(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022145180
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】シートの吊り込み構造及びその組付方法
(51)【国際特許分類】
B68G 7/052 20060101AFI20220926BHJP
B60N 2/58 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
B68G7/052 A
B60N2/58
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021046479
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 和也
(72)【発明者】
【氏名】松▲崎▼ 勉
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087DE03
(57)【要約】
【課題】曲がった輪郭を有する吊り込み縁部を備えるシートの吊り込み構造及びその組付方法に於いて、吊り込み縁部と吊り込み部材との連結を適切かつ容易に行えるようにする。
【解決手段】表皮材の吊り込み縁部11は、吊り込み部材14を介して、パッド5に設けられた吊り込み溝9に吊り込まれる。吊り込み部材14は、吊り込み縁部11に連結されえる第1縁部と、吊り込み溝9の底部に配置された係合部材10に係合する第2縁部とを含む。第1縁部11は、変形容易部17と、変形容易部17の両側に設けられた目印18とを有する。吊り込み縁部11は、目印18に合致する位置に目印19を有する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊り込み溝を有するパッドと、
前記吊り込み溝の底部にて、前記吊り込み溝の長手方向に沿って互いに間隔をおいて配置され、かつ前記パッドに固定された複数の係合部材と、
前記吊り込み溝内を、前記長手方向に延在する吊り込み縁部を含み、かつ前記パッドの表面を覆う表皮材と、
前記吊り込み縁部を前記係合部材に係止するべく、前記吊り込み縁部に連結される第1縁部及び前記係合部材に係合する第2縁部を有し、前記吊り込み溝内を、その長手方向に延在する吊り込み部材とを備え、
前記吊り込み縁部の端縁が、凸状又は凹状に曲がった輪郭を有し、
前記吊り込み部材の前記第1縁部側に変形容易部が設けられていることを特徴としているシートの吊り込み構造。
【請求項2】
前記変形容易部が、前記長手方向に所定の長さを有するように前記第1縁部に切り込まれた切り欠き部を含むことを特徴とする請求項1に記載のシートの吊り込み構造。
【請求項3】
前記吊り込み部材が、前記第1縁部側が前記第2縁部側よりも実質的に曲げ変形容易であることを特徴とする請求項1又は2に記載のシートの吊り込み構造。
【請求項4】
前記第1縁部及び前記吊り込み縁部に、前記変形容易部の両側に於いて、互いに整合する目印が設けられていることを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載のシートの吊り込み構造。
【請求項5】
前記第1縁部は、所定の縫製ラインに沿った縫製によって前記吊り込み縁部に連結されており、
前記吊り込み部材の前記第1縁部の端縁が、前記吊り込み縁部の端縁に整合し、かつ前記第1縁部は、前記縫製ラインにて折り返されていることを特徴とする請求項4に記載のシートの吊り込み構造。
【請求項6】
前記第1縁部及び前記吊り込み縁部の前記目印は、前記第1縁部及び前記吊り込み縁部に切り込まれた切り欠きを含み、
前記縫製ラインは、前記目印を避けた位置に設けられたことを特徴とする請求項5に記載のシートの吊り込み構造。
【請求項7】
前記係合部材は、前記目印に整合する位置に設けられたことを特徴とする請求項4~6の何れか一項に記載のシートの吊り込み構造。
【請求項8】
前記係合部材は、前記変形容易部に対して前記長手方向にずれた位置にのみ設けられたことを特徴とする請求項1~7の何れか一項に記載のシートの吊り込み構造。
【請求項9】
前記係合部材の1つは、前記変形容易部に整合する位置に設けられたことを特徴とする請求項1~7の何れか一項に記載のシートの吊り込み構造。
【請求項10】
吊り込み溝を有するパッドと、
前記吊り込み溝の底部にて、前記吊り込み溝の長手方向に沿って互いに間隔をおいて配置され、かつ前記パッドに固定された複数の係合部材と、
前記吊り込み溝内を前記長手方向に延在して凸状又は凹状に曲がった輪郭を画定する吊り込み縁部を含み、かつ前記パッドの表面を覆う表皮材と、
