(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022145226
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】抗体結合ナノ粒子の製造方法、抗体結合ナノ粒子、抗体結合ナノ粒子を製造するためのキット、及び抗体結合ナノ粒子を用いた検出対象物質の測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/543 20060101AFI20220926BHJP
【FI】
G01N33/543 525U
G01N33/543 501J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021046537
(22)【出願日】2021-03-19
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(72)【発明者】
【氏名】小野 雅之
(57)【要約】
【課題】非特異吸着を低減することが可能な、抗体結合ナノ粒子の製造方法、前記製造方法により製造される抗体結合ナノ粒子、前記抗体結合ナノ粒子を製造するためのキット、及び抗体結合ナノ粒子を用いた検出対象物質の測定方法の提供。
【解決手段】(a)ナノ粒子に、抗体及びポリエチレングリコールを結合させる工程と、
(b)前記抗体及び前記ポリエチレングリコールを結合させた前記ナノ粒子に、ブロッキング剤を結合させる工程と、を含む、抗体結合ナノ粒子の製造方法。また、抗体、ポリエチレングリコール、及びブロッキング剤が結合された、抗体結合ナノ粒子。また、ナノ粒子と、ポリエチレングリコールと、ブロッキング剤と、を含む、前記抗体結合ナノ粒子を製造するためのキット。また、前記抗体結合ナノ粒子を用いた検出対象物質の測定方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ナノ粒子に、抗体及びポリエチレングリコールを結合させる工程と、
(b)前記抗体及び前記ポリエチレングリコールを結合させた前記ナノ粒子に、ブロッキング剤を結合させる工程と、
を含む、抗体結合ナノ粒子の製造方法。
【請求項2】
前記(a)の工程が、前記ナノ粒子に前記抗体を結合させる反応と、前記ナノ粒子に前記ポリエチレングリコールを結合させる反応とを同時に行う工程であり、
前記ナノ粒子の表面と前記抗体とが互いに逆の電位となるpHを有し、且つ縮合剤を含有する緩衝液中で、前記ナノ粒子に、前記抗体及び前記ポリエチレングリコールを結合させることを含む、
請求項1に記載の抗体結合ナノ粒子の製造方法。
【請求項3】
前記(b)の工程が、前記ブロッキング剤を含有する緩衝液中で、前記抗体及び前記ポリエチレングリコールを結合させた前記ナノ粒子を、30~45℃の温度条件下で、40~100時間インキュベーションすることを含む、
請求項1又は2に記載の抗体結合ナノ粒子の製造方法。
【請求項4】
抗体とポリエチレングリコールとが結合したナノ粒子に、ブロッキング剤が結合された、抗体結合ナノ粒子。
【請求項5】
ナノ粒子と、
抗体と、
ポリエチレングリコールと、
ブロッキング剤と、
を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法により抗体結合ナノ粒子を製造するためのキット。
【請求項6】
請求項4に記載の抗体結合ナノ粒子と、前記抗体結合ナノ粒子に結合された前記抗体と特異的に結合する検出対象物質とを接触させる工程と、
前記抗体結合ナノ粒子に結合した前記検出対象物質を測定する工程と、
を含む、抗体結合ナノ粒子を用いた検出対象物質の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗体結合ナノ粒子の製造方法、抗体結合ナノ粒子、抗体結合ナノ粒子を製造するためのキット、及び抗体結合ナノ粒子を用いた検出対象物質の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫学的に検出対象を捕捉し、標識する系(例えば、サンドイッチイムノアッセイなど)において、低濃度の検出対象を高精度に検出するためには、非特異吸着を低減する必要がある。抗体を結合させた微粒子(ビーズ)を標識体として使用する場合、抗体(タンパク質)が吸着しやすいという要素と非特異吸着が少ないという要素は相反する。そのため、一般的に、ビーズ表面に抗体を結合させた後、ビーズ表面を非特異吸着の生じない分子で覆う(マスキングする)ことで、非特異吸着を低減している。ビーズ表面のマスキングには、一般的に、アミノエタノールなど低分子化合物が用いられることが多い。
【0003】
近年、分析機器及び試薬などの改良により、分析の高精度化及び高感度化が進んでいる。それにより、非常に少ない量の検出対象物質の差を検出できるようになってきた(特許文献1)。そのような高精度な分析機器を使用では、標識体であるビーズ表面への非特異吸着の低減が課題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
低分子化合物を用いる従来のマスキング法では、ビーズ表面に対する非特異吸着を十分に低減できていなかった。特に、低濃度の検出対象物質を高精度に分析するためには、標識体であるビーズ表面に対する非特異吸着をさらに低減する手法が求められる。
【0006】
そこで、本発明は、非特異吸着を低減することが可能な、抗体結合ナノ粒子の製造方法、前記製造方法により製造される抗体結合ナノ粒子、前記抗体結合ナノ粒子を製造するためのキット、及び抗体結合ナノ粒子を用いた検出対象物質の測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の態様を含む。
[1](a)ナノ粒子に、抗体及びポリエチレングリコールを結合させる工程と、(b)前記抗体及び前記ポリエチレングリコールを結合させた前記ナノ粒子に、ブロッキング剤を結合させる工程と、を含む、抗体結合ナノ粒子の製造方法。
[2]前記(a)の工程が、前記ナノ粒子に前記抗体を結合させる反応と、前記ナノ粒子に前記ポリエチレングリコールを結合させる反応とを同時に行う工程であり、前記ナノ粒子の表面と前記抗体とが互いに逆の電位となるpHを有し、且つ縮合剤を含有する緩衝液中で、前記ナノ粒子に、前記抗体及び前記ポリエチレングリコールを結合させることを含む、[1]に記載の抗体結合ナノ粒子の製造方法。
[3]前記(b)の工程が、前記ブロッキング剤を含有する緩衝液中で、前記抗体及び前記ポリエチレングリコールを結合させた前記ナノ粒子を、30~45℃の温度条件下で、40~100時間インキュベーションすることを含む、[1]又は[2]に記載の抗体結合ナノ粒子の製造方法。
[4]抗体とポリエチレングリコールとが結合したナノ粒子に、ブロッキング剤が結合された、抗体結合ナノ粒子。
[5]ナノ粒子と、抗体と、ポリエチレングリコールと、ブロッキング剤と、を含む、[1]~[3]のいずれか1つに記載の製造方法により抗体結合ナノ粒子を製造するためのキット。
[6][4]に記載の抗体結合ナノ粒子と、前記抗体結合ナノ粒子に結合された前記抗体と特異的に結合する検出対象物質とを接触させる工程と、前記抗体結合ナノ粒子に結合した前記検出対象物質を測定する工程と、を含む、抗体結合ナノ粒子を用いた検出対象物質の測定方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、非特異吸着を低減することが可能な、抗体結合ナノ粒子の製造方法、前記製造方法により製造される抗体結合ナノ粒子、前記抗体結合ナノ粒子を製造するためのキット、及び抗体結合ナノ粒子を用いた検出対象物質の測定方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる抗体結合ナノ粒子の製造方法の一例を示す模式図である。
【
図2】固相担体の一例を示す上面図である。エクソソーム計数装置で用いられる分析用基板の例である。
【
図3】
