンとのコポリマー、66-ナイロンと6T-ナイロンとのコポリマー、66-ナイロンと6I-ナイロンとのコポリマー、6T-ナイロンと6I-ナイロンとのコポリマー、66-ナイロンと6T-ナイロンと6I-ナイロンとのコポリマー等が挙げられる。
【0159】
前記ポリアミドは、耐熱性、機械的強度、及び入手の容易さ等の点においては、6-ナイロン(本明細書においては、「Ny6」と略記することがある)、12-ナイロン、66-ナイロン、ナイロン6/66、ナイロン6/12又はナイロン6/66/12であることが好ましい。
【0160】
底材用多層フィルムにおける酸素バリア層が含むポリアミドは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0161】
底材用多層フィルムにおける酸素バリア層は、エチレン-ビニルアルコール共重合体及びポリアミドのいずれか一方又は両方のみを含んでいてもよい(すなわち、エチレン-ビニルアルコール共重合体及びポリアミドのいずれか一方又は両方からなるものであってもよい)し、エチレン-ビニルアルコール共重合体及びポリアミドのいずれか一方又は両方と、これら以外の成分(本明細書においては、「他の成分」と称することがある)を含んでいてもよい(すなわち、エチレン-ビニルアルコール共重合体及びポリアミドのいずれか一方又は両方と、前記他の成分と、からなるものであってもよい)。
【0162】
底材用多層フィルムにおける酸素バリア層が含む前記他の成分は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択でき、例えば、樹脂成分及び非樹脂成分のいずれであってもよい。 樹脂成分である前記他の成分は、エチレン-ビニルアルコール共重合体と、ポリアミドと、のいずれにも該当しない樹脂である。
非樹脂成分である前記他の成分としては、例えば、先に説明した多層フィルム1中のシーラント層11が含む他の成分として先に挙げた添加剤と同じものが挙げられる。
【0163】
底材用多層フィルムにおける酸素バリア層が含む他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0164】
底材用多層フィルム中の酸素バリア層における、前記酸素バリア層の総質量に対する、エチレン-ビニルアルコール共重合体及びポリアミドの合計含有量の割合は、50~100質量%であることが好ましく、60~100質量%であることがより好ましく、例えば、70~100質量%、及び85~100質量%のいずれかであってもよい。
前記割合は、通常、後述する底材用酸素バリア層形成用組成物における、常温で気化しない成分の総含有量(質量部)に対する、エチレン-ビニルアルコール共重合体及びポリアミドの合計含有量(質量部)の割合、と同じである。
【0165】
底材用多層フィルムにおける酸素バリア層は、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。前記酸素バリア層が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0166】
底材用多層フィルムにおける酸素バリア層の厚さは、2~20μmであることが好ましい。前記酸素バリア層の厚さが前記下限値以上であることで、前記酸素バリア層の酸素バリア性がより高くなる。前記酸素バリア層の厚さが前記上限値以下であることで、前記酸素バリア層の厚さが過剰となることが抑制される。
ここで、「酸素バリア層の厚さ」とは、酸素バリア層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる酸素バリア層の厚さとは、酸素バリア層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0167】
底材用多層フィルムの厚さに対する、前記酸素バリア層の厚さの割合は、特に限定されないが、5~15%であることが好ましい。前記割合が前記下限値以上であることで、底材用多層フィルムの酸素バリア性がより高くなる。前記割合が前記上限値以下であることで、前記酸素バリア層の厚さが過剰となることが抑制される。
【0168】
<耐ピンホール層>
前記耐ピンホール層は、底材用多層フィルムにおいてピンホールの発生を抑制するなど、底材用多層フィルムの構造を保護するための層である。
【0169】
底材用多層フィルムにおける前記耐ピンホール層は、ポリオレフィンを含んでいることが好ましい。
前記ポリオレフィンとしては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレン(mLLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン;ポリプロピレン等が挙げられる。
【0170】
底材用多層フィルムにおける耐ピンホール層は、ポリオレフィンのみを含んでいてもよい(すなわち、ポリオレフィンからなるものであってもよい)し、ポリオレフィンと、それ以外の成分(本明細書においては、「他の成分」と称することがある)を含んでいてもよい(すなわち、ポリオレフィンと、前記他の成分と、からなるものであってもよい)。
【0171】
底材用多層フィルムにおける耐ピンホール層が含む前記他の成分は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択でき、例えば、樹脂成分及び非樹脂成分のいずれであってもよい。
樹脂成分である前記他の成分は、ポリオレフィン以外の樹脂である。
非樹脂成分である前記他の成分としては、例えば、先に説明した多層フィルム1中のシーラント層11が含む他の成分として先に挙げた添加剤と同じものが挙げられる。
【0172】
底材用多層フィルムにおける耐ピンホール層が含む他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0173】
底材用多層フィルム中の耐ピンホール層における、前記耐ピンホール層の総質量に対する、ポリオレフィンの含有量の割合は、50~100質量%であることが好ましく、60~100質量%であることがより好ましく、例えば、70~100質量%、及び85~100質量%のいずれかであってもよい。
前記割合は、通常、後述する底材用耐ピンホール層形成用組成物における、常温で気化しない成分の総含有量(質量部)に対する、ポリオレフィンの含有量(質量部)の割合、と同じである。
【0174】
底材用多層フィルムにおける耐ピンホール層は、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。前記耐ピンホール層が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0175】
底材用多層フィルムにおける耐ピンホール層の厚さは、2~50μmであることが好ましい。前記耐ピンホール層の厚さが前記下限値以上であることで、前記耐ピンホール層の保護能がより高くなる。前記耐ピンホール層の厚さが前記上限値以下であることで、前記耐ピンホール層の厚さが過剰となることが抑制される。
ここで、「耐ピンホール層の厚さ」とは、耐ピンホール層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる耐ピンホール層の厚さとは、耐ピンホール層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0176】