前記吊り込み縁部を前記係合部材に係止するべく、前記吊り込み縁部に連結される第1縁部及び前記係合部材に係合する第2縁部を有し、前記吊り込み溝内を、その長手方向に延在する吊り込み部材とを備えるシートの吊り込み構造の組付方法であって、
前記第1縁部に変形容易部を設けるステップと、
前記第1縁部及び前記吊り込み縁部に、前記変形容易部の両側に於いて、前記第1縁部及び前記吊り込み縁部を互いに連結した時に互いに合致する位置する目印を設けるステップと、
前記吊り込み部材を前記吊り込み縁部に沿って曲げて、前記第1縁部及び前記吊り込み縁部の前記目印を互いに合わせるステップと、
前記第1縁部と前記吊り込み縁部とを互いに連結するステップと、
前記第2縁部を前記係合部材に係合させるステップと
を備えることを特徴とする組付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パッドとパッドを覆う表皮材とを含み、吊り込み部が設けられたシートに於ける、吊り込み構造及びその組付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乗り物用シートのようにパッドとパッドを覆う表皮材とを備えるシートに於いて、シートクッション及びシートバックにおける着座面に、外観形状を維持するために線状に窪んだ吊り込み部が設けることがある。表皮材はこの吊り込み部に吊り込まれてパッドに固定された係合部材に固定される。
【0003】
例えば、特許文献1には、パッドに設けられた吊り込み溝と同方向に延在して表皮材の端部に固定された布状の接続部と、同方向に延在して接続部の厚さ方向に膨出するように接続部の先端部に連結した被係合部とを備える吊り込み部材が記載されている。表皮材は、パッドの溝の底部に固定された複数のクリップに被係合部を係合することにより、パッドに吊り込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
吊り込み部を有するシートに於いて、パッドの吊り込み溝に隣接する部位に吊り込み部に沿った方向に対して着座面に向かって凹凸を設けたい場合がある。このような場合、吊り込み溝の底の高さを一定にすると、表皮材における吊り込まれる端縁に凹凸が生じる。特許文献1に記載の吊り込み部材は、被係合部が曲げ変形に対して反発するため、表皮材の凹凸を有する端縁に沿って曲げて縫製等により表皮材に固定することが困難であった。このため、吊り込み部材は、表皮材の端縁が直線的に延在する部分にのみ連結された。従って、吊り込み部材が存在しない箇所の吊り込みができず、シートの表面の凹凸のデザインが十分に再現できなかった。また、表皮材の端縁の屈折部又は湾曲部を避けて吊り込み部材が配置されるため、比較的短い多数の吊り込み部材が必要となり、部品点数が増加した。
【0006】
このような問題に鑑み、本発明は、凹凸を有する吊り込み縁部を備えるシートの吊り込み構造及びその組付方法に於いて、吊り込み縁部と吊り込み部材との連結を適切かつ容易に行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある実施形態に係るシート(1)の吊り込み構造は(8)、吊り込み溝(9)を有するパッド(5)と、前記吊り込み溝(9)の底部にて、前記吊り込み溝(9)の長手方向に沿って互いに間隔をおいて配置され、かつ前記パッド(5)に固定された複数の係合部材(10)と、前記吊り込み溝(9)内を、前記長手方向に延在する吊り込み縁部(11)を含み、かつ前記パッド(5)の表面を覆う表皮材(6)と、前記吊り込み縁部(11)を前記係合部材(10)に係止するべく、前記吊り込み縁部(11)に連結される第1縁部(12)及び前記係合部材(10)に係合する第2縁部(13)を有し、前記吊り込み溝(9)内を、その長手方向に延在する吊り込み部材(10)とを備え、前記吊り込み縁部(11)の端縁が、凸状又は凹状に曲がった輪郭を有し、前記吊り込み部材(14)の前記第1縁部(12)側に変形容易部(17)が設けられていることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、変形容易部によって吊り込み部材が変形しやすくなるため、凸状又は凹状に曲がった輪郭を有する吊り込み縁部に吊り込み部材を適切に変形させた状態で取り付けることが容易となる。また、この構成によれば、表皮材の端縁の屈折部又は湾曲部を避けて吊り込み部材を配置する必要がないため、部品点数の増加を抑制できる。
【0009】
