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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022145183
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】表面検査装置及び表面検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/88 20060101AFI20220926BHJP
   G01B 11/30 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
G01N21/88 Z
G01B11/30 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021046483
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003399
【氏名又は名称】JUKI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】千賀 大輔
(72)【発明者】
【氏名】加藤 正
【テーマコード(参考)】
2F065
2G051
【Fターム(参考)】
2F065AA25
2F065AA49
2F065AA53
2F065AA58
2F065CC06
2F065DD03
2F065DD06
2F065FF04
2F065FF05
2F065FF09
2F065FF52
2F065GG04
2F065JJ03
2F065JJ26
2F065MM03
2F065MM07
2F065MM16
2F065PP03
2F065PP12
2F065QQ13
2F065QQ31
2F065QQ42
2F065TT03
2G051AA90
2G051AB03
2G051AC02
2G051BA10
2G051CA02
2G051CA04
2G051CB01
2G051CD03
2G051EA08
2G051EB01
2G051EC01
2G051EC03
2G051ED01
(57)【要約】
【課題】検査対象の表面の状態を短時間で高精度に検査すること。
【解決手段】表面検査装置は、検査対象の表面に検査エリアを設定する検査エリア設定部と、検査エリアを検査するラフ検査機と、ラフ検査機により検査された検査エリアをラフ検査機よりも高精度に検査するファイン検査機と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象の表面に検査エリアを設定する検査エリア設定部と、
前記検査エリアを検査するラフ検査機と、
前記ラフ検査機により検査された前記検査エリアを前記ラフ検査機よりも高精度に検査するファイン検査機と、を備える、
表面検査装置。
【請求項2】
前記検査エリア設定部は、前記検査対象の表面に前記検査エリアを複数設定し、
前記ラフ検査機は、複数の前記検査エリアのそれぞれを順次検査し、
前記ラフ検査機の検査データに基づいて、複数の前記検査エリアから特定の検査エリアを選択する選択部を備え、
前記ファイン検査機は、前記選択部により選択された検査エリアを検査する、
請求項1に記載の表面検査装置。
【請求項3】
前記選択部は、前記ラフ検査機の検査データと所定のルールとに基づいて、選択した複数の検査エリアを順位付けし、
前記ファイン検査機は、前記選択部により順位付けされた順位に従って前記検査エリアを順次検査する、
請求項2に記載の表面検査装置。
【請求項4】
前記ルールは、前記検査対象の表面に形成された傷の深さを含む、
請求項3に記載の表面検査装置。
【請求項5】
前記ルールは、前記検査対象の表面に形成された傷の面積を含む、
請求項3に記載の表面検査装置。
【請求項6】
前記ルールは、前記検査対象の表面に形成された傷と前記ラフ検査機の検査終了時点における前記ファイン検査機との距離を含む、
請求項3に記載の表面検査装置。
【請求項7】
前記ファイン検査機の検査データに基づいて、前記検査対象の良否を判定する良否判定部と、
前記良否判定部は、前記選択部により選択された複数の検査エリアのうち一部の検査エリアが前記ファイン検査機に検査された時点で、前記検査対象の良否を判定する、
請求項3から請求項6のいずれか一項に記載の表面検査装置。
【請求項8】
前記ファイン検査機は、前記良否判定部が前記検査対象の良否を判定した時点で、前記検査エリアの検査を終了する、
