(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022145201
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】蓄電制御方法及び蓄電制御システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20220926BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20220926BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
H02J7/00 302C
H01M10/44 P
H01M10/48 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021046503
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】竹井 英俊
(72)【発明者】
【氏名】上野 敬章
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 正夫
(72)【発明者】
【氏名】植杉 淳司
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
5G503AA06
5G503BA02
5G503BB02
5G503HA01
5H030AA10
5H030AS03
5H030BB01
5H030BB21
5H030FF22
5H030FF41
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
5H030FF52
(57)【要約】
【課題】温度による蓄電池の充電量のアンバランスを抑制できるようにする。
【解決手段】蓄電池ユニットに用いられる蓄電池を構成する電池モジュールの充放電の制御を行う蓄電制御方法であり、電池モジュールの温度を検出する工程と、電池モジュールの温度に応じて、電池モジュールの状態を検出する検出素子のオン時間を設定する工程とを含む。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池ユニットに用いられる蓄電池を構成する電池モジュールの充放電の制御を行う蓄電制御方法であり、
前記電池モジュールの温度を検出する工程と、
前記電池モジュールの温度に応じて、前記電池モジュールの状態を検出する検出素子のオン時間を設定する工程と、
を含む蓄電制御方法。
【請求項2】
前記オン時間は、前記検出素子の抵抗値が前記温度に応じて変化することに対応して設定するようにした、
請求項1に記載の蓄電制御方法。
【請求項3】
前記電池モジュールは複数あり、前記検出素子は、前記複数の電池モジュール毎に設けられる、
請求項1又は請求項2に記載の蓄電制御方法。
【請求項4】
前記検出素子は、サーミスタである、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の蓄電制御方法。
【請求項5】
蓄電池ユニットに用いられる蓄電池を構成する電池モジュールの充放電の制御を行う蓄電制御システムであり、
前記電池モジュールの状態を検出する検出素子と、
前記電池モジュールの温度に応じて、前記検出素子のオン時間を設定するセンサ設定部と、
を備える蓄電制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電制御方法及び蓄電制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
住宅の屋根等にソーラーパネルを設置し、ソーラーパネルが発電した電力を家庭用の電力として利用するような電源システムが普及している。このような電源システムで使用する蓄電池ユニットとして、複数のバッテリーセルを直列接続してバッテリースタックを構成し、所望の電圧を得られるようにした構成のものが提案されている(例えば特許文献1)。例えば、リチウムイオン電池のバッテリーセルの電圧は、2V~4V程度である。これに対して、家庭用の電源の電圧は、数百Vである。この場合、バッテリーセルを数十個直列に接続することで、家庭で使用する数百Vの電圧が確保される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蓄電池は、一般的には、温度が高ければ寿命の劣化が早く、温度が低いと充電能力が低くなるというような特性がある。そこで、蓄電池ユニットの各部に温度検出素子が設けられる。温度検出素子としては、サーミスタを用いることが一般的である。サーミスタは、温度に応じて電気抵抗が変化する素子である。サーミスタは蓄電池に具備する回路に具備されており、サーミスタにより温度計測を行うと、サーミスタのオン時間だけ、回路が消費され、ひいては蓄電池の容量を消費する。このことは、蓄電池の充電量にアンバランスを生じさせる要因となる。