図2の固相担体に抗体結合ナノ粒子が捕捉されている状態を拡大して示す模式図である。
【
図4】
図2の固相担体上で、抗体結合ナノ粒子がエクソソームと特異的に結合している状態を拡大して示す模式図である。
【
図5A】結腸癌細胞株HCT116の培養上清の希釈系列において、実施例1、比較例1-1、及び比較例2-1の抗CD9抗体結合ナノ粒子を用いて、ExoCounter(登録商標)でエクソソームをカウントした結果を示す。
【
図5B】
図5Aのブランク(Dilution factor=0)におけるエクソソームのカウント値を示す。
【
図6A】結腸癌細胞株HCT116の培養上清の希釈系列において、実施例2、比較例1-2、及び比較例2-2の抗CD63抗体結合ナノ粒子を用いて、ExoCounter(登録商標)でエクソソームをカウントした結果を示す。
【
図6B】
図6Aのブランク(Dilution factor=0)におけるエクソソームのカウント値を示す。
【
図7A】乳癌細胞株KPL4の培養上清の希釈系列において、実施例3、比較例1-3、及び比較例2-3の抗Her2抗体結合ナノ粒子を用いて、ExoCounter(登録商標)でエクソソームをカウントした結果を示す。
【
図7B】
図7Aのブランク(Dilution factor=0)におけるエクソソームのカウント値を示す。
【
図8A】膵癌細胞株MiaPaca2の培養上清の希釈系列において、実施例4、比較例1-4、及び比較例2-4の抗CD147抗体結合ナノ粒子を用いて、ExoCounter(登録商標)でエクソソームをカウントした結果を示す。
【
図8B】
図8Aのブランク(Dilution factor=0)におけるエクソソームのカウント値を示す。
【
図9】実施例及び比較例におけるS/N値を比較した結果を示す。S:Dilution factor=1におけるカウント値。N:Dilution factor=0におけるカウント値。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、場合により図面を参照しつつ、本発明の実施形態について詳細に説明する。図面中、同一又は相当部分には同一又は対応する符号を付し、重複する説明は省略する。各図における寸法比は、説明のため誇張している部分があり、必ずしも実際の寸法比とは一致しない。
【0011】
「抗体」とは、抗原結合活性を有する免疫グロブリンを意味する。抗体は、抗原結合活性を有していれば、インタクトな抗体である必要はなく、抗原結合断片であってもよい。本明細書において、「抗体」という用語は、抗原結合断片を包含する。「抗原結合断片」とは、抗体の一部を含むポリペプチドであって、元の抗体の抗原結合性を維持しているポリペプチドである。抗原結合断片は、元の抗体の6つの相補性決定領域(complementarity determining region:CDR)を全て含むものが好ましい。すなわち、重鎖可変領域のCDR1、CDR2、CDR3、並びに軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、CDR3を全て含むことが好ましい。抗原結合断片としては、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、可変領域断片(Fv)、ジスルフィド結合Fv、一本鎖Fv(scFv)、sc(Fv)2等が挙げられる。
【0012】
抗体は、いずれの生物に由来するものであってもよい。抗体が由来する生物としては、例えば、哺乳類(ヒト、マウス、ラット、ウサギ、ウマ、ウシ、ブタ、サル、イヌ等)、鳥類(ニワトリ、ダチョウ)等が挙げられるが、これらに限定されない。
抗体は、免疫グロブリンのいずれのクラス及びサブクラスであってもよい。また、抗体は、モノクローナル抗体であってもよく、ポリクローナル抗体であってもよいが、モノクローナル抗体が好ましい。
抗体は、免疫法、ハイブリドーマ法、ファージディスプレイ法等の公知の方法により作製することができる。
【0013】
「特異的に結合する」とは、対象とする物質に高い結合性を有し、他の物質にはほとんど結合性を有しないことを意味する。
【0014】
[抗体結合ナノ粒子の製造方法]
一実施形態において、本発明は、抗体結合ナノ粒子の製造方法を提供する。本実施形態の製造方法は、(a)ナノ粒子に、抗体及びポリエチレングリコールを結合させる工程と、(b)前記抗体及び前記ポリエチレングリコールを結合させた前記ナノ粒子に、ブロッキング剤を結合させる工程と、を含む。
【0015】
図1は、本実施形態の抗体結合ナノ粒子の製造方法の一例を示す模式図である。まず、カルボキシ基修飾ナノ粒子10に、抗体20及びポリエチレングリコール30を結合させる(
図1(A)及び(B);工程(a))。次いで、ブロッキング剤40を結合させる(
図1(C);工程(b))。このようにして、抗体20、ポリエチレングリコール30、及びブロッキング剤40が結合した抗体結合ナノ粒子100を製造することができる。
【0016】
<工程(a)>
工程(a)では、ナノ粒子に、抗体及びポリエチレングリコールを結合させる。
【0017】
「ナノ粒子」とは、ナノメートルオーダー(1000nm未満)の平均一次粒子径を有する粒子を意味する。ナノ粒子の平均一次粒子径は、本実施形態の製造方法により製造される抗体結合ナノ粒子の用途に応じて、適宜選択することができる。ナノ粒子の平均一次粒子径としては、例えば、10~1000nm、50~500nm、100~300nm、又は150~200nm等が挙げられる。
【0018】
ナノ粒子の材質は、特に限定されない。ナノ粒子の材質としては、例えば、ポリスチレン、グリシジルメタクリレート等の樹脂;鉄、金、銀等の金属;ジルコニア、チタニア、酸化鉄等の金属酸化物;フェライト等の磁性材料等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
ナノ粒子は、抗体が結合しやすいように、表面修飾されていてもよい。例えば、
図1(A)に示すナノ粒子1は、表面がカルボキシ基修飾されており、カルボキシ基修飾ナノ粒子10となっている。カルボキシ基は、適切な縮合剤の存在下で、抗体に含まれるアミノ基と反応し、アミド結合を形成する。これにより、抗体をナノ粒子に結合させることができる。
ナノ粒子の表面修飾に用いる官能基は、抗体を結合可能なものであれば、特に限定されない。表面修飾に使用可能な官能基としては、例えば、カルボキシ基、アミノ基、スクシンイミド基等が挙げられる。
これらの官能基によるナノ粒子の表面修飾は、公知の方法で行うことができる。また、市販の表面修飾ナノ粒子を用いてもよい。市販のナノ粒子としては、例えば、多摩川精機製のFG beadsシリーズ(COOH beads、NH
2 beads、NHS beads)等が挙げられる。
ナノ粒子に結合させるタンパク質に応じて、ナノ粒子表面の修飾官能基を適宜選定することができる。ナノ粒子表面に抗体を結合させる場合においては、ナノ粒子の表面は、カルボキシ基で修飾されていることが好ましい。
【0020】
抗体は、本実施形態の製造方法により製造される抗体結合ナノ粒子の用途に応じて、適宜選択することができる。例えば、抗体結合ナノ粒子が、エクソソーム又は細胞検出用である場合、検出対象のエクソソーム又は細胞で特異的に発現する膜タンパク質に特異的に結合する抗体を用いることができる。あるいは、抗体結合ナノ粒子が、エクソソーム検出用である場合、エクソソームがユビキタスに有する膜タンパク質(以下、「汎エクソソーム膜タンパク質」ともいう)に特異的に結合する抗体を用いてもよい。「エクソソームがユビキタスに有する」とは、広範な種類のエクソソームが有していることをいう。汎エクソソーム膜タンパク質としては、例えば、CD9、CD63、及びCD81等が挙げられる。検出対象物質がエクソソームである場合、CD9、CD63、又はCD81に対して特異的に結合する抗体を用いてもよい。
【0021】
