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特開2022-145234立体カム機構の製造方法、エンドミル及び立体カム機構
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022145234
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】立体カム機構の製造方法、エンドミル及び立体カム機構
(51)【国際特許分類】
   B23P 15/00 20060101AFI20220926BHJP
   B23C 5/12 20060101ALI20220926BHJP
   B23C 3/08 20060101ALI20220926BHJP
   F16H 25/16 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
B23P15/00 Z
B23C5/12 Z
B23C3/08
F16H25/16 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021046549
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】515160873
【氏名又は名称】株式会社ミューラボ
(71)【出願人】
【識別番号】505089614
【氏名又は名称】国立大学法人福島大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】特許業務法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伏見 雅英
(72)【発明者】
【氏名】関 実
(72)【発明者】
【氏名】高橋 隆行
【テーマコード(参考)】
3J062
【Fターム(参考)】
3J062AA60
3J062AB31
3J062AC09
3J062BA01
3J062BA14
3J062CC16
3J062CC33
(57)【要約】
【課題】高精度な寸法形状を有する立体カム機構を提供する。
【解決手段】立体カム機構1は、立体カム2と、立体カム2に当たるフォロア3と、フォロア3に連結された軸部材4と、軸部材4を支持する支持部材5とを備える。立体カム機構1は、立体カム2の回転運動を、軸部材4を中心としたフォロア3の揺動運動に変換するように構成されている。被加工部材を加工して支持部材5を形成する加工工程には、被加工部材に対して一側からエンドミルを近づけ、被加工部材に基準面56を形成する工程と、被加工部材に対して一側からエンドミルを近づけ、被加工部材に、軸部材4が嵌め込まれる保持溝53を形成する工程とが含まれている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体カム機構を製造する方法であって、
前記立体カム機構は、
3次元的なカム面を有し、中心軸まわりに回転するように構成された立体カムと、
前記カム面に当たる接触面を有するフォロアと、
前記フォロアに連結された軸部材と、
前記軸部材を支持する支持部材と、を備え、
前記立体カムの回転運動を、前記軸部材を中心とした前記フォロアの揺動運動に変換するように構成された機構であり、
被加工部材を加工して前記支持部材を形成する加工工程を備え、
前記加工工程は、
前記被加工部材に対して一側からエンドミルを近づけ、前記被加工部材に、別の部材に当たる基準面を形成する基準面形成工程と、
前記被加工部材に対して前記一側からエンドミルを近づけ、前記被加工部材に、前記軸部材が嵌め込まれる保持溝を形成する保持溝形成工程と、を含む、
立体カム機構の製造方法。
【請求項2】
前記基準面形成工程は、
第1基準面を形成する第1工程と、
前記第1基準面と異なる方向を向く第2基準面を形成する第2工程と、を含む、
請求項1の立体カム機構の製造方法。
【請求項3】
前記加工工程は、
前記被加工部材に対して前記一側からエンドミルを近づけ、前記フォロアの揺動をガイドする案内面を形成する案内面形成工程を、更に含む、
請求項1又は2の立体カム機構の製造方法。
【請求項4】
前記保持溝は、断面V字状の溝である、
請求項1から3のいずれか一項の立体カム機構の製造方法。
【請求項5】
前記保持溝は、断面アーチ状の溝である、
請求項1から3のいずれか一項の立体カム機構の製造方法。
【請求項6】
前記保持溝の開口を覆うように、前記支持部材に押え部材を取り付ける取付工程を、更に備える、
請求項1から5のいずれか一項の立体カム機構の製造方法。
【請求項7】
前記立体カム機構は、
前記立体カムを回転させる駆動軸と、
前記駆動軸の少なくとも一部を収容するケーシングと、を更に備え、
前記別の部材は、前記ケーシングである、
請求項1から6のいずれか一項の立体カム機構の製造方法。
【請求項8】
前記保持溝形成工程で用いる前記エンドミルと、前記基準面形成工程において用いる前記エンドミルは、同一である、
請求項1から7のいずれか一項の立体カム機構の製造方法。
【請求項9】
請求項2の立体カム機構の製造方法の前記基準面形成工程と前記保持溝形成工程の両方で用いられる前記エンドミルであって、
前記第1基準面を形成するための第1刃部と、
前記第2基準面を形成するための第2刃部と、
前記保持溝を形成するための第3刃部と、を別々に有する、
エンドミル。
【請求項10】
3次元的なカム面を有し、中心軸まわりに回転するように構成された立体カムと、
前記カム面に当たる接触面を有するフォロアと、
前記フォロアに連結された軸部材と、
前記軸部材を支持する支持部材と、を備え、
前記立体カムの回転運動を、前記軸部材を中心とした前記フォロアの揺動運動に変換するように構成された立体カム機構であって、
前記支持部材に対して前記立体カムが位置する向きを、第1の向きとし、
前記第1の向きとは反対の向きを第2の向きとしたとき、
前記支持部材は、
前記支持部材に対して前記第1の向きに位置する別の部材に当たるように設けられた基準面と、
前記第2の向きに窪み、前記軸部材が嵌め込まれるように設けられた保持溝と、を有する、