底材用多層フィルムの厚さに対する、前記耐ピンホール層の厚さの割合は、特に限定されないが、5~40%であることが好ましい。前記割合が前記下限値以上であることで、底材用多層フィルムの耐ピンホール性がより高くなる。前記割合が前記上限値以下であることで、前記耐ピンホール層の厚さが過剰となることが抑制される。
【0177】
<接着層>
前記接着層は、底材用多層フィルムを前記発泡樹脂層に接着するための層であり、接着剤を含む。
【0178】
前記接着剤は、接着性樹脂であることが好ましく、エチレン-酢酸ビニル共重合体系樹脂であることがより好ましい。
前記エチレン-酢酸ビニル共重合体系樹脂は、エチレンから誘導された構成単位と、酢酸ビニルから誘導された構成単位と、を有し、これら以外の他の構成単位を有していてもよいし、有していなくてもよい。
前記エチレン-酢酸ビニル共重合体系樹脂で好ましいものとしては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体部分ケン化物等が挙げられる。
【0179】
底材用多層フィルムにおける接着層は、接着剤のみを含んでいてもよい(すなわち、接着剤からなるものであってもよい)し、接着剤と、それ以外の成分(本明細書においては、「他の成分」と称することがある)を含んでいてもよい(すなわち、接着剤と、前記他の成分と、からなるものであってもよい)。
【0180】
底材用多層フィルムにおける接着層が含む接着剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0181】
底材用多層フィルムにおける接着層が含む前記他の成分は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択でき、例えば、樹脂成分及び非樹脂成分のいずれであってもよい。
【0182】
底材用多層フィルムにおける接着層が含む他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0183】
底材用多層フィルム中の接着層における、前記接着層の総質量に対する、接着剤の含有量の割合は、例えば、50~100質量%であってもよい。
前記割合は、通常、後述する底材用接着層形成用組成物における、常温で気化しない成分の総含有量(質量部)に対する、接着剤の含有量(質量部)の割合、と同じである。
【0184】
底材用多層フィルムにおける接着層は、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。前記接着層が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0185】
底材用多層フィルムにおける接着層の厚さは、2~40μmであることが好ましい。前記接着層の厚さが前記下限値以上であることで、接着対象の2層の接着強度がより高くなる。前記接着層の厚さが前記上限値以下であることで、前記接着層の厚さが過剰となることが抑制される。
ここで、「接着層の厚さ」とは、接着層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる接着層の厚さとは、接着層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0186】
底材用多層フィルムの厚さに対する、前記接着層の厚さの割合は、特に限定されないが、5~40%であることが好ましい。前記割合が前記下限値以上であることで、接着対象の2層の接着強度がより高くなる。前記割合が前記上限値以下であることで、前記接着層の厚さが過剰となることが抑制される。
【0187】
<第1中間接着層、第2中間接着層>
前記第1中間接着層及び第2中間接着層は、接着剤を含む。
前記接着剤は、接着性樹脂であることが好ましい。
前記接着性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。
前記ポリオレフィン系樹脂は、オレフィンから誘導された構成単位を有する樹脂であり、酸性基を有する酸変性ポリオレフィン(例えば、酸変性ポリエチレン、酸変性ポリプロピレン)等の変性ポリオレフィンであってもよい。
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、エチレン系共重合体、プロピレン系共重合体、ブテン系共重合体、これら共重合体の変性物(換言すると変性共重合体)等が挙げられる。
ポリオレフィン系樹脂は、接着性がより向上する点では、ランダム共重合体、グラフト共重合体又はブロック共重合体であることが好ましい。
【0188】
前記エチレン系共重合体としては、例えば、前記イージーピール層が含むものとして先に説明したエチレン系共重合体、その変性物(変性共重合体)等が挙げられる。
前記プロピレン系共重合体としては、例えば、プロピレンとビニル基含有モノマーとの共重合体、その変性物(変性共重合体)等が挙げられる。このようなプロピレン系共重合体として、より具体的には、例えば、無水マレイン酸グラフト変性直鎖状低密度ポリプロピレン、プロピレン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
前記ブテン系共重合体としては、例えば、1-ブテンとビニル基含有モノマーとの共重合体、2-ブテンとビニル基含有モノマーとの共重合体、これら共重合体の変性物(変性共重合体)等が挙げられる。
【0189】
前記第1中間接着層及び第2中間接着層は、接着剤のみを含んでいてもよい(すなわち、接着剤からなるものであってもよい)し、接着剤と、それ以外の成分(本明細書においては、「他の成分」と称することがある)を含んでいてもよい(すなわち、接着剤と、前記他の成分と、からなるものであってもよい)。
【0190】
前記第1中間接着層及び第2中間接着層が含む接着剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0191】
前記第1中間接着層及び第2中間接着層が含む前記他の成分は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択でき、例えば、樹脂成分及び非樹脂成分のいずれであってもよい。
【0192】
前記第1中間接着層及び第2中間接着層が含む他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0193】
底材用多層フィルム中の前記第1中間接着層における、前記第1中間接着層の総質量に対する、接着剤の含有量の割合は、例えば、50~100質量%であってもよい。
前記割合は、通常、後述する底材用第1中間接着層形成用組成物における、常温で気化しない成分の総含有量(質量部)に対する、接着剤の含有量(質量部)の割合、と同じである。
底材用多層フィルム中の前記第2中間接着層における、前記第2中間接着層の総質量に対する、接着剤の含有量の割合は、例えば、50~100質量%であってもよい。
前記割合は、通常、後述する底材用第2中間接着層形成用組成物における、常温で気化しない成分の総含有量(質量部)に対する、接着剤の含有量(質量部)の割合、と同じである。
【0194】
底材用多層フィルムにおける前記第1中間接着層及び第2中間接着層は、いずれも1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。前記第1中間接着層又は第2中間接着層が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0195】