また、抗体結合ナノ粒子が、癌細胞又は癌細胞から放出されるエクソソームの検出用である場合、検出対象の癌細胞又はエクソソームで特異的に発現する膜タンパク質(以下、「癌抗原」ともいう)に特異的に結合する抗体を用いてもよい。癌抗原としては、例えば、Her2、CD147、MUC1、CEA、メソテリン、EGFR、EGFRvIII、MAGE、NY-ESO-1、PSMA、PSA、CD19、VEGFR1、VEGFR2等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
ポリエチレングリコールは、特に限定されないが、分子量(Mw:重量平均分子量)が1000~5000程度のものを用いることが好ましい。ポリエチレングリコールのMwは、1500~3000が好ましく、1500~2500がより好ましく、1800~2200がさらに好ましい。一例として、ポリエチレングリコールのMwは、2000である。ポリエチレングリコールのMwが、前記好ましい範囲内であると、ナノ粒子に対して、効率よくマスキングを行うことができる。前記Mwは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリスチレン換算の重量平均分子量を用いることができる。
【0023】
ポリエチレングリコールは、ナノ粒子に対する結合性を高めるために、末端修飾されていてもよい。末端修飾の種類は、ナノ粒子の表面修飾に応じて適宜選択することができる。例えば、ナノ粒子がカルボキシ基修飾されている場合、ポリエチレングリコールは、末端にアミノ基を有するようにアミノ基修飾されていてもよい。例えば、ポリエチレングリコールは、一方の末端にモノアミン又はオリゴアミンを有するように修飾されていてもよい。
【0024】
ナノ粒子に対する抗体及びポリエチレングリコールの結合は、同時に行ってもよく、別々に行ってもよい。ナノ粒子に抗体を結合させる反応と、ナノ粒子にポリエチレングリコールを結合させる反応とを別々に行う場合、最初に、ナノ粒子に抗体を結合させる反応を行った後、ナノ粒子にポリエチレングリコールを結合させる反応を行うことが好ましい。まず、ナノ粒子に対する抗体の結合反応を行い、次いでポリエチレングリコールを結合させることにより、抗体が結合しなかったナノ粒子表面の修飾基にポリエチレングリコールを結合させて、当該修飾基のマスキングを行うことができる。
【0025】
ナノ粒子と、抗体及びポリエチレングリコールとの結合反応は、適切な縮合剤の存在下で行うことができる。縮合剤としては、脱水縮合反応に用いられるものを特に制限なく用いることができる。縮合剤としては、例えば、カルボジイミド系縮合剤が挙げられる。カルボジイミド系縮合剤としては、例えば、1-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-3-エチルカルボジイミド(EDC)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC・HCl)、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)等が挙げられるが、これらに限定されない。中でも、縮合剤は、EDC・HClが好ましい。
【0026】
ナノ粒子と、抗体との結合反応は、結合反応を効率よく進行させるために、ナノ粒子の表面と抗体とが互いに逆の電位となるpH条件下で行うことが好ましい。例えば、カルボキシ基修飾されたナノ粒子の表面はマイナスに荷電しているため、抗体がプラスに荷電するようなpH条件下で反応を行う。そのようなpH条件としては、抗体の等電点よりも低いpH条件が挙げられる。抗体の等電点は、pH5~6程度であることから、例えば、pH5以下のpH条件を用いることができる。また、抗体の変性を抑制する観点から、pH3.5以上が好ましく、pH4以上がより好ましい。ナノ粒子と抗体との結合反応時のpH条件としては、例えば、pH3.5~5、pH4~5、又はpH4.2~4.8等が挙げられる。一例として、pH4.5を用いることができる。
【0027】
ナノ粒子に抗体を結合させる反応と、ナノ粒子にポリエチレングリコールを結合させる反応とは、ナノ粒子の表面と前記抗体とが互いに逆の電位となるpHを有し、且つ縮合剤を含有する緩衝液中で、同時に行うことができる。結合反応に用いる緩衝液は、前記pH条件を達成できるものであれば、特に限定されないが、酢酸バッファーが好ましい。酢酸バッファーは、酢酸ナトリウムを酢酸及び純水の混合溶媒に溶解することにより、作製することができる。
【0028】
ナノ粒子に抗体を結合させる反応、及びナノ粒子にポリエチレングリコールを結合させる反応は、例えば、20~40℃の温度条件で行うことができる。反応時間は、結合反応が十分に進行する時間であれば、特に限定されない。反応時間としては、例えば、30~300分間、60~250分間、又は120~200分間が挙げられる。
【0029】
本工程により、抗体及びポリエチレングリコールが結合したナノ粒子(
図1(B)参照)を得ることができる。
【0030】
<工程(b)>
工程(b)では、前記抗体及び前記ポリエチレングリコールを結合させた前記ナノ粒子に、ブロッキング剤を結合させる。
【0031】
「ブロッキング剤」とは、ナノ粒子に対する非特異吸着を抑制するために、ナノ粒子に結合させる化合物を意味する。ブロッキング剤は、免疫化学的検出法において、ブロッキング剤として通常用いられているものを用いることができる。ナノ粒子が表面修飾されている場合、ブロッキング剤は、ナノ粒子表面の修飾基と反応可能なものが好ましい。例えば、ナノ粒子がカルボキシ基修飾されている場合、ブロッキング剤としては、カルボキシ基反応性基を含む化合物を用いることができる。カルボキシ基反応性基としては、例えば、アミノ基、ヒドロキシ基等が挙げられる。
ナノ粒子がカルボキシ基修飾されている場合、ブロッキング剤としては、例えば、カゼイン、アルブミン(例えば、ウシ血清アルブミン(BSA))、コラーゲン、ゼラチン等のタンパク質を用いることができる。中でも、ブロッキング剤は、カゼインが好ましい。
ブロッキング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
ナノ粒子に、ブロッキング剤を結合させる反応は、ブロッキング剤を含む緩衝液中で、前記工程(a)後のナノ粒子を、インキュベーションすることにより行うことができる。インキュベーションに用いる緩衝液は、特に限定されず、免疫化学的検出法において、ブロッキングに通常用いられる緩衝液を用いることができる。緩衝液としては、例えば、PBS、PBS-T、トリス緩衝液、HEPES緩衝液等が挙げられるが、これらに限定されない。緩衝液中のブロッキング剤の含有量は、例えば、0.01~5%(w/v)程度とすることができる。緩衝液にはTween-20などの界面活性剤やEDTAなどのキレート剤が添加されていてもよい。
【0033】
インキュベーションの条件は、ブロッキング処理に通常用いられる条件を使用することができる。インキュベーションの温度条件としては、例えば、30~45℃、30~40℃、又は35~40℃が挙げられる。一例として、インキュベーション温度は、37℃である。インキュベーション時間は、ナノ粒子に対するブロッキング剤の結合反応が十分に進行する時間であればよい。インキュベーション時間としては、例えば、40~100時間、50~90時間、又は60~80時間が挙げられる。
【0034】
工程(b)により、抗体、ポリエチレングリコール、及びブロッキング剤が結合した抗体結合ナノ粒子(
図1(C)参照)を得ることができる。前記抗体結合ナノ粒子では、工程(a)で抗体及びポリエチレングリコールが未結合であったナノ粒子表面の修飾基に、ブロッキング剤が結合している。そのため、工程(a)後のナノ粒子と比較して、ナノ粒子表面の未反応修飾基が低減されている。そのため、ナノ粒子表面に対する非特異吸着が低減される。
【0035】
<任意工程>