請求項7に記載の表面検査装置。
【請求項9】
前記ラフ検査機は、照度差ステレオ法に基づいて前記検査エリアを撮像し、
前記ラフ検査機により撮像された画像データを取得する検査データ取得部と、
前記検査データ取得部により取得された前記画像データを平均化処理する平均化部と、
前記検査データ取得部により取得された画像データと前記平均化部により平均化処理された画像データとの差分画像データを生成する差分画像データ生成部と、を備え、
前記選択部は、前記差分画像データに基づいて、検査エリアを選択する、
請求項2から請求項8のいずれか一項に記載の表面検査装置。
【請求項10】
前記ラフ検査機と前記ファイン検査機とを連結する連結部材と、
前記ラフ検査機と前記ファイン検査機とを一緒に移動する駆動装置と、を備える、
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の表面検査装置。
【請求項11】
前記駆動装置は、前記ラフ検査機による所定の検査エリアの検査終了後次の検査エリアの検査開始のために前記ラフ検査機を第1移動速度で移動し、前記ファイン検査機による所定の検査エリアの検査終了後次の検査エリアの検査開始のために前記ファイン検査機を第2移動速度で移動し、
前記第2移動速度は、前記第1移動速度よりも低い、
請求項10に記載の表面検査装置。
【請求項12】
検査対象の表面に設定された複数の検査エリアのそれぞれをラフ検査機で順次検査することと、
前記ラフ検査機の検査データに基づいて、前記複数の検査エリアから特定の検査エリアを選択することと、
選択された検査エリアをファイン検査機で前記ラフ検査機よりも高精度に検査することと、
前記ファイン検査機の検査データに基づいて、前記検査対象の良否を判定することと、を含む、
表面検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表面検査装置及び表面検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属製品の製造工程において、特許文献1に開示されているような表面検査装置が使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-109374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
研削加工又は切削加工によりツールマークと呼ばれる微細な傷が金属製品の表面に形成される可能性がある。金属製品の表面に形成された微細な傷の状態を短時間で高精度に検査できる技術が要望される。
【0005】
本開示は、検査対象の表面の状態を短時間で高精度に検査することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従えば、検査対象の表面に検査エリアを設定する検査エリア設定部と、検査エリアを検査するラフ検査機と、ラフ検査機により検査された検査エリアをラフ検査機よりも高精度に検査するファイン検査機と、を備える、表面検査装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、検査対象の表面の状態を短時間で高精度に検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る表面検査装置を模式的に示す平面図である。
図2図2は、実施形態に係る表面検査装置を模式的に示す側面図である。
図3図3は、実施形態に係る制御装置を示す機能ブロック図である。
図4図4は、実施形態に係る表面検査方法を示すフローチャートである。
図5図5は、実施形態に係る検査エリアを説明するための図である。
図6図6は、実施形態に係る検出部を示すブロック図である。
図7図7は、実施形態に係る検出部の処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本開示は実施形態に限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0010】
実施形態においては、3次元直交座標系を設定し、この3次元直交座標系を参照しつつ各部の位置関係について説明する。所定面のX軸と平行な方向をX軸方向とする。X軸と直交する所定面のY軸と平行な方向をY軸方向とする。所定面と直交するZ軸と平行な方向をZ軸方向とする。X軸を中心とする回転又は傾斜方向をθX方向とする。Y軸を中心とする回転又は傾斜方向をθY方向とする。Z軸を中心とする回転又は傾斜方向をθZ方向とする。XY平面は所定面である。実施形態において、XY平面と水平面とは、平行であることとする。なお、XY平面は、水平面に対して傾斜してもよい。