本発明のある実施形態は、上記構成に於いて、前記変形容易部(17)が、前記長手方向に所定の長さを有するように前記第1縁部(12)に切り込まれた切り欠き部を含むことを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、変形容易部が切り込み部であるため、変形容易部を容易に形成することができる。
【0011】
本発明のある実施形態は、上記構成の何れかに於いて、前記吊り込み部材(14)が、前記第1縁部(12)側が前記第2縁部(13)側よりも実質的に曲げ変形容易であることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、吊り込み縁部に連結する第1縁部が第2縁部よりも曲げ変形容易であるため、吊り込み縁部と第1縁部との連結作業が容易となる。
【0013】
本発明のある実施形態は、上記構成の何れかに於いて、前記第1縁部(12)及び前記吊り込み縁部(11)に、前記変形容易部(17)の両側に於いて、互いに整合する目印(18,19)が設けられていることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、変形容易部を挟むように目印が設けられるため、目印を合わせることによって、吊り込み部材が適切な形状に曲げ変形するとともに、適切な位置に配置される。
【0015】
本発明のある実施形態は、直上の構成に於いて、前記第1縁部(12)は、所定の縫製ライン(20)に沿った縫製によって前記吊り込み縁部(11)に連結されており、前記吊り込み部材の前記第1縁部(12)の端縁が、前記吊り込み縁部(11)の端縁に整合し、かつ前記第1縁部(12)は、前記縫製ライン(20)にて折り返されていることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、吊り込み縁部と第1縁部とを縫製によって互いに連結する時に、吊り込み縁部と第1縁部とは、互いの端縁が整合するように重ね合わせた状態で縫製できるため、吊り込み部材を曲げた状態で目印を合わせることが容易となる。
【0017】
本発明のある実施形態は、直上の構成に於いて、前記第1縁部(12)及び前記吊り込み縁部(11)の前記目印(18,19)は、前記第1縁部(12)及び前記吊り込み縁部(11)に切り込まれた切り欠きを含み、前記縫製ライン(20)は、前記目印(18,19)を避けた位置に設けられたことを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、縫製ラインが目印を避けているため、目印が切り欠きであっても、吊り込み縁部11と第1縁部12との互いの連結強度が損なわれない。
【0019】
本発明のある実施形態は、上記の目印を含む構成の何れかに於いて、前記係合部材(10)は、前記目印(18,19)に整合する位置に設けられたことを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、目印が係合部材に整合する位置に設けられているため、吊り込み溝の適切な位置に吊り込み縁部を挿入することができる。
【0021】
本発明のある実施形態は、上記構成の何れかに於いて、前記係合部材(10)は、前記変形容易部(17)に対して前記長手方向にずれた位置にのみ設けられたことを特徴とする。
【0022】
第2縁部は、変形容易部に整合する位置で最も大きく曲がるように変形するところ、この構成によれば、第2縁部は最も大きく変形した部分を避けて係合部材に係合するため、係合部材に第2縁部を係合させることが容易になる。
【0023】
本発明のある実施形態は、直上の構成に代えて、前記係合部材(10)の1つは、前記変形容易部(17)に整合する位置に設けられたことを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、吊り込み縁部の最も大きく曲がった部分が吊り込み部材を介して係合部材に係合するため、シートの着座面の凹凸がデザイン通りに再現され易い。
【0025】