本実施形態にかかる製造方法は、上記工程(a)及び(b)に加えて、任意工程を含んでいてもよい。任意工程は、特に限定されないが、例えば、工程(a)又は工程(b)の後に、ナノ粒子を洗浄する工程が挙げられる。例えば、工程(a)の後、工程(b)の前に、洗浄液でナノ粒子を洗浄してもよい。洗浄液は、特に限定されず、免疫化学的検出法において、通常用いられる洗浄液を用いることができる。洗浄液としては、例えば、工程(b)のブロッキング処理に用いるブロッキング剤含有緩衝液、BS、PBS-T、トリス緩衝液、HEPES緩衝液、純水等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
本実施形態の製造方法により得られた抗体結合ナノ粒子は、工程(a)において抗体及びポリエチレングリコールをナノ粒子に結合させることにより、抗体が未結合のナノ粒子表面の修飾基をポリエチレングリコールでマスキングすることができる。さらに、工程(b)において、抗体及びポリエチレングリコールが未結合のナノ粒子表面の修飾基にブロッキング剤を結合することにより、未結合の修飾基を低減することができる。そのため、非特異吸着が低減された抗体結合ナノ粒子を得ることができる。
【0037】
[抗体結合ナノ粒子]
一実施形態において、本発明は、抗体とポリエチレングリコールとが結合したナノ粒子に、ブロッキング剤が結合された、抗体結合ナノ粒子を提供する。
【0038】
本実施形態にかかる抗体結合ナノ粒子は、前記実施形態の製造方法により得ることができる。
図1(C)は、本実施形態にかかる抗体結合ナノ粒子の一例を示す模式図である。
図1(C)に示す抗体結合ナノ粒子100では、ナノ粒子1に、抗体20、ポリエチレングリコール30、及びブロッキング剤40が結合している。
【0039】
ナノ粒子、抗体、ポリエチレングリコール、及びブロッキング剤は、上記[抗体結合ナノ粒子の製造方法]の項で挙げたものと同様のものを用いることができる。
【0040】
本実施形態にかかる抗体結合ナノ粒子は、抗体未結合修飾基が、ポリエチレングリコール及びブロッキング剤によりマスキングされている。そのため、非特異吸着を低減することができる。したがって、検出対象物質の濃度が低い場合であっても、感度よく検出対象物質を検出することができる。
【0041】
[キット]
一実施形態において、本発明は、前記実施形態にかかる抗体結合ナノ粒子を製造するためのキットを提供する。本実施形態にかかるキットは、ナノ粒子と、抗体と、ポリエチレングリコールと、ブロッキング剤と、を含む。
【0042】
ナノ粒子、抗体、ポリエチレングリコール、ブロッキング剤は、上記[抗体結合ナノ粒子の製造方法]の項で挙げたものと同様のものを用いることができる。ナノ粒子は、カルボキシ基等で表面修飾されたものが好ましい。
本実施形態にかかるキットは、前記実施形態にかかる製造方法により、抗体結合ナノ粒子を製造するために用いることができる。
【0043】
<任意の構成>
本実施形態のキットは、ナノ粒子、抗体、ポリエチレングリコール、及びブロッキング剤に加えて、任意の構成を含んでいてもよい。任意の構成としては、例えば、洗浄液、各種緩衝液等の各種試薬類、縮合剤、及び使用説明書等が挙げられる。緩衝液としては、前記工程(a)で用いる緩衝液(例えば、酢酸バッファー)、前記工程(b)で用いる緩衝液等が挙げられる。
【0044】
(捕捉用抗体が結合された固相担体)
本実施形態のキットは、製造された抗体結合ナノ粒子を使用するための構成をさらに含んでいてもよい。例えば、捕捉用抗体が結合された固相担体をさらに含んでいてもよい。
【0045】
「捕捉用抗体」とは、免疫化学的検出法において、試料中の検出対象物質を固相担体上に捕捉するために使用される抗体である。
【0046】
捕捉用抗体は、検出対象物質に対して特異的に結合する抗体を用いる。捕捉用抗体は、抗体結合ナノ粒子に用いる抗体(以下、「標識抗体」ともいう)と同じであってもよく、異なっていてもよい。例えば、検出対象物質が、エクソソームである場合、標識抗体及び捕捉用抗体は、同じ汎エクソソーム膜タンパク質(例えば、CD9)に特異的に結合する抗体であってもよい。あるいは、標識抗体及び捕捉用抗体は、互いに異なる汎エクソソーム膜タンパク質(例えば、CD9とCD63)に結合する抗体であってもよい。あるいは、捕捉用抗体は、汎エクソソーム膜タンパク質(例えば、CD9)に特異的に結合する抗体であり、標識抗体は、検出対象のエクソソーム(例えば、癌細胞特異的エクソソーム)に特異的に発現する膜タンパク質(例えば、Her2、CD147等の癌抗原)に特異的に結合する抗体であってもよい。
【0047】
捕捉用抗体が固定される固相担体は、特に限定されず、免疫化学的検出法に通常用いられる任意の固相担体を用いることができる。固相担体としては、例えば、ウェルプレート、基板、メンブレン、免疫化学的検出装置に付属する反応チャンバ等が挙げられる。
【0048】
固相担体の材質は、特に限定されず、固相担体の種類に応じて適宜選択することができる。固相担体の材質としては、例えば、ポリスチレン、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、シクロオレフィンポリマー、ポリカーボネート等の樹脂;ガラス;金、鉄、ジルコニア等の金属又は酸化金属等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
固相担体への捕捉用抗体の固定方法は、固相抗体の種類に応じて、公知の方法を用いて行うことができる。例えば、捕捉用抗体を固定する面を、表面疎水的相互作用によりタンパク質が物理吸着されるように表面加工してもよい。また、アビジン-ビオチン結合を利用してもよい。例えば、アビジン修飾した固相担体に、ビオチン修飾した捕捉用抗体を結合させてもよい。
なお、本実施形態のキットは、捕捉用抗体が結合される前の固相担体を含んでいてもよい。この場合、キットの使用者が、固相担体に任意の抗体を結合させることができる。
【0050】
捕捉用抗体が結合された固相担体をさらに含むキットは、抗体結合ナノ粒子に含まれる抗体及び捕捉用抗体が特異的に結合する物質を検出するために用いることができる。したがって、捕捉用抗体が結合された固相担体をさらに含むキットは、検出対象物質の検出キットとして使用可能である。
【0051】
≪固相担体の具体例≫
図2は、固相担体の一例を示す。
図2に示す固相担体201は、ExoCounter(登録商標)等のエクソソーム計数装置に用いる分析用基板の一例である。
【0052】
固相担体201は、例えば、ブルーレイディスク(BD)、DVD、コンパクトディスク(CD)等の光ディスクと同等の円板形状を有する。固相担体201の中心部には位置決め孔202が形成されている。固相担体201は、例えば、一般的に光ディスクに用いられるポリカーボネート樹脂やシクロオレフィンポリマー等の樹脂材料で形成されている。固相担体201は、他の形態であってもよく、所定の規格に準拠した光ディスクを用いることもできる。
【0053】
図3は、固相担体201の表面の拡大図である。固相担体201の表面には、凸部203と凹部204とが半径方向に交互に配置されたトラック領域205が形成されている。凸部203及び凹部204は、固相担体201の内周部から外周部に向かってスパイラル状に形成されている。凹部204(凸部203)の半径方向のピッチであるトラックピッチWは例えば320nmである。固相担体201のトラック領域205上には反応領域210が形成されている(
図2参照)。
図2では、固相担体201の中心Caに対して同一円周Cb上に各反応領域210の中心がそれぞれ位置するように8つの反応領域210が等間隔に形成されているが、反応領域210の数や形成位置はこれに限定されるものではない。
【0054】
図4は、トラック領域205に形成された反応領域210の拡大図である。トラック領域205上の所定の領域(反応領域210が形成される領域)には、捕捉用抗体212が固定されている。
【0055】
≪抗体結合ナノ粒子の使用例≫
抗体結合ナノ粒子及び上記固相担体201を用いて、ExoCounter(登録商標)等のエクソソーム計数装置により、エクソソームを計数する方法について説明する。以下の例では、検出対象物質としてエクソソームEを計数するものとする。