【0005】
上述の課題を鑑み、本発明は、温度による蓄電池の充電量のアンバランスを抑制できるようにした蓄電制御方法及び蓄電制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る蓄電制御方法は、蓄電池ユニットに用いられる蓄電池を構成する電池モジュールの充放電の制御を行う蓄電制御方法であり、前記電池モジュールの温度を検出する工程と、前記電池モジュールの温度に応じて、前記電池モジュールの状態を検出する検出素子のオン時間を設定する工程とを含む。
【0007】
本発明の一態様に係る蓄電制御システムは、蓄電池ユニットに用いられる蓄電池を構成する電池モジュールの充放電の制御を行う蓄電制御システムであり、前記電池モジュールの状態を検出する検出素子と、前記電池モジュールの温度に応じて、前記検出素子のオン時間を設定するセンサ設定部とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電池モジュールの温度に応じて、電池モジュールの状態を検出する検出素子のオン時間を設定することで、複数の電池モジュール間での充電量のバランスを図ることができる。これにより、蓄電池の充電量のアンバランスが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る電源システムの概要を示すブロック図である。
【
図2】本発明に係る電源システムで用いられる蓄電池ユニットの概要の説明図である。
【
図3】電池モジュールのコネクタと制御管理モジュールのコネクタとを接続する中継ケーブルの概要の説明図である。
【
図4】電池モジュールのコネクタと制御管理モジュールのコネクタとを接続する中継ケーブルの概要の説明図である。
【
図6】制御管理モジュールの構成を示すブロック図である。
【
図7】BMS基板に配置されるAFE回路素子の概要を示すブロック図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る蓄電制御システムの概要のブロック図である。
【
図9】温度とサーミスタの抵抗値との関係を示すグラフである。
【
図10】本発明の実施形態に係る蓄電制御システムのスイッチ制御時間の説明図である。
【
図11】本発明の実施形態に係る蓄電制御システムの説明に用いるフローチャートである。
【
図12】本発明に係る電源システムの他の構成例の概要を示すブロック図である。
【
図13】本発明に係る電源システムの他の構成例の概要を示すブロック図である。
【
図14A】本発明に係るサーミスタの検出電圧を処理する他の構成例を示す図である。
【
図14B】本発明に係るサーミスタの検出電圧を処理する他の構成例を示す図である。
【
図14C】本発明に係るサーミスタの検出電圧を処理する他の構成例を示す図である。
【
図14D】本発明に係るサーミスタの検出電圧を処理する他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0011】
<全体システム>
まず、
図1を参照して、本発明に係る電源システム10の概要について説明する。
図1は、本発明に係る電源システム10の概要を示すブロック図である。
図1に示すように、本発明の実施形態に係る電源システム10は、パワーコンディショナー1と、ソーラーパネル2と、蓄電池ユニット3とを含んで構成される。
【0012】
パワーコンディショナー1は、直流電源と交流電源との変換、電源電圧の制御、買電及び売電などの処理を行う。即ち、商用電源5では交流電源を用いているのに対して、太陽光発電や蓄電には直流電源を用いる。また、商用電源5の電圧と、ソーラーパネル2や蓄電池ユニット3で用いるバッテリーの電圧は異なっている。パワーコンディショナー1は、商用電源5、ソーラーパネル2、蓄電池ユニット3との間で、直流電源と交流電源との変換及び電源電圧の制御を行っている。そして、パワーコンディショナー1は分電盤6に電力を供給し、分電盤6は各部屋のコンセントに電力を分配する。
【0013】