底材用多層フィルムにおける前記第1中間接着層及び第2中間接着層の厚さは、それぞれ独立に、2~15μmであることが好ましい。前記第1中間接着層及び第2中間接着層の厚さが前記下限値以上であることで、接着対象の2層の接着強度がより高くなる。前記第1中間接着層及び第2中間接着層の厚さが前記上限値以下であることで、前記第1中間接着層及び第2中間接着層の厚さが過剰となることが抑制される。
ここで、「第1中間接着層の厚さ」とは、第1中間接着層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる第1中間接着層の厚さとは、第1中間接着層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。これは、第2中間接着層でも同じである。
【0196】
底材用多層フィルムの厚さに対する、前記第1中間接着層及び第2中間接着層の厚さの割合は、それぞれ、特に限定されないが、3~20%であることが好ましい。前記割合が前記下限値以上であることで、接着対象の2層の接着強度がより高くなる。前記割合が前記上限値以下であることで、前記第1中間接着層及び第2中間接着層の厚さが過剰となることが抑制される。
【0197】
<他の層>
底材用多層フィルムは、本発明の効果を損なわない範囲内において、前記イージーピール層と、前記第1中間接着層と、前記酸素バリア層と、前記第2中間接着層と、前記耐ピンホール層と、前記接着層と、のいずれにも該当しない、他の層を備えていてもよい。
【0198】
底材用多層フィルムにおける前記他の層の種類及び配置位置は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。
【0199】
底材用多層フィルムが備えている前記他の層は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0200】
底材用多層フィルムにおける前記他の層は、その1種あたり、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。前記他の層が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0201】
底材用多層フィルムにおける前記他の層の厚さは、その種類に応じて任意に設定でき、特に限定されない。
【0202】
底材用多層フィルムは、前記他の層を備えている場合、前記他の層をそれ以外の層と接着するための中間接着層をさらに備えていてもよく、その場合の中間接着層としては、例えば、上述の第1中間接着層又は第2中間接着層と同様のものが挙げられる。
【0203】
底材用多層フィルム等の前記非発泡樹脂層の厚さは、特に限定されないが、40~120μmであることが好ましい。
【0204】
<<底材の製造方法>>
前記底材は、その種類に応じて、公知の方法で製造できる。
例えば、底材が、上述の発泡樹脂層と非発泡樹脂層を備えた樹脂積層体である場合には、発泡樹脂層の一方の面と、前記非発泡樹脂層の一方の面(非発泡樹脂層が前記底材用多層フィルムである場合には、その中の前記接着層)と、を加熱ラミネートにより貼り合わせることで、底材を製造できる。このときの加熱ラミネートは、例えば、実施例で後述するように溶融圧着ラミネート法で行ってもよいし、押出ラミネート法で行ってもよい。
非発泡樹脂層のうち、前記底材用多層フィルムは、例えば、各層の形成材料となる樹脂又は樹脂組成物の種類が異なる点以外は、上述の樹脂フィルム(蓋材)の場合と同じ方法で製造できる。
【0205】
製造方法がいずれの場合であっても、前記底材用多層フィルム中のいずれかの層の形成材料となる前記樹脂組成物は、形成する層が目的とする成分(構成材料)を、目的とする含有量で含むように、含有成分の種類と含有量を調節して、製造すればよい。例えば、前記樹脂組成物中の、常温で気化しない成分同士の含有量の比率は、通常、この樹脂組成物から形成された層中の、前記成分同士の含有量の比率と同じとなる。
【0206】
底材用多層フィルムにおけるイージーピール層を形成するための樹脂組成物(本明細書においては、「底材用イージーピール層形成用組成物」と称することがある)としては、例えば、前記ポリオレフィンと、必要に応じて前記他の成分と、を含むものが挙げられる。
【0207】
底材用多層フィルムにおける酸素バリア層を形成するための樹脂組成物(本明細書においては、「底材用酸素バリア層形成用組成物」と称することがある)としては、例えば、エチレン-ビニルアルコール共重合体及びポリアミドのいずれか一方又は両方と、必要に応じて前記他の成分と、を含むものが挙げられる。
【0208】
底材用多層フィルムにおける耐ピンホール層を形成するための樹脂組成物(本明細書においては、「底材用耐ピンホール層形成用組成物」と称することがある)としては、例えば、前記ポリオレフィンと、必要に応じて前記他の成分と、を含むものが挙げられる。
【0209】
底材用多層フィルムにおける、接着層を形成するための樹脂組成物(本明細書においては、「底材用接着層形成用組成物」と称することがある)、第1中間接着層を形成するための樹脂組成物(本明細書においては、「底材用第1中間接着層形成用組成物」と称することがある)、第2中間接着層を形成するための樹脂組成物(本明細書においては、「底材用第2中間接着層形成用組成物」と称することがある)としては、いずれも、例えば、前記接着剤と、必要に応じて前記他の成分と、を含むものが挙げられる。
【0210】
<<冷凍生肉用真空包装体の一実施形態>>
図2は、本実施形態の冷凍生肉用真空包装体の一例を模式的に示す断面図である。
なお、
図2以降の図において、既に説明済みの図に示すものと同じ構成要素には、その説明済みの図の場合と同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0211】
ここに示す冷凍生肉用真空包装体10は、
図1に示す多層フィルム(蓋材)1と、底材8と、を備えて構成されている。
なお、
図2においては、多層フィルム1中の各層の区別を省略している。
【0212】
冷凍生肉用真空包装体10においては、温度23℃、相対湿度60%の条件下での、酸素透過量が、100cc/(m2・day・atm)以下である。
冷凍生肉用真空包装体10においては、温度140℃における動的弾性率E’が104以上107Pa以下である。
冷凍生肉用真空包装体10においては、多層フィルム(蓋材)1の熱機械分析時に、2000μmの変位を示す温度が120℃以上であるか、又は、多層フィルム(蓋材)1のゲル分率が30%以上であることが好ましい。
冷凍生肉用真空包装体10においては、温度23℃、相対湿度60%の条件下での、多層フィルム(蓋材)1の酸素透過量が、100cc/(m2・day・atm)以下であることが好ましい。
冷凍生肉用真空包装体10においては、多層フィルム(蓋材)1の前記熱機械分析時に、温度が100℃での変位が500μm以下であることが好ましい。
冷凍生肉用真空包装体10においては、多層フィルム(蓋材)1が、吸収線量13~300kGyの条件で電子線照射されたものであることが好ましい。
【0213】
冷凍生肉用真空包装体10においては、温度23℃、相対湿度60%の条件下での、底材8の酸素透過量が、300cc/(m2・day・atm)以下であることが好ましい。