【0056】
まず、トラック領域205上の反応領域210に、試料を供給し、反応領域210に固定された捕捉用抗体212と、試料中のエクソソームEとの結合反応を行う。
試料は、特に限定されず、任意の試料を用いることができる。試料は、エクソソームEの測定対象となる液体試料であってもよい。試料は、例えば、体液試料(血液、血清、血漿、唾液、尿、涙、汗、乳汁、鼻汁、精液、胸水、消化管分泌液、脳脊髄液、組織間液、及びリンパ液等)、細胞培養上清等が挙げられるが、これらに限定されない。
結合反応は、反応領域210に試料を供給した状態で、所定時間インキュベートすることにより行うことができる。インキュベート時間は、捕捉用抗体に、試料中のエクソソームEが結合するのに十分な時間であればよい。インキュベート時間としては、例えば、30分以上、1~10時間、2~6時間、2~4時間、又は2~3時間等が挙げられる。インキュベート温度としては、例えば、10~40℃、20~40℃、又は30~40℃等が挙げられる。捕捉用抗体212とエクソソームEとの反応効率を向上させるために、インキュベート中、固相担体201を緩やかに振盪してもよい。
試料にエクソソームEが含まれている場合には、結合反応により、捕捉用抗体212に試料中のエクソソーEが捕捉される(
図4参照)。
【0057】
結合反応後、適宜、洗浄液を用いて固相担体201の洗浄を行ってもよい。固相担体201を洗浄することにより、捕捉用抗体212に結合していない物質を除去することができる。洗浄液は、特に限定されず、免疫化学的検出法で通常用いられる洗浄液を特に制限なく使用することができる。洗浄液としては、例えば、PBS、トリス緩衝液、HEPES緩衝液等の緩衝液;前記緩衝液にTween20等の界面活性剤を添加したもの;及び純水等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
反応領域210に試料を供給する前に、反応領域210のブロッキング処理を行ってもよい。ブロッキング処理は、ブロッキング液を、反応領域210に供給し、インキュベーションすることにより行うことができる。ブロッキング液は、特に限定されず、免疫化学的検出法に通常用いられるものを、特に制限なく使用することができる。ブロッキング液としては、例えば、1~5%程度のスキムミルク、カゼイン、若しくはウシ血清アルブミン(BSA)を含む緩衝液等が挙げられる。ブロッキング液用の緩衝液は、特に限定されないが、例えば、PBS、PBS-T、トリス緩衝液、HEPES緩衝液等が挙げられる。
インキュベート温度としては、例えば、10~40℃、20~40℃、又は30~40℃等が挙げられる。インキュベーション時間としては、10~180分間、20~120分間、20~100分間、又は30~60分間等が挙げられる。反応領域210のブロッキング処理を行うことにより、反応領域210が形成されるトラック領域205に対する非特異吸着を低減することができる。
【0059】
次に、抗体結合ナノ粒子100を含む緩衝液を、トラック領域205上の反応領域210に供給し、エクソソームEと抗体結合ナノ粒子100との結合反応を行う。抗体結合ナノ粒子100を懸濁する緩衝液は、特に限定されず、免疫化学的検出方法に通常用いられるものを、特に制限なく使用することができる。緩衝液としては、例えば、PBS、トリス緩衝液、HEPES緩衝液等が挙げられる。
結合反応は、反応領域210に抗体結合ナノ粒子100を含む緩衝液を供給した状態で、所定時間インキュベートすることにより行うことができる。インキュベート時間は、エクソソームEに、抗体結合ナノ粒子100中の抗体20が結合するのに十分な時間であればよい。インキュベート時間としては、例えば、30分以上、1~10時間、1~6時間、1~4時間、又は1~3時間、1~2時間等が挙げられる。インキュベート温度としては、例えば、10~40℃、20~40℃、又は30~40℃等が挙げられる。抗体20とエクソソームEとの反応効率を向上させるために、インキュベート中、固相担体201を緩やかに振盪してもよい。
結合反応により、捕捉用抗体212に捕捉されたエクソソーEに、抗体20を介して抗体結合ナノ粒子100が結合する(
図4参照)。これにより、抗体結合ナノ粒子100は、トラック領域205の凹部204に捕捉される。
【0060】
固相担体201の反応領域210に捕捉された抗体結合ナノ粒子100は、光ピックアップを備えた計数装置(ExoCounter(登録商標)等)を用いて計数することができる。光ピックアップは、対物レンズ240を備えている。光ピックアップは、固相担体201に向けてレーザ光240aを照射する。レーザ光40aは、対物レンズ41によって反応領域210が形成されている側の面に集光される。レーザ光40aの波長は、例えば、405nm程度である。
光ピックアップは、固相担体201からの反射光を受光し、反射光の受光レベルを検出して受光レベル信号を生成し、CPU等を備えた制御部へ出力する。制御部では、光ピックアップから出力された受光レベル信号から抗体結合ナノ粒子100の検出信号を抽出する。固相担体201は、一定の線速度Lvで駆動され、レーザ光240aは凹部204に沿って走査される。光ピックアップは、凹部204に沿って、抗体結合ナノ粒子100の検出信号を抽出することにより、反応領域210に捕捉されている抗体結合ナノ粒子100をカウントする。
【0061】
このような機構を備えた測定装置としては、例えば、特開2017-207289号公報に記載の計数装置が挙げられる。
【0062】
上記実施形態の抗体結合ナノ粒子の使用方法は、上記に限定されず、ELISA、免疫沈降法、タンパク質精製、細胞分離、細胞計数等の種々の免疫学的方法に使用することができる。
【0063】
[抗体結合ナノ粒子を用いた検出対象物質の測定方法]
一実施形態において、本発明は、前記実施形態の抗体結合ナノ粒子を用いた検出対象物質の測定方法を提供する。本実施形態の測定方法は、前記抗体結合ナノ粒子と、前記抗体結合ナノ粒子に結合された前記抗体と特異的に結合する検出対象物質とを接触させる工程(以下、「工程(i)」ともいう)と、前記抗体結合ナノ粒子に結合した前記検出対象物質を測定する工程(以下、「工程(ii)」ともいう)と、を含む。
【0064】
<工程(i)>
工程(i)では、前記抗体結合ナノ粒子と、前記抗体結合ナノ粒子に結合された抗体と特異的に結合する検出対象物質とを接触させる。
【0065】
抗体結合ナノ粒子は、前記実施形態の抗体結合ナノ粒子である。
特定の抗体と特異的に結合する物質は、好ましくは、前記特定の抗体に高い結合性を有するが、他の生体分子にはほとんど結合性を有しない。特定の抗体と特異的に結合する物質は、前記特定の抗体の抗原であるともいえる。
【0066】
検出対象物質は、本実施形態の測定方法の測定対象となる物質を意味する。検出対象物質は、特に限定されず、抗原抗体反応が生じる物質であればよい。検出対象物質としては、例えば、タンパク質、ペプチド、糖鎖、及び脂質、並びに前記化合物を発現する細胞、ウイルス及び細胞外小胞等が挙げられるが、これらに限定されない。細胞外小胞は、細胞が放出する小胞である。細胞外小胞の大きさは直径30nm~1μm程度である。細胞外小胞としては、エクソソーム、アポトーシス小体、マイクロベシクル等が挙げられる。
【0067】
検出対象物質がエクソソームである場合、抗体結合ナノ粒子に結合された抗体は、汎エクソソーム膜タンパク質に特異的に結合する抗体であってもよい。あるいは、検出対象物質であるエクソソームが特異的に発現する膜タンパク質であってもよい。
【0068】
抗体結合ナノ粒子と、検出対象物質との接触は、公知の方法で行うことができる。例えば、検出対象物質を含む試料と、抗体結合ナノ粒子とを混合し、インキュベートする方法が挙げられる。検出対象物質を含む試料は、特に限定されず、検出対象物質の種類に応じて適宜選択可能である。検出対象物質が生体物質である場合、検出対象物質を含む試料としては、例えば、体液試料、細胞培養上清等が挙げられる。