立体カム機構。
【請求項11】
前記基準面は、前記第2の向きに直交する第1基準面と、前記第2の向きに平行な第2基準面の、少なくとも一方を含む、
請求項10の立体カム機構。
【請求項12】
前記基準面は、前記第1基準面と第2基準面の両方を含む、
請求項11の立体カム機構。
【請求項13】
前記保持溝は、断面V字状の溝である、
請求項10から12のいずれか一項の立体カム機構。
【請求項14】
前記保持溝は、断面アーチ状の溝である、
請求項10から12のいずれか一項の立体カム機構。
【請求項15】
前記保持溝の開口を覆うように前記支持部材に取り付けられた押え部材を、更に備える、
請求項10から14のいずれか一項の立体カム機構。
【請求項16】
前記立体カムを回転させる駆動軸と、
前記駆動軸の少なくとも一部を収容するケーシングと、を更に備え、
前記別の部材は、前記ケーシングである、
請求項10から15のいずれか一項の立体カム機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、立体カム機構の製造方法、エンドミル及び立体カム機構に関する。
【背景技術】
【0002】
3次元的なカム面を有する立体カムと、カム面に当る接触面を有するフォロアと、フォロアに連結された軸部材と、軸部材を支持する支持部材とを備えた立体カム機構が、従来公知である(例えば特許文献1等参照)。
【0003】
上記の立体カム機構は、立体カムの回転運動を、軸部材を中心としたフォロアの揺動運動に変換するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-298165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来の立体カム機構を製造するには、支持部材の基となる被加工部材に貫通孔を形成し、この貫通孔に軸部材を挿し通すことが行われる。
【0006】
しかし、例えばマシニングセンターにおいて被加工部材に貫通孔を形成する作業と、被加工部材に基準面を形成する作業とを行うには、両作業の間に、被加工部材を掴み替えする必要がある。この掴み替えの作業に起因して、支持部材の寸法形状に誤差が生じ、ひいては立体カム機構の寸法形状に誤差が生じるおそれがある。
【0007】
本開示は、高精度な寸法形状を有する立体カム機構を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る立体カム機構の製造方法は、以下の立体カム機構を製造する方法である。前記立体カム機構は、3次元的なカム面を有し、中心軸まわりに回転するように構成された立体カムと、前記カム面に当たる接触面を有するフォロアと、前記フォロアに連結された軸部材と、前記軸部材を支持する支持部材と、を備える。前記立体カム機構は、前記立体カムの回転運動を、前記軸部材を中心とした前記フォロアの揺動運動に変換するように構成された機構である。本開示の一態様に係る立体カム機構の製造方法は、被加工部材を加工して前記支持部材を形成する加工工程を備える。前記加工工程は、基準面形成工程と、保持溝形成工程と、を含む。前記基準面形成工程では、前記被加工部材に対して一側からエンドミルを近づけ、前記被加工部材に、別の部材に当たる基準面を形成する。前記保持溝形成工程では、前記被加工部材に対して前記一側からエンドミルを近づけ、前記被加工部材に、前記軸部材が嵌め込まれる保持溝を形成する。
【0009】
本開示の一態様に係るエンドミルは、前記基準面形成工程と前記保持溝形成工程の両方で用いられる。前記基準面形成工程は、第1基準面を形成する工程と、前記第1基準面と異なる方向を向く第2基準面を形成する工程と、を含む。前記エンドミルは、前記第1基準面を形成するための第1刃部と、前記第2基準面を形成するための第2刃部と、前記保持溝を形成するための第3刃部と、を別々に有する。
【0010】
本開示の一態様に係る立体カム機構は、3次元的なカム面を有し、中心軸まわりに回転するように構成された立体カムと、前記カム面に当たる接触面を有するフォロアと、前記フォロアに連結された軸部材と、前記軸部材を支持する支持部材と、を備える。前記立体カム機構は、前記立体カムの回転運動を、前記軸部材を中心とした前記フォロアの揺動運動に変換するように構成されている。ここで、前記支持部材に対して前記立体カムが位置する向きを、第1の向きとし、前記第1の向きとは反対の向きを第2の向きとする。前記支持部材は、前記支持部材に対して前記第1の向きに位置する別の部材に当たるように設けられた基準面と、前記第2の向きに窪み、前記軸部材が嵌め込まれるように設けられた保持溝と、を有する。
【発明の効果】
【0011】
本開示は、高精度な寸法形状を有する立体カム機構を提供することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、一実施形態の立体カム機構を正面から見た図である。
図2図2は、図1のA-A線断面図である。
図3図3は、同上の立体カム機構の要部を裏側から見た図である。
図4図4は、同上の要部を構成する支持部材を形成する過程を概略的に示す図である。
図5図5は、同上の支持部材が備える保持溝の形状を示す断面図である。
図6図6は、同上の支持部材を裏側から見た図である。
図7図7は、同上の支持部材の形成に用いられる専用のエンドミルの要部を概略的に示す図である。
図8図8は、同上の専用のエンドミルで支持部材を形成する過程を概略的に示す図である。
図9図9は、同上の保持溝の変形例の形状を示す断面図である。
図10図10は、同上の保持溝の変形例を形成するために用いられる専用のエンドミルの要部を概略的に示す図である。
図11図11は、同上の支持部材の比較例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施形態)
図1図2には一実施形態の立体カム機構1を示している。立体カム機構1は、図示略の駆動源から供給される回転力によって立体カム2を回転させ、これに連動してフォロア3を揺動させるように構成された機構であり、一実施形態においては、1つの立体カム2に対して複数のフォロア3が連結されている。駆動源は、外部に設置されたモータである。