ソーラーパネル2は、昼間の太陽が現れる時間には発電を行えるが、夜間、太陽が沈むと発電が行えず、発電量が安定しない。蓄電池ユニット3は、昼間、商用電源5とパワーコンディショナー1を介して系統から充電を行うことが可能であり、ソーラーパネル2とパワーコンディショナー1を介して充電を行うことが可能であり、パワーコンディショナー1を介して電力の供給を補うことも可能である。蓄電池ユニット3は、夜間、商用電源5とパワーコンディショナー1を介して系統から充電を行うことが可能であり、パワーコンディショナー1を介して電力の供給を補うことも可能である。
【0014】
また、パワーコンディショナー1は、電力が不足している場合には、商用電源5から電源を買い取り、ソーラーパネル2による電力が余剰になるときには、商用電源5に電源を売るような、買電及び売電などの処理を行っている。
【0015】
また、電源システム10には、EV(Electric Vehicle)スタンド4を組み込むことができる。EVスタンド4は、電気自動車への充電を行う他、電気自動車に搭載されているバッテリーを利用して、電力を蓄積するのに用いることができる。また、EVスタンド4は、パワーコンディショナー1を介して電力の供給を補うことも可能である。
【0016】
ここで、
図2を参照して、本発明に係る電源システム10で用いられる蓄電池ユニット3の概要について説明する。
図2は、本発明に係る電源システム10で用いられる蓄電池ユニット3の概要の説明図である。
【0017】
図2に示すように、蓄電池ユニット3は、例えば7個の電池モジュール11-1~11-7と、制御管理モジュール12とから構成される。電池モジュール11-1~11-7には、複数のバッテリーセルからなるバッテリースタックが設けられている。また、電池モジュール11-1~11-7には、それぞれ、コネクタ13-1~13-7及びコネクタ14-1~14-7が備えられている。
【0018】
制御管理モジュール12は、電池モジュール11-1~11-7の充放電状態を管理している。制御管理モジュール12には、コネクタ45-1~45-7及びコネクタ56-1~56-7が備えられている。
【0019】
電池モジュール11-1~11-7のコネクタ13-1~13-7と、制御管理モジュール12のコネクタ45-1~45-7とは、
図3に示すような中継ケーブル60-1~60-7により接続される。電池モジュール11-1~11-7のコネクタ14-1~14-7と、制御管理モジュール12のコネクタ56-1~56-7とは、
図4に示すような中継ケーブル70-1~70-7により接続される。
【0020】
図3は、電池モジュール11-1~11-7のコネクタ13-1~13-7と、制御管理モジュール12のコネクタ45-1~45-7とを接続する中継ケーブル60(60-1~60-7)の概要の説明図である。
【0021】
ここで、
図3及び
図4を参照して、電池モジュールのコネクタと制御管理モジュールのコネクタとを接続する中継ケーブルの概要について説明する。
【0022】
図3は、電池モジュール11-1~11-7のコネクタ13-1~13-7と、制御管理モジュール12のコネクタ45-1~45-7とを接続する中継ケーブル60(60-1~60-7)の概要の説明図である。
【0023】
図3に示すように、中継ケーブル60は、電池モジュール11-1~11-7側のコネクタ61(61-1~61-n)と、制御管理モジュール12側のコネクタ62(62-1~62-n)と、その間のケーブル63(63-1~63-n)とからなる。ケーブル63(63-1~63-n)は、正極の配線と負極の配線との2線になる。
【0024】
図4は、電池モジュール11-1~11-7のコネクタ14-1~14-7と、制御管理モジュール12のコネクタ56-1~56-7とを接続する中継ケーブル70(70-1~70-7)の概要の説明図である。
【0025】
図4に示すように、中継ケーブル70(70-1~70-7)は、電池モジュール11-1~11-7側のコネクタ71(71-1~71-7)と、制御管理モジュール12側のコネクタ72(72-1~72-7)と、その間のケーブル73(73-1~73-7)とからなる。ケーブル73(73-1~73-7)は、バッテリースタックを構成するバッテリーセルに応じた数の配線からなる。
【0026】
ここで、
図5を参照して、電池モジュールの一例について説明する。
図5は、電池モジュール11(11-1~11-7)の一例の説明図である。なお、電池モジュール11-1~11-7は、全て、同様に構成されている。
【0027】