【0069】
インキュベーション条件は、検出対象物質の種類に応じて、適宜設定することができる。インキュベーション条件としては、例えば、上記≪抗体結合ナノ粒子の使用例≫の項で挙げた条件と同様の条件が挙げられる。
【0070】
抗体結合物質と検出対象物質との接触は、検出対象物質が固相担体に捕捉された状態で行ってもよい。固相担体への検出対象物質の捕捉は、検出対象物質に特的結合を行う捕捉用抗体を結合させた固相担体に、検出対象物質を接触させて、インキュベーションすることにより行うことができる。
インキュベーション条件は、検出対象物質の種類に応じて、適宜設定することができる。インキュベーション条件としては、例えば、上記≪抗体結合ナノ粒子の使用例≫の項で挙げた条件と同様の条件が挙げられる。
【0071】
固相担体と検出対象物質との接触後には、適宜、固相担体の洗浄を行ってもよい。また、固相担体と検出対象物質との接触前には、適宜、固相担体のブロッキングを行ってもよい。また、抗体結合ナノ粒子と、検出対象物質との接触後には、適宜抗体結合ナノ粒子の洗浄を行ってもよい。これらの方法としては、上記≪抗体結合ナノ粒子の使用例≫の項で挙げた方法と同様の方法が挙げられる。
【0072】
<工程(ii)>
工程(ii)では、前記抗体結合ナノ粒子に結合した前記検出対象物質を測定する。
【0073】
抗体結合ナノ粒子に結合した検出対象物質を測定する方法は特に限定されない。抗体結合ナノ粒子が、固相担体に捕捉された検出対象物質に結合している場合には、上記≪抗体結合ナノ粒子の使用例≫の項で挙げた方法と同様の方法で、検出対象物質を測定することができる。
【0074】
あるいは、抗体結合ナノ粒子を回収し、前記回収した抗体結合ナノ粒子中に含まれる検出対象物質に対して特異的に結合する検出用抗体を接触させてもよい。検出用抗体は、標識物質で標識されている。そのため、前記標識物質のシグナルを検出することで、検出対象物質を間接的に測定することができる。標識物質としては、ELISA等で通常用いられるものを特に制限なく用いることができる。標識物質としては、例えば、ペルオキシダーゼ(例、西洋ワサビペルオキシダーゼ)、アルカリホスファターゼなどの酵素標識;カルボキシフルオレセイン(FAM)、6-カルボキシ-4’,5’-ジクロロ2’,7’-ジメトキシフルオレセイン(JOE)、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、テトラクロロフルオレセイン(TET)、5'-ヘキサクロロ-フルオレセイン-CEホスホロアミダイト(HEX)、Cy3、Cy5、Alexa568、Alexa647などの蛍光標識;ヨウ素125などの放射性同位体標識;ルテニウム錯体などの電気化学発光標識;ビオチン等が挙げられる。
【0075】
標識物質のシグナルの検出は、標識物質の種類に応じた公知の方法により行うことができる。例えば、酵素標識の場合には、酵素による発色反応を行い、発色を検出することで、標識物質のシグナルを検出することができる。また、標識物質が蛍光色素、放射性同位体標識、若しくは電気化学的発発光標識である場合、蛍光シグナル、放射活性シグナル、若しくは電気化学的発光シグナルを検出することで、標識物質のシグナルを検出することができる。
【0076】
本実施形態の測定方法は、前記実施形態の抗体結合ナノ粒子を使用するため、抗体結合ナノ粒子と検出対象物質との結合反応中等において、抗体結合ナノ粒子に対する非特異的吸着を低減することができる。そのため、試料中の検出対象物質が低濃度である場合でも、ノイズの低減された精度の高い測定を行うことができる。
【実施例0077】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0078】
[実施例1]
<抗体結合ナノ粒子の調製>
以下の手順で、実施例1の抗体結合ナノ粒子を調製した。
(1)酢酸ナトリウム4.44gに、酢酸5.76gを添加し、純水で50mLにメスアップして、3Mの酢酸バッファー(pH4.5)を調製した。
(2)前記3Mの酢酸バッファーを60倍希釈し、50mMの酢酸バッファー(pH4.5)を調製した。
(3)抗CD9抗体(エクソソームモノクローナル抗体 Anti CD9、コスモ・バイオ)55μgと50mMの酢酸バッファー(pH4.5)とを合計500μLになるように、アミコンフィルター(カットオフ分子量10KDa)(アミコンウルトラ-0.5mL遠心式フィルター、MERCK)に入れ、4℃、14000Gで15分間遠心処理した。
(4)濾液を捨て、50mMの酢酸バッファー(pH4.5)を加えて約500μLとなるようにした。
(5)4℃、14000Gで15分間遠心処理した。
(6)フィルター上に濃縮された抗CD9抗体を、1000Gで2分間、逆遠心処理して回収した。
(7)1.5mLのProtein LoBindチューブ(Eppendorf)に、COOHビーズ(TAS8848N1140、ビーズ径180nm±30nm、カルボキシ基表面修飾(表面修飾量約250nmol/mg)、多摩川精機)を50μL(1mg)加えた。21130Gで5分間遠心処理し、上清を除去した。
(8)(7)のProtein LoBindチューブに、(6)で回収した抗CD9抗体を全量(約50μL)添加した。
(9)Protein LoBindチューブ内のCOOHビーズを超音波処理で分散させた後、チューブミキサーを用いて、37℃で、60分間撹拌した。
(10)1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC・HCl)2.88g/ポリエチレングリコール(PEG)(Mw=2,000;CE210、JSRライフサイエンス)0.5mLに対し、前記EDC・HCl及びPEGの合計量に対して1/59量(約8.5μL)の比率で3Mの酢酸バッファーを混合したものを後述の(12)で使用する直前に調製した(組成;30mM EDC・HCl+PEG in 50mM 酢酸バッファー(pH4.5))。
(11)(9)のProtein LoBindチューブを、4℃、21130Gで5分間遠心処理し、上清を除去した。
(12)(10)で調製した溶液を400μL加え、超音波処理でCOOHビーズを分散させた後、チューブミキサーで、室温で、180分間撹拌した。
(13)4℃、21130Gで5分間遠心処理し、上清を除去した。
(14)200μLのStorageバッファー(10mM HEPES-NaOH(pH7.9),1mM EDTA,0.1% Tween-20,0.1% Casein)で、洗浄(洗浄液投入、超音波処理による分散、遠心処理、及び上清除去で1回の洗浄)することを3回繰り返した。
(15)500μLのStorageバッファーを添加し、終濃度2mg/mLの抗CD9抗体結合ナノ粒子懸濁液とした。
(16)次いで、(15)の抗CD9抗体結合ナノ粒子懸濁液を含むチューブを37℃で、3日間、インキュベーションした。
(17)(16)の後、チューブを、4℃で保存した。
【0079】
<捕捉用抗体の固相担体への固定>
固相担体として、ExoCounter(登録商標)(株式会社JVCケンウッド)に付属のディスクを用いた。抗CD9抗体を、捕捉用抗体としてディスクに固定した。
抗CD9抗体を、5μg/mLとなるようにリン酸緩衝生理食塩水に溶解し、70μLをディスク上に固定したウェルに注入した。37℃で、30分間インキュベートし、疎水吸着により、抗CD9抗体をディスクに固定した。インキュベート後、ディスク及びウェルを緩衝液で洗浄した。
【0080】
<固相担体のブロッキング>
次いで、リン酸緩衝生理食塩水に溶解した1%BSA200μLをディスク上に固定したウェルに注入し、37℃で、30分間インキュベートし、ディスク及びウェルのブロッキング処理を行った。インキュベート後、ディスク及びウェルを緩衝液で洗浄した。
【0081】
<エクソソームの検出>