【0011】
[表面検査装置]
図1は、実施形態に係る表面検査装置1を模式的に示す平面図である。図2は、実施形態に係る表面検査装置1を模式的に示す側面図である。図1及び図2に示すように、表面検査装置1は、保持部材2と、ラフ検査機3と、ファイン検査機4と、連結部材5と、駆動装置6と、制御装置7とを備える。
【0012】
保持部材2は、表面検査装置1の検査対象Wを保持する。実施形態において、検査対象Wは、金属製品である。金属製品として、鋳造品が例示される。
【0013】
ラフ検査機3は、保持部材2に保持されている検査対象Wの表面を検査する。ラフ検査機3は、保持部材2よりも上方に配置される。ラフ検査機3は、検査対象Wの上方から検査対象Wの表面を検査する。
【0014】
ファイン検査機4は、保持部材2に保持されている検査対象Wの表面を検査する。ファイン検査機4は、保持部材2よりも上方に配置される。ファイン検査機4は、検査対象Wの上方から検査対象Wの表面を検査する。
【0015】
実施形態において、ラフ検査機3及びファイン検査機4のそれぞれは、検査対象Wの表面に形成されている傷の状態を検査する。傷として、ツールマークが例示される。ツールマークとは、研削加工により金属製品に形成された研削痕又は切削加工により金属製品に形成された切削痕をいう。ツールマークは、微細な傷である。
【0016】
ファイン検査機4の検査精度は、ラフ検査機3の検査精度よりも高い。ファイン検査機4は、ラフ検査機3よりも高精度に検査対象Wの表面を検査する。
【0017】
実施形態において、ラフ検査機3は、撮像装置を含む。撮像装置は、光学系と、光学系を介して検査対象Wからの光を受光するイメージセンサとを含む。
【0018】
実施形態において、ファイン検査機4は、レーザ干渉計を含む。レーザ干渉計は、検査対象Wの表面にレーザ光を照射する射出部と、検査対象Wの表面で反射したレーザ光を受光する受光部とを含む。
【0019】
連結部材5は、ラフ検査機3とファイン検査機4とを連結する。連結部材5により、ラフ検査機3とファイン検査機4との相対位置が固定される。ラフ検査機3とファイン検査機4とは、一緒に移動することができる。
【0020】
駆動装置6は、ラフ検査機3及びファイン検査機4のそれぞれを移動する。実施形態において、駆動装置6は、ラフ検査機3とファイン検査機4とを一緒に移動する。駆動装置6は、ラフ検査機3及びファイン検査機4のそれぞれを、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向の少なくとも一つの方向に移動する。実施形態において、駆動装置6は、連結部材5をZ軸方向に移動するZ軸駆動部6Zと、Z軸駆動部6ZをX軸方向に移動するX軸駆動部6Xと、X軸駆動部6XをY軸方向に移動するY軸駆動部6Yとを含む。Z軸駆動部6Zは、連結部材5をZ軸方向にガイドするZ軸ガイド部材と、連結部材5をZ軸方向に移動する駆動力を発生するZ軸アクチュエータとを含む。X軸駆動部6Xは、Z軸ガイド部材をX軸方向にガイドするX軸ガイド部材と、Z軸ガイド部材をX軸方向に移動する駆動力を発生するX軸アクチュエータとを含む。Y軸駆動部6Yは、X軸ガイド部材をY軸方向にガイドするY軸ガイド部材と、X軸ガイド部材をY軸方向に移動する駆動力を発生するY軸アクチュエータとを含む。駆動装置6により、保持部材2に保持されている検査対象Wとラフ検査機3との相対位置が調整される。駆動装置6により、保持部材2に保持されている検査対象Wとファイン検査機4との相対位置が調整される。
【0021】
[制御装置]
図3は、実施形態に係る制御装置7を示す機能ブロック図である。制御装置7は、コンピュータシステムを含む。コンピュータシステムは、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサと、ROM(Read Only Memory)のような不揮発性メモリ及びRAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリを含むメインメモリと、ストレージと、入出力回路を含むインターフェースとを有する。
【0022】
図3に示すように、制御装置7は、検査データ取得部8と、検出部9と、検査エリア設定部10と、選択部11と、駆動指令部12と、作動指令部13と、良否判定部14とを有する。