【0014】
一実施形態において、立体カム機構1は、1つの立体カム2が回転軸まわりに回転することに連動して、複数のフォロア3がそれぞれ揺動するように構成されている。複数のフォロア3は、周方向に等間隔をあけて位置する3つのフォロア3である。本文での周方向は、立体カム2の回転軸を基準とした周方向である。
【0015】
(立体カム機構の全体構造)
一実施形態の立体カム機構1は、立体カム2、フォロア3、軸部材4、支持部材5、押え部材6、駆動軸71、ケーシング72及びベアリング73を備える。立体カム機構1は、フォロア3とこれに連結される軸部材4を、3つずつ備えている。
【0016】
(立体カム)
立体カム2は、円板状のベース21と、ベース21の一面210から突出する突条23とを有する。突条23の突先部分の面が、3次元的なカム面25を構成している。ベース21の一面210をその正面から見たとき、突条23は円弧状の外形を有し、また、カム面25は円弧状の外形を有する。突条23(及びカム面25)の外形は、その長手方向の第1端部が最も中心軸に近く、その長手方向の第2端部が最も中心軸から離れて位置するように設けられている。
【0017】
一実施形態において、立体カム2は、突条23を3つ有している。3つの突条23は、ベース21の一面210において、周方向に距離をあけて位置している。
【0018】
(フォロア)
フォロア3は、立体カム2の回転に連動するように構成された棒状の部材である。フォロア3の一端部には、接触面32が形成されている。接触面32は、立体カム2が有する3つのカム面25のうち、1つのカム面25に当たり、立体カム2の回転に伴って、該1つのカム面25上を摺動するように構成されている。フォロア3の一端部には、貫通した孔34が設けられている。
【0019】
一実施形態において、立体カム機構1が備える3つのフォロア3は、立体カム2が有する3つのカム面25に対して、一対一で接触している。
【0020】
(軸部材)
軸部材4は、フォロア3の孔34に挿し通された円柱状の部材である。軸部材4は、フォロア3の孔34に挿し通された状態で、軸方向の両側がフォロア3の一端部から大きく突出するように設けられている。この状態で、フォロア3は軸部材4を中心として揺動可能である。
【0021】
一実施形態において、立体カム機構1は軸部材4を3つ備える。3つの軸部材4は、立体カム機構1が備える3つのフォロア3の孔34に対して、一対一で挿し込まれている。
【0022】
(支持部材)
支持部材5は、軸部材4を支持するために設けられた、有底筒状の部材である。支持部材5は、円板状の主壁51と、主壁51の周縁部分から延長された周壁52とを有する。
【0023】
立体カム機構1において、支持部材5は、立体カム2を覆うとともに、軸部材4を介してフォロア3を回転自在に支持するように設けられている。以下においては、支持部材5に対して立体カム2が位置する向きを、第1の向きD1とし、これとは反対の向きを第2の向きD2とする。
【0024】
第1の向きD1は、言い換えれば、支持部材5の主壁51に対して立体カム2が位置する向きである。第2の向きD2は、立体カム2に対して支持部材5が位置する向きであり、言い換えれば、立体カム2に対して支持部材5の主壁51が位置する向きである。
【0025】
主壁51は、フォロア3の揺動を可能とするための案内溝54と、軸部材4を保持するための保持溝53とを有する。案内溝54は、円板状である主壁51の径方向に伸びる直線状の溝であり、第1の向きD1と第2の向きD2の両方に開放されている。加えて、案内溝54は、径方向の内側と外側の両方に向けて開放されている。
【0026】
保持溝53は、案内溝54と交差する直線状の溝である(図6等参照)。保持溝53は、第1の向きD1に開放され、第2の向きD2には開放されていない。保持溝53は、第2の向きD2に窪んだ有底の溝である。主壁51のうち保持溝53が設けられている面512の向きは、第1の向きD1である。
【0027】
案内溝54と保持溝53は、十字状に直交している。一実施形態において保持溝53は、案内溝54との交差部分を境にして、第1溝531と第2溝532とに分断されている。第1溝531と第2溝532は、ともに第2の向きD2に凹んだ有底の溝である。
【0028】
図5に示すように、保持溝53は、断面V字状の溝である。断面V字状の保持溝53は、第2の向きD2に近い部分ほど互いに近づくように傾斜した2つの平坦な傾斜面534,535を有し、軸部材4が両傾斜面534,535に接触するように構成されている。2つの傾斜面534,535のなす角度は90°であるが、これに限定されず、例えば60°から150°の範囲内で適宜に設定することも可能である。
【0029】
図6等に示すように、案内溝54は、フォロア3の揺動をガイドする案内面541,542を含む。案内面541,542は、保持溝53の長手方向に距離をあけて互いに平行に位置する、一対の平坦面である。保持溝53の長手方向は、言い換えれば、保持溝53に保持される軸部材4の軸方向である。一対の案内面541,542は、フォロア3の揺動に伴って、フォロア3に摺接するように構成されている。
【0030】
保持溝53の長手方向における案内溝54の幅は、案内面541,542が位置する部分において、最も狭く設けられている。案内溝54のうち案内面541,542以外の部分の、保持溝53の長手方向における幅は、案内面541,542間の幅よりも広く設けられている。
【0031】
加えて、支持部材5は、後述のケーシング72に当るように設けられた基準面56を有する。一実施形態の立体カム機構1においては、ケーシング72が、支持部材5に対して第1の向きD1に位置する別の部材75を構成している。
【0032】
基準面56は、周壁52の先端部分に設けられた第1基準面561と第2基準面562とを含む。第1基準面561と第2基準面562は、周壁52の先端部分の互いに異なる箇所に設けられている。第1基準面561と第2基準面562は、互いに直交する面である。
【0033】
