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特開2022-145159表示装置、表示制御方法、及び表示制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022145159
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】表示装置、表示制御方法、及び表示制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   G02B 30/20 20200101AFI20220926BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20220926BHJP
   G09G 3/34 20060101ALI20220926BHJP
   G09G 5/00 20060101ALI20220926BHJP
   G09G 5/36 20060101ALI20220926BHJP
   G02B 27/02 20060101ALI20220926BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20220926BHJP
   H04N 5/64 20060101ALI20220926BHJP
   H04N 13/307 20180101ALI20220926BHJP
   H04N 13/322 20180101ALI20220926BHJP
   H04N 13/344 20180101ALI20220926BHJP
【FI】
G02B30/20
G09G3/20 612U
G09G3/20 660X
G09G3/20 680A
G09G3/34 J
G09G5/00 550H
G09G5/36 510V
G02B27/02 Z
G02B3/00 A
H04N5/64 511A
H04N13/307
H04N13/322
H04N13/344
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021046450
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 文彦
【テーマコード(参考)】
2H199
5C061
5C080
5C182
【Fターム(参考)】
2H199BA06
2H199BA68
2H199BA69
2H199BB02
2H199BB05
2H199BB18
2H199BB19
2H199BB45
2H199BB52
2H199BB59
2H199CA02
2H199CA23
2H199CA25
2H199CA42
2H199CA46
2H199CA47
2H199CA73
2H199CA74
2H199CA88
2H199CA93
5C061AA01
5C061AB14
5C061AB16
5C061AB18
5C080AA06
5C080AA10
5C080BB05
5C080CC04
5C080CC08
5C080DD01
5C080EE19
5C080EE26
5C080GG02
5C080GG12
5C080JJ02
5C080JJ06
5C080JJ07
5C080KK01
5C182AA02
5C182AA03
5C182AA05
5C182AA26
5C182AB33
5C182AC03
5C182AC43
5C182AC46
5C182BA56
5C182BA75
5C182BC11
5C182CC27
5C182DA52
(57)【要約】
【課題】ユーザに適切に画像を提供する。
【解決手段】表示装置1aは、ユーザに立体画像を提供するものであって、複数の画素Pを含み、光を照射することでユーザに画像を提供する表示部10と、表示部10よりもユーザ側に設けられ、複数のレンズ32aを有し、レンズ32aの焦点を個別に変更可能なマイクロレンズアレイ30aと、画像の奥行き方向の位置を示す奥行き情報に基づき、焦点の位置をレンズ32a毎に設定する焦点位置設定部と、を含む。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素を含み、光を照射することでユーザに画像を提供する表示部と、
前記表示部よりも前記ユーザ側に設けられ、複数のレンズを有し、前記レンズの焦点を個別に変更可能なマイクロレンズアレイと、
前記画像の奥行き方向の位置を示す奥行き情報に基づき、前記焦点の位置を前記レンズ毎に設定する焦点位置設定部と、
を含む、
表示装置。
【請求項2】
前記焦点位置設定部は、前記レンズを通る光の光束の開き角と、その光によって表示される前記画像の部分での奥行き方向の位置から前記ユーザに向けて前記光を照射した場合の光束の開き角との差分が所定範囲内となる前記焦点の位置を設定する、請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記表示部は、複数の前記画素を含む表示パネルと、前記表示パネルに光を照射する光源部とを含む、請求項1又は請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記表示部は、自発光する複数の前記画素を含む、請求項1又は請求項2に記載の表示装置。
【請求項5】
複数の画素を含み光を照射する表示部よりもユーザ側に設けられ、複数のレンズの焦点を個別に変更可能なマイクロレンズアレイの焦点の位置を、画像の奥行き方向の位置を示す奥行き情報に基づき、前記レンズ毎に設定する焦点位置設定ステップと、
を含む、
表示制御方法。
【請求項6】
複数の画素を含み光を照射する表示部よりもユーザ側に設けられ、複数のレンズの焦点を個別に変更可能なマイクロレンズアレイの焦点の位置を、画像の奥行き方向の位置を示す奥行き情報に基づき、前記レンズ毎に設定する焦点位置設定ステップと、