【0023】
検査データ取得部8は、ラフ検査機3の検査データ及びファイン検査機4の検査データを取得する。実施形態において、ラフ検査機3の検査データは、検査対象Wの表面の画像データを含む。ファイン検査機4の検査データは、検査対象Wの表面で反射したレーザ光の受光データを含む。
【0024】
検出部9は、ラフ検査機3の検査データに基づいて、検査対象Wの表面の状態を大まかに検出する。検出部9は、ラフ検査機3の検査データに基づいて、検査対象Wの表面の傷の有無を検出することができる。検出部9は、ラフ検査機3の検査データに基づいて、検査対象Wの表面に形成されている傷の深さ及び傷の面積を大まかに算出することができる。
【0025】
検出部9は、ファイン検査機4の検査データに基づいて、検査対象Wの表面の状態を高精度に検出する。検出部9は、ファイン検査機4の検査データに基づいて、検査対象Wの表面に形成されている傷の深さ及び傷の面積を高精度に算出することができる。
【0026】
検査エリア設定部10は、検査対象Wの表面に検査エリアAを設定する。ラフ検査機3は、検査エリアAを検査する。ラフ検査機3は、複数の検査エリアAのそれぞれを順次検査する。ファイン検査機4は、ラフ検査機3により検査された検査エリアAをラフ検査機よりも高精度に検査する。
【0027】
選択部11は、ラフ検査機3の検査データに基づいて、複数の検査エリアAから特定の検査エリアAを選択する。実施形態において、選択部11は、ラフ検査機3の検査データに基づいて、傷が存在する検査エリアAを複数の検査エリアAから選択する。
【0028】
駆動指令部12は、駆動装置6を制御するための駆動指令を出力する。駆動装置6は、駆動指令に基づいて、ラフ検査機3及びファイン検査機4を移動する。
【0029】
作動指令部13は、ラフ検査機3を作動させる第1作動指令及びファイン検査機4を作動させる第2作動指令を出力する。ラフ検査機3は、第1作動指令に基づいて、検査エリアAの検査を開始する。実施形態において、ラフ検査機3は、第1作動指令に基づいて、検査エリアAの撮像を開始する。ファイン検査機4は、第2作動指令に基づいて、検査エリアAの検査を開始する。実施形態において、ファイン検査機4は、第2作動指令に基づいて、検査エリアAに対するレーザ光の照射を開始する。
【0030】
良否判定部14は、ファイン検査機4の検査データに基づいて、検査対象Wの良否を判定する。
【0031】
[表面検査方法]
図4は、実施形態に係る表面検査方法を示すフローチャートである。
【0032】
検査対象Wが保持部材2に保持される。検査エリア設定部10は、検査対象Wの表面に検査エリアAを設定する(ステップS1)。
【0033】
図5は、実施形態に係る検査エリアAを説明するための図である。図5に示すように、検査エリア設定部10は、検査対象Wの表面に検査エリアAを複数設定する。複数の検査エリアAは、検査対象Wの表面にマトリクス状に設定される。実施形態において、検査エリアAは、16箇所に設定される。すなわち、検査対象Wの表面に第1検査エリアA1から第16検査エリアA16が設定される。
【0034】
なお、図5に示した複数の検査エリアAは、一例である。図5には、検査対象Wの表面の一部に検査エリアAが設定され、検査対象Wの表面の別の一部に検査エリアAが設定されない例が図示されているが、検査エリアAは、検査対象Wの表面の全部に設定されてもよい。また、検査エリアAの数は、16箇所に限定されず、17箇所以上でもよいし、15箇所以下でもよい。
【0035】
駆動指令部12は、複数の検査エリアAのうち第1検査エリアA1とラフ検査機3とが対向するように、駆動装置6を制御する。駆動指令部12は、ラフ検査機3が第1検査エリアA1を検査できるように、ラフ検査機3と検査対象Wとの相対位置を調整する。
【0036】
ラフ検査機3と第1検査エリアA1とが対向した後、作動指令部13は、第1検査エリアA1がラフ検査機3に検査されるように、ラフ検査機3を作動させる。ラフ検査機3は、第1検査エリアA1を検査する。
【0037】
第1検査エリアA1がラフ検査機3に検査された後、駆動指令部12は、第1検査エリアA1の次に検査される第2検査エリアA2とラフ検査機3とが対向するように、駆動装置6を制御する。駆動指令部12は、ラフ検査機3が第2検査エリアA2を検査できるように、ラフ検査機3と検査対象Wとの相対位置を調整する。駆動装置6は、ラフ検査機3による第1検査エリアA1の検査終了後次の第2検査エリアA2の検査開始のためにラフ検査機3を第1移動速度V1で移動する。