第1基準面561は、支持部材5の中心軸まわりに設けられた、第2の向きD2と直交する環状(リング状)の平坦面である。一実施形態の立体カム機構1において、支持部材5の中心軸は立体カム2の中心軸と一致する。第1基準面561は、筒状である周壁52の先端面であり、周壁52のうち最も第1の向きD1に離れた箇所に設けられている。
【0034】
第2基準面562は、支持部材5の中心軸まわりに設けられた、第2の向きD2と平行な環状(リング状)の凹曲面である。第2基準面562は、筒状である周壁52の先端部分の内周面であり、支持部材5の径方向において第1基準面561よりも内側に位置し、かつ第1基準面561よりも第2の向きD2に離れた位置にある。第1基準面561と第2基準面562は、周壁52の先端部分の径方向内側の直角な角部分を介して、連続している。
【0035】
一実施形態において、支持部材5は、保持溝53を3つ備えており、3つの保持溝53には、3つの軸部材4が一対一で嵌め込まれている。
【0036】
また、一実施形態において、支持部材5は、案内溝54を3つ備えており、3つの案内溝54には、3つのフォロア3が一対一で揺動可能に位置している。一実施形態の支持部材5には、十字状に交差する保持溝53と案内溝54の組が、支持部材5の周方向に距離をあけて3組設けられている。
【0037】
(押え部材)
押え部材6は、保持溝53の開口を覆うように、支持部材5の面512に取り付けられる部材である。一実施形態において、押え部材6は、互いに独立した複数の部材61,62,63で構成されているが(図3参照)、1つの部材で構成されることも有り得る。複数の部材61,62,63は、3つの部材61,62,63であり、それぞれねじ具615,625,635を介して、支持部材5の面512に取り付けられている。
【0038】
押え部材6を支持部材5の面512に取り付ける手段は、ねじ具615,625,635に限定されず、他の手段を用いることも可能である。押え部材6が支持部材5の面512に取り付けられた状態で、押え部材6と面512との間には僅かに隙間が形成されているが、押え部材6と面512とが密着してもよい。
【0039】
押え部材6によって覆われる保持溝53の開口は、第1の向きD1に開放された開口である。押え部材6は、3つの保持溝53の開口をそれぞれ覆い、3つの軸部材4の脱落を防止する機能を有する。
【0040】
より詳細に述べると、押え部材6は、3つの保持溝53のそれぞれの第1溝531と第2溝532の、第1の向きD1に開放された開口を覆うように、支持部材5の面512に取り付けられている。3つの部材61,62,63は、それぞれ扇型の外形を有する。3つの部材61,62,63は、1つの保持溝53に含まれる第1溝531の開口と、別の保持溝53に含まれる第2溝532の開口とを覆うように、それぞれ構成されている。
【0041】
(駆動軸)
駆動軸71は、立体カム2を回転させる円柱状の軸部材である。図2に示すように、駆動軸71は、立体カム2から第1方向D1に向けて延長されている。立体カム2は、支持部材5と駆動軸71との間に位置している。
【0042】
駆動軸71の中心軸は、立体カム2の中心軸と一致する。モータによって駆動軸71が中心軸まわりに回転駆動されることで、立体カム2が中心軸まわりに回転駆動される。
【0043】
(ケーシング)
ケーシング72は、駆動軸71の少なくとも一部を収容するように設けられた筒状の部材である。ケーシング72は、支持部材5に対して第1の向きD1に位置し、支持部材5の周壁52の基準面56に当って位置決めされた状態で、図示略のねじ具を介して周壁52に固定されている。
【0044】
ケーシング72は、支持部材5の第1基準面561に当る面721と、第2基準面562に当る面722とを有する。面721と面722は、ケーシング72の第2の向きD2の先端部分の、互いに異なる箇所に設けられている。面721と面722は、互いに直交する面である。
【0045】
面721は、ケーシング72の中心軸まわりに設けられたリング状の平坦面である。面721の向きは、第2の向きD2である。一実施形態の立体カム機構1において、ケーシング72の中心軸は、立体カム2及び駆動軸71の中心軸と一致する。
【0046】
面722は、ケーシング72の中心軸まわりに設けられたリング状の凸曲面である。面722は、ケーシング72の先端部分の外周面であり、ケーシング72の径方向において面721よりも内側に位置し、かつ面721よりも第2の向きD2に離れた位置にある。面721と面722は、ケーシング72の先端部分において、直角な凹角部分を介して連続している。
【0047】
(ベアリング)
ベアリング73は、ケーシング72の内側に収容された2つのベアリング731,732を含む。2つのベアリング731,732は、ケーシング72の軸方向に並設された2つのアンギュラベアリングである。
【0048】
ベアリング73は、駆動軸71及び立体カム2を、径方向及び軸方向において支持するように構成されている。駆動軸71及び立体カム2は、ベアリング73を介して、中心軸まわりに回転可能である。ベアリング73を介して、立体カム2を径方向と軸方向の両方で精度よく支持することで、立体カム2がフォロア3から受ける力が、ベアリング73で受けられ、駆動軸71にまで伝わらないようすることができる。
【0049】
ベアリング73を、上記のアンギュラベアリング以外の種類のベアリングを用いて構成することも可能である。例えば1つ以上のラジアルベアリングと、1つ以上のスラストベアリングとを、軸方向において交互に並設してベアリング73を構成することも可能であるし、4点接触のベアリング又はクロスローラベアリングでベアリング73を構成することも可能であるし、テーパーローラベアリングを単独で用いるか又は複数組み合わせることでベアリング73を構成することも可能である。
【0050】
(立体カム機構の動作)
上記のように、一実施形態の立体カム機構1は、3つのカム面25を有する立体カム2と、3つのカム面25にそれぞれ接触した3つのフォロア3と、3つのフォロア3にそれぞれ連結された3つの軸部材4と、3つの軸部材4を介して3つのフォロア3をそれぞれ回転可能に支持する支持部材5と、3つの軸部材4が支持部材5から脱落することを防止するために支持部材5に取り付けられた押え部材6と、立体カム2を回転駆動させる駆動軸71と、支持部材5に結合されたるケーシング72(別の部材75)と、ケーシング72と駆動軸71との間に介在するベアリング73とを備える。