本発明のある実施形態は、吊り込み溝(9)を有するパッド(5)と、前記吊り込み溝(9)の底部にて、前記吊り込み溝(9)の長手方向に沿って互いに間隔をおいて配置され、前記パッド(5)に固定された複数の係合部材(10)と、前記吊り込み溝(9)内を前記長手方向に延在して凸状又は凹状に曲がった輪郭を画定する吊り込み縁部(11)を含み、かつ前記パッド(5)の表面を覆う表皮材(6)と、前記吊り込み縁部(11)を前記係合部材(10)に係止するべく、前記吊り込み縁部(11)に連結される第1縁部(12)及び前記係合部材(10)に係合する第2縁部(13)を有し、前記吊り込み溝(9)内を、その長手方向に延在する吊り込み部材(14)とを備えるシート(1)の吊り込み構造(8)の組付方法であって、前記第1縁部(12)に変形容易部(17)を設けるステップと、前記第1縁部(12)及び前記吊り込み縁部(11)に、前記変形容易部(17)の両側に於いて、前記第1縁部(12)及び前記吊り込み縁部(11)を互いに連結した時に互いに合致する位置する目印(18,19)を設けるステップと、前記吊り込み部材(14)を前記吊り込み縁部(11)に沿って曲げて、前記第1縁部(12)及び前記吊り込み縁部(11)の前記目印(18,19)を互いに合わせるステップと、前記第1縁部(12)と前記吊り込み縁部(11)とを互いに連結するステップと、前記第2縁部(13)を前記係合部材(10)に係合させるステップとを備えることを特徴とする。
【0026】
この構成によれば、変形容易部が存在することによって吊り込み部材が曲がりやすくなり、第1縁部に於ける変形容易部の両側に配置された目印と吊り込み部材の目印とを互いに合わせることによって吊り込み部材が適切な形状となるとともに適切な位置に配置されるため、組付が容易となる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係るシートの吊り込み構造よれば、変形容易部によって、吊り込み部材を曲げた適切な状態で吊り込み縁部に容易に連結させることができる。
【0028】
本発明のある実施形態によれば、変形容易部が切り欠き部を含むことによって、容易に変形容易部を形成することができる。
【0029】
本発明のある実施形態によれば、第1縁部側が第2縁部側よりも実質的に曲げ変形容易であることによって、第1縁部と吊り込み縁部との連結作業が容易となる。
【0030】
本発明のある実施形態によれば、目印によって、吊り込み部材が適切な形状になるとともに適切な位置に配置される。
【0031】
本発明のある実施形態によれば、第1縁部が折り返されることによって、折り返す前の状態の第1縁部と吊り込み縁部との互いの連結が容易となる。
【0032】
本発明のある実施形態によれば、縫製ラインが切り込みによって形成された目印を避けているため、目印を切り込みにしても、第1縁部と吊り込み縁部との互いの連結強度が損なわれない。
【0033】
本発明のある実施形態によれば、係合部材が目印に整合する位置に設けられたことによって、吊り込み溝の適切な位置に吊り込み縁部を挿入できる。
【0034】
本発明のある実施形態によれば、係合部材が変形容易部に対してずれて配置されるため、第2縁部の係合部材への係合作業が容易となる。
【0035】
本発明のある実施形態によれば、係合部材が変形容易部に整合して配置されるため、シートの着座面の凹凸がデザイン通りに再現され易い。
【0036】
本発明に係るシートの吊り込み構造の組付方法によれば、変形容易部及び目印によって、吊り込み部材を適切な形状かつ適切な位置で吊り込み縁部に容易に連結することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図3】実施形態に係るシートクッションのパッドの左右方向に直交する断面図(A:左右中央部分、B:左右側部において前後に延びる吊り込み部に隣接する部分)
【
図4】実施形態に係る吊り込み構造の吊り込み手順の説明図(A:表皮材、B:吊り込み部材)
【
図5】実施形態に係る吊り込み構造の吊り込み手順の説明図(表皮材に吊り込み部材を重ねて縫製した状態)
【
図6】実施形態に係る吊り込み構造の吊り込み手順の説明図(表皮材を縫製ラインに沿って折り返した状態(上図)と、パッドの吊り込み溝(下図))
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、実施形態に係る車両用シート1(以下、「シート1」と記す)の斜視図である。シート1は、車体に支持されるシートクッション2と、シートクッション2に連結されたシートバック3と、シートバック3に連結されたヘッドレスト4とを備える。シートクッション2、シートバック3及びヘッドレスト4の各々は、発泡ウレタン等の発泡樹脂からなるパッド5(
図2参照)と、パッド5の着座面側を覆う表皮材6とを備える。シートクッション2及びシートバック3の着座面側の表面には、表皮材6がパッド5内に吊り込まれることによって線状に凹んだ複数の吊り込み部7が縦方向及び横方向に形成されている。
【0039】