【0214】
冷凍生肉用真空包装体10は、多層フィルム1を用いていることで、収容物である生肉9への追従性に優れている。
また、冷凍生肉用真空包装体10は、多層フィルム(蓋材)1及び底材8を用いていることで、生肉9に対する酸素遮断性が高く、生肉9の保存期間が、従来の包装体の場合よりも長い。
【0215】
底材8の一方の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)8aは、シール面であり、前記第1面8aの一部と、多層フィルム1中のシーラント層11の第1面11aの一部と、がシールにより密着している。
図2中、底材8の第1面8aと、多層フィルム1中のシーラント層11の第1面11aと、が直接接触している部位が、シール部である。その結果、底材8の第1面8aと、シーラント層11の第1面11aと、の間に、収納部10aが形成されている。そして、この収納部10a内に、生肉9が密封されている。
【0216】
底材8が前記底材用多層フィルムである場合には、底材8の第1面8aは、前記イージーピール層の前記酸素バリア層側とは反対側の面である。
【0217】
図2においては、冷凍生肉用真空包装体10の収納部10a内において、生肉9と多層フィルム1との間、並びに、生肉9と底材8との間には、一部隙間が見られるが、これら隙間は、生肉9を収納した状態の冷凍生肉用真空包装体10において、存在しないこともある。
【0218】
本実施形態の冷凍生肉用真空包装体は、上述のものに限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、一部の構成が変更、削除又は追加されたものであってもよい。
例えば、
図2においては、蓋材として、
図1に示す多層フィルム1を用いて構成された冷凍生肉用真空包装体10を示しているが、本実施形態の包装体は、他の蓋材を用いて構成されていてもよい。
【0219】
<<生肉包装体とその製造方法>>
本実施形態の生肉包装体は、本実施形態の冷凍生肉用真空包装体における前記底材と前記蓋材によって生肉が真空包装されたものである。
【0220】
本実施形態の生肉包装体は、例えば、前記底材の前記蓋材とシールする側の面上に生肉を載置し、前記底材の前記面と、前記生肉とに、これらの上部から前記蓋材を被せ、前記底材と前記蓋材との間の前記生肉が配置されている領域を真空引きすることで、前記蓋材を前記生肉に密着固定させつつ、前記生肉が配置されていない領域において、前記底材と前記蓋材とを加熱シールすることにより、製造できる。
後述する試験用包装体も、同じ方法で製造できる。
【0221】
加熱シール時のシール温度は、特に限定されないが、100~170℃であることが好ましい。前記シール温度が前記下限値以上であることで、イージーピール性を有しながら、シール強度がより高くなる。前記シール温度が前記上限値以下であることで、包装体の開封が、より容易となる。
【0222】
加熱シール時のシール時間は、前記シール温度に応じて、適宜調節できるが、通常は、10~30秒であることが好ましい。前記シール時間が前記下限値以上であることで、イージーピール性を有しながら、シール強度がより高くなる。前記シール時間が前記上限値以下であることで、包装体の開封が、より容易となる。
【0223】
加熱シール時の真空引きによる、前記生肉が配置されている領域の圧力は、5000Pa(50mbar)以下であり、300Pa以上5000Pa以下であることが好ましく、400Pa以上4900Pa以下であることがより好ましく、500Pa以上4800Pa以下であることがさらに好ましく、600Pa以上4700Pa以下であることが特に好ましい。前記圧力が前記上限値以下であることで、蓋材の生肉への追従性(密着性)がより高く、保存適性がより優れている生肉包装体が得られる。
【0224】
<<生肉の保存方法>>
本実施形態の生肉の保存方法は、前記生肉包装体を0℃未満の温度で保存する方法であり、前記温度は、例えば、-84℃以上0℃未満であることが好ましく、-83℃以上-1℃以下であることがより好ましく、-82℃以上-2℃以下であることがさらに好ましく、-81℃以上-3℃以下であることが特に好ましい。
【実施例0225】
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0226】
[実施例1]
<<多層フィルム(蓋材)の製造>>
以下に示す手順により、
図1に示す構成の多層フィルムを製造した。
すなわち、シーラント層を構成する樹脂として、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA、三井ダウポリケミカル社製「V5714C」)を用意した。
外層を構成する樹脂として、低密度ポリエチレン(LDPE、密度0.922g/cm
3、宇部丸善ポリエチレン社製「F222NH」)を用意した。
機能層及び耐ピンホール層を構成する樹脂として、ナトリウム系アイオノマー(ION、三井デュポンポリケミカル社製「1601」)を用意した。
酸素バリア層を構成する樹脂として、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH、日本合成社製「GH3804B」)を用意した。
接着層(第1接着層及び第2接着層)を構成する接着剤(接着性樹脂)として、無水マレイン酸変性ポリエチレン(変性PE、三井化学社製「NF536」)を用意した。
【0227】
ダイの温度を250℃とし、前記EVAと、前記IONと、前記変性PEと、前記EVOHと、前記変性PEと、前記IONと、前記LDPEとを、この順で共押出しすること(共押出Tダイ法)により、シーラント層(厚さ24μm)、耐ピンホール層(厚さ29μm)、接着層(第1接着層、厚さ8μm)、酸素バリア層(厚さ10μm)、接着層(第2接着層、厚さ8μm)、機能層(厚さ17μm)及び外層(厚さ24μm)がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された多層フィルム(厚さ120μm)を製造した。
【0228】
次いで、上記で得られた多層フィルムに対して、その外層側の外部から、吸収線量175kGy、加速電圧160kVの条件で、電子線を照射した。
以上により、目的とする電子線照射済みの多層フィルム(以下、「蓋材(I)」と称することがある)を得た。
【0229】
<<多層フィルム(蓋材)の評価>>
<140℃における動的弾性率の測定>
上記で得られた、電子線照射済みの多層フィルム(蓋材(I))について、動的粘弾性測定装置(日立ハイテクサイエンス社製「DMA 7100」)を用いて、JISK7244-4に準拠して、幅4mmのサンプルを使用して、引張モードで25℃から160℃の温度範囲において、変位10μm、振動周波数1Hz、昇温速度3℃/min.の条件で、動的弾性率(E’)の測定を行った。結果を表1に示す。
【0230】
<2000μmの変位を示す温度、温度が100℃での変位の特定>
上記で得られた、電子線照射済みの多層フィルム(蓋材(I))について、熱分析装置(SII社製「EXSTAR6000」)を用いて、JIS K 7196に準拠して、熱機械分析を行った。そして、得られた熱機械分析曲線から、2000μmの変位を示す温度(℃)と、温度が100℃での変位(μm)を求めた。結果を表1に示す。
【0231】
<ゲル分率の測定>