結腸癌細胞株HCT116の培養上清を試料として用いた。前記培養上清をリン酸緩衝生理食塩水で、0.8倍(Dilution factor=0.8)、0.6倍(Dilution factor=0.6)、0.4倍(Dilution factor=0.4)、及び0.2倍(Dilution factor=0.2)となるように希釈して、各希釈倍率の試料を調製した。培養上清をDilution Factor=1の試料とし、リン酸緩衝液をブランク(Dilution factor=0)の試料とした。
【0082】
抗CD9抗体を固定したディスク上のウェルに、前記各試料を50μL注入し、37℃で、2時間インキュベートした。インキュベート後、ウェルを緩衝液で洗浄した。
【0083】
次いで、ウェルに、前記のように調製した抗CD9抗体結合ナノ粒子を1μg注入し、37℃で、1.5時間インキュベートした。インキュベート後、ウェルを洗浄し、ウェル内を乾燥させた。
【0084】
次いで、ディスクからウェルを分離して、ディスク表面に結合した抗CD9抗体結合ナノ粒子の個数をExoCounter(登録商標)でカウントした。
【0085】
[比較例1-1]
<抗体結合ナノ粒子の調製>
COOHビーズの製造業者のガイドラインを参考にして一部を変更した、以下の手順で、比較例1-1の抗体結合ナノ粒子を調製した。
(1)1.5mLのProtein LoBindチューブ(Eppendorf)に、COOHビーズ(TAS8848N1140、ビーズ径180nm±30nm、カルボキシ基表面修飾(表面修飾量約250nmol/mg)、多摩川精機)を50μL(1mg)加え、室温、21130Gで5分間遠心処理し、上清を除去した。
(2)次いで、400mMのEDC・HCl in 50mMの酢酸バッファー、および400mMのN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS) in 50mMの酢酸バッファーを調製した。それぞれ100μLずつを(1)のCOOHビーズに加え、超音波処理を行ってCOOHビーズを分散させ、室温で30分間マイクロチューブミキサーを使ってインキュベートを行った。
(3)次いで50μgの抗CD9抗体を追加で添加し、さらに室温で2時間インキュベートを行った。
(4)遠心処理(4℃、21130G、5分間)を行い、上清を廃棄した。
(5)次いで、ポリエチレングリコール(PEG)(Mw=2,000;CE210、JSRライフサイエンス)を800μL投入し、4℃で一晩(オーバーナイト)マイクロチューブミキサーを使ってインキュベートを行った。
(6)遠心処理(4℃、21130G、5分間)を行い、上清を廃棄した。
(7)200μLの洗浄バッファー(10mM HEPES-NaOH(pH7.9),1mM EDTA,0.1%Tween-20)で、洗浄(洗浄液投入、超音波処理による分散、遠心処理、及び上清除去で1回の洗浄)することを3回繰り返した。
(8)500μLの洗浄バッファーを添加し、終濃度2mg/mLの抗CD9抗体結合ナノ粒子懸濁液とした。
(9)(8)の抗CD9抗体結合ナノ粒子懸濁液を含むチューブを、4℃で保存した。
【0086】
<捕捉用抗体の固相担体への固定、固相担体のブロッキング>
捕捉用抗体の固相担体への固定、及び固相担体のブロッキングは、上記実施例1と同様に行った。
【0087】
<エクソソームの検出>
エクソソームの検出は、前記で調製した比較例1-1の抗CD9抗体結合ナノ粒子を用いたこと以外は、上記実施例1と同様に行った。
【0088】
[比較例2-1]
比較例2-1の抗体結合ナノ粒子は、COOHビーズの製造業者のガイドラインに従って調製した。具体的には、以下の手順で、比較例1-2の抗体結合ナノ粒子を調製した。
(1)タンパク質固定化バッファー(25mM モルホリノエタンスルホン酸(MES)-NaOH(pH6)、洗浄・保存バッファー(10mM HEPES-NaOH(pH7.9),50mM KCl,1mM EDTA,10%グリセロール)、及びマスキング溶液(1M アミノエタノール,0.1% Nonidet P-40,HClでpH8.0に調整)を調製した。
(2)N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)28.8mgを、N,N’-ジメチルホルムアミド(DMF)250μLに溶解して、1M NHS溶液を調製した。
(3)抗CD9抗体をタンパク質固定化バッファーで希釈し、50μg/50μLの抗体溶液を50μL以上作製した。
(4)1.5mLマイクロチューブに、COOHビーズ(TAS8848N1140)を1mg入れた。
(5)遠心処理(15,000rpm,室温,5分間)を行い、上清を廃棄した。
(6)DMF 100μLを添加し、超音波処理を行ってCOOHビーズを分散させた。
(7)遠心処理(15,000rpm,室温,5分間)を行い、上清を廃棄した。
(8)(6)及び(7)を2回繰り返した(ビーズの洗浄を計3回行った)。
(9)別の1.5mLマイクロチューブにEDC・HCl 7.68mg(40マイクロmol)を量り取った。
(10)COOHビーズに、DMF 160μLを添加し、超音波処理を行ってCOOHビーズを分散させた。
(11)1M NHS溶液を40μL添加し、混合した。
(12)COOHビーズ-NHS溶液200μLを、(9)で秤量したEDCに添加し、超音波処理を行って分散させた。
(13)室温で、2時間、マイクロチューブミキサーにて反応させた。
(14)遠心処理(15,000rpm,室温、5分間)を行い、上清を廃棄した。
(15)DMF 100μLを添加し、超音波処理を行ってビーズ(COOH-NHS修飾ビーズ:以下「NHSビーズ」)を分散させた。
(16)遠心処理(15,000rpm,室温、5分間)を行い、上清を廃棄した。
(17)(15)及び(16)を4回繰り返した(ビーズの洗浄を計5回行った)。
(18)DMF 100μLを添加し、超音波処理を行ってビーズ(NHSビーズ)を分散させた。(NHSビーズ濃度:1mg/100μL)
(19)1.5mLマイクロチューブにNHSビーズを1mg入れた。
(20)遠心処理(15,000rpm,4℃,5分間)を行い、上清を廃棄した。
(21)メタノール 50μLを添加し、超音波処理を行ってNHSビーズを超音波にて分散させた。
(22)遠心処理(15,000rpm,4℃,5分間)を行い、上清を廃棄した。
(23)タンパク質固定化バッファー50μLを添加し、超音波処理を行ってビーズを分散させた。
(24)抗CD9抗体溶液50μLを添加した。
(25)4℃で、30分、マイクロチューブミキサーにて反応させた。
(26)遠心処理(15,000rpm,4℃,5分間)を行い、上清を回収した。
(27)マスキング溶液 250μLを添加し、ビーズを分散させた。
(28)4℃で、一晩(16~20時間)、マイクロチューブミキサーにて反応させた。
(29)遠心処理(15,000rpm,4℃,5分間)を行い、上清を廃棄した。
(30)洗浄・洗浄バッファー200μLを添加し、ビーズを分散させた。
(31)遠心処理(15,000rpm,4℃,5分間)を行い、上清を廃棄した。
(32)(30)及び(31)を更に2回繰り返した(ビーズの洗浄を計3回行った)。
(33)洗浄・洗浄バッファー200μLに分散させ、4℃で保存した。
【0089】
<捕捉用抗体の固相担体への固定、固相担体のブロッキング>
捕捉用抗体の固相担体への固定、及び固相担体のブロッキングは、上記実施例1と同様に行った。
【0090】
<エクソソームの検出>
エクソソームの検出は、前記で調製した比較例2-1の抗CD9抗体結合ナノ粒子を用いたこと以外は、上記実施例1と同様に行った。
【0091】
(結果)
実施例1、比較例1-1、及び比較例2-1の結果を
図5Aに示す。また、ブランク(Dilution factor=0)の試料におけるカウント値を、
図5Bに示す。
実施例1では、比較例1-1及び比較例2-1と比較して、感度が改善し、ブランクにおけるカウント値が低減された。
【0092】
[実施例2]
<抗体結合ナノ粒子の調製>