を、コンピュータに実行させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置、表示制御方法、及び表示制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザの右眼と左眼に異なる視差の画像を視認させて、輻輳の違いを利用して立体画像を表示させる表示装置が知られている。このような表示装置としては、ユーザの頭部に搭載されるいわゆるヘッドマウントディスプレイ(HMD)がある。例えば特許文献1には、ディスプレイと光学系との間にマイクロレンズアレイを配置するヘッドマウントディスプレイが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2019/044501号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、立体画像を表示する表示装置においては、ユーザに適切に画像を提供することが求められている。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑み、ユーザに適切に画像を提供可能な表示装置、表示制御方法、及び表示制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様にかかる表示装置は、複数の画素を含み、光を照射することで前記ユーザに画像を提供する表示部と、前記表示部よりも前記ユーザ側に設けられ、複数のレンズを有し、前記レンズの焦点を個別に変更可能なマイクロレンズアレイと、前記画像の奥行き方向の位置を示す奥行き情報に基づき、前記焦点の位置を前記レンズ毎に設定する焦点位置設定部と、を含む。
【0007】
本発明の一態様にかかる表示制御方法は、複数の画素を含み光を照射する表示部よりもユーザ側に設けられ、複数のレンズの焦点を個別に変更可能なマイクロレンズアレイの焦点の位置を、前記画像の奥行き方向の位置を示す奥行き情報に基づき、前記レンズ毎に設定する焦点位置設定ステップを含む。
【0008】
本発明の一態様にかかる表示制御プログラムは、複数の画素を含み光を照射する表示部よりもユーザ側に設けられ、複数のレンズの焦点を個別に変更可能なマイクロレンズアレイの焦点の位置を、前記画像の奥行き方向の位置を示す奥行き情報に基づき、前記レンズ毎に設定する焦点位置設定ステップを、コンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ユーザに適切に画像を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、輻輳調節矛盾を説明するための模式図である。
図2図2は、第1実施形態に係る表示装置の模式図である。
図3図3は、第1実施形態に係る表示装置の各構成の模式図である。
図4図4は、第1実施形態に係る制御装置の模式的なブロック図である。
図5図5は、照射タイミングの設定を説明するための模式図である。
図6図6は、照射タイミングの設定を説明するための模式図である。
図7図7は、照射タイミングの設定を説明するための模式図である。
図8図8は、本実施形態に係る制御装置の処理フローを説明するフローチャートである。
図9図9は、第2実施形態に係る表示装置の各構成の模式図である。
図10図10は、第2実施形態に係る制御装置の模式的なブロック図である。
図11図11は、第2実施形態に係る制御装置の処理フローを説明するフローチャートである。
図12図12は、変形例に係る表示装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0012】
(輻輳調節矛盾)
図1は、輻輳調節矛盾を説明するための模式図である。立体画像を表示する表示装置は、ユーザの右眼と左眼に異なる視差の画像を視認させて、輻輳の違いを利用して立体画像を表示させる。立体画像を表示する場合には、実際に画像が表示される表示面がユーザの眼の焦点位置となり、左右の眼の視線が交差する位置が輻輳位置となる。しかし、図1の例に示すように、立体画像においては、立体画像の奥行き方向であるZ方向における焦点位置PO1と輻輳位置PO2との位置がずれることがある。焦点位置PO1と輻輳位置PO2との位置がずれると、いわゆる輻輳調節矛盾が起こり、眼精疲労やいわゆる3D酔いなどの原因となる。そのため、輻輳調節矛盾を抑制することが求められている。なお、図1の(A)は、焦点位置PO1が輻輳位置PO2よりもユーザの眼EY側にあり、図1の(B)は、輻輳位置PO2が焦点位置PO1よりもユーザの眼EY側にある例を示している。
【0013】
(第1実施形態)
(表示装置の全体構成)
図2は、第1実施形態に係る表示装置の模式図である。第1実施形態に係る表示装置1は、立体画像を表示する表示装置である。図2に示すように、表示装置1は、ユーザUの頭部に装着される、いわゆるHMD(Head Mount Display)である。例えば、表示装置1は、ユーザUの眼EYに面した位置に表示部10が装着される。そして、表示装置1は、表示部10に画像を表示させて、ユーザUにコンテンツを提供する。なお、図2に示した表示装置1の構成は一例である。例えば、表示装置1は、ユーザUの耳に装着される音声出力部(スピーカ)を備えていてもよい。
【0014】
表示装置1は、このようにユーザUに装着されるため、ユーザUの眼EYに対する位置が固定される。表示装置1は、ユーザUに装着されるHMDであることに限られず、設備に固定された表示装置などであってもよい。このような場合でも、表示装置1は、例えばユーザUの座席に対する位置が固定されるなど、ユーザUの眼EYに対する位置が固定されることが好ましい。
【0015】
図3は、第1実施形態に係る表示装置の各構成の模式図である。図3に示すように、表示装置1は、表示部10と、接眼レンズ20と、マイクロレンズアレイ30と、制御装置40とを有する。
【0016】
(表示部)
表示部10は、立体画像を表示する装置である。表示部10は、マトリクス状に並び自発光する複数の画素P(表示素子)を有するディスプレイである。表示部10が有する各画素Pは自発光するため、表示部10は、画素P毎に個別に発光(光の照射)の制御が可能である。表示部10の各画素Pは、例えば有機発光ダイオード(OLED: Organic Light Emitting Diode)であってもよいし、無機発光ダイオード(マイクロLED(micro LED)であってもよい。表示部10で画像が表示される面を表示面10Aとする。以下、表示面10AからユーザUの眼EYへ向かう方向を、方向Z1とし、方向Z1と反対方向を、すなわちユーザUの眼EYから表示面10Aに向かう方向を、方向Z2とする。方向Z1、Z2を区別しない場合は、方向Zと記載する。なお、図3では、表示部10のユーザUの眼EY側の表面を表示面10Aとしているが、表示面10Aは、ユーザUの眼EY側の表面であることに限られず、ユーザUの眼EY側の表面よりも内側にあってもよい。なお、表示部10は、後述する制御装置40から表示部10の画素Pを制御する制御信号を受信する。