【0038】
ラフ検査機3と第2検査エリアA2とが対向した後、作動指令部13は、第2検査エリアA2がラフ検査機3に検査されるように、ラフ検査機3を作動させる。ラフ検査機3は、第2検査エリアA2を検査する。
【0039】
駆動指令部12及び作動指令部13は、第1検査エリアA1から第16検査エリアA16の全部がラフ検査機3に検査されるように、ラフ検査機3の移動とラフ検査機3の作動とを繰り返す。ラフ検査機3は、所謂ステップアンドリピート方式で、第1検査エリアA1から第16検査エリアA16まで順次検査する(ステップS2)。
【0040】
上述のように、ラフ検査機3は、撮像装置を含む。ラフ検査機3の撮像エリアの大きさと1つの検査エリアAの大きさとは実質的に一致する。ラフ検査機3は、検査エリアAを撮像することにより、検査エリアAを一括して検査することができる。
【0041】
検出部9は、ラフ検査機3の検査データに基づいて、検査対象Wの表面の傷の有無を検出する。また、検出部9は、ラフ検査機3の検査データに基づいて、傷の深さを大まかに算出する(ステップS3)。
【0042】
選択部11は、ラフ検査機3の検査データに基づいて、複数の検査エリアAから特定の検査エリアAを選択する(ステップS4)。
【0043】
選択部11は、検出部9の検出結果に基づいて、傷が存在する検査エリアAを特定の検査エリアAとして選択する。一例として、実施形態においては、第2検査エリアA2と第6検査エリアA6と第15検査エリアA15とが選択されることとする。
【0044】
選択部11は、ラフ検査機3の検査データと所定のルールとに基づいて、選択した複数の検査エリアAを順位付けする(ステップS5)。
【0045】
実施形態において、所定のルールは、検査対象Wの表面に形成された傷の深さを含む。検出部9は、ラフ検査機3の検査データに基づいて、傷の深さを大まかに算出することができる。選択部11は、傷の深さに基づいて、選択した複数の検査エリアAを順位付けする。実施形態において、選択部11は、傷の深さが深いほど検査エリアAを上位に順位付けする。一例として、実施形態においては、第2検査エリアA2に形成されている傷の深さが最も深く、第2検査エリアA2に次いで第6検査エリアA6に形成されている傷の深さが深く、第15検査エリアA15に形成されている傷の深さが最も浅いこととする。選択部11は、第2検査エリアA2を第1位に順位付けし、第6検査エリアA6を第2位に順位付けし、第15検査エリアA15を第3位に順位付けする。
【0046】
ファイン検査機4は、選択部11により選択された検査エリアA(A2、A6,A15)を検査する。実施形態において、ファイン検査機4は、選択部11により順位付けされた順位に従って複数の検査エリアA(A2、A6,A15)を順次検査する(ステップS6)。
【0047】
駆動指令部12は、選択部11により選択された複数の検査エリアA(A2、A6,A15)のうち、第1位に順位付けされた第2検査エリアA2とファイン検査機4とが対向するように、駆動装置6を制御する。駆動指令部12は、ファイン検査機4が第2検査エリアA2を検査できるように、ファイン検査機4と検査対象Wとの相対位置を調整する。
【0048】
ファイン検査機4と第2検査エリアA2とが対向した後、作動指令部13は、第2検査エリアA2がファイン検査機4に検査されるように、ファイン検査機4を作動させる。ファイン検査機4は、第2検査エリアA2を検査する。
【0049】
第2検査エリアA2がファイン検査機4に検査された後、駆動指令部12は、選択部11により選択された複数の検査エリアA(A2、A6,A15)のうち、第2位に順位付けされた第6検査エリアA6とファイン検査機4とが対向するように、駆動装置6を制御する。駆動指令部12は、ファイン検査機4が第6検査エリアA6を検査できるように、ファイン検査機4と検査対象Wとの相対位置を調整する。駆動装置6は、ファイン検査機4による第2検査エリアA2の検査終了後次の第6検査エリアA6の検査開始のためにファイン検査機4を第2移動速度V2で移動する。第2移動速度V2は、第1移動速度V1よりも低い。
【0050】
ファイン検査機4と第6検査エリアA6とが対向した後、作動指令部13は、第6検査エリアA6がファイン検査機4に検査されるように、ファイン検査機4を作動させる。ファイン検査機4は、第6検査エリアA6を検査する。
【0051】