図2は、実施形態に係るシート1の吊り込み構造8を示す。吊り込み構造8は、吊り込み溝9を有するパッド5と、吊り込み溝9の底部にて、吊り込み溝9の長手方向(延在方向)に沿って互いに間隔をおいて配置され、かつパッド5に固定された複数の係合部材10と、吊り込み溝9内を、吊り込み溝9の長手方向に延在する吊り込み縁部11を含み、パッド5の表面を覆う表皮材6と、吊り込み縁部11を係合部材10に係止するべく、吊り込み縁部11に連結される第1縁部12及び係合部材10に係合する第2縁部13(被係合部)を有し、吊り込み溝9内を、その長手方向に延在する吊り込み部材14とを備える。
【0040】
パッド5は、発泡ウレタン等の発泡樹脂によって構成される。吊り込み溝9は、着座面に向かって開口しており、縦方向(シートクッション2に於いては前後方向、シートバック3に於いては上下方向)に延在するものと、横方向(左右方向)に延在するものとを含む。吊り込み溝9の底面は、一定の厚さ方向の位置で略平面上に延在する。
【0041】
係合部材10は、吊り込み溝9の底部に埋め込まれた基板15と、基板15から吊り込み溝9内に延出する1対の係止爪16とを含むクリップである。クリップからなる係合部材10は、パッド5を発泡する際にパッド5内に埋め込まれる。
【0042】
表皮材6の吊り込み縁部11は、2枚の表皮材6の端部を互いの表面を互いの端縁が整合するように当接させ、縫製等によって連結することによって形成されている。なお、吊り込み縁部11は、1枚の表皮材6を表面側が谷になるように折り、互いに当接した部分を縫製等によって連結して形成されてもよい。
図3に示すようにパッド5が表面に凹凸を有し、かつ吊り込み溝9の底面がパッド5の厚さ方向に於ける一定の位置に延在するため、
図4に示すように吊り込み縁部11の端縁は、凸状又は凹状に曲がった輪郭を有する。
【0043】
図2に示すように、吊り込み部材14は、不織布等の布状の部材によって構成され、吊り込み溝9の長手方向に延在して縫製等によって吊り込み縁部11に連結される第1縁部12と、樹脂等によって構成され、吊り込み溝9の長手方向に延在して第1縁部12の吊り込み溝9側の端部に連結する第2縁部13とを含む。吊り込み部材14は、力が加わっていない状態では直線状に延在するが、曲げ変形可能である。第2縁部13は、係合部材10の係止爪16に係合されるように、第1縁部12に対して第1縁部12の厚さ方向の両側に膨出し、係止爪16が係合できる程度の剛性を有する。第2縁部13は、第1縁部12よりも高い曲げ剛性を有する。すなわち、第1縁部12は、第2縁部13よりも曲げ変形しやすい。第2縁部13は、射出成形によって形成され、第1縁部12は、第2縁部13の成形時に金型のキャビティに装着されることによって第2縁部13に連結される。なお、第1縁部12及び第2縁部13を互いに同じ樹脂によって形成する場合は、吊り込み部材14は押し出し成形によって形成されてもよい。第1縁部12は、吊り込み縁部11との連結部分に沿って折り返されている。なお、第2縁部13として厚さ方向に膨出した樹脂に代えて吊り込み溝9に沿って延在して第1縁部12に保持された第1ワイヤーと第1ワイヤーに係合したCリングを使用し、係合部材10としてクリップに代えてCリングが係合する第2ワイヤーを使用してもよい(図示せず)。
【0044】
図4に示すように、第1縁部12には、変形容易部17が設けられており、吊り込み部材14は、変形容易部17に於いて他の部分よりも曲げ変形が容易となる。変形容易部17は、表皮材6に連結する側の端縁から切り欠かれた切り欠きによって形成される。変形容易部17を構成する切り欠きは、第1縁部12の端縁側において所定の長さを有する。変形容易部17は、切り欠きに代えて、第1縁部12の他の部分よりも薄い部分によって構成されてもよい。図示する変形容易部17は、布状の第1縁部12の表面に直交する方向から見て矩形をなすが、三角形、円形及び半円形等の他の形状であってもよい。変形容易部17から吊り込み溝9の長手方向にずれた部分に於いても、第1縁部12は、第2縁部よりも変形容易であることが好ましい。
図6に示すように、係合部材10は、変形容易部17に対して吊り込み溝9の長手方向にずれた位置に設けられることが好ましい。なお、
図6に二点鎖線で示すように、係合部材10は変形容易部17に対して整合する位置に設けられてもよい。変形容易部17は、吊り込み縁部11に於ける凸状又は凹状に曲がった部分の一部に対応する位置に設けられる。
【0045】
図6に示すように、第1縁部12に於ける第2縁部が取り付けられていない側の端縁には、複数の目印18を設けられている。目印18は、変形容易部17の両側に少なくとも1つずつ設けられている。また、表皮材6の吊り込み縁部11には、目印18に合致する位置に目印19が設けられている。目印18,19は、互いに合致する形状の切り欠きであることが好ましいが、ペン等で書き入れた印等でもよく、吊り込み縁部11と第1縁部12とを互いに連結した後に消されてもよい。目印18,19の少なくとも一部は、係合部材10に整合する位置に設けられている。