【0017】
表示部10は、各画素Pから照射(発光)された光である画像光LをユーザUの眼EYに到達させることで、ユーザUに立体画像を提供する。より詳しくは、表示部10は、左眼用画像と右眼用画像とが提供されるように、各画素Pの発光が制御される。各画素Pからの画像光Lのうち、左眼用画像に対応する画素Pからの画像光LがユーザUの左眼に入射し、右眼用画像に対応する画素Pからの画像光LがユーザUの左眼に入射することで、ユーザUに立体画像が提供される。
【0018】
(接眼レンズ)
接眼レンズ20は、表示部10のZ1方向側に設けられる。接眼レンズ20は、光(画像光)を透過する光学素子である。さらに言えば、接眼レンズ20は、表示装置1で最もユーザUの眼EY側にある光学素子(レンズ)である。表示部10から出射された画像光Lは、接眼レンズ20を通って、ユーザUの眼EYに入射する。なお、本実施形態では、接眼レンズ20(接眼レンズ)からユーザUの眼EYまでの画像光Lの光路における光軸方向が、方向Zともいえる。
【0019】
なお、図3の例では、表示部10のZ1方向側の光学素子として、接眼レンズ20とマイクロレンズアレイ30のみが示されているが、それに限られず、それら以外の光学素子が設けられていてもよい。
【0020】
(マイクロレンズアレイ)
マイクロレンズアレイ30は、画像光Lの光軸方向において、表示部10よりもユーザU側に設けられている。さらに言えば、マイクロレンズアレイ30は、画像光Lの光軸方向において、表示部10と接眼レンズ20との間に設けられている。マイクロレンズアレイ30は、表示面10Aと平行な平面においてマトリクス状に複数のレンズ32が並ぶ光学素子である。本実施形態では、マイクロレンズアレイ30の各レンズ32のピッチは、すなわち隣り合うレンズ32の中心同士の距離は、例えば表示部10の画素Pのピッチ(隣り合う画素Pの中心同士の距離)と同程度である。マイクロレンズアレイ30の各レンズ32は、画像光Lの光軸方向において、表示部10の各画素Pに対向する位置に設けられている。なお、マイクロレンズアレイ30は、後述する制御装置40からマイクロレンズアレイ30を制御する制御信号を受信する。
【0021】
マイクロレンズアレイ30は、各レンズ32のZ方向(画像光Lの光軸方向)における焦点の位置(レンズ32から焦点までの距離)を変化可能な、いわゆる可変焦点マイクロレンズアレイである。第1実施形態の例においては、マイクロレンズアレイ30は、各レンズ32の焦点の位置を一様に変化させるものであり、同一のタイミングにおける各レンズ32のZ方向における焦点の位置は同じである。マイクロレンズアレイ30は、任意の構造であってよいが、例えば液晶とフレネルレンズとを組み合わせることで構成されてよい。例えば、マイクロレンズアレイ30の各レンズ32として、「液晶可変焦点レンズを利用した体積型三次元表示」(徳島大学 陶山史朗 光学 40巻12号(2011))の文献で開示された可変焦点レンズを用いてよい。
【0022】
(制御装置)
制御装置40は、表示装置1の各部を制御する装置である。図4は、第1実施形態に係る制御装置の模式的なブロック図である。制御装置40は、本実施形態ではコンピュータであり、記憶部42と制御部44とを有する。記憶部42は、制御部44の演算内容やプログラムなどの各種情報を記憶するメモリであり、例えば、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)のような主記憶装置と、HDD(Hard Disk Drive)などの外部記憶装置とのうち、少なくとも1つ含む。記憶部42が記憶する制御部44用のプログラムは、制御装置40が読み取り可能な記録媒体に記憶されていてもよい。
【0023】
制御部44は、演算装置であり、例えばCPU(Central Processing Unit)などの演算回路を含む。制御部44は、画像情報取得部50と、駆動制御部52と、タイミング設定部54と、照射制御部56とを含む。制御部44は、記憶部42からプログラム(ソフトウェア)を読み出して実行することで、画像情報取得部50と駆動制御部52とタイミング設定部54と照射制御部56とを実現して、それらの処理を実行する。なお、制御部44は、1つのCPUによってこれらの処理を実行してもよいし、複数のCPUを備えて、それらの複数のCPUで、処理を実行してもよい。また、画像情報取得部50と駆動制御部52とタイミング設定部54と照射制御部56との少なくとも1つを、ハードウェア回路で実現してもよい。
【0024】
(画像情報取得部)
画像情報取得部50は、表示部10が表示する立体画像の画像データを取得する。すなわち、画像情報取得部50は、左眼用画像の画像データと、右眼用画像の画像データとを取得する。また、画像情報取得部50は、立体画像の奥行き方向における位置を示す奥行き情報を取得する。立体画像の奥行き方向における位置とは、表示面10Aに画像を表示した際にユーザUに視認される虚像の、奥行き方向における位置を指す。奥行き方向とは、表示部10の表示面10Aに直交する方向であるとも言え、本実施形態ではZ方向である。奥行き情報は、画像データに関連付けられている。さらに言えば、立体画像は、1フレームに含まれる各画像について、奥行き方向における位置が設定されており、言い換えれば、表示面10A上の位置毎に、奥行き方向における位置が設定されている。そのため、画像情報取得部50は、立体画像についての、表示面10A上の位置毎の奥行き情報を取得するといえる。なお、立体画像は、画素P毎に奥行き方向における位置が設定されているが、1つの画像を構成する複数の画素Pに対しては、奥行き方向における位置が同じとなるように設定されていてもよい。画像情報取得部50は、任意の方法で画像データ及び奥行き情報を取得してよく、記憶部42に予め記憶されていた画像データ及び奥行き情報を読み出してもよいし、図示しない通信部を介して画像データ及び奥行き情報を受信してもよい。また、画像情報取得部50は、画像データに基づき奥行き方向の位置を算出することで、奥行き情報を取得してもよい。
【0025】
(駆動制御部)