図5に示すように、電池モジュール11(11-1~11-7)には、直列接続されたバッテリーセル20-1、20-2、…、20-nからなるバッテリースタックが設けられている。バッテリーセル20-1、20-2、…、20-nとしては、例えば、リン酸鉄リチウムイオン電池が用いられる。リン酸鉄リチウムイオン電池は、リン酸鉄リチウムを正極に使用するもので、電池内部で発熱があっても結晶構造が崩壊しにくく、安全性が高いという特徴がある。1つのバッテリーセル20-1、20-2、…、20-nのセル電圧は、セル構造により異なる。リチウムイオン電池の場合、セル電圧は、2V~4Vである。リン酸鉄リチウムイオン電池では、セル電圧は、例えば3.3V程度である。
【0028】
電池モジュール11(11-1~11-7)には、コネクタ13(13-1~13-7)及びコネクタ14(14-1~14-7)が設けられる。コネクタ13(13-1~13-7)は、電池モジュール11の充放電を行うためのコネクタである。コネクタ14(14-1~14-7)は、バッテリーセル20-1、20-2、…、20-nのセル電圧を監視するためのコネクタである。
【0029】
ここで、
図6を参照して、制御管理モジュールの構成について説明する。
図6は、制御管理モジュール12の構成を示すブロック図である。
【0030】
図6に示すように、制御管理モジュール12には、端子台31と、ブレーカ33と、HV(High-Voltage)基板40と、BMS(Battery Management System)基板50とが実装されている。
【0031】
端子台31は、パワーコンディショナー1からの配線を接続するコネクタである。端子台31には、正極端子31aと、負極端子31bと、接地端子31cとが配設されている。この例では、接地端子31cは0電位として筐体に接続している。端子台31の正極端子31a及び負極端子31bから伸びる配線が充放電ライン35a及び35bを形成する。ブレーカ33は、大電流が流れたときの保護用である。
【0032】
通信コネクタ32は、パワーコンディショナー1からの通信用のシールド線を接続するコネクタである。通信コネクタ32は、BMS基板50上の通信コネクタ51と接続される。パワーコンディショナー1からのデータは、通信コネクタ32を介して受信され、マイクロプロセッサ54に送られる。また、マイクロプロセッサ54からのデータが通信コネクタ32を介してパワーコンディショナー1に送られる。
【0033】
HV基板40は、電池モジュール11-1~11-7の充放電を行うための基板である。HV基板40には、リレー41と、電流センサ42と、通信コネクタ43と、コネクタ45-1~45-7が実装されている。
【0034】
リレー41は、蓄電池ユニット3の動作を開始/停止させるスイッチとなる。電流センサ42は、電池モジュール11-1~11-7への充放電電流を検出している。通信コネクタ43は、BMS基板50上の通信コネクタ52と接続される。通信コネクタ43は、例えば電流センサ42の検出電流をマイクロプロセッサ54に送信している。
【0035】
コネクタ45-1~45-7は、それぞれ、電池モジュール11-1~11-7側のコネクタ13-1~13-7と接続する端子である。電池モジュール11-1~11-7側のコネクタ13-1~13-7は充放電用のコネクタであり、コネクタ13-1~13-7からは、バッテリースタックを構成するバッテリーセル20-1、20-2、…、20-nの両端からの配線が導出されている。コネクタ45-1~45-7は直列接続して、所望の充放電電圧が得られるようにしている。そして、最も電位の高いコネクタ45-1の正極が充放電ライン35aと接続され、最も電位の低いコネクタ45-7の負極が充放電ライン35bと接続される。
【0036】
BMS基板50は、電池モジュール11-1~11-7の状態を監視及び制御するための基板である。BMS基板50には、通信コネクタ51及び52、AFE(Analog Front End)53、マイクロプロセッサ54、光絶縁素子55、コネクタ56-1~56-7が実装されている。
【0037】
通信コネクタ51は、通信コネクタ32と接続され、パワーコンディショナー1との間でデータの送受を行う。通信コネクタ52は、通信コネクタ43と接続され、HV基板40との間でデータの送受を行う。
【0038】
AFE53は、電池モジュール11-1~11-7のそれぞれのセル電圧を検出し、ディジタルデータに変換する。
【0039】
マイクロプロセッサ54は、パワーコンディショナー1からのデータ、HV基板40からのデータ、AFE53からのデータ等を基に、各種の制御を行う。