上記で得られた、電子線照射済みの多層フィルム(蓋材(I))について、JIS K 6769に準拠して、ゲル分率を測定した。
すなわち、多層フィルムから、大きさが3cm×3cm(約0.09g)である試験片を切り出し、この試験片を400メッシュステンレス鋼製金網(100g)で包み、110℃のキシレン(18mL)中に24時間浸漬した。
次いで、前記試験片を、前記金網ごと前記キシレン中から取り出し、1.7kPaの圧力下で、110℃で24時間真空乾燥させることで、浸漬後の前記試験片の乾燥物を得た。得られた前記乾燥物の質量を測定し、電子線照射済みの多層フィルムのゲル分率(%)を求めた。結果を表1に示す。
【0232】
<酸素透過量の測定>
上記で得られた、電子線照射済みの多層フィルム(蓋材(I))について、温度23℃、相対湿度60%の条件下で、JIS K 7126-2:2006に準拠して酸素透過量(cc/(m2・day・atm))を測定した。結果を表1に示す。
【0233】
<耐屈曲性試験>
上記で得られた、電子線照射済みの多層フィルム(蓋材(I))について、湿熱滅菌処理後の試料について、ASTM F392を準用して、冷凍下におけるゲルボフレックス試験を行った。試料を200mm×280mmにカットして、200mmの辺が周方向、280mmの辺が軸方向になるよう、筒状に丸めた。筒状にした試料をゲルボフレックス試験器にセットした。ゲルボフレックス試験器として、テスター産業株式会社製、型番BE-1005を用いた。この試験器によって、試料の両端部を把持した状態で、該試料を軸方向に潰しながら一定角度ねじった後、元に戻す動作を繰り返した。軸方向に潰すストロークは、174mmであった。ねじり角度は、440°であった。繰り返し速度は、45cpmであった。繰り返し回数は、500回であった。試験環境温度は-20℃であった。
【0234】
<耐屈曲性評価>
試験後の試料のピンホール数を以下のようにして計測した。試料を開いて展ばし、濾紙上に載置した。この試料の上面に赤色インクを塗布した。その後、試料を撤去し、濾紙に付いた赤色インクの斑点の数を調べた。結果を表1に示す。
【0235】
<<底材の製造>>
<底材用多層フィルムの製造>
以下に示す手順により、底材用多層フィルムを製造した。
すなわち、イージーピール層を構成する樹脂として、低密度ポリエチレン(LDPE、住友化学社製「L211」)と、ポリプロピレン(PP、住友化学社製「FS2011DG2」)を用意した。
耐ピンホール層を構成する樹脂として、メタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレン(mLLDPE)(宇部丸善ポリエチレン社製「ユメリット(登録商標)1520F」、密度0.913g/cm3)を用意した。
酸素バリア層を構成する樹脂として、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH、クラレ社製「J171B」、密度:1180kg/m3、MFR:4.2g/10min)を用意した。
第1中間接着層を構成する樹脂として、酸変性ポリプロピレン(酸変性PP、接着性樹脂、三井化学社製「アドマーQF551」)を用意した。
第2中間接着層を構成する樹脂として、酸変性ポリエチレン(酸変性PE、接着性樹脂、三井化学社製「アドマーNF536」)を用意した。
接着層を構成する樹脂として、エチレン-酢酸ビニル共重合体系樹脂(EVA系樹脂、接着性樹脂、東ソー社製「メルセン(登録商標)MX02D」を用意した。
【0236】
前記LDPE(70質量部)と前記PP(30質量部)を常温下で混合することにより、底材用イージーピール層形成用組成物を製造した。
【0237】
ダイの温度を250℃とし、前記底材用イージーピール層形成用組成物と、前記酸変性PPと、前記EVOHと、前記酸変性PEと、前記mLLDPEと、前記EVA系樹脂とを、この順で共押出しすること(共押出Tダイ法)により、イージーピール層(厚さ25.9μm)、第1中間接着層(厚さ5.6μm)、酸素バリア層(厚さ8.4μm)、第2中間接着層(厚さ5.6μm)、耐ピンホール層(厚さ10.5μm)及び接着層(厚さ14μm)がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された底材用多層フィルム(厚さ70μm)を製造した。
【0238】
<底材の製造>
ポリスチレン系樹脂(PSP)の発泡体を含む発泡樹脂シート(中央化学社製、厚さ3000μm)を用い、その一方の面に、上記で得られた底材用多層フィルムの接着層の露出面を加熱ラミネートにより貼り合わせることで、底材(以下、「底材(α)」と称することがある)を得た。前記発泡樹脂シートと底材用多層フィルムとの加熱ラミネートは、溶融圧着ロールを備えたロール装置を用いて、溶融圧着ラミネートにより行った。溶融圧着ロールは、加熱ロールと、この加熱ロールに対向して設けられた対向ロールと、を有して構成されており、加熱ロールと対向ロールとの間で、発泡樹脂シートと底材用多層フィルムを180℃で溶融圧着することにより、これらを貼り合わせた。
【0239】
<<底材の評価>>
<酸素透過量の測定>
上記で得られた底材(底材(α))について、温度23℃、相対湿度60%の条件下で、JIS K 7126-2:2006に準拠して酸素透過量(cc/(m2・day・atm))を測定した。結果を表3に示す。
【0240】
<<冷凍生肉用真空包装体(試験用包装体)の製造>>
屠殺後の和牛から枝肉を取得し、これを空気雰囲気下、4℃で2日間1次保管した。
次いで、この1次保管後の前記枝肉から部分肉を取得し、この部分肉(25kg)を酸素バリアフィルムで真空包装して、空気雰囲気下、4℃で5日間2次保管した。前記酸素バリアフィルムは、ポリエチレン層、エチレン-酢酸ビニル共重合体層、ポリ塩化ビニリデン層、エチレン-酢酸ビニル共重合体層及び超低密度ポリエチレン層がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成されたもの(厚さ50μm、大きさ30cm×50cm)であり、JIS K 7126-2:2006に準拠して測定されたその酸素透過量が10cc/(m2・day・atm)以下のものである。真空包装は、加熱シール時のシール温度を120℃、シール時間を3秒とし、前記部分肉が配置されている領域の圧力を30mbar(3000Pa)とすることで行った。
【0241】
次いで、この2次保管後の真空包装体中の前記部分肉から、質量0.3kgのサーロイン部位の試験肉を切り出した。そして、上記で得られた蓋材(I)中のシーラント層と、底材(α)中のイージーピール層と、を対向させ、これら蓋材(I)と底材(α)との間に前記試験肉を配置し、この試験肉の配置箇所を真空引きしながら、前記蓋材(I)及び底材(α)の周縁部を、シール温度150℃、シール時間10秒の条件で加熱シールすることにより、冷凍生肉用真空包装体(冷凍生肉用スキンパック包装体)である試験用包装体を作製した。真空引きの際は、試験肉の配置箇所の圧力を30mbar(3000Pa)とした。底材(α)としては、大きさが20cm×20cmであるものを用いた。
同じ手順により、前記試験用包装体を複数個作製した。これら試験用包装体を、空気雰囲気下、-30℃で冷凍し、3次保管した。
さらに、上記と同様の方法にて、モモ部位および腕部位についても試験肉を準備し、同様に包装体の作製および保管等を行った。