駆動制御部52は、マイクロレンズアレイ30を制御して、マイクロレンズアレイ30の各レンズ32の焦点の位置をZ方向に移動させる。駆動制御部52は、例えば、マイクロレンズアレイ30に含まれる液晶素子に対する電圧の印加を制御することで、レンズ32の焦点の位置をZ方向に移動させる。駆動制御部52は、レンズ32の焦点の位置がZ1方向に所定距離移動した後にZ2方向に所定距離移動するZ方向の往復移動(振動)を繰り返し行うように、レンズ32の焦点の位置を移動させる。駆動制御部52は、レンズ32の焦点の位置を、Z方向に沿って所定の周期で移動させる。言い換えれば、駆動制御部52は、レンズ32の焦点のZ方向の往復移動を、所定の周期で行わせる。本実施形態では、Z方向の往復移動の周期(表示部10がZ方向において元の位置に戻ってくるまでの時間)は一定であるが、一定であることに限られず、周期を変化させてもよい。
【0026】
(タイミング設定部及び照射制御部)
タイミング設定部54は、画像光Lの照射タイミングを、表示部10の画素P毎に設定する。照射制御部56は、画像データに基づき、表示部10の画素Pを制御して画素Pに画像光Lを照射させる。照射制御部56は、タイミング設定部54が設定した画素P毎の照射タイミングで、画素P毎に画像光Lを照射させる。すなわち、照射制御部56は、表示部10のある画素Pに、その画素Pについて設定された照射タイミングで、画像光Lを照射させる。タイミング設定部54は、Z方向(画像光Lの光軸方向)におけるマイクロレンズアレイ30(レンズ32)の焦点の位置に基づき、照射タイミングを設定する。さらに言えば、タイミング設定部54は、立体画像の奥行き情報と、Z方向におけるマイクロレンズアレイ30の焦点の位置とに基づき、照射タイミングを設定する。なお、タイミング設定部54は、画素P毎に照射タイミングを設定するが、画素P毎に照射タイミングが異なることに限られず、例えば1つの画像を構成する一群の画素P(例えば図5の家の画像を表示する一群の画素Pなど)の照射タイミングを、同じに設定してよい。以下、タイミング設定部54の設定についてより具体的に説明する。
【0027】
図5から図7は、照射タイミングの設定を説明するための模式図である。例えば図5に示すように、表示部10の画素Pから出射された画像光Lは、所定の開き角をもつ光束として、ユーザUの眼EYに入射する。この場合、ユーザUは、この光束の開き角に合うように、眼球の水晶体の厚さを無意識に変えて、網膜に焦点が合うように調節している。輻輳調節矛盾は、左右の眼の輻輳度合い(左右の眼のより度合い)と、光束の開き角に焦点を合わせた状態とが、合致していないことを指す。それに対して、本実施形態の表示装置1は、虚像(輻輳位置)から光が出射されて眼EYに入射したと仮定した場合の開き角である虚像開き角(図5の例では角度θ1A)と、実際に画素Pから画像光Lが出射されて眼EYに入射した場合の画像光Lの開き角との差分が小さくなるように、画像光Lを出射させる。ここで、画像光Lは、マイクロレンズアレイ30のレンズ32を通る際に光束の開き角が変化し(屈折して)、光束の開き角の変化度合いは、レンズ32の焦点の位置に応じて決まる。従って、タイミング設定部54は、レンズ32の焦点の位置が虚像開き角と画像光Lの開き角との差分が小さくなる位置に到達したタイミングを、照射タイミングとして設定する。
【0028】
より詳しくは、タイミング設定部54は、画素P毎の奥行き情報を取得する。すなわち、タイミング設定部54は、画素P毎の奥行き方向(Z方向)における位置の情報を取得する。そして、タイミング設定部54は、画素Pの奥行き情報に基づき、その画素Pに画像光Lの照射を開始させる際のレンズ32の焦点の位置である照射位置を設定する。タイミング設定部54は、画素Pによって表示される立体画像の部分の奥行き方向の位置(その画素Pによって形成される虚像の位置)から眼EYに光が照射された場合の光束の開き角(虚像開き角)に、その画素Pからレンズ32を通って眼EYに実際に入射する画像光Lの開き角が一致する際の、Z方向におけるレンズ32の焦点の位置を、その画素Pについての照射位置として設定する。そして、タイミング設定部54は、照射位置との距離が所定距離範囲内となる位置にレンズ32の焦点が到達するタイミングを、その画素Pについての照射タイミングとして設定する。タイミング設定部54は、画素P毎に照射位置を設定し、画素P毎に照射タイミングを設定する。なお、タイミング設定部54は、画素P毎に照射位置や照射タイミングを設定するが、画素P毎に照射位置や照射タイミングが異なることに限られず、例えば1つの画像を構成する一群の画素P(例えば図5の家の画像を表示する一群の画素Pなど)の照射位置や照射タイミングを、同じに設定してよい。
【0029】
本実施形態では、タイミング設定部54は、Z方向におけるレンズ32の焦点の位置の情報を逐次取得し、Z方向におけるレンズ32の焦点の位置が照射位置に対して所定距離まで近づいたら、照射タイミングとなったと判断する。タイミング設定部54は、Z方向におけるレンズ32の焦点の位置の情報を任意の方法で取得してよい。例えば、レンズ32の焦点を所定の周期でZ方向に往復運動させている場合には、時刻毎のレンズ32の焦点のZ方向における位置(予測位置)を把握できる。従って、タイミング設定部54は、時刻情報からレンズ32の焦点のZ方向における位置の情報を取得してもよい。この場合、タイミング設定部54は、時刻毎のレンズ32の焦点の予測位置の情報と照射位置の情報とに基づき、レンズ32の焦点が照射位置から所定距離に到達する時刻を照射タイミングとして設定し、現在の時刻が照射タイミングに達したら、レンズ32の焦点が照射位置に到達したと判断して、画素Pに画像光Lを照射させてもよい。また、ここでの所定距離は任意に設定してよいが、輻輳調節矛盾を小さくするために、虚像開き角と画像光Lの開き角との差分が小さくなるような距離に、設定されることが好ましい。また、タイミング設定部54は、奥行き方向を量子化した値を、照射位置の設定に用いる画素Pの奥行き方向における位置として用いてよい。すなわち例えば、奥行き方向を複数の数値範囲に区分し、それぞれの数値範囲に対して、その数値範囲内にある所定値を基準位置として設定しておく。そして、タイミング設定部54は、画像情報取得部50が取得した画素Pの奥行き方向における位置が含まれる数値範囲を抽出し、その数値範囲に対する基準位置を、照射位置の設定に用いる画素Pの奥行き方向における位置として扱う。
【0030】