【0046】
図4~
図6を参照して、吊り込み構造8の吊り込み方法について説明する。
【0047】
まず、
図4に示すように、作業員は、第1縁部12を切り欠いて変形容易部17を設けるとともに、吊り込み部材14の第1縁部12に於ける第2縁部が取り付けられていない側の端縁に複数の目印18を設ける。変形容易部17は、吊り込み縁部11に於ける凸状又は凹状に曲がった部分の一部に対応する位置に設けられる。また、作業員は、表皮材6の吊り込み縁部11に於ける目印18に合致する位置に目印19を設ける。
【0048】
次に、
図5に示すように、作業員は、吊り込み縁部11の目印19と第1縁部12の目印18とが互い合致して、吊り込み縁部11の端縁と第1縁部12における第2縁部とは反対側の端縁とが互いに整合するように、吊り込み部材14を吊り込み縁部11に沿って曲げて、吊り込み部材14を表皮材6に重ねる。作業員は、互いに重なった吊り込み部材14の第1縁部12と表皮材6の吊り込み縁部11とを互いに縫製する。
図5の破線は、縫製ライン20を示す。縫製ライン20は、切り欠きによって構成される目印18,19を避けた位置に設けられる。第1縁部12と吊り込み縁部11との互いの連結は、縫製以外の手段、例えば接着等によって行われてもよい。
【0049】
次に、
図6に示すように、作業員は、表皮材6が、第1縁部12に対して第2縁部13とは反対側に移動するように、縫製ライン20に沿って第1縁部12を折り返す。作業員は、第2縁部13を吊り込み溝9に挿入して係合部材10に係合させる。
【0050】
上記実施形態の作用効果について説明する。
変形容易部17が設けられているため、吊り込み部材14を吊り込み縁部11に沿って曲げた状態を維持しやすく、吊り込み部材14と凸状又は凹状に曲がった端縁を有する吊り込み縁部11との連結が容易となる。また、目印18,19が変形容易部17の両側に設けられていることによっても、吊り込み部材14と凸状又は凹状に曲がった端縁を有する吊り込み縁部11との連結が容易となる。凸状又は凹状に曲がった端縁を有する吊り込み縁部11に吊り込み部材14が連結されるため、シート1の着座面の凹凸がデザイン通りに再現され易い。
【0051】
第1縁部12が第2縁部13よりも曲げ変形容易であるため、吊り込み縁部11と第1縁部12との縫製等の連結作業が容易となる。
【0052】
吊り込み縁部11と第1縁部12とを縫製によって互いに連結する時に、吊り込み縁部11と第1縁部12とは、互いの端縁が整合するように重ね合わせた状態で縫製されるため、吊り込み縁部11と第1縁部12とを互いの端縁が突き当たるように連結する場合に比べて、吊り込み部材14を曲げた状態で目印18,19を合わせることが容易となる。
【0053】
目印18,19の少なくとも一部は、係合部材10に整合する位置に設けられているため、吊り込み溝9の適切な位置に吊り込み縁部11を挿入することができる。縫製ライン20が、切り欠きによって構成された目印18,19を避けた位置に設けられるため、吊り込み縁部11と第1縁部12との連結の強度が損なわれない。
【0054】
第2縁部13は、変形容易部17に整合する位置で最も大きく曲がるように変形する。変形容易部17に対して吊り込み溝9の長手方向にずれた位置にのみ係合部材が設けられた場合は、第2縁部13は最も大きく変形した部分を避けて係合部材10に係合するため、係合部材10に第2縁部13を係合させることが容易になる。変形容易部17に整合する位置に係合部材10が設けられた場合は、吊り込み縁部11の最も大きく曲がった部分が吊り込み部材14を介して係合部材10に係合するため、シート1の着座面の凹凸がデザイン通りに再現され易い。
【0055】
吊り込み端部の端縁に凹凸があっても、吊り込み部材を分割せずに1つの長い吊り込み部材を使用することができ、部品点数の増加を抑えることができる。
【0056】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。本発明は、パッド及び表皮材を備えるシートであれば、車両用シートだけでなく、他の乗物用のシートや、家屋等に置かれるシートにも適用できる。
【符号の説明】
【0057】
1:シート
5:パッド
6:表皮材
8:吊り込み構造
9:吊り込み溝
10:係合部材
11:吊り込み縁部
12:第1縁部
13:第2縁部
14:吊り込み部材
17:変形容易部
18:吊り込み部材の目印
19:吊り込み縁部の目印
20:縫製ライン