【0040】
光絶縁素子55は、フォトカプラやディジタルアイソレータ等の素子であり、AFE53とマイクロプロセッサ54との間を接続する。AFE53には高電圧が印加されるので、AFE53とマイクロプロセッサ54との間は、光絶縁素子55でアイソレーションを行っている。
【0041】
コネクタ56-1~56-7は、それぞれ、電池モジュール11-1~11-7側のコネクタ14-1~14-7と接続する端子である。コネクタ14(14-1~14-7)は、バッテリーセル20-1、20-2、…、20-nのセル電圧を監視するためのコネクタである。コネクタ56-1~56-7は、それぞれ、電池モジュール11-1~11-7のセル電圧をBMS基板50側に伝達している。
【0042】
ここで、
図7を参照して、BMS基板に配置されるAFE回路素子の概要について説明する。
図7は、BMS基板50に配置されるAFE回路素子530の概要を示すブロック図である。
本実施形態では、電池モジュール11-1~11-7に対応させた数だけ、
図7に示すようなAFE回路素子530を配置して、AFE53の機能を実現している。なお、ここでは、AFE回路素子530の機能の中で、本発明の説明に必要な部分に限定して説明する。なお、AFE回路素子530の数は、電池モジュール11-1~11-7に対応させた数に限定されない。例えば、2個の電池モジュールに対して1個のAFE回路素子530が接続されてもよい。
【0043】
図7において、端子A1、A2、…、Am(mは任意の整数)は、バッテリースタックのセル電圧を検出するための測定端子である。バッテリースタックのセル電圧を検出する場合、端子A1から端子Amの順に、最も高い電位の電極から最も電位の低い電極となるように、バッテリーセルを接続する。
【0044】
端子A1、A2、…、Amの段間の抵抗Ra及びスイッチ回路Saは、バッテリーセルのバランス調整を行うためのものである。即ち、スイッチ回路Saをオンすると、バッテリーセルの両極が抵抗Raを介して接続され、バッテリーセル内のエネルギーがジュール熱により消費される。これにより、バッテリーセルの中で充電量が多いセルのエネルギーを消費させ、各バッテリーセルの充電量を均一化することができる。
【0045】
端子D1及び端子D2は、データの入出力の端子である。AFE53とマイクロプロセッサ54との間は、端子D1及び端子D2を通じて、データが入出力される。
【0046】
端子Vrefは所定電圧の端子である。端子V-は基準電圧の端子である。Vtempは温度検出用の端子である。温度計測を行う場合、端子Vrefと端子V-との間に、スイッチ回路Sb、抵抗Rb、及びサーミスタRtが直列に接続される。サーミスタRtは、電池モジュールの状態を検出する検出素子の一例である。本実施形態では、サーミスタRtを用いて電池モジュールの温度を検出する。抵抗RbとサーミスタRtとの接続点は、温度検出用の端子Vtempに接続される。なお、スイッチ回路Sbが接続される位置は、特に限定されない。例えば、スイッチ回路Sbは、端子Vrefと端子V-との間の経路において、いずれの位置に設けられてもよい。また、例えば、スイッチ回路Sbは、AFE回路素子530内の機能として内蔵されてもよい。
【0047】
<実施形態>
本発明に係る蓄電制御システムは、上述のように構成される蓄電池ユニット3における温度測定に適用される。
【0048】
図7に示したように、AFE回路素子530は、サーミスタRtを取り付けることで、温度検出を行うことができる。例えば、
図8に示すように、各電池モジュール11-1~11-7に、サーミスタRt-1~Rt-7を設ける。サーミスタRt-1~Rt-7による計測値をAFE回路素子530-1~530-7の端子Vtempから取得するようにすれば、電池モジュール11-1~11-7の温度を検出できる。
【0049】
ここで、
図8を参照して、蓄電制御システムの概要について説明する。
図8は、本発明の実施形態に係る蓄電制御システムの概要のブロック図である。
【0050】
図8に示す例では、電池モジュール11-1~11-7に対応させて、AFE回路素子530-1~530-7を配置している。
図8において、電池モジュール11-1~11-7には、バッテリーセル20-1、20-2、…、20-nからなるバッテリースタックが設けられている。各バッテリーセル20-1、20-2、…、20-nの両端及び段間は、それぞれ、AFE回路素子530-1~530-7の端子A1、A2、…、Amに接続される。また、各AFE回路素子530-1~530-7は直列に接続される。