タイミング設定部54は、このようにして画素P毎に照射タイミングを設定する。さらに、タイミング設定部54は、照射タイミングより後のタイミングを照射停止タイミングとして設定する。照射制御部56は、ある画素Pについて照射タイミングに到達したと判断されたら、その画素Pに画像光Lの照射を開始させる。照射制御部56は、照射タイミングから照射停止タイミングまでの間、その画素Pに画像光Lを照射させ、照射停止タイミングに到達したら、その画素Pに画像光Lの照射を停止させる。なお、照射停止タイミングは任意に設定してよく、例えば照射タイミングから所定時間後を照射停止タイミングとして設定してもよいし、照射タイミングの直後に、レンズ32の焦点の位置と照射位置との距離が所定距離範囲外となるタイミングを、照射停止タイミングとして設定してもよい。
【0031】
表示装置1は、このように、照射タイミングに到達したら画素Pに画像光Lを照射させ、照射停止タイミングに到達したら画像光Lの照射を停止させる。画像光Lは、照射タイミングから照射停止タイミングの間に、ユーザUの眼EYに入射する。従って、眼EYに入射する画像光Lの光束の開き角は、その画素Pが形成する虚像からの虚像開き角に近くなり、輻輳調節矛盾を小さくすることができる。なお、レンズ32の焦点の位置は、Z方向に往復運動するため、照射位置との距離が所定距離範囲内になることと所定距離範囲外になることとを繰り返す。制御装置40は、レンズ32の焦点の位置と照射位置との距離が所定距離範囲となる度に、すなわち照射タイミングに到達する度に、画素Pに画像光Lを照射させる。そのため、ユーザUには、立体画像が動画像として視認される。また、レンズ32の焦点の位置はZ方向に往復移動するため、往復移動の1周期で、照射位置との距離が所定距離になるタイミングが2回ある。そのため、レンズ32の焦点の位置の往復移動の振動数は、立体画像のフレームレートの1/2倍以上にすることが望ましい。ただし、レンズ32の焦点の位置の往復移動の振動数(周期)は任意に設定してよい。
【0032】
以上説明した照射タイミングの設定の例を、図5から図7を用いて説明する。以下では、家の画像と車の画像とヘリコプタの画像とが立体画像として表示され、車の画像、家の画像、ヘリコプタの画像の順で、奥行き方向(Z方向)の位置がユーザUの眼EYから遠くなる場合を例にする。すなわち、車の画像の虚像P2は、家の画像の虚像P1よりもZ1方向側に位置し、ヘリコプタの画像の虚像P3は、家の画像の虚像P1よりもZ2方向側に位置する。
【0033】
図5は、家の画像の虚像P1をユーザUに視認させる場合の例である。図5の例では、虚像P1(家の画像を構成する画素Pの奥行き方向の位置)から眼EYに光が照射された場合の光束の開き角(虚像開き角)を、角度θ1Aとする。そして、Z方向におけるレンズ32の焦点の位置が第1位置である場合に、家の画像を構成する画素Pからの画像光Lの光束の開き角が、角度θ1Aとなるとする。この場合、第1位置が家の画像を構成する画素Pについての照射位置となり、タイミング設定部54は、第1位置との距離が所定距離範囲内となる位置にレンズ32の焦点が到達するタイミングを、家の画像を構成する画素Pについての照射タイミングとして設定する。照射制御部56は、照射タイミングとなったら、家の画像を構成する画素Pに画像光Lを照射させる。これにより、家の画像の虚像P1からの虚像開き角と、実際にユーザUの眼EYに入射する画像光Lの開き角とが近くなり、輻輳調節矛盾を小さくすることができる。なお、画像光Lは接眼レンズ20で屈折されて眼EYに入射するため、ここでの画像光Lの光束の開き角とは、接眼レンズ20を透過した後の画像光Lの光束の開き角を指す。
【0034】
図6は、車の画像の虚像P2をユーザUに視認させる場合の例である。図6の例では、虚像P2(車の画像を構成する画素Pの奥行き方向の位置)から眼EYに光が照射された場合の光束の開き角(虚像開き角)を、角度θ2Aとする。そして、Z方向におけるレンズ32の焦点の位置が第2位置である場合に、車の画像を構成する画素Pからの画像光Lの光束の開き角が、角度θ2Aとなるとする。なお、虚像P2は虚像P1よりもZ1方向に視認されるため、角度θ2Aは図5の角度θ1Aより大きく、第1位置が焦点である場合よりも第2位置が焦点である場合の方が、レンズ32による光束の開き角の拡大度合いが大きくなる(又は縮小度合いが小さくなる)。この場合、第2位置が、車の画像を構成する画素Pについての照射位置となり、タイミング設定部54は、第2位置との距離が所定距離範囲内となる位置にレンズ32の焦点が到達するタイミングを、車の画像を構成する画素Pについての照射タイミングとして設定する。照射制御部56は、照射タイミングとなったら、車の画像を構成する画素Pに光を照射させる。これにより、車の画像の虚像P2からの虚像開き角と、実際にユーザUの眼EYに入射する画像光Lの開き角とが近くなり、輻輳調節矛盾を小さくすることができる。
【0035】
図7は、ヘリコプタの画像の虚像P3をユーザUに視認させる場合の例である。図7の例では、虚像P3(ヘリコプタの画像を構成する画素Pの奥行き方向の位置)から眼EYに光が照射された場合の光束の開き角(虚像開き角)を、角度θ3Aとする。そして、Z方向におけるレンズ32の焦点の位置が第3位置である場合に、ヘリコプタの画像を構成する画素Pからの画像光Lの光束の開き角が、角度θ3Aとなるとする。なお、虚像P3は虚像P1よりもZ2方向に視認されるため、角度θ3Aは、図5の角度θ1Aより小さく、第1位置が焦点である場合よりも第3位置が焦点である場合の方が、レンズ32による光束の開き角の拡大度合いが小さくなる(又は縮小度合いが大きくなる)。この場合、第3位置が、ヘリコプタの画像を構成する画素Pについての照射位置となり、タイミング設定部54は、第3位置との距離が所定距離範囲内となる位置にレンズ32の焦点が到達するタイミングを、ヘリコプタの画像を構成する画素Pについての照射タイミングとして設定する。照射制御部56は、照射タイミングとなったら、ヘリコプタの画像を構成する画素Pに画像光Lを照射させる。これにより、ヘリコプタの画像の虚像P3からの虚像開き角と、実際にユーザUの眼EYに入射する画像光Lの開き角とが近くなり、輻輳調節矛盾を小さくすることができる。
【0036】