【0242】
<<冷凍生肉用真空包装体(試験用包装体)の評価>>
<肉の退色の評価>
3次保管開始から60日後、-30℃冷凍状態から、16時間かけて4℃まで解凍を実施した。解凍後直ちに、未開封の試験用包装体から試験肉を取り出して目視観察し、試験肉の退色の有無を評価した。結果を表4に示す。
【0243】
<追従性の評価>
3次保管開始から60日後、-30℃冷凍状態から、16時間かけて4℃まで解凍を実施した。解凍後直ちに、未開封の試験用包装体を目視観察し、下記基準に従って、蓋材の試験肉への追従性を評価した。結果を表4に示す。
[評価基準]
A:蓋材の試験肉からの浮きが全く無いか又は極めて少なく、追従性が高い。
B:Aよりも劣るが、蓋材の試験肉からの浮きが少なく、追従性が良好である。
C:蓋材の試験肉からの浮きが多く、追従性が低い。
D:蓋材が試験肉に追従していない。
【0244】
<ドリップの評価>
3次保管開始から60日後、-30℃冷凍状態から、16時間かけて4℃まで解凍を実施した。解凍後直ちに、未開封の試験用包装体から試験肉を取り出して、5分間置いた状態で、下記基準に従って、ドリップの発生量やドリップの濁りを目視観察した。結果を表4に示す。
[評価基準]
A:ドリップの発生量が全く無いか又は極めて少ない。
B:Aよりも劣るが、ドリップの発生量が少なく、ドリップの濁りも少ない。
C:ドリップの発生量が多く、ドリップの濁りも多い。
【0245】
<多汁性及び風味の評価>
3次保管開始から60日後、-30℃冷凍状態から、16時間かけて4℃まで解凍を実施した。解凍後直ちに、未開封の試験用包装体から試験肉を取り出して、厚さ1cm×3.5cm×4.5cmに調製し、220℃に加熱したホットプレートで、試験肉の表面を60秒加熱し、裏面を90秒加熱した。その後、3等分に切り分けた試験肉片を一切れとし、1試験肉につき一切れを1人分として食味サンプルを作成した。7名のパネラー(官能検査員)が食味を行い、下記の基準に従って、噛みしめた際の多汁性及び風味を評価した。結果を表4に示す。
[評価基準(多汁性)]
A:多汁性が良好である。
B:Aよりも劣るが、多汁性がある。
C:多汁性がほとんどなく、パサパサしている。
[評価基準(風味)]
A:肉としての風味が良好である。
B:Aよりも劣るが、肉としての風味がある。
C:肉としての風味がほとんどなくなっている。
【0246】
[実施例2]
多層フィルムに対する電子線の照射時に、吸収線量を175kGyに代えて120kGyとした点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、電子線照射済みの多層フィルム(以下、「蓋材(II)」と称することがある)を製造し、評価した。
この電子線照射済みの多層フィルム(蓋材(II))を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、冷凍生肉用真空包装体(試験用包装体)を製造し、評価した。
結果を表1、3及び4に示す。
【0247】
[実施例3]
多層フィルムに対する電子線の照射時に、吸収線量を175kGyに代えて90kGyとした点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、電子線照射済みの多層フィルム(以下、「蓋材(III)」と称することがある)を製造し、評価した。
この電子線照射済みの多層フィルム(蓋材(III))を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、冷凍生肉用真空包装体(試験用包装体)を製造し、評価した。
結果を表1、3及び4に示す。
【0248】
[実施例4]
多層フィルムに対する電子線の照射時に、吸収線量を175kGyに代えて15kGyとした点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、電子線照射済みの多層フィルム(以下、「蓋材(IV)」と称することがある)を製造し、評価した。
この電子線照射済みの多層フィルム(蓋材(IV))を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、冷凍生肉用真空包装体(試験用包装体)を製造し、評価した。
結果を表1、3及び4に示す。
【0249】
[実施例5]
<<底材の製造及び評価>>
酸素バリア層を構成する樹脂として、前記EVOH(クラレ社製「J171B」)に代えて、6-ナイロン(Ny6、宇部興産社製「1030B2」、融点225℃)を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、底材用多層フィルムを製造した。
本実施例で製造した底材用多層フィルムは、イージーピール層(厚さ25.9μm)、第1中間接着層(厚さ5.6μm)、酸素バリア層(厚さ8.4μm)、第2中間接着層(厚さ5.6μm)、耐ピンホール層(厚さ10.5μm)及び接着層(厚さ14μm)がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された底材用多層フィルム(厚さ70μm)である。
そして、この底材用多層フィルムを用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、底材(以下、「底材(β)」と称することがある)を製造し、評価した。結果を表3に示す。
【0250】
<<冷凍生肉用真空包装体の製造及び評価>>
上記で得られた底材(β)を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、冷凍生肉用真空包装体(試験用包装体)を製造し、評価した。結果を表4に示す。
【0251】
[比較例1]
多層フィルムに対する電子線の照射を行わなかった点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、蓋材(電子線非照射の多層フィルム、以下、「蓋材(V)」と称することがある)を製造し、評価した。
この電子線非照射の多層フィルム(蓋材(V))を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、冷凍生肉用真空包装体(試験用包装体)を製造し、評価した。
結果を表1、3及び5に示す。
【0252】
[比較例2]
<<底材の製造及び評価>>
酸素バリア層を構成する樹脂として、前記EVOH(クラレ社製「J171B」)に代えて、メタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレン(mLLDPE、宇部丸善ポリエチレン社製「4040FC」、融点126℃)を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、底材用多層フィルムを製造した。
本比較例で製造した底材用多層フィルムは、イージーピール層(厚さ25.9μm)、第1中間接着層(厚さ5.6μm)、酸素バリア層(厚さ8.4μm)、第2中間接着層(厚さ5.6μm)、耐ピンホール層(厚さ10.5μm)及び接着層(厚さ14μm)がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された底材用多層フィルム(厚さ70μm)である。
そして、この底材用多層フィルムを用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、底材(以下、「底材(γ)」と称することがある)を製造し、評価した。結果を表3に示す。