【0051】
また、各電池モジュール11-1~11-7には、サーミスタRt-1~Rt-7が設けられる。抵抗Rb-1~Rb-7の一端は、スイッチ回路Sb-1~Sb-7を介して、AFE回路素子530-1~530-7の端子Vrefに接続される。サーミスタRt-1~Rt-7の一端は、AFE回路素子530-1~530-7の端子V-に接続される。抵抗Rb-1~Rb-7とサーミスタRt-1~Rt-7との接続点は、AFE回路素子530-1~530-7の端子Vtempに接続される。
【0052】
ここで、
図9を参照して、温度とサーミスタの抵抗値との関係について説明する。
図9は、温度とサーミスタの抵抗値との関係を示すグラフである。
【0053】
図9に示すように、サーミスタの抵抗値は温度とともに下降していく。したがって、温度が高くなる程、サーミスタRt-1~Rt-7に流れる電流は大きくなる。サーミスタRt-1~Rt-7に流れる電流に依存して電池モジュール11-1~11-7の使用量が異なる。そのため、サーミスタRt-1~Rt-7の各々の計測値に基づき検出される各温度が異なっていると、電池モジュール11-1~11-7の使用量にバラツキが生じ、電池モジュール11-1~11-7の充電量にアンバランスが生じる要因となる。
【0054】
図8の例では、電池モジュール11-1~11-7のうち、上方に配置される順に、温度が高くなり、サーミスタRt-1~Rt-7に流れる電流が大きくなると考えられる。つまり、暖かい空気は上方に向かうので、
図8の例では、上方に配置される電池モジュールの方が、その下方に配置される電池モジュールより温度が高くなると考えられる。このことから、各電池モジュール11-1~11-7に配置されるサーミスタRt-1~Rt-7の中で、最も上方に配置される電池モジュール11-1におけるサーミスタRt-1に流れる電流が最大となり、以下、その下方に配置される電池モジュールにおけるサーミスタ程電流が小さくなり、最も下方に配置される電池モジュール11-7におけるサーミスタRt-7に流れる電流が最小になると考えられる。したがって、電池モジュール11-1~11-7のうち、上方に配置される順に、充電量が低下すると考えられる。
【0055】
そこで、本実施形態では、温度をパラメータとして、スイッチ回路Sb-1~Sb-7をオンする時間を設定することで、各電池モジュール11-1~11-7の充電量のバランスを図るようにしている。
【0056】
サーミスタRt-1~Rt-7を流れる電流は、端子Vrefと端子V-との間の電圧と、抵抗Rb-1~Rb-7の抵抗値と、サーミスタRt-1~Rt-7の抵抗値とから決まる。端子Vrefと端子V-との間の電圧及び抵抗Rb-1~Rb-7の抵抗値は既知である。サーミスタRt-1~Rt-7の抵抗値は、
図9に示すグラフから、温度をパラメータとして求めることができる。
よって、サーミスタRt-1~Rt-7による計測値に基づき電池モジュール11-1~11-7の各々の温度を検出することで、
図9に示すグラフのような温度と抵抗値の関係から、サーミスタRt-1~Rt-7の各々の抵抗値を取得できる。そして、サーミスタRt-1~Rt-7を流れる電流を求めることができる。
サーミスタRt-1~Rt-7を流れる電流が求まれば、サーミスタRt-1~Rt-7を流れる電流とスイッチ回路Sb-1~Sb-7のオン時間との積が電池モジュール11-1~11-7の放電量となるので、この放電量が均一となるように、スイッチ回路Sb-1~Sb-7をオンする時間を決定することができる。
【0057】
電池モジュール11-1~11-7の各々の温度は、例えば、スイッチ回路Sb-1~Sb-7をオンにした直後のサーミスタRt-1~Rt-7の計測値から求めることができる。また、電池モジュール11-1~11-7の各々の温度は、例えば、サーミスタRt-1~Rt-7の前回の計測値から求めることもできる。
【0058】
また、電池モジュール11-1~11-7の各々の温度からサーミスタRt-1~Rt-7の各々を流れる電流を求めるためには、電池モジュールの温度と各温度における抵抗値とを対応付けたテーブル(以下、「抵抗値取得テーブル」とも称される)を予め作成しておけばよい。抵抗値取得テーブルは、例えば、
図9に示したようなグラフから作成可能である。