第6検査エリアA6がファイン検査機4に検査された後、駆動指令部12は、選択部11により選択された複数の検査エリアA(A2、A6,A15)のうち、第3位に順位付けされた第15検査エリアA15とファイン検査機4とが対向するように、駆動装置6を制御する。駆動指令部12は、ファイン検査機4が第15検査エリアA15を検査できるように、ファイン検査機4と検査対象Wとの相対位置を調整する。駆動装置6は、ファイン検査機4による第6検査エリアA6の検査終了後次の第15検査エリアA15の検査開始のためにファイン検査機4を第2移動速度V2で移動する。
【0052】
ファイン検査機4と第15検査エリアA15とが対向した後、作動指令部13は、第15検査エリアA15がファイン検査機4に検査されるように、ファイン検査機4を作動させる。ファイン検査機4は、第15検査エリアA15を検査する。
【0053】
上述のように、ファイン検査機4は、レーザ干渉計を含む。ファイン検査機4は、検査エリアA(A2,A6,A15)に対してレーザ光を走査することにより、検査エリアAを検査する。
【0054】
検出部9は、ファイン検査機4の検査データに基づいて、傷の深さを高精度に算出する(ステップS7)。
【0055】
良否判定部14は、ファイン検査機4の検査データに基づいて、検査対象Wの良否を判定する(ステップS8)。
【0056】
実施形態において、良否判定部14は、検出部9により算出された傷の深さと予め定められている深さ閾値とを比較する。複数の傷のうち最も深い傷の深さが深さ閾値未満である場合、良否判定部14は、検査対象Wが良好であると判定する。複数の傷のうち最も深い傷の深さが深さ閾値以上である場合、良否判定部14は、検査対象Wが不良であると判定する。
【0057】
[検出部の処理]
次に、ラフ検査機3により撮像された検査エリアAの画像データの処理方法について説明する。図6は、実施形態に係る検出部9を示すブロック図である。ラフ検査機3により撮像された画像データは、検査データ取得部8により取得される。検出部9は、平均化部15と、差分画像データ生成部16とを有する。選択部11は、検出部9の検出結果に基づいて、傷が存在する検査エリアAを特定の検査エリアAとして選択する。
【0058】
図7は、実施形態に係る検出部9の処理を説明するための図である。図7に示すように、ラフ検査機3は、照度差ステレオ法に基づいて検査エリアAを撮像する。ラフ検査機3は、照度差ステレオ法に基づいて、検査エリアAの立体画像を取得することができる。検査データ取得部8は、照度差ステレオ法に基づいてラフ検査機3により撮像された画像データMaを取得する。画像データMaは、検査エリアAの立体画像を含む。
【0059】
ラフ検査機3は、公知の照度差ステレオ法に基づいて検査エリアAを撮像する。照度差ステレオ法とは、照明位置を互いに異ならせた複数の画像と、撮影対象の物体に対応するマスク画像とを用いて、法線マップを取得する方法をいう。法線マップとは、物体の任意の位置の法線ベクトルの向きを表す画像をいう。
【0060】
平均化部15は、検査データ取得部8により取得された画像データMaを平均化処理する。平均化部15により、平均化処理された画像データMbが生成される。
【0061】
平均化部15は、公知の平均化処理に基づいて、画像データMbを生成する。平均化処理とは、注目画素の周辺の複数の周辺画素の輝度値の平均値を算出し、その平均値を注目画素の輝度値とする処理をいう。画像データMaが平均化処理されることにより、ノイズ成分が低減された画像データMbが生成される。
【0062】
差分画像データ生成部16は、検査データ取得部8により取得された画像データMaと平均化部15により平均化処理された画像データMbとの差分画像データMcを生成する。差分画像データMcは、検査対象Wの表面に形成されている傷のみが抽出された画像データである。
【0063】
選択部11は、差分画像データMcに基づいて、検査エリアAを選択する。
【0064】
画像データMaが平均化処理されて画像データMbが生成されることにより、検査対象Wの表面に形成されている傷のみが抽出された差分画像データMcが生成される。検出部9は、傷を正しく検出することができる。選択部11は、傷が存在する検査エリアAを正しく選択することができる。
【0065】