【0051】
一実施形態の立体カム機構1では、モータによって駆動軸71と立体カム2とが中心軸まわりの一方向に一体回転すると、3つのフォロア3が、互いの先端部分が近づく方向に動作して対象物を把持することができ、モータによって駆動軸71と立体カム2とが中心軸まわりの逆方向に一体回転すると、3つのフォロア3が、互いの先端部分が離れる方向に動作して対象物の把持を解除することができる。また、一実施形態の立体カム機構1によれば、3つのフォロア3が、互いの先端部分が離れる方向に動作することにより、筒形の対象物をその内側から保持することも可能である。このように、一実施形態の立体カム機構1は、モータで動作するグリッパを構成している。
【0052】
(立体カム機構の製造方法)
次に、一実施形態の立体カム機構1の製造方法(以下、単に「一実施形態の製造方法」という。)について、添付図面に基づいて説明する。
【0053】
一実施形態の製造方法は、例えばマシニングセンターにおいてエンドミル9を用いて支持部材5を形成する加工工程と、加工工程において形成された支持部材5に押え部材6を取り付ける取付工程とを備える。
【0054】
(加工工程)
加工工程では、図4に概略的に示すように、支持部材5の基となる被加工部材50に対して一側(例えば図4の上側)からエンドミル9を近づけ、被加工部材50に基準面56(詳細には第1基準面561と第2基準面562)を形成するとともに、被加工部材50に対して同じく一側からエンドミル9を近づけ、被加工部材50に保持溝53を形成する。ここでの一側は、立体カム機構1が組み立てられたときに、支持部材5に対してケーシング72(言い換えれば別の部材75)が位置する側であり、また、保持溝53が開放される側である。基準面形成工程で用いるエンドミル9は、エンドミル9aであり、保持溝形成工程で用いるエンドミル9は、エンドミル9aとは異なるエンドミル9bである。
【0055】
つまり、加工工程は、エンドミル9aを用いて被加工部材50に基準面56を形成する基準面形成工程と、エンドミル9bを用いて被加工部材50に保持溝53を形成する保持溝形成工程とを含む。基準面形成工程と保持溝形成工程は、どちらが先に行われてもよい。
【0056】
基準面形成工程は、第1基準面561を形成する第1工程と、第1基準面561とは異なる方向を向く第2基準面562を形成する第2工程とを含む。第1工程と第2工程は、どちらが先に行われてもよい。
【0057】
第1工程では、一側から近づけたエンドミル9aの第1刃部951を被加工部材50に押し当て、第1基準面561を形成する。第2工程では、第1工程と同一のエンドミル9aを用い、このエンドミル9aの第2刃部952を被加工部材50に押し当て、第2基準面562を形成する。第1刃部951と第2刃部952は、エンドミル9aの互い異なる箇所に設けられている。
【0058】
保持溝形成工程では、被加工部材50に対して一側からエンドミル9bを近づけ、エンドミル9bの第3刃部953を被加工部材50に押し当て、保持溝53を形成する。第3刃部953は、V溝加工用のテーパー状の刃部である。
【0059】
更に、加工工程は、被加工部材50の案内溝54に一対の案内面541,542(図6等参照)を形成する案内面形成工程を含む。案内面形成工程では、一側から近づけたエンドミル9aの外周刃である第2刃部952を被加工部材50に押し当て、案内面541,542を形成する。基準面形成工程、保持溝形成工程及び案内面形成工程は、どの順で行われてもよい。
【0060】
以上のように、一実施形態の製造方法では、被加工部材50に対して同じ側からエンドミル9を近づけることによって、第1基準面561、第2基準面562、案内面541,542、及び保持溝53の全てを形成することができる。そのため、被加工部材50を掴み替えする作業が必要でなく、加工が効率的になるとともに、被加工部材50の掴み替えに起因して支持部材5の寸法形状に誤差が生じることが、抑えられる。
【0061】
つまり、一実施形態の製造方法によれば、支持部材5の第1基準面561、第2基準面562、案内面541,542、及び保持溝53の加工精度は、マシニングセンターの精度に依存するだけであり、支持部材5を高い加工精度で形成することが可能である。
【0062】
これに対して、例えば図11に示す比較例の支持部材5´では、軸部材4を挿し通すための貫通孔59が、第1の向きD1と直交する向きに貫通形成されている。したがって、例えばマシニングセンターにおいて支持部材5´の貫通孔59を形成する作業と、支持部材5の基準面56を形成する作業とを行うには、支持部材5´の基となる被加工部材を掴み替えする必要があり、この掴み替えに起因して、支持部材5´の寸法形状に誤差が生じるおそれがある。そのため、支持部材5を高い加工精度で形成することが困難である。
【0063】
(取付工程)
取付工程では、加工工程を経て形成された支持部材5の3つの保持溝53にそれぞれ軸部材4が嵌め込まれた状態で、3つの保持溝53の開口を覆うように、支持部材5に押え部材6を取り付ける。
【0064】
具体的には、3つの扇型の部材61,62,63を、それぞれねじ具615,625,635を介して、支持部材5の面512に取り付ける。これにより、面512に設けられた3つの保持溝53の、それぞれの第1溝531と第2溝532とが、3つの部材61,62,63によって覆われる。
【0065】
取付工程を経ることで、3つの軸部材4が支持部材5から脱落することが防止される。また、各軸部材4は押え部材6に当たって支持されるので、各軸部材4に連結されたフォロア3に対して、立体カム2の側に向けて大きな負荷が掛かったときには、該負荷の一部を押え部材6で支え、立体カム2に掛かる負荷を軽減させることができる。
【0066】
(変形例)
以上、本開示を一実施形態に基づいて説明したが、本開示は一実施形態に限定されない。本開示の意図する範囲内であれば、以下に説明する各種の変形例のように、適宜の設計変更を行うことが可能である。