抗CD9抗体に替えて、抗CD63抗体(エクソソームモノクローナル抗体 Anti CD63、コスモ・バイオ)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、実施例2の抗CD63抗体結合ナノ粒子を調製した。
【0093】
<捕捉用抗体の固相担体への固定、固相担体のブロッキング>
捕捉用抗体の固相担体への固定、及び固相担体のブロッキングは、上記実施例1と同様に行った。
【0094】
<エクソソームの検出>
エクソソームの検出は、前記で調製した実施例2の抗63抗体結合ナノ粒子を用いたこと以外は、上記実施例1と同様に行った。
【0095】
[比較例1-2]
<抗体結合ナノ粒子の調製>
抗CD9抗体に替えて、抗CD63抗体を用いたこと以外は、比較例1-1と同様の方法で、比較例1-2の抗CD63抗体結合ナノ粒子を調製した。
【0096】
<捕捉用抗体の固相担体への固定、固相担体のブロッキング>
捕捉用抗体の固相担体への固定、及び固相担体のブロッキングは、上記実施例1と同様に行った。
【0097】
<エクソソームの検出>
エクソソームの検出は、前記で調製した、比較例1-2の抗CD63抗体結合ナノ粒子を用いたこと以外は、上記実施例1と同様に行った。
【0098】
[比較例2-2]
<抗体結合ナノ粒子の調製>
抗CD9抗体に替えて、抗CD63抗体を用いたこと以外は、比較例1-2と同様の方法で、比較例2-2の抗CD63抗体結合ナノ粒子を調製した。
【0099】
<捕捉用抗体の固相担体への固定、固相担体のブロッキング>
捕捉用抗体の固相担体への固定、及び固相担体のブロッキングは、上記実施例1と同様に行った。
【0100】
<エクソソームの検出>
エクソソームの検出は、前記で調製した、比較例2-2の抗CD63抗体結合ナノ粒子を用いたこと以外は、上記実施例1と同様に行った。
【0101】
(結果)
実施例2、比較例1-2、及び比較例2-2の結果を
図6Aに示す。また、ブランク(Dilution factor=0)の試料におけるカウント値を、
図6Bに示す。
比較例1-2は、ブランクにおけるカウント値が最も低かったが、感度が顕著に低下した。一方、実施例2は、感度が及びブランクのカウント値ともに良好であった。
【0102】
[実施例3]
<抗体結合ナノ粒子の調製>
抗CD9抗体に替えて、抗Her2抗体(モノクローナル抗体 Anti Her2、BioLegend)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、実施例3の抗Her2抗体結合ナノ粒子を調製した。
【0103】
<捕捉用抗体の固相担体への固定、固相担体のブロッキング>
捕捉用抗体の固相担体への固定、及び固相担体のブロッキングは、上記実施例1と同様に行った。
【0104】
<エクソソームの検出>
エクソソームの検出は、結腸癌細胞株HCT116に替えて乳癌細胞株KPL4を用い、前記で調製した実施例3の抗Her2抗体結合ナノ粒子を用いたこと以外は、上記実施例1と同様に行った。
【0105】
[比較例1-3]
<抗体結合ナノ粒子の調製>
抗CD9抗体に替えて、抗Her2抗体を用いたこと以外は、比較例1-1と同様の方法で、比較例1-3の抗Her2抗体結合ナノ粒子を調製した。
【0106】
<捕捉用抗体の固相担体への固定、固相担体のブロッキング>
捕捉用抗体の固相担体への固定、及び固相担体のブロッキングは、上記実施例1と同様に行った。
【0107】
<エクソソームの検出>
エクソソームの検出は、結腸癌細胞株HCT116に替えて乳癌細胞株KPL4を用い、前記で調製した比較例1-3の抗Her2抗体結合ナノ粒子を用いたこと以外は、上記実施例1と同様に行った。
【0108】
[比較例2-3]
<抗体結合ナノ粒子の調製>
抗CD9抗体に替えて、抗Her2抗体を用いたこと以外は、比較例1-2と同様の方法で、比較例2-3の抗Her2抗体結合ナノ粒子を調製した。
【0109】
<捕捉用抗体の固相担体への固定、固相担体のブロッキング>
捕捉用抗体の固相担体への固定、及び固相担体のブロッキングは、上記実施例1と同様に行った。
【0110】
<エクソソームの検出>
エクソソームの検出は、結腸癌細胞株HCT116に替えて乳癌細胞株KPL4を用い、前記で調製した比較例2-3の抗Her2抗体結合ナノ粒子を用いたこと以外は、上記実施例1と同様に行った。
【0111】
(結果)
実施例3、比較例1-3、及び比較例2-3の結果を
図7Aに示す。また、ブランク(Dilution factor=0)の試料におけるカウント値を、
図7Bに示す。
比較例1-3は、ブランクにおけるカウント値が最も低かったが、感度が顕著に低下した。一方、実施例3は、感度が及びブランクのカウント値ともに良好であった。
【0112】
[実施例4]
<抗体結合ナノ粒子の調製>
抗CD9抗体に替えて、抗CD147抗体(モノクローナル抗体 Anti CD147、BioLegend)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、実施例4の抗CD147抗体結合ナノ粒子を調製した。
【0113】
<捕捉用抗体の固相担体への固定、固相担体のブロッキング>
捕捉用抗体の固相担体への固定、及び固相担体のブロッキングは、上記実施例1と同様に行った。
【0114】
<エクソソームの検出>
エクソソームの検出は、結腸癌細胞株HCT116に替えて膵癌細胞株MiaPaca2を用い、前記で調製した実施例4の抗CD147抗体結合ナノ粒子を用いたこと以外は、上記実施例1と同様に行った。
【0115】
[比較例1-4]
<抗体結合ナノ粒子の調製>
抗CD9抗体に替えて、抗CD147抗体を用いたこと以外は、比較例1-1と同様の方法で、比較例1-4の抗CD147抗体結合ナノ粒子を調製した。
【0116】
<捕捉用抗体の固相担体への固定、固相担体のブロッキング>
捕捉用抗体の固相担体への固定、及び固相担体のブロッキングは、上記実施例1と同様に行った。
【0117】
<エクソソームの検出>
エクソソームの検出は、結腸癌細胞株HCT116に替えて膵癌細胞株MiaPaca2を用い、前記で調製した比較例1-4の抗CD147抗体結合ナノ粒子を用いたこと以外は、上記実施例1と同様に行った。
【0118】
[比較例2-4]
<抗体結合ナノ粒子の調製>
抗CD9抗体に替えて、抗CD147抗体を用いたこと以外は、比較例1-2と同様の方法で、比較例2-4の抗CD147抗体結合ナノ粒子を調製した。
【0119】
<捕捉用抗体の固相担体への固定、固相担体のブロッキング>
捕捉用抗体の固相担体への固定、及び固相担体のブロッキングは、上記実施例1と同様に行った。
【0120】
<エクソソームの検出>
エクソソームの検出は、結腸癌細胞株HCT116に替えて膵癌細胞株MiaPaca2を用い、前記で調製した比較例2-4の抗CD147抗体結合ナノ粒子を用いたこと以外は、上記実施例1と同様に行った。
【0121】
(結果)
実施例4、比較例1-4、及び比較例2-4の結果を
図8Aに示す。また、ブランク(Dilution factor=0)の試料におけるカウント値を、
図8Bに示す。
実施例4では、比較例1-4及び比較例2-4と比較して、感度が改善し、ブランクにおけるカウント値が低減された。
【0122】
図9に、前記各例において、S/N値を算出した結果を示す(S:Dilution factor=1におけるカウント値、N:Dilution factor=0におけるカウント値)。S/N値が大きいほど、感度及びブランクのカウント値が良好であることを示す。
いずれの抗体結合ナノ粒子においても、実施例の抗体結合ナノ粒子が最もS/Nの値が大きかった。この結果は、実施例の抗体結合ナノ粒子では、非特異吸着が低減され、且つ感度が良好であることを示す。
本発明によれば、非特異吸着を低減することが可能な、抗体結合ナノ粒子の製造方法、前記製造方法により製造される抗体結合ナノ粒子、前記抗体結合ナノ粒子を製造するためのキット、及び抗体結合ナノ粒子を用いた検出対象物質の測定方法が提供される。