ラフ検査機3で検査対象Wを検査するときに、照明光学系からの照明光で検査対象Wが照明される。実施形態によれば、照明光学系の複雑化及び高価格化が抑制され、検出部9は、検査対象Wの表面に形成されている傷を正しく検出することができる。照度差ステレオ法に基づいて画像データMaを取得する場合、平行光源からの照明光で検査対象Wが照明されることが好ましい。平行光源からの照明光で検査対象Wが照明されないと、照度差ステレオ法に基づいて取得された画像データMaに歪みが生じる可能性がある。画像データMaに歪みが生じると、検出部9は、画像データMaから傷を正しく検出することが困難となる可能性がある。しかし、平行光源を作り出すためには、照明光学系の複雑化及び高価格化がもたらされる可能性がある。実施形態によれば、例えば点光源からの照明光で検査対象Wが照明され、照度差ステレオ法に基づいて取得された画像データMaに歪みが生じても、画像データMaと画像データMbとの差分画像データMcが生成されることにより、検出部9は、傷を正しく検出することができる。
【0066】
[効果]
以上説明したように、実施形態によれば、表面検査装置1は、検査対象Wの表面に設定された検査エリアAを検査するラフ検査機3と、ラフ検査機3により検査された検査エリアAをラフ検査機3よりも高精度に検査するファイン検査機4と、を備える。これにより、表面検査装置1は、検査対象Wの表面に形成された微細な傷の状態を短時間で高精度に検査することができる。
【0067】
実施形態においては、ラフ検査機3の検査データに基づいて、複数の検査エリアAから傷が形成されている特定の検査エリアAが選択される。
【0068】
実施形態において、ラフ検査機3は、撮像装置を含む。ラフ検査機3の撮像エリアの大きさと1つの検査エリアAの大きさとは実質的に一致する。ラフ検査機3は、検査エリアAを撮像することにより、検査エリアAを一括して検査することができる。ラフ検査機3は、検査エリアAを短時間で検査することができる。ファイン検査機4は、レーザ干渉計を含む。ファイン検査機4は、検査エリアAに対してレーザ光を走査することにより、検査エリアAを検査する。ファイン検査機4の検査精度はラフ検査機3の検査精度よりも高い。一方、ファイン検査機4の検査時間は、ラフ検査機3の検査時間よりも長い。すなわち、1つの検査エリアA(検査対象Wの表面の単位面積)を検査するのに要する検査時間は、ラフ検査機3よりもファイン検査機4のほうが長い。
【0069】
ラフ検査機3の検査時間は、ファイン検査機4の検査時間よりも短い。ラフ検査機3は、傷が形成されている検査エリアAを短時間で探査することができる。ファイン検査機4は、傷が形成されている検査エリアAのみを高精度に検査する。ファイン検査機4は、傷が形成されていない検査エリアAを検査しない。すなわち、表面検査装置1は、検査対象Wの表面の状態をラフ検査機3で高速に検査して、傷が存在する検査エリアAを特定した後、傷が存在する検査エリアAのみをファイン検査機4で高精度に検査する。これにより、表面検査装置1は、検査対象Wの表面に形成された微細な傷の状態を短時間で高精度に検査することができる。
【0070】
傷が形成されている検査エリアA(A2,A6,A15)が複数存在する場合、所定のルールに基づいて複数の検査エリアA(A2,A6,A15)が順位付けされる。ファイン検査機4は、順位付けされた順位に従って複数の検査エリアA(A2,A6,A15)を順次検査する。これにより、検査効率の低下が抑制される。
【0071】
ラフ検査機3とファイン検査機4とは連結部材5を介して連結される。駆動装置6は、ラフ検査機3とファイン検査機4とを一緒に移動することができる。これにより、表面検査装置1の構造の複雑化が抑制される。
【0072】
表面検査装置1は、ステップアンドリピート方式で複数の検査エリアAを順次検査する。ファイン検査機4がステップ移動するときの第2移動速度V2は、ラフ検査機3がステップ移動するときの第1移動速度V1よりも低い。そのため、ファイン検査機4がステップ移動を終了してからファイン検査機4の振動がおさまるまでの時間が短くなる。また、ファイン検査機4の振動が抑制された状態でファイン検査機4の検査が開始されるので、ファイン検査機4による検査精度の低下が抑制される。ラフ検査機3がステップ移動するときの移動速度は高いので、ラフ検査機3による検査時間が長くなることが抑制される。
【0073】
[その他の実施形態]
なお、上述の実施形態において、良否判定部14は、選択部11により選択された複数の検査エリアAのうち一部の検査エリアAがファイン検査機4に検査された時点で、検査対象Wの良否を判定してもよい。ファイン検査機4は、良否判定部14が検査対象Wの良否を判定した時点で、検査エリアAの検査を終了してもよい。
【0074】