また、電池モジュール11-1~11-7の各々の温度からスイッチ回路Sb-1~Sb-7の各々の制御時間を決定するために、電池モジュールの温度と各温度におけるスイッチ回路の制御時間とを対応付けたテーブル(以下、「制御時間決定テーブル」とも称される)を予め作成しておいてもよい。制御時間決定テーブルを用いることで、電池モジュール11-1~11-7の各々の温度からスイッチ回路Sb-1~Sb-7の各々の制御時間を直接求めることもできる。
【0059】
ここで、
図10を参照して、蓄電制御システムのスイッチ制御時間について説明する。
図10は、本発明の実施形態に係る蓄電制御システムのスイッチ制御時間の説明図である。
【0060】
図10に示すように、最も上方に配置される電池モジュール11-1の温度TMP1が最も高く、以下、下方に配置される電池モジュールの順に温度が低くなり、最も下方に配置される電池モジュール11-7の温度TMP7が最も低いとする。この場合、温度TMP1~TMP7の各々に応じて、電池モジュール11-1~11-7の各々の放電量が均一となるように、スイッチ回路Sb-1~Sb-7の各々をオンする時間が決定される。その結果、
図10に示すように、サーミスタRt-1のスイッチオン時間T1が最も短く、以下、サーミスタRt-1~Rt-7の順にスイッチオン時間T1~T7が長くなり、サーミスタRt-7のスイッチオン時間T7が最も長くなるように、スイッチ回路Sb-1~Sb-7をオンする時間が設定される。これにより、電池モジュール11-1~11-7の充電量を均一に保つことができる。
【0061】
ここで、
図11を参照して、本発明に係る蓄電制御システムにおける処理の流れについて説明する。
図11は、本発明の実施形態に係る蓄電制御システムの説明に用いるフローチャートである。
【0062】
図11に示すように、まず、マイクロプロセッサ54は、スイッチ回路Sb-1~Sb-7をオンに制御する(ステップS101)。
【0063】
マイクロプロセッサ54は、スイッチ回路Sb-1~Sb-7の各々をオンした直後のサーミスタRt-1~Rt-7の各々の計測値から、電池モジュール11-1~11-7の各々の温度を検出する(ステップS102)。サーミスタRt-1~Rt-7の各々の計測値は、AFE回路素子530-1~530-7の端子Vtempの電圧から取得できる。
【0064】
マイクロプロセッサ54は、検出した各温度に対応するパラメータ情報を確認する(ステップS103)。例えば、マイクロプロセッサ54は、抵抗値取得テーブルや制御時間決定テーブルをパラメータ情報として確認する。
【0065】
マイクロプロセッサ54は、パラメータ情報から、スイッチ回路Sb-1~Sb-7の各々の制御時間を決定する(ステップS104)。
抵抗値取得テーブルを用いる場合、マイクロプロセッサ54は、まず、抵抗値取得テーブルを参照して、ステップS102にて検出した温度に対応するサーミスタRt-1~Rt-7の各々の抵抗値を取得する。次いで、マイクロプロセッサ54は、取得した抵抗値と、端子Vrefと端子V-との間の電圧と、抵抗Rb-1~Rb-7の抵抗値とから、サーミスタRt-1~Rt-7の各々を流れる電流を求める。そして、マイクロプロセッサ54は、電池モジュール11-1~11-7の各々の放電量が同一となるように、スイッチ回路Sb-1~Sb-7の制御時間を決定する。
制御時間決定テーブルを用いる場合、マイクロプロセッサ54は、制御時間決定テーブルを参照して、ステップS102にて検出した温度に対応する制御時間を取得し、スイッチ回路Sb-1~Sb-7の各々の制御時間を決定する。
【0066】
マイクロプロセッサ54は、スイッチ回路Sb-1~Sb-7の各々に関して、ステップS104で決定した制御時間が経過したか否かを判定する(ステップS105)。
制御時間が経過していない場合(ステップS105/No)、マイクロプロセッサ54は、ステップS105の処理を繰り返す。一方、制御時間が経過したスイッチ回路がある場合(ステップS105/Yes)、マイクロプロセッサ54は、処理をステップS106へ進める。
【0067】
処理がステップS106へ進んだ場合、マイクロプロセッサ54は、該当するスイッチ回路をオフにする(ステップS106)。オンになっているスイッチ回路が残っている場合、マイクロプロセッサ54は、残っているスイッチ回路に関して処理をステップS105から繰り返す。制御対象となるスイッチ回路の全てがオフになった場合、マイクロプロセッサ54は、処理を終了する。
【0068】
以上説明したように、本発明の実施形態に係る蓄電制御システムでは、マイクロプロセッサ54(センサ設定部)は、電池モジュール11-1~11-7の各々の温度を検出する。マイクロプロセッサ54は、検出した電池モジュール11-1~11-7の各々の温度に応じて、サーミスタRt-1~Rt-7(電池モジュールの状態を検出する検出素子)の各々の制御時間を決定する。