【0067】
下記の変形例の説明において、一実施形態で説明した構成と同様の構成については、同一符号を付して詳しい説明を省略する。
【0068】
図7及び図8に示すように、同一のエンドミル9を用いて保持溝53と基準面56の両方を形成することも可能である。この場合、保持溝形成工程と基準面形成工程の両方で用いられるエンドミル9は、第1基準面561を形成するための第1刃部951と、第2基準面562を形成するための第2刃部952と、保持溝53を形成するための第3刃部953とが含まれたエンドミル9cである。
【0069】
第1刃部951と第2刃部952と第3刃部953とは、エンドミル9cの別々の箇所に設けられている。第1刃部951は、エンドミル9cの底刃で構成されており、第2刃部952は、エンドミル9cの外周刃で構成されている。第3刃部953は、エンドミル9の第1刃部951と第2刃部952との間に設けられた、テーパー状の刃部である。
【0070】
上記のエンドミル9cを用いれば、支持部材5を効率的に形成することができる。また、エンドミル9cを掴み替える必要がないため、エンドミル9cの掴み替えに起因して支持部材5の加工精度が低下することが、抑えられる。
【0071】
更に、エンドミル9cの第2刃部952を用いて案内面541,542を形成すること(つまり、保持溝形成工程、基準面形成工程及び案内面形成工程において、同一のエンドミル9cを用いること)も可能である。
【0072】
また、図9に示すように、保持溝53を断面V字状に形成するのでなく、断面アーチ状に形成することも可能である。図9に示す保持溝53の断面形状は、溝底に近い部分ほど曲率半径が漸次小さくなるように設けられたアーチ状(いわゆるゴシックアーチ状)の断面形状である。
【0073】
図10に示すエンドミル9dは、保持溝形成工程と基準面形成工程の両方で用いられるエンドミル9であり、第1基準面561を形成するための第1刃部951と、第2基準面562を形成するための第2刃部952と、断面アーチ状の保持溝53を形成するための第3刃部953とが含まれている。エンドミル9dの第3刃部953は、側面視において、エンドミル9の先端に近い部分ほど曲率半径が漸次小さくなるように設けられたアーチ状(いわゆるゴシックアーチ状)の外形を有する。第3刃部953の曲率半径は、軸部材4の軸径の50%以上に設けられていることが好ましい。側面視における第3刃部953の曲率半径は、例えば軸部材4の軸径の50.5%から54%の範囲内で設定され得る。
【0074】
また、一実施形態の立体カム機構1はフォロア3を3つ備えているが、フォロア3の数はこれに限定されず、立体カム機構1がフォロア3を1つ、2つ又は4つ以上備えることも可能である。一実施形態の立体カム機構1はグリッパを構成しているが、ロボットアームの関節機構等の、グリッパ以外の機構を構成することも可能である。
【0075】
また、一実施形態の立体カム機構1においては、支持部材5に結合される別の部材75が、ケーシング72で構成されているが、別の部材75が、ケーシング72以外の部材で構成されてもよい。
【0076】
また、一実施形態の立体カム機構1においては、第1基準面561よりも内側に第2基準面562が位置し、第2基準面562はリング状の凹曲面で構成されているが、第1基準面561と第2基準面562との位置関係や、第1基準面561と第2基準面562の形状はこれに限定されない。例えば、支持部材5の径方向において第1基準面561よりも外側に第2基準面562が位置してもよいし、第2基準面562が環状(リング状)の凸曲面で構成されてもよい。
【0077】
一例として、第2基準面562が、第1基準面561の外側に位置する環状(リング状)の凹曲面であることも有り得る。この場合、第1基準面561と第2基準面562は、入隅を形成するように連続し、第2基準面562は、第1基準面561よりも第1の向きD1(支持部材5に対して立体カム2が位置する向き)に離れた位置にある。
【0078】
また、第2基準面562が、第1基準面561の外側に位置する環状(リング状)の凸曲面であることも有り得る。この場合、第1基準面561と第2基準面562は、出隅を形成するように連続し、第2基準面562は、第1基準面561よりも第2の向きD2(立体カム2に対して支持部材5が位置する向き)に離れた位置にある。
【0079】
また、第2基準面562が、第1基準面561の内側に位置する環状(リング状)の凸曲面であることも有り得る。この場合、第1基準面561と第2基準面562は、入隅を形成するように連続し、第2基準面562は、第1基準面561よりも第2の向きD2に離れた位置にある。
【0080】
また、一実施形態の立体カム機構1においては、基準面56が、第1基準面561と第2基準面562の両方を含んでいるが、第1基準面561と第2基準面562の一方だけを含むことも可能であるし、更に別の基準面を含むことも可能である。
【0081】
一実施形態の立体カム機構1においては、フォロア3と軸部材4とが別体に構成されているが、フォロア3と軸部材4とが一体に構成されてもよい。
【0082】
また、一実施形態の立体カム機構1において、駆動源は、外部に設置されたモータであるが、駆動源はこれに限定されず、例えば、駆動軸71を手動で回転させることができる機構を備えることも可能である。
【0083】
(態様)
以上、一実施形態と各種の変形例に基づいて説明したように、本開示の第1の態様に係る立体カム機構の製造方法は、立体カム機構(1)を製造する方法であって、立体カム機構(1)は、3次元的なカム面(25)を有し、中心軸まわりに回転するように構成された立体カム(2)と、カム面(25)に当たる接触面(32)を有するフォロア(3)と、フォロア(3)に連結された軸部材(4)と、軸部材(4)を支持する支持部材(5)とを備える。立体カム機構(1)は、立体カム(2)の回転運動を、軸部材(4)を中心としたフォロア(3)の揺動運動に変換するように構成された機構である。第1の態様に係る立体カム機構の製造方法は、被加工部材(50)を加工して支持部材(5)を形成する加工工程を備える。加工工程は、被加工部材(50)に対して一側からエンドミル(9)を近づけ、被加工部材(50)に、別の部材(75)に当たる基準面(56)を形成する基準面形成工程と、被加工部材(50)に対して一側からエンドミル(9)を近づけ、被加工部材(50)に、軸部材(4)が嵌め込まれる保持溝(53)を形成する保持溝形成工程とを含む。