なお、表示装置1は、画素P毎に照射タイミングを設定するため、1フレームでは一部の画素Pしか点灯しない場合もあり、例えば図5のタイミングでは家の画像のみが表示され、図6のタイミングでは車の画像のみが表示され、図7のタイミングではヘリコプタの画像のみが表示される。ただし、複数フレームを連続させることによる残像効果で、ユーザUには家、車、ヘリコプタの一つの画像に写っていると認識される。また、1フレームの表示時間内で画像全体(ここでは家、車、ヘリコプタの全て)を表示する構成にしてもよい。この場合、駆動制御部52は、1フレームの表示時間内でレンズ32の焦点の位置を少なくとも往復移動の半周期分移動させればよい。これにより、1フレームの表示時間内で、往復移動内における全ての焦点の位置を網羅することができ、画像全体を表示することが可能となる。
【0037】
(処理フロー)
次に、以上説明した制御装置40の処理フローを説明する。図8は、本実施形態に係る制御装置の処理フローを説明するフローチャートである。制御装置40は、駆動制御部52により、マイクロレンズアレイ30の焦点の位置を所定周期でZ方向に往復移動させる。制御装置40は、タイミング設定部54により、画素P毎の奥行き情報から、画素P毎の照射位置を設定する(ステップS10)。制御装置40は、マイクロレンズアレイ30の焦点のZ方向における位置を逐次取得し、マイクロレンズアレイ30の焦点が照射位置から所定距離内に到達したかを、画素P毎に判断する(ステップS12)。マイクロレンズアレイ30の焦点が照射位置から所定距離内に到達したら(ステップS12;Yes)、すなわちマイクロレンズアレイ30の焦点が照射位置から所定距離内に到達したと判断される画素Pがある場合には、タイミング設定部54は、その画素Pが照射タイミングに到達したと判断し、照射制御部56は、画像データに基づき、その画素Pに画像光Lを照射させる(ステップS14)。その後、照射停止タイミングで画像光Lの照射を停止させ、処理を終了しない場合は(ステップS16;No)、ステップS10に戻り処理を続ける。一方、マイクロレンズアレイ30の焦点が照射位置から所定距離内に到達していない場合には(ステップS12;No)、すなわちマイクロレンズアレイ30の焦点が照射位置から所定距離内に到達したと判断される画素Pが無い場合には、ステップS12に戻り、マイクロレンズアレイ30の焦点が照射位置から所定距離内に到達するまで画素Pに光を照射させない。ステップS16で処理を終了する場合(ステップS16;Yes)、本処理を終了する。
【0038】
(効果)
以上説明したように、本実施形態に係る表示装置1は、ユーザUに立体画像を提供するものであって、表示部10と、マイクロレンズアレイ30と、駆動制御部52と、タイミング設定部54と、照射制御部56とを含む。表示部10は、自発光する複数の画素Pを含み、画素Pからの画像光LをユーザUに到達させることで、ユーザUに立体画像を提供する。マイクロレンズアレイ30は、画像光Lの光軸方向において表示部10よりもユーザU側に設けられ、焦点を変更可能である。駆動制御部52は、マイクロレンズアレイ30の焦点の位置を、画像光Lの光軸方向(本実施形態ではZ方向)に沿って所定の周期で移動させる。タイミング設定部54は、マイクロレンズアレイ30の焦点の光軸方向(本実施形態ではZ方向)における位置に基づき、画像光Lの照射タイミングを画素P毎に設定する。照射制御部56は、照射タイミングで、画素Pに画像光Lを照射させる。
【0039】
ここで、立体画像を表示する場合には、ユーザに適切に立体画像を提供することが求められている。それに対し、本実施形態においては、マイクロレンズアレイ30の焦点を光軸方向に移動させておき、焦点の位置に基づき、画像光Lの照射タイミングを設定する。従って、本実施形態によると、焦点の光軸方向の位置に基づいた適切なタイミングでユーザUに画像光Lを到達させることが可能となり、ユーザUに立体画像を適切に提供できる。さらに言えば、上述のように、立体画像を表示する際には、輻輳調節矛盾が起こる場合がある。それに対して、本実施形態においては、マイクロレンズアレイ30の焦点を光軸方向に移動させつつ、焦点の光軸方向の位置に基づき、画像光Lの照射タイミングを設定することで、画像光Lの光束の開き角を適切に調整して、輻輳調節矛盾を小さくすることができる。
【0040】
また、タイミング設定部54は、立体画像の奥行き方向(本実施形態ではZ方向)の位置を示す奥行き情報にも基づき、照射タイミングを設定する。本実施形態によると、奥行き情報も用いて照射タイミングを設定するため、表示される立体画像に合わせて画像光Lの光束の開き角を適切に調整することが可能となり、輻輳調節矛盾を小さくすることができる。
【0041】
また、タイミング設定部54は、画素Pからの画像光Lの光束の開き角が、その画素Pによって表示される立体画像の部分での奥行き方向の位置からユーザUに向けて画像光Lを照射した場合の光束の開き角(虚像開き角)に対応するような、マイクロレンズアレイ30の焦点の光軸方向における位置である、照射位置の情報を取得する。タイミング設定部54は、マイクロレンズアレイ30の焦点が照射位置に対して所定距離範囲内となるタイミングを、その画素Pについての照射タイミングとして設定する。本実施形態によると、光束の開き角と虚像開き角とが近い画素Pに発光させて、光束の開き角と虚像開き角とが遠い画素Pに発光させないことが可能となるため、輻輳調節矛盾を適切に小さくすることができる。
【0042】
また、駆動制御部52は、マイクロレンズアレイ30が有する複数のレンズ32の焦点のZ方向における位置を、一様に変化させる。本実施形態によると、レンズ32で光束の開き角を調整することで、ユーザUに立体画像を適切に提供できる。
【0043】
また、表示装置1は、ヘッドマウントディスプレイである。そのため、ヘッドマウントディスプレイにより立体画像を適切に提供できる。
【0044】
(他の例)
なお、以上の説明では、表示部10は自発光型のディスプレイであったが、それに限られない。例えば、第1実施形態の他の例として、表示部10は、複数の画素を含む表示パネルと、表示パネルに光を照射する光源部とを含む構成であってよい。この場合例えば、表示パネルは、マトリクス状に並ぶ複数の画素電極と、液晶素子が充填される液晶層とを有する液晶表示パネルであってよい。また、光源部は、例えば表示パネルの背面に設けられるバックライトや、表示パネルの側面に設けられるサイドライトであってよい。このような構成においては、光源部は、表示パネルの全ての画素に対して一様に光を照射するものであり、言い換えれば、画素毎に個別に光の照射を制御するものではない。ただし、光源部は、表示パネルの全ての画素に一様に光を照射するものに限られず、例えば複数の画素毎に光の照射を調整可能な、例えば画面全体をいくつかの区画に分け区画ごとに光の強度を調整可能な、いわゆるローカルディミングの方式のものであってもよい。