【0253】
<<冷凍生肉用真空包装体の製造及び評価>>
上記で得られた底材(γ)を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、冷凍生肉用真空包装体(試験用包装体)を製造し、評価した。結果を表5に示す。
【0254】
[比較例3]
<<多層フィルム(蓋材)の製造及び評価>>
酸素バリア層を構成する樹脂として、前記EVOH(日本合成社製「GH3804B」)に代えて、6-ナイロン(Ny6、宇部興産社製「1030B2」、融点225℃)を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、電子線照射済みの多層フィルム(以下、「蓋材(VI)」と称することがある)を製造した。
本比較例で製造した、電子線照射済みの多層フィルム(蓋材(VI))は、シーラント層(厚さ24μm)、耐ピンホール層(厚さ29μm)、接着層(第1接着層、厚さ8μm)、酸素バリア層(厚さ10μm)、接着層(第2接着層、厚さ8μm)、機能層(厚さ17μm)及び外層(厚さ24μm)がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された多層フィルム(厚さ120μm)に対して、その外層側の外部から、吸収線量175kGy、加速電圧160kVの条件で、電子線を照射して得られたものである。
そして、この電子線照射済みの多層フィルム(蓋材(VI))について、実施例1の場合と同じ方法で評価した。結果を表1に示す。
【0255】
<<冷凍生肉用真空包装体の製造及び評価>>
上記で得られた蓋材(VI)を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、冷凍生肉用真空包装体(試験用包装体)を製造し、評価した。結果を表5に示す。
【0256】
[比較例4]
<<多層フィルム(蓋材)の製造及び評価>>
以下に示す手順により、多層フィルムを製造した。
すなわち、シーラント層を構成する樹脂として、低密度ポリエチレン(LDPE、宇部丸善ポリエチレン社製「F222NH」)を用意した。
外層を構成する樹脂として、非晶性ポリエチレンテレフタレート(PETG、SKケミカル社製「S2008」)を用意した。
耐ピンホール層を構成する樹脂として、6-ナイロン(Ny6、宇部興産社製「1030B2」)を用意した。
酸素バリア層を構成する樹脂として、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH、クラレ社製「J171B」)を用意した。
クッション層を構成する樹脂として、低密度ポリエチレン(LDPE、宇部丸善ポリエチレン社製「F222NH」)を用意した。
接着層(第1接着層)を構成する接着剤(接着性樹脂)として、無水マレイン酸変性ポリエチレン(変性PE、三井化学社製「NF536」)を用意した。
接着層(第2接着層)を構成する接着剤(接着性樹脂)として、無水マレイン酸変性ポリエチレン(変性PE、三菱ケミカル社製「F515A」)を用意した。
【0257】
ダイの温度を250℃とし、前記LDPEと、前記LDPEと、前記変性PEと、前記NYと、前記EVOHと、前記変性PEと、前記PETGとを、この順で共押出しすること(共押出Tダイ法)により、シーラント層(厚さ12μm)、クッション層(厚さ17μm)、接着層(第1接着層、厚さ6μm)、耐ピンホール層(厚さ20μm)、酸素バリア層(厚さ12μm)、接着層(第2接着層、厚さ8μm)、及び外層(厚さ45μm)がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された多層フィルム(厚さ120μm)を製造した。
【0258】
次いで、上記で得られた多層フィルムに対して、その外層側の外部から、吸収線量175kGy、加速電圧160kVの条件で、電子線を照射した。
以上により、目的とする電子線照射済みの多層フィルム(以下、「蓋材(VII)」と称することがある)を得た。
そして、この電子線照射済みの多層フィルム(蓋材(VII))について、実施例1の場合と同じ方法で評価した。結果を表2に示す。
【0259】
<<冷凍生肉用真空包装体の製造及び評価>>
上記で得られた蓋材(VII)を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、冷凍生肉用真空包装体(試験用包装体)を製造し、評価した。結果を表5に示す。
【0260】
[比較例5]
<<多層フィルム(蓋材)の製造及び評価>>
シーラント層を構成する樹脂として、低密度ポリエチレン(LDPE、宇部丸善ポリエチレン社製「F222NH」)に代えて、アイオノマー(ION、三井ダウポリケミカル社製「1855」)を用い、外層を構成する樹脂として、非晶性ポリエチレンテレフタレート(PETG、SKケミカル社製「S2008」)に代えて、6-ナイロン(Ny6、宇部興産社製「1030B2」)を用い、クッション層を構成する樹脂として、低密度ポリエチレン(LDPE、宇部丸善ポリエチレン社製「F222NH」)に代えて、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA、三井ダウポリケミカル社製「N0903HC」)を用いた点以外は、比較例4の場合と同じ方法で、電子線照射済みの多層フィルム(以下、「蓋材(VIII)」と称することがある)を製造した。
本比較例で製造した、電子線照射済みの多層フィルム(蓋材(VIII))は、シーラント層(厚さ24μm)、クッション層(厚さ40μm)、接着層(第1接着層、厚さ8μm)、耐ピンホール層(厚さ24μm)、酸素バリア層(厚さ6μm)、接着層(第2接着層、厚さ10μm)及び外層(厚さ8μm)がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された多層フィルム(厚さ120μm)に対して、その外層側の外部から、吸収線量175kGy、加速電圧160kVの条件で、電子線を照射して得られたものである。
そして、この電子線照射済みの多層フィルム(蓋材(VIII))について、実施例1の場合と同じ方法で評価した。結果を表2に示す。
【0261】
<<冷凍生肉用真空包装体の製造及び評価>>
上記で得られた蓋材(VIII)を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、冷凍生肉用真空包装体(試験用包装体)を製造し、評価した。結果を表5に示す。
【0262】
[比較例6]
<<多層フィルム(蓋材)の製造及び評価>>
シーラント層を構成する樹脂として、アイオノマー(ION、三井ダウポリケミカル社製「1855」)に代えて、低密度ポリエチレン(LDPE、宇部丸善ポリエチレン社製「F222NH」)を用いた点以外は、比較例5の場合と同じ方法で、電子線照射済みの多層フィルム(以下、「蓋材(IX)」と称することがある)を製造した。
本比較例で製造した、電子線照射済みの多層フィルム(蓋材(IX))は、シーラント層(厚さ8μm)、クッション層(厚さ46μm)、接着層(第1接着層、厚さ8μm)、耐ピンホール層(厚さ30μm)、酸素バリア層(厚さ6μm)、接着層(第2接着層、厚さ10μm)及び外層(厚さ12μm)がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された多層フィルム(厚さ120μm)に対して、その外層側の外部から、吸収線量175kGy、加速電圧160kVの条件で、電子線を照射して得られたものである。