【0084】
第1の態様に係る立体カム機構の製造方法によれば、支持部材(5)の保持溝(53)を形成する作業と、支持部材(5)の基準面(56)を形成する作業とを、被加工部材(50)に対して同じ側から行うことができ、例えばマシニングセンターにおいて被加工部材(50)を掴み替えする必要がない。そのため、被加工部材(50)の掴み替えに起因して加工誤差を生じることが、抑えられる。したがって、第1の態様に係る立体カム機構の製造方法によれば、高精度な寸法形状を有する立体カム機構(1)を提供することができる。
【0085】
本開示の第2の態様に係る立体カム機構の製造方法は、第1の態様において、以下の構成を更に備える。第2の態様に係る立体カム機構の製造方法において、基準面形成工程は、第1基準面(561)を形成する第1工程と、第1基準面(561)と異なる方向を向く第2基準面(562)を形成する第2工程とを含む。
【0086】
したがって、第2の態様に係る立体カム機構の製造方法によれば、支持部材(5)の保持溝(53)を形成する作業と、支持部材(5)の第1基準面(561)を形成する作業と、支持部材(5)の第2基準面(562)を形成する作業とを、被加工部材(50)に対して同じ側から行うことができ、例えばマシニングセンターにおいて被加工部材(50)を掴み替えする必要がないため、被加工部材(50)の掴み替えに起因して加工誤差を生じることが、抑えられる。
【0087】
本開示の第3の態様に係る立体カム機構の製造方法は、第1の態様又は第2の態様において、以下の構成を更に備える。第3の態様に係る立体カム機構の製造方法において、加工工程は、被加工部材(50)に対して一側からエンドミル(9)を近づけ、フォロア(3)の揺動をガイドする案内面(541,542)を形成する案内面形成工程を、更に含む。
【0088】
したがって、第3の態様に係る立体カム機構の製造方法によれば、支持部材(5)の保持溝(53)を形成する作業と、支持部材(5)の基準面(56)を形成する作業と、支持部材(5)の案内面(541,542)を形成する作業とを、被加工部材(50)に対して同じ側から行うことができ、例えばマシニングセンターにおいて被加工部材(50)を掴み替えする必要がないため、被加工部材(50)の掴み替えに起因して加工誤差を生じることが、抑えられる。
【0089】
本開示の第4の態様に係る立体カム機構の製造方法は、第1から第3の態様のいずれか1つにおいて、以下の構成を更に備える。第4の態様に係る立体カム機構の製造方法において、保持溝(53)は、断面V字状の溝である。
【0090】
したがって、第4の態様に係る立体カム機構の製造方法によれば、断面V字状の保持溝(53)に、軸部材(4)を安定的に保持させることができる。
【0091】
本開示の第5の態様に係る立体カム機構の製造方法は、第1から第3の態様のいずれか1つにおいて、以下の構成を更に備える。第5の態様に係る立体カム機構の製造方法において、保持溝(53)は、断面アーチ状の溝である。
【0092】
したがって、第5の態様に係る立体カム機構の製造方法によれば、断面アーチ状の保持溝(53)に、軸部材(4)を安定的に保持させることができる。また、保持溝(53)の断面がアーチ状であると、軸部材(4)は大きな荷重を受けることができ、例えば立体カム機構(1)がグリッパを構成するときには、大きな把持力を発揮することが可能となる。
【0093】
本開示の第6の態様に係る立体カム機構の製造方法は、第1から第5の態様のいずれか1つにおいて、以下の構成を更に備える。第6の態様に係る立体カム機構の製造方法は、保持溝(53)の開口を覆うように、支持部材(5)に押え部材(6)を取り付ける取付工程を、更に備える。
【0094】
したがって、第6の態様に係る立体カム機構の製造方法によれば、軸部材(4)が保持溝(53)から脱落することを、押え部材(6)によって効果的に防止することができる。また、製造された立体カム機構(1)において、軸部材(4)に連結されたフォロア(3)に対して大きな負荷が掛かったときには、該負荷の一部を押え部材(6)で支え、立体カム(2)に掛かる負荷を軽減させることも可能である。
【0095】
本開示の第7の態様に係る立体カム機構の製造方法は、第1から第6の態様のいずれか1つにおいて、以下の構成を更に備える。第7の態様に係る立体カム機構の製造方法において、立体カム機構(1)は、立体カム(2)を回転させる駆動軸(71)と、駆動軸(71)の少なくとも一部を収容するケーシング(72)とを更に備える。別の部材(75)は、ケーシング(72)である。
【0096】
したがって、第7の態様に係る立体カム機構の製造方法によれば、支持部材(5)のうちケーシング(72)に当たる基準面(56)を形成する作業を、支持部材(5)の保持溝(53)を形成する作業と同じ側から行うことができる。
【0097】
本開示の第8の態様に係る立体カム機構の製造方法は、第1から第7の態様のいずれか1つにおいて、以下の構成を更に備える。第8の態様に係る立体カム機構の製造方法において、保持溝形成工程で用いるエンドミル(9)と、基準面形成工程において用いるエンドミル(9)は、同一である。
【0098】
したがって、第8の態様に係る立体カム機構の製造方法によれば、保持溝(53)と基準面(56)とを有する支持部材(5)を、同一のエンドミル(9)を用いて効率的に形成することができる。
【0099】
本開示の第9の態様に係るエンドミル(9)は、第2の態様の立体カム機構の製造方法の基準面形成工程と保持溝形成工程の両方で用いられるエンドミル(9)であって、第1基準面(561)を形成するための第1刃部(951)と、第2基準面(562)を形成するための第2刃部(952)と、保持溝(53)を形成するための第3刃部(953)とを別々に有する。