【0045】
この例においては、画素毎に発光制御ができないため、ユーザUの眼EYが向いている方向を、すなわちユーザUの視線を、検出するセンサ(視線検出部)を設けることが好ましい。そして、タイミング設定部54は、視線検出部によるユーザUの視線の検出結果に基づき、ユーザUが注視している注視位置を検出する。注視位置とは、立体画像のうちでユーザUが注視している画像の表示面10A上での位置を指し、言い換えれば、表示面10Aの全域のうちでユーザUが注視している位置を指す。タイミング設定部54は、ユーザUの視線の検出結果と、立体画像の奥行き情報と、マイクロレンズアレイ30の焦点のZ方向における位置とに基づき、照射タイミングを設定する。具体的には、タイミング設定部54は、注視位置における奥行き情報(注視位置の奥行き方向における位置)に基づき、照射位置を設定する。タイミング設定部54は、注視位置での奥行き方向の位置(ユーザUが注視している虚像の位置)から眼EYに光が照射された場合の光束の開き角(虚像開き角)に、画像光Lの開き角が一致する際の、マイクロレンズアレイ30の焦点のZ方向における位置を、照射位置として設定する。そして、照射制御部56は、この照射位置から所定距離範囲内に焦点の位置が到達した照射タイミングで、光源部に光を照射させることで、全ての画素から画像光Lを照射させる。この例においては、ユーザUが注視している注視位置における虚像開き角と画像光Lの開き角が一致するため、輻輳調節矛盾を抑制できる。なお、注視位置から離れた箇所では虚像開き角と画像光Lの開き角が一致しないが、ユーザUの注視している領域の範囲外であるためユーザUへの影響は小さい。
【0046】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態においては、マイクロレンズアレイのそれぞれのレンズの焦点位置を個別に調整できる点で、第1実施形態とは異なる。第2実施形態において第1実施形態と構成が共通する箇所は、説明を省略する。
【0047】
図9は、第2実施形態に係る表示装置の各構成の模式図である。図9に示すように、第2実施形態に係る表示装置1aは、表示部10と、接眼レンズ20と、マイクロレンズアレイ30aと、制御装置40aとを有する。なお、第2実施形態における表示部10は、以降においては、第1実施形態と同様に自発光型のディスプレイとして説明するが、第1実施形態の他の例で説明した光源部と表示パネルを含むディスプレイであってもよい。ただし第2実施形態では、光源部と表示パネルを含むディスプレイであっても(すなわち画素毎に発光の制御ができなくても)、ユーザUの視線検出は不要である。
【0048】
マイクロレンズアレイ30aは、複数のレンズ32aの焦点を個別に変更可能である点で、第1実施形態とは異なる。すなわち、第2実施形態のマイクロレンズアレイ30aは、アクティブマトリクス型の焦点可変マイクロレンズアレイといえる。なお、マイクロレンズアレイ30aは、制御装置40aからマイクロレンズアレイ30aを制御する制御信号を受信する。
【0049】
図10は、第2実施形態に係る制御装置の模式的なブロック図である。図10に示すように、第2実施形態に係る制御装置40aの制御部44は、画像情報取得部50と、駆動制御部52aと、焦点位置設定部54aと、照射制御部56aとを含む。制御部44は、記憶部42からプログラム(ソフトウェア)を読み出して実行することで、画像情報取得部50と駆動制御部52aと焦点位置設定部54aと照射制御部56aとを実現して、それらの処理を実行する。なお、制御部44は、1つのCPUによってこれらの処理を実行してもよいし、複数のCPUを備えて、それらの複数のCPUで、処理を実行してもよい。また、画像情報取得部50と駆動制御部52aと焦点位置設定部54aと照射制御部56aとの少なくとも1つを、ハードウェア回路で実現してもよい。
【0050】
第2実施形態においては、照射制御部56aは、画像データに基づき、各画素Pに画像光Lを照射させる。第2実施形態においては、マイクロレンズアレイの焦点位置に応じて画像光Lの照射タイミングを制御することなく、画像データに従い各画素Pに画像光Lを照射させてよい。
【0051】
第2実施形態においては、焦点位置設定部54aは、画素P毎の奥行き情報を取得する。すなわち、焦点位置設定部54aは、画素P毎の奥行き方向(Z方向)における位置の情報を取得する。そして、焦点位置設定部54aは、画素Pの奥行き情報に基づき、その画素Pに画像光Lを照射させる際の、その画素Pに対向するレンズ32aの焦点の位置である設定焦点位置を設定する。なお、画素Pに対向するレンズ32aとは、その画素Pからの画像光Lが入射するレンズ32aであるといえ、以下適宜、対向レンズと記載する。
【0052】
焦点位置設定部54aは、画素Pによって表示される立体画像の部分の奥行き方向の位置(その画素Pによって形成される虚像の位置)から眼EYに光が照射された場合の光束の開き角(虚像開き角)に、その画素Pから対向レンズを通って眼EYに照射される実際の画像光Lの開き角が一致する際の、Z方向における対向レンズの焦点の位置を、その対向レンズの設定焦点位置として設定する。ただし、虚像開き角と実際の画像光Lの開き角が厳密に一致する位置を、設定焦点位置とすることに限られない。例えば、虚像開き角と実際の画像光Lの開き角との差分が所定範囲内となる際の対向レンズの焦点位置を、設定焦点位置としてよい。ここでの所定範囲は任意に設定してよいが、輻輳調節矛盾を小さくするために、虚像開き角と画像光Lの開き角との差分が小さくなるような値に、設定されることが好ましい。また、焦点位置設定部54aは、奥行き方向を量子化した値を、設定焦点位置の設定に用いる画素Pの奥行き方向における位置として用いてよい。すなわち例えば、奥行き方向を複数の数値範囲に区分し、それぞれの数値範囲に対して、その数値範囲内にある所定値を基準位置として設定しておく。そして、焦点位置設定部54aは、画像情報取得部50が取得した画素Pの奥行き方向における位置が含まれる数値範囲を抽出し、その数値範囲に対する基準位置を、設定焦点位置の設定に用いる画素Pの奥行き方向における位置として扱う。
【0053】