【0069】
かかる構成により、本発明の実施形態に係る蓄電制御システムでは、マイクロプロセッサ54は、決定した制御時間に応じてスイッチ回路Sb-1~Sb-7の各々のオン又はオフを制御し、各電池モジュール11-1~11-7の充電量のバランスを図ることができる。
よって、本発明の実施形態に係る蓄電制御システムは、温度による蓄電池の充電量のアンバランスを抑制することを可能とする。
【0070】
なお、上述の説明では、電池モジュール11-1~11-7の状態を検出する検出素子としてサーミスタRt-1~Rt-7を用いたが、検出素子は、温度検出する用途の検出素子に限らず、温度により抵抗値が変化する検出素子であれば、どのような検出素子を用いても良い。
【0071】
また、上述した実施形態において、電源システムを
図12に示す構成としてもよい。
図12は、本発明に係る電源システムの他の構成例の概要を示すブロック図である。
図12の電源システム10Aにおいて、ソーラーパネル2、蓄電池ユニット3及びEVスタンド4の各々は、パワーコンディショナー1A、1B、1Cのそれぞれに独立して接続されている。
図12において、パワーコンディショナー1A、1B及び1Cの各々は、分電盤6を介して、ソーラーパネル2、蓄電池ユニット3、EVスタンド4のそれぞれの間における電力(電気エネルギー)の供給または需給を行っている。
図12における、蓄電池ユニット3の構成及び動作については、すでに説明した本実施形態における蓄電池ユニット3と同様である。
【0072】
また、上述した実施形態において、電源システムを
図13に示す構成としてもよい。
図13は、本発明に係る電源システムの他の構成例の概要を示すブロック図である。
図13の電源システム10Bにおいて、ソーラーパネル2及び蓄電池ユニット3の各々はパワーコンディショナー1Dに接続され、EVスタンド4は、パワーコンディショナー1Cに接続されている。
図13において、パワーコンディショナー1C及び1Dの各々は、分電盤6を介して、ソーラーパネル2、蓄電池ユニット3、EVスタンド4のそれぞれの間における電力(電気エネルギー)の供給または需給を行っている。
図13における、蓄電池ユニット3の構成及び動作については、すでに説明した本実施形態における蓄電池ユニット3と同様である。
【0073】
また、上述の説明では、AFE回路素子530-1~530-7の端子Vtempを利用して、サーミスタRtの検出電圧をディジタルデータに変換して、マイクロプロセッサ54に供給する構成について説明したが、サーミスタRtの検出電圧を取得する構成はかかる例に限定されない。例えば、サーミスタRtの検出電圧を取得する他の構成の一例として、
図14Aから
図14Dに示す構成が挙げられる。
【0074】
図14Aから
図14Dは、本発明に係るサーミスタRtの検出電圧を処理する他の構成例を示す図である。
図14Aは、サーミスタRtの検出電圧をAFE53でディジタルデータに変換し、マイクロプロセッサ54に供給している。この構成は、AFE回路素子530-1~530-7の端子VtempからサーミスタRtの検出電圧を取得する構成と同様である。
図14Bは、サーミスタRtの検出電圧をマイクロプロセッサ54に直接入力させている。マイクロプロセッサ54としてアナログ入力ポートを有している場合には、このようにサーミスタRtの検出信号を直接マイクロプロセッサ54に入力して温度検出を行うことができる。
図14Cは、サーミスタRtの検出信号をA/Dコンバータ201でディジタルデータに変換して、マイクロプロセッサ54に入力させている。
図14Dは、サーミスタRtの検出信号をA/Dコンバータ201でディジタルデータに変換し、フォトカプラやディジタルアイソレータのような絶縁素子202を介して、マイクロプロセッサ54に入力させている。
【0075】
上述した実施形態における蓄電制御システムの全部又は一部をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0076】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0077】
3…蓄電池ユニット、11(11-1~11-7)…電池モジュール、12…制御管理モジュール、53…AFE、54…マイクロプロセッサ、Rt-1~Rt-7…サーミスタ、530-1~530-7…AFE回路素子