そして、この電子線照射済みの多層フィルム(蓋材(IX))について、実施例1の場合と同じ方法で評価した。結果を表2に示す。
【0263】
<<冷凍生肉用真空包装体の製造及び評価>>
上記で得られた蓋材(IX)を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、冷凍生肉用真空包装体(試験用包装体)を製造し、評価した。結果を表5に示す。
【0264】
[比較例7]
<<冷凍生肉用脱気シール包装体の製造及び評価>>
上記で得られた蓋材(I)中のシーラント層と、蓋材(I)中のシーラント層と、を対向させ、これら蓋材(I)と蓋材(I)との間に前記試験肉を配置し、この試験肉の配置箇所を脱気しながら、前記蓋材(I)及び蓋材(I)の周縁部を、シール温度140℃、シール時間2秒の条件で加熱シールすることにより、冷凍生肉用脱気シール包装体である試験用包装体を作製した点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、冷凍生肉用脱気シール包装体(試験用包装体)を製造し、評価した。結果を表5に示す。
【0265】
【0266】
【0267】
【0268】
【0269】
【0270】
上記結果から明らかなように、実施例1~5においては、サーロイン部位・モモ部位・腕部位いずれの試験肉においても、いずれも包装された試験肉の退色が発生しなかった。
このように、実施例1~5の冷凍生肉用真空包装体は、サーロイン部位・モモ部位・腕部位いずれの試験肉においても、冷凍包装した生肉の劣化を抑制して長期保管することが可能であった。
実施例1~5の冷凍生肉用真空包装体においては、蓋材の前記酸素透過量が6cc/(m2・day・atm)であり、底材の前記酸素透過量が250cc/(m2・day・atm)以下(2~250cc/(m2・day・atm))であった。また、ゲルボフレックスピンホール数が8以下であった。
【0271】
実施例1~5の冷凍生肉用真空包装体においては、サーロイン部位・モモ部位・腕部位いずれの試験肉においても、蓋材の生肉への追従性が良好であり、冷凍生肉用真空包装体として好ましい特性を有していた。なかでも、実施例1~3及び5の冷凍生肉用真空包装体においては、蓋材の生肉への追従性が特に優れていた。
実施例1~5の蓋材においては、前記140℃における動的弾性率が104以上106Pa以下(5.5×104~5.2×106)であり、前記吸収線量が15kGy以上(15~175kGy)であり、前記熱機械分析時の2000μmの変位を示す温度が125℃以上(125~185℃)であり、前記熱機械分析時の、温度が100℃での変位が320μm以下(62~320μm)であり、ゲル分率が35%以上(35~78%)であった。なかでも、実施例1~3、5の蓋材においては、前記吸収線量が90kGy以上(90~175kGy)であり、前記熱機械分析時の2000μmの変位を示す温度が135℃以上(135~185℃)であり、前記熱機械分析時の、温度が100℃での変位が120μm以下(62~120μm)であり、ゲル分率が60%以上(60~78%)であった。
【0272】
また、実施例1~5においては、ドリップの発生量が良好に抑制されており、多汁性も良好であった。なかでも、実施例1~3及び5の冷凍生肉用真空包装体が特に優れていた。
このように、実施例1~5の冷凍生肉用真空包装体は、冷凍下においてもフィルムが脆くならず、解凍時に発生するドリップを抑制して旨味成分の流出を防止し、従来より味を低下させることなく長期保管可能であった。
【0273】
これに対して、比較例1の冷凍生肉用真空包装体においては、サーロイン部位・モモ部位・腕部位いずれの試験肉においても、蓋材の生肉への追従性が低く、冷凍生肉用真空包装体として好ましい特性を有していなかった。また、保管中に包装体の空いている空間にドリップが滲み出ており、肉色が悪くなった。更に、旨味成分が流出してしまったため、加熱した肉の食味がパサパサしたものとなった。
なお、ドリップの発生量が多いと、栄養分が豊富な遊離されたドリップ内で菌が増殖しやすくなり、その結果、肉色が悪くなったものと考えられる。
比較例1の蓋材(多層フィルム)は、電子線の照射を行っておらず、その結果、140℃における動的弾性率が低く、前記熱機械分析時の2000μmの変位を示す温度が低く、前記熱機械分析時の、温度が100℃での変位が大きく、ゲル分率が低かった。また、ゲルボフレックスピンホール数が12個であり、多かった。
【0274】
比較例2においては、包装されたサーロイン部位・モモ部位・腕部位いずれの試験肉においても、試験肉の底材側で退色が発生した。
このように、比較例2の冷凍生肉用真空包装体は、冷凍包装した生肉の劣化を抑制して長期保管することができなかった。
比較例2の冷凍生肉用真空包装体においては、底材の前記酸素透過量が500cc/(m2・day・atm)であり、多かった。
【0275】
比較例3においては、サーロイン部位・モモ部位・腕部位いずれの試験肉においても、包装された試験肉の蓋材側で退色が発生した。
このように、比較例3の冷凍生肉用真空包装体も、冷凍包装した生肉の劣化を抑制して長期保管することができなかった。
比較例3の冷凍生肉用真空包装体においては、蓋材の前記酸素透過量が120cc/(m2・day・atm)であり、多かった。また、ゲルボフレックスピンホール数が15個であり、多かった。
【0276】
比較例4~6においては、サーロイン部位・モモ部位・腕部位いずれの試験肉においても、蓋材が生肉の形状を圧迫しており、冷凍生肉用真空包装体として好ましい特性を有していなかった。また、パック時にサーロイン部位・モモ部位・腕部位いずれの試験肉においても、生肉の細胞質を破壊してしまった状態で包装されているため、開封時にドリップが流出し、ドリップの色にも濁りが見られた。更に、旨味成分が流出してしまったため、加熱した肉の食味がパサパサしたものとなった。
このように、比較例4~6の冷凍生肉用真空包装体は、解凍時に発生するドリップを抑制して旨味成分の流出を防止できなかったため、長期保管すると従来より味が低下した。
比較例4~6の冷凍生肉用真空包装体においては、140℃における動的弾性率が高く、ゲル分率が低かった。また、ゲルボフレックスピンホール数が40個以上(40~72個)であり、多かった。
【0277】
なお、比較例7の冷凍生肉用脱気シール包装体は、蓋材を脱気シールしただけなので、蓋材がサーロイン部位・モモ部位・腕部位いずれの試験肉においても、生肉へ追従しておらず、余りシワが発生した。また、保管中に包装体の空いている空間にドリップが滲み出ており、ドリップの色にも濁りが見られた。更に、旨味成分が流出してしまったため、加熱した肉の食味がパサパサしたものとなり、肉の風味も失われてしまった。
このように、比較例7の冷凍生肉用脱気シール包装体は、解凍時に発生するドリップを抑制して旨味成分の流出を防止できなかったため、長期保管すると従来より味が低下した。
本発明は、冷凍下においてもフィルムが脆くならず、冷凍包装した生肉の劣化を抑制して長期保管でき、さらに解凍時に発生するドリップを抑制して旨味成分の流出を防止し、従来より味を低下させることなく長期保管可能な包装体を提供することができる。