焦点位置設定部54aは、対向レンズ毎(レンズ32a毎)に設定焦点位置を設定する。ただし、レンズ32a毎に設定焦点位置が異なることに限られず、例えば1つの画像を構成する一群の画素P(例えば図5の家の画像を表示する一群の画素Pなど)に対向する一群のレンズ32aの設定焦点位置を、同じに設定してよい。
【0054】
駆動制御部52aは、レンズ32aの焦点のZ方向の位置を、設定焦点位置に移動させる。駆動制御部52aは、それぞれのレンズ32aの焦点のZ方向の位置を個別に制御することで、それぞれのレンズ32aの焦点を、それぞれのレンズ32aについて設定された設定焦点位置に位置させる。第2実施形態においては、レンズ32a毎に焦点位置を設定することで、表示面10Aの全域において、虚像開き角と画像光Lの開き角とを常に一致させることが可能となる。
【0055】
次に、第2実施形態の制御装置40aの処理フローを説明する。図11は、第2実施形態に係る制御装置の処理フローを説明するフローチャートである。制御装置40aは、焦点位置設定部54aにより、画素P毎の奥行き情報から、レンズ32a毎に設定焦点位置を設定する(ステップS20)。制御装置40は、駆動制御部52aにより、それぞれのレンズ32aの焦点の位置を、それぞれのレンズ32aについて設定された設定焦点位置に移動させる(ステップS22)。また、それに合わせて、制御装置40は、画像データに基づき、それぞれの画素Pに画像光Lを照射させる。これにより、それぞれのレンズ32aについて設定された設定焦点位置に位置させる。なお、処理を終了しない場合は(ステップS24;No)、ステップS20に戻り処理を続け、処理を終了する場合(ステップS24;Yes)、本処理を終了する。
【0056】
以上説明したように、第2実施形態に係る表示装置1aは、ユーザUに立体画像を提供するものであって、表示部10と、マイクロレンズアレイ30aと、焦点位置設定部54aと、駆動制御部52aとを含む。表示部10は、複数の画素を含み、画像光LをユーザUに到達させることでユーザUに立体画像を提供する。マイクロレンズアレイ30aは、画像光Lの光軸方向において表示部10よりもユーザU側に設けられ、複数のレンズ32aを有し、レンズ32aの焦点を個別に変更可能である。焦点位置設定部54aは、立体画像の奥行き方向の位置を示す奥行き情報に基づき、画像光Lの光軸方向における焦点の位置である設定焦点位置を、レンズ32a毎に設定する。駆動制御部52aは、レンズ32aの焦点の位置を設定焦点位置に移動させる。
【0057】
ここで、立体画像を表示する場合には、ユーザに適切に立体画像を提供することが求められている。それに対し、本実施形態においては、立体画像の奥行き方向の位置に基づき設定した設定焦点位置に、レンズ32aの焦点位置を移動させる。従って、本実施形態によると、立体画像の奥行き方向の位置に基づいた適切な光束の開き角でユーザUに画像光Lを到達させることが可能となり、ユーザUに立体画像を適切に提供できる。さらに言えば、上述のように、立体画像を表示する際には、輻輳調節矛盾が起こる場合がある。それに対して、本実施形態においては、画像光Lの光束の開き角を適切に調整して、輻輳調節矛盾を小さくすることができる。さらに、第2実施形態においては、レンズ32a毎に個別に焦点位置を設定することで、表示面10Aの全域において、虚像開き角と画像光Lの開き角とを常に一致させることが可能となる。
【0058】
また、焦点位置設定部54aは、レンズ32aを通る画像光Lの光束の開き角と、その画像光Lによって表示される立体画像の部分での奥行き方向の位置からユーザUに向けて画像光Lを照射した場合の光束の開き角(虚像開き角)との差分が所定範囲内となるような、画像光Lの光軸方向におけるレンズ32aの焦点の位置を、設定焦点位置として設定する。本実施形態によると、光束の開き角と虚像開き角との差分を小さくすることで、輻輳調節矛盾を適切に小さくできる。
【0059】
第2実施形態の表示部10は、他の例で説明したように、複数の画素を含む表示パネルと、表示パネルに光を照射する光源部とを含む構成であってもよいし、自発光する複数の画素Pを含む構成であってもよい。いずれの場合でも、ユーザUに立体画像を適切に提供できる。
【0060】
(変形例)
次に、変形例について説明する。変形例に係る表示装置1bは、接眼レンズ20の替わりに凹面鏡20Cでディスプレイを拡大する点で、第2実施形態とは異なる。変形例において第2実施形態と構成が共通する箇所は、説明を省略する。
【0061】
図12は、変形例に係る表示装置の模式図である。図12に示すように、変形例に係る表示装置1bは、接眼レンズ20が設けられておらず、画像光Lの光軸方向において表示部10よりもユーザUの眼EY側に、ハーフミラー20Bと凹面鏡20Cとが設けられている。ハーフミラー20Bと凹面鏡20Cも、光学素子であるといえる。変形例においては、表示部10から出射された画像光Lは、ハーフミラー20Bで反射されて凹面鏡20Cに入射する。凹面鏡20Cに入射した画像光Lは、凹面鏡20Cで若干の広がり角を持ちつつほぼ平行光になって、ハーフミラー20Bを透過してユーザUの眼EYに入射する。
【0062】
変形例においては、第2実施形態と同様にマイクロレンズアレイ30aの各レンズ32aの焦点位置を個別に制御する。そのため、変形例のような構成であっても、第2実施形態と同様に、ユーザUに立体画像を適切に提供でき、画像光Lの光束の開き角を適切に調整して、輻輳調節矛盾を小さくすることができる。
【0063】
なお、変形例は、第1実施形態にも適用可能である。また、表示装置の構成は、各実施形態や図12で挙げた変形例以外のものであってもよい。
【0064】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これら実施形態の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能であり、各実施形態の構成を組み合わせることも可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0065】
1 表示装置
10 表示部
20 接眼レンズ
30、30a マイクロレンズアレイ
32、32a レンズ
40、40a 制御装置
50 画像情報取得部
52、52a 駆動制御部
54 タイミング設定部
54a 焦点位置設定部
56、56a 照射制御部
L 画像光
P 画素
U ユーザ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12