【0100】
したがって、第9の態様に係るエンドミル(9)によれば、保持溝(53)と第1基準面(561)と第2基準面(562)とを有する支持部材(5)を、同一のエンドミル(9)を用いて効率的に形成することができる。
【0101】
本開示の第10の態様に係る立体カム機構(1)は、3次元的なカム面(25)を有し、中心軸まわりに回転するように構成された立体カム(2)と、カム面(25)に当たる接触面(32)を有するフォロア(3)と、フォロア(3)に連結された軸部材(4)と、軸部材(4)を支持する支持部材(5)とを備える。立体カム機構(1)は、立体カム(2)の回転運動を、軸部材(4)を中心としたフォロア(3)の揺動運動に変換するように構成されている。支持部材(5)に対して立体カム(2)が位置する向きを、第1の向き(D1)とし、第1の向き(D1)とは反対の向きを第2の向き(D2)としたとき、支持部材(5)は、支持部材(5)に対して第1の向き(D1)に位置する別の部材(75)に当たるように設けられた基準面(56)と、第2の向き(D2)に窪み、軸部材(4)が嵌め込まれるように設けられた保持溝(53)とを有する。
【0102】
したがって、第10の態様に係る立体カム機構(1)によれば、支持部材(5)の保持溝(53)を形成する作業と、支持部材(5)の基準面(56)を形成する作業とを、支持部材(5)の基となる被加工部材(50)に対して同じ側から行うことが可能である。そのため、例えばマシニングセンターにおいて被加工部材(50)を掴み替えする必要がなく、掴み替えに起因した加工誤差が抑えられる。したがって、第10の態様に係る立体カム機構(1)によれば、高精度な寸法形状を有する立体カム機構(1)が提供可能である。
【0103】
本開示の第11の態様に係る立体カム機構(1)は、第10の態様において、以下の構成を更に備える。第11の態様に係る立体カム機構(1)において、基準面(56)は、第2の向き(D2)に直交する第1基準面(561)と、第2の向き(D2)に平行な第2基準面(562)の、少なくとも一方を含む。
【0104】
したがって、第11の態様に係る立体カム機構(1)によれば、支持部材(5)の保持溝(53)を形成する作業と、支持部材(5)の第1基準面(561)と第2基準面(562)の少なくとも一方を形成する作業とを、被加工部材(50)に対して同じ側から行うことができ、例えばマシニングセンターにおいて被加工部材(50)を掴み替えする必要がなく、掴み替えに起因した加工誤差が抑えられる。
【0105】
本開示の第12の態様に係る立体カム機構(1)は、第11の態様において、以下の構成を更に備える。第12の態様に係る立体カム機構(1)において、基準面(56)は、第1基準面(561)と第2基準面(562)の両方を含む。
【0106】
したがって、第12の態様に係る立体カム機構(1)によれば、支持部材(5)の保持溝(53)を形成する作業と、支持部材(5)の第1基準面(561)を形成する作業と、支持部材(5)の第2基準面(562)を形成する作業とを、被加工部材(50)に対して同じ側から行うことができ、例えばマシニングセンターにおいて被加工部材(50)を掴み替えする必要がなく、掴み替えに起因した加工誤差が抑えられる。
【0107】
本開示の第13の態様に係る立体カム機構(1)は、第10から第12の態様のいずれか1つにおいて、以下の構成を更に備える。第13の態様に係る立体カム機構(1)において、保持溝(53)は、断面V字状の溝である。
【0108】
したがって、第13の態様に係る立体カム機構(1)によれば、断面V字状の保持溝(53)に、軸部材(4)を安定的に保持させることができる。
【0109】
本開示の第14の態様に係る立体カム機構(1)は、第10から第12の態様のいずれか1つにおいて、以下の構成を更に備える。第14の態様に係る立体カム機構(1)において、保持溝(53)は、断面アーチ状の溝である。
【0110】
したがって、第14の態様に係る立体カム機構(1)によれば、断面アーチ状の保持溝(53)に、軸部材(4)を安定的に保持させることができる。また、保持溝(53)の断面がアーチ状であると、軸部材(4)は大きな荷重を受けることができ、例えば立体カム機構(1)がグリッパを構成するときには、大きな把持力を発揮することが可能となる。
【0111】
本開示の第15の態様に係る立体カム機構(1)は、第10から第14の態様のいずれか1つにおいて、以下の構成を更に備える。第15の態様に係る立体カム機構(1)は、保持溝(53)の開口を覆うように支持部材(5)に取り付けられた押え部材(6)を、更に備える。
【0112】
したがって、第15の態様に係る立体カム機構(1)によれば、軸部材(4)が保持溝(53)から脱落することを、押え部材(6)によって効果的に防止することができる。また、軸部材(4)に連結されたフォロア(3)に対して大きな負荷が掛かったときには、該負荷の一部を押え部材(6)で支え、立体カム(2)に掛かる負荷を軽減させることも可能である。
【0113】
本開示の第16の態様に係る立体カム機構(1)は、第10から第15の態様のいずれか1つにおいて、以下の構成を更に備える。第16の態様に係る立体カム機構(1)は、立体カム(2)を回転させる駆動軸(71)と、駆動軸(71)の少なくとも一部を収容するケーシング(72)とを更に備える。別の部材(75)は、ケーシング(72)である。
【0114】
したがって、第16の態様に係る立体カム機構(1)によれば、支持部材(5)のうちケーシング(72)に当たる基準面(56)形成する作業を、支持部材(5)の保持溝(53)を形成する作業と同じ側から行うことができる。
【符号の説明】
【0115】
1 立体カム機構
2 立体カム
25 カム面
3 フォロア
32 接触面
4 軸部材
5 支持部材
50 被加工部材
53 保持溝
54 案内溝
541 案内面
542 案内面
56 基準面
561 第1基準面
562 第2基準面
6 押え部材
71 駆動軸
72 ケーシング
75 別の部材
9 エンドミル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11