例えば、第2検査エリアA2がファイン検査機4により検査され、第2検査エリアA2に形成されている傷の深さが深さ閾値以上である場合、良否判定部14は、第6検査エリアA6及び第15検査エリアA15がファイン検査機4に検査される前に、検査対象Wが不良であると判定してもよい。ファイン検査機4は、良否判定部14が検査対象Wを不良であると判定した時点で、第6検査エリアA6及び第15検査エリアA15を検査することなく、検査を終了してもよい。
【0075】
また、第2検査エリアA2に形成されている傷の深さは、第6検査エリアA6に形成されている傷の深さ及び第15検査エリアA15に形成されている傷の深さよりも深い。そのため、第2検査エリアA2がファイン検査機4により検査され、第2検査エリアA2に形成されている傷の深さが深さ閾値未満である場合、良否判定部14は、第6検査エリアA6及び第15検査エリアA15がファイン検査機4に検査される前に、検査対象Wが良好であると判定してもよい。ファイン検査機4は、良否判定部14が検査対象Wを良好であると判定した時点で、第6検査エリアA6及び第15検査エリアA15を検査することなく、検査を終了してもよい。
【0076】
上述の実施形態において、選択部11は、傷の深さに基づいて、選択した複数の検査エリアAを順位付けすることとした。選択部11は、傷の面積に基づいて、選択した複数の検査エリアAを順位付けしてもよい。選択部11は、傷の面積が広いほど検査エリアAを上位に順位付けすることができる。例えば、第2検査エリアA2に形成されている傷の面積が最も大きく、第2検査エリアA2に次いで第6検査エリアA6に形成されている傷の面積が大きく、第15検査エリアA15に形成されている傷の面積が最も小さい場合、選択部11は、第2検査エリアA2を第1位に順位付けし、第6検査エリアA6を第2位に順位付けし、第15検査エリアA15を第3位に順位付けする。良否判定部14は、検出部9により算出された傷の面積と予め定められている面積閾値とを比較する。複数の傷のうち最も大きい傷の面積が面積閾値未満である場合、良否判定部14は、検査対象Wが良好であると判定する。複数の傷のうち最も大きい傷の面積が面積閾値以上である場合、良否判定部14は、検査対象Wが不良であると判定する。
【0077】
なお、上述の実施形態において、選択部11は、検査対象Wの表面に形成された傷とラフ検査機3の検査終了時点におけるファイン検査機4とのXY平面内における距離に基づいて、選択した複数の検査エリアAを順位付けしてもよい。選択部11は、距離が短いほど検査エリアAを上位に順位付けすることができる。ラフ検査機3は、第1検査エリアA1から第16検査エリアA16まで順次検査する。ラフ検査機3の検査終了時点において、ラフ検査機3は、第16検査エリアA16と対向する。ラフ検査機3とファイン検査機4とは、連結部材5を介して連結されている。ラフ検査機3の検査終了時点において、第15検査エリアA15とファイン検査機4との距離が最も短く、第15検査エリアA15とファイン検査機4との距離に次いで第6検査エリアA6とファイン検査機4との距離が短く、第2検査エリアA2とファイン検査機4との距離が最も長い。選択部11は、第15検査エリアA15を第1位に順位付けし、第6検査エリアA6を第2位に順位付けし、第2検査エリアA2を第3位に順位付けする。ファイン検査機4との距離が短い検査エリアAが優先して検査されることにより、ファイン検査機4の総移動距離が長くなることが抑制される。
【0078】
なお、上述の実施形態において、検査エリアAは設定されなくてもよい。検査対象Wの表面の全部がラフ検査機3により検査され、傷が存在するエリアが特性された後、傷が存在するエリアのみがファイン検査機4により検査されてもよい。
【0079】
上述の実施形態において、検査対象Wは金属製品でなくてもよい。検査対象Wが例えば合成樹脂製品でもよいし、合成皮革製品でもよい。
【符号の説明】
【0080】
1…表面検査装置、2…保持部材、3…ラフ検査機、4…ファイン検査機、5…連結部材、6…駆動装置、6X…X軸駆動部、6Y…Y軸駆動部、6Z…Z軸駆動部、7…制御装置、8…検査データ取得部、9…検出部、10…検査エリア設定部、11…選択部、12…駆動指令部、13…作動指令部、14…良否判定部、15…平均化部、16…差分画像データ生成部、A…検査エリア、W…検査対象。
図1
図2
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図5
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図7